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「ルテニウム」の版間の差分

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{{出典の明記|date=2016年1月23日 (土) 13:50 (UTC)}}
{{Otheruses|[[元素]]|[[鉱物]]|自然ルテニウム}}
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'''ルテニウム'''({{lang-en-short|ruthenium}})は[[原子番号]]44の[[元素]]。[[元素記号]]は '''Ru'''。[[白金族元素]]の1つ。[[貴金属]]にも分類される。銀白色の硬くて脆い[[金属]](遷移金属)で、比重は12.43、[[融点]]は2583K (2310℃)、[[沸点]]は4173K(3900℃)。常温、常圧で安定な結晶構造は、[[六方最密充填構造]] (HCP)。[[酸化]]や[[腐食]]を受けにくく、展性に富み比重が大きい。この性質は白金([[Pt]])と同じであり、[[王水]]には侵されない。
'''ルテニウム'''({{lang-en-short|ruthenium}} {{IPA-en|ruːˈθiːniəm|}} )は[[原子番号]]44の[[元素]]。[[元素記号]]は '''Ru'''。[[白金族元素]]の1つ。[[貴金属]]にも分類される。銀白色の硬くて脆い[[金属]](遷移金属)で、比重は12.43、[[融点]]は2583K (2310℃)、[[沸点]]は4173K(3900℃)。常温、常圧で安定な結晶構造は、[[六方最密充填構造]] (HCP)。[[酸化]]や[[腐食]]を受けにくく、展性に富み比重が大きい。この性質は白金([[Pt]])と同じであり、[[王水]]には侵されない。


== 名称 ==
== 名称 ==
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漢字では釕(かねへんに了)と表記される。
漢字では釕(かねへんに了)と表記される。


== 用途 ==
==特性==
; 触媒:[[オスミウム]]との合金が、万年筆などのペン先(ニブポイント)に使われる。[[有機化学]]分野においては[[不飽和結合]]を水素化する際の[[触媒]]として多用される。[[不斉]]要素を持った[[配位子]]を配位させることによって面選択的な水素化も実現しており、この技術を開発した[[野依良治]]教授が2001年の[[ノーベル化学賞]]を受賞している。[[四酸化ルテニウム]]や[[過ルテニウム酸塩]]などは酸化剤として多用される。またルテニウムの[[カルベン]][[錯体]]は二重結合同士を組み替える[[メタセシス反応]]の触媒となり、中でも近年開発された[[グラブス触媒]]は近年の有機合成分野に革命的な変化をもたらしている。[[ロバート・グラブス|グラブス]]らは、メタセシス反応により[[有機合成化学]]のみならず、多様な分野に与えた革新的な業績が評価され、2005年の[[ノーベル化学賞]]を受賞した。また、[[アンモニア]]合成の際の[[ハーバー・ボッシュ法#鉄触媒|三重促進鉄触媒]]に代わる触媒<ref>江崎正直、{{PDFlink|[https://www.chart.co.jp/subject/rika/scnet/27/Sc27-2.pdf アンモニア合成]}}</ref>として利用されている。


===物理的特性===
; 電解工業:DSA電極にRuO2の形でコーティングされ電解の効率化に役立っている。これは塩素過電圧、酸素過電圧が他と比べ低い事、耐食性が優れている性質を利用している。
[[File:Ruthenium crystals.jpg|thumb|left|ルテニウム金属の気相成長結晶]]


[[原子価|多価]]の硬質白色金属であるルテニウムは、[[白金族元素]]であり、[[第8族元素]]に属する。
; 磁性材:[[ハードディスクドライブ|HDD]]の容量増大の目的でも用いられている。具体的には、数原子層のルテニウムを記録層の間に挟むことで[[反強磁性]]的結合状態をつくり、磁化の方向(0/1の記録に対応)を安定化している。この手法により、ビットサイズを小さくした際の[[超常磁性]]効果によってもたらされる、記録の熱的不安定性を抑制することが可能となる。


{| class="wikitable"
== 歴史 ==
|-
ルテニウムは1828年にロシアのオサン (G. W. Osann) が発見したと信じられ、そのためにロシアの古地名「Ruthenia」から名づけられた。1844年にロシアの[[カール・クラウス (化学者)|クラウス]] (K. Klaus) が、オサンの実験を追試して、あらためて新しい貴金属ルテニウムを純粋な元素としてとり出した{{sfn|桜井弘|1998|p=214}}。
![[原子番号|Z]] !! [[元素]] !! [[電子殻|電子/殻の数]]
|-
| 26 || [[鉄]] || 2, 8, 14, 2
|-
| 44 || ルテニウム || 2, 8, 18, 15, 1
|-
| 76 || [[オスミウム]] || 2, 8, 18, 32, 14, 2
|-
| 108 || [[ハッシウム]] || 2, 8, 18, 32, 32, 14, 2
|}


他の全ての第8族元素は最外殻に2つの電子を持っているが、ルテニウムは1つしか持っていない(最後の電子は下の殻にある)。この例外は近くの金属である[[ニオブ]](41)、[[モリブデン]](42)、[[ロジウム]](45)でも観察される。
== ルテニウムの化合物 ==
* [[酸化ルテニウム(IV)]] (RuO<sub>2</sub>) - 低温での抵抗温度計や、チップ[[抵抗器]]として用いられる
* [[酸化ルテニウム(VIII)]] (RuO<sub>4</sub>) - 融点が40 {{℃}}と低く、揮発性がある
* [[ルテニウム酸ストロンチウム]] (SrRuO<sub>4</sub>) - スピン三重項超伝導が観測されている


4つの結晶変態があり、周囲の条件で変色しない。{{convert|800|C|K}}に加熱すると酸化する。溶融アルカリに溶けてルテニウム酸塩({{chem|RuO|4|2-}})を生じ、酸([[王水]]でも)に攻撃されないが、高温で[[ハロゲン]]に攻撃される<ref name=crc/>。実際、ルテニウムは酸化剤により最も容易に攻撃される<ref name=Greenwood1076>Greenwood and Earnshaw, p. 1076</ref>。少量のルテニウムは[[プラチナ]]と[[パラジウム]]の硬度を高めることができる。[[チタン]]の[[腐食]]耐性は少量のルテニウムを添加することにより著しく向上する<ref name=crc/>。[[電気めっき]]および熱分解によりめっきすることができる。ルテニウム-[[モリブデン]]合金は10.6[[ケルビン|K]]未満の温度で[[超伝導]]であることが知られている<ref name=crc/>。酸化数+8をとることができると推定される最後の4d遷移元素であり、それでも同族のオスミウムより不安定である。これは2行目と3行目の遷移金属が化学的振る舞いに顕著な違いを示す族で周期表の左から1番目のものである。鉄と同様であるがオスミウムとは異なり、+2と+3の低い酸化数で水カチオンを形成できる<ref name=Greenwood1078>Greenwood and Earnshaw, p. 1078</ref>。
== 同位体 ==

ルテニウムは、[[モリブデン]]で見られる最大値に続く4d遷移金属の原子化エンタルピーと融点・沸点の減少傾向の最初のものである。これは4d亜殻が半分以上満たされ、電子が金属結合に寄与しないためである(1つ前の元素である[[テクネチウム]]の値は非常に低く半分満たされた[Kr]4d<sup>5</sup>5s<sup>2</sup>配置によりこの傾向から外れているが、3d遷移における[[マンガン]]ほど4dにおける傾向は離れていない)<ref name=Greenwood1075>Greenwood and Earnshaw, p. 1075</ref>。軽い同族の鉄とは異なり、室温でも[[常磁性]]であり、[[キュリー点]]も鉄より高い<ref name=Greenwood1074/>。

一般的なルテニウムイオンに対する酸性水溶液の還元電位を以下に示す<ref name=Greenwood1077>Greenwood and Earnshaw, p. 1077</ref>。
{|
|-
| 0.455 V ||Ru<sup>2+</sup> + 2e<sup>−</sup>|| ↔ Ru
|-
| 0.249 V ||Ru<sup>3+</sup> + e<sup>−</sup>|| ↔ Ru<suP>2+</sup>
|-
| 1.120 V ||RuO<sub>2</sub> + 4H<sup>+</sup> + 2e<sup>−</sup>|| ↔ Ru<sup>2+</sup> + 2H<sub>2</sub>O
|-
| 1.563 V ||{{chem|RuO|4|2-}} + 8H<sup>+</sup> + 4e<sup>−</sup>|| ↔ Ru<sup>2+</sup> + 4H<sub>2</sub>O
|-
| 1.368 V ||{{chem|RuO|4|-}} + 8H<sup>+</sup> + 5e<sup>−</sup>|| ↔ Ru<sup>2+</sup> + 4H<sub>2</sub>O
|-
| 1.387 V || RuO<sub>4</sub> + 4H<sup>+</sup> + 4e<sup>−</sup> || ↔ RuO<sub>2</sub> + 2H<sub>2</sub>O
|}

===同位体===
{{Main|ルテニウムの同位体}}
{{Main|ルテニウムの同位体}}
天然のルテニウムは7つの安定[[同位体]]で構成される。さらに34個の[[放射性同位体]]が発見されている、これらの放射性同位体のうち最も安定しているのは[[半減期]]が373.59日の<sup>106</sup>Ru、39.26日の<sup>103</sup>Ru、2.9日の<sup>97</sup>Ruである<ref name=n1/><ref name=n2/>。

15個の放射性同位体は89.93 [[統一原子質量単位|u]] (<sup>90</sup>Ru) から114.928 u (<sup>115</sup>Ru) の原子量で特徴づけられる。これらのほとんどは<sup>95</sup>Ru(半減期: 1.643時間)および<sup>105</sup>Ru(半減期: 4.44時間)を除き半減期は5分未満である<ref name=n1/><ref name=n2/>。

最も豊富にある同位体である<sup>102</sup>Ruの前の主な崩壊モードは[[電子捕獲]]であり、後の主なモードは[[ベータ崩壊|ベータ放出]]である。<sup>102</sup>Ru前の主な崩壊生成物は[[テクネチウム]]であり、後の主な崩壊生成物は[[ロジウム]]である<ref name=n1>{{RubberBible86th}} Section 11, Table of the Isotopes</ref><ref name=n2>{{citation |title=The N<small>UBASE</small> evaluation of nuclear and decay properties |doi=10.1016/j.nuclphysa.2003.11.001 |last1=Audi |first1=Georges |last2=Bersillon |first2=Olivier |last3=Blachot |first3=Jean |last4=Wapstra |first4=Aaldert Hendrik |authorlink4=Aaldert Wapstra |journal=Nuclear Physics A |volume=729 |pages=3–128 |year=2003 |url=<!-- dead: http://amdc.in2p3.fr/nubase/Nubase2003.pdf -->https://hal.archives-ouvertes.fr/in2p3-00020241/document |bibcode=2003NuPhA.729....3A |ref={{{ref|}}} }}</ref>。

===発生===
[[地殻中の元素の存在度|地球の地殻]]で74番目に豊富な元素であり、比較的まれであり<ref name="Emsley">{{cite book|title = Nature's Building Blocks: An A-Z Guide to the Elements|last = Emsley|first = J.|publisher = Oxford University Press|date = 2003|location = Oxford, England, UK|isbn = 978-0-19-850340-8|chapter = Ruthenium|pages = [https://archive.org/details/naturesbuildingb0000emsl/page/368 368–370]|url = https://archive.org/details/naturesbuildingb0000emsl/page/368}}</ref>、約100[[ppt]]である<ref name=Greenwood1071>Greenwood and Earnshaw, p. 1071</ref>。一般的に[[ウラル山脈]]および南北アメリカの他の白金族金属の鉱石に含まれる。少量であるが商業的に重要な量は、[[カナダ]][[オンタリオ州]]の[[サドバリー (オンタリオ州)|サドバリー]]で採掘されたペントランド鉱で見られ、[[南アフリカ]]の[[輝岩]](パイロキシナイト)鉱床にも見られる。ルテニウムの天然のものは非常にまれな鉱物である(Irはその構造においてRuの一部の代わりをする)<ref name="USGS-YB-2006">{{cite web|url = http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/platinum/myb1-2006-plati.pdf |publisher = United States Geological Survey USGS|accessdate = 2008-09-16|title = 2006 Minerals Yearbook: Platinum-Group Metals| first = Micheal W.|last = George}}</ref><ref name="USGS-CS-2008">{{cite web|url = http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/platinum/mcs-2008-plati.pdf |publisher = United States Geological Survey USGS|accessdate = 2008-09-16|title = Commodity Report: Platinum-Group Metals}}</ref>。

