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[[File:Habitable zone - HZ.png|thumb|350px|[[恒星]]の[[光度 (天文学)|光度]]に応じたハビタブルゾーンの位置]] |
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[[File:Diagram of different habitable zone regions by Chester Harman.jpg|thumb|300px|[[恒星]]周辺のハビタブルゾーンの境界と、[[スペクトル分類|恒星の種類]]に応じてそれがどのように変化するかを示した図。この図には[[太陽系]]の惑星([[金星]]・[[地球]]・[[火星]])と[[TRAPPIST-1d]]、[[ケプラー186f]]、そして地球に最も近い[[太陽系外惑星]]である[[プロキシマ・ケンタウリb]]などの特に意義深い太陽系外惑星が含まれている。]] |
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'''ハビタブルゾーン'''(HZ: habitable zone)とは、[[宇宙]]の中で[[生命]]が誕生するのに適した環境と考えられている[[天文学]]上の領域。'''[[3びきのくま|ゴルディロックス]]ゾーン''' (GZ: Goldilocks zone) とも呼ばれる<ref>{{Cite web |url = https://style.nikkei.com/article/DGXMZO94673350S5A201C1000000 |title = 地上に生まれた最初の生命 他の星に生命体の可能性 |publisher = NIKKEI STYLE |date = 2015-12-20 |accessdate = 2018-01-19 }}</ref>。日本語では「'''生命居住可能領域'''」と呼ばれる<ref>[http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/7870/?ST=m_news ハビタブルゾーンに地球型の3惑星発見]ナショナルジオグラフィックニュース、2016年6月12日観覧</ref>。現在も多様な[[生物]]が存在する[[地球]]と比較して、その地球環境と類似する環境範囲内にあれば、人類の移住、生命の発生やその後の進化も容易なのではとの仮説に基づく宇宙空間領域を指す。ここで考慮される環境とは、主に他天体から放射されるエネルギー量や星間物質の量などである。[[天文学者の一覧|天文学者]]により「[[惑星系]]のハビタブルゾーン ([[#惑星系のハビタブルゾーン|'''CHZ''']]: circumstellar habitable zone)」や「[[銀河系]]のハビタブルゾーン ([[#銀河系のハビタブルゾーン (GHZ)|GHZ]]: galactic habitable zone)」などが考えられている。 |
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'''ハビタブルゾーン'''{{R|天文学辞典|kotobank}}({{Lang-en|Habitable zone}}、HZ)とは、[[地球]]と似た[[生命]]が存在できる[[天文学]]上の領域{{R|天文学辞典}}。日本語では'''生命居住可能領域'''{{R|天文学辞典}}<ref>{{Cite web|和書|url=https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/7870/|title=ハビタブルゾーンに地球型の3惑星発見|work=[[ナショナルジオグラフィック (雑誌)|ナショナルジオグラフィック]]|date=2013-04-22|accessdate=2016-06-12}}</ref>や'''生存可能圏'''{{R|天文学辞典}}、'''生存可能領域'''{{R|wakusei}}と呼ばれる。 |
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== 概要 == |
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このような領域内に[[惑星]]があれば、それを'''ハビタブル惑星''' (Habitable planet)、またその中でも特に[[地球]]とサイズ等が近い惑星は'''ゴルディロックス惑星''' (Goldilocks planet)<ref>明確には生命の発生だけでなく、進化にも適した恒星からの距離範囲。ただし、このような範囲内にある惑星を指すゴルディロックス惑星 (Goldilocks planet) という言葉は、生命の発生及び進化可能性が低いとされる惑星(例:[[木星型惑星|巨大ガス惑星]]など)も含めて使用される場合がある。語源は英国童話「[[3びきのくま|ゴルディロックスと3匹の熊]]」の主人公少女の名。</ref>などと呼ばれている。 |
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一般的にハビタブルゾーンという言葉は'''惑星系のハビタブルゾーン'''({{Lang-en|Circumstellar habitable zone}}、CHZ)を指すことが多く、[[恒星]]の周辺において十分な[[大気圧]]がある環境下で[[惑星]]の表面に[[液体]]の[[水]]が存在できる範囲を指す{{R|kotobank|Dole1964|Kopparapu2013|Kasting1993}}<ref>Su-Shu Huang, American Scientist 47, 3, pp. 397–402 (1959)</ref><ref>{{cite journal|last=Cruz|first=Maria|last2=Coontz|first2=Robert|title=Exoplanets - Introduction to Special Issue|url=http://www.sciencemag.org/content/340/6132/565|year=2013|journal=[[サイエンス|Science]]|volume=340|issue=6132|page=565|doi=10.1126/science.340.6132.565|pmid=23641107}}</ref>。惑星系のハビタブルゾーンの範囲は、[[太陽系]]内における地球の位置と[[太陽]]から受ける[[放射エネルギー]]量に基づいている。 |
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ハビタブルゾーンは'''ゴルディロックスゾーン'''({{Lang-en|Goldilocks zone}}、GZ)とも呼ばれる<ref>{{Cite web|和書|url=https://style.nikkei.com/article/DGXMZO94673350S5A201C1000000|title=地上に生まれた最初の生命 他の星に生命体の可能性|publisher=NIKKEI STYLE|date=2015-12-20|accessdate=2018-01-19}}</ref>。「ゴルディロックス」は[[童話]]の[[3びきのくま]]に登場する、暑さや寒さなど極端なものを無視し、その中間にある物事を選ぶ女の子の名前である。ゴルディロックスゾーンはハビタブルゾーンとほぼ同じような形態をとるが、ハビタブルゾーンの中でも生命体の存在だけでなく、[[進化]]が起きるのにも適した領域を指すこともある{{R|kotobank}}。 |
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== 惑星系のハビタブルゾーン == |
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[[File:Estimated extent of the Solar Systems habitable zone.png|thumb|太陽系のハビタブルゾーンの範囲。濃い緑が最も狭い推定値、薄い緑が逆に最も広い推定値となる。]] |
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ハビタブルゾーンの概念が初めて発表された1953年以来{{R|Huggett1995}}、多くの恒星がハビタブルゾーン内に惑星を持っていることが確認されていて、中にはハビタブルゾーン内を複数の惑星が公転している[[惑星系]]も含まれる<ref>{{cite news|last=Overbye|first=Dennis|title=As Ranks of Goldilocks Planets Grow, Astronomers Consider What's Next|url=https://www.nytimes.com/2015/01/07/science/space/as-ranks-of-goldilocks-planets-grow-astronomers-consider-whats-next.html|work=[[ニューヨーク・タイムズ|The New York Times]]|date=2015-01-06|accessdate=2019-07-23}}</ref>。そのような惑星の多くは発見するのが容易な[[スーパー・アース]]や[[木星型惑星|巨大ガス惑星]]といった地球よりも大きな惑星である。2013年11月4日、[[天文学者]]らは太陽系外惑星探査望遠鏡[[ケプラー (探査機)|ケプラー]]のデータに基づいて、[[銀河系]]に存在する[[ソーラーアナログ|太陽に似た恒星]]や[[赤色矮星]]のハビタブルゾーン内を公転する地球規模の惑星は400億個存在することを報告した<ref>{{cite news|last=Overbye|first=Dennis|title=Far-Off Planets Like the Earth Dot the Galaxy|url=https://www.nytimes.com/2013/11/05/science/cosmic-census-finds-billions-of-planets-that-could-be-like-earth.html|work=The New York Times|date=2013-11-04|accessdate=2019-07-23}}</ref><ref>{{cite journal|last=Petigura|first=Eric A.|last2=Howard|first2=Andrew W.|last3=Marcy|first3=Geoffrey W.|title=Prevalence of Earth-size planets orbiting Sun-like stars|url=http://www.pnas.org/content/early/2013/10/31/1319909110|year=2013|journal=Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America|volume=110|issue=48|pages=19273–19278|pmid=24191033|pmc=3845182|doi=10.1073/pnas.1319909110|arxiv=1311.6806|bibcode=2013PNAS..11019273P}}</ref>。これらのうち110億個は太陽のような恒星を公転しているかもしれない<ref>{{cite news|last=Khan|first=Amina|title=Milky Way may host billions of Earth-size planets|url=http://www.latimes.com/science/la-sci-earth-like-planets-20131105,0,2673237.story|work=[[ロサンゼルス・タイムズ|Los Angeles Times]]|date=2013-11-04|accessdate=2019-07-23}}</ref>。地球から[[ケンタウルス座]]の方向に約4.2[[光年]](約1.3[[パーセク]])離れた位置にある[[太陽系外惑星]][[プロキシマ・ケンタウリb]]は、既知の太陽系外惑星では最も地球に近く、主星[[プロキシマ・ケンタウリ]]のハビタブルゾーン内を公転している<ref>{{cite journal|last=Anglada-Escudé|first=Guillem ''et al.''|title=A terrestrial planet candidate in a temperate orbit around Proxima Centauri|year=2016|journal=[[ネイチャー|Nature]]|volume=536|issue=7617|pages=437–440|doi=10.1038/nature19106|pmid=27558064|arxiv=1609.03449|bibcode=2016Natur.536..437A}}</ref>。ハビタブルゾーンではまた、惑星を上回る数の惑星規模の[[太陽系外衛星|衛星]]が存在する可能性があり、{{仮リンク|衛星の居住可能性|en|Habitability of natural satellites}}の分野にとって特に興味深いものにもなっている<ref>{{cite web|last=Schirber|first=Michael|title=Detecting Life-Friendly Moons |url=http://www.astrobio.net/exclusive/3291/detecting-life-friendly-moons|work=Astrobiology Magazine|agency=NASA|date=2009-10-26|accessdate=2019-07-23}}</ref>。 |
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ある星系において、中心星からの放射エネルギーが、生命発生の条件に適していると考えられる距離にある領域を指す。この星系が惑星系を持ち、その領域にハビタブルな惑星や[[衛星]]が存在すれば、その星は生命の居住候補として優れ、また[[地球外生命]]が存在する有望な候補であるとする。その距離は、おおよそ惑星の表面[[温度]]が、生命が潜在的に生き延びられる[[液体]]の[[水]]を維持できるかもしれない程度としている。 |
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ハビタブルゾーンの概念はこの数十年間に渡って、生命体の存在に対する主要な基準としては疑問が呈され続けられており、そのため今もさらなる理論の発展を続けている{{R|Lammer2009}}。地球外に液体の水が存在する証拠が発見されて以来、そのうちのかなりの量が現在、恒星周辺のハビタブルゾーンの外部に存在していると考えられている。太陽系の[[リソスフェア]]や[[アセノスフェア]]内に大量の水が存在することが知られているのを考えると、地球に存在するのと同じような、恒星からの放射エネルギーを必要としない地下生物圏の概念が[[宇宙生物学]]に一般的に受け入れられている<ref>{{cite journal|last=Edwards|first=Katrina J.|last2=Becker|first2=Keir|last3=Colwell|first3=Frederick|title=The Deep, Dark Energy Biosphere: Intraterrestrial Life on Earth|journal=Annual Review of Earth and Planetary Sciences|volume=40|issue=1|year=2012|pages=551–568|issn=0084-6597|doi=10.1146/annurev-earth-042711-105500|bibcode=2012AREPS..40..551E}}</ref>。[[潮汐加熱]]{{R|Cowen|Bryner}}や[[放射性崩壊]]<ref>{{cite journal|last=Abbot|first=D. S.|last2=Switzer|first2=E. R.|title=The Steppenwolf: A Proposal for a Habitable Planet in Interstellar Space|year=2011|journal=The Astrophysical Journal|volume=735|issue=2|pages=L27|doi=10.1088/2041-8205/735/2/L27|arxiv=1102.1108|bibcode=2011ApJ...735L..27A}}</ref>などの他のエネルギー源によって維持されたり、[[大気]]以外の理由で[[気圧]]が加圧されたりすれば、[[自由浮遊惑星]]や[[太陽系外衛星]]であっても液体の水が存在する可能性がある{{R|physcisarxivlab}}。液体の水は[[束一的性質]]が異なるため、例えば地球上の[[海水]]中に含まれる[[塩化ナトリウム]]、[[火星]]の赤道上の[[塩化物]]や[[硫酸塩]]<ref>{{cite news|last=Wall|first=Mike|url=http://www.space.com/30673-water-flows-on-mars-discovery.html?adbid=10153086098981466&adbpl=fb&adbpr=17610706465|title=Salty Water Flows on Mars Today, Boosting Odds for Life|work=Space.com|date=2015-09-28|accessdate=2019-07-23}}</ref>、そして[[アンモニア]]<ref>{{cite journal|last=Sun|first=Jiming|last2=Clark|first2=Bryan K.|last3=Torquato|first3=Salvatore|last4=Car|first4=Roberto|title=The phase diagram of high-pressure superionic ice|journal=Nature Communications|volume=6|year=2015|pages=8156|issn=2041-1723|doi=10.1038/ncomms9156|bibcode=2015NatCo...6E8156S|pmid=26315260|pmc=4560814}}</ref>の[[溶液]]としてより広範囲の圧力下と温度下で存在できる。また[[代わりの生化学]]に基づいて、仮想上の生命体にとって有利な、水以外の[[溶媒]]が液体の形態で存在し得る広義的なハビタブルゾーンも提案されている{{R|kotobank|Villard}}。 |
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この発想は、そもそもは[[オットー・シュトルーベ]]が考えた概念であるとされる。中心にある恒星の条件により、惑星系のHZは異なる。諸説あるが、[[太陽系]]では、大体0.97 - 1.39[[天文単位|AU]]の距離にある領域とされ、この領域にあるハビタブル惑星は唯一地球しかない(地球の衛星である[[月]]や、地球の[[ラグランジュ点]]もこの領域に含まれる<ref>あくまで中心星からのエネルギー放射のみを考慮している点に注意。実際の生命発生や生物の生存にはその他の諸条件が必須である。</ref>)。[[火星]]はHZの外側で太陽からの放射が弱すぎ、[[金星]]はHZの内側で逆に強すぎ、生命の生存のための環境を整えるにはHZより厳しい努力が必要となる。このため、このようなHZを'''エコスフィア'''(スフェア)、ecosphereなどとも呼ぶことがある。 |
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== 歴史 == |
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液体の水の存在を可能にさせる恒星からの範囲の見積もりについては[[アイザック・ニュートン]]の著書である『[[自然哲学の数学的諸原理]]』(第3巻、Section 1、corol. 4)にも見られる<ref>[http://www.17centurymaths.com/contents/newton/book3s1.pdf 3rd Edition (1728), trans Bruce, I]</ref>。ハビタブルゾーンという概念は[[ドイツ]]の[[物理学者]]{{仮リンク|フーベルトゥス・シュトルクホルト|en|Hubertus Strughold}}によって1953年に初めて示され、彼は著書『''The Green and the Red Planet: A Physiological Study of the Possibility of Life on Mars''』内で'''エコスフィア'''({{Lang-en|Ecosphere}})という単語を作り出し、生命体が出現する可能性がある様々な「ゾーン」について言及している{{R|Huggett1995}}<ref>{{cite book|url=https://books.google.com/books/about/The_green_and_red_planet.html?id=zNbPAAAAMAAJ|title=The Green and Red Planet: A Physiological Study of the Possibility of Life on Mars|publisher=University of New Mexico Press|author=Strughold, Hubertus|year=1953}}</ref>。同年に[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の天文学者[[ハーロー・シャプレー]]は「''Liquid water belt''」と呼ばれる理論を提唱し、これは同じ理論を科学的にさらに詳しく述べたものである。このどちらの研究も生命体にとっての液体の水の重要性を強調することになった<ref>{{cite book|author=Kasting, James|title=How to Find a Habitable Planet|url=https://books.google.com/books?id=xPqEeB-SRvUC|year=2010|publisher=Princeton University Press|isbn=978-0-691-13805-3|page=127}}</ref>。[[中華人民共和国|中国]]出身のアメリカの天体物理学者の[[黄授書]]は1959年に、液体の水が十分に大きな天体上に存在する可能性がある恒星の周りの領域を指す「Habitable zone」という用語を、惑星の居住性と地球外生命体の文脈内において初めて導入した{{R|Kasting1993}}<ref>{{cite book|url=https://books.google.com/books?id=D0UrAAAAYAAJ|title=Extraterrestrial life: An Anthology and Bibliography|publisher=National Academy of Sciences|author=Huang, Su-Shu|year=1966|location=Washington, D. C.|pages=87–93|others=National Research Council (U.S.). Study Group on Biology and the Exploration of Mars}}</ref>。初期のハビタブルゾーン理論の主要な寄稿者である黄授書は1960年に、[[恒星系|多重連星系]]内においての恒星のハビタブルゾーンそして地球外生命体の存在は、その不安定な[[重力]]の影響により珍しいものになるであろうと主張している<ref>{{cite journal|title=Life-Supporting Regions in the Vicinity of Binary Systems|author=Huang, Su-Shu|year=1960|journal=Publications of the Astronomical Society of the Pacific|volume=72|issue=425|pages=106–114|bibcode=1960PASP...72..106H|doi=10.1086/127489}}</ref>。 |
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一般に、ある恒星のCHZ(永続的ハビタブルゾーン)の"中心"までの距離は、次の式により決定される。 |
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ハビタブルゾーンの理論は1964年に[[スティーヴン・H・ドール]]<!--Stephen H. Dole-->によって彼の著書『''[[:en:Habitable Planets for Man|Habitable Planets for Man]]''』でさらに発展することになった。著書の中で彼はハビタブルゾーンの概念と同様に[[惑星の居住可能性]]などの |
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::<math>d_{AU} = \sqrt {L_{star}/L_{sun}}</math> |
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他の様々な決定要因について論じ、最終的に銀河系内に存在するハビタブルゾーンの中に位置する惑星の数は約6億個にのぼると推定している{{R|Dole1964}}。同時に、空想科学小説家の[[アイザック・アシモフ]]は[[宇宙移民]]に関する彼の様々な研究を通じて、ハビタブルゾーンという概念を世間に広めた<ref>{{cite book|url=https://books.google.com/books/about/Centauri_Dreams.html?id=L4fffd3SivkC|title=Centauri Dreams: Imagining and Planning Interstellar Exploration|publisher=Springer|author=Gilster, Paul|year=2004|isbn=978-0-387-00436-5|page=40}}</ref>。「[[ゴルディロックスの原理|ゴルディロックスゾーン]]」という用語は1970年代に登場し、特に液体の水が存在するのに「ちょうど良い」温度になっている恒星の周りの領域を指している<ref>{{cite press release|url=https://science.nasa.gov/science-news/science-at-nasa/2003/02oct_goldilocks/|title=The Goldilocks Zone|publisher=NASA|date=2003-10-02|accessdate=2019-07-23}}</ref>。1993年に天文学者{{仮リンク|ジェームズ・カスティング|en|James Kasting}}は、現在主にハビタブルゾーンとして知られている領域をより正確に表すために「惑星系のハビタブルゾーン(Circumstellr habitable zone)」という用語を導入した{{R|Kasting1993}}。太陽系外惑星のハビタブルゾーンの詳細なモデルを初めて公表したのは、カスティングが初めてであった{{R|Kasting1993}}<ref>{{cite journal|title=Exoplanet Habitability|last=Seager|first=Sara|year=2013|journal=Science|volume=340|issue=577|pages=577–581|doi=10.1126/science.1232226|pmid=23641111|bibcode=2013Sci...340..577S}}</ref>。 |
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2000年、古生物学者{{仮リンク|ピーター・ウォード|en|Peter Ward (paleontologist)}}と天文学者{{仮リンク|ドナルド・E・ブラウンリー|en|Donald E. Brownlee}}が'''銀河系のハビタブルゾーン'''の理論を示したことによりハビタブルゾーンの理論が更新され、後に彼らはこの理論を天文学者の{{仮リンク|ギレルモ・ゴンザレス|en|Guillermo Gonzalez (astronomer)}}と共に発展させることになる{{R|Rare Earth|Gonzalez2001}}。[[銀河系]]内で最も生命体が出現する可能性が最も高い領域と定義されている銀河系のハビタブルゾーンは[[重元素]]がより豊富に存在している[[銀河核]]に十分近い領域にあるが、それほど近いと銀河の中心部で一般的に見られる強い[[放射線]]と強い[[重力]]の影響により、恒星系や惑星の軌道そして生命体の出現はしばしば不安定なものになると考えられている{{R|Rare Earth}}。 |
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::<math>d_{AU} \,</math> HZの"中心"の半径 [[天文単位]](AU) |
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::<math>L_{star} \,</math> 恒星の[[ボロメータ|ボロメトリック]][[光度 (天文学)|光度]] |
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::<math>L_{sun} \,</math> [[太陽]]のボロメトリック光度 |
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それ以降、宇宙生物学者の中にはハビタブルゾーンの概念を二[[水素]]や[[硫酸]]、二[[窒素]]、[[ホルムアミド]]、[[メタン]]といった水以外の溶媒にも拡張することを提案している者や、他には代わりの生物学を用いて仮想の生命体の存在を支持する者もいる。2013年には、自然に形成された[[衛星]]の軌道が乱されるなく、かつ惑星からの潮汐加熱で表面の液体の水が[[沸騰]]されない領域を示す'''ハビタブルエッジ'''({{Lang-en|Habitable edge}})と呼ばれる惑星のハビタブルゾーンが提案されたことにより、ハビタブルゾーン理論のさらなる発展が行われている{{R|hadhazy}}。 |
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例えば、太陽の25%程度の光度を持つ恒星では、HZの中心は0.5AU付近となり、太陽の2倍の光度では1.4AUとなる。これは光度の変化が[[逆2乗の法則]]によるためである。このHZの中心は、[[太陽系外惑星|系外惑星]]が地球と同じような大気組成・大気圧であると仮定した場合に、地球と同じような平均温度となるであろう距離として定義されている。 |
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== ハビタブルゾーンの測定 == |
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[[Image:Gliese581cEarthComparison2.png|thumb|250px|right|地球と比較した[[グリーゼ581c]]。仮に表面の75%以上が雲で覆われていれば、表面に液体の水が存在できると考えられている<ref>Beust et al. 2008 Astronomy and Astrophysics 479, 277</ref>]] |
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[[File:Estimated extent of the Solar Systems habitable zone.png|thumb|推定される太陽系のハビタブルゾーンの範囲。濃い緑が最も狭い推定値で{{R|Dole1964}}、薄い緑が逆に最も広い推定値となる{{R|Fogg1992}}。]] |
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惑星表面の温度は原理的には、恒星の表面温度、恒星の半径、恒星と惑星の距離、[[アルベド]]そして[[温室効果]]を用いて算出することができる。しかし、実際にはアルベドと温室効果は互いに影響し合うということもあり、単純な話ではない。以下は太陽系外の地球型惑星を前提とした議論である。まず、[[アルベド]]は惑星に雲や雪があると大きくなるが、現在の技術では、雲や雪などは直接観測することができない。 [[温室効果]]は惑星に二酸化炭素などが存在していることが前提となっているが、惑星に火山が存在している場合は、二酸化炭素は増加するし、そもそも大気組成については情報が得られていない。惑星表面に液体の水が存在するためには、ある程度以上のH<sub>2</sub>Oの存在が必要となるが、ある惑星にどの程度の量が存在しているかは未知数である。さらに、[[隕石]]の衝突や自転軸の傾斜角なども様々な影響を及ぼすので、さらに複雑な議論となる。結局、実際に惑星表面に液体の水が存在するかどうかは、将来的なより高度な観測方法の確立を待つしかない<ref>Kasting et al.(1993) ICARUS 101, 108</ref><ref>はしもと じょーじ The Workshop for Popularizing the Latest Astronomy 2005 - The Search for the Extrasolar Planets -</ref>。 |
