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「インフィニティ・ガントレット」の版間の差分

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{{Infobox comic book title
『'''インフィニティ・ガントレット'''』('''Infinity Gauntlet''')は、[[1991年]][[12月]]より[[マーベル・コミック]]から出版された全6号の[[アメリカンコミック|コミック]](リミテッド・シリーズ)のタイトル、及びそれに登場する架空の道具の名称。原作は[[ジム・スターリン]](Jim Starlin)、作画は[[ジョージ・ペレス]](George Perez)と[[ロン・リム]](Ron Lim)。インカーはジョセフ・ルービンスタイン(Josef Rubinstein)とトム・クリストファー(Tom Christopher) 、エディターはクレイグ・アンダーソン(Craig Anderson) が務めた。
|title=インフィニティ・ガントレット ''The Infinity Gauntlet''
|schedule=月刊
|issues=6
|main_char_team=[[サノス]]<br>[[シルバーサーファー]]<br>{{仮リンク|アダム・ウォーロック|en|Adam Warlock}}<br>[[ネビュラ (マーベル・コミック)|ネビュラ]]
|limited=Y
|Superhero=y
|startyr=1991
|endyr=1991
|startmo=7月
|endmo=12月
|writers=Jim Starlin
|pencillers=George Pérez<br>Ron Lim
|inkers=Josef Rubinstein<br>Tom Christopher<br>Bruce N Solotoff
|letterers=Jack Morelli
|colorists=Max Scheele<br>Ian Laughlin
|editors=Craig Anderson
|TPB=1st Ed TPB (1992)
|ISBN=0871359448
|TPB2=2nd Ed TPB (2006)
|ISBN2=0785123490
|TPB3=3rd Ed TPB (2011)
|ISBN3=0785156593
|TPB4=HC Edition (2010)
|ISBN4=0785145494
|TPB5=Omnibus (2014)
|ISBN5=078515468X}}
『'''インフィニティ・ガントレット'''』 (''The Infinity Gauntlet'')とは、1991年12月より[[マーベル・コミックス]]から出版された全6号の{{仮リンク|リミテッド・シリーズ|en|Limited series (comics)}}<ref group=†>定期的に刊行されるが、終了号があらかじめ決められているコミックブック・シリーズ。その中でも短いものはミニシリーズと呼ばれる。またこれに対し、号数を限定せず、廃刊されない限りいつまでも続くものは{{仮リンク|オンゴーイング・シリーズ|en|Ongoing series}}またはレギュラーシリーズと呼ばれる。</ref>であり、同作に登場する架空の道具の名称でもある。[[漫画原作|原作]]は{{仮リンク|ジム・スターリン|en|Jim Starlin}}、作画は{{仮リンク|ジョージ・ペレス|en|George Perez}}とロン・リム。本作は同名の[[クロスオーバー]]・イベントの中核であり、プロット要素のいくつかは他誌のタイイン号<ref group=†>"tie-in issues"、クロスオーバー関連号。</ref>でも扱われた。初出のコミックブック以外にも数多くの形式で再版が行われている。


異星人の[[虚無主義者]][[サノス]]が6個の「インフィニティ・ジェム」を集め、自らのガントレット<ref group=†>[[籠手]]、もしくは長手袋。</ref>にはめ込んだところで本作は幕を開ける。すべてのジェムのパワーを手にしたことで神同然の地位に昇ったサノスは、死が具現化した存在である[[ミストレス・デス]]の愛を勝ち取ろうとする。サノスはそのパワーをもって全宇宙の生命体の半数に死をもたらし、{{仮リンク|アダム・ウォーロック|en|Adam Warlock}}は生き残った地球のヒーローを糾合して戦いを挑む。その後、「インフィニティ・ガントレット」がサノスの孫娘[[ネビュラ (マーベル・コミック)|ネビュラ]]の手に落ちると、サノスはヒーロー側について奪還を試みる。最終的にガントレットを手にしたのはウォーロックであった。サノスが引き起こした死と破壊はガントレットのパワーで修復された。
また、以降の3つのリミテッド・シリーズ、「インフィニティ・ウォー(Infinity War)」
「インフィニティ・クルセイド(Infinity Crusade)」「インフィニティ・アビス(Infinity Abyss)」に続いている。


本作のルーツは1970年代にさかのぼる。当時マーベル社で原作と作画を兼務していたスターリンは、作品中で[[サノス]]やインフィニティ・ジェムといったアイディアを展開していた。スターリンは1990年に『[[シルバーサーファー]]』第3シリーズ第34号から同誌の原作者に就任し、[[ペンシラー]]のリムとともに16号にわたって執筆をつづけた。そのストーリーは全2号のサイドシリーズ『サノス・クエスト』に発展し、そして本作『インフィニティ・ガントレット』に結実した。本作の作画は第4号まで人気作家ペレスが担当したが、ペレスがスケジュール的な問題を抱えており、ストーリーにも不満があったことでリムに交代した。
他の複数のタイトル「クローク&ダガー(Cloak and Dagger)」、「[[ドクター・ストレンジ]](Doctor Strange: Sorcerer Supreme)」、「[[ハルク (マーベル・コミック)|ハルク]](Hulk)」、「クエーサー(Quasar)」、
「[[シルバーサーファー]](Silver Surfer)」、「スリープウォーカー(Sleepwalker)」でタイ・イン(クロスオーバー展開)がなされた。


本作はマーベル社のトップセラーとなり、直後に続編『[[インフィニティ・ウォー]] (''Infinity War'')』(1992年)および『インフィニティ・クルセイド (''Infinity Crusade'')』(1993年)が作られた。本作の出来事はマーベル社の作中世界で大きな事件となっており、初出から三十年近く経ってなお言及されることがある。ファンの間での人気も依然として高く、再版本や関連商品の発売が断続的に続いている。本作の題材やプロットは[[ビデオゲーム]]、[[アニメ]]シリーズで何度も再利用されており、2018年の映画『[[アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー]]』にも本作の内容が取り入れられている。
== あらすじ ==
{{節stub}}
このストーリーは、「シルバーサーファー」第3シリーズとリミテッドシリーズ「サノス・クエスト(Thanos Quest)」でフィーチャーされた[[サノス]]の復活から始まる。


== 刊行の履歴 ==
サノスは、自ら集めた6つの[[w:Infinity Gems|インフィニティ・ジェム]](「魂(ソウル)」、「力(パワー)」、「空間(スペース)」、「現実(リアリティ)」、「時間(タイム)」、「精神(マインド)」)を左の手袋に嵌め込み、インフィニティ・ガントレット(Infinity Gauntlet)を作り出した。
=== 背景 ===
本作の中心キャラクターである'''サノス'''はジム・スターリンによって作りだされ、『[[アイアンマン]]』第55号(1973年2月)で初めて世に出た。スターリンは原作・原画を務めていたマーベル社の月刊誌『[[キャプテン・マーベル]]』でサノスを悪役として使い、キャラクターを発展させていった<ref name="Migrom">{{cite book |contribution=Introduction|contributor-last=Milgrom |contributor-first=Al |date=2002 |title=The Life and Death of Captain Marvel |author=[[Jim Starlin]] |url= |location= |publisher=[[Marvel Comics]] |page= |isbn=0785108378 |contributor-link=Al Milgrom }}</ref>。一連のストーリーラインは「第一次サノス・ウォー (''First Thanos War'')」として知られるようになった<ref name="DB">{{cite web |url=http://www.multiversitycomics.com/news-columns/tradewaiter-cosmic-marvel-part-1/ |title=Tradewaiter: Cosmic Marvel, Part 1 |last=Bradley |first=Drew |date=January 14, 2013 |website= [[Multiversity Comics]] |access-date=January 11, 2018}}</ref>。その完結直後、スターリンは1974年7月までで『キャプテン・マーベル』誌を離れた<ref>{{cite book |contribution=Contents|date=2009 |title=Marvel Masterworks Captain Marvel Volume 3|author=[[Jim Starlin]] |location=[[New York City]] |publisher=[[Marvel Comics]] |page= v |isbn=0785130152}}</ref>。


スターリンは1975年に『ストレンジ・テールズ』の原作・作画を任された。スターリンは同誌で展開されていた[[アダム・ウォーロック]]のストーリーを引き継ぐと、ウォーロックのキャラクターを大幅に変更するとともに、インフィニティ・ジェムの設定を作り出した<ref name="DB"/>。スターリンはサノスをヒーロー側で再登場させ、次に敵に回らせた。この長篇ストーリーは1977年まで続き、「第二次サノス・ウォー」として知られるようになった<ref name="DB"/><ref>{{cite book |contribution=Contents|date=2009 |title=Marvel Masterworks Warlock Volume 2|author=[[Jim Starlin]] |location=[[New York City]] |publisher=[[Marvel Comics]] |page= v |isbn=0785135111 }}</ref>。2編のサノス・ウォーは短期間に続けて刊行されたため、合わせて一つのストーリーラインだとみなされることがある<ref name="Migrom"/>。どちらのストーリーも宇宙を舞台としていたため、スターリンは「コズミック」テーマの作家と考えられるようになった<ref name="DB"/><ref name="Scene4">{{cite magazine |last=Dutter |first=Barry |date=1988 |title=The Anti-Life of the Party |magazine=[[Comics Scene]] Quarterly vol 3 #4 |location=[[Iola, Wisconsin]] |publisher=[[Krause Publications]]}}</ref>。
所有者に全知全能の力を与えるインフィニティ・ガントレットを手にしたサノスは悪魔メフィストの甘言にのり、全多元宇宙を支配することを決心する。


第二次サノス・ウォーの完結後、スターリンはマーベルで持っていた連載をすべて返上した<ref>{{cite book |contribution=Introduction|contributor-last=Cooke |contributor-first=Jon B |date=2009 |title=Marvel Masterworks Warlock Volume 2|author=[[Jim Starlin]] |location=[[New York City]] |publisher=[[Marvel Comics]] |page= ix |isbn=0785135111 |contributor-link=Jon B. Cooke }}</ref>。その後1980年代を通じて、マーベルでは[[グラフィックノベル]]『キャプテン・マーベルの死』やクリエーター・オウンド作品{{refnest|group=†|制作者が著作権を保有する作品。アメリカのメインストリーム・コミック界では一般的ではないが、大手出版社がクリエーター・オウンド作品専門のインプリントを設立することもある<ref>{{cite web|url=http://www.animeanime.biz/archives/20241|accessdate=2018-02-16|title=北米のマンガ事情 第25回 「アメリカのコミックス市場で存在感を増すクリエイター・オウンド作品」 前編 – アニメ!アニメ!ビズ }}</ref>。''Dreadstar ''はマーベルのインプリント{{仮リンク|エピック・コミックス|en|Epic Comics}}から刊行された。}}『ドレッドスター』など単発のプロジェクトしか手掛けなかった<ref name="bio" />。その一方、[[DCコミックス]]では『[[バットマン]]』や『コズミック・オデッセイ』のような注目度の高い作品を出している<ref name="Scene4" />。1990年のインタビューでスターリンは、「第一次サノス・ウォー」のタイイン号でサノスを使った原作者は何人もいるが、好きなように使うことを許されている原作者は自分だけだと述べた<ref>''Marvel Age'' #91 (August 1990).</ref>。
=== 第一話(1991年7月) ===
[[ドクター・ストレンジ]]が自分の館でくつろいでいるところに突然大音響が轟く。屋根裏部屋に飛び込んだストレンジは、天井を突き破って落下してきた[[シルバーサーファー]]を発見する。意識朦朧のサーファーは「想像を絶する恐ろしい破滅が…止めなければ…サノスが復活した」と告げた。


=== 制作 ===
死んだはずのサノスの復活を知ったサーファーはドラックス・ザ・デストロイヤーと共にサノスに挑むが、インフィニティ・ガントレットの力に翻弄され、ソウル・ジェムの内部(ソウルワールド)に放逐されてしまった。そこでアダム・ウォーロックと名乗る金色の男と出合った二人は彼の力を借りて現実世界に帰還。サノス復活の凶報を伝えるため、宇宙の辺境から全力で飛んできたサーファーはついに力尽き、ストレンジの屋敷に落下したのだ。
[[ファイル:Jim_Starlin_2008.jpg|左|サムネイル|233x233ピクセル|シリーズ原作者、ジム・スターリン(2008年撮影)。]]
1988年、スティーヴ・イングルハートはライターを務める『[[シルバーサーファー]]』でインフィニティ・ジェムとミストレス・デスを登場させた。さらにミストレス・デスが敵に復讐するためにサノスを利用する続編ストーリーを構想し、編集部に許可を求めた。しかし総編集長トム・デファルコはサノスのことを知らなかった。説明を受けたデファルコはこのストーリー案を気に入り、夏の大型クロスオーバーのために温存しておくことにした。このときデファルコは、1988年のクロスオーバー「エヴォリューショナリー・ウォー」と同じく、リミテッド・シリーズではなく複数のレギュラーシリーズのアニュアル号<ref group=†>月刊コミックブックの特別号で、年刊で発行されるもの。</ref>上でストーリーを展開する刊行形式を指示していた<ref name="Scene4p2">{{cite magazine |last=Johnson |first=Kim Howard |date=1988 |title=Saga of the Silver Spaceways |magazine=[[Comics Scene]] Quarterly vol 3 #4 |location=[[Iola, Wisconsin]] |publisher=[[Krause Publications]]}}</ref>。


マーベルはサノスと関係の深いスターリンを呼び戻し、本作の原作者に迎えた<ref name="ZSNews">{{cite web |url=https://www.newsarama.com/20517-the-birth-of-marvel-cosmic-starlin-on-warlock-gamora-more-pt-2.html |title=The Birth of Marvel Cosmic: Starlin on Warlock, Gamora, Thnaos, More pt 2 |last=Smith |first=Zack |date=March 7, 2014 |website= [[Newsarama]] |access-date= January 11, 2018|quote="I’m not going to say who it was, but there was a writer who wanted to bring Warlock back, and I had just been doing the Silver Surfer series at that point, and they were going to let him do it unless I wanted to do it first, so I did it in self-defense. I wasn’t a big fan of this writer’s work."}}</ref>。スターリンは直近に読んだ[[ヴィルヘルム・ライヒ]]、[[カルロス・カスタネダ]]、[[ロジャー・ゼラズニイ]]からの影響で、サノスを何重にも奥行きを持ったキャラクターとして描こうと決めた<ref name="HRint" />。スターリンは本作をサノスの物語の最終幕にする(遠からず覆されるとしても)つもりで執筆を始め、中盤を越えたところでサノスを[[アンチヒーロー]]として扱うことに決めた<ref name="BI82" />。多岐にわたるプロットと配役を整理するため、スターリンは壁にかけた大きな合板にインデックスカードを貼っていった<ref name="BI82" />。
その頃、無限の力を以ってしても愛する[[デス (マーベル・コミック)|デス]]に振りむいてもらえないサノスは、虚空にデスを称える巨大神殿を出現させる。また、己の非情さをアピールするため、自分の孫娘ネビュラを腐敗した動死体に変えて見せびらかす。だがそれでもデスの歓心を得られなかったサノスは、ついに計画を実行することにした。


スターリンは第34号(発行日表示1990年2月)から『シルバーサーファー』の原作を書き始めた<ref name="bio">{{cite book |contribution=Biographies|date=2009 |title=Marvel Masterworks Warlock Volume 2|author=[[Jim Starlin]] |location=[[New York City]] |publisher=[[Marvel Comics]] |page= 224 |isbn=0785135111 }}</ref>。最初の4号ではサノスが改めて紹介され、新章の開幕を告げた。当初、スターリンと担当編集者クレイグ・アンダーソンは本作を『シルバーサーファー』誌だけで完結させる計画だった。しかし、マーベル社を買収したばかりの新オーナーは[[知的財産権|IP]]をすべて最大限に活用するよう指示を下した<ref name="BI82">{{cite magazine |last=Brennanman |first=Chris |date=August 2015 |title=The Infinity Saga |magazine=[[Back Issue!]] |location=[[ Raleigh, North Carolina]] |publisher= [[TwoMorrows Publishing]]}}</ref>{{Refnest|マーベル社は1989年にロナルド・ペレルマンの会社マクアンドリューズ&フォーブスによって買収された<ref name="RandomHouseWeb">{{Cite web |url=http://www.randomhouse.com/features/comicwars/excerpt.html |title=Comic Wars |accessdate=January 27, 2007 |publisher=Random House |year=2002 |author=Raviv, Dan |deadurl=yes |archiveurl=https://www.webcitation.org/5OlTv7USa?url=http://www.randomhouse.com/features/comicwars/excerpt.html |archivedate=May 11, 2007 |df=mdy-all }}</ref>。|group=†}}。サノスの帰還が大きな話題を呼んだことに乗じて、物語の第2幕は全2号のスピンオフ・シリーズ『サノス・クエスト (''Thanos Quest'')』(1990年秋)で描かれた<ref name="BI82"/><Ref name="LC"/>。その後のストーリーは『シルバーサーファー』第44号に続いた<Ref name="LC">{{ Cite comic | writer= | story=The Cosmic Pipeline | title=Silver Surfer | issue=41 | date=September 1990 | page=30 | publisher=[[Marvel Comics]] | location=[[New York, NY]] }}</ref>。スターリンとアンダーソンは再び同誌上でストーリーを完結させようとしたが、『サノス・クエスト』の売れ行きが好調だったことでスピンオフ第2弾が企画された。『シルバーサーファー』誌上での展開は第50号で終わり、リミテッド・シリーズ『インフィニティ・ガントレット』が始まった<ref name="BI82"/>。
インフィニティ・ガントレットを嵌めた腕を掲げ、指をパチンと一つ鳴らす。


スターリンは『シルバーサーファー』第46号でアダム・ウォーロックと関連キャラクターを再登場させた。ウォーロックを登場させるつもりがないならほかの原作者に渡すと編集者から迫られたためであった。スターリンはその原作者の作品を高く評価していなかったため、ウォーロックを自分のストーリーに取り入れることに決めた<ref name="ZSNews" /><ref name="BI82" />。
たったそれだけで全宇宙の生命の半分が消去された。[[スパイダーマン]]の恋人のMJが、[[アベンジャーズ (マーベル・コミック)|アベンジャーズ]]のメンバーが、ニック・フューリーが、ドクター・ストレンジの執事が、そしてスクラル帝国でも、衛星タイタンのエターナルズのコロニーでも。運良く生き残った者は、それぞれの大切な人々の消失を知り、驚愕と絶望に捕らわれた。


スターリンは本作で人気キャラクターを死なせるつもりだったが、マーベル編集スタッフは異を唱えなかった。スターリンによれば、その理由の一つはアンダーソンが同僚にストーリーの細部を伝えていなかったためである<Ref name="HRint"/>。ただし、編集者らは担当キャラクターのうち本作に貸し出せるものを選別した。たとえば[[X-MEN]]の編集者ボブ・ハラスはサイクロプスと[[ウルヴァリン]]しか使うことを許さなかった。それ以外のX-MENキャラクターは絵に描かれないところで死ぬなどして物語から退場した<ref>{{cite web |url=https://www.cosmicbooknews.com/content/jim-starlin-talks-thanos-infinity-gauntlet-marvel-dc-new-projects-215-ink-and-more-video |title=Jim Starlin Talks Thanos, Infinity Gauntlet, Marvel, Dc, New Projects With 215 Ink and More (Video) |last=McGloin |first=Matt |date=July 13, 2012 |website=Cosmic Book News |access-date=January 11, 2018}}</ref>。編集者たちが非協力的だったのは、夏のクロスオーバーイベントが実施され始めてからそれほど年数が経っていなかったせいもある<ref name="BI82"/>{{Refnest|それまでにもマーベル社のキャラクターは互いに関わり合いを持ってきたが、そのようなストーリーはいずれかのキャラクターの個人タイトルで完結するのが普通であり、他の月刊タイトルのスケジュールやプロットに直接影響を与えることはまれだった。1985年の『シークレット・ウォーズII』はマーベル社で初めて月刊タイトルとのクロスオーバーを行ったリミテッド・シリーズであった。それ以後、月刊タイトル間のクロスオーバーが行われる頻度は増えていったが、『シークレット・ウォーズII』の刊行形態が再び採用されたのは『インフィニティ・ガントレット』が初めてだった<ref name="BI82"/>。|group=†}}。
=== 第二話(1991年8月) ===
大消失に見舞われた地球では、火災や飛行機事故などが頻発しており、生き残ったヒーローたちが人々の救出に死力を尽くしていた。またクリー帝国では、この大消失は宿敵スクラル帝国の陰謀であるとし、報復艦隊が発進していた。半数の神々が消去されたアスガードには、ギリシャ、ケルト、マヤ、アステカ、ロシア、ネイティブ・アメリカなどの神々が集合し、善後策を検討していた。