==生産==
毎年およそ30トンのルテニウムが採掘され<ref name=usgs/>、世界の埋蔵量は5,000トンと推定されている<ref name="Emsley"/>。採掘される[[白金族元素|白金族金属]](PGM)混合物の組成はその地球化学的形成により大きく異なる。例えば、南アフリカで採掘されるPGMには平均11%のルテニウムが含まれているが、旧ソ連で採掘されたPGMにはわずか2%(1992年)しか含まれていない<ref>{{cite book|url = https://books.google.com/books?id=Wm6QMRaX9C4C&pg=PA69|page =69|isbn = 978-0-87335-100-3|editor = Hartman, H. L.|editor2 = Britton, S. G.|date = 1992|publisher = Society for Mining, Metallurgy, and Exploration|location = Littleton, Colo.|title = SME mining engineering handbook}}</ref><ref>{{cite journal|url = http://canmin.geoscienceworld.org/cgi/content/abstract/12/2/104|journal = The Canadian Mineralogist|date = 1973| volume = 12|issue = 2|pages = 104–112|title = The nomenclature of the natural alloys of osmium, iridium and ruthenium based on new compositional data of alloys from world-wide occurrences| first = Donald C.|last = Harris|author2=Cabri, L. J. }}</ref>。ルテニウム、オスミウム、イリジウムは量の少ないマイナーな白金族金属とみなされている<ref name=Greenwood1074>Greenwood and Earnshaw, p. 1074</ref>。

ルテニウムは他の白金族金属と同様に[[ニッケル]]、[[銅]]からの副産物や白金金属鉱石処理から商業的に得られる。銅とニッケルの[[電解採取|電解精錬]]中に銀、金、白金族金属などの貴金属が摘出の原料である陽極泥として沈殿する<ref name="USGS-YB-2006">{{cite web|url = http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/platinum/myb1-2006-plati.pdf |publisher = United States Geological Survey USGS|accessdate = 2008-09-16|title = 2006 Minerals Yearbook: Platinum-Group Metals| first = Micheal W.|last = George}}</ref><ref name="USGS-CS-2008">{{cite web|url = http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/platinum/mcs-2008-plati.pdf |publisher = United States Geological Survey USGS|accessdate = 2008-09-16|title = Commodity Report: Platinum-Group Metals}}</ref>。金属は原料の組成によりいくつかの方法のいずれかによりイオン化溶質に変化される。代表的な方法の1つは、[[過酸化ナトリウム]]に溶解させた後[[王水]]に溶かし、その後[[塩素]]と[[塩酸]]の混合液へ溶解する方法である<ref name="ullmann-pt">{{cite book |author=Renner, H.|author2=Schlamp, G.|author3=Kleinwächter, I.|author4=Drost, E.|author5=Lüschow, H. M.|author6=Tews, P.|author7=Panster, P.|author8=Diehl, M.|author9=Lang, J.|author10=Kreuzer, T.|author11=Knödler, A.|author12=Starz, K. A.|author13=Dermann, K.|author14=Rothaut, J.|author15=Drieselman, R. |chapter=Platinum group metals and compounds |title=Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry |publisher=Wiley |date=2002 |doi=10.1002/14356007.a21_075|isbn=978-3527306732}}</ref><ref name="kirk-pt">{{cite book |title=Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology |first = R. J.|last = Seymour|author2=O'Farrelly, J. I. |chapter=Platinum-group metals |doi=10.1002/0471238961.1612012019052513.a01.pub2 |date=2001 |publisher=Wiley|isbn = 978-0471238966}}</ref>。[[オスミウム]]、ルテニウム、[[ロジウム]]、[[イリジウム]]は王水に不溶であり、容易に沈殿し、他の金属は溶液に残る。ロジウムは溶解硫酸水素ナトリウムで処理することで残留物から分離される。Ru, Os, Irを含む不溶性残留物はIrが不溶である酸化ナトリウムで処理され、溶解したRuとOs塩を生成する。揮発性酸化物へ酸化した後、塩化アンモニウムによる(NH<sub>4</sub>)<sub>3</sub>RuCl<sub>6</sub>の沈殿、または揮発性四酸化オスミウムの有機溶媒による蒸留または摘出により、{{chem|RuO|4}}は{{chem|OsO|4}}より分離される<ref>{{cite journal|title = The Platinum Metals|first = Raleigh|last = Gilchrist|journal = Chemical Reviews|date = 1943|volume = 32|issue = 3|pages = 277–372|doi = 10.1021/cr60103a002}}</ref>。塩化ルテニウム[[アンモニウム]]を還元して粉末を生成するには[[水素]]が使われる<ref name=crc/><ref name="cotton">{{cite book|last = Cotton|first = Simon|title = Chemistry of Precious Metals| pages = 1–20|publisher = Springer-Verlag New York, LLC|date = 1997|isbn = 978-0-7514-0413-5|url = https://books.google.com/books?id=6VKAs6iLmwcC&pg=PA2}}</ref>。生産物は水素を用いて還元され、[[粉末冶金]]技術もしくは[[アルゴン]][[アーク溶接]]で処理される粉末もしくは[[発泡金属|スポンジ金属]]として生成される<ref name=crc/><ref name="Hunt 1969 126–138">{{cite journal |first = L. B. |last = Hunt|author2=Lever, F. M. |journal = Platinum Metals Review|volume = 13 |issue = 4|date = 1969 |pages = 126–138|title = Platinum Metals: A Survey of Productive Resources to industrial Uses|url = http://www.platinummetalsreview.com/pdf/pmr-v13-i4-126-138.pdf}}</ref>。

==ルテニウムの化合物==
{{See also|Category:ルテニウムの化合物}}
ルテニウムの[[酸化数]]は、0から+8および-2の範囲である。ルテニウムとオスミウムの[[化合物]]の特性は多くの点で類似している。+2, +3, +4が最も一般的である。最も一般的な[[前駆体]]は[[塩化ルテニウム(III)|三塩化ルテニウム]]であり、化学的に明確に定義されているわけではないが、合成的に汎用性の高い赤い固体である<ref name=cotton/>。

===酸化物とカルコゲン化合物===
ルテニウムは[[酸化ルテニウム(IV)]](RuO<sub>2</sub>、酸化数+4)に[[酸化]]することができ、さらにこれは[[過ヨウ素酸ナトリウム]]により酸化され、揮発性で黄色四面体である[[四酸化ルテニウム]](RuO<sub>4</sub>)となる。これは[[四酸化オスミウム]]に類似した構造と特性を持つ強力な酸化剤である。RuO<sub>4</sub>は主に鉱石や放射性廃棄物からルテニウムを精製する際の中間体として使われる<ref>{{cite journal|authors=Swain, P.; Mallika, C.; Srinivasan, R.; Mudali, U. K.; Natarajan, R.|title=Separation and recovery of ruthenium: a review|journal=J. Radioanal. Nucl. Chem. |year=2013|volume=298|issue=2|pages=781–796|doi=10.1007/s10967-013-2536-5}}</ref>。

ルテニウム酸二カリウム(K<sub>2</sub>RuO<sub>4</sub>, +6)および過ルテニウム酸カリウム(KRuO<sub>4</sub>, +7)も知られている<ref>Greenwood, N. N.; & Earnshaw, A. (1997). ''Chemistry of the Elements'' (2nd Edn.), Oxford:Butterworth-Heinemann. {{ISBN|0-7506-3365-4}}.</ref>。四酸化オスミウムとは異なり、四酸化ルテニウムは安定性が低く、室温で希[[塩酸]]や[[エタノール]]などの有機溶媒を酸化する酸化剤として働くほど強く、アルカリ水溶液中で簡単にルテニウム酸塩({{chem|RuO|4|2-}})に還元され、100&nbsp;℃以上では分解して二酸化物を形成する。鉄とは異なるがオスミウムとは同様に、ルテニウムは+2と+3の低い酸化数では酸化物を形成しない<ref name=Greenwood1080>Greenwood and Earnshaw, pp. 1080–1</ref>。ルテニウムは、[[黄鉄鉱]]構造で結晶化する反磁性半導体である二カルコゲン化物を形成する<ref name=Greenwood1080/>。硫化ルテニウム(RuS<sub>2</sub>)は鉱物の{{仮リンク|ラウラ鉱|en|laurite}}として自然に生じる。

鉄と同様に、ルテニウムはオキソアニオンを容易に形成せず、その代わりに水酸化物イオンで高い配位数となる。四酸化ルテニウムは低温の希[[水酸化カリウム]]により還元され、ルテニウムの酸化数+7である黒色の過ルテニウム酸カリウム(KRuO<sub>4</sub>)を形成する。過ルテニウム酸カリウムは、ルテニウム酸カリウム(K<sub>2</sub>RuO<sub>4</sub>)を塩素ガスにより参加することによっても得られる。過ルテニウム酸イオンは不安定であり、水により還元されてオレンジ色のルテニウム酸塩を形成する。ルテニウム酸カリウムは金属ルテニウムを溶解した水酸化カリウムおよび[[硝酸カリウム]]と反応させることで合成できる<ref name=Greenwood1082>Greenwood and Earnshaw, p. 1082</ref>。

M<sup>II</sup>Ru<sup>IV</sup>O<sub>3</sub>, Na<sub>3</sub>Ru<sup>V</sup>O<sub>4</sub>, Na{{su|b=2}}Ru{{su|p=V|b=2}}O{{su|b=7}}, M{{su|p=II|b=2}}Ln{{su|p=III}}Ru{{su|p=V}}O{{su|b=6}}などの混合酸化物も知られる<ref name="Greenwood1082" />。

===ハロゲン化合物およびオキシハロゲン化合物===
最も有名なハロゲン化ルテニウムは、[[六フッ化ルテニウム|六フッ化物]]であり、これは54&nbsp; ℃で溶解する暗褐色の固体である。水と触れると激しく加水分解し、容易に不均一化し低フッ化ルテニウムの混合物を形成しフッ素ガスを放出する。[[五フッ化ルテニウム]]も容易に加水分解され、86.5&nbsp;℃で溶解する四量体の暗緑色の固体である。黄色の[[四フッ化ルテニウム]]もおそらく重合体であり、五フッ化物を[[ヨウ素]]で還元することで形成できる。ルテニウムの二元化合物のうち、これらの高い酸化数は酸化物とフッ化物でのみみられる<ref name=Greenwood1083>Greenwood and Earnshaw, p.1083</ref>。

[[三塩化ルテニウム]]はよく知られた化合物であり、黒色のα型と暗褐色のβ型で存在する。三水和物は赤色である<ref name=Greenwood1084>Greenwood and Earnshaw, p.1084</ref>。既知の三ハロゲン化物のうち、三フッ化物は暗褐色で650&nbsp;℃以上で分解し、四臭化物は暗褐色で400&nbsp;℃以上で分解し、三ヨウ化物は黒色である<ref name=Greenwood1083/>。二ハロゲン化物のうち、二フッ化物は知られておらず、二塩化物は茶色、二臭化物は黒色、二ヨウ化物は青色である<ref name=Greenwood1083/>。唯一知られているオキシハロゲン化物は淡緑色のルテニウム(VI)オキシフッ化物RuOF<sub>4</sub>である<ref name=Greenwood1084/>。

