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2020年7月25日 (土) 22:06時点における版
三菱未来館(みつびしみらいかん)は、国際博覧会や地方博覧会などに三菱グループが出展する場合に用いるパビリオンの名称であり、その名通り一貫して未来をテーマとしている。
大阪万博
1970年の日本万国博覧会(大阪万博)では、「日本の自然と日本人の夢」をテーマに、ゴジラシリーズを手掛ける田中友幸や円谷英二率いる東宝の特撮スタッフが映像を制作した。火山活動や未来の海底牧場など、迫力ある映像を360度視界に映し出す「サークロマ映像方式」が大変な話題となり、民間企業のパビリオンでは最大の入場者数を記録した[1]。
建物は各ブロックを分離させず一点集中としその中の変化を建築表現のベースで対話を求め寄り集まった形とし、時間と形の動きの要素も取り入れ見る位置や光の加減によって姿を変える形とした[2]。造型は天・地・人、真・副・体といった造型手法を応用し三次元的な動的調和を意図し、表面パターンや色彩は祭りの法被に見られる調和のあるにぎやかさを取り込んだものとした[2]。
円谷英二は本作の制作中に死去し、この作品が事実上の遺作となった。パビリオンで用いられた音楽の一部は、映画『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』に流用された。
本館の未来予想の設定年代にあたる2020年には、三菱グループ創業150周年記念ウェブサイトにて1970年当時の未来予想項目を振り返りながら関連する2020年現在の注目技術を通し新たな未来を展望するシリーズコラム記事「みらい予想図」が展開されており[1]、大阪万博でのパンフレットもPDF形式で閲覧可能となっている[3]。
- スタッフ
- 三菱万国博綜合委員会委員長:寺尾一郎(三菱商事副社長)[3]
- 総合プロデューサー:田中友幸[3]
- 顧問グループ:荒川秀俊(気象学)、小瀬輝次(光学)、片山信夫(地学)、佐々木忠義(海洋物理学)、林雄二郎(社会工学)
- 特技撮影:富岡素敬
- 特技チーフ助監督:中野昭慶
- 監督:坂野義光
- 起案グループ:田中友幸、真鍋博、福島正実、矢野徹、星新一[3]
- アートディレクター:松山崇[3]
- 特技監督:円谷英二[3]
- 音楽構成:伊福部昭[3]
- 三菱技術者グループ:三菱重工業技術管理部長、岡村健治、三菱技術協力委員会[3]
- 建築設計:三菱地所[3]
- 施工:竹中工務店、戸田建設[3]
- 施工協力:三菱建設、新菱冷熱工業、弘電社[3]
- 制作:三菱万国博綜合委員会[3]
- 制作協力:東宝、三和通信社、近畿電電広告商事、第一企画、長瀬産業コダック製品部、大沢商会、東京現像所、エルモ社、東芝ホトホーン、日本クラウン[3]
- 構成
- プロローグ「日本の四季」[2][3]
- 未来の生活環境創造の中に自然観を失うことなく再創造する大切さを訴える事を目的に、日本の四季の風景を第1室までのエスカレーターの両側の壁に映し出しながら会場を歩き回り複雑となった来館者の心理状態を整える。
- 第1室「自然の脅威」[2][3]
- 三菱と東宝技術研究所が共同開発した多面スクリーンとマジックミラーを併用した立体スクリーン「ホリミラースクリーン」を用い台風の大波や暴風雨、火山の溶岩流や爆発を表現する。
- 第2室「日本の空-50年後の空」[2][3]
- 日本上空の宇宙空間に浮かぶ宇宙ステーションや「世界気象管理センター」の管理ドームのセットを通り抜け自然の脅威を制圧する未来の科学ドラマを展開する。
- 第3室「日本の海-50年後の海」[2][3]
- 海面下数千mの深海開発や地熱利用発電、海底油田など大陸棚開発等といった海洋開発の成果を数多くのセットで表す。
- 第4室「日本の陸-50年後の陸」[2][3]
- 郊外の未来住宅のセットを始め富士山麓の新居住区、省力化した農業、自動操縦車等未来の生活を立体的に描く。
- 第5室「あなたも参加する」[2][3]
- 観客の動きをITVカメラがとらえ電子装置が識別しそのシルエットを縦10m×横11mの大型電光板に5倍の大きさで映し出す「シルエトロン」や直径2.5mの球体スクリーンを配置した大型レクリエーションルーム。
沖縄海洋博
- 館名:三菱海洋未来館[4]
- テーマ:人と海[4]
- 建築面積:1,421平米[4]
- 延べ床面積:2,554平米[4]
- 設計:三菱地所[4]
- 施工:竹中工務店・三菱建設・戸田建設・国場組建設共同企業体[4]
- 構造:鉄骨造[4]