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ある天体がその主星のハビタブルゾーン内に位置しているかどうかは、惑星の軌道半径(衛星の場合は主惑星の軌道)、天体自身の[[質量]]、および主星の[[放射束]]に依存する。惑星系のハビタブルゾーン内に存在する惑星の質量の値が広い範囲に及んでいることを考えると、地球より厚い[[大気]]や強力な[[磁場]]を維持することができる[[スーパー・アース]]の発見と相まって現在では惑星系のハビタブルゾーンは、地球や[[金星]]などの比較的低質量の惑星の表面で液体の水が存在できる領域と、より強い[[温室効果]]を持つスーパー・アースの表面上で液体の水が存在するのに適した温度になる「Extended habitable zone{{Refnest|group="注"|name="注1"|直訳すると「拡張ハビタブルゾーン」の意。}}」と呼ばれるより広範囲の領域の2つに区別することが出来る<ref>{{cite news|author=Redd, Nola Taylor|url=http://www.astrobio.net/exclusive/4174/greenhouse-effect-could-extend-habitable-zone|title=Greenhouse Effect Could Extend Habitable Zone|work=Astrobiology Magazine|publisher=NASA|date=2011-08-25|accessdate=2019-07-23}}</ref>。 |
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ハビタブルゾーンの内縁(恒星に最も近いボーダーライン)は、温室効果によって天体表面の水が蒸発してしまう{{R|Lammer2009}}{{Refnest|group="注"|太陽により近い金星を例にとると、大気中の水蒸気は約0.003%しかなく、地球の1%と比較して極度に乾燥している{{R|JAXA-Venus2007}}。}}。この水蒸気が毛布の役割を果たしてさらなる温室効果を生じ、天体表面の温度がまるで暴走するように上昇する[[暴走温室効果]]の状態になる{{R|CGER-Q15}}。さらにこの[[水蒸気]]は{{仮リンク|光解離|en|Photodissociation}}によって分子そのものが分解し、[[水素]]として[[宇宙空間]]へと放出される{{R|wakusei|exokyoto|JAXA-Venus2007}}。そのため一般的にハビタブルゾーンの内縁境界の条件は「暴走温室条件」と呼ばれ、暴走温室効果(もしくはそれより少し効果が弱い湿潤温室効果)が発生してしまう惑星からの[[射出限界]]と等しい恒星放射を受ける領域とされる{{R|wakusei|exokyoto}}。一方でハビタブルゾーン外縁境界の条件は「全球凍結条件」と呼ばれ{{R|exokyoto}}、惑星が[[全球凍結]]にならない最低限の恒星放射を受ける領域と定義されている{{R|Kopparapu2013|Kasting1993|wakusei}}。 |
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さらに、恒星は[[恒星進化論|進化]]によってより明るく、より熱く、より大きくなる。このため、時が経つにつれCHZは恒星から遠くに移動する。生命の可能性にとっては、惑星が長期に渡りHZを保つことができる[[軌道 (力学)|軌道]]が理想である。 |
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=== 太陽系での推定値 === |
||
太陽系内におけるこれまでハビタブルゾーンの推定値は0.38–10.0 [[天文単位|au]]の範囲に及ぶが{{R|Zsom2013|Pierrehumbert2011|Ramirez2017}}<ref>{{cite web| url=http://depts.washington.edu/naivpl/sites/default/files/hz.shtml|title=Stellar habitable zone calculator|publisher=[[ワシントン大学 (ワシントン州)|University of Washington]]|accessdate=2019-07-23}}</ref>、様々な原因によりこの推定値を導き出すのは困難であった。この範囲内もしくはそれに近い軌道を周回している多数の惑星クラスの質量を持つ天体は、温度が水の融点よりも高くなるほどの十分な[[太陽光]]を受けている。しかし、それらの天体の大気条件は大きく異なっている。例えば金星は[[近点・遠点|遠日点]]がハビタブルゾーンの内縁付近に位置しており、表面の大気圧は液体の水を保持するのには十分だが、強い温室効果により表面温度は462 [[摂氏|℃]](864 [[華氏|℉]])にまで上昇しており、水は水蒸気でしか存在することができない<ref>{{cite web|url=http://burro.cwru.edu/stu/advanced/venus.html|title=Venus|publisher=Case Western Reserve University|date=2006-09-13|accessdate=2019-07-23|deadurl=yes|archiveurl=https://web.archive.org/web/20120426064658/http://burro.cwru.edu/stu/advanced/venus.html|archivedate=2012-04-26}}</ref>ことにもなるが、上空50 kmの1気圧の地点では75 ℃、55 kmの0.5気圧の地点では27 ℃で水が存在できる温度になっている<ref>{{cite journal|url=http://link.aip.org/link/?APCPCS/654/1193/1|title=Colonization of Venus|first=Geoffrey A.|last=Landis|year=2003|journal=AIP Conf. Proc.|volume=654|issue=1|pages=1193–1198|doi=10.1063/1.1541418|bibcode=2003AIPC..654.1193L|deadurl=yes|archiveurl=https://archive.is/20120711103532/http://link.aip.org/link/?APCPCS/654/1193/1|archivedate=2012-07-11}}</ref>。[[月]]<ref>{{cite web|author=Sharp, Tim|url=http://www.space.com/18067-moon-atmosphere.html|title=Atmosphere of the Moon|publisher=TechMediaNetwork|work=Space.com|accessdate=2019-07-23}}</ref>や[[火星]]<ref>{{cite book|first=Alexander A.|last=Bolonkin|year=2009|title=Artificial Environments on Mars|publisher=Springer|place=Berlin Heidelberg|pages=599–625|isbn=978-3-642-03629-3}}</ref>、そして多数の[[小惑星]]もまた推定されるハビタブルゾーンの範囲内に位置している。火星の表面上において最も低い高度(表面全体の30%未満)でのみ、水が存在する場合には短期間に渡って液体の状態で存在していられるのに十分な大気圧と温度がある{{R|Haberle2001}}。例えば[[ヘラス盆地]]では、年間70火星日の間は大気圧が1,115 [[パスカル (単位)|Pa]]に達し、温度が0 ℃を超えることがある{{R|Haberle2001}}。暖かい火星の斜面において季節的な流体の流れ([[:en:Seasonal flows on warm Martian slopes|Seasonal flows on warm Martian slopes]])という形での間接的な証拠があるが<ref>{{cite web|last=Mann|first=Adam|title=Strange Dark Streaks on Mars Get More and More Mysterious|url=https://www.wired.com/wiredscience/2014/02/flowing-lineae-water-mars/|work=Wired|date=2014-02-18|accessdate=2019-07-23}}</ref><ref>{{cite web|url=http://www.voanews.com/english/news/science-technology/NASA-Finds-Possible-Signs-of-Flowing-Water-on-Mars-126807133.html|title=NASA Finds Possible Signs of Flowing Water on Mars|publisher=voanews.com|accessdate=2019-07-23}}</ref><ref>{{cite web|url=http://news.sciencemag.org/sciencenow/2011/08/is-mars-weeping-salty-tears.html|title=Is Mars Weeping Salty Tears?|publisher=news.sciencemag.org|accessdate=2019-07-23|deadurl=yes|archiveurl=https://web.archive.org/web/20110814065220/http://news.sciencemag.org/sciencenow/2011/08/is-mars-weeping-salty-tears.html|archivedate=2011-08-14}}</ref><ref>{{cite web|last=Webster|first=Guy|last2=Brown|first2=Dwayne|title=NASA Mars Spacecraft Reveals a More Dynamic Red Planet|url=http://www.jpl.nasa.gov/news/news.php?release=2013-361&1#1|work=NASA|date=2013-12-10|accessdate=2019-07-23}}</ref>、そこに液体の水が存在するという確認はなされていない。ハビタブルゾーン内を公転している[[彗星]]を含む、その他の天体の中で[[準惑星]]の[[ケレス (準惑星)|ケレス]]は唯一惑星クラスの質量を持つ。しかし、質量が小さい事と[[太陽風]]による大気の蒸発および喪失を軽減できない事の組み合わせにより、このような天体は表面上に液体の水を維持させることができない。しかし、それにも関わらず、金星<ref>{{cite journal|last=Salvador|first=A.|last2=Massol|first2=H.|last3=Davaille|first3=A.|last4=Marcq|first4=E.|last5=Sarda|first5=P.|last6=Chassefière|first6=E.|title=The relative influence of H2 O and CO2 on the primitive surface conditions and evolution of rocky planets|journal=Journal of Geophysical Research: Planets|volume=122|issue=7|year=2017|pages=1458–1486|issn=2169-9097|doi=10.1002/2017JE005286|bibcode=2017JGRE..122.1458S}}</ref>や火星<ref>{{cite web|url=http://www.space.com/scienceastronomy/flashback-water-on-mars-announced-10-years-ago-100622.html|title=Flashback: Water on Mars Announced 10 Years Ago|publisher=SPACE.com|date=2000-06-22|accessdate=2019-07-23}}</ref><ref>{{cite web|url=https://www.space.com/8642-flashback-water-mars-announced-10-years.html|title=Flashback: Water on Mars Announced 10 Years Ago|publisher=SPACE.com|date=2010-06-22|accessdate=2019-07-23}}</ref><ref>{{cite web| url=https://science.nasa.gov/headlines/y2001/ast05jan_1.htm| title=Science@NASA, The Case of the Missing Mars Water|accessdate=2019-07-23|deadurl=yes|archiveurl=https://web.archive.org/web/20090327234049/https://science.nasa.gov/headlines/y2001/ast05jan_1.htm|archivedate=2009-03-27}}</ref>、[[ベスタ (小惑星)|ベスタ]]<ref>{{cite journal|last=Scully|first=Jennifer E.C.|last2=Russell|first2=Christopher T.|last3=Yin|first3=An|last4=Jaumann|first4=Ralf|last5=Carey|first5=Elizabeth|last6=Castillo-Rogez|first6=Julie|last7=McSween|first7=Harry Y.|last8=Raymond|first8=Carol A.|last9=Reddy|first9=Vishnu|last10=Le Corre|first10=Lucille|title=Geomorphological evidence for transient water flow on Vesta|journal=Earth and Planetary Science Letters|volume=411|year=2015|pages=151–163|issn=0012-821X|doi=10.1016/j.epsl.2014.12.004|bibcode=2015E&PSL.411..151S}}</ref>、ケレス<ref>{{cite journal|last=Raponi|first=Andrea|last2=De Sanctis|first2=Maria Cristina|last3=Frigeri|first3=Alessandro|last4=Ammannito|first4=Eleonora|last5=Ciarniello|first5=Mauro|last6=Formisano|first6=Michelangelo|last7=Combe|first7=Jean-Philippe|last8=Magni|first8=Gianfranco|last9=Tosi|first9=Federico|last10=Carrozzo|first10=Filippo Giacomo|last11=Fonte|first11=Sergio|last12=Giardino|first12=Marco|last13=Joy|first13=Steven P.|last14=Polanskey|first14=Carol A.|last15=Rayman|first15=Marc D.|last16=Capaccioni|first16=Fabrizio|last17=Capria|first17=Maria Teresa|last18=Longobardo|first18=Andrea|last19=Palomba|first19=Ernesto|last20=Zambon|first20=Francesca|last21=Raymond|first21=Carol A.|last22=Russell|first22=Christopher T.|title=Variations in the amount of water ice on Ceres' surface suggest a seasonal water cycle|journal=Science Advances|volume=4|issue=3|year=2018|pages=eaao3757|issn=2375-2548|doi=10.1126/sciadv.aao3757|pmid=29546238|pmc=5851659|bibcode=2018SciA....4O3757R}}</ref><ref>https://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA21471 PIA21471: Landslides on Ceres</ref>の表面には過去に液体の水が存在していたことが、研究によって以前考えられていたより強く示唆されている。持続可能な液体の水は複雑な生命体の存在を支えるのに不可欠であると考えられているので、ハビタブルゾーンの推定値のほとんどは、数十億年に渡って表面に液体の水を維持することが可能なほどの表面重力を持っている金星と地球の居住性に及ぼす影響から推定される。 |
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Extended habitable zoneの理論によれば、十分な[[放射強制力]]を誘発することができる大気を有する惑星クラスの質量を持つ天体は、太陽から遠く離れたところに液体の水を持つことができる。そのような天体には、大気中に大量の温室効果ガスが含まれている地球よりも質量が大きい岩石惑星(スーパー・アースクラスの質量)も含まれ、最大で100 [[バール (単位)|kbar]]の表面圧力を持つことができるが、そのような天体は太陽系には存在していない。こうした種類の太陽系外惑星の大気に性質については十分には知られておらず、誘導アルベド(Induced albedo)や[[反温室効果]]、もしくは考えられる他の熱源も含んで考慮した大気の正確な温室効果の強さは、ハビタブルゾーン内における天体の位置だけで決定することはできない。 |
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[[銀河]]の中心から十分に近いため重い元素が高レベルに存在し、そのため[[地球型惑星]]が形成されるのに十分だが、しかし中心から十分遠くでもあり中心付近での高い恒星密度による[[彗星]]や[[小惑星]]の衝突の危険、[[超新星]]爆発による[[放射線]]、さらに銀河中心の[[ブラックホール]]の影響を避けられるとした銀河の領域である。すなわち、銀河のなかでどこに惑星系HZがそもそも存在できる条件なのか、この点を考慮したものである。 |
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{| class="wikitable sortable" |
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[[銀河系|天の川銀河]]のGHZは、現在では銀河中心核から約25,000[[光年]](8k[[パーセク|pc]])の、誕生後40億年 - 80億年の星々を含む、ゆっくりと広がる領域がそうだと信じられている。他の銀河については全く分かっていない。 |
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|- style="text-align:center; align:center; background:#90b0f0;" |
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|+ 太陽系におけるハビタブルゾーンの境界の推定 |
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! style="width:7%;"| 内縁距離<br>([[天文単位|au]]) !!style="width:7%;"| 外縁距離<br>(au) !!style="width:18%;"| 発表者(発表年) !! 注釈 |
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| 0.725 || 1.24 || Dole(1964){{R|Dole1964}} || 光学的に薄い大気と固定アルベドを使用して計算された値。金星の遠日点付近に内縁が位置する。 |
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| || 1.385–1.398 || Budyko(1969)<ref>{{cite journal|last=Budyko|first=M. I.|title=The effect of solar radiation variations on the climate of the Earth|doi=10.1111/j.2153-3490.1969.tb00466.x|year=1969|journal=Tellus|volume=21| issue=5|pages=611–619|bibcode=1969TellA..21..611B|citeseerx=10.1.1.696.824 }}</ref> || 地球が経験するであろう[[スノーボールアース|全球規模の凍結]]の時代を決定するためのアイスアルベドフィードバックモデルの研究に基づいている。この推定は1969年のSellersの研究<ref>{{cite journal|title=A Global Climatic Model Based on the Energy Balance of the Earth-Atmosphere System|author=Sellers, William D.|year=1969|journal=Journal of Applied Meteorology|volume=8|issue=3|pages=392–400|doi=10.1175/1520-0450(1969)008<0392:AGCMBO>2.0.CO;2 |bibcode=1969JApMe...8..392S}}</ref>や1975年のNorthの研究<ref>{{cite journal|last=North|first=Gerald R.|title=Theory of Energy-Balance Climate Models|year=1975|journal=Journal of the Atmospheric Sciences|volume=32|issue=11|pages=2033–2043|doi=10.1175/1520-0469(1975)032<2033:TOEBCM>2.0.CO;2|bibcode=1975JAtS...32.2033N}}</ref>でも支持されている。 |
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| 0.88–0.912 || || RasoolとDe Bergh(1970)<ref>{{cite journal|last=Rasool|first1=I.|last2=De Bergh|first2=C.|title=The Runaway Greenhouse and the Accumulation of CO<sub>2</sub> in the Venus Atmosphere|url=http://pubs.giss.nasa.gov/docs/1970/1970_Rasool_DeBergh_1.pdf|format=PDF|year=1970|journal=Nature|volume=226|issue=5250|pages=1037–1039|pmid=16057644|issn=0028-0836|doi=10.1038/2261037a0|bibcode=1970Natur.226.1037R}}</ref> || 金星の大気の研究に基づいて、RasoolとDe Berghはこの距離が地球上で安定した海が存在できるであろう最も太陽に近い距離であると結論付けている。 |
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| 0.95 || 1.01 || Hartら(1979)<ref>{{cite journal|last=Hart|first=M. H.|title=Habitable zones about main sequence stars|year=1979|journal=Icarus|volume=37|issue=1|pages=351–357|doi=10.1016/0019-1035(79)90141-6|bibcode=1979Icar...37..351H}}</ref> || 地球の大気組成と地表温度のコンピューターモデリングとシミュレーションに基づいている。この推定は、その後にしばしば出版物で引用されてきた。 |
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| || 3.0 || Fogg(1992){{R|Fogg1992}} || [[炭素循環]]を用いてハビタブルゾーンの外縁距離を推定した。 |
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| 0.95 || 1.37 || Kastingら(1993){{R|Kasting1993}} || 今日使用されている最も一般的なハビタブルゾーンの実用的定義を確立した。二酸化炭素と水が地球にとって重要な温室効果ガスであると仮定し、[[炭酸塩]]-[[ケイ酸塩]]循環(Carbonate-silicate cycle)によりハビタブルゾーンは広いものになっていると主張している。[[雲]]のアルベドによる冷却効果にも注目している。左に記載しているのは控えめな制限を与えた推定で、楽観的な推定に基づくとその範囲は0.84–1.67 auとなる。 |
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| || 2.0 || Spiegelら(2010)<ref>{{cite journal|last=Spiegel|first=D. S.|last2=Raymond|first2=S. N.|last3=Dressing|first3=C. D.|last4=Scharf|first4=C. A.|last5=Mitchell|first5=J. L.|title=Generalized Milankovitch Cycles and Long-Term Climatic Habitability|year=2010|journal=The Astrophysical Journal|volume=721|issue=2|pages=1308–1318|doi=10.1088/0004-637X/721/2/1308|bibcode=2010ApJ...721.1308S|arxiv=1002.4877}}</ref> || 大きい[[軌道傾斜角|軌道傾斜]]と[[離心率]]を組み合わせると、この距離までなら周期的に液体の水が存在できることが提案された。 |
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| 0.75 || || Abeら(2011)<ref>{{cite journal|last=Abe|first=Y.|last2=Abe-Ouchi|first2=A.|last3=Sleep|first3=N. H.|last4=Zahnle|first4=K. J.|title=Habitable Zone Limits for Dry Planets|year=2011|journal=Astrobiology|volume=11|issue=5|pages=443–460|pmid=21707386|doi=10.1089/ast.2010.0545|bibcode=2011AsBio..11..443A}}</ref> || 地球のような水が多い惑星よりも主星に近く、極付近にのみ水が存在し大部分が陸地を占めている「[[砂漠惑星]](Desert planet)」が存在する可能性を示した。 |
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| || 10 || PierrehumbertとGaidos(2011){{R|Rayeric2011}} || [[原始惑星系円盤]]から気圧数十から数千 barの[[水素]]を蓄積することができる岩石惑星は、太陽から10 auも離れた領域でも居住可能になる可能性を示した。 |
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| 0.77–0.87 || 1.02–1.18 || Vladiloら(2013){{R|Vladilo2013}} || 必要な大気圧の下限を15 mbarとした時、ハビタブルゾーンの内縁はさらに太陽に近く、外縁はさらに遠くなることを示した。 |
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| 0.99 || 1.70 || Kopparapuら(2013){{R|Kopparapu2013}}<ref>{{cite journal|first=Ravi Kumar|last=Kopparapu|first2=Ramses|last2=Ramirez|first3=James F.|last3=Kasting|first4=Vincent|last4=Eymet|first5=Tyler D.|last5=Robinson|first6=Suvrath|last6=Mahadevan|first7=Ryan C.|last7=Terrien|first8=Shawn|last8=Domagal-Goldman|first9=Victoria|last9=Meadows|first10=Rohit|last10=Deshpande|url=https://iopscience.iop.org/article/10.1088/0004-637X/765/2/131/meta|title=Habitable Zones Around Main-Sequence Stars: New Estimates|year=2013|journal=The Astrophysical Journal|volume=765|pages=131|doi=10.1088/0004-637X/765/2/131|bibcode=2013ApJ...765..131K|arxiv=1301.6674}}</ref> || Kastingら(1993)の推定値を修正したもの。更新された湿潤温室効果と水分損失のアルゴリズムを用いて公式化している。この測定によると、地球はハビタブルゾーンの内縁に位置しており、湿潤温室効果が起きる距離の限界に近いがわずかにその外側に位置する。Kastingら(1993)と同じように、 これは温度が60 ℃に達する「水損失(湿潤温室効果)」の限界であるハビタブルゾーンの内縁に位置し、十分高度が高い領域に[[対流圏]]があり、大気が完全に水蒸気で飽和している地球のような惑星に適用される。[[成層圏]]が湿ると水蒸気[[光分解]]により水素が宇宙空間に放出される。この時点では、雲のフィードバックによる冷却は、さらに強い温暖化の効果により著しくは強くならない。「最大温室効果(Maximum greenhouse)」の限界であるハビタブルゾーンの外縁では、二酸化炭素が支配的な気圧約8 barの大気が最も強い温室効果を生み出し、二酸化炭素がさらに増加しても大気圏外で凍結するのを防ぐために十分な温室効果は発生しないとされている。楽観的な推定では範囲は0.97–1.70 auとなっている。この楽観的な推定では、二酸化炭素の雲による放射温暖化の可能性は考慮されていない。 |
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| 0.38 || || Zsomら(2013){{R|Zsom2013}} || 惑星の大気組成、圧力および相対湿度などの考えられる様々な組み合わせに基づいて推定されている。 |
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| 0.95 || || Leconteら(2013)<ref>{{cite journal|last=Leconte|first=Jeremy|last2=Forget|first2=Francois|last3=Charnay|first3=Benjamin|last4=Wordsworth|first4=Robin|last5=Pottier|first5=Alizee|title=Increased insolation threshold for runaway greenhouse processes on Earth like planets|year=2013|journal=Nature|pmid=24336285|volume=504|issue=7479|pages=268–271|doi=10.1038/nature12827|bibcode=2013Natur.504..268L|arxiv=1312.3337}}</ref> || 3Dモデルを用いて、Leconteらは太陽系のハビタブルゾーンの内縁を0.95 auとした。 |
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| 0.95 || 2.4 || RamirezとKaltenegger(2017){{R|Ramirez2017}} || 火山性水素の大気濃度を50%と仮定したときの古典的な二酸化炭素と水蒸気のハビタブルゾーンの拡大{{R|Kasting1993}}を示した。 |
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=== 太陽系外での推定値 === |
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GHZについてはまだ研究が進んでおらず、生物に対する超新星などによる放射線の影響はまだ解明されていない。研究では重い元素や[[金属量 (天文)|金属性物質]]が非常に多く、恒星が近い軌道に巨大な惑星を保持していると見られる領域が存在することも明らかにされている。このような巨大惑星をもつ惑星系では、生命が誕生する可能性を持つ地球クラスの惑星を破壊するかもしれない。これらの理由から、銀河のHZを決定するには不確かなことが多いため、明確な定義付けはできない可能性がある。 |
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[[File:Habitable zone - HZ.png|thumb|250px|恒星の光度に応じたハビタブルゾーンの位置]] |