===配位および有機金属錯体===
{{Main|{{仮リンク|有機ルテニウム化学|en|Organoruthenium chemistry}}}}
[[File:Tris(bipyridine)ruthenium(II)-chloride-powder.jpg|thumb|left|トリス(ビピリジン)塩化ルテニウム(II)]]
[[File:Grubbs catalyst Gen2.svg|alt=Skeletal formula of Grubbs' catalyst.|thumb|220x220px|アルケンの[[メタセシス反応]]に使われるグラブス触媒。考案者であるロバート・グラブスはこの業績によりノーベル賞を受賞している。]]
ルテニウムはさまざまな配位錯体を形成する。例えば、Ru(II)とRu(III)の両方によく存在する多くのペンタアンミン誘導体[Ru(NH<sub>3</sub>)<sub>5</sub>L]<sup>n+</sup>である。[[ビピリジン]]と{{仮リンク|ターピリジン|en|terpyridine}}の誘導体は多くあり、[[ルミネセンス|発光性]]のトリス(ビピリジン)塩化ルテニウム(II)が最もよく知られる。

ルテニウムは炭素-ルテニウム結合により幅広い化合物を形成する。[[グラブス触媒]]はアルケンのメタセシスに用いられる<ref>Hartwig, J. F. (2010) ''Organotransition Metal Chemistry, from Bonding to Catalysis'', University Science Books: New York. {{ISBN|1-891389-53-X}}</ref>。[[ルテノセン]]は構造が[[フェロセン]]と似ているが、独特の酸化還元特性を示す。無色の液体[[ペンタカルボニルルテニウム]]はCO圧力の非存在下で暗赤色の固体[[ドデカカルボニル三ルテニウム]]に変化する。[[三塩化ルテニウム]]は一酸化炭素と反応してRuHCl(CO)(PPh<sub>3</sub>)<sub>3</sub>やRu(CO)<sub>2</sub>(PPh<sub>3</sub>)<sub>3</sub>(ローパー錯体)などの多くの誘導体を生成する。アルコール中の三塩化ルテニウムと[[トリフェニルホスフィン]]の加熱した溶液は[[トリス(トリフェニルホスフィン)二塩化ルテニウム]] (RuCl<sub>2</sub>(PPh<sub>3</sub>)<sub>3</sub>)を生成し、これはヒドリド錯体であるクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II) (RuHCl(PPh<sub>3</sub>)<sub>3</sub>)に変化する<ref name=cotton/>。

== 歴史 ==
6種類の[[白金族元素]]全てを含む天然の白金合金は[[先コロンブス期|コロンブス以前]]のアメリカ人により長い間使用され、16世紀半ばよりヨーロッパの化学者にも材料として知られていたが、18世紀半ばまでプラチナは純元素として識別されなかった。天然のプラチナにパラジウム、ロジウム、オスミウム、イリジウムが含まれていることは19世紀の初め10年で発見された<ref name="Weeks8">{{cite journal|doi = 10.1021/ed009p1017|title = The discovery of the elements. VIII. The platinum metals|date = 1932|last1 = Weeks|first1 = Mary Elvira|authorlink1=Mary Elvira Weeks|journal = Journal of Chemical Education|volume = 9|page = 1017|bibcode = 1932JChEd...9.1017W|issue = 6}}</ref>。ロシアの川の[[沖積層]]の砂に含まれるプラチナは1828年からプレートやメダルへの使用や、[[ルーブル]][[硬貨]]の鋳造の原料となった<ref name="Roubles">{{cite journal|url = http://www.platinummetalsreview.com/article/48/2/66-69/|volume = 48 |issue = 2|date = 2004| pages = 66–69|title = The Minting of Platinum Roubles. Part I: History and Current Investigations|first = Christoph J.|last = Raub}} [https://web.archive.org/web/20090105232443/http://www.platinummetalsreview.com/dynamic/article/view/48-2-066-069 Archive]</ref>。貨幣用のプラチナを生産した後の残留物はロシア帝国で使うことができたため、その研究のほとんどは東ヨーロッパで行われた。

[[ポーランド]]の化学者[[Jędrzej Śniadecki]]は1807年に南アメリカのプラチナ鉱石から元素44(少し前に小惑星[[ベスタ (小惑星)|ベスタ]]が発見されたため「ベスティウム」と呼んだ)を分離した可能性がある<ref>{{cite book | author = Jędrzej Śniadecki | title = Rosprawa o nowym metallu w surowey platynie odkrytym | language = Polish | year = 1808 | publisher = Nakł. i Drukiem J. Zawadzkiego | location = [[Vilnius|Wilno]] | url = http://kpbc.umk.pl/dlibra/docmetadata?id=51628&from=pubindex&dirids=87&lp=13}} (''Dissertation about the new metal discovered in raw platinum.'')</ref>。しかし、この成果は認められることはなく、後に発見の主張を撤回している<ref name="Emsley"/>。

[[イェンス・ベルセリウス]]と[[Gottfried Osann]]は1827年にルテニウムの発見に近づいた<ref>{{cite journal|url = https://books.google.com/books?id=x57C3yhRPUAC&pg=PA391|pages = 391–392|title = New Metals in the Uralian Platina|volume = 2|issue = 11|date = 1827| journal = The Philosophical Magazine|doi=10.1080/14786442708674516}}</ref>。2人は[[王水]]で[[ウラル山脈]]の粗プラチナを溶解した後に残った残留物を調査した。ベルセリウスは珍しい金属を発見しなかったが、Osannは3つの新たな金属を見つけたと考え、プルラニウム(pluranium)、ルテニウム、ポリニウム(polinium)と呼んだ<ref name=crc>Haynes, p. 4.31</ref>。この不一致により残留物の組成についてベルセリウスとOsannの間で長い間論争となった<ref name="DiscoRu">{{cite journal|title = The Discovery of Ruthenium| first = V. N.|last = Pitchkov|journal = Platinum Metals Review|volume = 40|issue = 4|date = 1996|pages =181–188|url = http://www.platinummetalsreview.com/dynamic/article/view/pmr-v40-i4-181-188}}</ref>。Osannはルテニウムの分離を再現することができなかったため、最終的に自身の主張を撤回した<ref name="DiscoRu" /><ref name="Osann2">{{cite journal | author = Osann, Gottfried | title = Berichtigung, meine Untersuchung des uralschen Platins betreffend | journal = [[Annalen der Physik|Poggendorffs Annalen der Physik und Chemie]] | volume = 15 | year = 1829 | page = 158 | url = http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k15100n.image.f168.langDE| doi = 10.1002/andp.18290910119 }}</ref>。「ルテニウム」という名前は分析したサンプルがロシアのウラル山脈由来であったためOsannにより選ばれた<ref name="Osann">{{cite journal | author = Osann, Gottfried | title = Fortsetzung der Untersuchung des Platins vom Ural | journal = [[Annalen der Physik|Poggendorffs Annalen der Physik und Chemie]] | volume = 14 | issue = 6 | year = 1828 | pages = 283–297| url = http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k150998/f337.image.langDE| bibcode = 1828AnP....89..283O | doi = 10.1002/andp.18280890609 }} The original sentence on [http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k150998/f347.image.langDE p. 339] reads: "Da dieses Metall, welches ich nach den so eben beschriebenen Eigenschaften als ein neues glaube annehmen zu müssen, sich in größerer Menge als das früher erwähnte in dem uralschen Platin befindet, und auch durch seinen schönen, dem Golde ähnlichen metallischen Glanz sich mehr empfiehlt, so glaube ich, daß der Vorschlag, das zuerst aufgefundene neue Metall Ruthenium zu nennen, besser auf dieses angewendet werden könne."</ref>。この名前自体は現在の[[ウクライナ]]、[[ベラルーシ]]、[[ロシア]]西部、[[スロバキア]]、[[ポーランド]]の一部を含む歴史的地域であるRus'のラテン語名であるルテニアに由来する。

1844年、[[バルト・ドイツ人|バルト・ドイツ系]]のロシアの科学者[[カール・クラウス (化学者)|カール・クラウス]]がGottfried Osannの調製した化合物に少量のルテニウムが含まれていることを示した<ref name=crc/><ref name="Weeks8"/>。[[カザン大学]]で研究していた時にルーブルを生産したときのプラチナ残留物からルテニウムを分離した<ref name="DiscoRu"/>。これは40年前にこれより重い同族元素のオスミウムが発見された手法と同じである<ref name=Greenwood1071>Greenwood and Earnshaw, p. 1071</ref>。クラウスは酸化ルテニウムに新しい金属が含まれており、[[王水]]に溶けない粗プラチナの部分から6gのルテニウムを得たことを示した<ref name="DiscoRu"/>。新たな元素の名前を選び、クラウスは「祖国に敬意を表して新たな物質にルテニウムと名前をつけました。Osann氏が自身のルテニウムを放棄したが、この言葉は化学にはまだ存在しないため、私はこの名前でそれを呼ぶ権利がありました」と述べている<ref name="DiscoRu" /><ref>{{cite journal |author = Claus, Karl |title=О способе добывания чистой платины из руд |journal=Горный журнал (Mining Journal) |year=1845 | volume = 7 | issue = 3 | pages = 157–163 |language=Russian}}</ref>。

==用途==
2016年におよそ30.9トンのルテニウムが消費され、そのうち13.8トンが電気、7.7トンが触媒、4.6トンが電気化学であった<ref name=usgs>Loferski, Patricia J.; Ghalayini, Zachary T. and Singerling, Sheryl A. (2018) [https://prd-wret.s3-us-west-2.amazonaws.com/assets/palladium/production/atoms/files/myb1-2016-plati.pdf Platinum-group metals]. ''2016 Minerals Yearbook''. USGS. p. 57.3.</ref>。

ルテニウムは白金とパラジウムの合金を硬化させるため、電気接触に使われる。この接触部では薄膜で十分な耐久性が得られる。ロジウムと同様の特性で低価格であり<ref name="Hunt 1969 126–138"/>、電気接触はルテニウムの主な用途である<ref name="USGS-YB-2006"/><ref>{{cite journal|doi = 10.1016/j.ccr.2004.08.015|title = Chemical and electrochemical depositions of platinum group metals and their applications|date = 2005|author = Rao, C|journal = Coordination Chemistry Reviews|volume = 249|page = 613|last2 = Trivedi|first2 = D.|issue = 5–6}}</ref>。ルテニウム板は電気めっき<ref>{{cite journal|doi = 10.1016/S0026-0576(00)83089-5|title = Ruthenium plating|date = 1999|author = Weisberg, A|journal = Metal Finishing|volume = 97|page = 297}}</ref>または[[スパッタリング]]<ref>{{cite book|isbn = 978-0-87170-285-2| url = https://books.google.com/books?id=EkStW7v8VPkC&pg=RA3-PA550|page = 184|author = Prepared under the direction of the ASM International Handbook Committee|author2 = Merrill L. Minges, technical chairman|date = 1989|publisher = ASM International|location = Materials Park, OH|title = Electronic materials handbook}}</ref>により電気接触および電極母材に用いられている。

[[鉛]]と[[ビスマス]]のルテニウム酸塩を含む二酸化ルテニウムは、厚膜チップ抵抗器に使われる<ref>{{cite journal|doi =10.1007/s10854-006-0036-x|title =Microstructure development and electrical properties of RuO<sub>2</sub>-based lead-free thick film resistors|date =2006|author =Busana, M. G.|journal =Journal of Materials Science: Materials in Electronics|volume =17|page =951|last2 =Prudenziati|first2 =M.|last3 =Hormadaly|first3 =J.|issue =11|hdl =11380/303403}}</ref><ref>{{cite journal|doi = 10.1016/j.matlet.2006.05.015|title = Environment friendly perovskite ruthenate based thick film resistors|date = 2007|author = Rane, Sunit|journal = Materials Letters|volume = 61|page = 595|last2 = Prudenziati|first2 = Maria|last3 = Morten|first3 = Bruno|issue = 2|hdl = 11380/307664}}</ref><ref>{{cite book|isbn = 978-0-8247-1934-0| url = https://books.google.com/books?id=c2YxCCaM9RIC&pg=PA184|pages = 184, 345|editor = Slade, Paul G.|date = 1999|publisher = Dekker|location = New York, NY|title = Electrical contacts : principles and applications}}</ref><!--http://md1.csa.com/partners/viewrecord.php?requester=gs&collection=TRD&recid=N8113268AH-->。これら2つの電子用途がルテニウム消費量の50%を占める<ref name="Emsley"/>。

