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「アルタイル」の版間の差分

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{{Otheruses|恒星のアルタイル|その他}}
{{Otheruses|恒星のアルタイル|その他}}
{{天体 基本
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| 幅 = 320px
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| 色 = 恒星
| 和名 = アルタイル
| 和名 = アルタイル
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| 半径 = 1.63 - 2.03 [[太陽半径|''R''<sub>☉</sub>]]{{R|Monnier2007}}
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| 質量 = 1.79 ± 0.018 [[太陽質量|''M''<sub>☉</sub>]]{{R|Monnier2007}}
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| 表面重力 = 4.29 (log ''g''){{R|Malagnini1990}}
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| 自転周期 = 6.5 - 10.4 時間
| 自転周期 = 8.9 時間{{R|Peterson2006}}
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| 自転速度 = 242 km/s{{R|yale}}
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| スペクトル分類 = A7Vn{{R|simbad}}
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| 表面温度 = 6,900 - 8,500 [[ケルビン|K]]{{R|Monnier2007}}
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| 最小表面温度 =
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| 平均表面温度 =
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| 色指数_UB = +0.08{{R|yale}}
| 色指数_UB = +0.08{{R|yale}}
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| 色指数_RI = +0.14{{R|yale}}
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| 金属量 = -0.2{{R|Monnier2007}}
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{{天体 別名称
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| 色 = 恒星
| 別名称 = 牽牛、彦星<br />わし座53番星{{R|simbad}}<br />[[ボン掃天星表|BD]] +08 4236{{R|simbad}}, [[基本星表|FK5]] 745{{R|simbad}}<br />[[ヘンリー・ドレイパーカタログ|HD]] 187642{{R|simbad}}, [[ヒッパルコスカタログ|HIP]] 97649{{R|simbad}}<br />[[輝星星表|HR]] 7557{{R|simbad}}, [[スミソニアン天文台星表|SAO]] 125122{{R|simbad}}<br />[[星表#固有運動カタログ|LTT]]15795{{R|simbad}}
| 別名称 = 牽牛、彦星<br />わし座53番星{{R|simbad}}<br />[[ボン掃天星表|BD]] +08 4236{{R|simbad}}<br>[[基本星表|FK5]] 745{{R|simbad}}<br />[[ヘンリー・ドレイパーカタログ|HD]] 187642{{R|simbad}}<br>[[ヒッパルコスカタログ|HIP]] 97649{{R|simbad}}<br />[[輝星星表|HR]] 7557{{R|simbad}}<br>[[スミソニアン天文台星表|SAO]] 125122{{R|simbad}}<br />[[星表#固有運動カタログ|LTT]]15795{{R|simbad}}
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{{天体 終了
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| 色 = 恒星
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'''アルタイル'''{{R|nao_ac}}({{lang-en-short|Altair}}<ref group="注">{{IPAc-en|'|æ|l|t|ɛər|}} '''ア'''ルテア</ref>)もしくは'''わし座&alpha;星'''({{Lang-en|Alpha Aquilae}})は、[[わし座]]で最も明るい[[恒星]]で全天21の[[1等星]]の1つ。[[太陽系]]の近傍にある[[星間雲]]{{仮リンク|Gクラウド|en|G-Cloud}}の近くに位置している<ref>{{cite web|url=http://interstellar.jpl.nasa.gov/interstellar/probe/introduction/neighborhood.html|title=Our Local Galactic Neighborhood||publisher=[[NASA]]|accessdate=2019-07-07|archiveurl=https://web.archive.org/web/20131121061128/http://interstellar.jpl.nasa.gov/interstellar/probe/introduction/neighborhood.html|archivedate=2013-11-21|deadurl=yes}}</ref><ref>{{cite news|url=http://www.centauri-dreams.org/?p=14203|title=Into the Interstellar Void|last=Gilster|first=Paul|work=Centauri Dreams|date=2010-09-01|accessdate=2019-07-07}}</ref>。見かけの明るさが0.76[[等級 (天文)|等級]]の[[A型主系列星]]で{{R|simbad}}、[[七夕]]の'''彦星'''([[ひこぼし]]、'''牽牛星'''<small>(けんぎゅうせい)</small>とも)としてよく知られている。[[こと座]]の[[ベガ]]、[[はくちょう座]]の[[デネブ]]とともに、[[夏の大三角]]を形成している<ref>{{cite web|url=https://kotobank.jp/word/%E5%A4%8F%E3%81%AE%E5%A4%A7%E4%B8%89%E8%A7%92-686977|title=夏の大三角(ナツノダイサンカク)とは - コトバンク|work=[[コトバンク]]|accessdate=2019-07-09}}</ref><ref>{{cite web|url=http://www.astroarts.co.jp/special/2006summer/constellation-j.shtml|title=夏の星空を楽しもう|work=[[アストロアーツ|AstroArts]]|accessdate=2019-07-09}}</ref><ref>{{cite web|author=David Darling|url=http://www.daviddarling.info/encyclopedia/A/Altair.html|title=Altair|work=The Internet Encyclopedia of ScienceAccessed|accessdate=2019-07-09}}</ref><ref>{{cite web|author=David Darling|url=http://www.daviddarling.info/encyclopedia/S/Summer_Triangle.html|title=Summer Triangle|work=The Internet Encyclopedia of ScienceAccessed|accessdate=2019-07-09}}</ref>。太陽系からの距離は16.7 [[光年]](5.13 [[パーセク]])で、肉眼で観望することができる最も近い恒星の1つである<ref>{{cite book|title=The brightest stars : discovering the universe through the sky's most brilliant stars|last=Hoboken|first=Fred Schaaf|publisher=John Wiley & Sons, Inc.|year=2008|isbn=978-0-471-70410-2|location=New Jersey|page=190|oclc=440257051}}</ref>。


