「カンピオーネ!」の版間の差分
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: 正史編纂委員会とはカンピオーネになって間もない頃から協力関係にあったものの特段役職に就いているわけでもなかったが、半年以上実質的に頂点に君臨していたようなものであったため、年末の大祓の儀にて半ば強制的に委員会の盟主の座を御老公(スサノオ)から譲られ、名実ともに強力な権威を持つことになる。 |
: 正史編纂委員会とはカンピオーネになって間もない頃から協力関係にあったものの特段役職に就いているわけでもなかったが、半年以上実質的に頂点に君臨していたようなものであったため、年末の大祓の儀にて半ば強制的に委員会の盟主の座を御老公(スサノオ)から譲られ、名実ともに強力な権威を持つことになる。 |
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: 魔王内戦に続く最後の戦いにおいて、ラーマとの5度に渡る戦いの末に因縁に終止符を打ち、和解して互いに友人となる。《運命の担い手》を2人で協力して倒した後、「魔王殲滅の運命」をラーマから肩代わりすることで次元間移動(ブレーン・ウォーキング)が可能となり、それからは様々な平行世界から届く助けを求める声に応じて世界を跨ぎ、問題の解決に当たるようになる。これにより元の世界に留まる時間が減ってしまったため、高校2年生からはイタリア留学の名目で日本から離れている。また自身の仲間として付き添ってきた少女たち4人とも恋人、伴侶として結ばれている。 |
: 魔王内戦に続く最後の戦いにおいて、ラーマとの5度に渡る戦いの末に因縁に終止符を打ち、和解して互いに友人となる。《運命の担い手》を2人で協力して倒した後、「魔王殲滅の運命」をラーマから肩代わりすることで次元間移動(ブレーン・ウォーキング)が可能となり、それからは様々な平行世界から届く助けを求める声に応じて世界を跨ぎ、問題の解決に当たるようになる。これにより元の世界に留まる時間が減ってしまったため、高校2年生からはイタリア留学の名目で日本から離れている。また自身の仲間として付き添ってきた少女たち4人とも恋人、伴侶として結ばれている。 |
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: 所有する権能は[[ゾロアスター教]]の神[[#ウルスラグナ|ウルスラグナ]]から簒奪した'''《東方の軍神》'''、アマゾネスの女王[[#ランスロット|ランスロット]]から簒奪した'''《白き騎士の突撃》'''、風の白猿神[[#ハヌマーン|ハヌマーン]]から簒奪した'''《太陽を喰らう者》'''、原初の運命神[[#《運命の担い手》|《運命の担い手》]]から簒奪した'''《反運命の戦士》'''の4つ<ref name="a"> |
: 所有する権能は[[ゾロアスター教]]の神[[#ウルスラグナ|ウルスラグナ]]から簒奪した'''《東方の軍神》'''、アマゾネスの女王[[#ランスロット|ランスロット]]から簒奪した'''《白き騎士の突撃》'''、風の白猿神[[#ハヌマーン|ハヌマーン]]から簒奪した'''《太陽を喰らう者》'''、原初の運命神[[#《運命の担い手》|《運命の担い手》]]から簒奪した'''《反運命の戦士》'''の4つ<ref name="a">[https://note.mu/joetakeduki/n/nd0befbbebcbe?creator_urlname=joetakeduki 【雑文『カンピオーネ!』】 カンピオーネと例の七人についてあれこれ2](2017年12月26日閲覧)</ref>。また正確には権能ではないが、暴風の神[[#スサノオ|スサノオ]]から'''《[[#天叢雲劍|天叢雲劍]]》'''を奪い『相棒』とし、地中海の女王[[#アテナ|アテナ]]から授けられた秘術'''《黒の剱》'''を扱うことから対外的には6つの権能を所持しているとみられることも多い。カンピオーネとなって1年足らずの間で様々な神と戦い勝利を収めているが、止めを刺さなかったり『鏃の円盤』に介入されたりといった事情で17巻まで新たな権能は得ていなかった。ただし最初に得た権能が「威力絶大だが小回りは利かない」か「利便性は高いが決定力がない」かの両極端な性能で扱い辛い上に、元は一般人であったこともあって持て余し気味であり、手札を増やすことよりも手持ちの武器をどうやって使うかを重視するタイプであるため、権能が増えないことはあまり気にしていない。そのため、歴代の神殺しの中でも特に権能などの力に対して執着がないと評されている。一方で類は友を呼んだのか、戦いを重ねるごとに『猪』を筆頭にして天叢雲剣やランスロットといった好戦的な性格の仲間が増えてきている。 |
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: 2巻でまつろわぬ神と戦うべく、神の招来に利用しようと祐理を狙って来日するが、護堂に興味を持ち祐理の身柄を返す代わりに護堂を相手に狩りを行うことを宣言する。嵐を呼び寄せ魔狼と従僕を指揮して駆り立てるが、『戦士』で二つの権能を使用不能にされた上に解放された従僕達にも離反されて手痛い反撃を受ける。致命傷から復活したものの戦いで勝つには自ら宣言した「祐理を生かしたまま護堂を殺す」というルールを守れないという理由で自身の敗北を宣言して、護堂を仇敵と認めた。 |
: 2巻でまつろわぬ神と戦うべく、神の招来に利用しようと祐理を狙って来日するが、護堂に興味を持ち祐理の身柄を返す代わりに護堂を相手に狩りを行うことを宣言する。嵐を呼び寄せ魔狼と従僕を指揮して駆り立てるが、『戦士』で二つの権能を使用不能にされた上に解放された従僕達にも離反されて手痛い反撃を受ける。致命傷から復活したものの戦いで勝つには自ら宣言した「祐理を生かしたまま護堂を殺す」というルールを守れないという理由で自身の敗北を宣言して、護堂を仇敵と認めた。 |
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: 17巻の序盤でオーストリアのチロル州の山奥の別荘に滞在していたところを、アイーシャが訪れて鋼の軍神が三柱も『最後の王』を復活させる為に活動していることを聞いた。その後、護堂と『最後の王』ラーマが相打ちになった後で、アイーシャに『最後の王』ラーマへの対処法について話し、彼女と共に来日し某国の大使館に滞在する。そして、魔王内戦開始と共に真っ先にアイーシャを襲撃、歌舞伎町で往来の人々を人狼化させたあげく塩に変えるという暴挙に及ぶが、肝心のアイーシャを取り逃がす。その後は旧敵の羅濠と利害の一致から手を結び、再びアイーシャを狙って行動を起こすが、ドニの乱入を受け彼らが逃げ込んだアストラル界のプルタルコスの館へ攻め込む。その地で護堂と数ヶ月ぶりに戦うことになり、数々の戦いを経て成長した護堂に敗北し、霊魂となってアイーシャ夫人が開いた《妖精の通廊》から並行世界へ逃げ込むが、その寸前でランスロットの槍に貫かれた。その直後にアストラル界に遺されていた肉体が崩れ去り霧散したことから、通廊の中で力尽き成仏したと考えられている。 |
: 17巻の序盤でオーストリアのチロル州の山奥の別荘に滞在していたところを、アイーシャが訪れて鋼の軍神が三柱も『最後の王』を復活させる為に活動していることを聞いた。その後、護堂と『最後の王』ラーマが相打ちになった後で、アイーシャに『最後の王』ラーマへの対処法について話し、彼女と共に来日し某国の大使館に滞在する。そして、魔王内戦開始と共に真っ先にアイーシャを襲撃、歌舞伎町で往来の人々を人狼化させたあげく塩に変えるという暴挙に及ぶが、肝心のアイーシャを取り逃がす。その後は旧敵の羅濠と利害の一致から手を結び、再びアイーシャを狙って行動を起こすが、ドニの乱入を受け彼らが逃げ込んだアストラル界のプルタルコスの館へ攻め込む。その地で護堂と数ヶ月ぶりに戦うことになり、数々の戦いを経て成長した護堂に敗北し、霊魂となってアイーシャ夫人が開いた《妖精の通廊》から並行世界へ逃げ込むが、その寸前でランスロットの槍に貫かれた。その直後にアストラル界に遺されていた肉体が崩れ去り霧散したことから、通廊の中で力尽き成仏したと考えられている。 |
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: 所有する権能は、'''《貪る群狼》'''、'''《死せる従僕の檻》'''、'''《疾風怒濤》'''、'''《ソドムの瞳》'''、'''《冥界の黒き竜》'''、'''《劫火の断罪者》'''、'''《血の聖餐祭》'''、'''《生ける呪文書》'''<ref name="b"> |
: 所有する権能は、'''《貪る群狼》'''、'''《死せる従僕の檻》'''、'''《疾風怒濤》'''、'''《ソドムの瞳》'''、'''《冥界の黒き竜》'''、'''《劫火の断罪者》'''、'''《血の聖餐祭》'''、'''《生ける呪文書》'''<ref name="b">[https://note.mu/joetakeduki/n/nc930244e357f?creator_urlname=joetakeduki 【雑文『カンピオーネ!』】 カンピオーネと例の七人についてあれこれ1](2017年12月26日閲覧)</ref>。最古参のカンピオーネに相応しく所有している権能も多く、自身の従軍経験が影響して総じて集団戦に特化した「戦争向き」な権能ばかりが揃っている。 |