ルテニウムが白金族以外の金属と合金になることはほとんどないが、少量含むといくつかの特性が改善する。[[チタン]]合金に加えられた耐腐食性が0.1%のルテニウムを含む特別な合金の開発につながった<ref>{{cite journal|url = http://www.platinummetalsreview.com/pdf/pmr-v40-i2-054-061.pdf|title = Ruthenium Enhanced Titanium Alloys|first = R. W.|last = Schutz|journal = Platinum Metals Review|volume = 40|issue = 2|date = 1996|pages = 54–61}}</ref>。[[ジェットエンジン]]のタービン含む用途で、一部の高度な高温単結晶[[超合金]]にも使われている。EPM-102(3%のルテニウム)、TMS-162(6%のルテニウム)、TMS-138<ref>{{cite news| title=Fourth generation nickel base single crystal superalloy. TMS-138 / 138A|date=July 2006|url=http://sakimori.nims.go.jp/catalog/TMS-138-A.pdf|work=High Temperature Materials Center, National Institute for Materials Science, Japan|archive-url=https://web.archive.org/web/20130418105851/http://sakimori.nims.go.jp/catalog/TMS-138-A.pdf|archive-date=18 April 2013}}</ref>およびTMS-174<ref>{{cite journal|author=Koizumi, Yutaka|display-authors=etal|title= Development of a Next-Generation Ni-base Single Crystal Superalloy|url=http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2003/00916/pdf/igtc2003tokyo_ts119.pdf|journal=Proceedings of the International Gas Turbine Congress, Tokyo 2–7 November 2003|archive-url=https://web.archive.org/web/20140110170053/http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2003/00916/pdf/igtc2003tokyo_ts119.pdf|archive-date=10 January 2014}}</ref><ref>{{cite news| title=Joint Development of a Fourth Generation Single Crystal Superalloy|author=Walston, S.|author2=Cetel, A.|author3=MacKay, R.|author4=O'Hara, K.|author5=Duhl, D.|author6=Dreshfield, R.|url=https://ntrs.nasa.gov/archive/nasa/casi.ntrs.nasa.gov/20050019231_2005000097.pdf|work=NASA|date=December 2004}}</ref>などいくつかのニッケルをベースにした超合金組成がある。後者2つは6%の[[レニウム]]を含む<ref>{{cite journal|doi = 10.1007/s11041-006-0099-6|title = Effect of high-gradient directed crystallization on the structure and properties of rhenium-bearing single-crystal alloy|date = 2006|author = Bondarenko, Yu. A.|journal = Metal Science and Heat Treatment|volume = 48|page = 360|last2 = Kablov|first2 = E. N.|last3 = Surova|first3 = V. A.|last4 = Echin|first4 = A. B.|issue = 7–8|bibcode = 2006MSHT...48..360B}}</ref>。[[万年筆]]のペン先(ニブ)には、しばしばルテニウムの合金が付けられている。1944年以降、万年筆 Parker 51 には"RU"ペン先(96.2%のルテニウムと3.8%の[[イリジウム]]がついた14Kの金のペン先)が取り付けられた<ref>{{cite journal|url=http://www.nibs.com/article4.html|journal=The PENnant|volume=XIII|issue=2|date=1999|title=Notes from the Nib Works—Where's the Iridium?|author=Mottishaw, J.|archive-url=https://web.archive.org/web/20020604135505/http://www.nibs.com/article4.html|archive-date=4 June 2002}}</ref>。

ルテニウムは、地下および水中の構造物のカソード防食、および塩水からの[[ソーダ工業|塩素製造]]プロセスの電解槽に用いられる[[混合金属酸化物]](MMO)アノードの構成要素である<ref>{{cite book|title =Materials Handbook: A Concise Desktop Reference|chapter-url = https://books.google.com/books?id=ArsfQZig_9AC&pg=PT612|pages = 581–582| first1 = François|last1 = Cardarelli|chapter = Dimensionally Stable Anodes (DSA) for Chlorine Evolution|isbn = 978-1-84628-668-1|date =2008|publisher =Springer|location =London}}</ref>。一部のルテニウム錯体の[[蛍光]]は酸素により消えるため、酸素の[[オプトード]]センサにおける使用が見いだされる<ref>{{cite book|title = Chemical sensors in oceanography|chapter = Oxygen Microoptode|page = 150|first1 = Mark S.|last1 = Varney|date = 2000|isbn = 978-90-5699-255-2|publisher = Gordon & Breach|location = Amsterdam}}</ref>。{{仮リンク|ルテニウムレッド|en|Ruthenium red}}[(NH<sub>3</sub>)<sub>5</sub>Ru-O-Ru(NH<sub>3</sub>)<sub>4</sub>-O-Ru(NH<sub>3</sub>)<sub>5</sub>]<sup>6+</sup>は、[[光学顕微鏡]]や[[電子顕微鏡]]のために[[ペクチン]]や[[核酸]]などの[[ポリアニオン]]分子の染色に用いられる[[染色 (生物学)|生物学的染色剤]]である<ref>{{cite book|title = Stains and cytochemical methods|chapter = Ruthenium red|first1 = M. A.|last1 = Hayat|chapter-url = https://books.google.com/books?id=oGj7MLioFlQC&pg=PA305|pages = [https://archive.org/details/stainscytochemic0000haya/page/305 305–310]|isbn = 978-0-306-44294-0|date = 1993|publisher = Plenum Press|location = New York, NY|url = https://archive.org/details/stainscytochemic0000haya/page/305}}</ref>。ルテニウムのベータ崩壊同位体106は眼腫瘍、主に[[ぶどう膜]]の[[悪性黒色腫]]の放射線治療に用いられる<ref>{{cite book|url = https://books.google.com/books?id=Aa83RoXCNk0C&pg=PA97|title = Radiotherapy of ocular disease, Ausgabe 13020|first1 = T.|last1 = Wiegel|isbn = 978-3-8055-6392-5|date = 1997|publisher = Karger|location = Basel, Freiburg}}</ref>。ルテニウム中心の錯体は抗がん特性の可能性に対して研究されている<ref>{{cite journal|date = 2007|title = Synthetic metallomolecules as agents for the control of DNA structure|journal = Chem. Soc. Rev.|volume = 36|pages = 471–483|doi = 10.1039/b609495c |pmid = 17325786 |last1 = Richards |first1 = A. D. |last2 = Rodger |first2 = A. |issue = 3|url = http://wrap.warwick.ac.uk/2189/1/WRAP_Richards_Revised_article1.pdf}}</ref>。白金の錯体と比較して、ルテニウムの錯体は加水分解に対してより大きな耐性と腫瘍に対するより選択的な作用を示す{{citation needed|date = April 2012}}。

[[四酸化ルテニウム]]は、脂肪油または皮脂性の汚染物質についた脂肪と接触すると反応し褐色/黒色の二酸化ルテニウム顔料を生成することにより、見えない指紋を浮き出させる<ref>[https://www.ncjrs.gov/App/publications/abstract.aspx?ID=172645 NCJRS Abstract – National Criminal Justice Reference Service]. Ncjrs.gov. Retrieved on 2017-02-28.</ref>。

===触媒===
[[File:Ru-intercalated halloysite nanotubes 3.jpg|thumb|ルテニウム触媒ナノ粒子がインターカレートされた[[ハロイサイト]]ナノチューブ<ref name=stam>{{cite journal|doi=10.1080/14686996.2016.1278352|title=Formation of metal clusters in halloysite clay nanotubes|pmc=5402758|journal=Science and Technology of Advanced Materials|volume=18|issue=1|pages=147–151|year=2017|last1=Vinokurov|first1=Vladimir A.|last2=Stavitskaya|first2=Anna V.|last3=Chudakov|first3=Yaroslav A.|last4=Ivanov|first4=Evgenii V.|last5=Shrestha|first5=Lok Kumar|last6=Ariga|first6=Katsuhiko|last7=Darrat|first7=Yusuf A.|last8=Lvov|first8=Yuri M.|pmid=28458738|bibcode=2017STAdM..18..147V}}</ref>]]
多くのルテニウム含有化合物は、有用な触媒特性を示す。触媒は反応媒体に溶解する[[均一触媒]]、およびそうではない[[不均一触媒]]に分けられる。

ルテニウムナノ粒子はハロイサイト内で形成できる。この豊富にある鉱物は自然に圧延ナノシート(ナノチューブ)の構造を持ち、その後の工業用触媒での使用に対してRuナノクラスター合成とその製造の両方を支持する<ref name=stam/>。

====均一触媒====
[[三塩化ルテニウム]]を含む溶液は、オレフィンの[[メタセシス反応]]に対して非常に活性がある。このような触媒は例えばポリノルボルネンの製造に対して商業的に使用されている<ref name=KO>{{cite encyclopedia|encyclopedia=Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology|authors=Delaude, Lionel and Noels, Alfred F. |year=2005|title = Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology| doi=10.1002/0471238961.metanoel.a01|place=Weinheim|publisher=Wiley-VCH|chapter=Metathesis|isbn=978-0471238966}}</ref>。はっきり定義されたルテニウム[[カルベン]]および[[カルベン錯体|アルキリデン錯体]]は、似た反応性を示し、工業プロセスに対する機構的な洞察を提供する<ref>{{cite journal|doi = 10.1002/1521-3773(20000901)39:17<3012::AID-ANIE3012>3.0.CO;2-G|title=Olefin Metathesis and Beyond|author=Fürstner, Alois|journal=Angewandte Chemie International Edition|volume=39|date=2000|pages=3012–3043|pmid=11028025|issue = 17}}</ref>。例えば、[[グラブス触媒]]は医薬品や先端材料の調合に用いられている。

:[[File:Polynbornene.png|thumb|center|upright=2|RuCl<sub>3</sub>触媒による[[開環メタセシス重合]]反応によりポリノルボルネンが得られる]]

ルテニウム錯体は[[移動水素化]]("borrowing hydrogen"反応とも呼ばれる)に対して活性の高い触媒である。このプロセスは、[[ケトン]]、[[アルデヒド]]、[[イミン]]の[[エナンチオ選択的水素化]]に使われる。この反応は[[野依良治]]により導入された[[キラル]]なルテニウム錯体を用いる<ref name="citation 21">{{citation |author1=Noyori, R. |author2=Ohkuma, T. |author3=Kitamura, M. |author4=Takaya, H. |author5=Sayo, N. |author6=Kumobayashi, H. |author7=Akutagawa, S. |journal=[[Journal of the American Chemical Society]]|title=Asymmetric hydrogenation of .beta.-keto carboxylic esters. A practical, purely chemical access to .beta.-hydroxy esters in high enantiomeric purity|year=1987|volume=109|issue=19 |pages=5856|doi=10.1021/ja00253a051}}</ref>。例えば、 (シメン)Ru(S,S-Ts[[DPEN]])は、[[ベンジル]]の(''R,R'')-ヒドロ[[ベンゾイン]]への水素化を触媒する。この反応では[[ギ酸塩]]と水/アルコールがH<sub>2</sub>源になる<ref>{{OrgSynth | author = Ikariya, Takao; Hashiguchi, Shohei; Murata, Kunihiko and [[Ryōji Noyori|Noyori, Ryōji]]| title = Preparation of Optically Active (R,R)-Hydrobenzoin from Benzoin or Benzil| vol = 82 | pages = 10 | year = 2005 | prep = v82p0010}}</ref><ref>{{Cite journal | title = Synthesis of Optically Active 1,2,3,4-Tetrahydroquinolines via Asymmetric Hydrogenation Using Iridium-Diamine Catalyst|journal=Org. Synth.|volume = 92 | pages = 213–226 | year = 2015 | doi = 10.15227/orgsyn.092.0213|last1=Chen|first1=Fei}}</ref>。