{{multiple image|perrow = 2|total_width=300
その時、ドクター・ストレンジの精神に何者かが接触し、サノスと戦う軍団を集めることを提案する。
|image1 = 10.13.12GeorgePérezByLuigiNovi1.jpg
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|footer = 作画家ジョージ・ぺレス(左、2012年撮影)、ロン・リム(右、2013年撮影)。
}}


人気の作画家ジョージ・ペレスは登場人物が多い作品を描くことで定評があった。ぺレスは1970年代にマーベルの『[[アベンジャーズ]]』で頭角を現し、その後DCに移籍して『[[ティーン・タイタンズ|ニュー・ティーン・タイタンズ]]』、『[[クライシス・オン・インフィニット・アース]]』、『[[ワンダーウーマン]]』などを手掛けた<ref name="STP" />。ペレスは1984年にDC社と専属契約を結んだ。マーベル社の原作者・作画家ジム・ヴァレンチノはこの契約が1990年8月で失効することを知ってペレスに電話をかけ、自身が原作と[[ペンシラー|原画]]を務める『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で表紙の[[インカー|インキング]]を行うよう依頼し、承諾を得た。ヴァレンチノの担当編集者でもあったアンダーソンからそれを伝え聞いたスターリンはペレスに電話し、『インフィニティ・ガントレット』の原画を依頼した。ペレスはスターリンやアンダーソンと条件を詰めた上で依頼を受けた。大人数シーンを描くのを好んでいたペレスは、古巣マーベルのファンの「度肝を抜く」ため、登場人物をなるべく増やすようにスターリンに頼んだ<ref name="GPS"/>。ペレスは1991年のインタビューにおいて、『シルバーサーファー』と『サノス・クエスト』のペンシラーであったロン・リムを差し置いて自分に声がかけられたのは、リムが多忙だったためだという推測を述べた<ref name="CI94" />。
エターナルズのエロスは、衛星タイタンのコロニーからテレポートされ、サノスの捕虜になる。サノスの精神操作を試みるエロスだったが、ガントレットの力で笑顔をつくるための口を消去されてしまう。


ペレスはDC社では作画だけでなく原作も行っていたが、マーベルキャラクターの現状には詳しくなかったため、『インフィニティ・ガントレット』では完全な[[脚本|スクリプト]]に基づいて作画に専念することに同意した{{Refnest|コミックブック制作では、原作者と作画家の間で密な共作が行われる場合もあれば、分業に近い場合もある<!--意訳-->。「マーベル・メソッド」と呼ばれる制作形態では、作画家にもある程度ストーリーの決定権や創意の余地が与えられる。完全なスクリプトを作製する方式では、作画家にとっての自由度が狭められる。|group=†}}。この制作体制はペレスにとって窮屈に感じられ、早い段階から「腹も立ったし、うんざりした」という。スターリンはスクリプトとともに参考用のコマ割り案を作成していたが、ペレスはスターリンの許可のもとで自由にコマ割りを行い、あるシーンのスペースを増やしたり、前後を入れ替えたりした<ref name="CI94"/>。
時を同じくして[[ドクター・ドゥーム]]も怪しい動きを始めていた。「やがて自分が支配すべき臣民たち」を消失させられたという怒りと、この混乱の原因からさらなる科学と権力を得ようとする欲望が彼を突き動かしていたのだ。ストレンジの屋敷に侵入し、この大消失の原因をむりやり聞きだそうとしたドクター・ドゥームは、シルバーサーファーと戦闘になる。そこに割って入ったのは、ソウルワールドから現実世界に復活したアダム・ウォーロックとピップ・ザ・トロルだった。


[[表紙]]画はプロモーション素材として使われるため、ペレスは本シリーズ第1号の作画を終えるより早く第4号までの表紙原画を仕上げていた。しかしペレスは当時のマーベル・ユニバースの状況を知らなかったため、第3号の表紙では[[マイティ・ソー|ソー]]やクェーサーなどのキャラクターを旧コスチュームで描いてしまった。ペレスは描き直しを命じられて意気消沈した<ref name="CI94" />。
大消失を引き起こし、加えてネビュラとエロスを様々な方法で責め苛んでもデスに振り向いてもらえないサノスは、ついに怒りを爆発させる。


ペレスは本作の制作と並行してDCコミックスでも『ウォー・オブ・ザ・ゴッズ』の原画を行っていた。同作は[[ワンダーウーマン]]のミニシリーズで、ペレスによると「非常に神経を使う」プロジェクトであった<ref name="MM" />。どちらのプロジェクトも進行が遅れはじめたため、ペレスは『ウォー・オブ・ザ・ゴッズ』の仕事を辞退したいと考えたが、契約により叶わなかった<ref name="GPS" />。スケジュール的な重圧により、また作画と原作を兼任するスタイルに馴染んでいたこともあり、ペレスはスターリンのスクリプトへの不満を募らせていった。内容に比してページを使い過ぎだというのがペレスの主張であった<ref name="GPS" /><ref name="MM" />。意欲の減退によって作画の手も鈍り、スケジュールはさらに遅れていった<ref name="MM" />。
ガントレットの引き起こした怒りの衝撃波は銀河系の四分の一を蹂躙し、[[ギャラクタス]]が喰らおうとしていた星も砕かれてしまう。宇宙的な飢えを満たす機会を奪われたギャラクタスは激しい怒りを押さえつけ、知略をめぐらせつつ時を待つ。


ペレスが第4号の締め切りを守れないことが確実になると、デファルコは『シルバーサーファー』の正ペンシラーであったロン・リムに第4号の作画を完成させるよう依頼した<ref name="GPS">{{cite book |last=Lawrence |first=Christopher |date=February 11, 2015 |title=George Pérez, Storyteller |url=https://books.google.com/books?id=yFpoBgAAQBAJ&pg=PA88&dq=perez+lim+%22infinity+gauntlet%22+stress&hl=en&sa=X&ved=0ahUKEwjq_rDRtILYAhWB1xQKHQ2HArQQ6AEIJzAA#v=snippet&q=perez%20lim%20%22infinity%20gauntlet%22%20stress&f=false |location=[[Mt. Laurel, New Jersey]] |publisher=[[Dynamite Entertainment]] |page=88 |isbn=1933305150 }}</ref>。さらにデファルコはシリーズの作画をリムに譲ることをペレスに了承させた。ペレスはこの交代劇に納得しており、初めからリムが作画を担当するべきだったと後に述べた。ペレスはシリーズ完結までリムの表紙イラストのインキングを行い、何も遺恨がないことを示した<ref name="MM" />。マーベル経営陣はペレスの降板によって売れ行きが落ちることを危惧したが、リムの手掛けた号は尻上がりに売り上げを増やしていった<ref name="BI82" />。
また衝撃波は地球にも到達した。地球全土に大地震が発生し、都市は崩れ、津波が襲った。アメリカ西海岸は水没し、[[日本列島]]は海底に沈んだ。アスガードやアトランティスも大きな被害を受けた。


ペレスの代打を務めるため、リムは『[[キャプテン・アメリカ]]』を降板しなければならなかった。リムは作画家としてペレスから影響を受けたことを公言しており、その仕事を奪ったことで「心が痛んだ」という。その上、非常に多くのキャラクターが登場する本作はリムのキャリアの中でもっとも困難な仕事であった。それでもリムは、『インフィニティ・ガントレット』の図像的な面を担うことが「楽しかった」と発言した<ref>{{cite magazine |last=Berry |first=Michael |date=January 1992 |title=Silver Gauntlets: An Interview with Ron Lim |magazine=[[Wizard (magazine)|Wizard]] #5 |location=New York City|page=10 |publisher=[[Wizard Entertainment]]}}</ref>。
=== 第三話(1991年9月) ===
アベンジャーズの基地へ転移したドクター・ストレンジ、アダム・ウォーロック、シルバーサーファー、ドクター・ドゥーム、ピップは、サノスに対抗する軍団の編成を[[キャプテン・アメリカ]]に持ちかける。


本作の売り上げを知ったペレスは、降板によって数万ドルと思われる[[印税]]収入を失ったと気づいた。しかし、本作に続編の企画があることを知ると後悔はなくなった。スターリンと同じく、ペレスも本作がサノスの最後のストーリーになると信じて仕事を受けていた<ref name="MM">{{cite book |last=Nolen-Weathington |first=Eric |date=2007 |title=Modern Masters Volume 2: George Pérez |url=https://books.google.com/books?id=bhOPZ2u7C_YC&pg=PA60&dq=perez+lim+%22infinity+gauntlet%22+stress&hl=en&sa=X&ved=0ahUKEwjq_rDRtILYAhWB1xQKHQ2HArQQ6AEILDAB#v=onepage&q=perez%20lim%20%22infinity%20gauntlet%22%20stress&f=false |location=[[Raleigh, North Carolina]] |publisher=[[TwoMorrows Publishing]] |page=60-61 |isbn=189390525X }}</ref><ref name="CI94">{{cite magazine |last=O'Neill |first=Patrick Daniel |date=1991|title=George Perez |magazine=[[Comics Interview]] #94 |location=New York City|page=4 |publisher=Fictioneer Books |author-link=David Anthony Kraft}}</ref>。
ストレンジのテレパシーによる呼びかけに応え、ポータル(空間転移門)から[[アイアンマン]]、スパイダーマン、[[ウルヴァリン]]、[[サイクロップス]]、スカーレットウィッチ、ドラックス、ファイアロード、ノヴァ、サブマリナー、クローク、ハルクが現れる。

=== 刊行 ===
ジャーナリストのショーン・ハウの表現によれば、本作の刊行までの数か月、マーベル社のマーケティング部はこのイベントを「煽りまくった」<ref>{{cite book |last=Howe |first=Sean |date= |title=[[Marvel Comics: The Untold Story]] |url= |location=[[New York City]] |publisher=[[Harper Collins]] |page=351 |isbn=0061992119 |author-link=Sean Howe }}</ref>。プロモーションの一環として{{仮リンク|ダイレクト・マーケット|en|Direct market}}傘下の小売店に配布された宣伝キットには、本シリーズの内容を詳しく述べた書状、レジ横に掲示する販促材料、18×36インチのポスターなどが含まれていた<ref>{{cite web |url=https://www.mycomicshop.com/search?TID=34263110 |title=Infinity Gauntlet Retailer Promo Kit/Poster|website=My Comic Shop|publisher=[[Lone Star Comics]] |access-date=December 15, 2017}}</ref>。[[PR誌]]『マーベル・エイジ』第91号(1990年8月)には「サノス・クエスト」の特集とスターリンのインタビューが掲載され、続いて第99号(1991年4月)では『インフィニティ・ガントレット』第1号のプレビューが7ページ掲載された。『コミックス・インタビュー』第94号(1991年3月)でも本作の特集が組まれ、8ページにわたってペレスのインタビューが載った。スターリンは『コミックス・シーン』第19号(1991年4月)のインタビューで本作について語った。

『インフィニティ・ガントレット』リミテッド・シリーズは1991年7月から12月まで(発行日)月刊で発行された。どの号もコミック専門店とニューススタンド(スーパーマーケット、デパートを含む)の両方で販売された。表紙イラストレーションはどちらの版でも共通だったが、ニューススタンド版でバーコードが印刷されている位置に、コミック専門店版ではマーベル30周年を記念するイラストレーションが入っていた{{Refnest|当時コミック専門店の多くは{{仮リンク|バーコードリーダー|en|barcode reader}}を導入していなかった。また出版社にとっては、このような相違点があると異なる版を見分けやすいのも利点だった。ニューススタンドは売れ残ったコミックブックを返品して払い戻し<!--credit-->を受けることができたが、専門店にはそれが許されていなかった<ref name=HibbsBarcodes>{{cite web |url=http://www.comicsbeat.com/2007/09/28/more-on-barcodes-2/ |title=More on Barcodes |last=Hibbs |first= Brian |date=September 28, 2007 |website=[[Comics Beat]] |archive-url=https://web.archive.org/web/20110726121319/http://www.comicsbeat.com/2007/09/28/more-on-barcodes-2/ |archive-date=July 26, 2011 |access-date=January 11, 2018}}</ref>。|group=†}}。各号は全48ページ、定価2.5ドルであった。この当時マーベル社の平均的なタイトルは全24ページ、定価1ドルだった<ref>{{cite magazine |last=Miller |first=John Jackson |date=August 2006 |title=What Price, Comics? |magazine=[[Comic Buyer's Guide]] |location=[[Iola, Wisconsin]] |publisher=[[F+W|F+W Publications]]|pages=50-51|author-link=John Jackson Miller}}</ref>。

=== タイイン ===
マーベル社のコミックブックは互いに繋がりあっているので、『インフィニティ・ガントレット』に主役キャラクターを貸し出したオンゴーイング・シリーズの一部では、メインプロットを別の視点から描くストーリーや、作中の出来事から生じたサイドストーリーが同時展開された。それらの号では表紙右上隅に "An Infinity Gauntlet Crossover" と書かれた三角形のマークが付けられた。これらのいわゆるタイイン (tie-in) 号の内容がリミテッド・シリーズに逆輸入されることはなく、読まなくてもプロットに穴は生じなかった。『ドクター・ストレンジ』第36号では事件終結後のストーリーが描かれ、表紙には「インフィニティ・ガントレット・エピローグ」と表示された。

「[[シークレット・ウォーズ]]」、「クライシス・オン・インフィニット・アース」、「アーマゲドン2001」<ref group=†>本作と同年の1991年に刊行されたDC社の作品。</ref>などのクロスオーバーイベントでは、その出版社のタイトルのほとんどでタイインが行われたが、本作のタイインに参加したのは、メインストーリーに関わるキャラクターの出演作やテコ入れを必要としていたタイトルのみだった<ref>{{cite magazine |last=Kraft |first=David Anthony |date=January 1991 |title=War of the Gods |url= |magazine=Comics Interview |location=New York City|page=34 |publisher=Fictioneer Books |author-link=David Anthony Kraft}}</ref>。売れ行きの悪いタイトルにおけるタイインについて、ペレスによるとマーベルの方針は「やらないとただじゃおかないぞ」というものだった<ref>{{cite magazine |last=Kraft |first=David Anthony |date=January 1991 |title=War of the Gods |url= |magazine=Comics Interview |location=New York City|page=31 |publisher=Fictioneer Books |access-date=| author-link=David Anthony Kraft}}</ref>。スターリンはタイイン号のプロット作成には関与せず、手を挙げたライターに自らの執筆プランを明かし、使いたい要素を自由に選ばせた。スターリンはマーベルキャラクターの現状に暗く、スリープウォーカーに至っては存在さえ知らなかったため、こうしたやり方が最善だと考えた<ref name="BI82" />。
{| class="wikitable" width="100%" border="1"
| align="center" | '''タイトル'''
| align="center" | '''号'''
| align="center" | '''発行月'''
| align="center" | '''原作'''
| align="center" | '''作画'''
|-
| ''Cloak and Dagger'' (vol 3)
| 18
| 6月
| Terry Kavanagn
| Dave Cross and Sam Delarosa
|-
| ''[[ドクター・ストレンジ|Doctor Strange]]'' (vol 3)
| 31-36
| 7月 - 12月
| Roy and Dann Thomas
| Tony DeZuniga
|-
| ''Incredible Hulk''
| 384-385
| 8月 - 9月
| Peter David
| Dale Keown
|-
| ''Quasar''
| 26
| 9月
| Mark Gruenwald
| Dave Hoover
|-
| ''[[シルバーサーファー|Silver Surfer]]'' (vol 3)
| 51-59
| 7月 - 11月
| Jim Starlin (51-52) <br>
Ron Marz (53-59)
| Ron Lim and Tom Christopher
|-
| ''Sleepwalker''
| 7
| 12月
| Bob Budiansky
| Bret Blevins
|}

=== 合本と再版 ===
1992年、続編『[[インフィニティ・ウォー]]』の発刊と時期を合わせて『インフィニティ・ガントレット』ミニシリーズを全1巻にまとめたソフトカバー[[単行本]]が発売された。この当時は人気作しか単行本化されていなかった<Ref>
{{cite book |last1=Gabilliet |first1=Jean-Paul |date=2005 |title=Of Comics And Men |page= 99 |publisher=University of Mississippi Press |isbn=1604732679 |quote=single volumes reprinting material previously published as popular comic books were a phenomenon that dated to the beginning of the 1980s. }}</ref>。同書の表紙はペレスによる新イラストレーションと[[箔押し]]ロゴで飾られていた。後の増刷では表紙イラストレーションが別人のものと変わり、箔押しは省略された。標準小売価格19.95ドルは収録号を定価で揃えるより5ドル高かった。

2006年6月、『アナイアレーション (''Annihilation'')』の刊行と合わせてソフトカバー単行本の第2版が発売された。『アナイアレーション』はキース・ギフェンとアンドレア・ディ・ヴィトによるコズミックテーマのクロスオーバー作品で、本作と同じくサノスとシルバーサーファーが活躍するものだった。この版ではミニシリーズ第1号の表紙が流用され、直後に初単行本化された続編『インフィニティ・ウォー』および『インフィニティ・クルセイド』と共通の[[トレードドレス]]が付与されていた。この版は発売月の発行部数が約2500冊で、ダイアモンド・ディストリビューションによるとコミック単行本のベストセラー第33位であった<ref>{{Cite web | url=http://www.comichron.com/monthlycomicssales/2006/2006-06.html| title=Comic Book Sales Figures for June 2006|last=Miller|first=John Jackson | website=[[Comichron]]|access-date=January 23, 2018}}</ref>。2006年には『シルバーサーファー』に掲載された本作の前日譚4号分と『サノス・クエスト』全2号を収録した選集『リバース・オブ・サノス (''The Rebirth of Thanos'')』が発売された。

2010年7月、「マーベル・プレミア・クラシック」シリーズの第46巻として本作のハードカバー版が刊行された<ref>{{Cite web | url=http://media.comics.ign.com/media/841/841932/img_3739057.html | title=''Spider-Man: Kraven's Last Hunt'' Premiere HC Variant Cover | work=[[IGN]]|access-date=January 18, 2018}}</ref>。同シリーズの通例として表紙の異なる二種類のバージョンが作られた。スタンダード版の表紙は、艶消し黒の地の上に、ミニシリーズ第4号の表紙から取られたサノスのイラストとメタリックレッドのタイトルロゴが描かれていた。コミック専門店限定のヴァリアント版では、黒と赤の背景の上にオリジナル版第1号の表紙が50%に縮小されて描かれ、背表紙に巻数が表示されていた<ref>{{Cite web | url=http://www.collectedcomicslibrary.com/marvel_premiere_classic/marvel_premiere_classic_variant_index.html | title= Marvel Premiere Classic presented in variant volume order | work=Collected Comics Library|access-date=January 18, 2018}}</ref>。

2011年、ソフトカバー第3版が販売された。第1刷では「プレミア・クラシック」スタンダード版の表紙が再利用されていたが、増刷ではオリジナル版第1号の表紙に戻った。2012年の映画『[[アベンジャーズ (2012年の映画)|アベンジャーズ]]』でエンドロール後にサノスが登場すると、この版の売れ行きが上昇した<ref name="Overated1" />。