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{{See also|[[:en:Habitability of red dwarf systems|赤色矮星系の居住可能性]]|橙色矮星系の居住可能性}} |
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天文学者らは、恒星の[[放射束]]と[[逆2乗の法則]]を用いて太陽系のために考案されたハビタブルゾーンのモデルを他の[[惑星系]]でも当てはめている。例えば、太陽系のハビタブルゾーンの中間は太陽から1.34 au離れているところにあるとすると{{R|Kopparapu2013}}、太陽の0.25倍の[[光度 (天文学)|光度]]を持つ恒星の場合、恒星からハビタブルゾーンの中間までの距離は太陽系のハビタブルゾーンの<math>\sqrt{0.25}</math>倍、すなわち0.5倍となり、恒星からは0.67 au離れていることになる。しかし、恒星自体の個々の特性も含む様々な要素もあるため、ハビタブルゾーンの概念を太陽系外に当てはめることはより複雑なものになる。 |
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=== スペクトル分類と恒星系の特性 === |
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== 脚注・参考資料 == |
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[[File:Circling Two Suns.ogv|thumb|300px|2011年に[[ケプラー47]]と呼ばれる連星の周囲で発見された、2つの惑星(現在は3つの惑星が知られている)の重要性について解説している動画]] |
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一部の科学者たちは、惑星系のハビタブルゾーンの概念は実際にはある種の恒星やその[[スペクトル分類]]に限定されるものだと主張している。例えば[[連星]]では、三重連星系の場合における固有の軌道安定性の懸念も加えて、単一星の場合とは異なるハビタブルゾーンを持つ<ref>{{cite journal|last=Cuntz|first=Manfred|title=S-Type and P-Type Habitability in Stellar Binary Systems: A Comprehensive Approach. I. Method and Applications|year=2013|journal=The Astrophysical Journal|volume=780|issue=1|page=14|doi=10.1088/0004-637X/780/1/14|bibcode=2014ApJ...780...14C|arxiv=1303.6645}}</ref>。もし太陽系がそのような連星系であった場合、結果として得られる外縁までの距離は2.4 auにまで及んでいたかもしれない<ref>{{cite journal|last=Forget|first=F.|last2=Pierrehumbert|first2=R. T.|title=Warming Early Mars with Carbon Dioxide Clouds That Scatter Infrared Radiation|year=1997|journal=Science|volume=278|issue=5341|pages=1273–1276|pmid=9360920|doi=10.1126/science.278.5341.1273|bibcode=1997Sci...278.1273F|citeseerx=10.1.1.41.621}}</ref><ref>{{cite journal|last=Mischna|first=M.|last2=Kasting|first2=J. F.|last3=Pavlov|first3=A.|last4=Freedman|first4=R.|title=Influence of Carbon Dioxide Clouds on Early Martian Climate|year=2000|journal=Icarus|volume=145|issue=2|pages=546–554|pmid=11543507|doi=10.1006/icar.2000.6380|bibcode=2000Icar..145..546M}}</ref>。 |
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恒星のスペクトル分類について、[[ハンガリー]]の天文学者Zoltán Balogは、強い[[紫外線]]を放射している[[O型主系列星]]の周辺では惑星は形成されないことを示している<ref>{{cite press release| url=http://www.spitzer.caltech.edu/news/863-feature06-31-Planets-Prefer-Safe-Neighborhoods|title=Planets Prefer Safe Neighborhoods|publisher=Spitzer.caltech.edu|author=Vu, Linda|agency=NASA/Caltech|accessdate=2019-07-23}}</ref>。また、紫外線の放射について調査したAndrea Buccinoらの研究チームは、調査を行った恒星(太陽も含む)のうち40%のみが、ハビタブルゾーンと適度な紫外線を受ける領域とが重なることを発見している<ref>{{cite journal|last=Buccino|first=Andrea P.|last2=Lemarchand|first2=Guillermo A.|last3=Mauas|first3=Pablo J. D.|title=Ultraviolet radiation constraints around the circumstellar habitable zones|year=2006|journal=Icarus|volume=183|issue=2|pages=491–503|doi=10.1016/j.icarus.2006.03.007|arxiv=astro-ph/0512291|bibcode 2006Icar..183..491B|citeseerx=10.1.1.337.8642}}</ref>。一方で、太陽より小さな恒星には居住性に明らかな障害が見られる。例えば天文学者Michael Hartは、スペクトル分類[[K型主系列星|K0型]]もしくはそれより明るい[[主系列星]]のみがハビタブルゾーンを持てることを提案しており、現在ではこの主張は[[赤色矮星]]の周りを公転する惑星における[[自転と公転の同期|潮汐固定]]半径の概念に発展している。赤色矮星系はこの半径とハビタブルゾーンが一致し、主星との[[潮汐力]]による加熱(潮汐加熱)で引き起こされた[[火山活動]]によって、高温で生命の存在に適さない金星のような惑星が形成されてしまう可能性が示唆されている{{R|Barnes2013}}。 |
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他の天文学者の中には、ハビタブルゾーンはより一般的なもので、温度が低い恒星を公転している惑星であっても液体の水は存在できると主張している者もいる。2013年に発表された気候モデリングでは、潮汐固定を起こしている惑星であっても、赤色矮星が惑星を一定の温度に保たせる可能性が示された{{R|Yang2013}}。天文学教授のEric Agolは、[[白色矮星]]の周辺を公転する惑星であっても[[惑星移動]]を通じて比較的短期間の間、ハビタブルゾーンを維持できると主張している<ref>{{cite journal|author=Agol, Eric|url=https://iopscience.iop.org/2041-8205/731/2/L31/|title=Transit Surveys for Earths in the Habitable Zones of White Dwarfs|year=2011|journal=The Astrophysical Journal Letters|volume=731|issue=2|pages=1–5|doi=10.1088/2041-8205/731/2/L31|arxiv=1103.2791|bibcode=2011ApJ...731L..31A}}</ref>。また中には、[[褐色矮星]]の周りにも準安定的にハビタブルゾーンが同様に存在できると主張している者もいる{{R|Barnes2013}}。また、恒星の進化の過程において[[前主系列星]]の段階、特にその恒星が赤色矮星である場合、恒星系の外縁部にハビタブルゾーンが存在する可能性があり、潜在的には約10億年に渡って持続されるとされている<ref>{{cite journal|last=Ramirez|first=Ramses|last2=Kaltenegger|first2=Lisa|title=Habitable Zones of Pre-Main-Sequence Stars|year=2014|volume=797|issue=2|pages=L25|journal=The Astrophysical Journal Letters|doi=10.1088/2041-8205/797/2/L25|bibcode=2014ApJ...797L..25R|arxiv=1412.1764}}</ref>。 |
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=== 恒星の進化との関係 === |
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[[File:Magnetosphere rendition.jpg|thumb|left|惑星の周囲を取り巻く[[磁気圏]]のような[[宇宙天気]]を遮断する自然構造が、長期間に渡って表面に液体の水を維持させるのに必要かもしれない。]] |
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ハビタブルゾーンは主星の進化に伴って時間を追うごとに変化していく。例えば、1000万年程度しか主系列星の段階を維持しないとされる<ref>{{cite book|last=Carroll|first=Bradley W.|last2=Ostlie|first2=Dale A.|edition=2nd|year=2007|title=An Introduction to Modern Astrophysics}}</ref>高温のO型星の場合、生命の進化が追い付かないほど急速に変化するハビタブルゾーンを持つとされている。一方で赤色矮星は、何千億年にも渡って主系列星の段階を維持するため、生命が発達して進化を起こすのに十分な時間がある惑星を持つ事ができる<ref>{{cite web|last=Richmond|first=Michael|url=http://spiff.rit.edu/classes/phys230/lectures/planneb/planneb.html|title=Late stages of evolution for low-mass stars|publisher=Rochester Institute of Technology|date=2004-11-10|accessdate=2019-07-23}}</ref><ref>{{cite journal|last=Guo|first=J.|last2=Zhang|first2=F.|last3=Chen|first3=X.|last4=Han|first4=Z.|title=Probability distribution of terrestrial planets in habitable zones around host stars|year=2009|journal=Astrophysics and Space Science|volume=323|issue=4|pages=367–373|doi=10.1007/s10509-009-0081-z|bibcode=2009Ap&SS.323..367G|arxiv=1003.1368}}</ref>。しかし主星が主系列星の段階にあっても、そのエネルギー放射は時間が経過するごとに増加していき、ハビタブルゾーンを遠方に追いやってしまう。例えば太陽も、[[太古代]]の明るさは現在の75%しかなかったとされており<ref>{{cite journal|last=Kasting|first=J. F.|last2=Ackerman|first2=T. P.|url=https://zenodo.org/record/1230890/files/article.pdf|format=PDF|title=Climatic Consequences of Very High Carbon Dioxide Levels in the Earth's Early Atmosphere|year=1986|journal=Science|volume=234|issue=4782|pages=1383–1385|doi=10.1126/science.11539665|pmid=11539665}}</ref>、将来的に太陽が[[赤色巨星]]に進化する前であっても継続的に増加するエネルギー放射により、地球をハビタブルゾーンの内側に追いやるとされている{{R|Franck2002}}。この明るさの増加に対処するために「継続的なハビタブルゾーン(Continuously habitable zone)」の概念が導入されている。これは名称の通り、恒星の周辺で絶え間なく居住することができる領域のことを指しており、そこでは惑星クラスの質量を持つ天体は、与えられた期間の間液体の水を維持することができる。一般的なハビタブルゾーンと同様に、「継続的なハビタブルゾーン」も保守的な領域と拡張された領域とに分けることができる{{R|Franck2002}}。 |
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赤色矮星では、わずか数分で恒星全体の明るさが元の2倍にまで明るくなるほどの大規模な[[フレア]]や<ref>{{cite web|first=Ken|last=Croswell|url=https://www.newscientist.com/article/mg16922754.200-red-willing-and-able.html|title=Red, willing and able|format=[http://www.kencroswell.com/reddwarflife.html Full reprint]|work=[[New Scientist]]|date=2001-01-27|accessdate=2019-07-23}}</ref>、表面積の20%を占める巨大な[[恒星黒点]]が発生することがあり<ref>{{cite journal|last=Alekseev|first=I. Y.|last2=Kozlova|first2=O. V.|title=Starspots and active regions on the emission red dwarf star LQ Hydrae|year=2002|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=396|pages=203–211|bibcode=2002A&A...396..203A|doi=10.1051/0004-6361:20021424}}</ref>、ハビタブルゾーン内にある惑星の大気と水が失われてしまう可能性がある{{R|alpert}}。しかし、より大きな恒星と同様に進化の過程においてその性質や[[放射束]]エネルギーを変えるので<ref>{{cite journal|author=Research Corporation| url=http://earthsky.org/space/fewer-flares-starspots-for-older-dwarf-stars|title=Andrew West: 'Fewer flares, starspots for older dwarf stars'|year=2006|journal=EarthSky}}</ref>、形成から約12億年が経過するまでは赤色矮星は、その惑星上で生命の発達させるのには十分に一定の状態を保つとされている{{R|alpert}}<ref>{{cite web|last=Cain|first=Fraser|last2=Gay|first2=Pamela|url=http://media-c02m01.libsyn.com/podcasts/c50d001e8872db18d96cd44a73adccdc/46762eec/astronomycast/AstroCast-070611.mp3|title=AstronomyCast episode 40: American Astronomical Society Meeting, May 2007|work=Universe Today|year=2007|accessdate=2019-07-23|archiveurl=https://wayback.archive-it.org/all/20070926102556/http://media-c02m01.libsyn.com/podcasts/c50d001e8872db18d96cd44a73adccdc/46762eec/astronomycast/AstroCast-070611.mp3|deadurl=yes|archivedate=2007-09-26}}</ref>。 |
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恒星が赤色巨星にまで進化すると、そのハビタブルゾーンの領域は主系列星の段階から劇的に変化する<ref>{{cite web|author=Ray Villard|url=http://www.astrobio.net/topic/solar-system/sun/living-in-a-dying-solar-system-part-1/|title=Living in a Dying Solar System, Part 1|publisher=Astrobiology|date=2009-07-27|accessdate=2019-07-23}}</ref>。例えば太陽の場合、赤色巨星に進化すると現在はハビタブルゾーンに位置している地球も太陽に飲み込まれると予想されている<ref>{{cite news|author=Christensen, Bill|url=http://www.space.com/920-red-giants-planets-live.html|title=Red Giants and Planets to Live On|work=Space.com|agency=TechMediaNetwork|date=2005-04-01|accessdate=2019-07-23}}</ref>{{R|Ramirez2016}}。しかしながら、赤色巨星が[[水平分枝]]に一旦進化すると、再び恒星全体の均衡が保たれるようになり、太陽の場合だと7–22 au離れた領域が新たなハビタブルゾーンとして維持されるとされている{{R|Lopez2005}}。この段階になると、[[土星]]の衛星である[[タイタン (衛星)|タイタン]]が現在の地球と似通った温度になるだろう<ref>{{cite journal|last=Lorenz|first=Ralph D.|last2=Lunine|first2=Jonathan I.|last3=McKay|first3=Christopher P.|title=Titan under a red giant sun: A new kind of "habitable" moon|year=1997|journal=Geophysical Research Letters|volume=24|issue=22|pages=2905–2908|issn=0094-8276|doi=10.1029/97GL52843|bibcode=1997GeoRL..24.2905L|pmid=11542268|citeseerx=10.1.1.683.8827}}</ref>。この均衡状態が約10億年の間続き、なおかつ地球上の生命が太陽系の形成から遅くとも7億年後までに出現しているということを考えると、赤色巨星の周辺のハビタブルゾーン内を公転している惑星クラスの質量を持つ天体であっても生命が発達できる可能性がある{{R|Lopez2005}}。しかし、[[光合成]]のような重要な生命過程は大気に二酸化炭素を含む惑星でのみ起こり得るが、そのような[[ヘリウム]]を燃焼して均衡を保っている恒星の周囲を公転する惑星ではその多くが恒星に吸収されてしまう<ref>{{cite news|author=Voisey, Jon|url=http://www.universetoday.com/83248/plausibility-check-habitable-planet-around-red-giants/|title=Plausibility Check – Habitable Planets around Red Giants|work=Universe Today|date=2011-02-23|accessdate=2019-07-23}}</ref>。さらに、2016年にRamirezとKalteneggerが示したように{{R|Ramirez2016}}、その強い恒星風は惑星の大気を完全に吹き飛ばし、よりそのような惑星を居住不可能にするだろう。したがって、太陽が赤色巨星になった後でさえタイタンは居住可能にならないとされている。ただし、生命の存在が検出されるために恒星進化のこの段階で生命が出現する必要は無い。恒星が赤色巨星になり、ハビタブルゾーンが外側に広がると表面の氷が溶けて、赤色巨星になる前に繁殖していたかもしれない生命の兆候を見出すことができる一時的な大気が形成されるとされている{{R|Ramirez2016}}。 |
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=== 砂漠惑星 === |
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大気条件は惑星の熱を保持する能力に影響を与えるので、ハビタブルゾーンの位置はそれぞれのタイプの惑星にとっても特有なものになっている。含まれる水の量が非常に少ない[[砂漠惑星]]({{Lang-en|Desert planet、Dry planet}})は、大気中の水蒸気も少なくなるので、温室効果が減少する。これは砂漠惑星では、太陽から地球までの距離よりも恒星に近い領域で水の[[オアシス]]を維持できることを意味している。水が不足しているということはまた、熱を宇宙空間に反射するための氷が少なくなることを意味しているので、砂漠惑星にとってのハビタブルゾーンの外縁はより遠い位置になる<ref>[http://www.astrobio.net/exclusive/4188/alien-life-more-likely-on-%E2%80%98dune%E2%80%99-planets Alien Life More Likely on 'Dune' Planets] {{webarchive |url=https://web.archive.org/web/20131202223111/http://www.astrobio.net/exclusive/4188/alien-life-more-likely-on-%E2%80%98dune%E2%80%99-planets |date=December 2, 2013 }}, 09/01/11, Charles Q. Choi, ''Astrobiology Magazine''</ref><ref>[http://online.liebertpub.com/doi/abs/10.1089/ast.2010.0545 Habitable Zone Limits for Dry Planets], Yutaka Abe, Ayako Abe-Ouchi, Norman H. Sleep, and Kevin J. Zahnle. ''Astrobiology''. June 2011, 11(5): 443–460. {{DOI|10.1089/ast.2010.0545}}</ref>。 |
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=== その他の考慮事項 === |
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[[Image:BlueMarble-2001-2002.jpg|thumb|地球の水圏。水は地球の表面の71%を覆っており、そのうち[[大洋]]が地球上の水全体の97.3%を占めている。]] |
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{{See also|惑星の居住可能性}} |
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恒星系の中に水の供給源が無ければ、惑星は炭素を基盤とする生命を形成するための重要な要素である[[水圏]]を持つことが出来ない。{{仮リンク|地球の水の起源|en|Origin of water on Earth}}はまだ完全には解明されていない。考えられる可能性としては、氷で出来た天体との衝突、[[ガス放出]]、[[石灰化]]、[[リソスフェア]]からの[[含水鉱物]]の漏出、[[光分解]]による結果などが挙げられる<ref>{{cite journal|last=Drake|first=Michael J.|title=Origin of water in the terrestrial planets|year=2005|journal=Meteoritics & Planetary Science|volume=40|issue=4|pages=519–527|doi=10.1111/j.1945-5100.2005.tb00960.x |bibcode= 2005M&PS...40..519D}}</ref><ref>{{cite conference|url=http://journals.cambridge.org/action/displayFulltext?type=6&fid=415222&jid=IAU&volumeId=1&issueId=S229&aid=414784&bodyId=&membershipNumber=&societyETOCSession=&fulltextType=RA&fileId=S1743921305006861|title= Origin of water in the terrestrial planets|last=Drake|first=Michael J.|last2=Humberto|first2=Campins|conference=229th Symposium of the International Astronomical Union|year=2005|location=Búzios, Rio de Janeiro, Brazil|publisher=Cambridge University Press|volume=1|issue= 4|pages=381–394|doi=10.1017/S1743921305006861|bibcode= 2006IAUS..229..381D|book-title=Asteroids, Comets, and Meteors (IAU S229)|isbn=978-0-521-85200-5}}</ref>。太陽系外の惑星系では、[[凍結線]]より遠い領域から氷でできた天体がハビタブルゾーン内に移動して水深が数百 kmにも及ぶ<ref>{{cite journal|first=Marc|last=Kuchner|title=Volatile-rich Earth-Mass Planets in the Habitable Zone|year=2003|journal=Astrophysical Journal|volume=596|issue=1|pages=L105–L108|doi=10.1086/378397|bibcode=2003ApJ...596L.105K|arxiv=astro-ph/0303186}}</ref>、[[GJ 1214 b]]<ref>{{cite journal|last=Charbonneau|first=David|author2=Zachory K. Bert|author3=Jonathan Irwin|author4=Christopher J. Burke|author5=Philip Nutzman|author6=Lars A. Buchhave|author7=Christophe Lovis|author8=Xavier Bonfils|author9=David W. Latham|author10=Stéphane Udry|author11=Ruth A. Murray-Clay|author12=Matthew J. Holman|author13=Emilio E. Falco|author14=Joshua N. Winn|author15=Didier Queloz|author16=Francesco Pepe|author17=Michel Mayor|author18=Xavier Delfosse|author19=Thierry Forveille|title=A super-Earth transiting a nearby low-mass star|year=2009|journal=Nature|volume=462|issue=17 December 2009|pages=891–894|url=https://www.nature.com/articles/nature08679|doi=10.1038/nature08679|pmid=20016595|bibcode=2009Natur.462..891C|arxiv=0912.3229}}</ref><ref>{{cite journal|last=Kuchner|first=Seager|first2=M.|last2=Hier-Majumder|first3=C. A.|last3=Militzer|url=http://www.iop.org/EJ/abstract/0004-637X/669/2/1279/|title=Mass–radius relationships for solid exoplanets|year=2007|journal=The Astrophysical Journal|volume=669|issue=2|pages=1279–1297|doi=10.1086/521346|bibcode=2007ApJ...669.1279S|arxiv=0707.2895}}</ref>や[[ケプラー22b]]のような[[海洋惑星]]が形成される可能性がある<ref>{{cite news|author=Vastag, Brian|url=https://www.washingtonpost.com/national/health-science/newest-alien-planet-is-just-the-right-temperature-for-life/2011/12/05/gIQAPk1vWO_story.html|title=Newest alien planet is just the right temperature for life|work=The Washington Post|date=2011-12-05|accessdate=2019-07-23}}</ref>。 |
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表面に液体の水を維持するには十分に厚い大気も必要となる。[[地球の大気]]の起源としては現在、内部からのガス放出や[[天体衝突]]によるガスの減少、外部からのガス吸収(Ingassing)によるものと結論付けられている<ref>{{cite journal|last=Robinson|first=Tyler D.|last2=Catling|first2=David C.|title=An Analytic Radiative-Convective Model for Planetary Atmospheres|year=2012|journal=The Astrophysical Journal| volume=757|issue=1|pages=104|doi=10.1088/0004-637X/757/1/104|arxiv=1209.1833|bibcode=2012ApJ...757..104R }}</ref>。大気は、[[生物地球化学的循環]]および大気放出の緩和に類似したプロセスを通じて維持されると考えられている<ref>{{cite journal|last=Shizgal|first=B. D.|last2=Arkos|first2=G. G.|title=Nonthermal escape of the atmospheres of Venus, Earth, and Mars|year=1996|journal=Reviews of Geophysics|volume=34|issue=4|pages=483–505|doi=10.1029/96RG02213|bibcode=1996RvGeo..34..483S}}</ref>。イタリアの天文学者Giovanni Vladiloらによる2013年の研究では、惑星の[[大気圧]]が大きくなるにつれて恒星周辺のハビタブルゾーンの領域が大きくなることが示された{{R|Vladilo2013}}。また、約15 mbar以下の大気圧では、圧力または温度のわずかな変化でも水が液体として存在することが不可能になる可能性があるため、居住性を維持できないことが判明した{{R|Vladilo2013}}。 |
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ハビタブルゾーンの範囲の定義は、伝統的に(地球上に存在している)水蒸気と二酸化炭素が最も重要な温室効果ガスと仮定して決定されているが{{R|hadhazy}}、Ramses RamirezとLisa Kalteneggerによって導かれた研究では、驚異的な[[水素]]の火山性ガス放出も水蒸気や二酸化炭素と同じように温室効果ガスに含まれるとすると、ハビタブルゾーンの範囲が非常に広くなることを示された{{R|Ramirez2017}}。その場合、太陽系のハビタブルゾーンの外縁は2.4 auにまで遠ざかる。 初期のRay PierrehumbertとEric Gaidosによる研究では、二酸化炭素と水という概念を完全に排除して、若い惑星は原始惑星系円盤から気圧数十から数百 barの水素を蓄積し、十分な温室効果を起こせると主張した{{R|Rayeric2011}}。この場合、太陽系のハビタブルゾーンの境界は10 auにまで広がる。しかしこの場合だと、水素は火山活動によって継続的に供給されるわけではないので、数百万から数千万年の間に失われてしまう。 |