アルタイルは[[赤道]]上の表面速度が約286 km/sに達する高速な[[自転]]をしており{{R|Monnier2007}}、これは恒星が崩壊すると推定されている自転速度である400 km/s{{R|Robrade2009}}にかなり近い。[[パロマー天文台|パロマー試験干渉計]]を用いた研究では、アルタイルは球形ではなく、その速い自転により潰れた形状になっていることが明らかになった{{R|Belle2001}}。このことは、後に[[赤外線]]で動作する複数の望遠鏡を使った他の干渉計による研究で、この現象が画像化されたことで確認された{{R|Monnier2007}}。
'''アルタイル'''{{R|nao_ac}}({{lang-en-short|Altair}}<ref group="注">{{IPAc-en|'|æ|l|t|ɛər|}} '''ア'''ルテア</ref>)は、'''わし座&alpha;星'''、[[わし座]]で最も明るい[[恒星]]で全天21の[[1等星]]の1つ。[[七夕]]の'''彦星'''([[ひこぼし]]、'''牽牛星'''<small>(けんぎゅうせい)</small>とも)としてよく知られている。[[こと座]]の[[ベガ]]、[[はくちょう座]]の[[デネブ]]とともに、[[夏の大三角]]を形成している。


== 概要 ==
== 物理的特性 ==
[[Image:Altair_PR_image6_(white).jpg|thumb|left|upright|アルタイルの形状]]
{{Planetary radius
[[File:Altair-Sun comparison.png|thumb|left|upright|太陽とアルタイルの大きさの比較]]
| align =
アルタイルは、[[わし座ベータ星|わし座&beta;星]]と[[わし座ガンマ星|わし座&gamma;星]]と共に有名な恒星の並びを形作っている{{sfnp|Schaaf|2008|p=190}}。
| base = Sun
| Exoplanet = アルタイル
| radius = 183
}}
[[シリウス]]に似ているが、アルタイルは非常に若い恒星(おそらくは数億歳)であるため、[[水素]]の[[核融合反応]]によって生じた[[ヘリウム]]が中心核を形成し、35億歳前後で[[赤色巨星]]へと変化して最終的に[[白色矮星]]になると考えられている。


アルタイルは非常に高速で自転(毎秒240キロ8.9時間で一周)るため、楕円とている。そのた赤道直径は極直径より14パーセント膨らんでいる。
アルタイルは[[太陽]]の約1.8倍の[[質量]]と約11倍の明るさを持つ[[A型主系列星]]である{{R|Monnier2007|Peterson2006}}。目まぐるしい[[自転]]しており自転周期は約9時間しかな。ちみに比較として、太陽の赤道付近は25日強で自転している。その急速な自転により、アルタイルは潰れ形状になり、その赤道直径は極直径よりも20%以上長くなっている{{R|Monnier2007}}