2014年7月、全1248ページのオムニバス版『インフィニティ・ガントレット』が発売された。『シルバーサーファー』誌の前日譚、『サノス・クエスト』、刊行当時のタイイン号を収録したハードカバーであった。またタイインとは銘打たれなかったがストーリー的な関連がある号も収められていた(収録誌は『[[インクレディブル・ハルク]]』、『クェーサー』、『シルバーサーファー』、『[[スパイダーマン]]』)。ミニシリーズ版第1号の表紙イラストを流用した通常版はコミック専門店と一般書店の両方で販売されたが、コミック専門店ではスターリンが表紙を描いたヴァリアント版も発注することができた<ref>{{cite web |url=http://www.cheapgraphicnovels.com/home.php?cat=2806&page=3 |title=Omnibus Editions|website=Cheap Graphic Novels |access-date=December 15, 2017 }}</ref>。

マーベルが2015年4月に刊行した「トゥルー・ビリーバーズ」シリーズの第1弾には『インフィニティ・ガントレット』第1号が収録された。同シリーズは安価な再版本からなり、マーベルの過去作から人気タイトルを選んで新しい読者に紹介するためのものであった<ref>
{{cite web |url=https://www.newsarama.com/23234-marvel-launches-true-believers-1-line-of-1-issue-reprints.html |title=Marvel Launches $1 True Believers 'Best Of' Line |last= |first= |date=January 15, 2015 |website=[[Newsarama]] |access-date=December 15, 2017 |quote=}}</ref>。

2018年3月、ハードカバー12冊からなる500ドルのボックスセットが発売された。収録作は「インフィニティ・ガントレット・プレリュード」から始まり、「インフィニティ」のタイトルを冠したクロスオーバー三部作、それらのタイイン誌、三部作の間を埋めるストーリー、そしてボーナス・ストーリーなどを収めた528ページの「コンパニオン」であった<ref>{{cite web |url=https://www.previewsworld.com/Catalog/SEP170982 |title=Infinity Gauntlet Box HC Slipcase Set |author=<!--Not stated--> |website=Previews World |publisher=[[Diamond Distribution]] |access-date=January 18, 2018}}</ref>。

どの版でも単行本の絵とストーリーはオリジナル版と同一だが、後の版ではミニシリーズ第6号のミスが修正されている。オリジナル版では、広告ページが挟まった関係で、2ページ見開きとして描かれた戦闘シーンが1枚の紙の表裏に印刷されてしまっていた。単行本では広告がないため、問題のシーンは意図通りに印刷されている。

===日本語版===
1996年4月から10月まで、[[小学館]]より発行されていた[[マーヴルクロス]]誌に掲載された。1号から6号に1話ずつ全6話が完全収録されている。

本作を原案とする映画『[[アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー]]』の公開を翌年に控えた2017年12月、小学館集英社プロダクションからミニシリーズ全6号を収録した日本語版単行本が刊行された。翻訳は[[堺三保]]による<ref>{{cite web|url=http://books.shopro.co.jp/?contents=9784796876278|accessdate=2018-02-20|title=インフィニティ・ガントレット|publisher=ShoProBooks}}</ref>。

==登場人物==
=== 主要キャラクター ===
;[[サノス]]:異星種族タイタン人の一人で、強大なパワーを持つ[[ニヒリズム|虚無主義者]]。エターナルズの指導者メンターの息子で、エロスの兄。ミストレス・デスを愛しており、本編開始以前からその愛を勝ち取るためにパワーの探求を行っていた。しかしデスはサノスを自らの注目に値するとみなさず、しもべを通じて間接的に言葉をかけるのみである<ref name="io9how">{{cite web |url=https://io9.gizmodo.com/how-will-the-infinity-gauntlet-be-adapted-for-marvel-mo-1685270390 |title=How Will The Infinity Gauntlet Be Adapted for Marvel Movies? |last=Grabianowski |first=Ed |date=February 12, 2015 |website=[[io9]] |publisher=[[Gawker Media]] |access-date=December 11, 2017}}</ref>。
;[[デス (マーベル・コミック)|ミストレス・デス]]:マーベルユニバースにおける死が具象化した存在。顔と両手だけが露出した紫のローブを着用する。外貌は美しい女性とも骸骨とも見える。コズミック・ビーイング(宇宙的存在)の一人。
;アダム・ウォーロック:禁欲的なヒーロー。第二次サノス・ウォーでサノスの野望を阻んだ。その際ソウル・ジェムの中の世界ソウル・ワールドに封じ込められたが、そこで平穏な生活を享受していた。
;[[ネビュラ (マーベル・コミック)|ネビュラ]]:宇宙海賊の一味の頭目。サノスの孫娘を自称し、サノスがかつて乗っていた宇宙船を所有している。彼女を気に入ったサノスから実際に養子縁組を受けている。
;テラクシア:一向に自分に振り向いてくれないデスに業を煮やしたサノスが、インフィニティ・ガントレットの能力で創造した「完璧な」恋人。

=== コズミック・ビーイング ===
;[[ギャラクタス]]:癒されることのない飢餓により、宇宙を渡り歩いて惑星を喰らう存在。
;ストレンジャー:ひたすら知識を追求し続けるコズミック・ビーイング。
;ラブとヘイト:愛と憎悪の感情を司る二柱で一組のコズミック・ビーイング。
;マスター・オーダーとロード・カオス:秩序と混沌を司る二柱で一組のコズミック・ビーイング。
;セレスティアルズ:宇宙全土にわたって、全生命体の進化を促進するために遺伝子への干渉実験を繰り返す全知全能の存在。全身鎧を着込んだ巨大なヒューマノイドのような外観を持つが、本体は高次元の存在であり数百体以上存在する。
;クロノス:古代種族エターナルズの指導者であったが、物理的な存在を超越した。
;エポック:クエーサーに宇宙の守護者としての任を与えた超宇宙生命イオンの子。惑星サイズの頭部の形をしている。
;ウォッチャー:全多元宇宙の永遠の監視者。
;エターニティ:全宇宙の生命の集合的存在であり、無限の全多元宇宙、全次元、全時間軸を支配する全知全能の存在、体内に無限の多元宇宙を内包している。
;[[リビング・トリビューナル]]:無限の全平行多元宇宙、全次元、全時間軸及び、過去、未来、現在、可能性宇宙の調和を守り、監視し、それを乱す者を裁く全知全能の存在。インフィニティ・ジェムやエターニティを遥かに超える権能を持つ。

===サノスの敵対者===
;[[シルバーサーファー]]:人間型の異星人。コズミック・ビーイングである[[ギャラクタス]]の先触れとなり、その食料とするために生命体が住まう惑星を探していた。ギャラクタスに背いて自由の身になると、先触れとして与えられたパワーを用いて悪と闘うことで、大量殺人に加担した罪への贖罪を行っている。
;ピップ・ザ・トロル:小鬼のような異星人。アダム・ウォーロックの友人。
;[[ドラックス・ザ・デストロイヤー]]:サノスを倒すため、クロノスによって転生させられた元地球人。
;エロス:サノスの弟。笑顔によって他者の快楽中枢を刺激し、感情を操作する。
;ファイアロード:シルバーサーファーと同じく元[[ギャラクタス]]のヘラルド。超高熱の火炎を操る。
;クエーサー:クォンタム・バンドという腕輪を武器とするコズミック系ヒーロー。
;メフィスト:マーベル世界の地獄を支配する悪魔。シルバーサーファーの旧敵<ref>{{Cite comic | writer = [[Stan Lee]]| artist = [[John Buscema]]| title = Silver Surfer| volume = 1| issue = 3| date = December 1968| publisher = Marvel Comics| location = [[New York City]]}}</ref>。サノスに媚びへつらうが、その実サノスを操って敗北に導こうとしている<ref name="io9how"/>。

===地球のヒーローとヴィラン===
{{Col|
;[[ドクター・ストレンジ]]
;[[キャプテン・アメリカ]]
;[[アイアンマン]]
;[[マイティ・ソー|ソー]](エリック・マスターソン)
;[[ハルク (マーベル・コミック)|ハルク]]
;[[ウルヴァリン]]
;サイクロップス
|
;[[スカーレット・ウィッチ]]
;ヴィジョン
;[[シーハルク]]
;[[スパイダーマン]]
;[[サブマリナー|ネイモア・ザ・サブマリナー]]
;クローク
;[[ドクター・ドゥーム]]
}}

== あらすじ ==
=== 前日譚 ===
全宇宙に存在する生命体の数が急速に伸長し、これまでに死んだ死者の数を越えた。ミストレス・デスはサノスに対し、宇宙の生命の半分を殺して均衡を回復するように命じる。サノスの目的を知ったシルバーサーファーは阻止しようとするが、サノスは干渉を逃れるため自らの死を偽装する<ref>{{ Cite comic | writer=[[Jim Starlin]] | penciller=[[Ron Lim]] | inker=[[Tom Christopher]] | colorist= | letterer= | editor=
| story= | title=[[Silver Surfer]] | volume=3 | issue=34-38 | date=February - June 1990 | publisher=[[Marvel Comics]] | location=[[New York, NY]] }}</ref>。デスの次元に移ったサノスは、任務を達成する最善の方法を模索するうちに6個一組のインフィニティ・ジェムに目をつける。かつて自身が武器として使っていた強力な物体だが、想定を超える強大なパワーを所有者に与えることが判明したのだった。それぞれのジェム(スペース、タイム、リアリティ、マインド、ソウル、パワー)は宇宙の六つの相の一つを支配していた。サノスは宇宙を股にかけてジェムを集め、自身の左のガントレットに埋め込んでいく。すべてが集まったとき、サノスはデスに謁見し、今こそ対等の存在として言葉を交わしてくれることを期待する。しかし、デスはそれまでと同じく取次を介して言葉を伝えた。それはサノスが彼女よりも上位の存在となったためだった<ref>{{ Cite comic | writer=[[Jim Starlin]] | penciller=[[Ron Lim]] | inker=[[John Beatty (illustrator)|John Beatty]] | colorist= | letterer= | editor= | story= | title=[[Thanos Quest]] | issue=1-2 | date=August - November 1990 | publisher=[[Marvel Comics]] | location=[[New York, NY]] }}</ref>。

シルバーサーファーはサノスが生きていたことを知って戦いを挑む。新たに手に入れた力を誇示すべく、サノスはシルバーサーファーの魂をソウル・ジェムの中(ソウルワールド)に放逐する<ref>{{ Cite comic | writer=[[Jim Starlin]] | penciller=[[Ron Lim]] | inker=[[Tom Christopher]] | colorist= | letterer= | editor= | story= | title=[[Silver Surfer]] | volume=3 | issue=44 | date= December 1990 | publisher=[[Marvel Comics]] | location=[[New York, NY]] }}</ref>。そこでシルバーサーファーはアダム・ウォーロックと出会い、サノスの行状を伝える。ウォーロックはシルバーサーファーを現実世界に帰し、サノス打倒に協力することを約束する<ref>{{ Cite comic | writer=[[Jim Starlin]] | penciller=[[Ron Lim]] | inker=[[Tom Christopher]] | colorist= | letterer= | editor= | story= | title=[[Silver Surfer]] | volume=3 | issue=46-47 | date= February - March 1991 | publisher=[[Marvel Comics]] | location=[[New York, NY]] }}</ref>。シルバーサーファーはアベンジャーズや他のヒーローにサノスに備えるよう警告するため地球に向かう<ref>{{ Cite comic | writer=[[Jim Starlin]] | penciller=[[Ron Lim]] | inker=[[Tom Christopher]] | colorist= | letterer= | editor= | story= | title=[[Silver Surfer]] | volume=3 | issue=50 | date= June 1991 | publisher=[[Marvel Comics]] | location=[[New York, NY]] }}</ref>。その一方で、インフィニティ・ガントレットのパワーを感知したメフィストがサノスの下に現れ、パワーの使い道を助言しようと申し出る。その裏でメフィストはガントレットをわがものとする機会を待っていた<ref>{{ Cite comic | writer=[[Jim Starlin]] | penciller=[[Ron Lim]] | inker=[[Tom Christopher]] | colorist= | letterer= | editor= | story= | title=[[Silver Surfer]] | volume=3 | issue=45 | date= January 1991 | publisher=[[Marvel Comics]] | location=[[New York, NY]] }}</ref>。

=== 本編 ===
==== 第一話(1991年7月) ====
[[ドクター・ストレンジ]]が自分の館でくつろいでいるところに突然大音響が轟く。屋根裏部屋に飛び込んだストレンジは、天井を突き破って落下してきた[[シルバーサーファー]]を発見する。意識朦朧のサーファーは「想像を絶する恐ろしい破滅が…止めなければ…サノスが復活した」と告げた。

その頃、無限の力を以ってしても愛する[[デス (マーベル・コミック)|デス]]に振りむいてもらえないサノスは、虚空にデスを称える巨大神殿を出現させる。また、己の非情さをアピールするため、自分の孫娘ネビュラを腐敗した動死体に変えて見せびらかす。だがそれでもデスの歓心を得られなかったサノスは、メフィストの進言によりついに計画を実行することにした。

インフィニティ・ガントレットを嵌めた腕を掲げ、指をパチンと一つ鳴らす。たったそれだけで全宇宙の生命の半分が消去された。[[スパイダーマン]]の恋人のMJが、[[アベンジャーズ (マーベル・コミック)|アベンジャーズ]]のメンバーが、[[ニック・フューリー]]が、ドクター・ストレンジの執事が、そしてスクラル帝国でも、衛星タイタンのエターナルズのコロニーでも。運良く生き残った者は、それぞれの大切な人々の消失を知り、驚愕と絶望に捕らわれた。

==== 第二話(1991年8月) ====
大消失に見舞われた地球では、火災や飛行機事故などが頻発しており、生き残ったヒーローたちが人々の救出に死力を尽くしていた。またクリー帝国では、この大消失は宿敵スクラル帝国の陰謀であるとし、報復艦隊が発進していた。半数の神々が消去されたアスガードには、ギリシャやケルトを始めとする神々が集合し、善後策を検討していた。

その時、ドクター・ストレンジの精神に何者かが接触し、サノスと戦う軍団を集めることを提案する。

エターナルズのエロスは、衛星タイタンのコロニーからテレポートされ、サノスの捕虜になる。サノスの精神操作を試みるエロスだったが、ガントレットの力で能力を封じられてしまう。

時を同じくして[[ドクター・ドゥーム]]も怪しい動きを始めていた。「やがて自分が支配すべき臣民たち」を消失させられたという怒りと、この混乱の原因からさらなる科学と権力を得ようとする欲望が彼を突き動かしていたのだ。ストレンジの屋敷に侵入し、この大消失の原因をむりやり聞きだそうとしたドクター・ドゥームは、シルバーサーファーと戦闘になる。そこに割って入ったのは、ソウルワールドから現実世界に復活したアダム・ウォーロックとピップ・ザ・トロルだった。

大消失を引き起こし、加えてネビュラとエロスを様々な方法で責め苛んでもデスに振り向いてもらえないサノスは、ついに怒りを爆発させる。ガントレットの引き起こした怒りの衝撃波は銀河系の四分の一を蹂躙し、[[ギャラクタス]]が喰らおうとしていた星も砕かれてしまう。宇宙的な飢えを満たす機会を奪われたギャラクタスは激しい怒りを押さえつけ、知略をめぐらせつつ時を待つ。

==== 第三話(1991年9月) ====
アベンジャーズの基地へ転移したドクター・ストレンジ、アダム・ウォーロック、シルバーサーファー、ドクター・ドゥーム、ピップは、サノスに対抗する軍団の編成を[[キャプテン・アメリカ]]に持ちかける。ストレンジのテレパシーによる呼びかけに応え、ポータル(空間転移門)から地球のヒーローの生き残りが続々と現れる。


地球ヒーロー軍団の編成をキャプテン・アメリカに任せたアダムとサーファーは、新たなポータルを通って銀河の果てへ向かう。そこには、エポックとクエーサー、エターニティ、時の巨神クロノス、ロード・カオスとマスター・オーダー、ラブ&ヘイト、ストレンジャー、ギャラクタス、2体のセレスシャルズといったコズミック・ビーイングたち、そしてウォッチャーのウァトゥと[[リビング・トリビューナル]]が参集していた。
地球ヒーロー軍団の編成をキャプテン・アメリカに任せたアダムとサーファーは、新たなポータルを通って銀河の果てへ向かう。そこには、エポックとクエーサー、エターニティ、時の巨神クロノス、ロード・カオスとマスター・オーダー、ラブ&ヘイト、ストレンジャー、ギャラクタス、2体のセレスシャルズといったコズミック・ビーイングたち、そしてウォッチャーのウァトゥと[[リビング・トリビューナル]]が参集していた。
56行目: 243行目:
しかしアダムが立案したのはあまりに非情な計画であった。地球を代表するスーパーヒーローである彼らですら、陽動であり、捨て石にすぎなかったのだ。
しかしアダムが立案したのはあまりに非情な計画であった。地球を代表するスーパーヒーローである彼らですら、陽動であり、捨て石にすぎなかったのだ。


=== 第四話(1991年10月) ===
==== 第四話(1991年10月) ====
ソー、ファイアロード、ネイモア、アイアンマンがサノスに突撃する。しかしサノスは笑いながら、指を鳴らした。
ソー、ファイアロード、ネイモア、アイアンマンがサノスに突撃する。サノスは笑いながら指を鳴らした。その瞬間全多元宇宙の時間が停止した。停止をまぬがれたのはサノスの周囲のわずかな範囲のみである。しかし、メフィストの「デスに対して貴方様の勇気を示すのです」というささやきに応じ、サノスはパワー・ジェム以外の5個のジェムの能力を遮断する。「こうすれば奴らにも0.05%程度は勝つ望みがあろう」とうそぶき、サノスが再び指を鳴らすと時が動き出した。


ヒーローたちの攻撃がサノスに集中する。しかしそれを物ともせず、サノスの反撃が始まった。次々に殺されていくヒーローたち。<!--
その瞬間、全多元宇宙の時間が停止した。停止をまぬがれたのはサノスの周囲のわずかな範囲のみである。メフィストの「デスに対して貴方様の勇気を示すのです」というささやきに応じ、パワー・ジェム以外の5個のジェムの能力を遮断したサノスは「こうすれば奴らにも0.05%程度は勝つ望みがあろう」とうそぶく。サノスが再び指を鳴らすと時が動き出した。

ヒーローたちの攻撃がサノスに集中する。しかしそれを物ともせず、サノスの反撃が始まった。次々に殺されていくヒーローたち。
<!--
ハルクは虫けらサイズに体を縮小され、拳でつぶされた。
ハルクは虫けらサイズに体を縮小され、拳でつぶされた。
ネイモアとシーハルクはコケ状の寄生体を生やされて死んだ。
ネイモアとシーハルクはコケ状の寄生体を生やされて死んだ。
77行目: 261行目:
ノヴァは玩具のような細かなブロックに分解された。
ノヴァは玩具のような細かなブロックに分解された。
クエーサーは両腕ごとクォンタム・バンドを爆破され、熱線で焼き尽くされた。
クエーサーは両腕ごとクォンタム・バンドを爆破され、熱線で焼き尽くされた。
-->最後に残ったキャプテン・アメリカは[[一騎討ち]]を挑む。サノスの拳が不壊のシールドを打ち砕き、キャップを殴り殺そうとした瞬間、ガントレット目掛けて一光年先からシルバーサーファーが超スピードで突っ込んだ。しかしわずかな差でガントレットを奪うことは出来ず、キャプテン・アメリカも死んだ。危うく敗北を免れたサノスは冷静さを取り戻し、ジェムの機能を復活させる。
-->
最後に[[一騎討ち]]を挑むキャプテン・アメリカ。サノスの拳が不壊のシールドを打ち砕き、キャップを殴り殺そうとした瞬間、ガントレット目掛けて一光年先からシルバーサーファーが超スピードで突っ込んだ。しかしわずかな差でガントレットを奪うことは出来ず、キャプテン・アメリカも死んだ。


アダム・ウォーロックの第一のプランは敗れた。そしてアダムはコズミック・ビーイング達を召喚する。
アダム・ウォーロックの第一のプランは敗れた。そしてアダムはコズミック・ビーイング達を召喚する。


=== 第五話(1991年11月) ===
==== 第五話(1991年11月) ====
コズミック・ビーイングたちは次元を歪めるほどの猛攻をサノスに加える。
コズミック・ビーイングたちは次元を歪めるほどの猛攻をサノスに加える。<!--
<!--
セレスシャルズは惑星を砲弾とした。
セレスシャルズは惑星を砲弾とした。
時間の化身クロノスは時間流に閉じ込めようとした。
時間の化身クロノスは時間流に閉じ込めようとした。
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ラブとヘイトは矛盾した感情でサノスの思考をかく乱しようとした。
ラブとヘイトは矛盾した感情でサノスの思考をかく乱しようとした。
いよいよ叛意を顕にしたメフィストは地獄の業火を浴びせかけ、ガントレットを奪おうとした。
いよいよ叛意を顕にしたメフィストは地獄の業火を浴びせかけ、ガントレットを奪おうとした。
-->メフィストは叛意を露にし、ミストレス・デスも敵方に回った。しかしすべての攻撃は無駄だった。6つのジェムの力で全知全能を超えたサノスは彼ら全員を凍結封印し、自らを至高の神であると宣言した。
-->
しかしすべての攻撃は無駄だった。6つのジェムの力を稼動させ、全知全能を超えたサノスは彼ら全員を凍結封印し、自らを至高の神であると宣言した。


そしてついにエターニティが戦いを挑んだ。多元宇宙を吹き飛ばすほどの爆発が起こり、ついに決着がついた。サノスの精神はエターニティに取って代わり、この宇宙と同一化したのだ。
そしてついにエターニティが戦いを挑んだ。多元宇宙を吹き飛ばすほどの爆発が起こり、ついに決着がついた。サノスの精神はエターニティに取って代わり、この宇宙と同一化したのだ。その時、一瞬の隙を突いた動死体ネビュラが、無防備なサノスの肉体からガントレットをひったくった


生気溢れる肉体を取り戻したネビュラが最初に行ったのはサノスへの復讐だった。一瞬にして無力となったサノスとテラクシアを宇宙空間に放り出したのだ。窒息したテラクシアは死に、サノスは死を覚悟した。しかしその瞬間、サノスはアダムが作ったポータルによって地球のアベンジャーズ基地に転送された。
その時、一瞬の隙を突いた動死体ネビュラが、無防備なサノスの肉体からガントレットをひったくった!