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2018年1月29日 (月) 00:19時点における版
カンピオーネ! | |
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ジャンル | バトル・ファンタジー・ラブコメ |
小説 | |
著者 | 丈月城 |
イラスト | シコルスキー |
出版社 | 集英社 |
レーベル | スーパーダッシュ文庫 ダッシュエックス文庫 |
刊行期間 | 2008年5月 - 2017年11月 |
巻数 | 全21巻 |
漫画 | |
原作・原案など | 丈月城 |
作画 | 坂本次郎 |
出版社 | 集英社 |
掲載誌 | スーパーダッシュ&ゴー! |
発表期間 | 2011年12月号 - 2013年6月号 |
巻数 | 全3巻 |
アニメ:カンピオーネ! 〜まつろわぬ神々と神殺しの魔王〜 | |
原作 | 丈月城 |
監督 | 草川啓造 |
シリーズ構成 | 花田十輝 |
キャラクターデザイン | 石川雅一 |
音楽 | 加藤達也 |
アニメーション制作 | ディオメディア |
製作 | カンピオーネ!製作委員会 |
放送局 | #放送局参照 |
放送期間 | 2012年7月 - 9月 |
話数 | 全13話 |
テンプレート - ノート | |
プロジェクト | ライトノベル、漫画、アニメ |
ポータル | 文学、漫画、アニメ |
『カンピオーネ!』は、丈月城による日本のライトノベル。イラストはシコルスキーが担当。
概要
集英社・スーパーダッシュ文庫より、2008年5月から2014年9月まで刊行された。その後、その後継レーベルであるダッシュエックス文庫から続編が2015年4月から2017年11月まで刊行されている。全21巻。電子書籍アワード2013のライトノベル部門において第1位を獲得。 坂本次郎による漫画化作品が『スーパーダッシュ&ゴー!』2011年12月号(創刊号)から2013年6月号まで連載された。また、2011年12月17日に行われたジャンプフェスタにてテレビアニメ化[1]が発表され、2012年7月から9月にかけて放送された。
ストーリー
この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。 |
この世界には神殺しと呼ばれるものがいる。神話に抗い地上に災厄をもたらす神、まつろわぬ神を殺し、その力を奪った者たち。彼らは『カンピオーネ』と呼ばれ、魔術師の王として君臨し神々や同類と戦う。
7人目の王、草薙護堂。彼は一人の高校生として平穏な日常を望んでいた。だが彼を神殺しへと誘った運命がそれを許すはずもなく、護堂は数々の強敵――まつろわぬ神、そして他のカンピオーネと対峙することになる。
自らを慕う少女達、エリカ・祐理・リリアナ・恵那とともに戦い続ける中、護堂は『最後の王』と呼ばれる謎の存在に迫っていく。
登場人物
主要人物
- 草薙 護堂(くさなぎ ごどう)
- 声 - 松岡禎丞
- 本作の主人公。当代の中で最も若き神殺しの魔王、カンピオーネ。私立城楠学院高等部1年5組。16歳。身長179cm。体重64kg。5月10日生まれ。自宅は根津3丁目にあり、休業中だが家業は古本屋である。家族構成は妹・母・祖父で、高校1年の秋に日光で起きた一件の後にカンピオーネ羅翠蓮と義姉弟の契りを交わす。
- 小学生から野球を続け中学は強肩と長打力が持ち味の4番兼捕手でシニアリーグの日本代表候補になるも、送球時の事故が原因で右肩を故障し野球を引退することとなり、スポーツと距離を取るために運動部があまり盛んでない城楠学院に高等部から編入する。本編開始前の春休みに祖父の元へ届けられた神具プロメテウス秘笈を返却するためイタリアを訪れた際、軍神ウルスラグナと神王メルカルトとの戦いに巻き込まれ、そこで出会ったエリカと共に、戦いによる被害を止めようと奮闘する。秘笈を用いてウルスラグナの殺害を成して当代7人目のカンピオーネとなった[注 1]。
- 争いを好まない平和主義者・「普通の高校生」を自称し、実際普段は人並の倫理観や正義感をもつ律儀でまじめな性格だが、一方で場の勢いと気持ちの昂りに任せて行動するところがある。「やられたらやり返す」性格[注 2]で、勝負事では良識を一旦捨てて、様々な手段で勝ちを狙う決断力・狡猾さ・猛々しさを裡に秘めており[注 3]、ネガティブな感情が長続きしない大雑把さ、敵とあらば殺すのも覚悟で倒しにかかる[注 4]など戦士の気概を持つ。生来の大雑把さと草薙一族の影響から感性に多少のずれがあるのも手伝って、周囲からは「言うことはまともなのにやることはメチャクチャ」と言われ、戦闘によって周辺に大きな被害を与えるのがお約束[注 5]。事後には一応反省めいたことはするものの、次に同様の状況になった場合は勢いに任せて行動してしまうため、その反省が生かされた例がない。加えてロクデナシと自覚しながらも、自分の信条を大多数の安全よりも優先するなど王に相応しい横暴さも持つ。これらの行為のせいで、「テロリスト」「治世では乱を起こして梟雄となり、乱世では乱に乗じて玉座を奪う器」「嵐と災厄の運び手」などとも評される[注 6]。
- 祖父母の影響から異性関係には及び腰で、中学時代から多数(最低でも14名)の女性の好意に全く気付かないなど恋愛に関する勘は鈍く、女性に振り回されがちだが、自分の信条に関することなどでは時に自分の意思を押し通して逆に翻弄する。祖父の薫陶もあって、異常な状況に対する順応能力や清濁併せ呑む柔軟性を持ち、性別年齢国籍問わず友好関係を築ける懐の深さがある。神殺しらしい狡猾さやしたたかさと、友人を作ることへの躊躇の無さや信頼する相手への無防備さが同居しているという性格もあって、多くの者を惹きつける魅力を持っている。ちなみに容姿は平凡だと自認しており朴訥としているためイケメンと言われることもないが、顔立ちは割と整っているらしい。自分に純粋に尽くす者たちに対しては「応えなくては男が廃る」という思いを抱く一方で、命懸けの闘いでの勝利のためにはそうした献身が必要な状況に責任も感じ、「女を遺していつ死んでもおかしくない」「今の自分が恋愛などによそ見できるほど甘い戦いではない」という自覚から一線を越えようとはしない。仲間に順位を付けることを嫌い、思いを寄せる少女たち全員と生涯を共にすることを約束している。「(祖父に並ぶかそれ以上の)稀代の自覚無き女殺し」と言われるモテっぷりで、(本人は否定するが)魔術界では「恐ろしい力を持った色好みの大魔王」と噂されている。本人としては男子だけの部活のような雰囲気の方が落ち着くのだが、その望みに反してどのような場所・時代にあっても身の回りから女性の気配が絶えることがないため、星まわりも含めて一種の病気なのではないかとも言われている。基本的に女の子には優しいが致命的なまでに脇が甘く、敵の女性に口付けを介した術をかけられ策略に嵌ることもある。ルクレチア曰く「女難の相があるが、女運は良い」とのことで、実際自陣の女性たちは同年代では世界最高峰クラスの実力者ぞろい、女性カンピオーネとも友好的で特に義姉とは幾度か共闘しており性格はともかく実力面では強い信頼を寄せ、さらには女神と共闘した経験すらある。義侠心が強いことから神や神殺しの横暴で他人が傷つくことを見過ごせず、例え敵対していた女神が相手でも必要以上に痛めつけることは決してしない。
- 祖父の教育方針のために飲酒経験があり、かなりの酒豪。料理は上手ではないがつまみを作るのは上手く、「適温の燗酒を作る」特技も持つほか、母親に作らされていたせいでカクテルに関する知識もある。様々なバイト経験と祖父の交友関係もあって人脈は広い。さすがに専門家ほどではないが実家が本屋だけあって高校1年生としては博識であり、古代ギリシアの叙情詩なども読んだことがある。賭けごとが異様に強く、親族一同の新年会で開かれる博打で毎年大勝するためかなりの貯金額を持つ(本人は足を洗いたいが、周りの大人が勝ち逃げを許さない)。根が真面目なので真っ当に働いて稼いだ金を使うのが主だったためほぼ死蔵状態だったが、最近では旅費などに利用されている。
- 神の言霊に抗う程の精神力と、相手の心理と勝負所を嗅ぎ分ける洞察力・戦術能力の持ち主である。元々神官や祭司の素質があったのか、ウルスラグナとの邂逅を通して神力の感知に目覚めた。呪力は強いがセンスがない[注 7]ため、魔術は使うまいと自らを戒めている。常人だった時から、ずば抜けた動体視力と反射神経、野球技術を持っており、戦闘でも活用する[注 8]。なお、カンピオーネ由来の回復力で引退のきっかけになった怪我は快復したが、出鱈目な体になったので復帰や他競技への転向はしていない。剣士ドニとの戦闘で才能の壁を痛感したため、同じ土俵に上がるよりも手持ちの力をどう運用するかを重視しており、体力作りは毎日欠かさず行っているが、敢えて武術には手を出さない[注 9]。野球の腕前は「中の上」と自らを評すが、年齢にそぐわぬ頭脳戦をする、チームの司令塔として知る人ぞ知る選手だった。
- 神やカンピオーネからは無視される程の格差がある人間の力をサポートとして用いるなど戦力の使い所を見極める能力に長け、クセのある人物の手綱を取るのが非常にうまく、他のカンピオーネたちと共闘する際には我の強い彼らの指揮をも執る。相手に合わせて柔軟に戦法を変えることを得意とする。