1999年に[[WIRE (人工衛星)|WIRE]]を用いて行われた衛星測定では、アルタイルの明るさはわずかに変動しており、2時間未満のいくつかの異なる周期で明るさ全体の数千分の1が変動していた{{R|Buzasi2005}}。その結果、2005年にアルタイルは[[たて座デルタ型変光星|たて座&delta;型変光星]]であると同定された。その[[光度曲線]]は、0.8~1.5時間周期の範囲で、多数の[[正弦波]]を足し合わせることで近似することができる{{R|Buzasi2005}}。この変光は[[コロナ]]の弱い[[X線]]放射が源になっており、最も活動的な放射源は恒星の赤道近くに位置している。この活動は、温度が比較的低くなっている赤道付近で形成される[[粒状斑|対流細胞]]によるものかもしれない{{R|Robrade2009}}。
周期約1.5時間の[[たて座デルタ型変光星|たて座&delta;型変光星]]であるという論文が2005年に発表されている<ref>Buzasi et al. 2005 The Astrophysical Journal 619, 1072</ref>。


1983年、[[森本雅樹]]、[[平林久]]により[[スタンフォード大学]]のアンテナからメッセージが送られた。これは日本人による初のMETI (Messaging to Extra-Terrestrial Intelligence) = Active SETI(能動的な[[地球外知的生命体探査]])である。
1983年、[[森本雅樹]]、[[平林久]]により[[スタンフォード大学]]のアンテナからメッセージが送られた。これは日本人による初のMETI (Messaging to Extra-Terrestrial Intelligence) = Active SETI(能動的な[[地球外知的生命体探査]])である。


=== 自転効果 ===
[[ハッブル宇宙望遠鏡]]を使用した調査では、アルタイルの周囲に観測可能な大きさの[[木星型惑星]]は確認されていない。
アルタイルの角直径は1960年代に[[ロバート・ハンブリー・ブラウン]]と彼の共同研究者らにより[[オーストラリア]]のNarrabri天文台で測定され、アルタイルの角直径は3[[秒 (角度)|ミリ秒]]とされた<ref>{{cite journal|title=The stellar interferometer at Narrabri Observatory-II. The angular diameters of 15 stars|last=Hanbury Brown|first=R.|last2=Davis|first2=J.|last3=Allen|first3=L. R.|last4=Rome|first4=J. M.|year=1967|journal=Monthly Notices of the Royal Astronomical Society|volume=137|pages=393–417|bibcode=1967MNRAS.137..393H}}</ref>。ブラウンらはアルタイルが自転により、アルタイルが潰れた形状になることも発見したが、その[[扁平率]]を測定するにはデータが不十分だった。1999年と2000年に[[パロマー天文台|パロマー試験干渉計]]を用いて行われた赤外線干渉測定によって、アルタイルがつぶれた形状に平坦化されていることが確認された。この研究成果は、2001年にG. T. van BelleとDavid R. Ciardi、そしてその共同研究者らによって発表された{{R|Belle2001}}。

理論上では、アルタイルは急速な自転により表面重力と表面温度の値は赤道で低くなり、赤道は極よりも明るくならないと予測されている。[[重力減光]]もしくは[[フォン・ツァイペル効果]]として知られるこの現象は、2001年に海軍精密光学干渉計(Navy Precision Optical Interferometer)によって行われた測定によるアルタイルで確認され、その後2004年にOhishiら、2006年にPetersonらによって分析されている{{R|Peterson2006}}<ref>{{cite journal|author=Naoko Ohishi|author2=Tyler E. Nordgren|author3=Donald J. Hutter|title=Asymmetric Surface Brightness Distribution of Altair Observed with the Navy Prototype Optical Interferometer|year=2004|journal=The Astrophysical Journal|volume=612|issue=1|pages=463–471|doi=10.1086/422422|bibcode=2004ApJ...612..463O}}</ref>。2005年には、Domiciano de Souzaらが[[超大型望遠鏡VLT|VLT干渉計]]に搭載されているVINCIによって行われた新たな測定と、パロマー天文台と海軍精密光学干渉計で得られていた測定を用いてアルタイルの重力減光を確認した<ref>{{cite journal|title=Gravitational-darkening of Altair from interferometry|author=A. Domiciano de Souza|author2=P. Kervella|author3=S. Jankov|author4=F. Vakili|author5=N. Ohishi|author6=T. E. Nordgren|author7=L. Abe|year=2005|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=442|issue=2|pages=567–578|doi=10.1051/0004-6361:20042476|bibcode=2005A&A...442..567D}}</ref>。