アダムはサノスに内密の会話を求め、彼がガントレットを失うことを予期していたと告げる。サノスは自らが全能の力にふさわしくないと心の深奥で悟っており、無意識に敗北を求めたのだという。ソウル・ジェムに封じられていたウォーロックは、ジェムを持つ者の心を見通すことができたのだった。打ちのめされたサノスは説得を受け入れ、ネビュラ打倒に協力する。
生気溢れる肉体を取り戻したネビュラが最初に行ったのはサノスへの復讐だった。一瞬にして無力となったサノスとテラクシアを宇宙空間に放り出したのだ。窒息したテラクシアは死に、サノスは死を覚悟した。

しかしその瞬間、サノスはアダムが作ったポータルによって地球のアベンジャーズ基地に転送された。アダムから自らの心の闇を指摘されたサノスは彼の説得を受け入れ、ネビュラを倒すことに協力することになった。


形勢逆転に成功したネビュラだったが、ガントレットのもたらす超知覚と力を持て余した彼女の精神は崩壊しかけていた。
形勢逆転に成功したネビュラだったが、ガントレットのもたらす超知覚と力を持て余した彼女の精神は崩壊しかけていた。


=== 第六話(1991年12月) ===
==== 第六話(1991年12月) ====
アダム、サノス、シルバーサーファーらはポータルを使って神殿に転移する。死んだと思っていたサノスの挑発に乗ったネビュラは短慮な命令を下してしまう。「ガントレットを私の手に残したまま、それ以外の全てを24時間前の状態に戻す!」一瞬で世界は旧に復し、ネビュラは動死体に戻った。
アダム、サノス、シルバーサーファーらはポータルを使って神殿に転移する。死んだと思っていたサノスの挑発に乗ったネビュラは短慮な命令を下してしまう。「ガントレットを私の手に残したまま、それ以外の全てを24時間前の状態に戻す!」一瞬で世界は旧に復し、ネビュラは動死体に戻った。


自らの策が成功したことに満足し、悠々とガントレットを回収に向かうサノスだったが、次の瞬間にはネビュラが復活していた。ガントレットは着用者の思考だけで発動するのだ。
自らの策が成功したことに満足し、悠々とガントレットを回収に向かうサノスだったが、次の瞬間にはネビュラが復活していた。ガントレットは着用者の思考だけで発動するのだ。


しかし次の瞬間、復活したコズミック・ビーイングたちによる一斉攻撃がネビュラを襲う。ネビュラは必死の防戦を繰り広げるが、彼女にはサノスほどの精神力や経験が足りなかった。
しかし間をおかず、復活したコズミック・ビーイングたちによる一斉攻撃がネビュラを襲う。ネビュラは必死の防戦を繰り広げるが、彼女にはサノスほどの精神力や経験が足りなかった。


大混乱のさなか、アダムとサーファーはソウル・ジェムの内部に転移していた。サーファーを現実世界との絆として残し、アダムは自分の存在を拡張していく。ソウル・ジェムと同化を果たしたアダムは他の5つのジェムに干渉してガントレットの調和を破る。その瞬間、エネルギーがオーバーフローしたガントレットをネビュラが取り落とす。
大混乱のさなか、アダムとサーファーはソウル・ジェムの内部に転移していた。サーファーを現実世界との絆として残し、アダムは自分の存在を拡張していく。ソウル・ジェムと同化を果たしたアダムは他の5つのジェムに干渉してガントレットの調和を破る。その瞬間、エネルギーがオーバーフローしたガントレットをネビュラが取り落とす。サノスとヒーローたちは地に落ちたガントレットに殺到する。しかしガントレットを手にしたのは、実体化したアダム・ウォーロックだった


投獄されるよりも死を選んだサノスは、ベルトに仕込んでいた核兵器を起動させ、虚空で自爆する。ネビュラはエロスによって拘引されていった。ヒーローたちはガントレットの所有権に異議を唱えるが、ウォーロックは有無を言わさず彼らを地球に送り返す。その後、ウォーロックは60日後の未来に移動し、名前のない惑星を訪問する。そこには、実は生存していたサノスが一介の農夫として暮らしていた。サノスはウォーロックに対し、力の追求を放棄して静かに内省的な生活を送るつもりだと告げる。
地に落ちたガントレットを目指して殺到するサノス、ネビュラ、エロス、ソー、ハルク、ドラックス。果たしてガントレットを手にし、この混乱を制するのは誰なのか?


===エピローグ===
== 主要登場人物 ==
ストレンジはウォーロックを訪問し、新たなパワーに適応できたか確かめようとする。ウォーロックは宇宙から利己的な欲望と競争心を消し去るつもりだと明かす。ウォーロックはそれが戦争や不和をなくすことになると信じていたが、ストレンジの価値観はそれを許さなかった。ストレンジの魔法により、ソウル・ストーンはウォーロックに、欲望と競争心を失った生き物は単なる動物であることを見せる。ウォーロックは考えを変え、自らの行動をより慎重に選ぶことを約束する<ref>{{Cite comic| writer = [[Roy Thomas|Roy and Dann Thomas]]| penciller = Dan Lawlis| inker = [[Andrew Pepoy]]| colorist = Mike Rockwitz| letterer = R. Parker| editor = [[Tom DeFalco]]| title = Doctor Strange, Sorcerer Supreme| issue = 36| date = December 1991| publisher = [[Marvel Comics]]| location = [[New York City]]}}</ref>。
*サノス:エターナルズの指導者メンターの息子で、エロスの兄。
*メフィスト:地獄の王子。
*ネビュラ:サノスの孫娘を名乗る青い肌の女宇宙海賊。彼女を気に入ったサノスから実際に養子縁組を受けている。
*テラクシア:一向に自分に振り向いてくれないデスに業を煮やしたサノスが、インフィニティ・ガントレットの能力で創造した「完璧な」恋人。


エターニティはリビング・トリビューナルを招喚し、ウォーロックがインフィニティ・ガントレットを持つにふさわしいか審判を乞う。宇宙を支配する力を持つには精神的に不適格だと断じられたウォーロックは、ジェムのうち5個を自身が選んだ守護者たちに託すことを受け入れる<ref>{{Cite comic| writer = [[Jim Starlin]]| penciller = [[Angel Medina (artist)|Angel Medina]]| inker = [[Terry Austin]]| colorist = Ian Laughlin | letterer = [[Jack Morelli]]| editor = Craig Anderson| title = Warlock and the Infinity Watch| issue = 1| date = December 1991| publisher = [[Marvel Comics]]| location = [[New York City]]}}</ref>。
===サノスに対抗するものたち===
====ヒーローとヴィラン====
*[[アダム・ウォーロック]]
*ピップ・ザ・トロル
*ドラックス・ザ・デストロイヤー
*エロス:サノスの弟。笑顔によって他者の快楽中枢を刺激し、感情を操作する。
*[[ドクター・ストレンジ]]
*[[シルバーサーファー]]
*ファイアロード:シルバーサーファーと同じく元[[ギャラクタス]]のヘラルド。超高熱の火炎を操る。
*[[キャプテン・アメリカ]]
*[[アイアンマン]]
*[[マイティ・ソー|ソー]]:この時のソーはエリック・マスターソン。
*[[ハルク (マーベル・コミック)|ハルク]]
*[[ウルヴァリン]]
*サイクロップス:この当時はX-ファクターのリーダー。
*スカーレットウィッチ:[[アベンジャーズ (マーベル・コミック)|アベンジャーズ]]のメンバーで、ヘックス・パワーと呼ばれる現実改変能力を持つ。
*ヴィジョン:アベンジャーズのメンバー。自我を持つアンドロイドで、分子浸透能力と額からの破壊光線が武器。
*[[シーハルク]]
*[[スパイダーマン]]
*[[サブマリナー|ネイモア・ザ・サブマリナー]]
*クエーサー:クォンタム・バンドという腕輪を武器とするコズミック系ヒーロー。
*クローク:闇の異空間を操る。相棒で光を操るヒロイン、ダガーは大消失で消えた。
*[[ドクター・ドゥーム]]


== 評価 ==
==== コズミック・ビーイング ====
=== 刊行時 ===
*[[デス (マーベル・コミック)|デス]]:死を司るコズミック・ビーイング。
本作は刊行後すぐにヒットし、1990年代を通してもっとも影響力の大きいストーリーラインの一つとなった<Ref name="HRint">{{cite web |url=https://www.hollywoodreporter.com/heat-vision/infinity-gauntlet-comic-behind-avengers-3-941769 |title='Infinity Gauntlet': The Story of the Marvel Cinematic Universe's Secret Weapon |last=Couch |first=Aaron |date=October 27, 2016 |website=[[The Hollywood Reporter]] |publisher= |access-date=January 11, 2018}}</ref>。当時全米でコミックブックの取次を行っていた両社({{仮リンク|ダイアモンド・ディストリビューション|en|Diamond Distribution}}と{{仮リンク|キャピタル・シティ・ディストリビューション|en|Capital City Distribution}})とも、本シリーズの全号が発売月にベストセラートップテン入りを果たした<ref>
*[[ギャラクタス]]
*{{cite magazine |author=<!--Staff writer(s); no by-line.--> |title=June Top 10|magazine=[[Wizard (magazine)|Wizard]] #1 |page=72 |publisher=[[Wizard Entertainment]] |date=June 1991}}
*エターニティ:全宇宙の生命の集合ともいうべき、無限の全宇宙、全次元、全時間軸を支配し、体内に全多元宇宙を内包する全知全能の存在。ある意味デスの対極に位置する
*{{cite magazine |author=<!--Staff writer(s); no by-line.--> |title=Diamond's Top 100 for August 1991|magazine=[[Wizard (magazine)|Wizard]] #2 |page=96 |publisher=[[Wizard Entertainment]] |date=October 1991}}
*ストレンジャー(Stranger):ひたすら知識を追求し続けるコズミック・ビーイング
*{{cite magazine |author=<!--Staff writer(s); no by-line.--> |title=Diamond's Top 100 for September 1991|magazine=[[Wizard (magazine)|Wizard]] #3 |page=102 |publisher=[[Wizard Entertainment]] |date=October 1991}}
*ラブとヘイト(Love and Hate):愛と憎悪の感情を司る二柱で一組のコズミック・ビーイング
*{{cite magazine |author=<!--Staff writer(s); no by-line.--> |title=Diamond's Top 100 for October 1991|magazine=[[Wizard (magazine)|Wizard]] #4 |page=82 |publisher=[[Wizard Entertainment]] |date=December 1991}}</ref>。1991年9月、[[アメリカン・コミックス|コミックブック]]・マーケットでの[[投機]]を扱う雑誌『{{仮リンク|ウィザード (米国の雑誌)|label=ウィザード|en|Wizard (magazine)}}』は<ref>{{cite web |url=http://blog.comichron.com/2011/01/print-age-of-wizard-ends.html|title=The print age of Wizard ends |last=Miller |first=John Jackson |website= [[ComicChron]] |access-date=January 24, 2011 }}</ref>、本作第1号を「値上がり有望」リストの9位に、本作のプロローグが掲載された『シルバーサーファー』誌の2号をそれぞれ6位と10位に挙げた。本作第1号の価格はコレクター市場において定価2.5ドルから上昇していき、1992年末に9~10ドルで安定化した<ref>
*マスター・オーダー(Master Order)とロード・カオス(Lord Chaos):秩序と混沌を司る二柱で一組のコズミック・ビーイング
* {{cite magazine |author=<!--Staff writer(s); no by-line.--> |title=Price Guide |url= |magazine=[[Wizard (magazine)|Wizard]] #16 |page=150 |publisher=[[Wizard Entertainment]] |date=December 1992 |access-date= }}
*セレスティアルズ:宇宙全土にわたって、全生命体の進化を促進するために遺伝子への干渉実験を繰り返す全知全能の存在。全身鎧を着込んだ巨大なヒューマノイドのような外観を持つが、本体は高次元の存在であり数百体以上存在する
* {{cite magazine |author=<!--Staff writer(s); no by-line.--> |title=Price Guide|url= |magazine=[[Comic Buyer's Guide]] Price Guide |page= |publisher=[[Krause Publications]] |date=January 1994|access-date= }}</ref>{{refn|group=†|name=first|コミックのプライス・ガイドは複数の発行元から出されており、それらは必ずしも一致しないので、価格が落ち着いた時期やその値は正確に決められない。}}。
*クロノス(Chronos)
*エポック(Epoch):クエーサーに宇宙の守護者としての任を与えた超宇宙生命イオンの子。惑星サイズの頭部の形をしている。
*[[リビング・トリビューナル]]:無限の全並行多元宇宙および、過去、未来、現実、並行世界の調和を守り、それを乱すものを裁く全知全能の存在。公平、必然、復讐の三つの顔をもつ。
*ウォッチャー:多元宇宙の永遠の監視者


本作の派生シリーズ『ウォーロック・アンド・ザ・インフィニティ・ウォッチ (''Warlock and the Infinity Watch'')』の創刊号は『ウィザード』1991年12月号で推奨作品の筆頭に挙げられた<ref>{{cite magazine |author=<!--Staff writer(s); no by-line.--> |date=January 1992 |title=Picks From the Wizard's Hat|url= |magazine=[[Wizard (magazine)|Wizard]] #5 |location=New York City|page=68 |publisher=[[Wizard Entertainment]]}}</ref>。『インフィニティ・ウォッチ』のストーリーは本作の正式な続編『インフィニティ・ウォー (''The Infinity War'')』(1992年6月~)に続き、次いで続編第2作『インフィニティ・クルセイド (''The Infinity Crusade'')』(1993年6月~)が刊行された。他誌で本作のタイインを行った号も売れ行きは好調だったため、本作にキャラクターを貸し出したがらなかった編集者も、続編ではタイインに参加することを希望した<ref name="HRint" />。
== 他のバージョン ==
インフィニティ・ガントレットは、[[パラレルワールド]]を舞台としたタイトル『What If』で2度特集され、[[シルバーサーファー]]<ref>''What If?'' #49 (May 1993)</ref>と[[インポッシブルマン]]<ref>''What If?'' #104 (Jan. 1998)</ref>がそれぞれガントレットを所有していた場合が描かれる。


== 単行本 ==
=== 後年 ===
1990年代の終わりが近づくにつれて、『インフィニティ・ガントレット』への関心は薄れ始めた''。''2編の続編は好評を得られず、『インフィニティ・ウォッチ』は1995年に打ち切られた<ref>{{cite web |url=http://whatculture.com/comics/10-reasons-infinity-gauntlet-overrated?page=6 |title=10 Reasons The Infinity Gauntlet Is Overrated - #6 |last=Ginocchio |first=Mark |date=May 22, 2014 |website= What Culture |access-date= January 11, 2018}}</ref>。同年、マーベル社はインフィニティ・ジェムをメインの作中世界から取り除き、買収したマリブ・コミックス社から取得したウルトラバース世界に移した。その後、ウルトラバースを舞台とするコミックは1996年に廃刊となった<ref>{{cite web |url=https://observationdeck.kinja.com/the-sad-strange-story-of-the-ultraverse-1705430650 |title=The Sad Strange Story of the Ultraverse |date=May 19, 2015 |website=Observation Deck |access-date=January 30, 2018}}</ref>。『ウィザード』誌は1998年に本作を毎号のコミックブック価格リストから外した<ref>{{cite magazine |author=<!--Staff writer(s); no by-line.--> |title=Price Guide |url= |magazine=[[Wizard (magazine)|Wizard]] #81 |page=171 |publisher=[[Wizard Entertainment]] |date=May 1998 |access-date= }}</ref>。ペーパーバック単行本の第1版は1999年を最後に再版されなかった。
* ''Infinity Gauntlet'' (256ページ、2000年3月 ISBN 0871359448、2004年12月 ISBN 0-7851-0892-0、2006年7月 ISBN 0-7851-2349-0)


図象としてのインフィニティ・ガントレットは人気を保ち続けた。マーベル社は同じ[[ウォルト・ディズニー・カンパニー|ディズニー]]傘下の[[ESPN]]と提携してNBAの[[2010-2011シーズンのNBA|2010-2011年シーズン]]にプロモーション画像を制作したが、''ESPN: The Magazine'' 2010年10月22日号に掲載された広告では、インフィニティ・ガントレットをつけた[[コービー・ブライアント]]が描かれていた<ref>{{cite web |url=http://comicsalliance.com/espn-marvel-nba-season-promotional-mashups/ |title=ESPN and Marvel Promote New NBA Season with Infinity Gauntlet Kobe Bryant |last=Mendelson |first=Brandon |date=October 15, 2010 |website=[[Comics Alliance]] |publisher=[[Townsquare Media]] |access-date=January 11, 2018}}</ref>。2011年に[[IGN]]が発表したコミックブック・イベントのオールタイムベストリストでは、本作が「その後に企画されたコズミック・テーマのイベントすべてのお手本」と紹介された<ref>{{cite web |url=http://www.ign.com/articles/2011/05/30/the-best-comic-book-events?page=2 |title=The Best Comic Book Events |last= Esposito |first=Joey |date=May 30, 2011 |website=[[IGN]] |publisher= [[News Corporation]]|access-date= January 11, 2018}}</ref>。
== 他のメディア ==
=== テレビゲーム ===
[[カプコン]]より発売された、[[1995年]]の『[[マーヴル・スーパーヒーローズ|MARVEL SUPER HEROES]]』と『[[マーヴルスーパーヒーローズ ウォーオブザジェム|Marvel Super Heroes: War of the Gems]]』はこのストーリーを原作としている。ただし、原作に登場しなかったヒーローやヴィランが登場している。