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赤色矮星のハビタブルゾーン内を公転する惑星の場合、主星に非常に近い位置にあると[[自転と公転の同期|潮汐固定]]が引き起こされ、居住性において重要な要素となる。潮汐固定されている惑星は[[恒星日]]が[[公転周期]]と同じくらい長くなり、片面を常に主星に向け、もう片面を常にその反対側に向けることになる。過去には、常に主星を向いている面では極端に温度が高くなり、その反対側では極端に温度が低くなると考えられていた。しかし2013年に発表された3次元気候モデルでは、主星に向けている面の広範囲で雲が発生することができ、[[ボンドアルベド]]が増加して両側の温度差が大幅に減少することが示された{{R|Yang2013}}。 |
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惑星ほどの質量を持つ衛星にも居住できる可能性がある。しかし、これらの衛星にはさらに多くのパラメーター条件を満たすことが必要で、特に主惑星が主星のハビタブルゾーン内を公転していることが必要となる{{R|hadhazy}}。さらに具体的には、このような衛星は[[イオ (衛星)|イオ]]のような[[潮汐加熱]]によって[[火山]]で満たされた天体にならないよう、主惑星から十分に離れなければいけないが{{R|hadhazy}}、外部へ放り出されないように主惑星の[[ヒル球|ヒル半径]]よりは内側に留まる必要もある<ref>{{cite journal|author=D. P. Hamilton|author2=J. A. Burns|url=http://www.astro.umd.edu/~hamilton/research/reprints/HamBurns91.pdf|format=PDF|title=Orbital stability zones about asteroids. II – The destabilizing effects of eccentric orbits and of solar radiation|year=1992|journal=Icarus|volume=96|issue=1|pages=43–64|bibcode=1992Icar...96...43H|doi=10.1016/0019-1035(92)90005-R|citeseerx=10.1.1.488.4329}}</ref>。また、太陽の20%以下の質量しか持たない赤色矮星を公転する巨大惑星は居住可能な衛星を持つ事は出来ない。そのような惑星系で衛星が軌道を維持するには、強い潮汐加熱が起きるのに十分なほど主惑星に近い軌道にある必要があり、居住性は見込めなくなる{{R|hadhazy}}。 |
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[[File:Eccentric Habitable Zones.jpg|thumb|right|ハビタブルゾーンを通過する楕円軌道を持つ惑星の想像図]] |
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高い[[離心率|軌道離心率]]で恒星を周回する惑星は、公転周期の一部がハビタブルゾーン内を通過し、表面温度と気圧の大きな変動を受ける可能性がある。こうした軌道は、表面上に断続的にしか水が存在し得ない劇的な季節変化をもたらすとされている。しかし、地下はそのような変化から隔離されている可能性があり、表面上もしくは表面近くの[[極限環境微生物]]は[[冬眠]]([[クリプトビオシス]])や[[好熱菌|超好熱菌]]のような適応能力を通じてこのような過酷な環境でも生き残れる可能性がある。例えば、[[緩歩動物]](クマムシ)は脱水状態でも0.15 K(-273 ℃)<ref>{{cite journal|author=Becquerel P.|title=La suspension de la vie au dessous de 1/20 K absolu par demagnetization adiabatique de l'alun de fer dans le vide les plus eléve|year=1950|journal=C. R. Acad. Sci. Paris|volume=231|pages=261–263|language=French}}</ref>から424 K(151 ℃)<ref>{{cite book|last=Horikawa|first=Daiki D.|title=Anoxia Evidence for Eukaryote Survival and Paleontological Strategies.|year=2012|publisher=Springer Netherlands|isbn=978-94-007-1895-1|pages=205–217|url=http://www.springerlink.com/content/wp400661m4236045/abstract/|edition=21st|editor=Alexander V. Altenbach, Joan M. Bernhard & Joseph Seckbach}}</ref>までの温度下で生き続けることができる。ハビタブルゾーンの外側を公転している惑星の表面上にいる生命は、温度が最も下がる[[近点・遠点|遠点]]に近づくと冬眠状態になり、温度が最も十分に暖かくなる[[近点・遠点|近点]]に近づくと活動を行うかもしれない<ref>{{cite journal|title=The Habitable Zone and Extreme Planetary Orbits|author=Kane, Stephen R.|author2=Gelino, Dawn M.|year=2012|journal=Astrobiology|volume=12|issue=10|pmid=23035897|pages=940–945|doi=10.1089/ast.2011.0798|bibcode=2012AsBio..12..940K|arxiv=1205.2429}}</ref>。 |
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== 太陽系外での発見 == |
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{{See also|居住するのに適した太陽系外惑星の一覧}} |
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[[太陽系外惑星]]の中では2015年のレビューで、[[ケプラー62f]]、[[ケプラー186f]]、そして[[ケプラー442b]]の3つが潜在的に居住可能な惑星の最有力候補である可能性が高いという結論に達している<ref>{{cite web|author=Paul Gilster|author2=Andrew LePage|url=http://www.centauri-dreams.org/?p=32470|title=A Review of the Best Habitable Planet Candidates|publisher=Centauri Dreams, Tau Zero Foundation|date=2015-01-30|accessdate=2019-07-23}}</ref>。これらの惑星はそれぞれ地球から1,200、490、1,120光年離れた位置にある。これらのうちケプラー186fは地球と同程度の規模で、地球の約1.2倍の大きさを持ち、赤色矮星である主星のハビタブルゾーンの外縁付近に位置している。太陽に比較的似ている恒星のハビタブルゾーン内を公転している惑星の中で、[[最寄りの地球型太陽系外惑星の一覧|最も近傍にある地球型惑星]]は[[くじら座タウ星e|くじら座τ星e]]で、地球からは11.9光年離れている。くじら座τ星eはハビタブルゾーンの内縁付近に位置しており、推定表面温度は68 ℃となっている<ref>{{cite book|author=Giovanni F. Bignami|title=The Mystery of the Seven Spheres: How Homo sapiens will Conquer Space|publisher=Springer|year=2015| isbn=978-3-319-17004-6|url=https://books.google.com/books?id=crvpCQAAQBAJ&pg=PA110|page=110}}</ref>。 |
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ハビタブルゾーン内の[[地球型惑星]]の数を推定しようとした研究は、科学的データの有用性を反映する傾向がある。Ravi Kumar Kopparapuによる2013年の研究では、ハビタブルゾーン内に惑星が含まれる確率を示す{{mvar|n<sub>e</sub>}}の値は0.48とされ{{R|Kopparapu2013}}、これは[[銀河系]]内に約95から180億個の居住可能な惑星があるかもしれないことを意味している<ref>{{cite news|author=Wethington, Nicholos|url=http://www.universetoday.com/22380/how-many-stars-are-in-the-milky-way/|title=How Many Stars are in the Milky Way?|work=Universe Today|date=2008-09-16|accessdate=2019-07-23}}</ref>。しかし、これはあくまで単なる統計的予測に過ぎず、こうした惑星のうち発見されているのはほんの一部である{{R|torres}}。 |
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かつて行われていた研究はより保守的なものであった。2011年に、Seth Borensteinは銀河系には生命が居住できる惑星が5億個存在すると結論付けていた<ref>{{cite news|last=Borenstein|first=Seth|title=Cosmic census finds crowd of planets in our galaxy|agency=Associated Press|url=http://apnews.excite.com/article/20110219/D9LG45NO0.html|date=2011-02-19|accessdate=2019-07-23|archiveurl=https://web.archive.org/web/20110927053134/http://apnews.excite.com/article/20110219/D9LG45NO0.html|archivedate=2011-09-27|deadurl=yes}}</ref>。NASAの[[ジェット推進研究所]]による2011年の研究では、[[ケプラー (探査機)|ケプラーミッション]]による観測に基づいて、そのような惑星がより多く存在するとされ、スペクトル分類が[[F型主系列星|F型]]、[[G型主系列星|G型]]、[[K型主系列星|K型]]の恒星の「約1.4–2.7%」がハビタブルゾーン内に惑星を持つと推定された<ref>{{cite web|last=Choi|first=Charles Q.|url=http://www.space.com/11188-alien-earths-planets-sun-stars.html|title=New Estimate for Alien Earths: 2 Billion in Our Galaxy Alone|date=2011-03-21|publisher=Space.com|accessdate=2019-07-23}}</ref><ref>{{cite journal|last=Catanzarite|first=J.|last2=Shao|first2=M.|title =The Occurrence Rate of Earth Analog Planets Orbiting Sun-Like Stars|year=2011|journal=The Astrophysical Journal|volume=738|issue=2|pages=151|doi=10.1088/0004-637X/738/2/151|arxiv=1103.1443|bibcode=2011ApJ...738..151C}}</ref>。 |
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=== 初期の発見 === |
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太陽系外のハビタブルゾーンで初めて惑星が発見されたのは、最初の太陽系外惑星が発見されてからわずか数年後であった。しかし、初期に発見されたこれらのような惑星はいずれも巨大なガス惑星であり、そしてその多くは楕円軌道を描いて公転していた。それにも関わらず、研究ではこれらの惑星を公転する地球ほどの規模を持つ衛星なら液体の水が存在が支えられている可能性が示されている<ref>{{cite journal|author=Williams, D. |author2=Pollard, D.| url=http://journals.cambridge.org/action/displayAbstract?fromPage=online&aid=105145|title=Earth-like worlds on eccentric orbits: excursions beyond the habitable zone|year=2002|journal=International Journal of Astrobiology|volume=1|issue=1|pages=61–69|doi=10.1017/S1473550402001064|bibcode=2002IJAsB...1...61W}}</ref>。初期の発見の一つとして、「暑すぎる」わけでもなく「寒すぎる」わけでもない温度を持つとされたため、当初「ゴルディロックス」という愛称で呼ばれていた[[おとめ座70番星b]]がある。しかし、後の研究で表面温度が金星並みに高くなっている事が示され、液体の水が存在する可能性は排除された<ref>{{cite web|url=http://www.extrasolar.net/planettour.asp?PlanetID=22|title=70 Virginis b|work=Extrasolar Planet Guide|publisher=Extrasolar.net|accessdate=2019-07-23|archiveurl=https://web.archive.org/web/20120619015814/http://www.extrasolar.net/planettour.asp?PlanetID=22|archivedate=2012-06-19}}</ref>。1996年に発見された[[はくちょう座16番星Bb]]は、軌道の一部分だけがハビタブルゾーンを通過する楕円軌道を描いており、このような軌道は極端な季節変化を起こすとされている。しかしながら、シミュレーションではその周囲に十分に大きな衛星があれば、その表面で液体の水の存在が支えられることが示唆されている<ref>{{cite journal|url=http://journals.cambridge.org/action/displayAbstract?fromPage=online&aid=105145|author=Williams, D.|author2=Pollard, D.|title=Earth-like worlds on eccentric orbits: excursions beyond the habitable zone|year=2002|journal=International Journal of Astrobiology|volume=1|issue=1|pages=61–69|doi=10.1017/S1473550402001064|bibcode=2002IJAsB...1...61W}}</ref>。 |
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1998年に発見された[[グリーゼ876b]]と2001年に発見された[[グリーゼ876c]]は主星[[グリーゼ876]]のハビタブルゾーン内を公転する巨大ガス惑星で、両者ともに大きな衛星を持つかもしれない<ref>{{cite journal|title=Theoretical Spectra and Atmospheres of Extrasolar Giant Planets|url=https://iopscience.iop.org/0004-637X/588/2/1121/fulltext|last=Sudarsky|first=David|last2=Burrows|first2=Adam|last3=Hubeny|first3=Ivan|year=2003|journal=The Astrophysical Journal|volume=588|issue=2|pages=1121–1148|doi=10.1086/374331|bibcode=2003ApJ...588.1121S|arxiv=astro-ph/0210216}}</ref>。また1999年には[[アンドロメダ座ウプシロン星|アンドロメダ座υ星]]のハビタブルゾーン内を公転する[[アンドロメダ座ウプシロン星d|アンドロメダ座υ星d]]と呼ばれる別の巨大ガス惑星も発見されている。 |
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2001年4月4日に、その存在が発表された[[HD 28185 b]]は、軌道全体が主星のハビタブルゾーン内に位置している巨大ガス惑星で<ref>{{cite journal|last=Jones|first=B. W.|last2=Sleep|first2=P. N.|last3=Underwood|first3=D. R.|title=Habitability of Known Exoplanetary Systems Based on Measured Stellar Properties|year=2006|journal=The Astrophysical Journal|volume=649|issue=2|pages=1010–1019|doi=10.1086/506557|bibcode=2006ApJ...649.1010J|arxiv=astro-ph/0603200}}</ref>、火星に匹敵するほどの低い軌道離心率を持っている<ref>{{cite journal|last=Butler|first=R. P.|last2=Wright|first2=J. T.|last3=Marcy|first3=G. W.|last4=Fischer|first4=D. A.|last5=Vogt|first5=S. S.|last6=Tinney|first6=C. G.|last7=Jones|first7=H. R. A.|last8=Carter|first8=B. D.|last9=Johnson|first9=J. A.|last10=McCarthy|first10=C.|last11=Penny|first11=A. J.|title=Catalog of Nearby Exoplanets|year=2006|journal=The Astrophysical Journal|volume=646|issue=1|pages=505–522|doi=10.1086/504701|bibcode=2006ApJ...646..505B|arxiv=astro-ph/0607493}}</ref>。HD 28185 bの周囲でそもそも最初から衛星が形成されるかは明らかではないが<ref>{{cite journal|last=Canup|first=R. M.|last2=Ward|first2=W. R.|title=A common mass scaling for satellite systems of gaseous planets|year=2006|journal=Nature|volume=441|issue=7095|pages=834–839|pmid=16778883|doi=10.1038/nature04860|bibcode=2006Natur.441..834C}}</ref>、潮汐の相互作用により、[[地球質量]]ほどの規模を持つ居住可能な衛星を数十億年に渡って軌道上に留めれることが示唆されている<ref>{{cite journal|last=Barnes|first=J. W.|last2=O'Brien|first2=D. P.|title=Stability of Satellites around Close‐in Extrasolar Giant Planets|year=2002|journal=The Astrophysical Journal|volume=575|issue=2|pages=1087–1093|doi=10.1086/341477|bibcode=2002ApJ...575.1087B|arxiv=astro-ph/0205035}}</ref>。 |
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地球の約17倍の質量を持つ巨大ガス惑星である[[HD 69830 d]]は2006年に発見され、地球から41光年離れた恒星[[HD 69830]]のハビタブルゾーン内を公転している<ref>{{cite journal|last=Lovis|first=C.|last2=Mayor|first2=M.|last3=Pepe|first3=F.|last4=Alibert|first4=Y.|last5=Benz|first5=W.|last6=Bouchy| first6=F.|last7=Correia|first7=A. C.|last8=Laskar|first8=J.|last9=Mordasini|first9=C.|url=https://www.nature.com/articles/nature04828|title=An extrasolar planetary system with three Neptune-mass planets|year=2006|journal=Nature|volume=441|issue=7091|pages=305–309|doi=10.1038/nature04828|pmid=16710412|bibcode=2006Natur.441..305L|arxiv=astro-ph/0703024}}</ref>。その翌年には、[[かに座55番星f]]と呼ばれる惑星が[[かに座55番星|かに座55番星A]]のハビタブルゾーン内で発見されている{{R|ScienceDaily}}<ref>{{cite journal|last=Fischer|first=Debra A.|last2=Marcy|first2=Geoffrey W.|last3=Butler|first3=R. Paul|last4=Vogt|first4=Steven S.|last5=Laughlin|first5=Greg|last6=Henry|first6=Gregory W.|last7=Abouav|first7=David|last8=Peek|first8=Kathryn M. G.|last9=Wright|first9=Jason T.|title=Five Planets Orbiting 55 Cancri|year=2008|url=https://iopscience.iop.org/0004-637X/675/1/790/fulltext/|journal=The Astrophysical Journal|volume=675|issue=1|pages=790–801|doi=10.1086/525512|bibcode=2008ApJ...675..790F|arxiv=0712.3917}}</ref>。十分な質量を持つ衛星がこれらの惑星の周囲に存在していれば、その表面で液体の水が存在できると考えられている<ref>{{cite news| url=https://www.theguardian.com/science/2007/nov/07/spaceexploration|title=Could this be Earth's near twin? Introducing planet 55 Cancri f|newspaper=The Guardian|author=Ian Sample, science correspondent|date=2007-11-07|accessdate=2019-07-23}}</ref>。 |
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理論的にはこれらのような巨大惑星が衛星を持つことはできるが、現在の観測技術ではそのような衛星を検出することは難しく、存在が疑問視されている[[ケプラー1625b]]の衛星の事例などを除いて明確に太陽系外衛星が確認されたことは未だ無い。そのため、ハビタブルゾーン内にある固体の表面を持った地球型惑星の発見は大きな関心を集めることになった。 |
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=== 居住可能なスーパーアース === |
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[[File:Gliese 581 - 2010.jpg|thumb|太陽系のハビタブルゾーンとグリーゼ581のハビタブルゾーンの比較]] |
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2007年に発見された[[グリーゼ581c]]は、ハビタブルゾーン内を公転する初めて発見された[[スーパーアース]]であった。この発見は科学界で大きな関心を集めたが、後にグリーゼ581cは金星に似た極端な環境になっていることが後に判明した<ref>{{cite news|url=http://www.space.com/scienceastronomy/070424_exoplanet_side.html|title=Planet Hunters Edge Closer to Their Holy Grail|last=Than|first=Ker|date=2007-02-24|publisher=Space.com|accessdate=2019-07-23}}</ref>。同じ[[グリーゼ581]]系内で、より居住性が高いと考えられている別の惑星として[[グリーゼ581d]]が同年に発見されているが、2014年にその存在を疑問視する研究結果も報告されている<ref>{{cite journal|author=Rpbertspm, R.|author2=Mahadevan, S.|author3=Endl, M|author4=Roy, A.|title=Stellar activity masquerading as planets in the habitable zone of the M dwarf Glise 581|year=2014|journal=Science|volume=345|issue=6195|page=440-444|doi=10.1126/science.1253253}}</ref>。2010年にハビタブルゾーン内に発見された、また別の惑星[[グリーゼ581g]]はcとdよりも居住性が高いと考えられたが、こちらも存在は疑問視されている<ref>{{cite journal|last=Robertson|first=Paul|last2=Mahadevan|first2=Suvrath|last3=Endl|first3=Michael|last4=Roy|first4=Arpita|title=Stellar activity masquerading as planets in the habitable zone of the M dwarf Gliese 581|year=2014|journal=Science|volume=345|issue=6195|pages=440–444|citeseerx=10.1.1.767.2071|doi=10.1126/science.1253253|pmid=24993348|arxiv=1407.1049|bibcode=2014Sci...345..440R}}</ref>。 |
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[[File:Kepler-22 diagram.jpg|thumb|left|太陽と太陽に似た恒星であるケプラー22のハビタブルゾーンとそれぞれの恒星が持つ惑星の大きさの比較]] |
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2011年8月に発見された[[HD 85512 b]]は当初、ハビタブルゾーン内にあると推測されたが<ref>{{cite web|url=http://www.maxisciences.com/plan%E8te-habitable/des-chercheurs-decouvrent-une-planete-potentiellement-habitable_art16635.html|title=Researchers find potentially habitable planet|publisher=maxisciences.com|language=French|date=2011-08-30|accessdate=2019-07-23}}</ref>、2013年にKopparapuらによって提案されたハビタブルゾーンの新たな基準に基づくと、HD 85512 bはハビタブルゾーンよりも内側を公転していることになる{{R|torres}}。 |
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2011年12月にケプラー宇宙望遠鏡によって発見された惑星[[ケプラー22b]]は、初めて[[ソーラーアナログ|太陽に似た恒星]]の周囲で発見された、主星の手前を[[通過 (天文)|通過]]する太陽系外惑星であった<ref>{{cite news|url=https://www.bbc.co.uk/news/science-environment-16040655|title=Kepler 22-b: Earth-like planet confirmed|publisher=BBC|date=2011-12-05|accessdate=2019-07-23}}</ref>。大きさは地球の約2倍で、[[海洋惑星]]である可能性が示されている<ref>{{cite web|last=Scharf|first=Caleb A.|url=http://blogs.scientificamerican.com/life-unbounded/2011/12/08/cant-always-tell-an-exoplanet-by-its-size|title=You Can't Always Tell an Exoplanet by Its Size|magazine=Scientific American|date=2011-12-08|accessdate=2019-07-23}}: "If it [Kepler-22b] had a similar composition to Earth, then we're looking at a world in excess of about 40 Earth masses".</ref>。2011年に発見され、その翌年にその存在が発表された[[グリーゼ667Cc]]は、主星[[グリーゼ667|グリーゼ667C]]のハビタブルゾーン内を公転するスーパーアースである<ref>{{cite journal|first=Guillem|last=Anglada-Escude|first2=Pamela|last2=Arriagada|first3=Steven|last3=Vogt|first4=Eugenio J.|last4=Rivera|first5=R. Paul|last5=Butler|first6=Jeffrey D.|last6=Crane|first7=Stephen A.|last7=Shectman|first8=Ian B.|last8=Thompson|first9=Dante|last9=Minniti|title=A planetary system around the nearby M dwarf GJ 667C with at least one super-Earth in its habitable zone|year=2012|journal=The Astrophysical Journal|volume=751|issue=1|page=L16|doi=10.1088/2041-8205/751/1/L16|bibcode=2012ApJ...751L..16A|arxiv=1202.0446}}</ref>。 |