- 正史編纂委員会とはカンピオーネになって間もない頃から協力関係にあったものの特段役職に就いているわけでもなかったが、半年以上実質的に頂点に君臨していたようなものであったため、年末の大祓の儀にて半ば強制的に委員会の盟主の座を御老公(スサノオ)から譲られ、名実ともに強力な権威を持つことになる。
- 魔王内戦に続く最後の戦いにおいて、ラーマとの5度に渡る戦いの末に因縁に終止符を打ち、和解して互いに友人となる。《運命の担い手》を2人で協力して倒した後、「魔王殲滅の運命」をラーマから肩代わりすることで次元間移動(ブレーン・ウォーキング)が可能となり、それからは様々な平行世界から届く助けを求める声に応じて世界を跨ぎ、問題の解決に当たるようになる。これにより元の世界に留まる時間が減ってしまったため、高校2年生からはイタリア留学の名目で日本から離れている。また自身の仲間として付き添ってきた少女たち4人とも恋人、伴侶として結ばれている。
- 所有する権能はゾロアスター教の神ウルスラグナから簒奪した《東方の軍神》、アマゾネスの女王ランスロットから簒奪した《白き騎士の突撃》、風の白猿神ハヌマーンから簒奪した《太陽を喰らう者》、原初の運命神《運命の担い手》から簒奪した《反運命の戦士》の4つ[2]。また正確には権能ではないが、暴風の神スサノオから《天叢雲劍》を奪い『相棒』とし、地中海の女王アテナから授けられた秘術《黒の剱》を扱うことから対外的には6つの権能を所持しているとみられることも多い。カンピオーネとなって1年足らずの間で様々な神と戦い勝利を収めているが、止めを刺さなかったり『鏃の円盤』に介入されたりといった事情で17巻まで新たな権能は得ていなかった。ただし最初に得た権能が「威力絶大だが小回りは利かない」か「利便性は高いが決定力がない」かの両極端な性能で扱い辛い上に、元は一般人であったこともあって持て余し気味であり、手札を増やすことよりも手持ちの武器をどうやって使うかを重視するタイプであるため、権能が増えないことはあまり気にしていない。そのため、歴代の神殺しの中でも特に権能などの力に対して執着がないと評されている。一方で類は友を呼んだのか、戦いを重ねるごとに『猪』を筆頭にして天叢雲剣やランスロットといった好戦的な性格の仲間が増えてきている。
- エリカ・ブランデッリ
- 声 - 日笠陽子
- 本作のヒロインの1人。金髪のイタリア人少女。身長164cm。B87/W58/H88[注 10]。16歳。4月生まれ。神殺しの血を引く魔術界の名門ブランデッリ家の令嬢。護堂がカンピオーネとなった経緯を知る数少ない人物の一人。
- ミラノの魔術結社《赤銅黒十字》(しゃくどうくろじゅうじ)に所属し、若いながらも『大騎士』の位階と組織のイタリア人筆頭騎士たる『紅き悪魔』(ディアヴォロ・ロッソ)の称号を持つ天才魔術師。細剣のクオレ・ディ・レオーネを駆使した剣術の使い手。魔女の素質こそ持たないものの戦闘関連、特に攻防に優れた鉄の魔術に長けており、剣を様々な形状に変えたり増殖させて戦う。鉄と関わりの深い焔の術も得意。魔術に関しては戦闘向けのものを得意とするが、優れた政治力や交渉能力を持つため時にはそれを駆使して護堂をサポートする。
- 「(第一の)愛人」を自称するほど個人的にも護堂に惚れこんでおり、平時であれば所構わず手段も問わず彼のそばに寄り添いたがるため、祐理や静花から警戒されている。アテナ戦後(1巻末)に城楠学院1年5組へ留学、現在はメイドのアリアンナと本郷通り沿いのマンションで生活している。当初から肉体関係を持つことにも積極的だったが、バレンタインの時に彼が自分のことを想っているのを知ると同時にその覚悟を察し、しばらくは現状の関係に甘んじることを決めている。護堂の最も信頼する相棒であり、ラーマとの最終戦で1人だけ決戦の地に同行できることになった際にも自身が選ばれた。
- 本編開始前(護堂が中学卒業時の春休み)、祖父に代わってイタリアへ神具「プロメテウス秘笈」を運んできた護堂と出会う。当初は護堂を「紳士じゃない」と評し、嫌っていた節さえあったが、サルデーニャへ出現したまつろわぬ神(ウルスラグナ)を追ううちに打ち解けていく。最終的に護堂がウルスラグナに勝利した際は、護堂がカンピオーネとなってしまったのは自分にも責任があると発言している[注 11]。護堂がドニと敵対した際に好意を自覚し、結社の命令に逆らってまで護堂に協力して想いを伝えた。
- 本人曰く「心は広いが我慢はしない女」。護堂の周りに女性が来ると彼を問い詰めるが、すぐに自分の地位を獲得して上手く取りまとめている。浮気は許すが本気は許さないと公言しつつも、護堂と祐理の仲については認めている。だが、自分とは対極のタイプの恵那については「護堂の寵愛を独占する上で最大の雄敵かも」と懸念している。更にカレンを通じてリリアナの弱みを握って手玉にとるなど、権謀術数に長けた狡猾な面がある。しかし、正攻法が信条の騎士でもあり、戦場では基本的に正々堂々とした手段を好んでいる。羅濠教主も認めるほどの聡明さに加えて器用で要領もよく、アリアンナの運転を見ているだけで(交通法規までは理解していないが)乗用車の運転方法をほぼマスターし、後に(免許は未取得だが)中型バイクの運転も完全に習得した。また、乗馬も「たいていの(古代)ローマ人より上手い」と自負している。
- 「面白さ」が重要な参考基準であり、問題の多いアリアンナを雇っているのもそのためと推測されている。また、食事も面白いものを選ぶ傾向があり、カップラーメンを食べたこともないようなお嬢様でありながらゲテモノも普通に食する。また、ブルース・リーのファンで派手なアクション映画を好む。朝には弱く、護堂が起こしに行くこともしばしば。
- 護堂の『少年』の化身の加護を受けると、クオレ・ディ・レオーネは逆棘の巨大な槍と楕円形の盾に変貌(アニメ版では、通常時でも使用)し、攻撃力・機動力・魔術に対する防御力が爆発的に上昇する。
- ドニと初めて対面したときに『ダヴィデによる勲の書』より『聖なる殲滅の特権』の「ジェリコの殲滅」を覚え、4年の時をかけて修行を積んでいた。護堂陣営の戦力が充実してきたこともあって自らも戦力的にランクアップするためリリアナと相談して文化祭の一時期を利用してイタリアに帰国、聖絶の使い手の先達である叔父に教えを請い『少年』の加護なしで聖絶を発動できるようになる。アテナ襲来の報を聞いて日本に戻り、グィネヴィアが召喚した神獣を倒すほどの力を得ている。しかし『聖なる殲滅の特権』発動後は、全身を極度の疲労と倦怠感が襲い、まともに思考することすら困難になるため、現時点では諸刃の剣といったところ(同じ聖絶でも、叔父には熟練度で遠く及ばない)。
- 最終決戦後は上海に拠点を移し、《円卓連盟》の一員としてリリアナと共に活動している。護堂とも正式に恋人として結ばれている。
- 万里谷 祐理(まりや ゆり)
- 声 - 花澤香菜
- 本作のヒロインの1人。私立城楠学院高等部1年6組。15歳。学校では茶道部に所属。
- 関東一帯を霊的に守護する一団の『媛』と呼ばれる高位の巫女であり、由緒ある武蔵野の媛巫女の一人。担当は武蔵野の重要な聖域の一つである虎ノ門の七雄神社。護堂とは神具ゴルゴネイオンを巡る騒動の際に知り合う[注 12]。神祖の血を濃く引いた先祖返りであり、世界最高クラスともされる強大な霊視能力と精神感応の素養を持つ。13巻では、力の成長と護堂に最も近しい媛巫女の一人という背景から、馨の手配もあって恵那と同じ媛巫女筆頭となった。
- 旧男爵家の家系で祖父は外食レストランチェーン店の社長であり、母に頭の上がらない父もそこで勤務している。本宅は埼玉県にあるがそこには祖父母だけが住んでおり、両親と自分たち姉妹は通勤・通学に便利な虎ノ門のデザイナーズマンションで生活している。昔から家族で海外を回ることが多く、そのために4年前のヴォバン侯爵による神の招来の儀式にも巻き込まれており、リリアナ共々その儀式の生き残りの一人である。
- 基本はおっとりとしたお嬢様だが筋金入りの逞しさを持ち、責任感が強く真面目な性格で、護堂のいい加減な言動を諫めることも。怒ると「夜叉女」と表現される鋭利な雰囲気をまとうため、奔放な妹のひかりも姉には頭が上がらない。また護堂を巡る女性関係に対しても同様だが、そのせいで周囲から「護堂の『本妻』」扱いされている[注 13]。素直で世間知らずなので、少々天然ボケ気味なところがある。携帯電話もまともに扱えない極度の機械オンチ。巫女の修行を終えているので苦行には耐性があるが、神祖「玻璃の媛君」の力を強く受け継いだ影響で賢人議会のアリスと同じく体が非常に弱く、2キロも走っていないのに筋肉痛になるほどに体力がない。
- その真面目さゆえ、当初は護堂に対し「女性関係がだらしなさすぎる」と責めていたが、何度も接するうちに次第に好意を持つようになり、彼にどこまでもついて行くことを決意する。護堂が重傷を負ったときには恥じらいながらも自分から進んで治療しようとするなど積極的な一面も見せるようになった。また護堂との関係が深まるにつれ、自然と息があうようになる。
- その霊視力は一般的な魔女のおよそ6倍という驚異的な的中率を誇っており、神々に近づけばほぼ確実にその名や来歴までをも視ることができる。この力は護堂の『戦士』の化身と相性が抜群であり、戦闘に直接参加することはほぼないが、後述の精神感応による心眼や思念の中継係など強力なサポートとなる。