2012年の映画『[[アベンジャーズ (2012年の映画)|アベンジャーズ]]』にサノスが[[カメオ出演|カメオ登場]]すると、ファンとメディアの間で本作への関心が再燃した。2014年10月にはアベンジャーズの映画第3作・第4作のタイトルが『インフィニティ・ウォー パート1』『同 パート2』であることが発表され、さらに関心が白熱した<ref name="Oct2014Event">
== 日本語版 ==
*{{cite web|url=http://www.newsarama.com/22573-marvel-announces-black-panther-captain-marvel-inhumans-avengers-infinity-war-films-cap-thor-3-subtitles.html |title=Marvel Announces Black Panther, Captain Marvel, Inhumans, Avengers: Infinity War Films, Cap & Thor 3 Subtitles |last=Siegel |first=Lucas |publisher=[[Newsarama]] |date=October 28, 2014 |accessdate=October 28, 2014 |archiveurl=https://www.webcitation.org/6TfU8mLIr?url=http://www.newsarama.com/22573-marvel-announces-black-panther-captain-marvel-inhumans-avengers-infinity-war-films-cap-thor-3-subtitles.html |archivedate=October 28, 2014 |deadurl=no |df= }}
[[小学館]]より発行されていた[[マーヴルクロス]]誌に掲載された。1号から6号に1話ずつ全6話が完全収録されている。
* {{cite web|url=http://marvel.com/news/movies/23546/marvels_the_avengers_head_into_an_infinity_war |title=Marvel's The Avengers Head Into an Infinity War |last=Strom |first=Marc |publisher=[[Marvel Comics|Marvel.com]] |date=October 28, 2014 |accessdate=October 28, 2014 |archiveurl=https://www.webcitation.org/6TforkqPl?url=http://marvel.com/news/movies/23546/marvels_the_avengers_head_into_an_infinity_war |archivedate=October 29, 2014 |deadurl=no |df= }}</ref>。2018年に予定された第3作『[[アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー]]』(「パート1」は取り除かれた)の公開が近づくと、コミック関連のニュースサイトは本作の紹介や、どの要素が映画に取り入れられるかの予想を配信し始めた<ref>Such as
* {{cite web |url=https://www.hollywoodreporter.com/heat-vision/infinity-gauntlet-comic-behind-avengers-3-941769 |title= 'Infinity Gauntlet': The Comic Behind 'Avengers 3' |last= |first= |date=October 20, 2016 |website=[[The Hollywood Reporter]] |publisher= |access-date=January 31, 2018 }}
* {{cite web |url=https://www.cinemablend.com/news/1582519/how-closely-avengers-infinity-war-will-follow-the-comics-according-to-kevin-feige |title=How Closely Avengers: Infinity War Will Follow The Comics, According to Kevin Feige |last= |first= |date= |website=[[Cinema Blend]] |publisher= |access-date=January 31, 2018 }}
*{{cite web |url=https://www.cbr.com/mcu-ruined-infinity-gauntlet/ |title=What’s Glove Got To Do With It: 15 Ways The MCU Ruined The Infinity Gauntlet |last=Bjork |first=Juliette |date=December 2, 2017 |website=[[Comic Book Resources]] |access-date= February 2, 2018}}
*{{cite web |url=https://www.cbr.com/the-infinity-gauntlet-15-things-you-never-knew/ |title=The Infinity Gauntlet: 15 Things You Never Knew |last=Stephenson |first=Brad |date=February 2, 2017 |website=[[Comic Book Resources]] |access-date=February 2, 2018}}
*{{cite web |url=http://www.digitalspy.com/movies/the-avengers/feature/a834693/infinity-war-avengers-gauntlet-differences-source-material/ |title=Why Avengers: Infinity War won't be anything like its source material |last=Armitage |first=Hugh |date=August 3, 2017 |website=[[Digital Spy]] |access-date=January 30, 2018}}</ref>。そこで本作のストーリーは「伝説的」<ref>{{cite web |url=https://screenrant.com/thanos-marvel-infinity-gauntlet-things-you-need-to-know-trivia/ |title=10 Things You Need To Know About The Infinity Gauntlet |last= Blackburn |first=Troy |date=April 14, 2016|website=[[Screen Rant]]|access-date= January 11, 2018}}</ref>、「古典」<ref name="Overated1">{{cite web |url=http://whatculture.com/comics/10-reasons-infinity-gauntlet-overrated |title=10 Reasons The Infinity Gauntlet Is Overrated |last=Ginocchio |first=Mark |date=May 22, 2014 |website= What Culture |access-date= January 11, 2018}}</ref>、「象徴的」<ref>{{cite book |last=Casey |first=Dan |date=May 1, 2015 |title=100 Things Avengers Fans Should Know Before They Die |url=https://books.google.com/books?id=XwR_BwAAQBAJ&pg=PA324&dq=%22infinity+gauntlet%22&hl=en&sa=X&ved=0ahUKEwjHsMCFj7DYAhVMPN8KHZNcAQUQ6AEITTAJ#v=onepage&q=%22infinity%20gauntlet%22&f=false |location= [[Chicago, Illinois]]|publisher=[[Triumph Books]] |page=91 |isbn=162937086X }}</ref>などと形容された。本作がその時点でも魅力を保っている理由として挙げられたのは、ペレスの作画や<ref name="STP">{{cite web |url=https://surrealtimepress.com/2015/03/27/five-things-to-keep-in-mind-while-you-read-infinity-gauntlet-part-3/ |title=Five Things To Keep In Mind While You Read Infinity Gauntlet – Part 3 |last=Mitchell |first=B |date=March 25, 2015 |website=Surreal Time Press |access-date=January 11, 2018}}</ref><ref name="io9how"/>、古典的なヒーローたちをかつてない視点で描いたスターリンの手際であった<ref>{{cite web |url=https://surrealtimepress.com/2015/03/27/five-things-to-keep-in-mind-while-you-read-infinity-gauntlet-part-4/ |title=Five Things To Keep In Mind While You Read Infinity Gauntlet – Part 4 |last=Mitchell |first=B |date=March 26, 2015 |website=Surreal Time Press |access-date=January 11, 2018}}</ref><ref>{{cite web |url=https://surrealtimepress.com/2015/03/27/five-things-to-keep-in-mind-while-you-read-infinity-gauntlet-part-5/ |title=Five Things To Keep In Mind While You Read Infinity Gauntlet – Part 5 |last=Mitchell |first=B |date=March 27, 2015 |website=Surreal Time Press |access-date=January 11, 2018}}</ref>。

好意的な関心ばかりではなかった。ドリュー・ブラッドリーは2013年に『マルチバーシティ・コミックス』でマーベルのコズミックテーマの作品について一連の書評を書き、本作のストーリーは素晴らしいが全編を通して読んだ時に限ると述べた。ブラッドリーは『シルバーサーファー』誌に掲載された前日譚を読むよう勧めたが、その時点で単行本化されていたのは一部に過ぎなかった<ref>{{cite web |url=http://www.multiversitycomics.com/news-columns/tradewaiter-cosmic-marvel-part-2/ |title=Tradewaiter: Cosmic Marvel, Part 2 |last=Bradley |first=Drew |date=January 21, 2013 |website=Multiversity Comics |access-date=January 11, 2018 }}</ref>。ポップカルチャーに関するウェブサイト『ホワット・カルチャー』において、マーク・ジノッキオは本作が過大評価されていると考える理由を列挙した。理由の一つは、ペレスからリムへの作画の交代が「違和感があって見過ごせない」ことであった<ref>{{cite web |url=http://whatculture.com/comics/10-reasons-infinity-gauntlet-overrated?page=5 |title=10 Reasons The Infinity Gauntlet Is Overrated - #5 |last=Ginocchio |first=Mark |date=May 22, 2014 |website= What Culture |access-date= January 11, 2018}}</ref>。また、スターリンが70年代に書いていたサノスのストーリーの方が優れているにもかかわらず、本作の陰に隠れてしまっているという意見も述べられた<ref>{{cite web |url=http://whatculture.com/comics/10-reasons-infinity-gauntlet-overrated?page=11 |title=10 Reasons The Infinity Gauntlet Is Overrated - #10 |last=Ginocchio |first=Mark |date=May 22, 2014 |website= What Culture |access-date= January 11, 2018}}</ref>。

=== コミック界への影響 ===
本作が作品評価の面でも商業面でも成功を収めたことで、オンゴーイング・シリーズ『ウォーロック・アンド・インフィニティ・ウォッチ』と、続編となる2編のクロスオーバー作品『インフィニティ・ウォー』(1992年)、『インフィニティ・クルセイド』(1993年)が発刊された。本作の結末は後年のストーリーラインにつながっている。例としては『サノス』(2003年)<ref>*{{ Cite comic
| writer=[[Jim Starlin]] | penciller=[[Jim Starlin]] | inker= | colorist= | letterer= | editor= | title=Thanos | volume=1 | issue=1 | date=December 2003 | publisher=[[Marvel Comics]] | location=[[New York, NY]] }}</ref>、『アベンジャーズ』第4シリーズ(2011年)<ref>{{ Cite comic | writer=[[Brian Michael Bendis]] | penciller=[[John Romita Jr]] | inker= | colorist= | letterer= | editor= | title=Avengers | volume=4 | issue=12 | date=June 2011 | publisher=[[Marvel Comics]] | location=[[New York, NY]] }}</ref>、『シークレット・ウォーズ』(2016年)<ref>{{ Cite comic | writer=[[Jonathan Hickman]] | penciller=[[Esad Ribic]] | inker= | colorist= | letterer= | editor= | title=Secret Wars | volume=2 | issue=8 | date=February 2016 | publisher=[[Marvel Comics]] | location=[[New York, NY]] }}</ref>がある。これらのストーリーのいくつかではガントレットのパワーが弱体化されており、所有者が敵に圧倒されて敗北するシーンがたびたび描かれた<ref>{{cite web |url=https://www.cbr.com/gods-more-powerful-than-infinity-gauntlet/ |title=15 Marvel Gods That Are More Powerful Than The Infinity Gauntlet |last=Buesing |first=Dave |date=December 11, 2017 |website= [[Comic Book Resources]]|access-date=January 30, 2018}}</ref>。

『インフィニティ・ガントレット』の発売後数年にわたって、作中での出来事を別の観点から描くコミック作品が刊行された。マーベル・ユニバースにおける重要な事件が別の方向に進んだらどうなるかを扱うシリーズ『{{仮リンク|ホワット・イフ…?|en|What If (comics)}}』では、様々なキャラクターがガントレットを手に入れたらどうなるかを描く物語が何度も作られた<ref>
*{{ Cite comic | writer=[[Ron Marz]] | penciller=[[Scott Clark (artist)|Scott Clark]] | inker= | colorist= | letterer= | editor= | title=What If...? | volume=2 #49 | issue=49 | date=May 1993 | publisher=[[Marvel Comics]] | location=[[New York, NY]] }}
*{{ Cite comic | writer=Thomas Virkaitis | penciller=Gregg Schigiel | inker= | colorist= | letterer= | editor= | title=What If...? | volume=2 | issue=104 | date=January 1998 | publisher=[[Marvel Comics]] | location=[[New York, NY]] }}
*{{ Cite comic | writer=Paul Tobin | penciller=[[Patrick Scherberger]] | inker= | colorist= | letterer= | editor= | title=What If? Newer Fantastic Four | volume=1 | issue=[[one-shot (comics)|one-shot]] | date=February 2009 | publisher=[[Marvel Comics]] | location=[[New York, NY]] }}
*{{ Cite comic | writer=[[Jason Henderson]] | penciller=Sana Takeda | inker= | colorist= | letterer= | editor= | title=What If? Dark Reign | volume=1 | issue=[[one-shot (comics)|one-shot]] | date=February 2011 | publisher=[[Marvel Comics]] | location=[[New York, NY]]
}}</ref>。{{仮リンク|マーベル・アドベンチャーズ|en|Marvel Adventures}}[[インプリント]]では、2010年8月から全4号のリミテッドシリーズとして若年層向けのリメイク『アベンジャーズ・アンド・ザ・インフィニティ・ガントレット』が刊行された。原作はブライアン・クレビンジャー、作画は Brian Churillathe であった。クレビンジャーはオリジナル版と勝負しても叶わないと考え、骨格だけを使って意図的に異なる方向性で書いた<Ref>{{cite web |url=http://www.ign.com/articles/2010/04/16/the-avengers-vs-the-infinity-gauntlet-once-more |title=The Avengers Vs. The Infinity Gauntlet Once More |last1=George |first1=Richard |last2=Schedeen |first2=Jesse |date=April 16, 2010 |website=[[IGN]] |access-date=January 11, 2018}}</ref>。2015年のクロスオーバー『シークレット・ウォーズ』では、本作と同じタイトルを冠した全5号のリミテッドシリーズ(作者はゲリー・デュガンとダスティン・ウィーヴァー)において、本作の要素の一部を取り入れた物語が描かれた<ref>{{ Cite comic | writer=Gerry Dugan | penciller=Dustin Weaver | inker= | colorist= | letterer= | editor= | title=The Infinity Gauntlet | volume=1 | issue=1-5 | date=July 2015 - January 2016 | publisher=[[Marvel Comics]] | location=[[New York, NY]] }}</ref>。

== 関連商品 ==
本作のオリジナル版の刊行中、テナシティ社は正式なライセンスの下で表紙イラストレーションをプリントした黒[[Tシャツ]]を作成し、マーベル社刊行物の広告ページを通じて限定販売した。Tシャツ前面にはミニシリーズ第4号の表紙が、背面には第3号の表紙が使われた<ref>{{ Cite comic
| story=Ad
| title=The Infinity Gauntlet
| issue=2
| date=August 1991
| page=10
| publisher=[[Marvel Comics]]
| location=[[New York, NY]]
}}</ref>。

刊行時に玩具展開は行われなかったが、それ以降に発売されたサノスの[[アクションフィギュア]]には、インフィニティ・ガントレットを着用した姿で造形されたりアクセサリとして附属するものがある。12インチサイズの「マーベル・セレクト」シリーズや<ref>{{cite web |url=https://shop.diamondselecttoys.com/marvel--action-figures--marvel-select-thanos-action-figure|title=Marvel Select Thanos Action Figure|last= |first= |publisher=[[Diamond Distribution]]|date=|website=Diamond Select Toys|access-date=January 9, 2018}}</ref>、2インチサイズの「スーパーヒーロー・スクァッド」シリーズは一例である<ref>{{cite web |url=http://jestergoblin.com/?tag=super-hero-squad-wave-19|title=super hero squad wave 19 |last= |first= |publisher=|date=|website=Jester Goblin|access-date=January 9, 2018}}</ref>。2011年の「マーベル・ユニバース」シリーズでは、サノス、ウォーロック、ウォーロック用のガントレット、そしてミニシリーズ第3号の再版本がセットになったパックが販売された<ref>{{cite web |url=http://comicsalliance.com/marvel-universe-greatest-battles-two-packs-thanos-adam-warlock-gambit-mr-sinister/ |title=Marvel Universe 'Greatest Battles' Two-Packs to Pair Thanos and Adam Warlock|last= |first= |publisher=|date=December 9, 2011|website=[[Comics Alliance]]|access-date=January 9, 2018}}</ref><ref group=†>このフィギュアセットのサノスは既存製品のリペイントである。先行版でもインフィニティ・ガントレットは付属していた。</ref>。本作のロゴをパッケージに使った玩具シリーズもある。例として、「ミニメイト」シリーズのフィギュアセット(2009年)や<ref>{{cite web |url=http://www.minimatedatabase.com/pack.php?i=610 |title=The Infinity Gauntlet Box Set |last= |first= |publisher=|date=|website=Minimate Database|access-date=January 9, 2018}}</ref>、ハズブロの[[コミコン・インターナショナル|サンディエゴ・コミコン]]限定セット(内容はサノスなどのフィギュアとフォーム製のガントレット)がある<ref>{{cite web |url=https://www.usatoday.com/story/life/2014/05/22/hasbro-marvel-comic-con-toy-exclusive/9442319/ |title=Hasbro throws down the (Infinity) Gauntlet at Comic-Con|last=Truitt |first=Brian |publisher=[[Gannett Company]]|date=|website=[[USA Today]]|access-date=January 9, 2018}}</ref>。

インフィニティ・ガントレットの形を模したライセンス商品も多数製作されており、[[貯金箱]]や[[イヤリング]](シンク・ギーク)<ref>{{cite web |url=https://www.gizmodo.com.au/2015/10/collect-coins-not-infinity-gems-with-a-thanos-gauntlet-bank/ |title=Collect Coins, Not Infinity Gems, With A Thanos Gauntlet Bank|last=Liszewski |first=Andrew |publisher= |date=October 18, 2015 |website=[[Gizmodo]]|access-date=January 9, 2018}}</ref><ref>{{cite web |url=https://www.cbr.com/marvel-infinity-gauntlet-earrings/ |title=ThinkGeek's Infinity Gauntlet Earrings |last= |first= |publisher= |date=September 16, 2017|website=[[Comic Book Resources]]|access-date=January 9, 2018}}</ref>、[[栓抜き]](ダイアモンド・セレクト・トイズ)<ref>{{cite web |url=https://pulse.therpf.com/yes-this-is-an-infinity-gauntlet-bottle-opener |title=Yes, This is an Infinity Gauntlet Bottle Opener|last=Plantamura |first=Dean |publisher=|date=June 13, 2015|website=RPF Pulse|access-date=January 9, 2018}}</ref>、[[マグカップ|コーヒーマグ]](エンターテインメント・アース)<ref>{{cite web |url=http://sciencefiction.com/2016/05/11/review-entertainment-earth-exclusive-infinity-gauntlet-mug/ |title=Review: Entertainment Earth Exclusive Infinity Gauntlet Mug|last= |first= |publisher=|date=May 11, 2016|website=Science Fiction|access-date=January 9, 2018}}</ref>、オーブンミトン(ルート・クレイト)のような例がある<ref>{{cite web |url=https://www.polygon.com/2016/6/3/11852380/infinity-gauntlet-destroyed-utterly-by-pizza-rolls |title=Infinity Gauntlet utterly destroyed by hot pizza rolls (update)|last=Hall |first=Charlie |publisher=|date=June 3, 2016|website=[[Polygon (website)|Polygon]]|access-date=January 9, 2018}}</ref>。

== メディア展開 ==
=== ビデオゲーム ===
本作の刊行直後、そのストーリーラインを元にしたビデオゲームが[[カプコン]]から2本発売された。[[格闘ゲーム]]『[[マーヴル・スーパーヒーローズ]]』は1995年にアーケードでリリースされ、1997年に[[セガサターン]]と[[プレイステーション]]に[[移植 (ソフトウェア)|移植]]された<ref name=ssm>{{cite news|last=Leadbetter|first=Rich|title=Review: Marvel Super Heroes|work=[[Sega Saturn Magazine]]|issue=24|publisher=[[Emap International Limited]]|date=October 1997|pages=70-71}}</ref>。1996年にリリースされた『[[マーヴルスーパーヒーローズ ウォーオブザジェム]]』は[[スーパーファミコン]]用の[[横スクロールアクションゲーム]]である<ref>{{cite web|url=http://www.allgame.com/game.php?id=7429 |title=Marvel Super Heroes in War of the Gems |publisher=[[AllGame]] |date= |accessdate=2015-12-21 |deadurl=bot: unknown |archiveurl=https://web.archive.org/web/20141210231745/http://www.allgame.com/game.php?id=7429 |archivedate=2014-12-10 |df= }}</ref>。

