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「酷道」の版間の差分

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* 2車線化改良があまりにも困難ないしは不可能に等しい[[狭隘道路|狭い1車線の国道]]。そのような国道は、ある地図において、おおむね2車線とされる5.5メートル以上11メートル未満の道路幅員の表記にもかかわらず、実際の道路全体の幅員は5.25メートルしか確保てきていない区間もある。
* 2車線化改良があまりにも困難ないしは不可能に等しい[[狭隘道路|狭い1車線の国道]]。そのような国道は、ある地図において、おおむね2車線とされる5.5メートル以上11メートル未満の道路幅員の表記にもかかわらず、実際の道路全体の幅員は5.25メートルしか確保てきていない区間もある。
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2018年3月19日 (月) 07:42時点における版

酷道の典型例(国道425号、奈良県下北山村)

酷道(こくどう)とは、日本の道路の俗語で、一般国道のうち乗用車による通行が困難であるなど文字通り「酷(ひど)い状態の国道」を、「国道」の読み(こくどう)に引っ掛けて揶揄するものである[1][2][3]。古くは1958年昭和33年)に書かれた阿川弘之の紀行文『東北国道二千キロ』[4]道路地図[5]自治体史[6]新聞[7]、紀行記[8]、国会発言[9]にも使用例がみられる。

概要

一般的に「国道」と言えば、

  • 都市間、都道府県間を結び、地域の道路交通の基幹たる幹線道路
  • 交通量が多く、片側一車線以上の広い道幅が確保されている
  • 歩行者の安全確保の為、路側の両側に十分な広さの歩道が確保されている
  • 案内表記等がわかりやすいものとなっている
  • 市街地の沿道ではロードサイドショップ等の商業施設オフィスなどが立ち並ぶ
  • 山間部でもトンネル橋梁で容易かつ短時間での通過が実現されている

この様な「適切な整備が実施されている利便性の高い重要な都市間道路」というイメージが連想されることが多い。

「酷道」という言葉は、国道として指定をされていながらも、上記のようなイメージとは正反対の実情を持つ整備状態の悪い道路の俗語として使われている[10]

現在では道路踏破趣味の一分野としてこの「酷道」を走破する事に情熱を傾ける「酷道マニア」の存在も成立しており、インターネット上には「酷道」を走ったもしくは歩いた時の状況などを記したレポートや旅行記も多数存在するほか、ドライブレコーダーで走行中の前方の景色を撮影・編集して動画サイト車載動画を紹介する人も少なからず見られる[11]。その中には趣味が高じて何らかの知名度を得て、一種のアウトドアライターなどのプロ・セミプロ的な活動を行っている人物もおり、酷道を扱った単行本やムック、DVDなどの販売もされるほどである[3]。また、テレビ東京土曜スペシャルで酷道を行く番組が定期的にある。

こうした「酷道」も、道路管理者によってバイパス改築や拡幅事業など、年々整備改良がおこなわれており、少しずつ解消されつつある[12]。また、バイパスなどの整備によって旧道となった「酷道」は、国道の指定を外れ都道府県道もしくは、市町村道などに降格となることが多く、特に山岳地などで道路の安全確保維持が難しく、将来的に利用価値が見込めないケースでは廃道となる場合もある[12]

地方自治体にとって一般国道の指定は、国から補助金を得て、整備状態の悪い道路(=酷道)を改善する手段のひとつであったため、とりわけ1993年平成5年)に新規指定された450号から507号までの一般国道については、それまで都道府県道までしか通っていなかった自治体からの国道昇格請願が多数あったといわれている[13]。しかし、こういった一般国道の場合、他の国道と比較して元々交通量が少ない道路であるなどの理由から道路改良整備の優先度が低く、道路改良事業化が後回しにされているのが実状となっている[13]