:[[File:RuCl(S,S-TsDPEN)(cymene)-catalysed R,R-hydrobenzoin synthesis.svg|thumb|upright=2|center| [触媒RuCl(''S'',''S''-TsDPEN)(シメン)]による(''R'',''R'')-ヒドロベンゾイン合成(収率100%, [[鏡像体過剰率|ee]] >99%)]]

2001年の[[ノーベル化学賞]]は、不斉水素化の分野への貢献で[[野依良治]]に贈られた。

2012年、有機ルテニウム触媒を研究する北野政明と共同研究者は、電子供与体および可逆水素貯蔵として安定したエレクトライドを用いるアンモニア合成を実証した<ref>{{cite journal|doi=10.1038/nchem.1476|pmid=23089869|title=Ammonia synthesis using a stable electride as an electron donor and reversible hydrogen store|journal=Nature Chemistry|volume=4|issue=11|pages=934–940|year=2012|last1=Kitano|first1=Masaaki|last2=Inoue|first2=Yasunori|last3=Yamazaki|first3=Youhei|last4=Hayashi|first4=Fumitaka|last5=Kanbara|first5=Shinji|last6=Matsuishi|first6=Satoru|last7=Yokoyama|first7=Toshiharu|last8=Kim|first8=Sung-Wng|last9=Hara|first9=Michikazu|last10=Hosono|first10=Hideo|bibcode=2012NatCh...4..934K}}</ref>。地方の農業で用いるための小規模で断続的なアンモニアの生産は、孤立した地方の施設で風力タービンにより生成される電力のシンクとして電気グリッド接続の実行可能な代替物であるかもしれない{{citation needed|date=January 2019}}。

====不均一触媒====
ルテニウムに促進されたコバルト触媒は[[フィッシャー・トロプシュ法]]で使われる<ref>{{cite journal|doi=10.1016/S0926-860X(99)00160-X|title=Short history and present trends of Fischer–Tropsch synthesis|journal=Applied Catalysis A: General|volume=186|issue=1–2|pages=3–12|year=1999|last1=Schulz|first1=Hans}}</ref>。

===新たに出てきている用途===

いくつかのルテニウム錯体は可視スペクトル全体で[[吸光|光を吸収]]し、[[太陽エネルギー]]技術のために活発に研究されている。例えば、ルテニウムをベースとした化合物は有望な新しい低コストの[[太陽電池]]システムである[[色素増感太陽電池]]の光吸収に使われている<ref>{{cite journal|doi =10.1021/ja058540p|title =High Molar Extinction Coefficient Heteroleptic Ruthenium Complexes for Thin Film Dye-Sensitized Solar Cells|date =2006|last1 =Kuang|first1 =Daibin|last2 =Ito|first2 =Seigo|last3 =Wenger|first3 =Bernard|last4 =Klein|first4 =Cedric|last5 =Moser|first5 =Jacques-E|last6 =Humphry-Baker|first6 =Robin|last7 =Zakeeruddin|first7 =Shaik M.|last8 =Grätzel|first8 =Michael|journal =Journal of the American Chemical Society|volume =128|pages =4146–54|pmid =16551124|issue =12|url =https://semanticscholar.org/paper/3b3d68ad440b34608725298712c7d301c67afe4c}}</ref>。

多くのルテニウムベースの酸化物は、[[量子臨界点]]の挙動<ref>{{cite journal|last1 = Perry|first1 = R.|last2 = Kitagawa|first2 = K.|last3 = Grigera|first3 = S.|last4 = Borzi|first4 = R.|last5 = MacKenzie|first5 = A.|last6 = Ishida|first6 = K.|last7 = Maeno|first7 = Y.|title = Multiple First-Order Metamagnetic Transitions and Quantum Oscillations in Ultrapure Sr.<sub>3</sub>Ru<sub>2</sub>O<sub>7</sub>|journal = Physical Review Letters|volume = 92|date = 2004|doi = 10.1103/PhysRevLett.92.166602|pmid = 15169251|bibcode=2004PhRvL..92p6602P|arxiv = cond-mat/0401371|issue = 16|pages = 166602}}</ref>、エキゾチック[[超伝導]]({{仮リンク|ルテニウム酸ストロンチウム|en|strontium ruthenate}}で)<ref>{{cite journal|last1 = Maeno|first1 = Yoshiteru|last2 = Rice|first2 = T. Maurice|last3 = Sigrist|first3 = Manfred|title = The Intriguing Superconductivity of Strontium Ruthenate|doi = 10.1063/1.1349611|date = 2001|page = 42|volume = 54|issue = 1|journal = Physics Today|url = http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/49957/1/PTO000042.pdf|bibcode = 2001PhT....54a..42M}}</ref>、高温[[強磁性]]<ref>{{cite journal|last1 = Shlyk|first1 = Larysa|last2 = Kryukov|first2 = Sergiy|last3 = Schüpp-Niewa|first3 = Barbara|last4 = Niewa|first4 = Rainer|last5 = De Long|first5 = Lance E.|title = High-Temperature Ferromagnetism and Tunable Semiconductivity of (Ba, Sr)M<sub>2±x</sub>Ru<sub>4∓x</sub>O<sub>11</sub> (M = Fe, Co): A New Paradigm for Spintronics|journal = Advanced Materials|volume = 20|page = 1315|date = 2008|doi = 10.1002/adma.200701951|issue = 7}}</ref>などとても異常な特性を示す。

===マイクロエレクトロニクスにおけるルテニウム薄膜の適用===
比較的最近に、ルテニウムはマイクロエレクトロニクスの部品内の金属や[[ケイ化物]]を有益に置き換えることができる材料として提案されている。四酸化ルテニウム(RuO<sub>4</sub>)は揮発性が高く、三酸化ルテニウム(RuO<sub>3</sub>)も同様である<ref>{{cite journal|last =Wei|first = P.|author2=Desu, S. B. |title = Reactive ion etching of RuO<sub>2</sub> films: the role of additive gases in O<sub>2</sub> discharge|journal = Physica Status Solidi A |year = 1997 |volume = 161|issue = 1|pages = 201–215|doi =10.1002/1521-396X(199705)161:1<201::AID-PSSA201>3.0.CO;2-U|bibcode = 1997PSSAR.161..201P}}</ref>。ルテニウムを(例えば酸素プラズマで)揮発性酸化物に酸化することで、簡単にパターン化することができる<ref>{{cite journal
|last = Lesaicherre|first = P. Y.|author2=Yamamichi, S. |author3=Takemura, K. |author4=Yamaguchi, H. |author5=Tokashiki, K. |author6=Miyasaka, Y. |author7=Yoshida, M. |author8= Ono, H. |title = A Gbit-scale DRAM stacked capacitor with ECR MOCVD SrTiO<sub>3</sub> over RIE patterned RuO<sub>2</sub>/TiN storage nodes|journal = Integrated Ferroelectrics |year = 1995|volume = 11|issue = 1–4 |pages = 81–100|doi = 10.1109/IEDM.1994.383296
|isbn = 0-7803-2111-1}}</ref><ref>{{cite journal|last = Pan|first = W.|author2=Desu, S. B. |title = Reactive Ion Etching of RuO<sub>2</sub>, Thin-Films Using the Gas-Mixture O<sub>2</sub> CF<sub>3</sub>CFH<sub>2</sub>|journal = [[Journal of Vacuum Science and Technology B]] |year = 1994 |volume = 12|issue = 6 |pages = 3208–3213|doi = 10.1116/1.587501|bibcode = 1994JVSTB..12.3208P}}</ref><ref>{{cite journal|author = Vijay, D. P.; Desu, S. B.; Pan, W.|title = Reactive Ion Etching of Lead-Zirconate-Titanate (PZT) Thin-Film Capacitors|journal = Journal of the Electrochemical Society |year = 1993 |volume = 140 |issue = 9|pages = 2635–2639|doi = 10.1149/1.2220876}}</ref><ref>{{cite journal|last = Saito|first = S. |author2=Kuramasu, K. |title = Plasma etching of RuO<sub>2</sub> thin films|journal = Japanese Journal of Applied Physics |year = 1992 |volume = 31|issue = 1|pages = 135–138|doi = 10.1143/JJAP.31.135|bibcode = 1992JaJAP..31..135S}}</ref>。一般的な酸化ルテニウムの特性により、ルテニウムはマイクロエレクトロニクスの製造に必要な半導体プロセス技術と互換性のある金属となる。