- 護堂の『少年』の加護を受けたその姿は、亜麻色の鮮やかな長髪と玻璃の瞳を持ち、十二単と羽衣をまとった平安の美しき佳人である。授かる力は精神感応の力と究極の心眼「観自在」であり、肉眼では補足不可能な神速や「まつろわぬ神々」の魔術をも見切るほどの力を持つ。その時の精神感応者としての力は、プリンセス・アリスをも上回るほどで、加護による繋がりで護堂にも作用する。また、その感覚を任意の人物と共有することができ、護堂やエリカなどの前線で戦う仲間に大いなる恩恵を与える。
- アレクによる天之逆鉾強奪事件でイギリスを訪れた際にアリスの手ほどきを受け、彼女には劣るものの自力で精神感応力を行使可能になる。不完全ながら幽体分離もでき[注 14]、さらに感応力を最大限に高めて媛巫女の和御魂を放射し様々な呪術や神獣の力さえも鎮静化する「御霊沈めの法」も習得した。一方で新たな力に目覚めた副作用により、人の多いところに行くと無差別に精神感応が発動してしまうせいで自然と消耗してしまうようになってしまった。さらにラーマ復活による大地の異変の影響も強く受けるようになってしまい、護堂とラーマの3度目の戦いからは体調不良を誤魔化すために幽世に留まり戦場から離れることにはなったが、そこから精神感応の力を伸ばして味方を援護、魔王内戦の舞台がアストラル界に移ると護堂たちと合流した。
- 最終決戦後は《円卓連盟》の発足とそれに伴う正史編纂委員会の大幅な改革のため、組織のトップ層が全員「東」側の人間だということもあり、「西」側の勢力も掌握するために恵那と共に媛巫女筆頭、神殺しの伴侶として京都に移住。編纂委員会が関わる大学へ進学し、恵那と共に比叡山で修行に励んでいる。
- リリアナ・クラニチャール
- 声 - 喜多村英梨
- 本作のヒロインの1人。銀髪ポニーテール[注 15]のイタリア人。16歳。自称「護堂の騎士」。愛称は「リリィ」。エリカの属する《赤銅黒十字》のライバル組織《青銅黒十字》(せいどうくろじゅうじ)に所属する大騎士で、欧州では同年代にてエリカと唯一張り合えると評価される少女。
- 『剣の妖精』の異名を持ち、総合的な戦闘力でエリカに匹敵するほどの凄腕。魔女(ストレガ)でもあるため飛翔術、霊視術、秘薬調合などの魔女にしか使えない術を駆使する。愛剣はサーベルのイル・マエストロ。戦闘やサポートなどほとんどの局面で力を発揮でき護堂の近衛として最適ともいえる能力を持つため、彼と共に前線へ向かうことも多い。なお霊視的中率については欧州魔女の平均レベルにはあったものの、裕理のものを6割とすると1割に満たない程度でしかなかったが、後に護堂たちが過去に飛ばされた一件の際にプルタルコスの館を訪れたことがきっかけで一回り以上に霊視能力が向上した。
- ヴォバン侯爵の信奉者である祖父の要請により付き人として来日するが、4年前に自身も参加した神の招来の儀式で大勢の少女達が犠牲となり、闘争を好むカンピオーネを快く思っていなかったため、騎士としての正義感から叛旗を翻して護堂につく。護堂とヴォバン侯爵の対決後帰国するが、ペルセウスとの戦いで再会した護堂の人柄に触れ、カレンとディアナの差し金もあって護堂との関係が急接近し、主従を誓い神の知識を授けた。その後、護堂の傍で補佐するため夏休み明けから日本に留学して同じクラスになる。現在の住居は文京区にあるガレージ付きの一軒家でメイドのカレンと共同生活している。日本人の名前をフルネームで呼ぶ癖がある。
- 度が過ぎるほどの実直な武人タイプで、政治的な交渉は苦手。思い込みが強くて感情が暴走することで、余計な時間と労力を無駄に使う悪癖がある。祐理と並び女性陣の中では良識的な部類に入るが、決して常識家ではなく破天荒な面がある。また、生真面目な性格ながら、護堂と2人きりの時は抜け駆けを辞さない強かな面もある。良家の子女だが意外に口が悪く、しばしば毒舌になる。旧友にしてライバルのエリカとの関係性では、魔術の実力はリリアナの方が汎用性において上だが処世術の差もあってプライベート面(で独自に弱みを握られている関係)で何かと手玉に取られている。趣味は密かに恋愛小説をしたためることだが、書いた作品は彼女の知らぬうちにカレンがエリカへと売り渡しており、これが最大の脅しの材料に利用される。なお自分の潜在的な嗜好が反映されているのか、作風としては「ヒロインが恋人に振り回される」傾向にあるらしい。そのためか『灰色の者』によって記憶を消されたときも護堂と一番最初に元のような関係性に戻っている。名家の子女でお付きのメイドもいるがエリカとは対照的に家事が得意で、料理や編み物などを趣味に持ち、ファンシーグッズの収集も好きと護堂の周囲の女性の中で一番「少女らしい」趣味を持っている。祐理と同レベルの機械音痴でコンピュータの基礎的な操作もおぼつかないため、機械の扱いはカレンに一任している。
- イタリアから転校してきた当初は融通の利かない性格が暴走して、好意と使命感から過剰なまでに護堂の世話を焼いていたことでかえって苦労をかけてしまい、彼に近づく他の女性達にも非友好的な姿勢をとっていたせいで正史編纂委員会とも敵対的になりかけるという事態を招いてしまったが、徐々に落ち着きを持つようになり世話を焼くにしても押しつけがましくならないような気遣いをするようになる。斉天大聖に勝利した後は、事前に護堂と交わした「ひかりが1ヶ月以内に護堂に惚れるか否か」という内容の賭けに勝ったことで「侍従長」を自認するようになり、公私にわたって彼を支えている。
- 護堂の『少年』の化身の加護を受けると、イル・マエストロは銀製の長弓に変貌(アニメ版では通常時でも使用)し、攻撃力・連射力・機動力・魔術に対する防御力が爆発的に上昇する。エリカと同じ時期に『聖絶』のうち「ミデアンの殲滅」を習得している。当初は加護を受けた状態でしか発動できなかったが、パオロ卿の教えを受けたエリカからノウハウを伝授されたことで素の状態でも行使できるようになる。
- 最終決戦後は、エリカと同様に上海に移住している。
- 清秋院 恵那(せいしゅういん えな)
- 声 - 斉藤佑圭
- 本作のヒロインの1人。日本の名家を代表する四家の一角、清秋院家の一人娘。媛巫女の筆頭。アニメ版では第11話から登場。
- 祐理とは幼馴染の親友で、共に媛巫女としての厳しい修行に耐えてきた。宝剣「天叢雲劍」を操る剣術・呪術ともに日本最強の媛巫女[注 16]であり、その戦闘力はエリカをも凌ぐ。降臨術師としての素質を持ち、暴風の神スサノオの神力を一部とはいえその身に宿す「神がかり」の術を使うことができるが、心身への負担が尋常ではないため最終手段としてしか使わない。また降臨術師の修行を終えたことで荒行、苦行にも慣れており、華奢な外見の割に足腰が強く身体もかなり頑丈。
- 生まれも育ちも究極の大和撫子で教養に富み諸芸にも熟達しており、その育ちに違わぬ清楚で可憐な美貌を持つが、普段は山の中にこもっており(町などに出て体内に俗気を溜めると神がかりができないため)、その性格は割とがさつで自由奔放な自然児そのもの。山籠もりの影響で毎日通学はできないので、出席日数を組むのに都合がいい群馬の山奥にある正史編纂委員会がスポンサーとなる呪術関係者を育成する高校[注 17]に通う。またその教育環境ゆえか、男女関係についてはかなり古風な価値観を持っており、護堂の周囲の他の女性陣と違い浮気や重婚に否定的なイメージを持っていないためか、時折爆弾発言をして祐理や護堂に怒られることもしばしばだが、実際の恋愛に関しては祐理以上に疎い。物怖じしない性格だが、曲者すぎる人物や悟りを開いたような人物は苦手としており避けるようにしている。
- 一見すると考えなしに突っ走るという無策な印象を周りに与えがちだが、相応の結果を生むその行動は天性の野生の勘がなせる技であり、その一種の精神的強さともいえる逞しさは知略に優れるエリカが対抗心をむき出しにするほどである。護堂とはお互い理性よりも直感と野生を本領とする似たもの同士であるため、相性がよすぎる余り二人で行動しているとブレーキがきかなくなる。
- 最初は日本初のカンピオーネである護堂の周りにイタリア人のエリカやリリアナが侍っていることを懸念した清秋院家の差し金として、エリカを排除し護堂の妾になるために送り込まれてきた。一度はエリカに勝利するも、護堂の『少年』の加護を受けたエリカと再戦し敗れる。その直後に天叢雲劍が暴走してしまい囚われの身となるが、護堂によって救出された。これを含めた護堂の生き様を目の当たりにしたことで彼に惚れ、彼こそ自分が妻として侍り媛巫女として仕えるべき運命の男だと確信する。
- 基本的に能天気な性格で自分を女として意識していないが、護堂から『少年』の加護を授かる儀式を終えた後は、彼を目にすると恥じらったり、はにかんだりするような女の子らしい一面を見せるようになる。
- 護堂の『少年』の加護を受けることによって、巫女服と千早を纏い頭に前天冠とかんざしを身に付けた神楽舞の巫女のような姿に変貌し、スサノオが得意とする嵐や暴風雨の呪術を自在に使いこなせる。また加護の恩恵により体内のスサノオの神力を倍近くまで上昇させることができ、その力は神の御使いである神獣を一撃で薙ぎ払うほどの力となる。7巻の斉天大聖との戦いの中で『少年』の加護の恩恵で護堂が所持していた天叢雲劍を借り受けられるようになり、9巻で聖杯を破るために護堂と『霊感共有』の術を使ったことで天叢雲劍の神気を呼び込み、分身として刀を具現化できるようになる。さらに13巻にて、天叢雲に護堂の『強風』の権能を吸収させることで神がかりを超える「風の劍」を使った。度重なる戦いを乗り越えたことで神気への感受性が上昇したことにより、魔王内戦では護堂を勝たせる為に一時的に護堂たちと別れて、石上の滝壺の裏にある洞窟から神刀『七支大刀』を授かったことで、異なる神の神気を呼び込む二重の神がかりも使えるようになっている。