酷道の特徴

酷道は、下記のような特徴を持つ国道のことを指す。

  • 狭隘道路大型自動車の通行(一方通行の場合)または大型自動車同士のすれ違い(対面通行の場合)が困難もしくは不可能な区間がある[14]
  • 道幅が狭いうえ、前方の見通しがきかないブラインドカーブが多いことから対向車に対する危険度が高く、山林の中では昼間でも日光が遮られて薄暗い場所が多い[14]
  • 路上に落石や木の枝が落ちている場合があり、路面状況が悪い[14]
  • ガードレールのない断崖など、通行が非常に危険な区間がある。
  • オフロードけもの道の区間がある。
  • 全線が開通していない、あるいは歴史的経緯により遊歩道または階段として整備されているなど車(自動車、原動機付自転車軽車両)が一切通行できない区間がある。徒歩ですら通行が困難もしくは不能な場合もある。
  • 比較的整備された道路と比較し、降雨時に地盤が緩み崩落を起こす危険性が高く、土砂崩れや道路決壊で復旧工事中の状態が長期継続されていたり、通行止め規制が敷かれている場合がある[14]
  • 多くは都市部や人里を離れた人気のない山間部にある峠道で、沿線には、コンビニエンスストアなどの店舗や自動販売機、ガソリンスタンドなどがない場所にある[15]
  • 積雪のある地域は、雪が積もるような季節でなくともすでに冬季閉鎖規制により通行止めになっている場合がある[14]
  • 旧道は、あまり管理の手が入らず放置されている場合があり、夏季は道路わきの夏草が生い茂っている[14]
  • 住宅街の路地やアーケードのある商店街などが指定されており、明らかに自動車の通行には不適切である。歩行者専用道路で車両が通行できない場合もある。
  • 2車線化改良があまりにも困難ないしは不可能に等しい狭い1車線の国道。そのような国道は、ある地図において、おおむね2車線とされる5.5メートル以上11メートル未満の道路幅員の表記にもかかわらず、実際の道路全体の幅員は5.25メートルしか確保てきていない区間もある。
倉敷市児島唐琴の国道430号

酷道の例

「落ちたら死ぬ!!」看板(国道157号)
鬱蒼とした奥深い山間部を、1車線の未改良道路が貫く(国道265号)
暗峠の石畳(国道308号)
浜町アーケード(国道324号)
奥只見湖畔の洗い越し(国道352号)
県道への迂回を促す看板(国道490号)

酷道と呼ばれる一般国道は、300番台以降の比較的年代の若い国道に多く、地域別では人口の少ない西日本の山岳地に多く分布し、特に紀伊半島四国内陸部、中国山地に集中する[16]。全体としては長野県から九州南部にかけた中央構造線沿いの険しい山地に多く存在している。イカロス出版『酷道をゆく』(文献1)、『酷道をゆく2』(文献2)では以下の一般国道が「酷道」として紹介されている。ほぼ全てが指定区間に指定されていない都府県管理区間であることがわかる。

かつて酷道とされていた道路

石榑峠のコンクリートブロック(国道421号)

上記同書収録のものに限る。

  • 国道101号 - 1993年の延長指定区間、特に男鹿半島北部。路線を正確に走行することが困難であることから。2010年以降、男鹿市五里合地区において海側を併走する市道を路線編入するなどのルート変更や交差点の改良工事が実施されるなど道路改良が進み、かつて「迷宮国道」と呼ばれた区間は消滅[36]。バイパスが整備されて所々で狭い場所が残るのみとなった[36]
  • 国道121号 - 大峠周辺、喜多方市根小屋から米沢市の新道分岐まで該当区間のほぼ全線が廃道化しており、人も含めて通行止め。2010年9月11日に大峠道路が全線開通したため国道の指定区間から外れ解消[37]
  • 国道354号 - 行方市内に一方通行区間[38]が存在し、東から西への全線走破が不可能であった。また、鹿行大橋は幅員の狭さから対向車との離合用に待避所が設けられていた。なお、旧橋は東北地方太平洋沖地震東日本大震災)で崩落している[39]。2012年4月26日に新橋への架け替えを含めた北浦バイパスの開通により解消[39]
  • 国道421号 - 石榑峠は総重量が2トンを超える車、または車幅が2メートルを超える車は通行禁止。両側にコンクリートブロックが置かれているが、2008年9月2日の土砂崩れにより通行止めとなっている。2011年3月26日に峠をはさむ区間に石榑峠道路・石榑トンネルが開通したことにより解消[40]

DVD

酷道だけを集めたDVDが発売されている。

  • 酷道 東日本編/西日本編(発売元:アルバトロス 2008年12月10日発売)
  • 酷道 北日本編/南日本編(発売元:アルバトロス 2009年11月11日発売)
  • 酷道 全日本横断編(発売元:アルバトロス 2010年10月29日発売)

参考文献

  • 松波成行・渡辺郁麻・金町ゴールデン・大山顕・dark-RX・古澤誠一郎『酷道をゆく』イカロス出版、2008年2月20日ISBN 978-4-86320-025-8 
  • 松波成行・渡辺郁麻・坂下雅司・平沼義之・大山顕・松本泰生・森賢治・fookey・古澤誠一郎・鼠入昌史『酷道をゆく2』イカロス出版、2008年7月15日ISBN 978-4-86320-072-2 
  • 佐藤健太郎『ふしぎな国道』講談社〈講談社現代新書〉、2014年。ISBN 978-4-06-288282-8 