マイクロエレクトロニクスの小型化を続けていくためには、寸法の変化に合わせて新たな材料が必要である。マイクロエレクトロニクスのルテニウム薄膜には主に3つの用途がある。1つ目は次世代の3次元[[DRAM]]において五酸化タンタル(Ta<sub>2</sub>O<sub>5</sub>)やチタン酸バリウムストロンチウム((Ba, Sr)TiO<sub>3</sub>、BSTとしても知られる)の両側の電極としてルテニウム薄膜を用いることである<ref>{{cite journal|title=Ruthenium films prepared by liquid source chemical vapor deposition using bis-(ethylcyclopentadienyl)ruthenium|journal= Japanese Journal of Applied Physics |year=1999|volume=38|issue= 10A |pages=1134–6|doi=10.1143/JJAP.38.L1134|author1=Aoyama, T|author2=Eguchi, K|bibcode = 1999JaJAP..38L1134A}}</ref><ref>{{cite journal|title=(Ba,Sr)TiO<sub>3</sub> thin-film capacitors with Ru electrodes for application to ULSI processes|journal=NEC Research and Development|year=2001|volume=42|pages=64–9|author1=Iizuka, T|author2=Arita, K|author3=Yamamoto, I|author4=Yamamichi, S}}</ref><ref>{{cite journal|title=A stacked capacitor technology with ECR plasma MOCVD (Ba,Sr)TiO<sub>3</sub> and RuO<sub>2</sub>/Ru/TiN/TiSi<sub>x</sub> storage nodes for Gb-scale DRAM's|journal= IEEE Transactions on Electron Devices |year=1997|volume=44|pages=1076–1083|bibcode = 1997ITED...44.1076Y |doi = 10.1109/16.595934|last1=Yamamichi|first1=S.|last2=Lesaicherre|first2=P.|last3=Yamaguchi|first3=H.|last4=Takemura|first4=K.|last5=Sone|first5=S.|last6=Yabuta|first6=H.|last7=Sato|first7=K.|last8=Tamura|first8=T.|last9=Nakajima|first9=K.|issue=7 }}</ref>。ルテニウム薄膜電極は別の[[Random Access Memory|RAM]]である[[強誘電体メモリ|FRAM]]のチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr<sub>x</sub>Ti<sub>1−x</sub>)O<sub>3</sub>、PZTとしても知られる)の上に堆積もできる<ref>{{cite journal|title=Simple Ru electrode scheme for ferroelectric (Pb,La)(Zr,Ti)O<sub>3</sub> capacitors directly on silicon|journal=Journal of Applied Physics|year=1998|volume=84|issue=2|pages=1121–1125|doi=10.1063/1.368112|author1=Bandaru, J|author2=Sands, T|author3=Tsakalakos, L|bibcode = 1998JAP....84.1121B}}</ref><ref>{{cite journal|title=Preparation and properties of Ru and RuO<sub>2</sub> thin-film electrodes for ferroelectric thin films|journal=Jpn. J. Appl. Phys. |year=1994|volume=33|issue=9B |pages=5223–6|author1=Maiwa, H |author2=Ichinose, N |author3=Okazaki, K |doi=10.1143/JJAP.33.5223|bibcode = 1994JaJAP..33.5223M }}</ref>。白金は実験室ではRAMの電極として使われているが、パターン化するのは難しい。ルテニウムは白金と化学的に似ており、RAMの機能を維持するが白金のパターニングとは異なり簡単である。2つ目はpドープ[[MOSFET]]の金属ゲートとしてルテニウムの薄膜を使うことである<ref>{{cite journal|title=Issues in high-kappa gate stack interfaces|journal= MRS Bulletin|year=2002|volume=27|pages=212–216|author1=Misra, V |author2=Lucovsky, G |author3=Parsons, G |doi=10.1557/mrs2002.73|issue=3}}</ref>。MOSFETの[[シリサイド]]ゲートを金属ゲートに置き換える場合、金属の重要となる特性は[[仕事関数]]である。仕事関数は周囲の材料と一致する必要がある。p-MOSFETの場合、ルテニウムの仕事関数はHfO<sub>2</sub>, HfSiO<sub>x</sub>, HfNO<sub>x</sub>, HfSiNO<sub>x</sub>などの周囲の材料と一致する最高の材料特性であり、所望の電気特性が達成される。ルテニウム膜の3つ目の大規模な用途は、銅デュアルダマシンプロセスにおけるTaNとCuの間の接着促進剤と電気めっきシード層の組み合わせである<ref>{{cite journal|title=Diffusion Studies of Copper on Ruthenium Thin Film|journal= Electrochemical and Solid-State Letters|year=2004|volume=7|pages=G154–G157|author1=Chan, R |author2=Arunagiri, T. N |author3=Zhang, Y |author4=Chyan, O |author5=Wallace, R. M |author6=Kim, M. J |author7=Hurd, T. Q |doi=10.1149/1.1757113|issue=8}}</ref><ref>{{cite journal|title=Damascene Cu electrodeposition on metal organic chemical vapor deposition-grown Ru thin film barrier|journal=Journal of Vacuum Science and Technology B|year=2004|volume=22|pages=2649–2653|doi=10.1116/1.1819911|author1=Cho, S. K |author2=Kim, S.-K |author3=Kim, J. J |author4=Oh, S. M |author5=Oh, Seung Mo |bibcode = 2004JVSTB..22.2649C|issue=6}}</ref><ref>{{cite journal|title=Electrodeposition of Copper Thin Film on Ruthenium|journal= Journal of the Electrochemical Society|year=2003|volume=150|pages=C347–C350|doi=10.1149/1.1565138|author1=Chyan, O |author2=Arunagiri, T. N |author3=Ponnuswamy, T |issue=5}}</ref><ref>{{cite journal|title=PEALD of a Ruthenium Adhesion Layer for Copper Interconnects|journal=Journal of the Electrochemical Society|year=2004|volume=151|pages=C753–C756|doi=10.1149/1.1809576|author1=Kwon, O.-K|author2=Kwon, S.-H|author3=Park, H.-S|author4=Kang, S.-W|issue=12}}</ref><ref>{{cite journal|title=Atomic Layer Deposition of Ruthenium Thin Films for Copper Glue Layer|journal=Journal of the Electrochemical Society|year=2004|volume=151|pages=G109–G112|doi=10.1149/1.1640633|author1=Kwon, O.-K|author2=Kim, J.-H|author3=Park, H.-S|author4=Kang, S.-W|issue=2}}</ref>。窒化タンタルとは対照的に銅はルテニウム上に直接電気めっきできる<ref>{{cite journal|title=Electrodeposition of Cu on Ru Barrier Layers for Damascene Processing|journal=Journal of the Electrochemical Society|year=2006|volume=153|pages=C37–C50|doi=10.1149/1.2131826|last1=Moffat|first1=T. P.|last2=Walker|first2=M.|last3=Chen|first3=P. J.|last4=Bonevich|first4=J. E.|last5=Egelhoff|first5=W. F.|last6=Richter|first6=L.|last7=Witt|first7=C.|last8=Aaltonen|first8=T.|last9=Ritala|first9=M.|url=https://zenodo.org/record/1236224}}</ref>。銅はTaNにあまり接着しないが、Ruにはよく接着する。TaNバリア層上にルテニウムの層を堆積させることにより、銅の接着性が改善され、銅シード層の堆積は不要になる。

他にも提案されている用途がある。1990年、[[IBM]]の科学者は、ルテニウム原子の薄層が隣り合う[[強磁性]]層間に他の非磁性スペーサー層元素よりも強い反平行結合を作り出すことを発見した。このようなルテニウム層は[[ハードディスクドライブ]]の最初の[[巨大磁気抵抗効果|巨大磁気抵抗]]読み取り素子で使われていた。2001年、IBMは非公式には"pixie dust"と呼ばれ、現在のハードディスクドライブメディアのデータ密度を4倍にすることができるルテニウム元素の3原子層を発表した<ref>{{cite journal|author=Hayes, Brian |title=Terabyte Territory|journal=American Scientist|volume= 90|issue=3|year=2002|page=212|url=http://www.americanscientist.org/issues/pub/terabyte-territory|doi=10.1511/2002.9.3287}}</ref>。


== 自然ルテニウム ==
== 自然ルテニウム ==
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== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* {{Cite |和書 |author = 桜井弘|title = 元素111の新知識|year = 1998、2005| page = 214|publisher =[[講談社]]|isbn=4-06-257192-7 |ref = harv |last=|first=}}
* {{Cite |和書 |author = 桜井弘|title = 元素111の新知識|year = 1998、2005| page = 214|publisher =[[講談社]]|isbn=4-06-257192-7 |ref = harv |last=|first=}}
* {{Greenwood&Earnshaw2nd}}
* {{cite book | editor= Haynes, William M. | date = 2016| title = CRC Handbook of Chemistry and Physics | edition = 97th | publisher = [[CRC Press]] | isbn = 9781498754293| title-link = CRC Handbook of Chemistry and Physics}}
{{Commons|Ruthenium}}
{{Commons|Ruthenium}}



2020年3月28日 (土) 11:22時点における版

テクネチウム ルテニウム ロジウム
Fe

Ru

Os
Element 1: 水素 (H),
Element 2: ヘリウム (He),
Element 3: リチウム (Li),
Element 4: ベリリウム (Be),
Element 5: ホウ素 (B),
Element 6: 炭素 (C),
Element 7: 窒素 (N),
Element 8: 酸素 (O),
Element 9: フッ素 (F),
Element 10: ネオン (Ne),
Element 11: ナトリウム (Na),
Element 12: マグネシウム (Mg),
Element 13: アルミニウム (Al),
Element 14: ケイ素 (Si),
Element 15: リン (P),
Element 16: 硫黄 (S),
Element 17: 塩素 (Cl),
Element 18: アルゴン (Ar),
Element 19: カリウム (K),
Element 20: カルシウム (Ca),
Element 21: スカンジウム (Sc),
Element 22: チタン (Ti),
Element 23: バナジウム (V),
Element 24: クロム (Cr),
Element 25: マンガン (Mn),
Element 26: 鉄 (Fe),
Element 27: コバルト (Co),
Element 28: ニッケル (Ni),
Element 29: 銅 (Cu),
Element 30: 亜鉛 (Zn),
Element 31: ガリウム (Ga),
Element 32: ゲルマニウム (Ge),
Element 33: ヒ素 (As),
Element 34: セレン (Se),
Element 35: 臭素 (Br),
Element 36: クリプトン (Kr),
Element 37: ルビジウム (Rb),
Element 38: ストロンチウム (Sr),
Element 39: イットリウム (Y),
Element 40: ジルコニウム (Zr),
Element 41: ニオブ (Nb),
Element 42: モリブデン (Mo),
Element 43: テクネチウム (Tc),
Element 44: ルテニウム (Ru),
Element 45: ロジウム (Rh),
Element 46: パラジウム (Pd),
Element 47: 銀 (Ag),
Element 48: カドミウム (Cd),
Element 49: インジウム (In),
Element 50: スズ (Sn),
Element 51: アンチモン (Sb),
Element 52: テルル (Te),
Element 53: ヨウ素 (I),
Element 54: キセノン (Xe),
Element 55: セシウム (Cs),
Element 56: バリウム (Ba),
Element 57: ランタン (La),
Element 58: セリウム (Ce),
Element 59: プラセオジム (Pr),
Element 60: ネオジム (Nd),
Element 61: プロメチウム (Pm),
Element 62: サマリウム (Sm),
Element 63: ユウロピウム (Eu),
Element 64: ガドリニウム (Gd),
Element 65: テルビウム (Tb),
Element 66: ジスプロシウム (Dy),
Element 67: ホルミウム (Ho),
Element 68: エルビウム (Er),
Element 69: ツリウム (Tm),
Element 70: イッテルビウム (Yb),
Element 71: ルテチウム (Lu),
Element 72: ハフニウム (Hf),
Element 73: タンタル (Ta),
Element 74: タングステン (W),
Element 75: レニウム (Re),
Element 76: オスミウム (Os),
Element 77: イリジウム (Ir),
Element 78: 白金 (Pt),
Element 79: 金 (Au),
Element 80: 水銀 (Hg),
Element 81: タリウム (Tl),
Element 82: 鉛 (Pb),
Element 83: ビスマス (Bi),
Element 84: ポロニウム (Po),
Element 85: アスタチン (At),
Element 86: ラドン (Rn),
Element 87: フランシウム (Fr),
Element 88: ラジウム (Ra),
Element 89: アクチニウム (Ac),
Element 90: トリウム (Th),
Element 91: プロトアクチニウム (Pa),
Element 92: ウラン (U),
Element 93: ネプツニウム (Np),
Element 94: プルトニウム (Pu),
Element 95: アメリシウム (Am),
Element 96: キュリウム (Cm),
Element 97: バークリウム (Bk),
Element 98: カリホルニウム (Cf),
Element 99: アインスタイニウム (Es),
Element 100: フェルミウム (Fm),
Element 101: メンデレビウム (Md),
Element 102: ノーベリウム (No),
Element 103: ローレンシウム (Lr),
Element 104: ラザホージウム (Rf),
Element 105: ドブニウム (Db),
Element 106: シーボーギウム (Sg),
Element 107: ボーリウム (Bh),
Element 108: ハッシウム (Hs),
Element 109: マイトネリウム (Mt),
Element 110: ダームスタチウム (Ds),
Element 111: レントゲニウム (Rg),
Element 112: コペルニシウム (Cn),
Element 113: ニホニウム (Nh),
Element 114: フレロビウム (Fl),
Element 115: モスコビウム (Mc),
Element 116: リバモリウム (Lv),
Element 117: テネシン (Ts),
Element 118: オガネソン (Og),
Ruthenium has a hexagonal crystal structure
44Ru
外見
銀白色
一般特性
名称, 記号, 番号 ルテニウム, Ru, 44
分類 遷移金属
, 周期, ブロック 8, 5, d
原子量 101.07
電子配置 [Kr] 4d7 5s1
電子殻 2, 8, 18, 15, 1(画像
物理特性
密度室温付近) 12.45 g/cm3
融点での液体密度 10.65 g/cm3
融点 2607 K, 2334 °C, 4233 °F
沸点 4423 K, 4150 °C, 7502 °F
融解熱 38.59 kJ/mol
蒸発熱 591.6 kJ/mol
熱容量 (25 °C) 24.06 J/(mol·K)
蒸気圧
圧力 (Pa) 1 10 100 1 k 10 k 100 k
温度 (K) 2588 2811 3087 3424 3845 4388
原子特性
酸化数 8, 7, 6, 4, 3, 2, 1,[1], -2(弱酸性酸化物
電気陰性度 2.3(ポーリングの値)
イオン化エネルギー 第1: 710.2 kJ/mol
第2: 1620 kJ/mol
第3: 2747 kJ/mol
原子半径 134 pm
共有結合半径 146±7 pm
その他
結晶構造 六方晶系
磁性 常磁性[2]
電気抵抗率 (0 °C) 71 nΩ⋅m
熱伝導率 (300 K) 117 W/(m⋅K)
熱膨張率 (25 °C) 6.4 μm/(m⋅K)
音の伝わる速さ
(微細ロッド)
(20 °C) 5970 m/s
ヤング率 447 GPa
剛性率 173 GPa
体積弾性率 220 GPa
ポアソン比 0.30
モース硬度 6.5
ブリネル硬度 2160 MPa
CAS登録番号 7440-18-8
主な同位体
詳細はルテニウムの同位体を参照
同位体 NA 半減期 DM DE (MeV) DP
96Ru 5.52% 中性子52個で安定
97Ru syn 2.9 d ε - 97Tc
γ 0.215, 0.324 -
98Ru 1.88% 中性子54個で安定
99Ru 12.7% 中性子55個で安定
100Ru 12.6% 中性子56個で安定
101Ru 17.0% 中性子57個で安定
102Ru 31.6% 中性子58個で安定
103Ru syn 39.26 d β- 0.226 103Rh
γ 0.497 -
104Ru 18.7% 中性子60個で安定
106Ru syn 373.59 d β- 3.54 106Rh