- 護堂の仲間の中では一人だけ遠方で暮らしており、なおかつ彼と特殊な繋がりがあるため他の少女達とは違った役割を担うことが多く、例として9巻でアテナの邪眼で他の女子たちが石化した際は天叢雲劍の力によりそれを免れ、12巻にて呪縛で護堂とエリカ達の記憶を一時的に書き換えられる中で山籠もりの最中だったために唯一人書き換えられず無事だった。ただし「おじいちゃま」と呼ぶスサノオとの交信に利用している携帯電話はその状態にかかわらず通じるため、充電し忘れて他の者と音信不通になってしまうことも少なくない。
- 最終決戦後は、祐理と同様に京都の大学に進学し、祐理と共に比叡山で修行に励んでいる。
- 万里谷 ひかり(まりや ひかり)
- 声 - 加隈亜衣
- 媛巫女見習いをしている祐理の妹。12歳。草薙護堂の5番目の美姫(候補)。
- 魔力や呪力を打ち消す「禍祓い」ができる(ただし神の権能などの強力なものは一時的に弱められるのみで、未熟なため直接触れていないと打ち消すことができない)。この能力は大変珍しく現れるのは約100年ぶり。そのため、この能力を欲する九法塚からの度重なるスカウトに困り護堂に相談する。
- 純真かつ天真爛漫な性格で、恵那とは気が合う。他方、若干耳年増な傾向があり、なおかつ異常にませているため、際どい発言をしては姉に窘められることもしばしばである。一方で無事期日までに会えるかも分からないにもかかわらずきちんと護堂へのバレンタインデーチョコを用意しておくような周到さも持ち合わせている。
- 斉天大聖の復活に際して体を乗っ取られてしまうが、精神感応による姉の言葉に励まされ大聖の力を打ち消すことで一瞬の隙を作り、そのおかげで護堂に救出される。これを切っ掛けに彼に惚れ、7巻終章にて彼に侍ることを宣言する。この時「最年少らしく控えめに振る舞う」旨を告げたため、エリカに「処世術の資質は姉以上」と言わしめた。10巻では、ランスロットがかけた狂奔の呪詛にとらわれた護堂を救うためにアリスの霊力を上乗せした禍祓いを石に込め、状況を打破するきっかけを作った。12巻では「灰色の者」に呪詛を掛けられたエリカに片っ端から解呪を行うことで正しい記憶を取り戻すことに成功し、まつろわぬサトゥルヌスとの決戦でも相手の呪詛を防ぐ大役を果たした。
- 最終決戦後は城楠学院中等部へ進学。3年生で生徒会副会長を勤め上げ、冬の時点で後輩に役職を譲っている。護堂の妹・静花とも先輩後輩として親密になっており、静花の妹分となっている。年齢の近い陸鷹化とも仕事柄の関係で静花と共に積極的に交流を図るが鷹化の方からは彼の女嫌いもあって避けられている。
カンピオーネ
- サルバトーレ・ドニ
- 声 - 江口拓也
- 6人目のカンピオーネ。人懐っこい笑みを浮かべる能天気でハンサムな金髪碧眼のイタリア人青年。シエナ出身の24歳。欧州最強の剣士とも称され、すでに4柱の神を打ち倒した護堂の先達。「卿」の敬称で呼ばれるほか、達人級の剣士であることから『剣の王』と称される。
- 世界でも四番目以内の戦士(武術家)を自称する人類最高位の剣術家で、強者との戦いの中で会得した「無想剣」を使う。その他の武術においても羅濠教主には及ばないものの高水準で修めており、槍の腕もヌアダから認められるほどで、体術についても軍神に危機感を抱かせる水準にある。独学で神速を見切る心眼を身につけている。一方でカンピオーネになる前は呪力を体に溜め込めない体質であったため、魔術関係が実践・知識共に全然駄目で両立が必要[注 18]なテンプル騎士団では落ちこぼれとされていた。体質が治った今でも魔術は使えず、その弊害で魔術戦における直感が鈍く、いくらカンピオーネに魔術が効きにくいとはいえ、敵の魔術攻撃に対してあまりにも無防備に突撃して痛い目にあうことがある。
- 自身の剣を極める方法として全力で命を取りあえる神殺しやまつろわぬ神との対決を望んでおり、それ以外にはほとんど興味がなくそのためなら手段を選ばない。魔術などの知識のように自分の興味の対象外のことについても碌に覚える気がなく、残酷な凶行は行わないが他人の迷惑を顧みないというダメ人間。聖ラファエロに弟子入りするため老若を問わず女性100名へ無差別に斬りかかる、狼煙代わりに砦を両断する、制止を無視して神具を破壊し地下空間の崩落を引き起こすなど、その愚かさとはた迷惑さを示す逸話に事欠かない。南欧の魔術組織を束ねる盟主とされるが、「君臨すれども統治せず」という形式上のものであり、まつろわぬ神や神殺しと戦うこと以外の雑事は全くもってせずにアンドレアなどに任せている。ただし人を使うことには割と慣れており、神殺しになる以前から関係のあった華僑系の幇に表に出せないような汚れ仕事を命じたりしている。また、興味がない人間の名前は何度顔を合わせても覚えない。アルティオからは、その剣技や性格から「孤剣を以て遊興にふける剣王」と評された。
- 元々はエリート街道とは縁のない一介の騎士であったが、4年前に中華系の商人の用心棒を請け負った際、槍に宿ったゲオルギウスの霊に操られアストラル界に迷い込み、そこでヌアダを殺してカンピオーネとなった。その際、アストラル界に長く滞在しすぎたせいで一時的な記憶喪失に陥っていたが、わずかに残された記憶を頼りにエリカとリリアナに帯同して師匠の聖ラファエロの元に向かい、彼女との戦いで頭を強打されたことによって記憶を取り戻した。その直後にジークフリート招聘の儀式を執り行うヴォバン侯爵の元へ向かい、呼び寄せられたジークフリートを横取りした。
- カンピオーネとなったばかりの護堂との決闘に引き分けて以降、彼を「親友[注 19]」と呼ぶが、上述の能天気かつ享楽的な性格から当の護堂や周りには「あのアホ」扱いされている。ただし護堂の内面に関しては誰よりもよく理解しているため、あながち「親友」の発言も間違いとは言い切れない。当代のカンピオーネの中で一番の大バカ者[注 20]であるものの欲や雑念がほとんど無いようで、ある意味では「大智は大愚に似たり」という言葉を体現しているとも言える。理知的なアレクとは相性が悪く、彼からは「脳みそまで筋肉の呪いに侵されている」などと酷評されている。剣術一辺倒のカンピオーネだと思われているが、戦いに関しては細心に立ち回る一面も持つことから「大物」「ずる賢い」と評価されることもあり、実際に暴走の権能やヒューペリオン戦で用意した戦略核に匹敵する複数の「流星剣」といった様々な隠し球を持ち合わせている。手先が器用で、戦闘には役に立たない開錠のような小技にも習熟している。
- 対メルカルトのためにサルデーニャ島に呼び寄せられ、新たなカンピオーネとなった護堂に興味を持ち勝負を申し込むがすげなく断られる。しかし勝負に持ち込むために赤銅黒十字に圧力を掛け、彼をイタリアに招き寄せ戦い最終的に痛み分けとなる。護堂との戦闘後しばらくの間、様々な愚行の報いとしてインド洋の孤島に表向きは護堂との決闘ので負った傷の療養という名目で3カ月ほど幽閉された。7月末にヘライオンの活性化を懸念した青銅黒十字にナポリへと招かれるもそこでも好き勝手に行動し、神具を破壊した結果竜のみならずペルセウスすら顕現させてしまい、自分は竜が起こした大津波に呑まれてサルデーニャ島まで流される。そこで護堂を成長させるためとサポート要員となるエリカたちを妨害してからナポリに帰還、護堂との戦いで弱ったペルセウスを後始末として殺害した(アニメ版ではメティスに先を越されている)。この頃からやりこんでいるソーシャルゲームで無双できないことに業を煮やすようになり、自分が力を存分に振い満足できるような冒険の世界を求めてアイーシャ夫人が残した「通廊」を捜索するようになる。1月になって通廊をようやくトスカーナの山中にて発見し、自身が言い出しっぺである「神獣討伐」を放り出して夫人の権能を暴走させることで護堂、エリカ、恵那を巻き込んで過去へ向かう。護堂より約3カ月前の時代に飛ばされ、アルティオに悩まされていたフランク人を成り行きで助け、彼らの大同盟をまとめてあげ、再戦の舞台となる場所を求めコロニア・アグリッピナの砦を強奪する。同じく過去に飛ばされた護堂、アイーシャと合流し『最後の王』や『風の王』を相手に戦いを繰り広げる。この戦いで仮死状態になった肉体を女神に奪われフランク人達に牙を剥き、意識を取り戻したものの護堂と再戦するために女神と手を結び双方共に万全とはいかない状態で交戦し護堂・天叢雲両名に深手を負わせたが敗北し、『最後の王』の消滅以降は何度か問題を起こしながらも彼らと現代に帰還した。その後、『最後の王』に興味を持ち、サルデーニャ島で護堂と共にパラス・アテナの宣戦布告を聞いた後、行方をくらまして、護堂と『最後の王』ラーマが相打ちになった後、タイのバンコクで合流したリベラに『最後の王』ラーマの強さをどうにかする妙案について話した。