2017年9月にカプコンは対戦格闘ゲーム『[[マーベル VS. カプコン:インフィニット]]』を[[PlayStation 4]]、[[Xbox One]]、[[Microsoft Windows]]向けに発売した。本作が直接の原作ではないが、一部のストーリー要素が取り入れられていた<ref>
*{{cite web|url=http://www.gamespot.com/articles/marvel-vs-capcom-infinite-officially-announced/1100-6445942/ |date=December 3, 2016 |accessdate=December 3, 2016 |last=Hussain |first=Tamoor |website=[[GameSpot]] |title=Marvel Vs. Capcom Infinite Officially Announced |archive-url=https://web.archive.org/web/20170415143422/http://www.gamespot.com/articles/marvel-vs-capcom-infinite-officially-announced/1100-6445942/ |archive-date=April 15, 2017 |dead-url=no |df= }}
*{{cite web|url=http://www.pcgamer.com/marvel-vs-capcom-infinite-release-date-set-for-september/|date=April 25, 2017|accessdate=June 23, 2017|last=Wilde|first=Tyler|website=[[PC Gamer]]|title=Marvel vs Capcom: Infinite release date set for September|archive-url=https://web.archive.org/web/20170623181627/http://www.pcgamer.com/marvel-vs-capcom-infinite-release-date-set-for-september/|archive-date=June 23, 2017|dead-url=no}}
*{{cite web|url=https://www.famitsu.com/news/201706/13135301.html|date=June 13, 2017|accessdate=June 23, 2017|website=[[Famitsu]]|title=『マーベル VS. カプコン:インフィニット』公式リリース到着、日本での発売日は9月21日(1/2)|language=Japanese|archive-url=https://web.archive.org/web/20170613073105/https://www.famitsu.com/news/201706/13135301.html|archive-date=June 13, 2017|dead-url=no}}</ref>。カプコンは発売直後に同作の世界トーナメント「Battle for the Stones」を開催した<ref name=Battle>{{cite web|url=https://compete.kotaku.com/official-marvel-vs-capcom-infinite-tournament-will-gi-1818547675|date=September 19, 2017|accessdate=September 25, 2017|last=Walker|first=Ian|website=[[Kotaku]]|title=Official Marvel vs. Capcom: Infinite Tournament Will Give Six Players Special Powers|archive-url=https://web.archive.org/web/20170920142957/https://compete.kotaku.com/official-marvel-vs-capcom-infinite-tournament-will-gi-1818547675|archive-date=September 20, 2017|dead-url=no}}</ref>。優勝者には賞金と電飾されたインフィニティ・ガントレット型トロフィーが授与された<ref>
*{{cite web|url=https://compete.kotaku.com/marvel-pros-reaction-to-winning-is-fantastic-1821168434|date=December 10, 2017|accessdate=December 10, 2017|last=Van Allen|first=Eric|website=[[Kotaku]]|title=Marvel Pro's Reaction To Winning Tournament Is Fantastic|archive-url=https://web.archive.org/web/20171211000014/https://compete.kotaku.com/marvel-pros-reaction-to-winning-is-fantastic-1821168434|archive-date=December 10, 2017|dead-url=no}}
*{{cite web|url=https://compete.kotaku.com/this-weekends-marvel-vs-capcom-trophy-is-a-light-up-in-1821150667|date=December 9, 2017|accessdate=December 10, 2017|last=Van Allen|first=Eric|website=[[Kotaku]]|title=This Weekend's Marvel vs. Capcom Trophy Is A Light-Up Infinity Gauntlet|archive-url=https://web.archive.org/web/20171209194645/https://compete.kotaku.com/this-weekends-marvel-vs-capcom-trophy-is-a-light-up-in-1821150667|archive-date=December 9, 2017|dead-url=no}}</ref>。

===アナログゲーム ===
2011年10月、ウィズキッズ社はコレクティブルミニチュアゲーム「ヒーロークリックス ([[:en:Heroclix|Heroclix]])」について、本作をモチーフにしたトーナメントを翌2012年に開催することを告知した<ref>{{cite web |url=https://icv2.com/articles/comics/view/21180/wizkids-plans-infinity-gauntlet |title=WizKids Plans Infinity Gauntlet |date=October 5, 2011 |website=[[ICv2]] |access-date=January 30, 2018 }}</ref>。大会に参加する店舗は、ヒーロークリックスのブースター・パックを最少限購入することで、無料のゲーム・キットを受け取ることができた<ref>{{cite web |url=http://heroclix.com/wp-content/uploads/2011/10/infinity-gauntlet-solicitation.pdf |title=The Infinity Gauntlet comes to HeroClix! (pdf) |date=October 2011 |website=[[Heroclix]] |publisher=[[WizKids]] |access-date=January 30, 2018 }}</ref>。トーナメントは1月から8月まで毎月1ラウンドずつ進行した。各ラウンドの参加プレイヤーには特別なゲーム・ピースが配布され、優勝者には本作のストーリーに登場するキャラクターの限定ピースが授与された。全8ピースの参加賞を組み合わせると、サノスがデスに贈った神殿となる<ref>{{cite web |url=http://www.cosmiccomics.vegas/latest-news/infinity-gauntlet-finale/ |title=Infinity Gauntlet Finale |date=July 31, 2012 |website=Cosmic Comics |access-date=January 30, 2018 }}</ref>。これはヒーロークリックスのトーナメントとして当時最大規模だった<ref>{{cite web |url=http://www.cosmiccomics.vegas/events/the-infinity-gauntlet-is-here/ |title=The Heroclix Infinity Gauntlet is Here! |date=April 1, 2012 |website= Cosmic Comics|access-date=January 30, 2018 }}</ref>。

===テレビアニメ===
テレビアニメシリーズ『スーパーヒーロー・スクァッド・ショウ (''The Super Hero Squad Show'')』では第1シーズンに「インフィニティ・ソード」が登場したほか、第2シーズン(2010年 - 2011年)で本作のストーリーが大まかに再現された。グリプトナイト・ゲームズは2010年にタイアップ作品『マーベル・スーパーヒーロー・スクァッド: インフィニティ・ガントレット』を複数の[[プラットフォーム (コンピューティング)|プラットフォーム]]で発売した<ref>{{cite web |url=http://www.businesswire.com/news/home/20101116006032/en/THQs-Marvel-Super-Hero-Squad-Infinity-Gauntlet |title=THQ's Marvel Super Hero Squad: The Infinity Gauntlet Swoops into North American Retail Stores Today |last= |first= |date=November 16, 2010 |website=[[Business Wire]] |publisher=[[Berkshire Hathaway]] |access-date=December 8, 2017}}</ref>。

2014年、アニメシリーズ『[[アベンジャーズ・アッセンブル]]』第2シーズンの前半で本作のストーリーが使われた<ref name=vty>{{cite news|last1=Khatchatourian|first1=Maane|title=Disney XD Renews Marvel’s ‘Avengers Assemble,’ ‘Hulk and the Agents of S.M.A.S.H.’|url=https://variety.com/2014/tv/news/disney-xd-renews-avengers-hulk-marvel-cartoons-1201269592/|accessdate=July 28, 2014|work=[[Variety (magazine)|Variety]]|date=July 26, 2014}}</ref>。サノスが主要キャラクターとなる2013年のクロスオーバー作品『インフィニティ』(原作ジョナサン・ヒックマン、原画ジム・チャン、ジェローム・オペナ、ダスティン・ウィーヴァ―)からも、サノスの配下ブラック・オーダーなどの要素が取り入れられた<ref name="Avengers World">{{cite episode|title=Avengers World|series=[[Avengers Assemble (TV series)|Avengers Assemble]]|network=[[Disney XD]]|season=2|number=26|airdate=September 20, 2015}}</ref>。

=== 映画 ===
2011年の映画『[[マイティ・ソー (映画)|マイティ・ソー]]』では、ファンへの隠れメッセージとして、ジェムがはめ込まれたインフィニティ・ガントレットの[[プロップ]]が登場した。このときまだ[[マーベル・スタジオ]]は[[マーベル・シネマティック・ユニバース]]に本作を取り入れる決定を下していなかった。『[[アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン]]』(2015年)では[[タイトルロール]]後にジェムのないガントレットを着用したサノスが写され、『[[マイティ・ソー バトルロイヤル]]』(2017年)では『マイティ・ソー』のガントレットが偽物だったことが明かされた<ref name="/FilmFeige">{{cite web|url=http://www.slashfilm.com/thor-ragnarok-spoiler-questions/|title=Kevin Feige Answers Your Lingering 'Thor: Ragnarok' Spoiler Questions|last=Sciretta|first=Peter|publisher=[[Slash Film|/Film]]|date=November 6, 2017|accessdate=November 7, 2017|archiveurl=https://www.webcitation.org/6umwr49yy|archivedate=November 7, 2017|deadurl=no}}</ref>。2018年の映画『[[アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー]]』 は本作のコンセプトと主題を借用しており、サノスがインフィニティ・ストーンを集めるストーリーとなる<ref name="ThanosMotivations">{{cite web|url=http://collider.com/thanos-avengers-infinity-war-infinity-gauntlet-story |title=Kevin Feige on How Closely Thanos' 'Infinity War' Arc Will Mirror 'Infinity Gauntlet' |last=Chitwood |first=Adam |work=[[Collider.com]] |date=April 24, 2017 |accessdate=April 24, 2017 |archiveurl=https://www.webcitation.org/6pyMjqjXQ?url=http://collider.com/thanos-avengers-infinity-war-infinity-gauntlet-story |archivedate=April 24, 2017 |deadurl=no |df= }}</ref>。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
=== 注釈 ===
{{reflist}}
<references group="†"/>
===出典===
{{Reflist|30em}}

== 外部リンク ==
* {{Marvunapp|http://www.marvunapp.com/Appendix5/infinity_gauntlet_event.htm|The Infinity Gauntlet}}
* {{Gcdb series|id=4245|title=Infinity Gauntlet}}
* {{Comicbookdb|type=storyarc|id=277|title=Infinity Gauntlet (storyline)}}


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[[Category:マーベル・コミックの作品]]
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[[Category:架空の道具]]
[[Category:架空の道具]]
[[Category:スーパーヒーローを題材とした漫画]]

2018年3月24日 (土) 11:45時点における版

インフィニティ・ガントレット The Infinity Gauntlet
出版情報
掲載間隔月刊
形態リミテッド・シリーズ
ジャンルスーパーヒーロー
掲載期間7月 – 12月 1991年
話数6
主要キャラサノス
シルバーサーファー
アダム・ウォーロック英語版
ネビュラ
製作者
ライターJim Starlin
ペンシラーGeorge Pérez
Ron Lim
インカーJosef Rubinstein
Tom Christopher
Bruce N Solotoff
レタラーJack Morelli
着色Max Scheele
Ian Laughlin
編集者Craig Anderson
コレクテッド・エディション
1st Ed TPB (1992)ISBN 0871359448
2nd Ed TPB (2006)ISBN 0785123490
3rd Ed TPB (2011)ISBN 0785156593
HC Edition (2010)ISBN 0785145494
Omnibus (2014)ISBN 078515468X

インフィニティ・ガントレット』 (The Infinity Gauntlet)とは、1991年12月よりマーベル・コミックスから出版された全6号のリミテッド・シリーズ英語版[† 1]であり、同作に登場する架空の道具の名称でもある。原作ジム・スターリン英語版、作画はジョージ・ペレス英語版とロン・リム。本作は同名のクロスオーバー・イベントの中核であり、プロット要素のいくつかは他誌のタイイン号[† 2]でも扱われた。初出のコミックブック以外にも数多くの形式で再版が行われている。

異星人の虚無主義者サノスが6個の「インフィニティ・ジェム」を集め、自らのガントレット[† 3]にはめ込んだところで本作は幕を開ける。すべてのジェムのパワーを手にしたことで神同然の地位に昇ったサノスは、死が具現化した存在であるミストレス・デスの愛を勝ち取ろうとする。サノスはそのパワーをもって全宇宙の生命体の半数に死をもたらし、アダム・ウォーロック英語版は生き残った地球のヒーローを糾合して戦いを挑む。その後、「インフィニティ・ガントレット」がサノスの孫娘ネビュラの手に落ちると、サノスはヒーロー側について奪還を試みる。最終的にガントレットを手にしたのはウォーロックであった。サノスが引き起こした死と破壊はガントレットのパワーで修復された。

本作のルーツは1970年代にさかのぼる。当時マーベル社で原作と作画を兼務していたスターリンは、作品中でサノスやインフィニティ・ジェムといったアイディアを展開していた。スターリンは1990年に『シルバーサーファー』第3シリーズ第34号から同誌の原作者に就任し、ペンシラーのリムとともに16号にわたって執筆をつづけた。そのストーリーは全2号のサイドシリーズ『サノス・クエスト』に発展し、そして本作『インフィニティ・ガントレット』に結実した。本作の作画は第4号まで人気作家ペレスが担当したが、ペレスがスケジュール的な問題を抱えており、ストーリーにも不満があったことでリムに交代した。

本作はマーベル社のトップセラーとなり、直後に続編『インフィニティ・ウォー (Infinity War)』(1992年)および『インフィニティ・クルセイド (Infinity Crusade)』(1993年)が作られた。本作の出来事はマーベル社の作中世界で大きな事件となっており、初出から三十年近く経ってなお言及されることがある。ファンの間での人気も依然として高く、再版本や関連商品の発売が断続的に続いている。本作の題材やプロットはビデオゲームアニメシリーズで何度も再利用されており、2018年の映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』にも本作の内容が取り入れられている。

刊行の履歴

背景

本作の中心キャラクターであるサノスはジム・スターリンによって作りだされ、『アイアンマン』第55号(1973年2月)で初めて世に出た。スターリンは原作・原画を務めていたマーベル社の月刊誌『キャプテン・マーベル』でサノスを悪役として使い、キャラクターを発展させていった[1]。一連のストーリーラインは「第一次サノス・ウォー (First Thanos War)」として知られるようになった[2]。その完結直後、スターリンは1974年7月までで『キャプテン・マーベル』誌を離れた[3]

スターリンは1975年に『ストレンジ・テールズ』の原作・作画を任された。スターリンは同誌で展開されていたアダム・ウォーロックのストーリーを引き継ぐと、ウォーロックのキャラクターを大幅に変更するとともに、インフィニティ・ジェムの設定を作り出した[2]。スターリンはサノスをヒーロー側で再登場させ、次に敵に回らせた。この長篇ストーリーは1977年まで続き、「第二次サノス・ウォー」として知られるようになった[2][4]。2編のサノス・ウォーは短期間に続けて刊行されたため、合わせて一つのストーリーラインだとみなされることがある[1]。どちらのストーリーも宇宙を舞台としていたため、スターリンは「コズミック」テーマの作家と考えられるようになった[2][5]

第二次サノス・ウォーの完結後、スターリンはマーベルで持っていた連載をすべて返上した[6]。その後1980年代を通じて、マーベルではグラフィックノベル『キャプテン・マーベルの死』やクリエーター・オウンド作品[† 4]『ドレッドスター』など単発のプロジェクトしか手掛けなかった[8]。その一方、DCコミックスでは『バットマン』や『コズミック・オデッセイ』のような注目度の高い作品を出している[5]。1990年のインタビューでスターリンは、「第一次サノス・ウォー」のタイイン号でサノスを使った原作者は何人もいるが、好きなように使うことを許されている原作者は自分だけだと述べた[9]

制作

シリーズ原作者、ジム・スターリン(2008年撮影)。

1988年、スティーヴ・イングルハートはライターを務める『シルバーサーファー』でインフィニティ・ジェムとミストレス・デスを登場させた。さらにミストレス・デスが敵に復讐するためにサノスを利用する続編ストーリーを構想し、編集部に許可を求めた。しかし総編集長トム・デファルコはサノスのことを知らなかった。説明を受けたデファルコはこのストーリー案を気に入り、夏の大型クロスオーバーのために温存しておくことにした。このときデファルコは、1988年のクロスオーバー「エヴォリューショナリー・ウォー」と同じく、リミテッド・シリーズではなく複数のレギュラーシリーズのアニュアル号[† 5]上でストーリーを展開する刊行形式を指示していた[10]

マーベルはサノスと関係の深いスターリンを呼び戻し、本作の原作者に迎えた[11]。スターリンは直近に読んだヴィルヘルム・ライヒカルロス・カスタネダロジャー・ゼラズニイからの影響で、サノスを何重にも奥行きを持ったキャラクターとして描こうと決めた[12]。スターリンは本作をサノスの物語の最終幕にする(遠からず覆されるとしても)つもりで執筆を始め、中盤を越えたところでサノスをアンチヒーローとして扱うことに決めた[13]。多岐にわたるプロットと配役を整理するため、スターリンは壁にかけた大きな合板にインデックスカードを貼っていった[13]

スターリンは第34号(発行日表示1990年2月)から『シルバーサーファー』の原作を書き始めた[8]。最初の4号ではサノスが改めて紹介され、新章の開幕を告げた。当初、スターリンと担当編集者クレイグ・アンダーソンは本作を『シルバーサーファー』誌だけで完結させる計画だった。しかし、マーベル社を買収したばかりの新オーナーはIPをすべて最大限に活用するよう指示を下した[13][† 6]。サノスの帰還が大きな話題を呼んだことに乗じて、物語の第2幕は全2号のスピンオフ・シリーズ『サノス・クエスト (Thanos Quest)』(1990年秋)で描かれた[13][15]。その後のストーリーは『シルバーサーファー』第44号に続いた[15]。スターリンとアンダーソンは再び同誌上でストーリーを完結させようとしたが、『サノス・クエスト』の売れ行きが好調だったことでスピンオフ第2弾が企画された。『シルバーサーファー』誌上での展開は第50号で終わり、リミテッド・シリーズ『インフィニティ・ガントレット』が始まった[13]

スターリンは『シルバーサーファー』第46号でアダム・ウォーロックと関連キャラクターを再登場させた。ウォーロックを登場させるつもりがないならほかの原作者に渡すと編集者から迫られたためであった。スターリンはその原作者の作品を高く評価していなかったため、ウォーロックを自分のストーリーに取り入れることに決めた[11][13]

スターリンは本作で人気キャラクターを死なせるつもりだったが、マーベル編集スタッフは異を唱えなかった。スターリンによれば、その理由の一つはアンダーソンが同僚にストーリーの細部を伝えていなかったためである[12]。ただし、編集者らは担当キャラクターのうち本作に貸し出せるものを選別した。たとえばX-MENの編集者ボブ・ハラスはサイクロプスとウルヴァリンしか使うことを許さなかった。それ以外のX-MENキャラクターは絵に描かれないところで死ぬなどして物語から退場した[16]。編集者たちが非協力的だったのは、夏のクロスオーバーイベントが実施され始めてからそれほど年数が経っていなかったせいもある[13][† 7]

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作画家ジョージ・ぺレス(左、2012年撮影)、ロン・リム(右、2013年撮影)。

人気の作画家ジョージ・ペレスは登場人物が多い作品を描くことで定評があった。ぺレスは1970年代にマーベルの『アベンジャーズ』で頭角を現し、その後DCに移籍して『ニュー・ティーン・タイタンズ』、『クライシス・オン・インフィニット・アース』、『ワンダーウーマン』などを手掛けた[17]。ペレスは1984年にDC社と専属契約を結んだ。マーベル社の原作者・作画家ジム・ヴァレンチノはこの契約が1990年8月で失効することを知ってペレスに電話をかけ、自身が原作と原画を務める『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で表紙のインキングを行うよう依頼し、承諾を得た。ヴァレンチノの担当編集者でもあったアンダーソンからそれを伝え聞いたスターリンはペレスに電話し、『インフィニティ・ガントレット』の原画を依頼した。ペレスはスターリンやアンダーソンと条件を詰めた上で依頼を受けた。大人数シーンを描くのを好んでいたペレスは、古巣マーベルのファンの「度肝を抜く」ため、登場人物をなるべく増やすようにスターリンに頼んだ[18]。ペレスは1991年のインタビューにおいて、『シルバーサーファー』と『サノス・クエスト』のペンシラーであったロン・リムを差し置いて自分に声がかけられたのは、リムが多忙だったためだという推測を述べた[19]