ルテニウム: ruthenium [ruːˈθiːniəm] )は原子番号44の元素元素記号Ru白金族元素の1つ。貴金属にも分類される。銀白色の硬くて脆い金属(遷移金属)で、比重は12.43、融点は2583K (2310℃)、沸点は4173K(3900℃)。常温、常圧で安定な結晶構造は、六方最密充填構造 (HCP)。酸化腐食を受けにくく、展性に富み比重が大きい。この性質は白金(Pt)と同じであり、王水には侵されない。

名称

ラテン語ルーシを表すルテニアが元素名の由来[3]

漢字では釕(かねへんに了)と表記される。

特性

物理的特性

ルテニウム金属の気相成長結晶

多価の硬質白色金属であるルテニウムは、白金族元素であり、第8族元素に属する。

Z 元素 電子/殻の数
26 2, 8, 14, 2
44 ルテニウム 2, 8, 18, 15, 1
76 オスミウム 2, 8, 18, 32, 14, 2
108 ハッシウム 2, 8, 18, 32, 32, 14, 2

他の全ての第8族元素は最外殻に2つの電子を持っているが、ルテニウムは1つしか持っていない(最後の電子は下の殻にある)。この例外は近くの金属であるニオブ(41)、モリブデン(42)、ロジウム(45)でも観察される。

4つの結晶変態があり、周囲の条件で変色しない。800 °C (1,070 K)に加熱すると酸化する。溶融アルカリに溶けてルテニウム酸塩(RuO2−
4
)を生じ、酸(王水でも)に攻撃されないが、高温でハロゲンに攻撃される[4]。実際、ルテニウムは酸化剤により最も容易に攻撃される[5]。少量のルテニウムはプラチナパラジウムの硬度を高めることができる。チタン腐食耐性は少量のルテニウムを添加することにより著しく向上する[4]電気めっきおよび熱分解によりめっきすることができる。ルテニウム-モリブデン合金は10.6K未満の温度で超伝導であることが知られている[4]。酸化数+8をとることができると推定される最後の4d遷移元素であり、それでも同族のオスミウムより不安定である。これは2行目と3行目の遷移金属が化学的振る舞いに顕著な違いを示す族で周期表の左から1番目のものである。鉄と同様であるがオスミウムとは異なり、+2と+3の低い酸化数で水カチオンを形成できる[6]

ルテニウムは、モリブデンで見られる最大値に続く4d遷移金属の原子化エンタルピーと融点・沸点の減少傾向の最初のものである。これは4d亜殻が半分以上満たされ、電子が金属結合に寄与しないためである(1つ前の元素であるテクネチウムの値は非常に低く半分満たされた[Kr]4d55s2配置によりこの傾向から外れているが、3d遷移におけるマンガンほど4dにおける傾向は離れていない)[7]。軽い同族の鉄とは異なり、室温でも常磁性であり、キュリー点も鉄より高い[8]

一般的なルテニウムイオンに対する酸性水溶液の還元電位を以下に示す[9]

0.455 V Ru2+ + 2e ↔ Ru
0.249 V Ru3+ + e ↔ Ru2+
1.120 V RuO2 + 4H+ + 2e ↔ Ru2+ + 2H2O
1.563 V RuO2−
4
+ 8H+ + 4e
↔ Ru2+ + 4H2O
1.368 V RuO
4
+ 8H+ + 5e
↔ Ru2+ + 4H2O
1.387 V RuO4 + 4H+ + 4e ↔ RuO2 + 2H2O

同位体

天然のルテニウムは7つの安定同位体で構成される。さらに34個の放射性同位体が発見されている、これらの放射性同位体のうち最も安定しているのは半減期が373.59日の106Ru、39.26日の103Ru、2.9日の97Ruである[10][11]

15個の放射性同位体は89.93 u (90Ru) から114.928 u (115Ru) の原子量で特徴づけられる。これらのほとんどは95Ru(半減期: 1.643時間)および105Ru(半減期: 4.44時間)を除き半減期は5分未満である[10][11]

最も豊富にある同位体である102Ruの前の主な崩壊モードは電子捕獲であり、後の主なモードはベータ放出である。102Ru前の主な崩壊生成物はテクネチウムであり、後の主な崩壊生成物はロジウムである[10][11]

発生

地球の地殻で74番目に豊富な元素であり、比較的まれであり[12]、約100pptである[13]。一般的にウラル山脈および南北アメリカの他の白金族金属の鉱石に含まれる。少量であるが商業的に重要な量は、カナダオンタリオ州サドバリーで採掘されたペントランド鉱で見られ、南アフリカ輝岩(パイロキシナイト)鉱床にも見られる。ルテニウムの天然のものは非常にまれな鉱物である(Irはその構造においてRuの一部の代わりをする)[14][15]

生産

毎年およそ30トンのルテニウムが採掘され[16]、世界の埋蔵量は5,000トンと推定されている[12]。採掘される白金族金属(PGM)混合物の組成はその地球化学的形成により大きく異なる。例えば、南アフリカで採掘されるPGMには平均11%のルテニウムが含まれているが、旧ソ連で採掘されたPGMにはわずか2%(1992年)しか含まれていない[17][18]。ルテニウム、オスミウム、イリジウムは量の少ないマイナーな白金族金属とみなされている[8]

ルテニウムは他の白金族金属と同様にニッケルからの副産物や白金金属鉱石処理から商業的に得られる。銅とニッケルの電解精錬中に銀、金、白金族金属などの貴金属が摘出の原料である陽極泥として沈殿する[14][15]。金属は原料の組成によりいくつかの方法のいずれかによりイオン化溶質に変化される。代表的な方法の1つは、過酸化ナトリウムに溶解させた後王水に溶かし、その後塩素塩酸の混合液へ溶解する方法である[19][20]オスミウム、ルテニウム、ロジウムイリジウムは王水に不溶であり、容易に沈殿し、他の金属は溶液に残る。ロジウムは溶解硫酸水素ナトリウムで処理することで残留物から分離される。Ru, Os, Irを含む不溶性残留物はIrが不溶である酸化ナトリウムで処理され、溶解したRuとOs塩を生成する。揮発性酸化物へ酸化した後、塩化アンモニウムによる(NH4)3RuCl6の沈殿、または揮発性四酸化オスミウムの有機溶媒による蒸留または摘出により、RuO4OsO4より分離される[21]。塩化ルテニウムアンモニウムを還元して粉末を生成するには水素が使われる[4][22]。生産物は水素を用いて還元され、粉末冶金技術もしくはアルゴンアーク溶接で処理される粉末もしくはスポンジ金属として生成される[4][23]

ルテニウムの化合物

ルテニウムの酸化数は、0から+8および-2の範囲である。ルテニウムとオスミウムの化合物の特性は多くの点で類似している。+2, +3, +4が最も一般的である。最も一般的な前駆体三塩化ルテニウムであり、化学的に明確に定義されているわけではないが、合成的に汎用性の高い赤い固体である[22]

酸化物とカルコゲン化合物

ルテニウムは酸化ルテニウム(IV)(RuO2、酸化数+4)に酸化することができ、さらにこれは過ヨウ素酸ナトリウムにより酸化され、揮発性で黄色四面体である四酸化ルテニウム(RuO4)となる。これは四酸化オスミウムに類似した構造と特性を持つ強力な酸化剤である。RuO4は主に鉱石や放射性廃棄物からルテニウムを精製する際の中間体として使われる[24]

ルテニウム酸二カリウム(K2RuO4, +6)および過ルテニウム酸カリウム(KRuO4, +7)も知られている[25]。四酸化オスミウムとは異なり、四酸化ルテニウムは安定性が低く、室温で希塩酸エタノールなどの有機溶媒を酸化する酸化剤として働くほど強く、アルカリ水溶液中で簡単にルテニウム酸塩(RuO2−
4
)に還元され、100 ℃以上では分解して二酸化物を形成する。鉄とは異なるがオスミウムとは同様に、ルテニウムは+2と+3の低い酸化数では酸化物を形成しない[26]。ルテニウムは、黄鉄鉱構造で結晶化する反磁性半導体である二カルコゲン化物を形成する[26]。硫化ルテニウム(RuS2)は鉱物のラウラ鉱として自然に生じる。

鉄と同様に、ルテニウムはオキソアニオンを容易に形成せず、その代わりに水酸化物イオンで高い配位数となる。四酸化ルテニウムは低温の希水酸化カリウムにより還元され、ルテニウムの酸化数+7である黒色の過ルテニウム酸カリウム(KRuO4)を形成する。過ルテニウム酸カリウムは、ルテニウム酸カリウム(K2RuO4)を塩素ガスにより参加することによっても得られる。過ルテニウム酸イオンは不安定であり、水により還元されてオレンジ色のルテニウム酸塩を形成する。ルテニウム酸カリウムは金属ルテニウムを溶解した水酸化カリウムおよび硝酸カリウムと反応させることで合成できる[27]

MIIRuIVO3, Na3RuVO4, Na
2
RuV
2
O
7
, MII
2
LnIII
RuV
O
6
などの混合酸化物も知られる[27]

ハロゲン化合物およびオキシハロゲン化合物

最も有名なハロゲン化ルテニウムは、六フッ化物であり、これは54  ℃で溶解する暗褐色の固体である。水と触れると激しく加水分解し、容易に不均一化し低フッ化ルテニウムの混合物を形成しフッ素ガスを放出する。五フッ化ルテニウムも容易に加水分解され、86.5 ℃で溶解する四量体の暗緑色の固体である。黄色の四フッ化ルテニウムもおそらく重合体であり、五フッ化物をヨウ素で還元することで形成できる。ルテニウムの二元化合物のうち、これらの高い酸化数は酸化物とフッ化物でのみみられる[28]

三塩化ルテニウムはよく知られた化合物であり、黒色のα型と暗褐色のβ型で存在する。三水和物は赤色である[29]。既知の三ハロゲン化物のうち、三フッ化物は暗褐色で650 ℃以上で分解し、四臭化物は暗褐色で400 ℃以上で分解し、三ヨウ化物は黒色である[28]。二ハロゲン化物のうち、二フッ化物は知られておらず、二塩化物は茶色、二臭化物は黒色、二ヨウ化物は青色である[28]。唯一知られているオキシハロゲン化物は淡緑色のルテニウム(VI)オキシフッ化物RuOF4である[29]

配位および有機金属錯体

トリス(ビピリジン)塩化ルテニウム(II)
Skeletal formula of Grubbs' catalyst.
アルケンのメタセシス反応に使われるグラブス触媒。考案者であるロバート・グラブスはこの業績によりノーベル賞を受賞している。

ルテニウムはさまざまな配位錯体を形成する。例えば、Ru(II)とRu(III)の両方によく存在する多くのペンタアンミン誘導体[Ru(NH3)5L]n+である。ビピリジンターピリジン英語版の誘導体は多くあり、発光性のトリス(ビピリジン)塩化ルテニウム(II)が最もよく知られる。