アルタイルは直接画像が得られている数少ない恒星の一つである{{R|nsf}}。2006年と2007年にJ. D. Monnierとその共同研究者らは、CHARAアレイ干渉計に搭載されているミシガン赤外線コンバイナ(Michigan Infrared Combiner)を用いて2006年に行われた赤外線観測を基にアルタイルの表面の画像を作成した。太陽以外の[[主系列星]]で表面が画像化されたのはこれが初めてであった{{R|nsf}}。擬似カラー画像は2007年に発表された。アルタイルの赤道半径は[[太陽半径]]の2.03倍、極半径は1.63倍と推定されており、赤道半径は極半径より25%長くなっている。[[自転軸]]は地球から見て約60度傾いている{{R|Robrade2009}}。


== 伴星 ==
== 伴星 ==
アルタイルは3個の伴星を持つ4重星であり、主星はWDS 19508+0852Aと名づけられている。3つの伴星それぞれ WDS 19508+0852B、WDS 19508+0852C、WDS 19508+0852D と呼ばれており、このうち少なくともB星は物理的にはA星と遠く離れている。
アルタイルはWDS 19508+0852Aと名づけられているが、その周囲には複数のかすかな[[二重星|見かけの伴星]]があり、それぞれWDS 19508+0852B、WDS 19508+0852C、WDS 19508+0852D と呼ばれている<ref>{{cite web|author=D. Hoffleit|author2=W. H. Warren, Jr.|url=http://webviz.u-strasbg.fr/viz-bin/VizieR-5?-out.add=.&-source=V/50/catalog&recno=7557|title=HR 7557|work=The Bright Star Catalogue, 5th Revised Ed. (Preliminary Version)|publisher=[[ストラスブール天文データセンター|CDS]]|accessdate=2019-07-09}}ID [http://vizier.u-strasbg.fr/viz-bin/Cat?V/50 V/50]</ref>


{|class="wikitable" border="1" cellspacing="0" cellpadding="2" style="text-align:center;"
{|class="wikitable" border="1" cellspacing="0" cellpadding="2" style="text-align:center;"
|+ WDS 19508+0852系([[J2000.0]])<ref>{{cite web|title=Entry 19508+0852|url=http://ad.usno.navy.mil/wds/Webtextfiles/wdsnewframe4.html|work=[[ワシントン重星カタログ|The Washington Double Star Catalog]]|publisher=[[アメリカ海軍天文台|United States Naval Observatory]]|accessdate=2019-07-09}}</ref>
|+ WDS 19508+0852<br />アルタイル星系 (J2000)
|- style="background:#efefef;"
|- style="background:#efefef;"
! - !! 赤経 !! 赤緯 !! 主星<br />との<br />間隔 !! 主星<br />から<br />方位 !! 実視等級
! - !! 赤経 !! 赤緯 !! 主星との間隔 !! 主星の方位各角 !! 実視等級
|-
|-
| B || {{RA|19|50|34.7272548287}} || {{DEC|+08|53|01.986803798}}<ref>{{cite web|url=http://simbad.u-strasbg.fr/simbad/sim-id?Ident=CCDM+19508%2B0852B|title=Results for BD+08 4232|work=SIMBAD Astronomical Database|publisher=CDS|accessdate=2019-07-09}}</ref> || 192.1″ || 287° || 9.69
| B || 19<sup>h</sup> 50<sup>m</sup> 40.5<sup>s</sup> || +08°52′13″ || 192.1″ || 287° || 9.82
|-
|-
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|-
|-
| D || - || - || 31.7″ || 97° || 11.9
| D || - || - || 31.7″ || 97° || 11.9
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=== 日本での名称 ===
=== 日本での名称 ===
[[和名類聚抄]]には「比古保之(ひこぼし)」の名と共に「'''以奴加比保之(いぬかいぼし)'''」の名前が伝えられている{{R|seimei}}。これは、[[わし座ベータ星|&beta;星]]、[[わし座ガンマ星|&gamma;星]]を両脇に従えた様子を、犬を引き連れている姿に見立てたものと考えられている{{R|seimei}}。[[福岡市]]で「いんかいぼし」、[[枕崎市]]で「いんこどん」、[[宇土市]]で「いぬひきどん」「いぬひきほしサン」など、九州地方の各地で同様の呼び名が残っていた{{R|seimei}}{{R|Hara}}。{{seealso|[[星・星座に関する方言#ベガ(こと座)とアルタイル(わし座)|アルタイル(わし座)の方言]]}}
[[和名類聚抄]]には「比古保之(ひこぼし)」の名と共に「'''以奴加比保之(いぬかいぼし)'''」の名前が伝えられている{{R|seimei}}。これは、[[わし座ベータ星|&beta;星]]、[[わし座ガンマ星|&gamma;星]]を両脇に従えた様子を、犬を引き連れている姿に見立てたものと考えられている{{R|seimei}}。[[福岡市]]で「いんかいぼし」、[[枕崎市]]で「いんこどん」、[[宇土市]]で「いぬひきどん」「いぬひきほしサン」など、九州地方の各地で同様の呼び名が残っていた{{R|seimei|Hara}}。{{seealso|[[星・星座に関する方言#ベガ(こと座)とアルタイル(わし座)|アルタイル(わし座)の方言]]}}