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2012年9月に、地球から約49光年離れた赤色矮星の[[グリーゼ163]]<ref>{{cite web|title=Results for HIP 19394|url=https://simbad.u-strasbg.fr/simbad/sim-id?Ident=HIP+19394|work=[[SIMBAD]] Astronomical Database|publisher=[[ストラスブール天文データセンター|CDS]]|accessdate=2019-07-23}}</ref>のハビタブルゾーン内を公転している[[グリーゼ163c]]が発見された。グリーゼ163cは少なくとも地球の6.9倍の質量を持ち、大きさは地球の1.8–2.4倍と推定されている。主星から地球よりも約40%多い放射線を受けているので、表面温度は約60 ℃とされている<ref>{{cite web|last=Méndez|first=Abel|title=A Hot Potential Habitable Exoplanet around Gliese 163|url=http://phl.upr.edu/press-releases/ahotpotentialhabitableexoplanetaroundgliese163|publisher=University of Puerto Rico at Arecibo|work=Planetary Habitability Laboratory|date=2012-08-29|accessdate=2019-07-23}}</ref><ref>{{cite web|author=Nola Taylor Redd|title=Newfound Alien Planet a Top Contender to Host Life|url=http://www.space.com/17684-alien-planet-gliese-163c-extraterrestrial-life.html|publisher=Space.com|date=2012-09-20|accessdate=2019-07-23}}</ref><ref>{{cite web| url=http://www.spacedaily.com/reports/A_Hot_Potential_Habitable_Exoplanet_around_Gliese_163_999.html|title=A Hot Potential Habitable Exoplanet around Gliese 163|publisher=Spacedaily.com|accessdate=2019-07-23}}</ref>。2012年11月に暫定的に発見された惑星候補[[HD 40307 g]]は、主星[[HD 40307]]のハビタブルゾーン内を公転している<ref>{{cite journal|author=Tuomi, Mikko|author2=Anglada-Escude, Guillem|author3=Gerlach, Enrico|author4= Jones, Hugh R. R.|author5=Reiners, Ansgar|author6=Rivera, Eugenio J.|author7=Vogt, Steven S.|author8=Butler, Paul|title=Habitable-zone super-Earth candidate in a six-planet system around the K2.5V star HD 40307|year=2012|journal=Astronomy and Astrophysics|doi=10.1051/0004-6361/201220268|volume=549|pages=A48|bibcode=2013A&A...549A..48T|arxiv=1211.1617}}</ref>。2012年12月には、約12光年離れている太陽に似た恒星[[くじら座タウ星|くじら座τ星]]のハビタブルゾーン内を公転する[[くじら座タウ星e|くじら座τ星e]]と[[くじら座タウ星f|くじら座τ星f]]と呼ばれる2つの惑星が発見された<ref>{{cite web|author=Aron, Jacob|url=https://www.newscientist.com/article/dn23021-nearby-tau-ceti-may-host-two-planets-suited-to-life.html|title=Nearby Tau Ceti may host two planets suited to life|publisher=Reed Business Information|work=New Scientist|date=2012-12-19|accessdate=2019-07-23}}</ref>。質量は地球よりも大きいが、現在までに知られているハビタブルゾーン内を公転する惑星の中では最も質量が小さい惑星の一つである<ref>{{cite journal|last=Tuomi|first=M.|last2=Jones|first2=H. R. A.|last3=Jenkins|first3=J. S.|last4=Tinney|first4=C. G.|last5=Butler|first5=R. P.|last6=Vogt|first6=S. S.|last7=Barnes|first7=J. R.|last8=Wittenmyer|first8=R. A.|last9=o'Toole|first9=S.|last10=Horner|first10=J.|last11=Bailey|first11=J.|last12=Carter|first12=B. D.|last13=Wright|first13=D. J.|last14=Salter|first14=G. S.|last15=Pinfield|first15=D.|title=Signals embedded in the radial velocity noise|year=2013|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=551|pages=A79|doi=10.1051/0004-6361/201220509|arxiv=1212.4277|bibcode=2013A&A...551A..79T}}</ref>。しかし、外側を公転しているくじら座τ星fはHD 85512 bと同様に2013年にKopparapuらによって提案されたハビタブルゾーンの基準に基づくと、ハビタブルゾーン内には存在していないことになる<ref>{{cite web|author=Torres, Abel Mendez|url=http://phl.upr.edu/projects/habitable-exoplanets-catalog|title=The Habitable Exoplanets Catalog|publisher=University of Puerto Rico|work=Habitable Exoplanets Catalog|date=2013-05-01|accessdate=2019-07-23}}</ref>。 |
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=== 地球に近い大きさの惑星とソーラーアナログ === |
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[[File:Kepler186f-ComparisonGraphic-20140417 improved.jpg|thumb|right|地球程度の大きさを持つ惑星ケプラー186fと地球の大きさ、そしてそれぞれの惑星系のハビタブルゾーンの想像図(2014年4月17日時点)]] |
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[[File:Kepler-452b System.jpg|thumb|right|ケプラー186fよりは大きいが、惑星ケプラー452bの軌道とその主星はより地球のものに似ている]] |
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最近では、大きさや質量が地球に似ていると考えられている惑星も発見されるようになってきた。「地球規模(Earth-sized)」といえる惑星の範囲は、通常は質量によって定義されている。一般的に1.9地球質量が「スーパーアースクラス」の定義域の下限として用いられることが多く、一方で、地球よりも小さい惑星の分類である「サブアースクラス(sub-Earth class)」は金星質量(0.815地球質量)以下の範囲となる。半径が1.5[[地球半径]]を超える場合、中心部のにある岩石質の核より上にある体積の大部分が揮発性の物質になるため<ref>{{cite journal|author=Lauren M. Weiss|author2=Geoffrey W. Marcy|url=https://iopscience.iop.org/article/10.1088/2041-8205/783/1/L6|title=The mass-radius relation for 65 exoplanets smaller than 4 Earth radii|year=2014|journal=The Astrophysical Journal Letters|volume=783|issue=1|page=7|doi=10.1088/2041-8205/783/1/L6|bibcode=2014ApJ...783L...6W|arxiv=1312.0936}}</ref>、半径が大きくなると惑星の平均密度が急速に小さくなる。これを考慮して地球規模の惑星の上限半径を1.5地球半径とすることもある。とても地球に似ている惑星の分類である{{仮リンク|アースアナログ|en|Earth analog}}(もしくはアースツイン)に分類されるには、大きさや質量以上に多くの条件を満たす必要がある。しかし、そのような特性を観測することは現在の技術では不可能である。 |
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太陽に似ている恒星は[[ソーラーアナログ]](またはソーラーツイン)に分類される。今日までに、太陽と特性が完全に一致する太陽の「双子星」はまだ知られていないが、特性がほとんど一致する太陽の「双子星」と考えられる恒星がいくつか存在している。太陽と同じG2V型のスペクトル分類、5,778 Kの表面温度、一致した[[金属量]]を持ち、形成から約46億年が経過しており、[[光度 (天文学)|光度]]の変化が0.1%になっている恒星が正確な太陽の「双子星」となる<ref>{{cite web|url=https://science.nasa.gov/science-news/science-at-nasa/2013/08jan_sunclimate/|title=Solar Variability and Terrestrial Climate|publisher=NASA Science|date=2013-01-08|accessdate=2019-07-23}}</ref>。形成から46億年が経過した恒星は最も安定した状態にある。適切な金属量や大きさもまた、小さな光度変化ことに対して非常に重要なものとなる<ref>{{cite web|url=http://astro.unl.edu/classaction/animations/stellarprops/stellarlum.html|title=Stellar Luminosity Calculator|publisher=University of Nebraska-Lincoln astronomy education group|accessdate=2019-07-23}}</ref><ref>{{cite book|url=http://www.nap.edu/catalog/13519/the-effects-of-solar-variability-on-earths-climate-a-workshop|title=The Effects of Solar Variability on Earth's Climate: A Workshop Report|first=National Research|last=Council|date=18 September 2012|publisher=|doi=10.17226/13519|isbn=978-0-309-26564-5}}</ref><ref>[http://scienceblogs.com/startswithabang/2013/06/05/most-of-earths-twins-arent-identical-or-even-close/ Most of Earth's twins aren't identical, or even close!], By Ethan. June 5, 2013.</ref>。 |
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NASAの[[ケプラー (探査機)|ケプラー宇宙望遠鏡]]と[[W・M・ケック天文台]]によって収集されたデータから、銀河系内に含まれる太陽のような恒星の22%がそのハビタブルゾーン内に地球規模の惑星を持つと推定されている<ref>{{cite web|url=https://oceanservice.noaa.gov/facts/et-oceans.html|title=Are there oceans on other planets?|work=National Oceanic and Atmospheric Administration|date=2017-07-06|accessdate=2019-07-23}}</ref>。 |
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2013年1月7日、ケプラーのミッションチームに属する天文学者たちは、太陽に似た恒星[[ケプラー69]]を公転する、地球の1.7倍の大きさを持つ地球規模の太陽系外惑星候補[[ケプラー69c]](KOI-172.02)の発見を発表した。この惑星はハビタブルゾーン内にあり、居住に適した環境になっていると予想された{{R|NASA-20130418|NYT-20130418}}<ref>{{cite web|last=Moskowitz|first=Clara|title=Most Earth-Like Alien Planet Possibly Found|url=http://www.space.com/19201-most-earth-like-alien-planet.html|publisher=Space.com|date=2013-01-09|accessdate=2019-07-23}}</ref><ref>{{cite journal|last=Barclay|first=Thomas|last2=Burke|first2=Christopher J.|last3=Howell|first3=Steve B.|last4=Rowe|first4=Jason F.|last5=Huber|first5=Daniel|last6=Isaacson|first6=Howard|last7=Jenkins|first7=Jon M.|last8=Kolbl|first8=Rea|last9=Marcy|first9=Geoffrey W.|title=A Super-Earth-Sized Planet Orbiting in or Near the Habitable Zone Around a Sun-Like Star|year=2013|journal=The Astrophysical Journal| volume=768|issue=2|pages=101|doi=10.1088/0004-637X/768/2/101|bibcode=2013ApJ...768..101B|arxiv=1304.4941}}</ref>。しかし、現在では[[暴走温室効果]]により表面は金星のような環境になっていると考えられている<ref>{{cite journal|author=Stephen R. Kane|author2=Thomas Barclay|author3=Dawn M. Gelino|title=A Potential Super-Venus in the Kepler-69 System|journal=The Astrophysical Journal Letters|volume=770|issue=2|page=L20|arxiv=1305.2933|doi=10.1088/2041-8205/770/2/L20|bibcode=2013ApJ...770L..20K}}</ref>。同年4月19日には、ケプラーチームは[[ケプラー62]]のハビタブルゾーン内を公転する2つの惑星の発見が発表された。これらの惑星は[[ケプラー62e]]と[[ケプラー62f]]と呼ばれており、それぞれ地球の1.6倍と1.4倍の大きさを持つ{{R|NASA-20130418|NYT-20130418}}<ref>{{cite journal|last=Borucki|first=William J. ''et al.''|url=http://www.sciencemag.org/content/early/2013/04/17/science.1234702|title=Kepler-62: A Five-Planet System with Planets of 1.4 and 1.6 Earth Radii in the Habitable Zone|journal=Science Express|year=2013|doi=10.1126/science.1234702|volume=340|issue=6132|pages=587–590|arxiv=1304.7387|bibcode=2013Sci...340..587B|pmid=23599262}}</ref>。 |
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2014年4月に発見が発表された地球の1.1倍の大きさを持つ惑星[[ケプラー186f]]は、質量が知られておらず、主星もソーラーアナログではないにも関わらず、[[太陽系外惑星の発見方法#トランジット法|トランジット法]]によって発見された最も地球に大きさが近い惑星である<ref>{{cite news|last=Chang|first=Kenneth|title=Scientists Find an 'Earth Twin,' or Maybe a Cousin|url=https://www.nytimes.com/2014/04/18/science/space/scientists-find-an-earth-twin-or-maybe-a-cousin.html|work=The New York Times|date=2014-04-07|accessdate=2019-07-23}}</ref><ref>{{cite news|last=Chang|first=Alicia|title=Astronomers spot most Earth-like planet yet|url=http://apnews.excite.com/article/20140417/DAD832V81.html|work=[[AP News]]|date=2014-04-17|accessdate=2019-07-23}}</ref><ref>{{cite news|last=Morelle|first=Rebecca|title='Most Earth-like planet yet' spotted by Kepler|url=https://www.bbc.co.uk/news/science-environment-27054366|work=[[BBC News]]|date=2014-04-17|accessdate=2019-07-23}}</ref>。 |
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2014年6月に発見された[[カプタインb]]は12.8光年離れた位置にある赤色矮星[[カプタイン星]]のハビタブルゾーン内を公転しており、地球の約4.8倍の質量を持つ岩石惑星で、半径は地球の1.5倍ほどと推定されている<ref>{{cite web|last=Wall|first=Mike|title=Found! Oldest Known Alien Planet That Might Support Life|url=http://www.space.com/26115-oldest-habitable-alien-planet-kapteyn-b.html|date=2014-06-03|publisher=Space.com|accessdate=2019-07-23}}</ref>。しかし、2015年には存在を疑問視する研究結果も報告されている<ref>{{cite journal|last=Robertson|first=Paul|last2=Roy|first2=Arpita|last3=Mahadevan|first3=Suvrath|title=Stellar activity mimics a habitable-zone planet around Kapteyn's star|year=2015|journal=The Astrophysical Journal|volume=805|issue=2|pages=L22|issn=2041-8213|doi=10.1088/2041-8205/805/2/L22|bibcode=2015ApJ...805L..22R|arxiv=1505.02778}}</ref>。 |
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2015年1月6日、NASAはケプラー宇宙望遠鏡によって発見された太陽系外惑星が1,000に達したと発表した。それと同時にハビタブルゾーン内を公転する新たな3つの惑星[[ケプラー438b]]・[[ケプラー440b]]・[[ケプラー442b]]が発表された{{R|NASA-20150106}}。そのうちケプラー438bとケプラー442bは地球に近い大きさで、おそらく岩石から構成されている{{R|NASA-20150106}}。残るケプラー440bはスーパーアースとされている。同年1月16日に発見が発表された惑星[[K2-3d]]は地球の約1.5倍の半径を持ち、主星[[K2-3]]のハビタブルゾーン内を公転しており、地球よりも1.4倍多くの可視光放射を受けていることが判明している<ref>{{cite news|first=Mari N.|last=Jensen|url=https://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150116093052.htm|title=Three nearly Earth-size planets found orbiting nearby star: One in 'Goldilocks' zone|work=Science Daily|date=2015-01-16|accessdate=2019-07-23}}</ref>。 |
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2015年7月23日に発見が発表された[[ケプラー452b]]は地球よりも50%大きく、おそらく岩石から成るとされている。[[G型主系列星|G型星]](ソーラーアナログ)に分類される恒星[[ケプラー452]]のハビタブルゾーン内を385日かけて公転している<ref>{{cite journal|last=Jenkins|first=Jon M.|last2=Twicken|first2=Joseph D.|last3=Batalha|first3=Natalie M.|last4=Caldwell|first4=Douglas A.|last5=Cochran|first5=William D.|last6=Endl|first6=Michael|last7=Latham|first7=David W.|last8=Esquerdo|first8=Gilbert A.|last9=Seader|first9=Shawn|last10=Bieryla|first10=Allyson|last11=Petigura|first11=Erik|last12=Ciardi|first12=David R.|last13=Marcy|first13=Geoffrey W.|last14=Isaacson|first14=Howard|last15=Huber|first15=Daniel|last16=Rowe|first16=Jason F.|last17=Torres|first17=Guillermo|last18=Bryson|first18=Stephen T.|last19=Buchhave|first19=Lars|last20=Ramirez|first20=Ivan|last21=Wolfgang|first21=Angie|last22=Li|first22=Jie|last23=Campbell|first23=Jennifer R.|last24=Tenenbaum|first24=Peter|last25=Sanderfer|first25=Dwight|last26=Henze|first26=Christopher E.|last27=Catanzarite|first27=Joseph H.|last28=Gilliland|first28=Ronald L.|last29=Borucki|first29=William J.|title=Discovery and Validation of Kepler-452b: A 1.6 R⨁ Super Earth Exoplanet in the Habitable Zone of a G2 Star|year=2015|journal=The Astronomical Journal|volume=150|issue=2|page=56|issn=1538-3881|doi=10.1088/0004-6256/150/2/56|url=https://iopscience.iop.org/1538-3881/150/2/56/article|arxiv=1507.06723|bibcode=2015AJ....150...56J}}</ref><ref>{{cite web|url=http://bnonews.com/news/index.php/news/id961|title=NASA telescope discovers Earth-like planet in star's habitable zone|work=[[BNO News]]|date=2015-0|accessdate=2019-07-23}}</ref>。主星や軌道要素が地球のものと似ているため、発表において「Earth 2.0」や「地球のいとこ」といった表現が用いられた<ref>{{cite web|title=NASA’s Kepler Mission Discovers Bigger, Older Cousin to Earth|url=https://www.nasa.gov/press-release/nasa-kepler-mission-discovers-bigger-older-cousin-to-earth|publisher=NASA|date=2015-07-23|accessdate=2018-0-23}}</ref>。 |
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2016年7月、227光年離れた位置にある赤色矮星[[K2-72]]の周囲を公転している潜在的に居住可能な2つの惑星が、ケプラーの延長ミッションであるK2ミッションでの観測で発見された。これらの惑星は[[K2-72d]]と[[K2-72e]]と呼ばれ、両社共に地球とほぼ同じ大きさで、主星から受ける放射量もほぼ同等である<ref>{{cite journal|last=Dressing|first=Courtney D.|last2=Vanderburg|first2=Andrew|last3=Schlieder|first3=Joshua E.|last4=Crossfield|first4=Ian J. M.|last5=Knutson|first5=Heather A.|last6=Newton|first6=Elisabeth R.|last7=Ciardi|first7=David R.|last8=Fulton|first8=Benjamin J.|last9=Gonzales|first9=Erica J.|last10=Howard|first10=Andrew W.|last11=Isaacson|first11=Howard|last12=Livingston|first12=John|last13=Petigura|first13=Erik A.|last14=Sinukoff|first14=Evan|last15=Everett|first15=Mark|last16=Horch|first16=Elliott|last17=Howell|first17=Steve B.|url=https://authors.library.caltech.edu/78341/2/Dressing_2017_AJ_154_207.pdf|format=PDF|title=Characterizing K2 Candidate Planetary Systems Orbiting Low-mass Stars. II. Planetary Systems Observed During Campaigns 1–7|year=2017|journal=The Astronomical Journal|volume=154|issue=5|pages=207|issn=1538-3881|doi=10.3847/1538-3881/aa89f2|arxiv=1703.07416|bibcode=2017AJ....154..207D}}</ref>。 |
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[[File:PIA22094-TRAPPIST-1-PlanetLineup-20180205.jpg|250px|サムネイル|左|TRAPPIST-1の惑星と太陽系の岩石惑星の比較]] |
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2017年2月には、約40光年離れた[[超低温矮星]][[TRAPPIST-1]]のハビタブルゾーン内を、すでに2016年5月に存在が発表されていた惑星を含めて複数の惑星が公転していることが判明したと発表された<ref>{{cite journal|url=http://www.eso.org/public/archives/releases/sciencepapers/eso1706/eso1706a.pdf|format=PDF|last1=Gillon|first1=Michaël|last2=Triaud|first2=Amaury H. M. J. ''et al.''|title=Seven temperate terrestrial planets around the nearby ultracool dwarf star TRAPPIST-1|year=2017|journal=Nature|volume=542|issue=7642|pages=456-460|issn=0028-0836|doi=10.1038/nature21360}}</ref>。 |
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2017年4月20日に発見が発表された高密度惑星[[LHS 1140b]]は、地球の6.6倍の質量と1.4倍の半径を持ち、主星の[[LHS 1140]]は太陽の15%ほどの質量で、大部分の赤色矮星よりもフレアなどの恒星活動が弱い<ref>{{cite journal|title=A temperate rocky super-Earth transiting a nearby cool star|journal=Nature|volume=544|issue=7650|pages=333–336|year=2017|last1=Dittmann|first1=Jason A.|last2=Irwin|first2=Jonathan M.|last3=Charbonneau|first3=David|last4=Bonfils|first4=Xavier|last5=Astudillo-Defru|first5=Nicola|last6=Haywood|first6=Raphaëlle D.|last7=Berta-Thompson|first7=Zachory K.|last8=Newton|first8=Elisabeth R.|last9=Rodriguez|first9=Joseph E.|last10=Winters|first10=Jennifer G.|last11=Tan|first11=Thiam-Guan|last12=Almenara|first12=Jose-Manuel|last13=Bouchy|first13=François|last14=Delfosse|first14=Xavier|last15=Forveille|first15=Thierry|last16=Lovis|first16=Christophe|last17=Murgas|first17=Felipe|last18=Pepe|first18=Francesco|last19=Santos|first19=Nuno C.|last20=Udry|first20=Stephane|last21=Wünsche|first21=Anaël|last22=Esquerdo|first22=Gilbert A.|last23=Latham|first23=David W.|last24=Dressing|first24=Courtney D.|doi=10.1038/nature22055|pmid=28426003|arxiv=1704.05556|bibcode=2017Natur.544..333D}}</ref>。LHS 1140bはトランジット法と[[ドップラー分光法]](視線速度法)の両方によって検出されている数少ない惑星で、大気を観測できる可能性がある。 |
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2017年6月にドップラー分光法で発見された、地球の約3倍の質量を持つ惑星[[ルイテンb]]は、12.2光年離れた位置にある[[ルイテン星]]のハビタブルゾーン内を公転している<ref>{{cite web| url=https://www.wired.co.uk/article/sonar-sending-music-into-space-habitable-exoplanet|title=Astronomers are beaming techno into space for aliens to decode|work=Wired UK|date=2017-11-16|accessdate=2019-07-23}}</ref>。 |
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11光年離れた位置にある、恒星活動が比較的静かな赤色矮星[[ロス128]]の10年間に渡る視線速度のデータの調査により、2017年11月に惑星[[ロス128b]]が発見された。地球の1.35倍の質量を持ち、地球規模の大きさで岩石で構成されていると考えられている<ref>{{cite web|url=https://www.space.com/38782-possibly-earth-like-alien-planet-ross-128b.html|title=In Earth's Backyard: Newfound Alien Planet May be Good Bet for Life|publisher=Space.com|date=2017-11-15|accessdate=2019-07-23}}</ref>。 |