脚注・出典

  1. ^ 『酷道をゆく』(2008), 3、4頁。
  2. ^ 「国道?なんて酷い道」 『日本経済新聞』 2012年11月13日
  3. ^ a b 佐藤健太郎 2014, pp. 58–59.
  4. ^ 『阿川弘之全集 第16巻』(新潮社 ISBN 4-10-643426-1
  5. ^ 『ツーリングマップルR 九州・沖縄』(昭文社 2007年1版1刷 ISBN 978-4-398-65707-7国道265号の旧道である国見峠に対して用いられている。国見峠が国道265号の路線として指定されていた時代に発刊された『ツーリングマップ』1991年版も同様。
  6. ^ 『五ヶ瀬町史』 五ヶ瀬町1981年、513頁。国道218号の旧道である津花峠に対して用いられている。
  7. ^ 西日本新聞1995年5月21日21頁、宮崎版。当時国道265号の現道区間であった国見峠に対して用いられている。
  8. ^ 宮崎日日新聞社『各駅停車全国歴史散歩』河出書房新社、1984年。「青井岳駅」の項目で当時未改良であった国道269号に対して用いられている。
  9. ^ 第34回国会衆議院地方行政委員会議録第29号(1960年5月11日)、9頁。「週刊雑誌」からの引用として発言。その他に第61回国会参議院産業公害及び交通対策特別委員会会議録第4号(1969年2月28日)、24頁など。
  10. ^ 佐藤健太郎 2014, p. 58.
  11. ^ 『酷道をゆく』(2008), pp. 96-99, 裏表紙など。
  12. ^ a b 佐藤健太郎 2014, pp. 82–83.
  13. ^ a b 佐藤健太郎 2014, pp. 60–62.
  14. ^ a b c d e f 渡辺郁麻「酷道の走り方」『酷道をゆく』(2008), pp. 94-95
  15. ^ 渡辺郁麻「酷道の走り方」『酷道をゆく』(2008), p. 93
  16. ^ 佐藤健太郎 2014, pp. 62–63.
  17. ^ 佐藤健太郎 2014, pp. 63–64.
  18. ^ 佐藤健太郎 2014, pp. 65–66.
  19. ^ 佐藤健太郎 2014, pp. 66–68.
  20. ^ a b 佐藤健太郎 2014, pp. 30–32、「アーケード国道」より
  21. ^ 国道265号part1(熊本県阿蘇市〜高森町)
  22. ^ ツーリングマップルR 九州・沖縄』(昭文社、2007年1版1刷 ISBN 978-4-398-65707-7)では、国見トンネルの開通まで国道265号であった国見峠(椎葉村 - 五ヶ瀬町)を、「酷道」と表現している。また、『ドライブベストコース100(九州)』(昭文社、1996年4月 ISBN 978-4398223739)では、椎葉村 - 五ヶ瀬町のルートとして国道503号の飯干峠経由のルートを推奨したうえで、国道265号を「マニア向け」と表現している。
  23. ^ 「酷道」を扱ったムック本『酷道をゆく』(イカロス出版、2008年2月 ISBN 978-4863200258)にも紹介されている。
  24. ^ 佐藤健太郎 2014, pp. 21–24、「登山道国道」より
  25. ^ 佐藤健太郎 2014, pp. 72–73.
  26. ^ 佐藤健太郎 2014, pp. 18–21、「階段国道」より
  27. ^ 佐藤健太郎 2014, pp. 73–74.
  28. ^ 国道388号part1(熊本県湯前町〜宮崎県椎葉村)
  29. ^ 佐藤健太郎 2014, pp. 75–76.
  30. ^ 佐藤健太郎 2014, pp. 76–78.
  31. ^ 佐藤健太郎 2014, pp. 79–80.
  32. ^ 佐藤健太郎, pp. 28–30、「日本唯一のダート国道」より
  33. ^ 佐藤健太郎 2014, p. 84.
  34. ^ 佐藤健太郎 2014, pp. 24–27、「曲がり切れない急カーブ」より
  35. ^ 佐藤健太郎 2014, pp. 80–81.
  36. ^ a b 佐藤健太郎 2014, pp. 55–56.
  37. ^ 佐藤健太郎 2014, pp. 116–117.
  38. ^ 該当区間のすぐそばに県道2号線が並行する。
  39. ^ a b 佐藤健太郎 2014, p. 54.
  40. ^ 佐藤健太郎 2014, pp. 52–54.

関連項目

外部リンク