== 俗信 ==
== 俗信 ==
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=== 出典 ===
=== 出典 ===
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<ref name="Malagnini1990">{{cite journal|last=Malagnini|first=M. L.|last2=Morossi|first2=C.|title=Accurate absolute luminosities, effective temperatures, radii, masses and surface gravities for a selected sample of field stars|year=1990|journal=Astronomy and Astrophysics Supplement Series|volume=85|issue=3|pages=1015–1019|bibcode=1990A&AS...85.1015M}}</ref>

<ref name="yale">[[輝星星表]]第5版</ref>
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<ref name="nsf">{{cite web|url=https://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=109612|title=Gazing up at the Man in the Star? Press Release 07-062|work=National Science Foundation|date=2007-05-31|accessdate=2019-07-09}}</ref>

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== 関連項目 ==
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== 外部リンク ==
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2019年7月19日 (金) 14:07時点における版

アルタイル
Altair
NASAによるアルタイルの写真
NASAによるアルタイルの写真
仮符号・別名 わし座α星[1]
星座 わし座
見かけの等級 (mv) 0.76[1]
変光星型 たて座δ型[1](DSCTC)[2]
位置
元期:J2000.0[1]
赤経 (RA, α)  19h 50m 46.99855s[1]
赤緯 (Dec, δ) +08° 52′ 05.9563″[1]
赤方偏移 -0.000089[1]
視線速度 (Rv) -26.60 km/s[1]
固有運動 (μ) 赤経: 536.23 ミリ秒/年[1]
赤緯: 385.29 ミリ秒/年[1]
年周視差 (π) 194.95 ± 0.57ミリ秒[1]
(誤差0.3%)
距離 16.73 ± 0.05 光年[注 1]
(5.13 ± 0.01 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) 2.2[注 2]
物理的性質
半径 1.63 - 2.03 R[3]
質量 1.79 ± 0.018 M[3]
表面重力 4.29 (log g)[4]
自転速度 242 km/s[5]
自転周期 8.9 時間[6]
スペクトル分類 A7Vn[1]
光度 10.6 L[6]
表面温度 6,900 - 8,500 K[3]
色指数 (B-V) +0.22[5]
色指数 (U-B) +0.08[5]
色指数 (R-I) +0.14[5]
金属量[Fe/H] -0.2[3]
年齢 12億年[7]
他のカタログでの名称
牽牛、彦星
わし座53番星[1]
BD +08 4236[1]
FK5 745[1]
HD 187642[1]
HIP 97649[1]
HR 7557[1]
SAO 125122[1]
LTT15795[1]
Template (ノート 解説) ■Project