ルテニウムは炭素-ルテニウム結合により幅広い化合物を形成する。グラブス触媒はアルケンのメタセシスに用いられる[30]ルテノセンは構造がフェロセンと似ているが、独特の酸化還元特性を示す。無色の液体ペンタカルボニルルテニウムはCO圧力の非存在下で暗赤色の固体ドデカカルボニル三ルテニウムに変化する。三塩化ルテニウムは一酸化炭素と反応してRuHCl(CO)(PPh3)3やRu(CO)2(PPh3)3(ローパー錯体)などの多くの誘導体を生成する。アルコール中の三塩化ルテニウムとトリフェニルホスフィンの加熱した溶液はトリス(トリフェニルホスフィン)二塩化ルテニウム (RuCl2(PPh3)3)を生成し、これはヒドリド錯体であるクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II) (RuHCl(PPh3)3)に変化する[22]

歴史

6種類の白金族元素全てを含む天然の白金合金はコロンブス以前のアメリカ人により長い間使用され、16世紀半ばよりヨーロッパの化学者にも材料として知られていたが、18世紀半ばまでプラチナは純元素として識別されなかった。天然のプラチナにパラジウム、ロジウム、オスミウム、イリジウムが含まれていることは19世紀の初め10年で発見された[31]。ロシアの川の沖積層の砂に含まれるプラチナは1828年からプレートやメダルへの使用や、ルーブル硬貨の鋳造の原料となった[32]。貨幣用のプラチナを生産した後の残留物はロシア帝国で使うことができたため、その研究のほとんどは東ヨーロッパで行われた。

ポーランドの化学者Jędrzej Śniadeckiは1807年に南アメリカのプラチナ鉱石から元素44(少し前に小惑星ベスタが発見されたため「ベスティウム」と呼んだ)を分離した可能性がある[33]。しかし、この成果は認められることはなく、後に発見の主張を撤回している[12]

イェンス・ベルセリウスGottfried Osannは1827年にルテニウムの発見に近づいた[34]。2人は王水ウラル山脈の粗プラチナを溶解した後に残った残留物を調査した。ベルセリウスは珍しい金属を発見しなかったが、Osannは3つの新たな金属を見つけたと考え、プルラニウム(pluranium)、ルテニウム、ポリニウム(polinium)と呼んだ[4]。この不一致により残留物の組成についてベルセリウスとOsannの間で長い間論争となった[35]。Osannはルテニウムの分離を再現することができなかったため、最終的に自身の主張を撤回した[35][36]。「ルテニウム」という名前は分析したサンプルがロシアのウラル山脈由来であったためOsannにより選ばれた[37]。この名前自体は現在のウクライナベラルーシロシア西部、スロバキアポーランドの一部を含む歴史的地域であるRus'のラテン語名であるルテニアに由来する。

1844年、バルト・ドイツ系のロシアの科学者カール・クラウスがGottfried Osannの調製した化合物に少量のルテニウムが含まれていることを示した[4][31]カザン大学で研究していた時にルーブルを生産したときのプラチナ残留物からルテニウムを分離した[35]。これは40年前にこれより重い同族元素のオスミウムが発見された手法と同じである[13]。クラウスは酸化ルテニウムに新しい金属が含まれており、王水に溶けない粗プラチナの部分から6gのルテニウムを得たことを示した[35]。新たな元素の名前を選び、クラウスは「祖国に敬意を表して新たな物質にルテニウムと名前をつけました。Osann氏が自身のルテニウムを放棄したが、この言葉は化学にはまだ存在しないため、私はこの名前でそれを呼ぶ権利がありました」と述べている[35][38]

用途

2016年におよそ30.9トンのルテニウムが消費され、そのうち13.8トンが電気、7.7トンが触媒、4.6トンが電気化学であった[16]

ルテニウムは白金とパラジウムの合金を硬化させるため、電気接触に使われる。この接触部では薄膜で十分な耐久性が得られる。ロジウムと同様の特性で低価格であり[23]、電気接触はルテニウムの主な用途である[14][39]。ルテニウム板は電気めっき[40]またはスパッタリング[41]により電気接触および電極母材に用いられている。

ビスマスのルテニウム酸塩を含む二酸化ルテニウムは、厚膜チップ抵抗器に使われる[42][43][44]。これら2つの電子用途がルテニウム消費量の50%を占める[12]

ルテニウムが白金族以外の金属と合金になることはほとんどないが、少量含むといくつかの特性が改善する。チタン合金に加えられた耐腐食性が0.1%のルテニウムを含む特別な合金の開発につながった[45]ジェットエンジンのタービン含む用途で、一部の高度な高温単結晶超合金にも使われている。EPM-102(3%のルテニウム)、TMS-162(6%のルテニウム)、TMS-138[46]およびTMS-174[47][48]などいくつかのニッケルをベースにした超合金組成がある。後者2つは6%のレニウムを含む[49]万年筆のペン先(ニブ)には、しばしばルテニウムの合金が付けられている。1944年以降、万年筆 Parker 51 には"RU"ペン先(96.2%のルテニウムと3.8%のイリジウムがついた14Kの金のペン先)が取り付けられた[50]

ルテニウムは、地下および水中の構造物のカソード防食、および塩水からの塩素製造プロセスの電解槽に用いられる混合金属酸化物(MMO)アノードの構成要素である[51]。一部のルテニウム錯体の蛍光は酸素により消えるため、酸素のオプトードセンサにおける使用が見いだされる[52]ルテニウムレッド英語版[(NH3)5Ru-O-Ru(NH3)4-O-Ru(NH3)5]6+は、光学顕微鏡電子顕微鏡のためにペクチン核酸などのポリアニオン分子の染色に用いられる生物学的染色剤である[53]。ルテニウムのベータ崩壊同位体106は眼腫瘍、主にぶどう膜悪性黒色腫の放射線治療に用いられる[54]。ルテニウム中心の錯体は抗がん特性の可能性に対して研究されている[55]。白金の錯体と比較して、ルテニウムの錯体は加水分解に対してより大きな耐性と腫瘍に対するより選択的な作用を示す[要出典]

四酸化ルテニウムは、脂肪油または皮脂性の汚染物質についた脂肪と接触すると反応し褐色/黒色の二酸化ルテニウム顔料を生成することにより、見えない指紋を浮き出させる[56]

触媒

ルテニウム触媒ナノ粒子がインターカレートされたハロイサイトナノチューブ[57]

多くのルテニウム含有化合物は、有用な触媒特性を示す。触媒は反応媒体に溶解する均一触媒、およびそうではない不均一触媒に分けられる。

ルテニウムナノ粒子はハロイサイト内で形成できる。この豊富にある鉱物は自然に圧延ナノシート(ナノチューブ)の構造を持ち、その後の工業用触媒での使用に対してRuナノクラスター合成とその製造の両方を支持する[57]

均一触媒

三塩化ルテニウムを含む溶液は、オレフィンのメタセシス反応に対して非常に活性がある。このような触媒は例えばポリノルボルネンの製造に対して商業的に使用されている[58]。はっきり定義されたルテニウムカルベンおよびアルキリデン錯体は、似た反応性を示し、工業プロセスに対する機構的な洞察を提供する[59]。例えば、グラブス触媒は医薬品や先端材料の調合に用いられている。

RuCl3触媒による開環メタセシス重合反応によりポリノルボルネンが得られる

ルテニウム錯体は移動水素化("borrowing hydrogen"反応とも呼ばれる)に対して活性の高い触媒である。このプロセスは、ケトンアルデヒドイミンエナンチオ選択的水素化に使われる。この反応は野依良治により導入されたキラルなルテニウム錯体を用いる[60]。例えば、 (シメン)Ru(S,S-TsDPEN)は、ベンジルの(R,R)-ヒドロベンゾインへの水素化を触媒する。この反応ではギ酸塩と水/アルコールがH2源になる[61][62]

[触媒RuCl(S,S-TsDPEN)(シメン)]による(R,R)-ヒドロベンゾイン合成(収率100%, ee >99%)

2001年のノーベル化学賞は、不斉水素化の分野への貢献で野依良治に贈られた。

2012年、有機ルテニウム触媒を研究する北野政明と共同研究者は、電子供与体および可逆水素貯蔵として安定したエレクトライドを用いるアンモニア合成を実証した[63]。地方の農業で用いるための小規模で断続的なアンモニアの生産は、孤立した地方の施設で風力タービンにより生成される電力のシンクとして電気グリッド接続の実行可能な代替物であるかもしれない[要出典]

不均一触媒

ルテニウムに促進されたコバルト触媒はフィッシャー・トロプシュ法で使われる[64]

新たに出てきている用途

いくつかのルテニウム錯体は可視スペクトル全体で光を吸収し、太陽エネルギー技術のために活発に研究されている。例えば、ルテニウムをベースとした化合物は有望な新しい低コストの太陽電池システムである色素増感太陽電池の光吸収に使われている[65]

多くのルテニウムベースの酸化物は、量子臨界点の挙動[66]、エキゾチック超伝導ルテニウム酸ストロンチウム英語版で)[67]、高温強磁性[68]などとても異常な特性を示す。

マイクロエレクトロニクスにおけるルテニウム薄膜の適用

比較的最近に、ルテニウムはマイクロエレクトロニクスの部品内の金属やケイ化物を有益に置き換えることができる材料として提案されている。四酸化ルテニウム(RuO4)は揮発性が高く、三酸化ルテニウム(RuO3)も同様である[69]。ルテニウムを(例えば酸素プラズマで)揮発性酸化物に酸化することで、簡単にパターン化することができる[70][71][72][73]。一般的な酸化ルテニウムの特性により、ルテニウムはマイクロエレクトロニクスの製造に必要な半導体プロセス技術と互換性のある金属となる。

マイクロエレクトロニクスの小型化を続けていくためには、寸法の変化に合わせて新たな材料が必要である。マイクロエレクトロニクスのルテニウム薄膜には主に3つの用途がある。1つ目は次世代の3次元DRAMにおいて五酸化タンタル(Ta2O5)やチタン酸バリウムストロンチウム((Ba, Sr)TiO3、BSTとしても知られる)の両側の電極としてルテニウム薄膜を用いることである[74][75][76]。ルテニウム薄膜電極は別のRAMであるFRAMのチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(ZrxTi1−x)O3、PZTとしても知られる)の上に堆積もできる[77][78]。白金は実験室ではRAMの電極として使われているが、パターン化するのは難しい。ルテニウムは白金と化学的に似ており、RAMの機能を維持するが白金のパターニングとは異なり簡単である。2つ目はpドープMOSFETの金属ゲートとしてルテニウムの薄膜を使うことである[79]。MOSFETのシリサイドゲートを金属ゲートに置き換える場合、金属の重要となる特性は仕事関数である。仕事関数は周囲の材料と一致する必要がある。p-MOSFETの場合、ルテニウムの仕事関数はHfO2, HfSiOx, HfNOx, HfSiNOxなどの周囲の材料と一致する最高の材料特性であり、所望の電気特性が達成される。ルテニウム膜の3つ目の大規模な用途は、銅デュアルダマシンプロセスにおけるTaNとCuの間の接着促進剤と電気めっきシード層の組み合わせである[80][81][82][83][84]。窒化タンタルとは対照的に銅はルテニウム上に直接電気めっきできる[85]。銅はTaNにあまり接着しないが、Ruにはよく接着する。TaNバリア層上にルテニウムの層を堆積させることにより、銅の接着性が改善され、銅シード層の堆積は不要になる。

他にも提案されている用途がある。1990年、IBMの科学者は、ルテニウム原子の薄層が隣り合う強磁性層間に他の非磁性スペーサー層元素よりも強い反平行結合を作り出すことを発見した。このようなルテニウム層はハードディスクドライブの最初の巨大磁気抵抗読み取り素子で使われていた。2001年、IBMは非公式には"pixie dust"と呼ばれ、現在のハードディスクドライブメディアのデータ密度を4倍にすることができるルテニウム元素の3原子層を発表した[86]

自然ルテニウム

1973年に北海道雨竜川で、ルテニウムを最も含む白金族元素の合金が発見され、命名規則から自然ルテニウム (Ruthenium) と登録された。日本で発見された初の元素鉱物新鉱物である。

脚注

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