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2018年3月に発見された惑星[[K2-155d]]は、地球の1.64倍の半径を持った岩石惑星と考えられており、203光年離れた赤色矮星のハビタブルゾーン内を公転している<ref>{{cite web|title=K2-155 d|url=https://exoplanets.nasa.gov/newworldsatlas/6173/|publisher=Exoplanet Exploration|year=2018|accessdate=2019-07-23}}</ref><ref>{{cite web|last=Mack|first=Eric|title=A super-Earth around a red star could be wet and wild|url=https://www.cnet.com/news/super-earth-exoplanet-k2-155d-found-could-be-habitable-nasa/|website=[[CNET]]|date=2018-03-13|accessdate=2019-07-23}}</ref><ref>{{cite web|last=Whitwam|first=Ryan|title=Kepler Spots Potentially Habitable Super-Earth Orbiting Nearby Star|url=https://www.extremetech.com/extreme/265576-kepler-spots-potentially-habitable-super-earth-orbiting-nearby-star|publisher=[[ExtremeTech]]|date=2018-03-14|accessdate=2019-07-23}}</ref>。 |
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2019年6月、12.5光年離れた位置にある暗い赤色矮星[[ティーガーデン星]]のハビタブルゾーン内に地球とほぼ同等の質量を持つ2つの惑星が発見されたと発表された<ref>{{cite journal|last=Zechmeister|first=M.|last2=Dreizler|first2=S.|last3=Ribas|first3=I.|last4=Reiners|first4=A.|last5=Caballero|first5=J. A.|title=The CARMENES search for exoplanets around M dwarfs. Two temperate Earth-mass planet candidates around Teegarden's Star|year=2019|journal=Astronomy and Astrophysics|issn=0004-6361|doi=10.1051/0004-6361/201935460|bibcode=2019arXiv190607196Z|arxiv=1906.07196}}</ref>。 |
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{| class="wikitable" style="margin:0.5em auto; width:600px;" |
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! ケプラーが発見した注目の太陽系外惑星 |
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| style="font-size:88%" | [[File:PIA19827-Kepler-SmallPlanets-HabitableZone-20150723.jpg|600px]] |
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<center>ハビタブルゾーン内で発見された小型の太陽系外惑星<br>([[ケプラー62e]]・[[ケプラー62f]]・[[ケプラー155c]]・[[ケプラー186f]]・[[ケプラー235e]]・[[ケプラー283c]]・[[ケプラー296e]]・[[ケプラー296f]]・[[ケプラー438b]]・[[ケプラー440b]]・[[ケプラー442b]]・[[ケプラー452b]]){{R|NASA-20150106}} |
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|} |
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== ハビタブルゾーン外での居住性 == |
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[[Image:Liquid lakes on titan.jpg|thumb|upright|土星の衛星タイタンにある炭化水素の湖の発見は、ハビタブルゾーン理論を支える炭素排外論(Carbon chauvinism)に疑問を投げかけ始めている]] |
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液体の水がある環境は、大気圧が無い場合やハビタブルゾーンの領域外でも存在できることがわかっている。例えば、[[土星]]の衛星である[[タイタン (衛星)|タイタン]]や[[エンケラドゥス (衛星)|エンケラドゥス]]、そして[[木星]]の衛星である[[エウロパ (衛星)|エウロパ]]や[[ガニメデ (衛星)|ガニメデ]]は、地下に大量の水をたたえた海を持っているかもしれない<ref>{{cite web|last=Torres|first=Abel|url=http://phl.upr.edu/library/media/liquidwaterinthesolarsystem|title=Liquid Water in the Solar System|date=2012-06-12|accessdate=2019-07-23}}</ref>。 |
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ハビタブルゾーンの外では、潮汐加熱と[[放射性崩壊]]の2つが液体の水の存在に寄与できる可能性のある熱源である{{R|Cowen|Bryner}}。2011年にAbbotとSwitzerhaは、放射性崩壊による加熱と厚い表層の氷による断熱の結果として、[[地下水]]が[[自由浮遊惑星]]に存在する可能性を提唱した{{R|physcisarxivlab}}。 |
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地球上の生命体は、実際には安定した地下の生息地から発生したのではないかという理論もあり<ref>{{cite web|author=Munro, Margaret|title=Miners deep underground in northern Ontario find the oldest water ever known|url=http://news.nationalpost.com/2013/05/15/worlds-oldest-water-bubbling-into-northern-ontario-mine/|work=National Post|year=2013|accessdate=2019-07-23}}</ref><ref>{{cite web|title=The Origin of Life II: How did it begin?|url=http://cosmos.asu.edu/sites/default/files/publication_files/originsoflife_ii.pdf|format=PDF|author=Davies, Paul|year=2013|accessdate=2019-07-23}}{{リンク切れ|date=2019-07}}</ref>、これらのような地下の湿った地球外生命体の生息地が「生命で溢れる」ようになるのは一般的なものかもしれない<ref>{{cite web|author=Taylor, Geoffrey|title=Life Underground|url=http://www.psrd.hawaii.edu/Dec96/PSRD-LifeUnderground.pdf|format=PDF|work=Planetary Science Research Discoveries|year=1996|accessdate=2019-07-23}}</ref>。実際に地球上でも、表面から6 km以上深いところで微生物を発見できる可能性がある<ref>{{cite news|author=Doyle, Alister|title=Deep underground, worms and "zombie microbes" rule|url=https://www.reuters.com/article/2013/03/04/us-life-idUSBRE9230WM20130304|newspaper=Reuters|date=2013-03-04|accessdate=2019-07-23}}</ref>。 |
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もう一つ考えられる可能性として、ハビタブルゾーン外の天体に生息する生命体が水を全く必要としない[[代わりの生化学]]を用いるかもしれないということが挙げられる。宇宙生物学者のChristopher McKayは、[[メタン]](CH<sub>4</sub>)が「氷の生物(Cryolife)」の進化を促す[[溶媒]]になる可能性があることを示しており、太陽系における「メタンのハビタブルゾーン」は太陽から11 au(約16億1000万 km)離れた領域にある{{R|Villard}}。土星の衛星タイタンはこのメタンのハビタブルゾーン付近に位置しており、[[炭化水素]]の[[湖]]の存在や大気からメタンの雨が降ることから、タイタンはMcKayが提案した「氷の生物」を発見するのに理想的な環境となっている{{R|Villard}}。さらに、微生物実験ではいくつかの条件下ならハビタブルゾーン外でも生命体が生存可能であることが判明している<ref>{{cite journal|last=Nicholson|first=W. L.|last2=Moeller|first2=R.|last3=Horneck |first3=G.|author4=PROTECT Team|title=Transcriptomic Responses of Germinating Bacillus subtilis Spores Exposed to 1.5 Years of Space and Simulated Martian Conditions on the EXPOSE-E Experiment PROTECT|year=2012|journal=Astrobiology|volume=12|issue=5|pages=469–486|bibcode=2012AsBio..12..469N|doi=10.1089/ast.2011.0748|pmid=22680693}}</ref>。 |
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== 複雑な知的生命体にとっての意義 == |
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[[レアアース仮説]]では複雑で知的な生命体は非常に稀であり、ハビタブルゾーンはそれにおいて重要な要素の一つであると主張している。2004年にWardとBrownleeが出版した書籍によると、ハビタブルゾーンと天体の表面にある液体の水は生命体を維持するための主要な要素だけでなく、[[多細胞生物]]の出現と進化に必要な二次的条件を支えるための要素でもあるとされている。居住性をもたらすには、[[地質学]]([[プレートテクトニクス]]の維持における液体の水の役割)<ref>{{cite book|author=Brownlee, Donald|author2=Ward, Peter|title=Rare Earth: Why Complex Life Is Uncommon in the Universe|publisher=Copernicus|location=New York|year=2004|isbn=978-0-387-95289-5}}</ref>と[[生化学]](大気の酸素化に必要な[[光合成]]を支える放射エネルギーの役割)<ref>{{cite book|last=Decker|first=Heinz|last2=Holde|first2=Kensal E.|chapter=Oxygen and the Exploration of the Universe|title=Oxygen and the Evolution of Life|year=2011|pages=157–168|doi=10.1007/978-3-642-13179-0_9|isbn=978-3-642-13178-3}}</ref>の両方の二次的要素が必要となる。しかし一方で、2002年に[[イアン・スチュアート (数学者)|イアン・スチュアート]]とJack Cohenが記した著書「''Evolving the Alien''」では知的生命体はハビタブルゾーンの外側でも出現し得ると主張している{{R|cohen}}。ハビタブルゾーン外での知的生命体は代わりの生化学どころか{{R|cohen}}、核反応からでさえ<ref>{{cite book|last=Goldsmith|first=Donald|last2=Owen|first2=Tobias|title=The Search for Life in the Universe|publisher=Addison-Wesley|edition=2nd|year=1992|page=247|isbn=978-0-201-56949-0}}</ref>、地下環境で進化する可能性がある。 |
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地球上では、いくつかの複雑な多細胞生物(または[[真核生物]])がハビタブルゾーン外の状態を乗り切れる可能性があることが確認されている。地熱エネルギーは古代の迂回的な生態系を維持し、''Riftia pachyptila''([[シボグリヌム科]])のような複雑で大型の生命体の存在を支えている<ref>{{cite book|author=Vaclav Smil|title=The Earth's Biosphere: Evolution, Dynamics, and Change|url=https://books.google.com/books?id=8ntHWPMUgpMC|year=2003|publisher=MIT Press|isbn=978-0-262-69298-4|page=166}}</ref>。ハビタブルゾーンの外側にある、エウロパやエンケラドゥスのような固体の地殻の下で加熱された海でも同様の環境になっているかもしれない<ref>{{cite journal|author=Reynolds, R. T.|author2=McKay, C. P.|author3=Kasting, J. F.|title=Europa, Tidally Heated Oceans, and Habitable Zones Around Giant Planets|journal=Advances in Space Research|volume=7|issue=5|pages=125–132|year=1987|doi=10.1016/0273-1177(87)90364-4|url=http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0273117787903644|bibcode=1987AdSpR...7..125R}}</ref>。真核生物を含む多数の微生物が擬似条件下、および地球[[低軌道]]上で研究実験が行われている。例として[[オニクマムシ]]は、水の沸点を超えるような極端に高い温度下や冷たい真空の宇宙空間でも耐えることができる<ref>{{cite journal|author=Guidetti, R.|author2=Jönsson, K. I.|date=2002|title=Long-term anhydrobiotic survival in semi-terrestrial micrometazoans|journal=Journal of Zoology|volume=257|pages=181–187|doi=10.1017/S095283690200078X|issue=2|citeseerx=10.1.1.630.9839}}</ref>。さらに、[[チズゴケ]]や''Xanthoria elegans''([[チャシブゴケ菌綱]])といった植物は、表面に液体の水が存在するには不十分なほど薄い大気圧下や、放射エネルギーがほとんどの植物が光合成に必要とする量よりもはるかに少ない環境下でも生存することが判明している<ref>{{cite web|last=Baldwin|first=Emily|title=Lichen survives harsh Mars environment|url=http://www.skymania.com/wp/2012/04/lichen-survives-harsh-martian-setting.html|publisher=Skymania New|date=2012-04-26|accessdate=2019-07-23}}</ref><ref>{{cite web|last=de Vera|first=J. P.|last2=Kohler|first2=Ulrich|title=The adaptation potential of extremophiles to Martian surface conditions and its implication for the habitability of Mars|url=http://media.egu2012.eu/media/filer_public/2012/04/05/10_solarsystem_devera.pdf|format=PDF|publisher=European Geosciences Union|date=2012-04-26|accessdate=2019-07-23|deadurl=yes|archiveurl=https://web.archive.org/web/20120504224706/http://media.egu2012.eu/media/filer_public/2012/04/05/10_solarsystem_devera.pdf|archivedate=2012-05-04}}</ref>{{R|Onofri2015}}。[[菌類]]の''Cryomyces antarcticus''や''Dothideomycetes''(共に[[クロイボタケ綱]])もまた、火星のような環境下でも生存して繁殖することができる{{R|Onofri2015}}。 |
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[[ヒト]]を含む{{仮リンク|動物認識|en|Animal cognition}}を持つことが知られている種は大量のエネルギーを必要とし<ref>{{cite journal|last=Isler|first=K.|last2=van Schaik|first2=C. P|title=Metabolic costs of brain size evolution|journal=Biology Letters|volume=2|issue=4|year=2006|pages=557–560|issn=1744-9561|doi=10.1098/rsbl.2006.0538|pmid=17148287|pmc=1834002}}</ref>、大気中に豊富に含まれている酸素と放射エネルギーから合成された多くの化学エネルギーの利用可能性を含む特定の条件下に適応している。人類が他の惑星を植民化するのであれば、ハビタブルゾーン内にある真のアースアナログは地球に最も自然環境が近い生息地をもたらす惑星となる可能性が高い。この概念は1964年のStephen H. Doleによる研究で基礎づけられている。惑星に適切な温度、重力、大気圧、そして水があれば、[[宇宙服]]や[[スペースコロニー]]の必要性が排除され、地球上の複雑な生命体がその惑星で繁栄する可能性がある{{R|Dole1964}}。 |
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ハビタブルゾーン内にある惑星は、地球以外の場所で[[地球外生命|知的生命体]]を探している研究者にとっては依然として最も重要な関心事となっている<ref>{{cite news|url= https://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=130215192|title='Goldilocks' Planet's Temperature Just Right For Life|author=Palca, Joe|publisher=NPR|work=2010-09-29|accessdate=2019-07-23}}</ref>。この銀河系内にある知的文明の数を推定するために時々使用される[[ドレイクの方程式]]では、各恒星のハビタブルゾーンを公転する惑星質量天体の平均数を示す{{mvar|n<sub>e</sub>}}という因子が含まれている。この値が低いとレアアース仮説を支持するものになり、知的生命体が宇宙では珍しいものであると仮定される。逆に値が高いと[[ニコラウス・コペルニクス]]が唱えた[[コペルニクスの原理]](平凡の原理)の根拠を示すものとなる{{R|Rare Earth}}。1971年の[[フランク・ドレイク]]と[[バーナード・オリバー]]によるNASAの報告では、[[ヒドロキシ基]]と水の成分である水素の[[スペクトル]]における[[吸収線]]に基づいた「水の穴(Water hole)」を地球外生命体とのコミュニケーション手段に明白かつ適切なバンドとして提案し<ref>{{cite web|url=https://ntrs.nasa.gov/archive/nasa/casi.ntrs.nasa.gov/19730010095_1973010095.pdf|format-PDF|title=Project Cyclops: A design study of a system for detecting extraterrestrial intelligent life|publisher=NASA|year=1971|accessdate=2019-07-23}}</ref><ref>{{cite book|author=Joseph A. Angelo|title=Life in the Universe|url=https://books.google.com/books?id=I5gHntgLLvIC&pg=PA163|year=2007|publisher=Infobase Publishing|isbn=978-1-4381-0892-6|page=163}}</ref>、それ以来この提案は地球外知的生命体の探求に関わる天文学者たちによって広く採用されてきた。Jill TarterやMargaret Turnbullなどによれば、ハビタブルゾーン候補は「狭い滝壺」を探すための最優先目標であるとしている<ref>{{cite journal|last=Turnbull|first=Margaret C.|last2=Tarter|first2=Jill C.|title=Target Selection for SETI. I. A Catalog of Nearby Habitable Stellar Systems|year=2003|journal=The Astrophysical Journal Supplement Series|volume=145|issue=1||pages=181–198|doi=10.1086/345779|arxiv=astro-ph/0210675|bibcode=2003ApJS..145..181T}}</ref><ref>{{cite journal|last=Siemion|first=Andrew P. V.|last2=Demorest|first2=Paul|last3=Korpela|first3=Eric|last4=Maddalena|first4=Ron J.|last5=Werthimer|first5=Dan|last6=Cobb|first6=Jeff|last7=Howard|first7=Andrew W.|last8=Langston|first8=Glen|last9=Lebofsky|first9=Mat|title=A 1.1 to 1.9 GHz SETI Survey of the ''Kepler'' Field: I. A Search for Narrow-band Emission from Select Targets|year=2013|journal=The Astrophysical Journal|volume=767|issue=1|pages=94|doi=10.1088/0004-637X/767/1/94|arxiv=1302.0845|bibcode=2013ApJ...767...94S}}</ref>。<!-- and the [[Allen Telescope Array]] now extends [[Project Phoenix (SETI)|Project Phoenix]] to such candidates.<ref>{{cite web|title=HabStars: Speeding Up In the Zone|url=http://www.space.com/13832-seti-ata-search-kepler-planet-candidates.html|year=2011|author=Wall, Mike|accessdate=2013-06-26}}</ref>--> |
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ハビタブルゾーンは複雑な生命体の生息地として最も可能性が高い領域と考えられているので、[[アクティブSETI]](METI)での取り組みは惑星を持つ可能性が高い惑星系に焦点を当てている。例えば2001年に送信された電波信号[[アクティブSETI#電波|ティーンエイジメッセージ]](Teen Age Message)と2003年に送信された[[アクティブSETI#電波|コズミックコール2]](Cosmic Call 2)は、木星規模の惑星を3つ持ち、ハビタブルゾーン内に地球型惑星を持つ可能性がある[[おおぐま座47番星]]系に向かって発信された<ref>{{cite conference|author=Zaitsev, A. L.|url=http://www.cplire.ru/rus/ra&sr/VAK-2004.html|title=Transmission and reasonable signal searches in the Universe|script-title=ru:Передача и поиски разумных сигналов во Вселенной|book-title=Horizons of the Universe|year=2004|conference=Plenary presentation at the National Astronomical Conference WAC-2004 "Horizons of the Universe", Moscow, Moscow State University, June 7, 2004|location=Moscow|language=Russian}}</ref><ref>{{cite web|last=Grinspoon|first=David|url=http://seedmagazine.com/content/article/who_speaks_for_earth/|title=Who Speaks for Earth? |publisher=Seedmagazine.com|date=2007-12-12|accessdate=2019-07-23}}</ref><ref>{{cite journal|author=P. C. Gregory|author2=D. A. Fischer|title=A Bayesian periodogram finds evidence for three planets in 47 Ursae Majoris|year=2010|journal=Monthly Notices of the Royal Astronomical Society|volume=403|issue=2|pages=731–747|doi=10.1111/j.1365-2966.2009.16233.x|bibcode=2010MNRAS.403..731G|arxiv=1003.5549}}</ref><ref>{{cite journal|author=B. Jones|last2=Underwood|first2=David R.|last3=Sleep|first3=P. Nick|title=Prospects for Habitable "Earths" in Known Exoplanetary Systems|year=2005|journal=The Astrophysical Journal|volume=622|issue=2|pages=1091–1101|bibcode=2005ApJ...622.1091J|doi=10.1086/428108|arxiv=astro-ph/0503178}}</ref>。ティーンエイジメッセージはハビタブルゾーン内に巨大ガス惑星を持つ[[かに座55番星]]にも発信された{{R|ScienceDaily}}。2008年に送信された[[アクティブSETI#電波|メッセージフロムアース]](A Message From Earth)<ref>{{cite news|last=Moore|first=Matthew|url=https://www.telegraph.co.uk/news/newstopics/howaboutthat/3166709/Messages-from-Earth-sent-to-distant-planet-by-Bebo.html|title=Messages from Earth sent to distant planet by Bebo|date=2008-10-09|publisher=.telegraph.co.uk|accessdate=2019-07-23|archiveurl=https://web.archive.org/web/20081011142445/http://www.telegraph.co.uk/news/newstopics/howaboutthat/3166709/Messages-from-Earth-sent-to-distant-planet-by-Bebo.html|archivedate=2008-10-11|deadurl=no|location=London}}</ref>および2009年に送信された[[:en:Active SETI#Transmissions|ハローフロムアース]](Hello From Earth)は、ハビタブルゾーン内にcとd、そして未確認のgの3つの惑星を持つグリーゼ581系に発信された。 |
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== その他のハビタブルゾーン == |
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=== 銀河系のハビタブルゾーン (GHZ) === |
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{{Main|:en:Galactic habitable zone}} |
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[[ファイル:Milky Way galactic habitable zone.gif|225px|サムネイル|右|銀河系のハビタブルゾーンは銀河中心から離れた環状領域とされており、概ねこの図の緑色で示した領域が該当するとされている。]] |
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[[銀河]]の中心から十分に近いと考えられるため[[地球型惑星]]が形成されるのに十分な[[金属量]]があり、しかし中心から十分遠くでもあると考えられるために中心付近での高い恒星密度による[[彗星]]や[[小惑星]]の衝突の危険、[[超新星]]爆発による[[放射線]]、さらに銀河中心の[[ブラックホール]]の影響などから逃れられると想像することができる。その銀河内の領域を'''銀河系のハビタブルゾーン'''({{Lang-en|Galactic habitable zone、GHZ}})と表現することがある{{R|Rare Earth|Gowanlock2011}}。すなわち、銀河のなかで惑星系のハビタブルゾーンがどこに存在しうるか、それを考慮しようという試みで生まれた概念である。 |