アルタイル[8]: Altair[注 3])もしくはわし座α星英語: Alpha Aquilae)は、わし座で最も明るい恒星で全天21の1等星の1つ。太陽系の近傍にある星間雲Gクラウド英語版の近くに位置している[9][10]。見かけの明るさが0.76等級A型主系列星[1]七夕彦星ひこぼし牽牛星(けんぎゅうせい)とも)としてよく知られている。こと座ベガはくちょう座デネブとともに、夏の大三角を形成している[11][12][13][14]。太陽系からの距離は16.7 光年(5.13 パーセク)で、肉眼で観望することができる最も近い恒星の1つである[15]

アルタイルは赤道上の表面速度が約286 km/sに達する高速な自転をしており[3]、これは恒星が崩壊すると推定されている自転速度である400 km/s[7]にかなり近い。パロマー試験干渉計を用いた研究では、アルタイルは球形ではなく、その速い自転により潰れた形状になっていることが明らかになった[16]。このことは、後に赤外線で動作する複数の望遠鏡を使った他の干渉計による研究で、この現象が画像化されたことで確認された[3]

物理的特性

アルタイルの形状
太陽とアルタイルの大きさの比較

アルタイルは、わし座β星わし座γ星と共に有名な恒星の並びを形作っている[17]

アルタイルは太陽の約1.8倍の質量と約11倍の明るさを持つA型主系列星である[3][6]。目まぐるしい速度で自転しており、自転周期は約9時間しかない。ちなみに比較として、太陽の赤道付近は25日強で自転している。その急速な自転により、アルタイルは潰れた形状になり、その赤道直径は極直径よりも20%以上長くなっている[3]

1999年にWIREを用いて行われた衛星測定では、アルタイルの明るさはわずかに変動しており、2時間未満のいくつかの異なる周期で明るさ全体の数千分の1が変動していた[18]。その結果、2005年にアルタイルはたて座δ型変光星であると同定された。その光度曲線は、0.8~1.5時間周期の範囲で、多数の正弦波を足し合わせることで近似することができる[18]。この変光はコロナの弱いX線放射が源になっており、最も活動的な放射源は恒星の赤道近くに位置している。この活動は、温度が比較的低くなっている赤道付近で形成される対流細胞によるものかもしれない[7]

1983年、森本雅樹平林久によりスタンフォード大学のアンテナからメッセージが送られた。これは日本人による初のMETI (Messaging to Extra-Terrestrial Intelligence) = Active SETI(能動的な地球外知的生命体探査)である。

自転効果

アルタイルの角直径は1960年代にロバート・ハンブリー・ブラウンと彼の共同研究者らによりオーストラリアのNarrabri天文台で測定され、アルタイルの角直径は3ミリ秒とされた[19]。ブラウンらはアルタイルが自転により、アルタイルが潰れた形状になることも発見したが、その扁平率を測定するにはデータが不十分だった。1999年と2000年にパロマー試験干渉計を用いて行われた赤外線干渉測定によって、アルタイルがつぶれた形状に平坦化されていることが確認された。この研究成果は、2001年にG. T. van BelleとDavid R. Ciardi、そしてその共同研究者らによって発表された[16]

理論上では、アルタイルは急速な自転により表面重力と表面温度の値は赤道で低くなり、赤道は極よりも明るくならないと予測されている。重力減光もしくはフォン・ツァイペル効果として知られるこの現象は、2001年に海軍精密光学干渉計(Navy Precision Optical Interferometer)によって行われた測定によるアルタイルで確認され、その後2004年にOhishiら、2006年にPetersonらによって分析されている[6][20]。2005年には、Domiciano de SouzaらがVLT干渉計に搭載されているVINCIによって行われた新たな測定と、パロマー天文台と海軍精密光学干渉計で得られていた測定を用いてアルタイルの重力減光を確認した[21]

アルタイルは直接画像が得られている数少ない恒星の一つである[22]。2006年と2007年にJ. D. Monnierとその共同研究者らは、CHARAアレイ干渉計に搭載されているミシガン赤外線コンバイナ(Michigan Infrared Combiner)を用いて2006年に行われた赤外線観測を基にアルタイルの表面の画像を作成した。太陽以外の主系列星で表面が画像化されたのはこれが初めてであった[22]。擬似カラー画像は2007年に発表された。アルタイルの赤道半径は太陽半径の2.03倍、極半径は1.63倍と推定されており、赤道半径は極半径より25%長くなっている。自転軸は地球から見て約60度傾いている[7]