ペレスはDC社では作画だけでなく原作も行っていたが、マーベルキャラクターの現状には詳しくなかったため、『インフィニティ・ガントレット』では完全なスクリプトに基づいて作画に専念することに同意した[† 8]。この制作体制はペレスにとって窮屈に感じられ、早い段階から「腹も立ったし、うんざりした」という。スターリンはスクリプトとともに参考用のコマ割り案を作成していたが、ペレスはスターリンの許可のもとで自由にコマ割りを行い、あるシーンのスペースを増やしたり、前後を入れ替えたりした[19]

表紙画はプロモーション素材として使われるため、ペレスは本シリーズ第1号の作画を終えるより早く第4号までの表紙原画を仕上げていた。しかしペレスは当時のマーベル・ユニバースの状況を知らなかったため、第3号の表紙ではソーやクェーサーなどのキャラクターを旧コスチュームで描いてしまった。ペレスは描き直しを命じられて意気消沈した[19]

ペレスは本作の制作と並行してDCコミックスでも『ウォー・オブ・ザ・ゴッズ』の原画を行っていた。同作はワンダーウーマンのミニシリーズで、ペレスによると「非常に神経を使う」プロジェクトであった[20]。どちらのプロジェクトも進行が遅れはじめたため、ペレスは『ウォー・オブ・ザ・ゴッズ』の仕事を辞退したいと考えたが、契約により叶わなかった[18]。スケジュール的な重圧により、また作画と原作を兼任するスタイルに馴染んでいたこともあり、ペレスはスターリンのスクリプトへの不満を募らせていった。内容に比してページを使い過ぎだというのがペレスの主張であった[18][20]。意欲の減退によって作画の手も鈍り、スケジュールはさらに遅れていった[20]

ペレスが第4号の締め切りを守れないことが確実になると、デファルコは『シルバーサーファー』の正ペンシラーであったロン・リムに第4号の作画を完成させるよう依頼した[18]。さらにデファルコはシリーズの作画をリムに譲ることをペレスに了承させた。ペレスはこの交代劇に納得しており、初めからリムが作画を担当するべきだったと後に述べた。ペレスはシリーズ完結までリムの表紙イラストのインキングを行い、何も遺恨がないことを示した[20]。マーベル経営陣はペレスの降板によって売れ行きが落ちることを危惧したが、リムの手掛けた号は尻上がりに売り上げを増やしていった[13]

ペレスの代打を務めるため、リムは『キャプテン・アメリカ』を降板しなければならなかった。リムは作画家としてペレスから影響を受けたことを公言しており、その仕事を奪ったことで「心が痛んだ」という。その上、非常に多くのキャラクターが登場する本作はリムのキャリアの中でもっとも困難な仕事であった。それでもリムは、『インフィニティ・ガントレット』の図像的な面を担うことが「楽しかった」と発言した[21]

本作の売り上げを知ったペレスは、降板によって数万ドルと思われる印税収入を失ったと気づいた。しかし、本作に続編の企画があることを知ると後悔はなくなった。スターリンと同じく、ペレスも本作がサノスの最後のストーリーになると信じて仕事を受けていた[20][19]

刊行

ジャーナリストのショーン・ハウの表現によれば、本作の刊行までの数か月、マーベル社のマーケティング部はこのイベントを「煽りまくった」[22]。プロモーションの一環としてダイレクト・マーケット傘下の小売店に配布された宣伝キットには、本シリーズの内容を詳しく述べた書状、レジ横に掲示する販促材料、18×36インチのポスターなどが含まれていた[23]PR誌『マーベル・エイジ』第91号(1990年8月)には「サノス・クエスト」の特集とスターリンのインタビューが掲載され、続いて第99号(1991年4月)では『インフィニティ・ガントレット』第1号のプレビューが7ページ掲載された。『コミックス・インタビュー』第94号(1991年3月)でも本作の特集が組まれ、8ページにわたってペレスのインタビューが載った。スターリンは『コミックス・シーン』第19号(1991年4月)のインタビューで本作について語った。

『インフィニティ・ガントレット』リミテッド・シリーズは1991年7月から12月まで(発行日)月刊で発行された。どの号もコミック専門店とニューススタンド(スーパーマーケット、デパートを含む)の両方で販売された。表紙イラストレーションはどちらの版でも共通だったが、ニューススタンド版でバーコードが印刷されている位置に、コミック専門店版ではマーベル30周年を記念するイラストレーションが入っていた[† 9]。各号は全48ページ、定価2.5ドルであった。この当時マーベル社の平均的なタイトルは全24ページ、定価1ドルだった[25]

タイイン

マーベル社のコミックブックは互いに繋がりあっているので、『インフィニティ・ガントレット』に主役キャラクターを貸し出したオンゴーイング・シリーズの一部では、メインプロットを別の視点から描くストーリーや、作中の出来事から生じたサイドストーリーが同時展開された。それらの号では表紙右上隅に "An Infinity Gauntlet Crossover" と書かれた三角形のマークが付けられた。これらのいわゆるタイイン (tie-in) 号の内容がリミテッド・シリーズに逆輸入されることはなく、読まなくてもプロットに穴は生じなかった。『ドクター・ストレンジ』第36号では事件終結後のストーリーが描かれ、表紙には「インフィニティ・ガントレット・エピローグ」と表示された。

シークレット・ウォーズ」、「クライシス・オン・インフィニット・アース」、「アーマゲドン2001」[† 10]などのクロスオーバーイベントでは、その出版社のタイトルのほとんどでタイインが行われたが、本作のタイインに参加したのは、メインストーリーに関わるキャラクターの出演作やテコ入れを必要としていたタイトルのみだった[26]。売れ行きの悪いタイトルにおけるタイインについて、ペレスによるとマーベルの方針は「やらないとただじゃおかないぞ」というものだった[27]。スターリンはタイイン号のプロット作成には関与せず、手を挙げたライターに自らの執筆プランを明かし、使いたい要素を自由に選ばせた。スターリンはマーベルキャラクターの現状に暗く、スリープウォーカーに至っては存在さえ知らなかったため、こうしたやり方が最善だと考えた[13]

タイトル 発行月 原作 作画
Cloak and Dagger (vol 3) 18 6月 Terry Kavanagn Dave Cross and Sam Delarosa
Doctor Strange (vol 3) 31-36 7月 - 12月 Roy and Dann Thomas Tony DeZuniga
Incredible Hulk 384-385 8月 - 9月 Peter David Dale Keown
Quasar 26 9月 Mark Gruenwald Dave Hoover
Silver Surfer (vol 3) 51-59 7月 - 11月 Jim Starlin (51-52)

Ron Marz (53-59)

Ron Lim and Tom Christopher
Sleepwalker 7 12月 Bob Budiansky Bret Blevins

合本と再版

1992年、続編『インフィニティ・ウォー』の発刊と時期を合わせて『インフィニティ・ガントレット』ミニシリーズを全1巻にまとめたソフトカバー単行本が発売された。この当時は人気作しか単行本化されていなかった[28]。同書の表紙はペレスによる新イラストレーションと箔押しロゴで飾られていた。後の増刷では表紙イラストレーションが別人のものと変わり、箔押しは省略された。標準小売価格19.95ドルは収録号を定価で揃えるより5ドル高かった。

2006年6月、『アナイアレーション (Annihilation)』の刊行と合わせてソフトカバー単行本の第2版が発売された。『アナイアレーション』はキース・ギフェンとアンドレア・ディ・ヴィトによるコズミックテーマのクロスオーバー作品で、本作と同じくサノスとシルバーサーファーが活躍するものだった。この版ではミニシリーズ第1号の表紙が流用され、直後に初単行本化された続編『インフィニティ・ウォー』および『インフィニティ・クルセイド』と共通のトレードドレスが付与されていた。この版は発売月の発行部数が約2500冊で、ダイアモンド・ディストリビューションによるとコミック単行本のベストセラー第33位であった[29]。2006年には『シルバーサーファー』に掲載された本作の前日譚4号分と『サノス・クエスト』全2号を収録した選集『リバース・オブ・サノス (The Rebirth of Thanos)』が発売された。

2010年7月、「マーベル・プレミア・クラシック」シリーズの第46巻として本作のハードカバー版が刊行された[30]。同シリーズの通例として表紙の異なる二種類のバージョンが作られた。スタンダード版の表紙は、艶消し黒の地の上に、ミニシリーズ第4号の表紙から取られたサノスのイラストとメタリックレッドのタイトルロゴが描かれていた。コミック専門店限定のヴァリアント版では、黒と赤の背景の上にオリジナル版第1号の表紙が50%に縮小されて描かれ、背表紙に巻数が表示されていた[31]

2011年、ソフトカバー第3版が販売された。第1刷では「プレミア・クラシック」スタンダード版の表紙が再利用されていたが、増刷ではオリジナル版第1号の表紙に戻った。2012年の映画『アベンジャーズ』でエンドロール後にサノスが登場すると、この版の売れ行きが上昇した[32]

2014年7月、全1248ページのオムニバス版『インフィニティ・ガントレット』が発売された。『シルバーサーファー』誌の前日譚、『サノス・クエスト』、刊行当時のタイイン号を収録したハードカバーであった。またタイインとは銘打たれなかったがストーリー的な関連がある号も収められていた(収録誌は『インクレディブル・ハルク』、『クェーサー』、『シルバーサーファー』、『スパイダーマン』)。ミニシリーズ版第1号の表紙イラストを流用した通常版はコミック専門店と一般書店の両方で販売されたが、コミック専門店ではスターリンが表紙を描いたヴァリアント版も発注することができた[33]

マーベルが2015年4月に刊行した「トゥルー・ビリーバーズ」シリーズの第1弾には『インフィニティ・ガントレット』第1号が収録された。同シリーズは安価な再版本からなり、マーベルの過去作から人気タイトルを選んで新しい読者に紹介するためのものであった[34]

2018年3月、ハードカバー12冊からなる500ドルのボックスセットが発売された。収録作は「インフィニティ・ガントレット・プレリュード」から始まり、「インフィニティ」のタイトルを冠したクロスオーバー三部作、それらのタイイン誌、三部作の間を埋めるストーリー、そしてボーナス・ストーリーなどを収めた528ページの「コンパニオン」であった[35]

どの版でも単行本の絵とストーリーはオリジナル版と同一だが、後の版ではミニシリーズ第6号のミスが修正されている。オリジナル版では、広告ページが挟まった関係で、2ページ見開きとして描かれた戦闘シーンが1枚の紙の表裏に印刷されてしまっていた。単行本では広告がないため、問題のシーンは意図通りに印刷されている。

日本語版

1996年4月から10月まで、小学館より発行されていたマーヴルクロス誌に掲載された。1号から6号に1話ずつ全6話が完全収録されている。

本作を原案とする映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の公開を翌年に控えた2017年12月、小学館集英社プロダクションからミニシリーズ全6号を収録した日本語版単行本が刊行された。翻訳は堺三保による[36]

登場人物

主要キャラクター

サノス
異星種族タイタン人の一人で、強大なパワーを持つ虚無主義者。エターナルズの指導者メンターの息子で、エロスの兄。ミストレス・デスを愛しており、本編開始以前からその愛を勝ち取るためにパワーの探求を行っていた。しかしデスはサノスを自らの注目に値するとみなさず、しもべを通じて間接的に言葉をかけるのみである[37]
ミストレス・デス
マーベルユニバースにおける死が具象化した存在。顔と両手だけが露出した紫のローブを着用する。外貌は美しい女性とも骸骨とも見える。コズミック・ビーイング(宇宙的存在)の一人。
アダム・ウォーロック
禁欲的なヒーロー。第二次サノス・ウォーでサノスの野望を阻んだ。その際ソウル・ジェムの中の世界ソウル・ワールドに封じ込められたが、そこで平穏な生活を享受していた。
ネビュラ
宇宙海賊の一味の頭目。サノスの孫娘を自称し、サノスがかつて乗っていた宇宙船を所有している。彼女を気に入ったサノスから実際に養子縁組を受けている。
テラクシア
一向に自分に振り向いてくれないデスに業を煮やしたサノスが、インフィニティ・ガントレットの能力で創造した「完璧な」恋人。

コズミック・ビーイング

ギャラクタス
癒されることのない飢餓により、宇宙を渡り歩いて惑星を喰らう存在。
ストレンジャー
ひたすら知識を追求し続けるコズミック・ビーイング。
ラブとヘイト
愛と憎悪の感情を司る二柱で一組のコズミック・ビーイング。
マスター・オーダーとロード・カオス
秩序と混沌を司る二柱で一組のコズミック・ビーイング。
セレスティアルズ
宇宙全土にわたって、全生命体の進化を促進するために遺伝子への干渉実験を繰り返す全知全能の存在。全身鎧を着込んだ巨大なヒューマノイドのような外観を持つが、本体は高次元の存在であり数百体以上存在する。
クロノス
古代種族エターナルズの指導者であったが、物理的な存在を超越した。
エポック
クエーサーに宇宙の守護者としての任を与えた超宇宙生命イオンの子。惑星サイズの頭部の形をしている。
ウォッチャー
全多元宇宙の永遠の監視者。
エターニティ
全宇宙の生命の集合的存在であり、無限の全多元宇宙、全次元、全時間軸を支配する全知全能の存在、体内に無限の多元宇宙を内包している。
リビング・トリビューナル
無限の全平行多元宇宙、全次元、全時間軸及び、過去、未来、現在、可能性宇宙の調和を守り、監視し、それを乱す者を裁く全知全能の存在。インフィニティ・ジェムやエターニティを遥かに超える権能を持つ。

サノスの敵対者

シルバーサーファー
人間型の異星人。コズミック・ビーイングであるギャラクタスの先触れとなり、その食料とするために生命体が住まう惑星を探していた。ギャラクタスに背いて自由の身になると、先触れとして与えられたパワーを用いて悪と闘うことで、大量殺人に加担した罪への贖罪を行っている。
ピップ・ザ・トロル
小鬼のような異星人。アダム・ウォーロックの友人。
ドラックス・ザ・デストロイヤー
サノスを倒すため、クロノスによって転生させられた元地球人。
エロス
サノスの弟。笑顔によって他者の快楽中枢を刺激し、感情を操作する。
ファイアロード
シルバーサーファーと同じく元ギャラクタスのヘラルド。超高熱の火炎を操る。
クエーサー
クォンタム・バンドという腕輪を武器とするコズミック系ヒーロー。
メフィスト
マーベル世界の地獄を支配する悪魔。シルバーサーファーの旧敵[38]。サノスに媚びへつらうが、その実サノスを操って敗北に導こうとしている[37]

地球のヒーローとヴィラン

あらすじ

前日譚

全宇宙に存在する生命体の数が急速に伸長し、これまでに死んだ死者の数を越えた。ミストレス・デスはサノスに対し、宇宙の生命の半分を殺して均衡を回復するように命じる。サノスの目的を知ったシルバーサーファーは阻止しようとするが、サノスは干渉を逃れるため自らの死を偽装する[39]。デスの次元に移ったサノスは、任務を達成する最善の方法を模索するうちに6個一組のインフィニティ・ジェムに目をつける。かつて自身が武器として使っていた強力な物体だが、想定を超える強大なパワーを所有者に与えることが判明したのだった。それぞれのジェム(スペース、タイム、リアリティ、マインド、ソウル、パワー)は宇宙の六つの相の一つを支配していた。サノスは宇宙を股にかけてジェムを集め、自身の左のガントレットに埋め込んでいく。すべてが集まったとき、サノスはデスに謁見し、今こそ対等の存在として言葉を交わしてくれることを期待する。しかし、デスはそれまでと同じく取次を介して言葉を伝えた。それはサノスが彼女よりも上位の存在となったためだった[40]

シルバーサーファーはサノスが生きていたことを知って戦いを挑む。新たに手に入れた力を誇示すべく、サノスはシルバーサーファーの魂をソウル・ジェムの中(ソウルワールド)に放逐する[41]。そこでシルバーサーファーはアダム・ウォーロックと出会い、サノスの行状を伝える。ウォーロックはシルバーサーファーを現実世界に帰し、サノス打倒に協力することを約束する[42]。シルバーサーファーはアベンジャーズや他のヒーローにサノスに備えるよう警告するため地球に向かう[43]。その一方で、インフィニティ・ガントレットのパワーを感知したメフィストがサノスの下に現れ、パワーの使い道を助言しようと申し出る。その裏でメフィストはガントレットをわがものとする機会を待っていた[44]

本編

第一話(1991年7月)

ドクター・ストレンジが自分の館でくつろいでいるところに突然大音響が轟く。屋根裏部屋に飛び込んだストレンジは、天井を突き破って落下してきたシルバーサーファーを発見する。意識朦朧のサーファーは「想像を絶する恐ろしい破滅が…止めなければ…サノスが復活した」と告げた。

その頃、無限の力を以ってしても愛するデスに振りむいてもらえないサノスは、虚空にデスを称える巨大神殿を出現させる。また、己の非情さをアピールするため、自分の孫娘ネビュラを腐敗した動死体に変えて見せびらかす。だがそれでもデスの歓心を得られなかったサノスは、メフィストの進言によりついに計画を実行することにした。

インフィニティ・ガントレットを嵌めた腕を掲げ、指をパチンと一つ鳴らす。たったそれだけで全宇宙の生命の半分が消去された。スパイダーマンの恋人のMJが、アベンジャーズのメンバーが、ニック・フューリーが、ドクター・ストレンジの執事が、そしてスクラル帝国でも、衛星タイタンのエターナルズのコロニーでも。運良く生き残った者は、それぞれの大切な人々の消失を知り、驚愕と絶望に捕らわれた。

第二話(1991年8月)

大消失に見舞われた地球では、火災や飛行機事故などが頻発しており、生き残ったヒーローたちが人々の救出に死力を尽くしていた。またクリー帝国では、この大消失は宿敵スクラル帝国の陰謀であるとし、報復艦隊が発進していた。半数の神々が消去されたアスガードには、ギリシャやケルトを始めとする神々が集合し、善後策を検討していた。

その時、ドクター・ストレンジの精神に何者かが接触し、サノスと戦う軍団を集めることを提案する。

エターナルズのエロスは、衛星タイタンのコロニーからテレポートされ、サノスの捕虜になる。サノスの精神操作を試みるエロスだったが、ガントレットの力で能力を封じられてしまう。

時を同じくしてドクター・ドゥームも怪しい動きを始めていた。「やがて自分が支配すべき臣民たち」を消失させられたという怒りと、この混乱の原因からさらなる科学と権力を得ようとする欲望が彼を突き動かしていたのだ。ストレンジの屋敷に侵入し、この大消失の原因をむりやり聞きだそうとしたドクター・ドゥームは、シルバーサーファーと戦闘になる。そこに割って入ったのは、ソウルワールドから現実世界に復活したアダム・ウォーロックとピップ・ザ・トロルだった。

大消失を引き起こし、加えてネビュラとエロスを様々な方法で責め苛んでもデスに振り向いてもらえないサノスは、ついに怒りを爆発させる。ガントレットの引き起こした怒りの衝撃波は銀河系の四分の一を蹂躙し、ギャラクタスが喰らおうとしていた星も砕かれてしまう。宇宙的な飢えを満たす機会を奪われたギャラクタスは激しい怒りを押さえつけ、知略をめぐらせつつ時を待つ。

第三話(1991年9月)

アベンジャーズの基地へ転移したドクター・ストレンジ、アダム・ウォーロック、シルバーサーファー、ドクター・ドゥーム、ピップは、サノスに対抗する軍団の編成をキャプテン・アメリカに持ちかける。ストレンジのテレパシーによる呼びかけに応え、ポータル(空間転移門)から地球のヒーローの生き残りが続々と現れる。

地球ヒーロー軍団の編成をキャプテン・アメリカに任せたアダムとサーファーは、新たなポータルを通って銀河の果てへ向かう。そこには、エポックとクエーサー、エターニティ、時の巨神クロノス、ロード・カオスとマスター・オーダー、ラブ&ヘイト、ストレンジャー、ギャラクタス、2体のセレスシャルズといったコズミック・ビーイングたち、そしてウォッチャーのウァトゥとリビング・トリビューナルが参集していた。