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[[銀河系]]におけるハビタブルゾーンは、内縁が[[銀河核]]周辺で外縁が中心から10,000パーセク(約32,600光年)離れた環状の範囲で、形成されてから40–80億年が経過した星々を含み、時間が経過するごとにゆっくりと広がっていくとされている{{R|Gowanlock2011}}<ref name="Prantzos2006">{{cite journal|author=Prantzos, Nikos|doi=10.1007/s11214-007-9236-9|title=On the "Galactic Habitable Zone"|year=2006|journal=Space Science Reviews|volume=135|issue=1–4|pages=313–322|arxiv=astro-ph/0612316|bibcode=2008SSRv..135..313P}}</ref><ref>{{cite journal|last=Lineweaver|first= C. H.|last2=Fenner|first2=Y.|last3=Gibson|first3=B. K.|doi=10.1126/science.1092322|title=The Galactic Habitable Zone and the Age Distribution of Complex Life in the Milky Way|year=2004|journal=Science|volume=303|issue=5654|pages=59–62|pmid=14704421|arxiv=astro-ph/0401024|bibcode=2004Sci...303...59L}}</ref>。約250万光年離れている[[アンドロメダ銀河]]のハビタブルゾーンは銀河中心から3,000–7,000パーセク(9,780–22,820光年)離れた領域の形成から60–70億年が経過した恒星から成るという研究がある<ref>{{cite journal|author=E. Spitoni|author2=F. Matteucci|author3=A. Sozzetti|url=https://academic.oup.com/mnras/article/440/3/2588/1750210|title=The galactic habitable zone of the Milky Way and M31 from chemical evolution models with gas radial flows|year=2014|journal= Monthly Notices of the Royal Astronomical Society|volume=440|issue=3|pages=2588-2598|doi=10.1093/mnras/stu484|bibcode=2014MNRAS.440.2588S|arxiv=1403.2268}}</ref>。 |
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しかし、銀河系ハビタブルゾーンという言葉は依然として一般的ではなく、想像の域を出ない概念として批判される面がある。天文学者の Nikos Prantzos は2006年のレビューにおいて、銀河系ハビタブルゾーンがあまりにも不確かなパラメータに基づいていると批判した。彼は、現状の知識ではGHZの範囲について意味のある結論を導き出せないとし、銀河系全体で生命が発達可能と見做すことを提案している<ref name="Prantzos2006" />。GHZの範囲は、銀河系金属量の時間変化や、惑星の存在頻度と金属量の相関関係などの情報に基づいて導出される。これらは観測によって十分に解明されていないので仮定を採り入れざるを得ず、その仮定はGHZの範囲に対して敏感に影響を与えてしまう<ref name="Prantzos2006" />。例えばPrantzosの試算では、GHZは銀河系全域に拡がり、明確な定義付けはできないという結果になっている<ref name="Prantzos2006" />。 |
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=== ブラックホールのハビタブルゾーン === |
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[[ファイル:Black Holes - Monsters in Space.jpg|250px|サムネイル|ブラックホールの周囲に形成される降着円盤と放出されるジェットの想像図]] |
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銀河系のハビタブルゾーンの概念では、中心に存在する[[超大質量ブラックホール]]([[いて座A*]])により銀河系の中心付近は生命体には適しないとされてきた。しかし、2019年5月にこの超大質量ブラックホールの周りで比較的生命体の存在が維持できる領域、すなわち'''ブラックホールのハビタブルゾーン'''が存在するという研究結果が、[[ハーバード大学]]の研究グループによって発表された{{R|sorae|livescience}}。 |
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超大質量ブラックホールの周囲には吸い込んだ物質から成る[[降着円盤]]が形成される。この降着円盤は周囲に[[X線]]などの強い[[電磁波]]を発しており、これまでの研究ではいて座A*クラスの質量を持つ超大質量ブラックホールの場合、ブラックホールから3,200光年以内の範囲にある惑星は放出された電磁波により大気が消失してしまうと考えられていた{{R|sorae|livescience}}。しかし、ハーバード大学のグループによる研究によると、実際にこうした超大質量ブラックホールの周りで電磁波の影響が及ぶのは100光年以内になることが判明し、さらにブラックホールの降着円盤から放出された電磁波の量が、惑星の大気を失わせるほど多くなく、逆に生命体が誕生するのに必要な[[有機物]]や[[化合物]]の反応が進まなくなるほど少なくもない、丁度良いバランスが取れる領域があることが判明し、研究グループはこれがブラックホールのハビタブルゾーンであるとしている{{R|sorae|livescience}}。いて座A*の場合、140光年離れた領域がいて座A*のハビタブルゾーンになると推定されている{{R|sorae|livescience}}。 |
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== 脚注 == |
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=== 注釈 === |
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<references/> |
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{{Reflist|group="注"}} |
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=== 出典 === |
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{{Reflist|3|refs= |
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<ref name="天文学辞典">{{Cite web|和書|url=https://astro-dic.jp/habitable-zone/|title=ハビタブルゾーン|work=天文学辞典|publisher=[[日本天文学会]]|accessdate=2019-07-23}}</ref> |
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<ref name="kotobank">{{Cite web|和書|url=https://kotobank.jp/word/%E3%83%8F%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%96%E3%83%AB%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3-673031|title=ハビタブルゾーンとは - コトバンク|work=[[コトバンク]]|accessdate=2019-07-23}}</ref> |
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<ref name="Dole1964">{{cite book|url=https://www.rand.org/pubs/commercial_books/CB179-1.html|title=Habitable Planets for Man|publisher=Blaisdell Publishing Company|last=Dole|first=Stephen H.|year=1964|page=103}}</ref> |
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<ref name="wakusei">{{Cite web|和書|author=小玉貴則|author2=門屋辰太郎|url=https://www.wakusei.jp/book/pp/2018/2018-2/2018-2-083.pdf|format=PDF|title=系外惑星「遠い世界の物語」 その10 ~ハビタブル惑星の現状とこれから|publisher=[[日本惑星科学会]]|year=2018|accessdate=2019-07-23}}</ref> |
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<ref name="Huggett1995">{{cite book|url=https://books.google.com/books/about/Geoecology.html?id=VyQjwI9UkVIC|title=Geoecology: An Evolutionary Approach|publisher=Routledge, Chapman & Hall|author=Huggett, Richard J.|year=1995|page=10|isbn=978-0-415-08689-9}}</ref> |
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<ref name="Lammer2009">{{cite journal|last=Lammer|first=H.|last2=Bredehöft|first2=J. H.|last3=Coustenis|first3=A.|last4=Khodachenko|first4=M. L. ''et al.''|title=What makes a planet habitable?|year=2009|journal=The Astronomy and Astrophysics Review|volume=17|issue=2|pages=181–249|doi=10.1007/s00159-009-0019-z|url=http://veilnebula.jorgejohnson.me/uploads/3/5/8/7/3587678/lammer_et_al_2009_astron_astro_rev-4.pdf|format=PDF|bibcode=2009A&ARv..17..181L|deadurl=yes|archiveurl=https://web.archive.org/web/20160602235333/http://veilnebula.jorgejohnson.me/uploads/3/5/8/7/3587678/lammer_et_al_2009_astron_astro_rev-4.pdf|archivedate=2016-06-02}}</ref> |
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<ref name="Bryner">{{cite news|author=Bryner, Jeanna|url=http://www.space.com/scienceastronomy/090624-enceladus-ocean.html|title=Ocean Hidden Inside Saturn's Moon|work=Space.com|agency=TechMediaNetwork|date=2009-06-24|accessdate=2019-07-23}}</ref> |
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<ref name="physcisarxivlab">{{cite news|url=http://www.technologyreview.com/view/422659/rogue-planets-could-harbor-life-in-interstellar-space-say-astrobiologists/|title=Rogue Planets Could Harbor Life in Interstellar Space, Say Astrobiologists|work=MIT Technology Review|date=2011-02-09|agency=MIT Technology Review|accessdate=2019-07-23}}</ref> |
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<ref name="Kasting1993">{{cite journal|author=Kasting, James F.|author2=Whitmire, Daniel P.|author3=Reynolds, Ray T.|url=http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0019103583710109|title=Habitable Zones around Main Sequence Stars|year=1993|journal=Icarus|volume=101|issue=1|pages=108–118|doi=10.1006/icar.1993.1010|bibcode=1993Icar..101..108K|pmid=11536936}}</ref> |
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<ref name="Rare Earth">{{cite book|author=Brownlee, Donald|author2=Ward, Peter|title=Rare Earth: Why Complex Life Is Uncommon in the Universe|publisher=Copernicus|location=New York|year=2004|pages=|isbn=978-0-387-95289-5|oclc=|doi=}}</ref> |
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<ref name="Gonzalez2001">{{cite journal|author=Gonzalez, Guillermo|author2=Brownlee, Donald|author3=Ward, Peter|title=The Galactic Habitable Zone I. Galactic Chemical Evolution|year=2001|journal=Icarus|volume=152|issue=1|pages=185–200|doi=10.1006/icar.2001.6617|arxiv=astro-ph/0103165|bibcode=2001Icar..152..185G}}</ref> |
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* [http://www.nikkei-science.net/modules/flash/index.php?id=200203_048 日経サイエンス 2002年3月号 過酷な宇宙で生き残れる場所は] |
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* [http://btc.montana.edu/ceres/astrobiology/files/HabitableZone.htm Interstellar Real Estate: Location, Location, Location – Defining the Habitable Zone] |
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2024年12月8日 (日) 13:00時点における最新版
この項目「ハビタブルゾーン」は翻訳されたばかりのものです。不自然あるいは曖昧な表現などが含まれる可能性があり、このままでは読みづらいかもしれません。(原文:en:Circumstellar habitable zone) 修正、加筆に協力し、現在の表現をより自然な表現にして下さる方を求めています。ノートページや履歴も参照してください。(2019年8月) |
ハビタブルゾーン[1][2](英語: Habitable zone、HZ)とは、地球と似た生命が存在できる天文学上の領域[1]。日本語では生命居住可能領域[1][3]や生存可能圏[1]、生存可能領域[4]と呼ばれる。
概要
[編集]一般的にハビタブルゾーンという言葉は惑星系のハビタブルゾーン(英語: Circumstellar habitable zone、CHZ)を指すことが多く、恒星の周辺において十分な大気圧がある環境下で惑星の表面に液体の水が存在できる範囲を指す[2][5][6][7][8][9]。惑星系のハビタブルゾーンの範囲は、太陽系内における地球の位置と太陽から受ける放射エネルギー量に基づいている。
ハビタブルゾーンはゴルディロックスゾーン(英語: Goldilocks zone、GZ)とも呼ばれる[10]。「ゴルディロックス」は童話の3びきのくまに登場する、暑さや寒さなど極端なものを無視し、その中間にある物事を選ぶ女の子の名前である。ゴルディロックスゾーンはハビタブルゾーンとほぼ同じような形態をとるが、ハビタブルゾーンの中でも生命体の存在だけでなく、進化が起きるのにも適した領域を指すこともある[2]。
ハビタブルゾーンの概念が初めて発表された1953年以来[11]、多くの恒星がハビタブルゾーン内に惑星を持っていることが確認されていて、中にはハビタブルゾーン内を複数の惑星が公転している惑星系も含まれる[12]。そのような惑星の多くは発見するのが容易なスーパー・アースや巨大ガス惑星といった地球よりも大きな惑星である。2013年11月4日、天文学者らは太陽系外惑星探査望遠鏡ケプラーのデータに基づいて、銀河系に存在する太陽に似た恒星や赤色矮星のハビタブルゾーン内を公転する地球規模の惑星は400億個存在することを報告した[13][14]。これらのうち110億個は太陽のような恒星を公転しているかもしれない[15]。地球からケンタウルス座の方向に約4.2光年(約1.3パーセク)離れた位置にある太陽系外惑星プロキシマ・ケンタウリbは、既知の太陽系外惑星では最も地球に近く、主星プロキシマ・ケンタウリのハビタブルゾーン内を公転している[16]。ハビタブルゾーンではまた、惑星を上回る数の惑星規模の衛星が存在する可能性があり、衛星の居住可能性の分野にとって特に興味深いものにもなっている[17]。
ハビタブルゾーンの概念はこの数十年間に渡って、生命体の存在に対する主要な基準としては疑問が呈され続けられており、そのため今もさらなる理論の発展を続けている[18]。地球外に液体の水が存在する証拠が発見されて以来、そのうちのかなりの量が現在、恒星周辺のハビタブルゾーンの外部に存在していると考えられている。太陽系のリソスフェアやアセノスフェア内に大量の水が存在することが知られているのを考えると、地球に存在するのと同じような、恒星からの放射エネルギーを必要としない地下生物圏の概念が宇宙生物学に一般的に受け入れられている[19]。潮汐加熱[20][21]や放射性崩壊[22]などの他のエネルギー源によって維持されたり、大気以外の理由で気圧が加圧されたりすれば、自由浮遊惑星や太陽系外衛星であっても液体の水が存在する可能性がある[23]。液体の水は束一的性質が異なるため、例えば地球上の海水中に含まれる塩化ナトリウム、火星の赤道上の塩化物や硫酸塩[24]、そしてアンモニア[25]の溶液としてより広範囲の圧力下と温度下で存在できる。また代わりの生化学に基づいて、仮想上の生命体にとって有利な、水以外の溶媒が液体の形態で存在し得る広義的なハビタブルゾーンも提案されている[2][26]。
歴史
[編集]液体の水の存在を可能にさせる恒星からの範囲の見積もりについてはアイザック・ニュートンの著書である『自然哲学の数学的諸原理』(第3巻、Section 1、corol. 4)にも見られる[27]。ハビタブルゾーンという概念はドイツの物理学者フーベルトゥス・シュトルクホルトによって1953年に初めて示され、彼は著書『The Green and the Red Planet: A Physiological Study of the Possibility of Life on Mars』内でエコスフィア(英語: Ecosphere)という単語を作り出し、生命体が出現する可能性がある様々な「ゾーン」について言及している[11][28]。同年にアメリカの天文学者ハーロー・シャプレーは「Liquid water belt」と呼ばれる理論を提唱し、これは同じ理論を科学的にさらに詳しく述べたものである。このどちらの研究も生命体にとっての液体の水の重要性を強調することになった[29]。中国出身のアメリカの天体物理学者の黄授書は1959年に、液体の水が十分に大きな天体上に存在する可能性がある恒星の周りの領域を指す「Habitable zone」という用語を、惑星の居住性と地球外生命体の文脈内において初めて導入した[7][30]。初期のハビタブルゾーン理論の主要な寄稿者である黄授書は1960年に、多重連星系内においての恒星のハビタブルゾーンそして地球外生命体の存在は、その不安定な重力の影響により珍しいものになるであろうと主張している[31]。
ハビタブルゾーンの理論は1964年にスティーヴン・H・ドールによって彼の著書『Habitable Planets for Man』でさらに発展することになった。著書の中で彼はハビタブルゾーンの概念と同様に惑星の居住可能性などの 他の様々な決定要因について論じ、最終的に銀河系内に存在するハビタブルゾーンの中に位置する惑星の数は約6億個にのぼると推定している[5]。同時に、空想科学小説家のアイザック・アシモフは宇宙移民に関する彼の様々な研究を通じて、ハビタブルゾーンという概念を世間に広めた[32]。「ゴルディロックスゾーン」という用語は1970年代に登場し、特に液体の水が存在するのに「ちょうど良い」温度になっている恒星の周りの領域を指している[33]。1993年に天文学者ジェームズ・カスティングは、現在主にハビタブルゾーンとして知られている領域をより正確に表すために「惑星系のハビタブルゾーン(Circumstellr habitable zone)」という用語を導入した[7]。太陽系外惑星のハビタブルゾーンの詳細なモデルを初めて公表したのは、カスティングが初めてであった[7][34]。
2000年、古生物学者ピーター・ウォードと天文学者ドナルド・E・ブラウンリーが銀河系のハビタブルゾーンの理論を示したことによりハビタブルゾーンの理論が更新され、後に彼らはこの理論を天文学者のギレルモ・ゴンザレスと共に発展させることになる[35][36]。銀河系内で最も生命体が出現する可能性が最も高い領域と定義されている銀河系のハビタブルゾーンは重元素がより豊富に存在している銀河核に十分近い領域にあるが、それほど近いと銀河の中心部で一般的に見られる強い放射線と強い重力の影響により、恒星系や惑星の軌道そして生命体の出現はしばしば不安定なものになると考えられている[35]。
それ以降、宇宙生物学者の中にはハビタブルゾーンの概念を二水素や硫酸、二窒素、ホルムアミド、メタンといった水以外の溶媒にも拡張することを提案している者や、他には代わりの生物学を用いて仮想の生命体の存在を支持する者もいる。2013年には、自然に形成された衛星の軌道が乱されるなく、かつ惑星からの潮汐加熱で表面の液体の水が沸騰されない領域を示すハビタブルエッジ(英語: Habitable edge)と呼ばれる惑星のハビタブルゾーンが提案されたことにより、ハビタブルゾーン理論のさらなる発展が行われている[37]。
ハビタブルゾーンの測定
[編集]ある天体がその主星のハビタブルゾーン内に位置しているかどうかは、惑星の軌道半径(衛星の場合は主惑星の軌道)、天体自身の質量、および主星の放射束に依存する。惑星系のハビタブルゾーン内に存在する惑星の質量の値が広い範囲に及んでいることを考えると、地球より厚い大気や強力な磁場を維持することができるスーパー・アースの発見と相まって現在では惑星系のハビタブルゾーンは、地球や金星などの比較的低質量の惑星の表面で液体の水が存在できる領域と、より強い温室効果を持つスーパー・アースの表面上で液体の水が存在するのに適した温度になる「Extended habitable zone[注 1]」と呼ばれるより広範囲の領域の2つに区別することが出来る[39]。
ハビタブルゾーンの内縁(恒星に最も近いボーダーライン)は、温室効果によって天体表面の水が蒸発してしまう[18][注 2]。この水蒸気が毛布の役割を果たしてさらなる温室効果を生じ、天体表面の温度がまるで暴走するように上昇する暴走温室効果の状態になる[41]。さらにこの水蒸気は光解離によって分子そのものが分解し、水素として宇宙空間へと放出される[4][42][40]。そのため一般的にハビタブルゾーンの内縁境界の条件は「暴走温室条件」と呼ばれ、暴走温室効果(もしくはそれより少し効果が弱い湿潤温室効果)が発生してしまう惑星からの射出限界と等しい恒星放射を受ける領域とされる[4][42]。一方でハビタブルゾーン外縁境界の条件は「全球凍結条件」と呼ばれ[42]、惑星が全球凍結にならない最低限の恒星放射を受ける領域と定義されている[6][7][4]。
太陽系での推定値
[編集]太陽系内におけるこれまでハビタブルゾーンの推定値は0.38–10.0 auの範囲に及ぶが[43][44][45][46]、様々な原因によりこの推定値を導き出すのは困難であった。この範囲内もしくはそれに近い軌道を周回している多数の惑星クラスの質量を持つ天体は、温度が水の融点よりも高くなるほどの十分な太陽光を受けている。しかし、それらの天体の大気条件は大きく異なっている。例えば金星は遠日点がハビタブルゾーンの内縁付近に位置しており、表面の大気圧は液体の水を保持するのには十分だが、強い温室効果により表面温度は462 ℃(864 ℉)にまで上昇しており、水は水蒸気でしか存在することができない[47]ことにもなるが、上空50 kmの1気圧の地点では75 ℃、55 kmの0.5気圧の地点では27 ℃で水が存在できる温度になっている[48]。月[49]や火星[50]、そして多数の小惑星もまた推定されるハビタブルゾーンの範囲内に位置している。火星の表面上において最も低い高度(表面全体の30%未満)でのみ、水が存在する場合には短期間に渡って液体の状態で存在していられるのに十分な大気圧と温度がある[51]。例えばヘラス盆地では、年間70火星日の間は大気圧が1,115 Paに達し、温度が0 ℃を超えることがある[51]。暖かい火星の斜面において季節的な流体の流れ(Seasonal flows on warm Martian slopes)という形での間接的な証拠があるが[52][53][54][55]、そこに液体の水が存在するという確認はなされていない。ハビタブルゾーン内を公転している彗星を含む、その他の天体の中で準惑星のケレスは唯一惑星クラスの質量を持つ。しかし、質量が小さい事と太陽風による大気の蒸発および喪失を軽減できない事の組み合わせにより、このような天体は表面上に液体の水を維持させることができない。しかし、それにも関わらず、金星[56]や火星[57][58][59]、ベスタ[60]、ケレス[61][62]の表面には過去に液体の水が存在していたことが、研究によって以前考えられていたより強く示唆されている。持続可能な液体の水は複雑な生命体の存在を支えるのに不可欠であると考えられているので、ハビタブルゾーンの推定値のほとんどは、数十億年に渡って表面に液体の水を維持することが可能なほどの表面重力を持っている金星と地球の居住性に及ぼす影響から推定される。
Extended habitable zoneの理論によれば、十分な放射強制力を誘発することができる大気を有する惑星クラスの質量を持つ天体は、太陽から遠く離れたところに液体の水を持つことができる。そのような天体には、大気中に大量の温室効果ガスが含まれている地球よりも質量が大きい岩石惑星(スーパー・アースクラスの質量)も含まれ、最大で100 kbarの表面圧力を持つことができるが、そのような天体は太陽系には存在していない。こうした種類の太陽系外惑星の大気に性質については十分には知られておらず、誘導アルベド(Induced albedo)や反温室効果、もしくは考えられる他の熱源も含んで考慮した大気の正確な温室効果の強さは、ハビタブルゾーン内における天体の位置だけで決定することはできない。
内縁距離 (au) |
外縁距離 (au) |
発表者(発表年) | 注釈 |
---|---|---|---|
0.725 | 1.24 | Dole(1964)[5] | 光学的に薄い大気と固定アルベドを使用して計算された値。金星の遠日点付近に内縁が位置する。 |
1.385–1.398 | Budyko(1969)[63] | 地球が経験するであろう全球規模の凍結の時代を決定するためのアイスアルベドフィードバックモデルの研究に基づいている。この推定は1969年のSellersの研究[64]や1975年のNorthの研究[65]でも支持されている。 | |
0.88–0.912 | RasoolとDe Bergh(1970)[66] | 金星の大気の研究に基づいて、RasoolとDe Berghはこの距離が地球上で安定した海が存在できるであろう最も太陽に近い距離であると結論付けている。 | |
0.95 | 1.01 | Hartら(1979)[67] | 地球の大気組成と地表温度のコンピューターモデリングとシミュレーションに基づいている。この推定は、その後にしばしば出版物で引用されてきた。 |
3.0 | Fogg(1992)[38] | 炭素循環を用いてハビタブルゾーンの外縁距離を推定した。 | |
0.95 | 1.37 | Kastingら(1993)[7] | 今日使用されている最も一般的なハビタブルゾーンの実用的定義を確立した。二酸化炭素と水が地球にとって重要な温室効果ガスであると仮定し、炭酸塩-ケイ酸塩循環(Carbonate-silicate cycle)によりハビタブルゾーンは広いものになっていると主張している。雲のアルベドによる冷却効果にも注目している。左に記載しているのは控えめな制限を与えた推定で、楽観的な推定に基づくとその範囲は0.84–1.67 auとなる。 |
2.0 | Spiegelら(2010)[68] | 大きい軌道傾斜と離心率を組み合わせると、この距離までなら周期的に液体の水が存在できることが提案された。 | |
0.75 | Abeら(2011)[69] | 地球のような水が多い惑星よりも主星に近く、極付近にのみ水が存在し大部分が陸地を占めている「砂漠惑星(Desert planet)」が存在する可能性を示した。 | |
10 | PierrehumbertとGaidos(2011)[70] | 原始惑星系円盤から気圧数十から数千 barの水素を蓄積することができる岩石惑星は、太陽から10 auも離れた領域でも居住可能になる可能性を示した。 | |
0.77–0.87 | 1.02–1.18 | Vladiloら(2013)[71] | 必要な大気圧の下限を15 mbarとした時、ハビタブルゾーンの内縁はさらに太陽に近く、外縁はさらに遠くなることを示した。 |
0.99 | 1.70 | Kopparapuら(2013)[6][72] | Kastingら(1993)の推定値を修正したもの。更新された湿潤温室効果と水分損失のアルゴリズムを用いて公式化している。この測定によると、地球はハビタブルゾーンの内縁に位置しており、湿潤温室効果が起きる距離の限界に近いがわずかにその外側に位置する。Kastingら(1993)と同じように、 これは温度が60 ℃に達する「水損失(湿潤温室効果)」の限界であるハビタブルゾーンの内縁に位置し、十分高度が高い領域に対流圏があり、大気が完全に水蒸気で飽和している地球のような惑星に適用される。成層圏が湿ると水蒸気光分解により水素が宇宙空間に放出される。この時点では、雲のフィードバックによる冷却は、さらに強い温暖化の効果により著しくは強くならない。「最大温室効果(Maximum greenhouse)」の限界であるハビタブルゾーンの外縁では、二酸化炭素が支配的な気圧約8 barの大気が最も強い温室効果を生み出し、二酸化炭素がさらに増加しても大気圏外で凍結するのを防ぐために十分な温室効果は発生しないとされている。楽観的な推定では範囲は0.97–1.70 auとなっている。この楽観的な推定では、二酸化炭素の雲による放射温暖化の可能性は考慮されていない。 |
0.38 | Zsomら(2013)[43] | 惑星の大気組成、圧力および相対湿度などの考えられる様々な組み合わせに基づいて推定されている。 | |
0.95 | Leconteら(2013)[73] | 3Dモデルを用いて、Leconteらは太陽系のハビタブルゾーンの内縁を0.95 auとした。 | |
0.95 | 2.4 | RamirezとKaltenegger(2017)[45] | 火山性水素の大気濃度を50%と仮定したときの古典的な二酸化炭素と水蒸気のハビタブルゾーンの拡大[7]を示した。 |
太陽系外での推定値
[編集]天文学者らは、恒星の放射束と逆2乗の法則を用いて太陽系のために考案されたハビタブルゾーンのモデルを他の惑星系でも当てはめている。例えば、太陽系のハビタブルゾーンの中間は太陽から1.34 au離れているところにあるとすると[6]、太陽の0.25倍の光度を持つ恒星の場合、恒星からハビタブルゾーンの中間までの距離は太陽系のハビタブルゾーンの倍、すなわち0.5倍となり、恒星からは0.67 au離れていることになる。しかし、恒星自体の個々の特性も含む様々な要素もあるため、ハビタブルゾーンの概念を太陽系外に当てはめることはより複雑なものになる。
スペクトル分類と恒星系の特性
[編集]一部の科学者たちは、惑星系のハビタブルゾーンの概念は実際にはある種の恒星やそのスペクトル分類に限定されるものだと主張している。例えば連星では、三重連星系の場合における固有の軌道安定性の懸念も加えて、単一星の場合とは異なるハビタブルゾーンを持つ[74]。もし太陽系がそのような連星系であった場合、結果として得られる外縁までの距離は2.4 auにまで及んでいたかもしれない[75][76]。