- 魔王内戦では機会を待って序盤は高みの見物を決め込み、アイーシャの権能を封じた羅濠とヴォバン侯爵と対峙する護堂の前に現れて同盟を提案し、ヴォバンと一戦交えた後に『大迷宮』に捕らわれ、その内部でアレクと戦うも深手を負う。その後、アイーシャ達と合流しリリアナの助けを借りて訪れたプルタルコスの館で霊薬をせしめて回復を果たし、その後の羅濠との戦いでは権能の更なる力を引き出すことで薄氷の勝利を得る。しかし、勝ち残った護堂と雌雄を決しようとした矢先に魔王殺しの毒矢を不意打ちで背後に撃ち込まれて戦闘不能となり、意識不明のままアイーシャ夫人が開いた並行世界へ通じる空間の亀裂(《妖精の通廊》)へ放り込まれた。送られた先でも騒動を起こしていたが、次元間移動能力を得た護堂によって救出され元の世界へと帰還し、その後は独力で次元移動するための方法を模索している。
- 所有している権能は、《斬り裂く銀の腕》、《鋼の加護》、《いにしえの世に帰れ》、《聖なる錯乱》、《鋼鉄の暴走》の5つ[2]。最強の矛である『魔剣』と最強の盾である『鋼鉄体』が戦闘に使われ、残りは戦闘に直接使うことはできないが剣術で勝負できる自分好みの戦場を整えることに向いている。ちなみに所有する中で完全に攻撃用のものは「魔剣」のみであり、攻撃用の化身を複数持つ護堂とは対照的と言える。
- サーシャ・デヤンスタール・ヴォバン
- 声 - 石塚運昇
- 当代では最古参のカンピオーネ。18世紀前半から生きている約300歳の男性で、『ヴォバン侯爵』と称されるほか、最初の権能から『(魔)狼王』等とも呼ばれる。
- 欧州で最も悪名高き魔王であり護堂に「時代遅れの魔王気取りでわがままし放題」と評されるほどの横暴さで、力の信奉者にして戯れで命を奪うなど正に魔王といった性格。「虎の瞳」と称されるエメラルド色の瞳が特徴的な大学教授然とした知的な老人の風貌を持ち、冷静沈着かつ理性的な人物を装っているが、本質は獣そのものである。アレクに「知的ぶってるだけの野蛮人」、ドニに「食欲以外の欲望が少ない」と称され、自身の闘争本能を満足させることが目的。他人からはよく無趣味だと思われているが、実はボクシングやロードバイクの心得があるなどスポーツマンである。バルカン半島が中心拠点だが、フットワークは軽いのであちこち飛び回っている。その力故に信奉者も多く、特にバルカン半島における影響力は非常に強い。
- 現在でいうハンガリーの生まれ。かつては何の力も持たない孤児の身分でありながら、護堂と同じ年頃にギリシア神話の太陽神アポロンを殺害してカンピオーネとなって成り上がり、数年間の内に傭兵魔術師団の殲滅、『智慧の王』という老カンピオーネや神の軍勢との激戦といった様々な伝説を打ちたてた[注 21]。侯爵というのは若かかりし時に自身が戯れに奪い取った貴族の爵位で、ヴォバンというのはその貴族の飼い犬の名前に由来する[注 22]。19世紀中ごろには産業革命により発展した大英帝国に居を構え、ヴィクトリア女王を「表敬訪問」したこともあり、これを脅威としたディオゲネス・クラブの魔術師が賢人議会を設立することになる。1854年にはダルマチア地方の港町ヤーデルを暴風の権能で壊滅させ、『三匹の子ブタ』に類似した伝承を作り上げている。これらのように最凶のカンピオーネにふさわしい数多の悪行を重ねているが、本人曰く有名になりすぎて今では神からも遭遇を避けられているとのこと。
- 羅翠蓮とは20世紀以前に起きた神具をめぐる戦いで知り合い、出会ったころから今に至るまで犬猿の仲。ドニも自身が獲物として呼び出したジークフリート[注 23]を横取りしたため嫌っている。アイーシャとは羅翠蓮と会う少し前からの知り合いで一方的に懐かれているが、本人は雇用関係にあった頃から翻弄されているために天敵だと認識しており、機会があれば格別の覚悟と意思を持って斃そうと考えている。幾度となく夫人の愚行に巻き込まれて酷い目に遭わされている[注 24]ため、自分と同じ彼女の被害者に対してはつい心の底から同情してしまう。
- 2巻でまつろわぬ神と戦うべく、神の招来に利用しようと祐理を狙って来日するが、護堂に興味を持ち祐理の身柄を返す代わりに護堂を相手に狩りを行うことを宣言する。嵐を呼び寄せ魔狼と従僕を指揮して駆り立てるが、『戦士』で二つの権能を使用不能にされた上に解放された従僕達にも離反されて手痛い反撃を受ける。致命傷から復活したものの戦いで勝つには自ら宣言した「祐理を生かしたまま護堂を殺す」というルールを守れないという理由で自身の敗北を宣言して、護堂を仇敵と認めた。
- 17巻の序盤でオーストリアのチロル州の山奥の別荘に滞在していたところを、アイーシャが訪れて鋼の軍神が三柱も『最後の王』を復活させる為に活動していることを聞いた。その後、護堂と『最後の王』ラーマが相打ちになった後で、アイーシャに『最後の王』ラーマへの対処法について話し、彼女と共に来日し某国の大使館に滞在する。そして、魔王内戦開始と共に真っ先にアイーシャを襲撃、歌舞伎町で往来の人々を人狼化させたあげく塩に変えるという暴挙に及ぶが、肝心のアイーシャを取り逃がす。その後は旧敵の羅濠と利害の一致から手を結び、再びアイーシャを狙って行動を起こすが、ドニの乱入を受け彼らが逃げ込んだアストラル界のプルタルコスの館へ攻め込む。その地で護堂と数ヶ月ぶりに戦うことになり、数々の戦いを経て成長した護堂に敗北し、霊魂となってアイーシャ夫人が開いた《妖精の通廊》から並行世界へ逃げ込むが、その寸前でランスロットの槍に貫かれた。その直後にアストラル界に遺されていた肉体が崩れ去り霧散したことから、通廊の中で力尽き成仏したと考えられている。
- 所有する権能は、《貪る群狼》、《死せる従僕の檻》、《疾風怒濤》、《ソドムの瞳》、《冥界の黒き竜》、《劫火の断罪者》、《血の聖餐祭》、《生ける呪文書》[3]。最古参のカンピオーネに相応しく所有している権能も多く、自身の従軍経験が影響して総じて集団戦に特化した「戦争向き」な権能ばかりが揃っている。
- 羅 翠蓮(ら すいれん)
- カンピオーネとなって二百有余年の最古参の1人。字は「濠(ごう)」で、『羅濠教主』の通り名で知られている。第6巻にて初登場。その外見は神すらも認める絶世の美貌の中華風美少女。護堂の「義姉」(経緯については後述)。
- 十八世紀末乾隆帝の治世の終わりごろ、商隊の護衛を生業とする『鏢師』という武林では名門とされる無法者一族の令嬢として生まれ、男子の入門を禁じる正派武術の名門『飛鳳門』の総帥を経て神から簒奪した権能を以て魔術結社『五嶽聖教』の教主になった『魔教教主(クンフー・カルトマスター)』。ヴォバンとは犬猿の仲であり、互角の実力の持ち主。ドニやアレクとも戦闘経験がある。普段は中国江西省・廬山の山深くに編んだ庵で暮らしている極めつけの出不精だが、世界中どこでも縮地神功・神足通による瞬間移動が可能であるため気が向けば時たま下界を旅することもあり、その一環で150年前の大英帝国では旧世代のカンピオーネ全員と顔を合わせ、138年前のトルコではサトゥルヌスを倒し、100年前の日本では封印から解き放たれていた聖天大聖と戦っていた。また幽冥界では「桃源郷」を拠点としており、仙女をも従えている。同格のもの(神やカンピオーネ)や自身が許可した者以外には配下であろうとその姿や声を見聞きした場合、その両目や耳を削ぎ落し償いとする非情を強いる[注 25]。そもそも人を慈しむべき存在とは捉えておらず、むしろ天地にとって人は有益かどうか疑問視しており、現代社会も蒸気機関の発明から堕落したとして嫌っている[注 26]ため近代技術には非常に疎い[注 27]。戦いによる被害も詮無きことと気にもしないが、市街ではなく自然が戦闘の余波で破壊された際にはその後にケアを行うこともある。また、前述の理由で長らく人前に現れず配下に情報を漏らすことを禁じているため、性別・出生などの基本的な個人情報すら不明とされており、魔術関係者であってもその正体を知るものは希少である。
- 「武林の至尊」を自称するに足る実力の持ち主で正派・邪派を問わずに格闘術や槍術など様々な武術に精通しており、特に掌打を用いた近接戦闘を最も得意とし、『駱駝』の化身で人類最高峰の格闘センスを得た護堂も一蹴するほどの腕を持つ。ドニを「剣術は自分に近いがそれ以外の武術が駄目」と断じ、更に「寝てても無意識に触れた相手の首を引きちぎれる」「水や空気無しでも生存可能」という実力のためか、自身を地上で至高の存在と信じて疑わず、そのことを満天下に示すためなら周囲の存在を一切考慮しない「腕力至上主義者」(アレク評)で、神に対しても高慢に振る舞う。心眼の精度もドニを上回り、神速で動く相手の影に飛び乗って会話まで普通に成立させるという規格外の技量を持つ。また武術同様に方術も極めた最高位の道姑で、さらに巫の資質(西欧で言う魔女の資質)も有しており、カンピオーネの莫大な呪力を惜しげもなく使って難度の高い術を連発する。武術・魔術・権能のコンビネーションで圧倒的な実力を誇る。兵法家としても超一流で、高位の軍神のように自分以上の武威を誇る者を相手取った時には武術だけではなく高度な戦術を以て渡り合う。
- 義弟の護堂をかなり甘やかす傾向があるも、護堂を育てるために神との対決を設定するなど感覚がずれていることがある。脱出可能な封印にもかかわらずわざわざ戻って正面から封印を打破するほど非常に誇り高く負けず嫌いで見栄っ張りな性格。護堂からは「最も社会に適合できないカンピオーネ[注 28]」「自分より百万倍強い」と評されている。料理や月琴にも通じておりどちらも腕前は天下一品だが、現在その腕前を披露するのは地上でただ一人、義弟たる草薙護堂だけである。カンピオーネの例にもれず賭け事が強く、麻雀にて驚異的な強さを誇るのみならずイカサマ[注 29]も天才的。