全多元宇宙の全生命体の統合体であるエターニティは、審判者リビング・トリビューナルにサノスの暴虐への懲罰を求める。しかし多次元宇宙の調和を守るリビング・トリビューナルは、今回のサノスの行動はこの宇宙における至高の地位をめぐる自然淘汰のひとつに過ぎず、「弱肉強食」は宇宙の基本原則のひとつである、として本件への関与を却下した。またウォッチャーも、傍観者たる自らの立場を表明して去った。アダムは残った他のコズミック・ビーイングたちに攻撃計画への参加をもちかける。

一方、デスの態度に業を煮やしたサノスは、完全なる愛人テラクシアを創造する。しかしそれでもデスは一顧だにしなかった。神殿の上に出現したウォッチャーを見てヒーローたちの襲来を予測したサノスは、彼らを皆殺しにすることをデスに宣言する。

時は来た。ストレンジの魔具「アガモットの眼」が大きなポータルを開く。アダムとサーファーが先行し、サノスの神殿から一光年の位置についた。ピップのカウントダウンに合わせて戦士たちがポータルをくぐり、神殿に突入する。

しかしアダムが立案したのはあまりに非情な計画であった。地球を代表するスーパーヒーローである彼らですら、陽動であり、捨て石にすぎなかったのだ。

第四話(1991年10月)

ソー、ファイアロード、ネイモア、アイアンマンがサノスに突撃する。サノスは笑いながら指を鳴らした。その瞬間、全多元宇宙の時間が停止した。停止をまぬがれたのはサノスの周囲のわずかな範囲のみである。しかし、メフィストの「デスに対して貴方様の勇気を示すのです」というささやきに応じ、サノスはパワー・ジェム以外の5個のジェムの能力を遮断する。「こうすれば奴らにも0.05%程度は勝つ望みがあろう」とうそぶき、サノスが再び指を鳴らすと時が動き出した。

ヒーローたちの攻撃がサノスに集中する。しかしそれを物ともせず、サノスの反撃が始まった。次々に殺されていくヒーローたち。最後に残ったキャプテン・アメリカは一騎討ちを挑む。サノスの拳が不壊のシールドを打ち砕き、キャップを殴り殺そうとした瞬間、ガントレット目掛けて一光年先からシルバーサーファーが超スピードで突っ込んだ。しかしわずかな差でガントレットを奪うことは出来ず、キャプテン・アメリカも死んだ。危うく敗北を免れたサノスは冷静さを取り戻し、ジェムの機能を復活させる。

アダム・ウォーロックの第一のプランは敗れた。そしてアダムはコズミック・ビーイング達を召喚する。

第五話(1991年11月)

コズミック・ビーイングたちは次元を歪めるほどの猛攻をサノスに加える。メフィストは叛意を露にし、ミストレス・デスも敵方に回った。しかしすべての攻撃は無駄だった。6つのジェムの力で全知全能を超えたサノスは彼ら全員を凍結封印し、自らを至高の神であると宣言した。

そしてついにエターニティが戦いを挑んだ。多元宇宙を吹き飛ばすほどの爆発が起こり、ついに決着がついた。サノスの精神はエターニティに取って代わり、この宇宙と同一化したのだ。その時、一瞬の隙を突いた動死体ネビュラが、無防備なサノスの肉体からガントレットをひったくった。

生気溢れる肉体を取り戻したネビュラが最初に行ったのはサノスへの復讐だった。一瞬にして無力となったサノスとテラクシアを宇宙空間に放り出したのだ。窒息したテラクシアは死に、サノスは死を覚悟した。しかしその瞬間、サノスはアダムが作ったポータルによって地球のアベンジャーズ基地に転送された。

アダムはサノスに内密の会話を求め、彼がガントレットを失うことを予期していたと告げる。サノスは自らが全能の力にふさわしくないと心の深奥で悟っており、無意識に敗北を求めたのだという。ソウル・ジェムに封じられていたウォーロックは、ジェムを持つ者の心を見通すことができたのだった。打ちのめされたサノスは説得を受け入れ、ネビュラ打倒に協力する。

形勢逆転に成功したネビュラだったが、ガントレットのもたらす超知覚と力を持て余した彼女の精神は崩壊しかけていた。

第六話(1991年12月)

アダム、サノス、シルバーサーファーらはポータルを使って神殿に転移する。死んだと思っていたサノスの挑発に乗ったネビュラは短慮な命令を下してしまう。「ガントレットを私の手に残したまま、それ以外の全てを24時間前の状態に戻す!」一瞬で世界は旧に復し、ネビュラは動死体に戻った。

自らの策が成功したことに満足し、悠々とガントレットを回収に向かうサノスだったが、次の瞬間にはネビュラが復活していた。ガントレットは着用者の思考だけで発動するのだ。

しかし間をおかず、復活したコズミック・ビーイングたちによる一斉攻撃がネビュラを襲う。ネビュラは必死の防戦を繰り広げるが、彼女にはサノスほどの精神力や経験が足りなかった。

大混乱のさなか、アダムとサーファーはソウル・ジェムの内部に転移していた。サーファーを現実世界との絆として残し、アダムは自分の存在を拡張していく。ソウル・ジェムと同化を果たしたアダムは他の5つのジェムに干渉してガントレットの調和を破る。その瞬間、エネルギーがオーバーフローしたガントレットをネビュラが取り落とす。サノスとヒーローたちは地に落ちたガントレットに殺到する。しかしガントレットを手にしたのは、実体化したアダム・ウォーロックだった。

投獄されるよりも死を選んだサノスは、ベルトに仕込んでいた核兵器を起動させ、虚空で自爆する。ネビュラはエロスによって拘引されていった。ヒーローたちはガントレットの所有権に異議を唱えるが、ウォーロックは有無を言わさず彼らを地球に送り返す。その後、ウォーロックは60日後の未来に移動し、名前のない惑星を訪問する。そこには、実は生存していたサノスが一介の農夫として暮らしていた。サノスはウォーロックに対し、力の追求を放棄して静かに内省的な生活を送るつもりだと告げる。

エピローグ

ストレンジはウォーロックを訪問し、新たなパワーに適応できたか確かめようとする。ウォーロックは宇宙から利己的な欲望と競争心を消し去るつもりだと明かす。ウォーロックはそれが戦争や不和をなくすことになると信じていたが、ストレンジの価値観はそれを許さなかった。ストレンジの魔法により、ソウル・ストーンはウォーロックに、欲望と競争心を失った生き物は単なる動物であることを見せる。ウォーロックは考えを変え、自らの行動をより慎重に選ぶことを約束する[45]

エターニティはリビング・トリビューナルを招喚し、ウォーロックがインフィニティ・ガントレットを持つにふさわしいか審判を乞う。宇宙を支配する力を持つには精神的に不適格だと断じられたウォーロックは、ジェムのうち5個を自身が選んだ守護者たちに託すことを受け入れる[46]

評価

刊行時

本作は刊行後すぐにヒットし、1990年代を通してもっとも影響力の大きいストーリーラインの一つとなった[12]。当時全米でコミックブックの取次を行っていた両社(ダイアモンド・ディストリビューション英語版キャピタル・シティ・ディストリビューション英語版)とも、本シリーズの全号が発売月にベストセラートップテン入りを果たした[47]。1991年9月、コミックブック・マーケットでの投機を扱う雑誌『ウィザード英語版』は[48]、本作第1号を「値上がり有望」リストの9位に、本作のプロローグが掲載された『シルバーサーファー』誌の2号をそれぞれ6位と10位に挙げた。本作第1号の価格はコレクター市場において定価2.5ドルから上昇していき、1992年末に9~10ドルで安定化した[49][† 11]

本作の派生シリーズ『ウォーロック・アンド・ザ・インフィニティ・ウォッチ (Warlock and the Infinity Watch)』の創刊号は『ウィザード』1991年12月号で推奨作品の筆頭に挙げられた[50]。『インフィニティ・ウォッチ』のストーリーは本作の正式な続編『インフィニティ・ウォー (The Infinity War)』(1992年6月~)に続き、次いで続編第2作『インフィニティ・クルセイド (The Infinity Crusade)』(1993年6月~)が刊行された。他誌で本作のタイインを行った号も売れ行きは好調だったため、本作にキャラクターを貸し出したがらなかった編集者も、続編ではタイインに参加することを希望した[12]

後年

1990年代の終わりが近づくにつれて、『インフィニティ・ガントレット』への関心は薄れ始めた2編の続編は好評を得られず、『インフィニティ・ウォッチ』は1995年に打ち切られた[51]。同年、マーベル社はインフィニティ・ジェムをメインの作中世界から取り除き、買収したマリブ・コミックス社から取得したウルトラバース世界に移した。その後、ウルトラバースを舞台とするコミックは1996年に廃刊となった[52]。『ウィザード』誌は1998年に本作を毎号のコミックブック価格リストから外した[53]。ペーパーバック単行本の第1版は1999年を最後に再版されなかった。

図象としてのインフィニティ・ガントレットは人気を保ち続けた。マーベル社は同じディズニー傘下のESPNと提携してNBAの2010-2011年シーズンにプロモーション画像を制作したが、ESPN: The Magazine 2010年10月22日号に掲載された広告では、インフィニティ・ガントレットをつけたコービー・ブライアントが描かれていた[54]。2011年にIGNが発表したコミックブック・イベントのオールタイムベストリストでは、本作が「その後に企画されたコズミック・テーマのイベントすべてのお手本」と紹介された[55]

2012年の映画『アベンジャーズ』にサノスがカメオ登場すると、ファンとメディアの間で本作への関心が再燃した。2014年10月にはアベンジャーズの映画第3作・第4作のタイトルが『インフィニティ・ウォー パート1』『同 パート2』であることが発表され、さらに関心が白熱した[56]。2018年に予定された第3作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(「パート1」は取り除かれた)の公開が近づくと、コミック関連のニュースサイトは本作の紹介や、どの要素が映画に取り入れられるかの予想を配信し始めた[57]。そこで本作のストーリーは「伝説的」[58]、「古典」[32]、「象徴的」[59]などと形容された。本作がその時点でも魅力を保っている理由として挙げられたのは、ペレスの作画や[17][37]、古典的なヒーローたちをかつてない視点で描いたスターリンの手際であった[60][61]

好意的な関心ばかりではなかった。ドリュー・ブラッドリーは2013年に『マルチバーシティ・コミックス』でマーベルのコズミックテーマの作品について一連の書評を書き、本作のストーリーは素晴らしいが全編を通して読んだ時に限ると述べた。ブラッドリーは『シルバーサーファー』誌に掲載された前日譚を読むよう勧めたが、その時点で単行本化されていたのは一部に過ぎなかった[62]。ポップカルチャーに関するウェブサイト『ホワット・カルチャー』において、マーク・ジノッキオは本作が過大評価されていると考える理由を列挙した。理由の一つは、ペレスからリムへの作画の交代が「違和感があって見過ごせない」ことであった[63]。また、スターリンが70年代に書いていたサノスのストーリーの方が優れているにもかかわらず、本作の陰に隠れてしまっているという意見も述べられた[64]

コミック界への影響

本作が作品評価の面でも商業面でも成功を収めたことで、オンゴーイング・シリーズ『ウォーロック・アンド・インフィニティ・ウォッチ』と、続編となる2編のクロスオーバー作品『インフィニティ・ウォー』(1992年)、『インフィニティ・クルセイド』(1993年)が発刊された。本作の結末は後年のストーリーラインにつながっている。例としては『サノス』(2003年)[65]、『アベンジャーズ』第4シリーズ(2011年)[66]、『シークレット・ウォーズ』(2016年)[67]がある。これらのストーリーのいくつかではガントレットのパワーが弱体化されており、所有者が敵に圧倒されて敗北するシーンがたびたび描かれた[68]

『インフィニティ・ガントレット』の発売後数年にわたって、作中での出来事を別の観点から描くコミック作品が刊行された。マーベル・ユニバースにおける重要な事件が別の方向に進んだらどうなるかを扱うシリーズ『ホワット・イフ…?英語版』では、様々なキャラクターがガントレットを手に入れたらどうなるかを描く物語が何度も作られた[69]マーベル・アドベンチャーズ英語版インプリントでは、2010年8月から全4号のリミテッドシリーズとして若年層向けのリメイク『アベンジャーズ・アンド・ザ・インフィニティ・ガントレット』が刊行された。原作はブライアン・クレビンジャー、作画は Brian Churillathe であった。クレビンジャーはオリジナル版と勝負しても叶わないと考え、骨格だけを使って意図的に異なる方向性で書いた[70]。2015年のクロスオーバー『シークレット・ウォーズ』では、本作と同じタイトルを冠した全5号のリミテッドシリーズ(作者はゲリー・デュガンとダスティン・ウィーヴァー)において、本作の要素の一部を取り入れた物語が描かれた[71]

関連商品

本作のオリジナル版の刊行中、テナシティ社は正式なライセンスの下で表紙イラストレーションをプリントした黒Tシャツを作成し、マーベル社刊行物の広告ページを通じて限定販売した。Tシャツ前面にはミニシリーズ第4号の表紙が、背面には第3号の表紙が使われた[72]

刊行時に玩具展開は行われなかったが、それ以降に発売されたサノスのアクションフィギュアには、インフィニティ・ガントレットを着用した姿で造形されたりアクセサリとして附属するものがある。12インチサイズの「マーベル・セレクト」シリーズや[73]、2インチサイズの「スーパーヒーロー・スクァッド」シリーズは一例である[74]。2011年の「マーベル・ユニバース」シリーズでは、サノス、ウォーロック、ウォーロック用のガントレット、そしてミニシリーズ第3号の再版本がセットになったパックが販売された[75][† 12]。本作のロゴをパッケージに使った玩具シリーズもある。例として、「ミニメイト」シリーズのフィギュアセット(2009年)や[76]、ハズブロのサンディエゴ・コミコン限定セット(内容はサノスなどのフィギュアとフォーム製のガントレット)がある[77]

インフィニティ・ガントレットの形を模したライセンス商品も多数製作されており、貯金箱イヤリング(シンク・ギーク)[78][79]栓抜き(ダイアモンド・セレクト・トイズ)[80]コーヒーマグ(エンターテインメント・アース)[81]、オーブンミトン(ルート・クレイト)のような例がある[82]

メディア展開

ビデオゲーム

本作の刊行直後、そのストーリーラインを元にしたビデオゲームがカプコンから2本発売された。格闘ゲームマーヴル・スーパーヒーローズ』は1995年にアーケードでリリースされ、1997年にセガサターンプレイステーション移植された[83]。1996年にリリースされた『マーヴルスーパーヒーローズ ウォーオブザジェム』はスーパーファミコン用の横スクロールアクションゲームである[84]

2017年9月にカプコンは対戦格闘ゲーム『マーベル VS. カプコン:インフィニット』をPlayStation 4Xbox OneMicrosoft Windows向けに発売した。本作が直接の原作ではないが、一部のストーリー要素が取り入れられていた[85]。カプコンは発売直後に同作の世界トーナメント「Battle for the Stones」を開催した[86]。優勝者には賞金と電飾されたインフィニティ・ガントレット型トロフィーが授与された[87]

アナログゲーム

2011年10月、ウィズキッズ社はコレクティブルミニチュアゲーム「ヒーロークリックス (Heroclix)」について、本作をモチーフにしたトーナメントを翌2012年に開催することを告知した[88]。大会に参加する店舗は、ヒーロークリックスのブースター・パックを最少限購入することで、無料のゲーム・キットを受け取ることができた[89]。トーナメントは1月から8月まで毎月1ラウンドずつ進行した。各ラウンドの参加プレイヤーには特別なゲーム・ピースが配布され、優勝者には本作のストーリーに登場するキャラクターの限定ピースが授与された。全8ピースの参加賞を組み合わせると、サノスがデスに贈った神殿となる[90]。これはヒーロークリックスのトーナメントとして当時最大規模だった[91]

テレビアニメ

テレビアニメシリーズ『スーパーヒーロー・スクァッド・ショウ (The Super Hero Squad Show)』では第1シーズンに「インフィニティ・ソード」が登場したほか、第2シーズン(2010年 - 2011年)で本作のストーリーが大まかに再現された。グリプトナイト・ゲームズは2010年にタイアップ作品『マーベル・スーパーヒーロー・スクァッド: インフィニティ・ガントレット』を複数のプラットフォームで発売した[92]

2014年、アニメシリーズ『アベンジャーズ・アッセンブル』第2シーズンの前半で本作のストーリーが使われた[93]。サノスが主要キャラクターとなる2013年のクロスオーバー作品『インフィニティ』(原作ジョナサン・ヒックマン、原画ジム・チャン、ジェローム・オペナ、ダスティン・ウィーヴァ―)からも、サノスの配下ブラック・オーダーなどの要素が取り入れられた[94]

映画

2011年の映画『マイティ・ソー』では、ファンへの隠れメッセージとして、ジェムがはめ込まれたインフィニティ・ガントレットのプロップが登場した。このときまだマーベル・スタジオマーベル・シネマティック・ユニバースに本作を取り入れる決定を下していなかった。『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015年)ではタイトルロール後にジェムのないガントレットを着用したサノスが写され、『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年)では『マイティ・ソー』のガントレットが偽物だったことが明かされた[95]。2018年の映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』 は本作のコンセプトと主題を借用しており、サノスがインフィニティ・ストーンを集めるストーリーとなる[96]

脚注

注釈

  1. ^ 定期的に刊行されるが、終了号があらかじめ決められているコミックブック・シリーズ。その中でも短いものはミニシリーズと呼ばれる。またこれに対し、号数を限定せず、廃刊されない限りいつまでも続くものはオンゴーイング・シリーズ英語版またはレギュラーシリーズと呼ばれる。
  2. ^ "tie-in issues"、クロスオーバー関連号。
  3. ^ 籠手、もしくは長手袋。
  4. ^ 制作者が著作権を保有する作品。アメリカのメインストリーム・コミック界では一般的ではないが、大手出版社がクリエーター・オウンド作品専門のインプリントを設立することもある[7]Dreadstar はマーベルのインプリントエピック・コミックス英語版から刊行された。
  5. ^ 月刊コミックブックの特別号で、年刊で発行されるもの。
  6. ^ マーベル社は1989年にロナルド・ペレルマンの会社マクアンドリューズ&フォーブスによって買収された[14]
  7. ^ それまでにもマーベル社のキャラクターは互いに関わり合いを持ってきたが、そのようなストーリーはいずれかのキャラクターの個人タイトルで完結するのが普通であり、他の月刊タイトルのスケジュールやプロットに直接影響を与えることはまれだった。1985年の『シークレット・ウォーズII』はマーベル社で初めて月刊タイトルとのクロスオーバーを行ったリミテッド・シリーズであった。それ以後、月刊タイトル間のクロスオーバーが行われる頻度は増えていったが、『シークレット・ウォーズII』の刊行形態が再び採用されたのは『インフィニティ・ガントレット』が初めてだった[13]
  8. ^ コミックブック制作では、原作者と作画家の間で密な共作が行われる場合もあれば、分業に近い場合もある。「マーベル・メソッド」と呼ばれる制作形態では、作画家にもある程度ストーリーの決定権や創意の余地が与えられる。完全なスクリプトを作製する方式では、作画家にとっての自由度が狭められる。
  9. ^ 当時コミック専門店の多くはバーコードリーダーを導入していなかった。また出版社にとっては、このような相違点があると異なる版を見分けやすいのも利点だった。ニューススタンドは売れ残ったコミックブックを返品して払い戻しを受けることができたが、専門店にはそれが許されていなかった[24]
  10. ^ 本作と同年の1991年に刊行されたDC社の作品。
  11. ^ コミックのプライス・ガイドは複数の発行元から出されており、それらは必ずしも一致しないので、価格が落ち着いた時期やその値は正確に決められない。
  12. ^ このフィギュアセットのサノスは既存製品のリペイントである。先行版でもインフィニティ・ガントレットは付属していた。

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外部リンク