パビリオンは「人間も自然の一部にすぎない」の理念に立ち造型的にシンプルな形で外壁をアルミニウムの鏡面とした鉄骨造で周辺の景観を映し出す形となった。展示は三菱重工三原製作所で開発された「ムービングシート」座席に座り椅子に座ったまま誘導されるシートコンベア方式で海洋開発の理想像を展開する[4]。
- スタッフ[4]
- 三菱沖縄海洋博総合委員会委員長:山田敬三郎
- 館長:小谷修二
- 総合プロデューサー:田中友幸
- 構成[4]
- プロローグ「海へのいざない」
- 入口から階段を上り、ブルーの照明に包まれた部屋で天井のオウム貝から海鳴りと海をたたえる語りを再生する。
- 第1部「海への旅」
- 海底トンネルを降下し、サンゴや天敵のオニヒトデ、それを退治するホラ貝等海の生態学を象徴するイメージを三菱電機の開発したホログラム立体映像システムで表現。更に深海溝の深海魚や海底火山の爆発を大阪万博でも使われたホリミラースクリーンで表現した後クラゲ状の幻想の世界へで締められる。
- 第2部「海の未来」
- ハーフミラー技術を応用した「トランスデプロビジョン」による海中生物の形をした水中バスや海洋開発機械から生体工学的なアプローチによる技術発展の表現、三菱電機の開発した液晶シンクロビジュアルシステムによる観客の拍手等のアクションに反応する魚群の映像、海底牧場や海底都市等の海洋開発の理想像を展示。
- エピローグ
- カモメの大群に見守られながら会場へ向かい、ムービングシートを降り虹のイメージの部屋を経て退出する。
科学万博
1985年の国際科学技術博覧会(科学万博)では「すばらしい地球・人間」というテーマで出展[5]。大阪万博の三菱未来館で製作を担当した田中友幸が総合プロデュースを担当した[5]。内部展示は科学万博が開催された1985年当時の最先端技術を駆使してその当時考えられた未来の姿をリアルに表現していた[5]。
愛・地球博
2005年の日本国際博覧会(愛・地球博、愛知万博)では三菱未来館@earthとして「もしも月がなかったら」というテーマで出展[6]。シアターで上映される映像作品「もしも月がなかったら」は、米国の天体物理学者ニール・F・カミンズ教授の同名の著書をもとにした科学エンターテイメントである[6]。
その人気にも後押しされ、三菱重工業によって長崎県佐世保市の大型観光施設ハウステンボスに特殊効果映像シアター「ハウステンボスIFXシアター“Kirara(キララ)”」として2006年7月22日から常設で公開されている。IFXシアターとは、想像(Imagination)、無限(Infinity)、効果(FX=Effectsの略語風スペルで映画・テレビ用語)の3つの要素が一体となった映像シアターを表す造語。シアターの枠を超え、無限大に広がる映像空間を体感できるという。 「三菱未来館@earth」で上映されたものと同内容だが、本編に先がけて上映されるプレショーの内容が一新されている。
その他
- 国際博覧会
- 1975年 - 沖縄国際海洋博覧会(沖縄海洋博)で三菱海洋未来館として出展。
- 1990年 - 国際花と緑の博覧会(大阪花博)
- 地方博覧会 - 規模は小さめで出展していることが多い。
参考文献
- 『国際科学技術博覧会公式ガイドブック』国際科学技術博覧会協会、1985年3月16日第1刷発行、ISBN 4-06-201979-5
脚注・出典
- ^ a b 三菱創業150周年記念サイト みらい予想図 - 三菱グループ
- ^ a b c d e f g h EXPO'70のデザイン(IV)ディスプレイ - 工藝ニュース 1970年2月号
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 三菱創業150周年記念サイト みらい予想図 「三菱未来館」で配布されていたパンフレットを見てみよう! - 三菱グループ
- ^ a b c d e f g h i j 沖縄国際海洋博覧会公式記録(総合編)第II章 展示館・展示 三菱海洋未来館 - 沖縄国際海洋博覧会協会
- ^ a b c 『国際科学技術博覧会公式ガイドブック』、107頁。
- ^ a b 三菱未来館@earthもしも月がなかったら - 愛・地球博公式ウェブサイト内のページ。
関連項目
外部リンク
- 大阪万博当時のパビリオン(展示館)のご紹介 三菱未来館 - 万博記念公園
- 三菱未来館@earth - Internet Archive(2008年5月18日付キャッシュ)
- パビリオン 三菱未来館@earthもしも月がなかったら - 愛・地球博(地球産業文化研究所)
- アトラクション Kirara (キララ) - ハウステンボスリゾート