- グィネヴィアとの取引でかつて戦うも決着がつかなかった猿猴神君(斉天大聖)を完全復活させて戦うために弟子の陸鷹化と共に来日する。その企てを阻止しようとする護堂と戦って引き分けた[注 30]後、消耗した状態で自身を身代りに斉天大聖の計略から護堂を救う。彼の神と戦う権利を巡るやりとりの中で護堂を気に入ったこともあって、封印を抜け出して彼の元を訪ねて義兄弟の契りを結び、あえて封印内部に戻ってからそれを力業でぶち破って帰還しスミスを加えた3人で斉天大聖とその従属神との戦いに臨んだ。12巻では自身がかつて斃したまつろわぬサトゥルヌスの挑戦を受けるが、先に義弟を倒すことを再戦の条件として告げる。17巻で『最後の王』の復活を察知し再び来日、護堂と共闘しながらも敗北して溜め込んでいた呪力の大半を失う。『最後の王』に備えて日本一高い建物=東京スカイツリーに逗留することとなり、後日万全な状態ではないが『最後の王』を足止めし、護堂が幽世で策を得て帰還した後はヴィマーナで西に向かうラーマと分断するべく羽田の埠頭でハヌマーンと激戦を繰り広げ、彼から呪力を奪って気力を回復させた。その後は、来たるべき内戦に護堂との絆を深めるべく、あえて敵対することを選ぶ。
- 魔王内戦ではアイーシャを狙い新宿御苑を魔の森に変えたが護堂の妨害に遭い、その後は仇敵のヴォバンと手を組み再び彼女の身柄を狙う。義弟との戦いでは彼の成長に驚きを見せるもスミスの乱入で水入りとなり、桃源郷で下準備してからプルタルコスの館へ向かう。その後、アイーシャが開いた平行世界への通廊に飲み込まれ掛けた際には、事前に用意していた嫦娥ゆかりの霊薬を服用して帰還し、薬の副作用で呪力と体力を消耗させながらもドニと交戦するが、想像以上の反撃によってみぞおちを抉られて深手を負い、追撃を避けるために自ら並行世界へ通じる《妖精の通廊》へと逃げ込んだ。その後は自力で次元間移動出来るようになり、様々な世界を旅して騒動を起こしているため、護堂が行方を追っている。
- 所有する権能は《大力金剛神功》、《竜吟虎嘯大法》、《百草芳菲、千花繚乱》、《黄粱一炊夢》、《将軍令、男児当自強》、《蒼天巳死》[3]。直接戦闘に使用するのは「怪力」と「魔風」の2つで、残りの権能は儀式的な要素が強い。またカンピオーネの中では珍しく自身の権能に自分で名をつけている[注 31]。
- アニー・チャールトン / ジョン・プルートー・スミス
- 27歳のアメリカ人女性。10年ほど前にカンピオーネとなったが、その性別を含めた正体を知る者は身近な者のみ。北アメリカを根城とする、護堂以外で唯一複数の能力を使い分ける権能を所有するカンピオーネ。
- 魔術界での通称は『ロサンゼルスの守護聖人』。名前の由来は元々名乗っていた「ジョン・スミス」に、その活躍を見た人々が『プルートー』のミドルネームをつけたものである。民衆は彼をヒーローと認めてはいるが、その権能が周囲に甚大な被害を与える贄を必要とするために恐怖・畏怖されてもいる。
- 十代のころに紆余曲折を経て、アステカ神話の魔神テスカトリポカを殺しカンピオーネとなる。魔術の腕は中の上。なおカンピオーネとして活動するときは、闇エルフに作成してもらった吸血鬼のマントじみた黒いケープや黒い仮面をかぶって変装(本人曰く「夜な夜なコスプレしてヒーロー活動」)し男性として振る舞っており、かつては意図的に演じていただけだったが今では別人格のように精神も変化している模様。また、狂える妖精王オベーロンを斃したことでアストラル界における妖精王の地位を引き継いでおり、彼の領地であった「オベーロンの森」の支配権も有する。さらにオベーロンから簒奪した権能によって現代のカンピオーネたちの中で唯一アストラル界でのパンドラとの会話の内容を記憶している。妖精王を兼任するカンピオーネという存在は神殺し史上初とされ、自ら変装して活動することも合わせて歴代のカンピオーネの中でも有数の変わり者と評されている。
- アニーとしての人格は生真面目で冷静沈着、有能な秘書然とした美人である。正義感と責任感も強いが、酒に酔ったりコスチュームを着たりすると性格が変わる。戦闘に使用する『変身』と『魔銃』の権能には制限事項が多いので八方塞になることを防ぐため、山場に至るまでの下調べや偵察は協力者の一人という体でアニーもしくは別の協力者が行っている。ヒーロー活動の弊害で恋人ができないことを非常に気にしている節があるが、好意を寄せる相手に対するさりげないアピールも全て「スミス」として行っているため、大抵は相手に気づかれないままご破算になる。
- スミスとしての人格は非常に芝居がかっており、能力や素行に見合う義務をちゃんと果たしていれば、あまりとやかく言わないなど鷹揚な人物で、他よりは理性的で民草の保護に熱心なカンピオーネと思われている。ヒーロー然とした山場での活躍所で颯爽と登場して解決するといったスタイルであり(結果オーライ、良い所取りなどとも評される)、アニーとは行動哲学や倫理観も大きく異なるようだが、一種のトランス状態なのか完全な別人格でもなく記憶も共有している。基本的に二つの人格が同時に存在することはなく、普段はアニーが声色を変えてスミスを演じているが、アストラル界における「妖精王の森」でのみ「アニー」と「スミス」の二つの人格が同時に存在し、互いに会話も出来る[注 32]。
- 後述の経緯で知り合った護堂とは不思議と馬が合うらしく、別れの際には互いにシンパシーを感じており、彼からは「変人」と評されながらも義姉以外では唯一共闘できるカンピオーネと信頼されている。なお「アニー」の人格は、護堂に対して異性としての好意を抱いている。アレクとはかつて殺し合いにまで発展したため現在は不可侵協定を結んでいるとはいえ、そこまで険悪な関係ではない。アリスとも親交があり、時に愚痴を聞かされるような仲である。
- 6巻の終盤で、久々の海外旅行で日本を訪れるが、死闘の末に倒したと思っていたアーシェラが日本で確認されたとの情報を得て独自に調査を開始する。その時ちょうど斉天大聖がまつろわぬ神となって顕現し、たまたま甘粕を助けたことで事件に巻き込まれ、護堂に協力することになる。天之逆鉾を手にしたアレクがアメリカを訪れ大地母神・女媧の竜骨を要求した際には、彼と会見し《神祖》の首領であるグィネヴィアを倒す計画について知らされ、自身もアーシェラに悩まされていたことから彼の行動を黙認した。護堂らが過去に飛ばされた時には、時の番人から3名の魔王を抹殺するよう依頼されるが、3人の中では比較的まともな護堂が事態を収拾することを期待し、リリアナと祐理に過去へと送り出した。この時2人に貸与した自らの魔銃は、最終局面において『風の王』を退ける一手となった。17巻の序盤では、護堂に『最後の王』に関しては日本に来るつもりはないと電話で告げて、不干渉によって護堂をアシストする姿勢をとった。その後、護堂と『最後の王』ラーマが相打ちになった後、アリスとの電話で一通りのあらましを聞いてカンピオーネ同士の内戦が始まるであろうことをほのめかしていた。
- 魔王内戦前にはアストラル界でほかの妖精王達の元を回って下準備をする中で玻璃の媛からラーマと戦うか見殺しを護堂にしてほしいと頼まれる。来日後はアイーシャ夫人の存在を危険視してアレクと共に彼女を襲撃するも彼女を庇う護堂と交戦することになる。その後はアイーシャ夫人が開けた通廊によって雲取山まで送られると、その場にいたハヌマーンと戦うことになるがアイーシャ夫人が再び開いた天空の通廊に吸い込まれて12000年前に送られ、過去の世界で3ヶ月ほど過ごした後で天空の通廊が開いてから3時間後の現代に帰還し、護堂をアストラル界の妖精王達の元へ連れて行き、ラーマとの決着を護堂に託す旨を伝え、アイーシャ夫人が開いた並行世界への《妖精の通廊》を通って旅立った。その後、護堂によって救出されて元の世界へ帰還し、邪術師たちとの戦いを続けている。
- 所有する権能は《超変身》、《魔弾の射手》、《妖精王の帝冠》、《形なきもの》、《深き底の使徒》[2]。当代のカンピオーネでは護堂と共に「複数の形態をとる権能」の所有者である。
- アレクサンドル・ガスコイン (Alexandre Gascoigne)
- 名前の通りフランスにルーツを持ち、故郷でもあるイギリスのコーンウォールに拠点を設ける魔術結社『王立工廠』を率いる28歳の男性カンピオーネ。『黒王子(ブラックプリンス)アレク』の通称は、天性の気品と態度のでかさ、若手の魔王であることに由来する。
- 聖杯探求に没頭した素人のオカルト研究家である父をアレク幼少時に母は見限り、その父は研究の過程で手に入れた暗号を死の際にアレクに伝えて死亡した。父の教えによる魔術はかじる程度で手品やギャンブルの方が得意という人物であったが、父の暗号を発端とした冒険の末に、雷と幻視を司る堕天使レミエルを殺害し16歳にてカンピオーネとなった。敬称よりもアレクと呼ばれることを好む。当代の神殺しの中で唯一の草食系であり、カンピオーネらしい勇猛さや野蛮さを欠いた神経質な性格。肉弾戦などを嫌っているため真っ当な手段では戦おうとはせず、トリッキーな戦法の数々を駆使して相手を翻弄し自分で用意したフィールドに引きずり込んで二重三重の罠にはめて斃すことを得意としており、護堂はその戦術を「蝶のように舞いながら、悪魔のようにチェス盤をひっくり返す」と評している。