伴星

アルタイルはWDS 19508+0852Aとも名づけられているが、その周囲には複数のかすかな見かけの伴星があり、それぞれWDS 19508+0852B、WDS 19508+0852C、WDS 19508+0852D と呼ばれている[23]

WDS 19508+0852系(J2000.0[24]
- 赤経 赤緯 主星との間隔 主星との方位各角 実視等級
B  19h 50m 34.7272548287s +08° 53′ 01.986803798″[25] 192.1″ 287° 9.69
C  19h 50m 59.5326076154s +08° 51′ 12.927277990″[26] 189.6″ 107° 10.32
D - - 31.7″ 97° 11.9

名称

固有名のアルタイルは、アラビア語で「飛翔する鷲」の意味である「النسر الطائر an-nasr aṭ-ṭā’ir (アン=ナスル・ッ=ターイル)」が短縮されたもの[27][注 4]で、実際のアラビア語でもアルタイルをالنسر الطائرと呼ぶ。2016年6月30日に国際天文学連合の恒星の命名に関するワーキンググループ (Working Group on Star Names, WGSN) は、Altair をわし座α星の固有名として正式に承認した[28]

日本での名称

和名類聚抄には「比古保之(ひこぼし)」の名と共に「以奴加比保之(いぬかいぼし)」の名前が伝えられている[29]。これは、β星γ星を両脇に従えた様子を、犬を引き連れている姿に見立てたものと考えられている[29]福岡市で「いんかいぼし」、枕崎市で「いんこどん」、宇土市で「いぬひきどん」「いぬひきほしサン」など、九州地方の各地で同様の呼び名が残っていた[29][30]