恒星のスペクトル分類について、ハンガリーの天文学者Zoltán Balogは、強い紫外線を放射しているO型主系列星の周辺では惑星は形成されないことを示している[77]。また、紫外線の放射について調査したAndrea Buccinoらの研究チームは、調査を行った恒星(太陽も含む)のうち40%のみが、ハビタブルゾーンと適度な紫外線を受ける領域とが重なることを発見している[78]。一方で、太陽より小さな恒星には居住性に明らかな障害が見られる。例えば天文学者Michael Hartは、スペクトル分類K0型もしくはそれより明るい主系列星のみがハビタブルゾーンを持てることを提案しており、現在ではこの主張は赤色矮星の周りを公転する惑星における潮汐固定半径の概念に発展している。赤色矮星系はこの半径とハビタブルゾーンが一致し、主星との潮汐力による加熱(潮汐加熱)で引き起こされた火山活動によって、高温で生命の存在に適さない金星のような惑星が形成されてしまう可能性が示唆されている[79]。
他の天文学者の中には、ハビタブルゾーンはより一般的なもので、温度が低い恒星を公転している惑星であっても液体の水は存在できると主張している者もいる。2013年に発表された気候モデリングでは、潮汐固定を起こしている惑星であっても、赤色矮星が惑星を一定の温度に保たせる可能性が示された[80]。天文学教授のEric Agolは、白色矮星の周辺を公転する惑星であっても惑星移動を通じて比較的短期間の間、ハビタブルゾーンを維持できると主張している[81]。また中には、褐色矮星の周りにも準安定的にハビタブルゾーンが同様に存在できると主張している者もいる[79]。また、恒星の進化の過程において前主系列星の段階、特にその恒星が赤色矮星である場合、恒星系の外縁部にハビタブルゾーンが存在する可能性があり、潜在的には約10億年に渡って持続されるとされている[82]。
恒星の進化との関係
[編集]ハビタブルゾーンは主星の進化に伴って時間を追うごとに変化していく。例えば、1000万年程度しか主系列星の段階を維持しないとされる[83]高温のO型星の場合、生命の進化が追い付かないほど急速に変化するハビタブルゾーンを持つとされている。一方で赤色矮星は、何千億年にも渡って主系列星の段階を維持するため、生命が発達して進化を起こすのに十分な時間がある惑星を持つ事ができる[84][85]。しかし主星が主系列星の段階にあっても、そのエネルギー放射は時間が経過するごとに増加していき、ハビタブルゾーンを遠方に追いやってしまう。例えば太陽も、太古代の明るさは現在の75%しかなかったとされており[86]、将来的に太陽が赤色巨星に進化する前であっても継続的に増加するエネルギー放射により、地球をハビタブルゾーンの内側に追いやるとされている[87]。この明るさの増加に対処するために「継続的なハビタブルゾーン(Continuously habitable zone)」の概念が導入されている。これは名称の通り、恒星の周辺で絶え間なく居住することができる領域のことを指しており、そこでは惑星クラスの質量を持つ天体は、与えられた期間の間液体の水を維持することができる。一般的なハビタブルゾーンと同様に、「継続的なハビタブルゾーン」も保守的な領域と拡張された領域とに分けることができる[87]。
赤色矮星では、わずか数分で恒星全体の明るさが元の2倍にまで明るくなるほどの大規模なフレアや[88]、表面積の20%を占める巨大な恒星黒点が発生することがあり[89]、ハビタブルゾーン内にある惑星の大気と水が失われてしまう可能性がある[90]。しかし、より大きな恒星と同様に進化の過程においてその性質や放射束エネルギーを変えるので[91]、形成から約12億年が経過するまでは赤色矮星は、その惑星上で生命の発達させるのには十分に一定の状態を保つとされている[90][92]。
恒星が赤色巨星にまで進化すると、そのハビタブルゾーンの領域は主系列星の段階から劇的に変化する[93]。例えば太陽の場合、赤色巨星に進化すると現在はハビタブルゾーンに位置している地球も太陽に飲み込まれると予想されている[94][95]。しかしながら、赤色巨星が水平分枝に一旦進化すると、再び恒星全体の均衡が保たれるようになり、太陽の場合だと7–22 au離れた領域が新たなハビタブルゾーンとして維持されるとされている[96]。この段階になると、土星の衛星であるタイタンが現在の地球と似通った温度になるだろう[97]。この均衡状態が約10億年の間続き、なおかつ地球上の生命が太陽系の形成から遅くとも7億年後までに出現しているということを考えると、赤色巨星の周辺のハビタブルゾーン内を公転している惑星クラスの質量を持つ天体であっても生命が発達できる可能性がある[96]。しかし、光合成のような重要な生命過程は大気に二酸化炭素を含む惑星でのみ起こり得るが、そのようなヘリウムを燃焼して均衡を保っている恒星の周囲を公転する惑星ではその多くが恒星に吸収されてしまう[98]。さらに、2016年にRamirezとKalteneggerが示したように[95]、その強い恒星風は惑星の大気を完全に吹き飛ばし、よりそのような惑星を居住不可能にするだろう。したがって、太陽が赤色巨星になった後でさえタイタンは居住可能にならないとされている。ただし、生命の存在が検出されるために恒星進化のこの段階で生命が出現する必要は無い。恒星が赤色巨星になり、ハビタブルゾーンが外側に広がると表面の氷が溶けて、赤色巨星になる前に繁殖していたかもしれない生命の兆候を見出すことができる一時的な大気が形成されるとされている[95]。
砂漠惑星
[編集]大気条件は惑星の熱を保持する能力に影響を与えるので、ハビタブルゾーンの位置はそれぞれのタイプの惑星にとっても特有なものになっている。含まれる水の量が非常に少ない砂漠惑星(英語: Desert planet、Dry planet)は、大気中の水蒸気も少なくなるので、温室効果が減少する。これは砂漠惑星では、太陽から地球までの距離よりも恒星に近い領域で水のオアシスを維持できることを意味している。水が不足しているということはまた、熱を宇宙空間に反射するための氷が少なくなることを意味しているので、砂漠惑星にとってのハビタブルゾーンの外縁はより遠い位置になる[99][100]。
その他の考慮事項
[編集]恒星系の中に水の供給源が無ければ、惑星は炭素を基盤とする生命を形成するための重要な要素である水圏を持つことが出来ない。地球の水の起源はまだ完全には解明されていない。考えられる可能性としては、氷で出来た天体との衝突、ガス放出、石灰化、リソスフェアからの含水鉱物の漏出、光分解による結果などが挙げられる[101][102]。太陽系外の惑星系では、凍結線より遠い領域から氷でできた天体がハビタブルゾーン内に移動して水深が数百 kmにも及ぶ[103]、GJ 1214 b[104][105]やケプラー22bのような海洋惑星が形成される可能性がある[106]。
表面に液体の水を維持するには十分に厚い大気も必要となる。地球の大気の起源としては現在、内部からのガス放出や天体衝突によるガスの減少、外部からのガス吸収(Ingassing)によるものと結論付けられている[107]。大気は、生物地球化学的循環および大気放出の緩和に類似したプロセスを通じて維持されると考えられている[108]。イタリアの天文学者Giovanni Vladiloらによる2013年の研究では、惑星の大気圧が大きくなるにつれて恒星周辺のハビタブルゾーンの領域が大きくなることが示された[71]。また、約15 mbar以下の大気圧では、圧力または温度のわずかな変化でも水が液体として存在することが不可能になる可能性があるため、居住性を維持できないことが判明した[71]。
ハビタブルゾーンの範囲の定義は、伝統的に(地球上に存在している)水蒸気と二酸化炭素が最も重要な温室効果ガスと仮定して決定されているが[37]、Ramses RamirezとLisa Kalteneggerによって導かれた研究では、驚異的な水素の火山性ガス放出も水蒸気や二酸化炭素と同じように温室効果ガスに含まれるとすると、ハビタブルゾーンの範囲が非常に広くなることを示された[45]。その場合、太陽系のハビタブルゾーンの外縁は2.4 auにまで遠ざかる。 初期のRay PierrehumbertとEric Gaidosによる研究では、二酸化炭素と水という概念を完全に排除して、若い惑星は原始惑星系円盤から気圧数十から数百 barの水素を蓄積し、十分な温室効果を起こせると主張した[70]。この場合、太陽系のハビタブルゾーンの境界は10 auにまで広がる。しかしこの場合だと、水素は火山活動によって継続的に供給されるわけではないので、数百万から数千万年の間に失われてしまう。
赤色矮星のハビタブルゾーン内を公転する惑星の場合、主星に非常に近い位置にあると潮汐固定が引き起こされ、居住性において重要な要素となる。潮汐固定されている惑星は恒星日が公転周期と同じくらい長くなり、片面を常に主星に向け、もう片面を常にその反対側に向けることになる。過去には、常に主星を向いている面では極端に温度が高くなり、その反対側では極端に温度が低くなると考えられていた。しかし2013年に発表された3次元気候モデルでは、主星に向けている面の広範囲で雲が発生することができ、ボンドアルベドが増加して両側の温度差が大幅に減少することが示された[80]。
惑星ほどの質量を持つ衛星にも居住できる可能性がある。しかし、これらの衛星にはさらに多くのパラメーター条件を満たすことが必要で、特に主惑星が主星のハビタブルゾーン内を公転していることが必要となる[37]。さらに具体的には、このような衛星はイオのような潮汐加熱によって火山で満たされた天体にならないよう、主惑星から十分に離れなければいけないが[37]、外部へ放り出されないように主惑星のヒル半径よりは内側に留まる必要もある[109]。また、太陽の20%以下の質量しか持たない赤色矮星を公転する巨大惑星は居住可能な衛星を持つ事は出来ない。そのような惑星系で衛星が軌道を維持するには、強い潮汐加熱が起きるのに十分なほど主惑星に近い軌道にある必要があり、居住性は見込めなくなる[37]。
高い軌道離心率で恒星を周回する惑星は、公転周期の一部がハビタブルゾーン内を通過し、表面温度と気圧の大きな変動を受ける可能性がある。こうした軌道は、表面上に断続的にしか水が存在し得ない劇的な季節変化をもたらすとされている。しかし、地下はそのような変化から隔離されている可能性があり、表面上もしくは表面近くの極限環境微生物は冬眠(クリプトビオシス)や超好熱菌のような適応能力を通じてこのような過酷な環境でも生き残れる可能性がある。例えば、緩歩動物(クマムシ)は脱水状態でも0.15 K(-273 ℃)[110]から424 K(151 ℃)[111]までの温度下で生き続けることができる。ハビタブルゾーンの外側を公転している惑星の表面上にいる生命は、温度が最も下がる遠点に近づくと冬眠状態になり、温度が最も十分に暖かくなる近点に近づくと活動を行うかもしれない[112]。
太陽系外での発見
[編集]太陽系外惑星の中では2015年のレビューで、ケプラー62f、ケプラー186f、そしてケプラー442bの3つが潜在的に居住可能な惑星の最有力候補である可能性が高いという結論に達している[113]。これらの惑星はそれぞれ地球から1,200、490、1,120光年離れた位置にある。これらのうちケプラー186fは地球と同程度の規模で、地球の約1.2倍の大きさを持ち、赤色矮星である主星のハビタブルゾーンの外縁付近に位置している。太陽に比較的似ている恒星のハビタブルゾーン内を公転している惑星の中で、最も近傍にある地球型惑星はくじら座τ星eで、地球からは11.9光年離れている。くじら座τ星eはハビタブルゾーンの内縁付近に位置しており、推定表面温度は68 ℃となっている[114]。
ハビタブルゾーン内の地球型惑星の数を推定しようとした研究は、科学的データの有用性を反映する傾向がある。Ravi Kumar Kopparapuによる2013年の研究では、ハビタブルゾーン内に惑星が含まれる確率を示すneの値は0.48とされ[6]、これは銀河系内に約95から180億個の居住可能な惑星があるかもしれないことを意味している[115]。しかし、これはあくまで単なる統計的予測に過ぎず、こうした惑星のうち発見されているのはほんの一部である[116]。
かつて行われていた研究はより保守的なものであった。2011年に、Seth Borensteinは銀河系には生命が居住できる惑星が5億個存在すると結論付けていた[117]。NASAのジェット推進研究所による2011年の研究では、ケプラーミッションによる観測に基づいて、そのような惑星がより多く存在するとされ、スペクトル分類がF型、G型、K型の恒星の「約1.4–2.7%」がハビタブルゾーン内に惑星を持つと推定された[118][119]。
初期の発見
[編集]太陽系外のハビタブルゾーンで初めて惑星が発見されたのは、最初の太陽系外惑星が発見されてからわずか数年後であった。しかし、初期に発見されたこれらのような惑星はいずれも巨大なガス惑星であり、そしてその多くは楕円軌道を描いて公転していた。それにも関わらず、研究ではこれらの惑星を公転する地球ほどの規模を持つ衛星なら液体の水が存在が支えられている可能性が示されている[120]。初期の発見の一つとして、「暑すぎる」わけでもなく「寒すぎる」わけでもない温度を持つとされたため、当初「ゴルディロックス」という愛称で呼ばれていたおとめ座70番星bがある。しかし、後の研究で表面温度が金星並みに高くなっている事が示され、液体の水が存在する可能性は排除された[121]。1996年に発見されたはくちょう座16番星Bbは、軌道の一部分だけがハビタブルゾーンを通過する楕円軌道を描いており、このような軌道は極端な季節変化を起こすとされている。しかしながら、シミュレーションではその周囲に十分に大きな衛星があれば、その表面で液体の水の存在が支えられることが示唆されている[122]。
1998年に発見されたグリーゼ876bと2001年に発見されたグリーゼ876cは主星グリーゼ876のハビタブルゾーン内を公転する巨大ガス惑星で、両者ともに大きな衛星を持つかもしれない[123]。また1999年にはアンドロメダ座υ星のハビタブルゾーン内を公転するアンドロメダ座υ星dと呼ばれる別の巨大ガス惑星も発見されている。
2001年4月4日に、その存在が発表されたHD 28185 bは、軌道全体が主星のハビタブルゾーン内に位置している巨大ガス惑星で[124]、火星に匹敵するほどの低い軌道離心率を持っている[125]。HD 28185 bの周囲でそもそも最初から衛星が形成されるかは明らかではないが[126]、潮汐の相互作用により、地球質量ほどの規模を持つ居住可能な衛星を数十億年に渡って軌道上に留めれることが示唆されている[127]。
地球の約17倍の質量を持つ巨大ガス惑星であるHD 69830 dは2006年に発見され、地球から41光年離れた恒星HD 69830のハビタブルゾーン内を公転している[128]。その翌年には、かに座55番星fと呼ばれる惑星がかに座55番星Aのハビタブルゾーン内で発見されている[129][130]。十分な質量を持つ衛星がこれらの惑星の周囲に存在していれば、その表面で液体の水が存在できると考えられている[131]。
理論的にはこれらのような巨大惑星が衛星を持つことはできるが、現在の観測技術ではそのような衛星を検出することは難しく、存在が疑問視されているケプラー1625bの衛星の事例などを除いて明確に太陽系外衛星が確認されたことは未だ無い。そのため、ハビタブルゾーン内にある固体の表面を持った地球型惑星の発見は大きな関心を集めることになった。
居住可能なスーパーアース
[編集]2007年に発見されたグリーゼ581cは、ハビタブルゾーン内を公転する初めて発見されたスーパーアースであった。この発見は科学界で大きな関心を集めたが、後にグリーゼ581cは金星に似た極端な環境になっていることが後に判明した[132]。同じグリーゼ581系内で、より居住性が高いと考えられている別の惑星としてグリーゼ581dが同年に発見されているが、2014年にその存在を疑問視する研究結果も報告されている[133]。2010年にハビタブルゾーン内に発見された、また別の惑星グリーゼ581gはcとdよりも居住性が高いと考えられたが、こちらも存在は疑問視されている[134]。
2011年8月に発見されたHD 85512 bは当初、ハビタブルゾーン内にあると推測されたが[135]、2013年にKopparapuらによって提案されたハビタブルゾーンの新たな基準に基づくと、HD 85512 bはハビタブルゾーンよりも内側を公転していることになる[116]。
2011年12月にケプラー宇宙望遠鏡によって発見された惑星ケプラー22bは、初めて太陽に似た恒星の周囲で発見された、主星の手前を通過する太陽系外惑星であった[136]。大きさは地球の約2倍で、海洋惑星である可能性が示されている[137]。2011年に発見され、その翌年にその存在が発表されたグリーゼ667Ccは、主星グリーゼ667Cのハビタブルゾーン内を公転するスーパーアースである[138]。
2012年9月に、地球から約49光年離れた赤色矮星のグリーゼ163[139]のハビタブルゾーン内を公転しているグリーゼ163cが発見された。グリーゼ163cは少なくとも地球の6.9倍の質量を持ち、大きさは地球の1.8–2.4倍と推定されている。主星から地球よりも約40%多い放射線を受けているので、表面温度は約60 ℃とされている[140][141][142]。2012年11月に暫定的に発見された惑星候補HD 40307 gは、主星HD 40307のハビタブルゾーン内を公転している[143]。2012年12月には、約12光年離れている太陽に似た恒星くじら座τ星のハビタブルゾーン内を公転するくじら座τ星eとくじら座τ星fと呼ばれる2つの惑星が発見された[144]。質量は地球よりも大きいが、現在までに知られているハビタブルゾーン内を公転する惑星の中では最も質量が小さい惑星の一つである[145]。しかし、外側を公転しているくじら座τ星fはHD 85512 bと同様に2013年にKopparapuらによって提案されたハビタブルゾーンの基準に基づくと、ハビタブルゾーン内には存在していないことになる[146]。
地球に近い大きさの惑星とソーラーアナログ
[編集]最近では、大きさや質量が地球に似ていると考えられている惑星も発見されるようになってきた。「地球規模(Earth-sized)」といえる惑星の範囲は、通常は質量によって定義されている。一般的に1.9地球質量が「スーパーアースクラス」の定義域の下限として用いられることが多く、一方で、地球よりも小さい惑星の分類である「サブアースクラス(sub-Earth class)」は金星質量(0.815地球質量)以下の範囲となる。半径が1.5地球半径を超える場合、中心部のにある岩石質の核より上にある体積の大部分が揮発性の物質になるため[147]、半径が大きくなると惑星の平均密度が急速に小さくなる。これを考慮して地球規模の惑星の上限半径を1.5地球半径とすることもある。とても地球に似ている惑星の分類であるアースアナログ(もしくはアースツイン)に分類されるには、大きさや質量以上に多くの条件を満たす必要がある。しかし、そのような特性を観測することは現在の技術では不可能である。
太陽に似ている恒星はソーラーアナログ(またはソーラーツイン)に分類される。今日までに、太陽と特性が完全に一致する太陽の「双子星」はまだ知られていないが、特性がほとんど一致する太陽の「双子星」と考えられる恒星がいくつか存在している。太陽と同じG2V型のスペクトル分類、5,778 Kの表面温度、一致した金属量を持ち、形成から約46億年が経過しており、光度の変化が0.1%になっている恒星が正確な太陽の「双子星」となる[148]。形成から46億年が経過した恒星は最も安定した状態にある。適切な金属量や大きさもまた、小さな光度変化ことに対して非常に重要なものとなる[149][150][151]。
NASAのケプラー宇宙望遠鏡とW・M・ケック天文台によって収集されたデータから、銀河系内に含まれる太陽のような恒星の22%がそのハビタブルゾーン内に地球規模の惑星を持つと推定されている[152]。
2013年1月7日、ケプラーのミッションチームに属する天文学者たちは、太陽に似た恒星ケプラー69を公転する、地球の1.7倍の大きさを持つ地球規模の太陽系外惑星候補ケプラー69c(KOI-172.02)の発見を発表した。この惑星はハビタブルゾーン内にあり、居住に適した環境になっていると予想された[153][154][155][156]。しかし、現在では暴走温室効果により表面は金星のような環境になっていると考えられている[157]。同年4月19日には、ケプラーチームはケプラー62のハビタブルゾーン内を公転する2つの惑星の発見が発表された。これらの惑星はケプラー62eとケプラー62fと呼ばれており、それぞれ地球の1.6倍と1.4倍の大きさを持つ[153][154][158]。
2014年4月に発見が発表された地球の1.1倍の大きさを持つ惑星ケプラー186fは、質量が知られておらず、主星もソーラーアナログではないにも関わらず、トランジット法によって発見された最も地球に大きさが近い惑星である[159][160][161]。
2014年6月に発見されたカプタインbは12.8光年離れた位置にある赤色矮星カプタイン星のハビタブルゾーン内を公転しており、地球の約4.8倍の質量を持つ岩石惑星で、半径は地球の1.5倍ほどと推定されている[162]。しかし、2015年には存在を疑問視する研究結果も報告されている[163]。
2015年1月6日、NASAはケプラー宇宙望遠鏡によって発見された太陽系外惑星が1,000に達したと発表した。それと同時にハビタブルゾーン内を公転する新たな3つの惑星ケプラー438b・ケプラー440b・ケプラー442bが発表された[164]。そのうちケプラー438bとケプラー442bは地球に近い大きさで、おそらく岩石から構成されている[164]。残るケプラー440bはスーパーアースとされている。同年1月16日に発見が発表された惑星K2-3dは地球の約1.5倍の半径を持ち、主星K2-3のハビタブルゾーン内を公転しており、地球よりも1.4倍多くの可視光放射を受けていることが判明している[165]。
2015年7月23日に発見が発表されたケプラー452bは地球よりも50%大きく、おそらく岩石から成るとされている。G型星(ソーラーアナログ)に分類される恒星ケプラー452のハビタブルゾーン内を385日かけて公転している[166][167]。主星や軌道要素が地球のものと似ているため、発表において「Earth 2.0」や「地球のいとこ」といった表現が用いられた[168]。
2016年7月、227光年離れた位置にある赤色矮星K2-72の周囲を公転している潜在的に居住可能な2つの惑星が、ケプラーの延長ミッションであるK2ミッションでの観測で発見された。これらの惑星はK2-72dとK2-72eと呼ばれ、両社共に地球とほぼ同じ大きさで、主星から受ける放射量もほぼ同等である[169]。
2017年2月には、約40光年離れた超低温矮星TRAPPIST-1のハビタブルゾーン内を、すでに2016年5月に存在が発表されていた惑星を含めて複数の惑星が公転していることが判明したと発表された[170]。
2017年4月20日に発見が発表された高密度惑星LHS 1140bは、地球の6.6倍の質量と1.4倍の半径を持ち、主星のLHS 1140は太陽の15%ほどの質量で、大部分の赤色矮星よりもフレアなどの恒星活動が弱い[171]。LHS 1140bはトランジット法とドップラー分光法(視線速度法)の両方によって検出されている数少ない惑星で、大気を観測できる可能性がある。
2017年6月にドップラー分光法で発見された、地球の約3倍の質量を持つ惑星ルイテンbは、12.2光年離れた位置にあるルイテン星のハビタブルゾーン内を公転している[172]。
11光年離れた位置にある、恒星活動が比較的静かな赤色矮星ロス128の10年間に渡る視線速度のデータの調査により、2017年11月に惑星ロス128bが発見された。地球の1.35倍の質量を持ち、地球規模の大きさで岩石で構成されていると考えられている[173]。
2018年3月に発見された惑星K2-155dは、地球の1.64倍の半径を持った岩石惑星と考えられており、203光年離れた赤色矮星のハビタブルゾーン内を公転している[174][175][176]。
2019年6月、12.5光年離れた位置にある暗い赤色矮星ティーガーデン星のハビタブルゾーン内に地球とほぼ同等の質量を持つ2つの惑星が発見されたと発表された[177]。
ケプラーが発見した注目の太陽系外惑星 |
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(ケプラー62e・ケプラー62f・ケプラー155c・ケプラー186f・ケプラー235e・ケプラー283c・ケプラー296e・ケプラー296f・ケプラー438b・ケプラー440b・ケプラー442b・ケプラー452b)[164] |
ハビタブルゾーン外での居住性
[編集]液体の水がある環境は、大気圧が無い場合やハビタブルゾーンの領域外でも存在できることがわかっている。例えば、土星の衛星であるタイタンやエンケラドゥス、そして木星の衛星であるエウロパやガニメデは、地下に大量の水をたたえた海を持っているかもしれない[178]。
ハビタブルゾーンの外では、潮汐加熱と放射性崩壊の2つが液体の水の存在に寄与できる可能性のある熱源である[20][21]。2011年にAbbotとSwitzerhaは、放射性崩壊による加熱と厚い表層の氷による断熱の結果として、地下水が自由浮遊惑星に存在する可能性を提唱した[23]。
地球上の生命体は、実際には安定した地下の生息地から発生したのではないかという理論もあり[179][180]、これらのような地下の湿った地球外生命体の生息地が「生命で溢れる」ようになるのは一般的なものかもしれない[181]。実際に地球上でも、表面から6 km以上深いところで微生物を発見できる可能性がある[182]。
もう一つ考えられる可能性として、ハビタブルゾーン外の天体に生息する生命体が水を全く必要としない代わりの生化学を用いるかもしれないということが挙げられる。宇宙生物学者のChristopher McKayは、メタン(CH4)が「氷の生物(Cryolife)」の進化を促す溶媒になる可能性があることを示しており、太陽系における「メタンのハビタブルゾーン」は太陽から11 au(約16億1000万 km)離れた領域にある[26]。土星の衛星タイタンはこのメタンのハビタブルゾーン付近に位置しており、炭化水素の湖の存在や大気からメタンの雨が降ることから、タイタンはMcKayが提案した「氷の生物」を発見するのに理想的な環境となっている[26]。さらに、微生物実験ではいくつかの条件下ならハビタブルゾーン外でも生命体が生存可能であることが判明している[183]。
複雑な知的生命体にとっての意義
[編集]レアアース仮説では複雑で知的な生命体は非常に稀であり、ハビタブルゾーンはそれにおいて重要な要素の一つであると主張している。2004年にWardとBrownleeが出版した書籍によると、ハビタブルゾーンと天体の表面にある液体の水は生命体を維持するための主要な要素だけでなく、多細胞生物の出現と進化に必要な二次的条件を支えるための要素でもあるとされている。居住性をもたらすには、地質学(プレートテクトニクスの維持における液体の水の役割)[184]と生化学(大気の酸素化に必要な光合成を支える放射エネルギーの役割)[185]の両方の二次的要素が必要となる。しかし一方で、2002年にイアン・スチュアートとJack Cohenが記した著書「Evolving the Alien」では知的生命体はハビタブルゾーンの外側でも出現し得ると主張している[186]。ハビタブルゾーン外での知的生命体は代わりの生化学どころか[186]、核反応からでさえ[187]、地下環境で進化する可能性がある。
地球上では、いくつかの複雑な多細胞生物(または真核生物)がハビタブルゾーン外の状態を乗り切れる可能性があることが確認されている。地熱エネルギーは古代の迂回的な生態系を維持し、Riftia pachyptila(シボグリヌム科)のような複雑で大型の生命体の存在を支えている[188]。ハビタブルゾーンの外側にある、エウロパやエンケラドゥスのような固体の地殻の下で加熱された海でも同様の環境になっているかもしれない[189]。真核生物を含む多数の微生物が擬似条件下、および地球低軌道上で研究実験が行われている。例としてオニクマムシは、水の沸点を超えるような極端に高い温度下や冷たい真空の宇宙空間でも耐えることができる[190]。さらに、チズゴケやXanthoria elegans(チャシブゴケ菌綱)といった植物は、表面に液体の水が存在するには不十分なほど薄い大気圧下や、放射エネルギーがほとんどの植物が光合成に必要とする量よりもはるかに少ない環境下でも生存することが判明している[191][192][193]。菌類のCryomyces antarcticusやDothideomycetes(共にクロイボタケ綱)もまた、火星のような環境下でも生存して繁殖することができる[193]。
ヒトを含む動物認識を持つことが知られている種は大量のエネルギーを必要とし[194]、大気中に豊富に含まれている酸素と放射エネルギーから合成された多くの化学エネルギーの利用可能性を含む特定の条件下に適応している。人類が他の惑星を植民化するのであれば、ハビタブルゾーン内にある真のアースアナログは地球に最も自然環境が近い生息地をもたらす惑星となる可能性が高い。この概念は1964年のStephen H. Doleによる研究で基礎づけられている。惑星に適切な温度、重力、大気圧、そして水があれば、宇宙服やスペースコロニーの必要性が排除され、地球上の複雑な生命体がその惑星で繁栄する可能性がある[5]。
ハビタブルゾーン内にある惑星は、地球以外の場所で知的生命体を探している研究者にとっては依然として最も重要な関心事となっている[195]。この銀河系内にある知的文明の数を推定するために時々使用されるドレイクの方程式では、各恒星のハビタブルゾーンを公転する惑星質量天体の平均数を示すneという因子が含まれている。この値が低いとレアアース仮説を支持するものになり、知的生命体が宇宙では珍しいものであると仮定される。逆に値が高いとニコラウス・コペルニクスが唱えたコペルニクスの原理(平凡の原理)の根拠を示すものとなる[35]。1971年のフランク・ドレイクとバーナード・オリバーによるNASAの報告では、ヒドロキシ基と水の成分である水素のスペクトルにおける吸収線に基づいた「水の穴(Water hole)」を地球外生命体とのコミュニケーション手段に明白かつ適切なバンドとして提案し[196][197]、それ以来この提案は地球外知的生命体の探求に関わる天文学者たちによって広く採用されてきた。Jill TarterやMargaret Turnbullなどによれば、ハビタブルゾーン候補は「狭い滝壺」を探すための最優先目標であるとしている[198][199]。
ハビタブルゾーンは複雑な生命体の生息地として最も可能性が高い領域と考えられているので、アクティブSETI(METI)での取り組みは惑星を持つ可能性が高い惑星系に焦点を当てている。例えば2001年に送信された電波信号ティーンエイジメッセージ(Teen Age Message)と2003年に送信されたコズミックコール2(Cosmic Call 2)は、木星規模の惑星を3つ持ち、ハビタブルゾーン内に地球型惑星を持つ可能性があるおおぐま座47番星系に向かって発信された[200][201][202][203]。ティーンエイジメッセージはハビタブルゾーン内に巨大ガス惑星を持つかに座55番星にも発信された[129]。2008年に送信されたメッセージフロムアース(A Message From Earth)[204]および2009年に送信されたハローフロムアース(Hello From Earth)は、ハビタブルゾーン内にcとd、そして未確認のgの3つの惑星を持つグリーゼ581系に発信された。
その他のハビタブルゾーン
[編集]銀河系のハビタブルゾーン (GHZ)
[編集]銀河の中心から十分に近いと考えられるため地球型惑星が形成されるのに十分な金属量があり、しかし中心から十分遠くでもあると考えられるために中心付近での高い恒星密度による彗星や小惑星の衝突の危険、超新星爆発による放射線、さらに銀河中心のブラックホールの影響などから逃れられると想像することができる。その銀河内の領域を銀河系のハビタブルゾーン(英語: Galactic habitable zone、GHZ)と表現することがある[35][205]。すなわち、銀河のなかで惑星系のハビタブルゾーンがどこに存在しうるか、それを考慮しようという試みで生まれた概念である。
銀河系におけるハビタブルゾーンは、内縁が銀河核周辺で外縁が中心から10,000パーセク(約32,600光年)離れた環状の範囲で、形成されてから40–80億年が経過した星々を含み、時間が経過するごとにゆっくりと広がっていくとされている[205][206][207]。約250万光年離れているアンドロメダ銀河のハビタブルゾーンは銀河中心から3,000–7,000パーセク(9,780–22,820光年)離れた領域の形成から60–70億年が経過した恒星から成るという研究がある[208]。
しかし、銀河系ハビタブルゾーンという言葉は依然として一般的ではなく、想像の域を出ない概念として批判される面がある。天文学者の Nikos Prantzos は2006年のレビューにおいて、銀河系ハビタブルゾーンがあまりにも不確かなパラメータに基づいていると批判した。彼は、現状の知識ではGHZの範囲について意味のある結論を導き出せないとし、銀河系全体で生命が発達可能と見做すことを提案している[206]。GHZの範囲は、銀河系金属量の時間変化や、惑星の存在頻度と金属量の相関関係などの情報に基づいて導出される。これらは観測によって十分に解明されていないので仮定を採り入れざるを得ず、その仮定はGHZの範囲に対して敏感に影響を与えてしまう[206]。例えばPrantzosの試算では、GHZは銀河系全域に拡がり、明確な定義付けはできないという結果になっている[206]。
ブラックホールのハビタブルゾーン
[編集]銀河系のハビタブルゾーンの概念では、中心に存在する超大質量ブラックホール(いて座A*)により銀河系の中心付近は生命体には適しないとされてきた。しかし、2019年5月にこの超大質量ブラックホールの周りで比較的生命体の存在が維持できる領域、すなわちブラックホールのハビタブルゾーンが存在するという研究結果が、ハーバード大学の研究グループによって発表された[209][210]。
超大質量ブラックホールの周囲には吸い込んだ物質から成る降着円盤が形成される。この降着円盤は周囲にX線などの強い電磁波を発しており、これまでの研究ではいて座A*クラスの質量を持つ超大質量ブラックホールの場合、ブラックホールから3,200光年以内の範囲にある惑星は放出された電磁波により大気が消失してしまうと考えられていた[209][210]。しかし、ハーバード大学のグループによる研究によると、実際にこうした超大質量ブラックホールの周りで電磁波の影響が及ぶのは100光年以内になることが判明し、さらにブラックホールの降着円盤から放出された電磁波の量が、惑星の大気を失わせるほど多くなく、逆に生命体が誕生するのに必要な有機物や化合物の反応が進まなくなるほど少なくもない、丁度良いバランスが取れる領域があることが判明し、研究グループはこれがブラックホールのハビタブルゾーンであるとしている[209][210]。いて座A*の場合、140光年離れた領域がいて座A*のハビタブルゾーンになると推定されている[209][210]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
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外部リンク
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