俗信

東洋
天の川を挟んで向かい合うこと座ベガ(織姫星)とともに、彦星として七夕の伝説を形成する。
西洋
西洋占星術では爬虫類による危害を表すとされた。

脚注

注釈

  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
  3. ^ [ˈæltɛər] ルテア
  4. ^ 「アルタイル」の直接の語源となったالطائر aṭ-ṭā’ir(アッターイル)の部分は「飛んでいる」という意味の形容詞طائرに定冠詞が付いたものである。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u SIMBAD Astronomical Database”. Results for V* alf Aql. 2016年11月14日閲覧。
  2. ^ GCVS”. Results for alf Aql. 2015年10月26日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h Monnier, J. D.; Zhao, M.; Pedretti, E.; Thureau, N.; Ireland, M.; Muirhead, P.; Berger, J. P.; Millan-Gabet, R. et al. (2007). “Imaging the surface of Altair”. Science 317 (5836): 342–345. arXiv:0706.0867. Bibcode2007Sci...317..342M. doi:10.1126/science.1143205. PMID 17540860. See second column of Table 1 for stellar parameters 
  4. ^ Malagnini, M. L.; Morossi, C. (1990). “Accurate absolute luminosities, effective temperatures, radii, masses and surface gravities for a selected sample of field stars”. Astronomy and Astrophysics Supplement Series 85 (3): 1015–1019. Bibcode1990A&AS...85.1015M. 
  5. ^ a b c d 輝星星表第5版
  6. ^ a b c d D. M. Peterson et al. (2006). “Resolving the Effects of Rotation in Altair with Long-Baseline Interferometry”. The Astrophysical Journal 636 (2): 1087–1097. Bibcode2006ApJ...636.1087P. doi:10.1086/497981. See Table 2 for stellar parameters. 
  7. ^ a b c d Robrade, J.; Schmitt, J. H. M. M. (2009). “Altair - the "hottest" magnetically active star in X-rays”. Astronomy and Astrophysics 497 (2): 511–520. arXiv:0903.0966. Bibcode2009A&A...497..511R. doi:10.1051/0004-6361/200811348. 
  8. ^ おもな恒星の名前”. こよみ用語解説. 国立天文台. 2018年11月14日閲覧。
  9. ^ Our Local Galactic Neighborhood”. NASA. 2013年11月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年7月7日閲覧。
  10. ^ Gilster, Paul (2010年9月1日). “Into the Interstellar Void”. Centauri Dreams. http://www.centauri-dreams.org/?p=14203 2019年7月7日閲覧。 
  11. ^ 夏の大三角(ナツノダイサンカク)とは - コトバンク”. コトバンク. 2019年7月9日閲覧。
  12. ^ 夏の星空を楽しもう”. AstroArts. 2019年7月9日閲覧。
  13. ^ David Darling. “Altair”. The Internet Encyclopedia of ScienceAccessed. 2019年7月9日閲覧。
  14. ^ David Darling. “Summer Triangle”. The Internet Encyclopedia of ScienceAccessed. 2019年7月9日閲覧。
  15. ^ Hoboken, Fred Schaaf (2008). The brightest stars : discovering the universe through the sky's most brilliant stars. New Jersey: John Wiley & Sons, Inc.. p. 190. ISBN 978-0-471-70410-2. OCLC 440257051 
  16. ^ a b Belle, Gerard T. van; Ciardi, David R.; Thompson, Robert R.; Akeson, Rachel L.; Lada, Elizabeth A. (2001). “Altair's Oblateness and Rotation Velocity from Long-Baseline Interferometry” (英語). The Astrophysical Journal 559 (2): 1155–1164. Bibcode2001ApJ...559.1155V. doi:10.1086/322340. ISSN 0004-637X. http://stacks.iop.org/0004-637X/559/i=2/a=1155. 
  17. ^ Schaaf (2008), p. 190.
  18. ^ a b Buzasi, D. L.; Bruntt, H.; Bedding, T. R.; Retter, A.; Kjeldsen, H.; Preston, H. L.; Mandeville, W. J.; Suarez, J. C. et al. (2005). “Altair: The Brightest δ Scuti Star”. The Astrophysical Journal 619 (2): 1072–1076. arXiv:astro-ph/0405127. Bibcode2005ApJ...619.1072B. doi:10.1086/426704. ISSN 0004-637X. 
  19. ^ Hanbury Brown, R.; Davis, J.; Allen, L. R.; Rome, J. M. (1967). “The stellar interferometer at Narrabri Observatory-II. The angular diameters of 15 stars”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 137: 393–417. Bibcode1967MNRAS.137..393H. 
  20. ^ Naoko Ohishi; Tyler E. Nordgren; Donald J. Hutter (2004). “Asymmetric Surface Brightness Distribution of Altair Observed with the Navy Prototype Optical Interferometer”. The Astrophysical Journal 612 (1): 463–471. Bibcode2004ApJ...612..463O. doi:10.1086/422422. 
  21. ^ A. Domiciano de Souza; P. Kervella; S. Jankov; F. Vakili; N. Ohishi; T. E. Nordgren; L. Abe (2005). “Gravitational-darkening of Altair from interferometry”. Astronomy and Astrophysics 442 (2): 567–578. Bibcode2005A&A...442..567D. doi:10.1051/0004-6361:20042476. 
  22. ^ a b Gazing up at the Man in the Star? Press Release 07-062”. National Science Foundation (2007年5月31日). 2019年7月9日閲覧。
  23. ^ D. Hoffleit. “HR 7557”. The Bright Star Catalogue, 5th Revised Ed. (Preliminary Version). CDS. 2019年7月9日閲覧。ID V/50
  24. ^ Entry 19508+0852”. The Washington Double Star Catalog. United States Naval Observatory. 2019年7月9日閲覧。
  25. ^ Results for BD+08 4232”. SIMBAD Astronomical Database. CDS. 2019年7月9日閲覧。
  26. ^ Results for BD+08 4238”. SIMBAD Astronomical Database. CDS. 2019年7月9日閲覧。
  27. ^ 近藤二郎 (2012). 星の名前のはじまり. 誠文堂新光社. p. 130. ISBN 978-4-416-21283-7 
  28. ^ IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2016年11月14日閲覧。
  29. ^ a b c 野尻抱影『日本星名辞典』(七)東京堂出版、1986年4月10日、65-67頁。ISBN 978-4490100785 
  30. ^ 原恵『星座の神話 - 星座史と星名の意味』(新装改訂版第4刷)恒星社厚生閣、2007年2月28日、169-170頁。ISBN 978-4-7699-0825-8 

関連項目

外部リンク