- 偽悪的に振る舞うが、時としてぶっきらぼうながらも情の深さを見せる「善人ではないが冷酷無比にもなりきれない半端な男」であり、周囲からはひねくれ者という評価が多い。現在は一流の魔術師で魔術や神話の知識は非常に豊富、専門家以上の知識と洞察力の持ち主で謎ときが得意。天才肌で部下を置き去りに自ら様々な場所を飛び回り、部下は後で付いてくればいいというように組織の長として問題のある行動をとるが面倒見は良く、気が向けば自ら部下に対して教鞭を執ったりする。身の回りのことは全て自分で行いどんな環境下でも自分のペースを貫くなど、その異名に反して気質・能力共に冒険家といった風情で、普段から探究心の赴くまま探検や研究をしている。
- 神殺しにしては理性的で話の分かる人物に見えるが、実際は本当にこだわっているところ以外でならまともに振る舞える性格なだけで、本質は究極的に自分勝手な性格で自身の美学を何よりも優先する見栄っぱり。欲しい物に対して、無力な者からは報酬や対価を払うかあきらめるが、逆に無力でない人物や組織からは交渉を無視したり、断りもなく拝借書や予告状を渡して一方的に強奪するといった怪盗じみた傍若無人な行動をとる。現在は聖杯を探しているが、その理由も「調べてみたいから」であり、己の欲するものを奪うのに一瞬たりとも躊躇しない偽悪家(一旦躊躇する護堂は偽善家として対比する)。
- 護堂とはエリカ曰く「双方共に体面を気にする」という似た部分があり、歪んだ鏡を見ているようで仲が悪い。本人は他の神殺しとは違うと主張し、実際他よりも計画性や配慮を持ってはいるが、計画自体が傍迷惑だったり失敗し酷い惨状になるなどと結局は世界に甚大な被害をまき散らす、周囲に言わせれば似た者同士で、パオロ曰く「世界に混沌をもたらすために生まれたような男」。せっかく立てた計画も途中で放棄することが多々あり(本人は「臨機応変にアドリブを加えているだけ」と主張する)、周囲からもしばしば苦言を呈される。女性へのデリカシーがほとんど無く辛辣なためか女難の相がある上にとことん女運が悪く[注 33]、失敗した計画のほとんどは女性の感情を読み切れないのが原因とのこと。そのためかスミスとは当初友好的に接したが、相討ち寸前の殺し合いになり結局は不可侵条約を結んだ。他にも3年前に『最後の王』の正体を探るためキルケーを復活させるも、求婚に耐えかね交戦に至り彼女に重傷を負わせたまま放置して逃走していた。ただしなんだかんだで女性には優しくついつい面倒を見てしまうことから好意を寄せている女性もいる。
- アリスとは12年前からの旧知の仲で、目的が一致すれば共闘することもあり、《神祖》グィネヴィアとも聖杯を巡り8年にわたる因縁がある。グィネヴィアの来日と時を同じくして秘密裏に日本に向かい、甘粕から強奪した天之逆鉾とベスト教授からもらい受けた竜骨を使って彼女を討つ計画を立て、東京湾のど真ん中に沈められていた浮島を浮上させその周囲を魔の海へと変える。その途中でランスロットの権能で暴走した護堂と交戦するがエリカたちの介入によってその場を離れ、ついにはグィネヴィアを討ち取った。
- 護堂と『最後の王』ラーマが相打ちになった後、アリスのもとを訪ねて事件のあらましを聞いた後、『最後の王』ラーマへの対処法を即座に思いつき、アリスに話す。その際、日本の正史編纂委員会に『最後の王』の真名を先に探り当てられた事に不機嫌になっていたことをアリスに指摘されていた。
- 魔王内戦ではアイスマンと共に来日し、夜の訪れと共に夫人を襲撃し誘拐しようとする。デリカシーのない発言を繰り返したせいで彼女の怒りに触れ、暴徒に追い回されることになり、通廊に吸い込まれた先では聖天大聖と戦うことになる。その後は本来の力を発揮できない斉天大聖をあと一歩のところまで追い詰めていったが、アイーシャ夫人が再び開けた天空の通廊の吸引力から逃れるため、咄嗟に迷宮を作り出してその中に逃げ込み、中に引き入れたドニに深手を負わせる。その後は護堂と妖精王達との会話を盗み聞き、元々ラーマとの勝負に興味がなかったこともあって並行世界へ行くことを快諾し、未知の冒険に心を躍らせながら並行世界への《妖精の通廊》を通って旅立った。その後は救出に来た護堂と再会したが、自力で次元間移動能力を獲得したこともあって帰還を拒み、まだ並行世界を渡り歩く旅を続けている。
- 作中で判明している権能は《電光石火》、《復讐の女神》、《大迷宮》、《さまよう貪欲》、《無貌の女王》。権能もアレクの性格を反映したかの如く直接的な戦いには向かないものが多く、アリス曰く「ひねくれているうえにまわりくどい力」ばかりで、大半が何かを召喚する形の権能である。アリスの働きにより、カンピオーネの中では公表されている権能の内容が比較的詳細である。
- アイーシャ
- 100年以上生きている最古のカンピオーネの一人。
- アレキサンドリアを拠点としているようで、他にも「妖しき洞窟の女王」、「永遠の美少女」、かつて夫人の尊称を捧げられたためアイーシャ夫人とも称されている。行く先々で奇跡のような治療行為を行うことから「聖女」扱いされることもある。戸籍年齢上は150歳を超えているが、『通廊』の権能で浦島太郎状態を意図的に作り出しているため実年齢はその半分以下とのことで、現在まで10代後半の容貌を保つ。たおやかで優しげな雰囲気を持つ褐色の肌の美少女。自称「永遠の17歳」だが、年齢のことを持ち出されると割と本気で落ち込んでしまう。
- 19世紀半ばのインドに生まれ、孤児だったが勤め先の娘に気に入られ親友としてイギリスへ渡る。渡英後、主家に不幸が続きひょんなことから遺産を相続し、1870年代のトロイア遺跡発見頃に今後を考えるべく旅に出たところギリシアで春の女神ペルセポネを倒し神殺しとなる。その後海のシルクロードを経由し、香港にて善神地蔵菩薩を心ならずも殺めてしまう。そこで難民へ寄付した結果一文無しになり、イギリスに帰還して当時ロンドンに在住していたヴォバン侯爵の邸宅でメイドとして勤務するが、金剛三鈷杵を巡る彼と羅濠教主の戦いに巻き込まれうっかり3人まとめて妖精境へ飛ばされる。邪悪な黒小人たちに騙されて連れて行かれた先で紆余曲折を経てその地を統べる妖精の女王ニアヴを殺めることとなり、地上に帰還してからはザンベジ川上流の呪術師たちの王国で聖女として崇められることとなる。
- 性格はおっとりとして基本的に「いい人」なのだが、天然で自己陶酔的な思考と傍迷惑な権能の数々から聖ラファエロから「カンピオーネの中で一番傍迷惑な人」と呼ばれ、鷹化からも「半日以上一緒にいたくない」と言われている。100年以上隠棲していると言われているが、実際はアストラル界や過去の世界に繋がる「妖精の通廊」を使った旅行により現代の地上にいることが少ないからである。明るく楽天的で、見知らぬ土地にあっても悲観せず、ノリと勢いに任せて大胆すぎるまでの行動力を持って毎度大冒険を繰り広げている。かなりおっちょこちょいであり魅了した人々の願いを安請け負いしてしまうため、過去において何度かその後の歴史に関わるような大事件をうっかり起こしているようだが、「修正力」のために事なきを得ている。そのためアルティオからは「妖しき洞穴より来る騒擾の女王」と評された。純粋な戦闘能力では当代の神殺しの中で最弱とされる[注 34]が、単独で「時代を破壊する」という他のカンピオーネには見られない恐るべき力を持ち、最も特別なトリックスターにしてジョーカーでもある存在で、旧世代の神殺し2人は特にその存在をかなり危険視している。また、旅をしていながらも護堂やドニたち現代のカンピオーネのことを知っている。野次馬根性もあり、護堂の女性関係について興味津々に聞いてきたこともあるが、年齢の割に純情で、艶っぽい場面に遭遇すると動揺してしまう。読書、旅行、刺繍、料理といった趣味を持つが、料理に関しては下手な模様で、メイド歴が長いため家事はそれなりにこなすが4日に一度は大失敗を起こす。本来は戦闘を好まないが、ドニですら「結構えげつない」と評する戦い方[注 35]で多くの神を斃しており、神殺しらしくギャンブラー精神も持ち合わせている。見かけによらず運動神経は抜群で、乗馬の心得がありラクダで砂漠を横断できるほどの体力もある。危険に敏感で生存能力が非常に高いのだが性格的に緊張感を持続できず、複数の敵から命を狙われていることが分かっているのに居酒屋をハシゴしたり風呂を楽しんだりもするなど危機感に欠ける行動が非常に多い。
- ウルディンから自分を守ってくれた護堂には(自分の方が年上だが)「お兄さま」のような存在と認識しているが、異性として少々意識している節もある。かつての雇用主であるヴォバン侯爵についても、「亡くなった妹の面影を重ねているに違いない」と思い込み[注 36](一方的に)「盟友」「お兄さま」と慕っており、彼に向かって「友達が少ない」などと真っ正面から口にするため一部では侯爵を翻弄できる唯一の人間として有名。羅濠からは冷たくあしらわれているものの、懲りずに「お姉さま」と慕う。古代ガリアで知り合ったドニのことは脳天気でポジティブという性格の一致からか馬が合う模様。一方で外見は貴公子なのにまるで女心が分かっていないアレクのことは、「乙女の敵」と本気で不快感を抱くほどに苦手としている。
- 紀元5世紀初頭の古代ガリアで自分を見初めたウルディンと小競り合いしているところを、過去に飛ばされた護堂たちと出会い友人になる。ガリアでは治癒と魅了の権能により「聖女」と呼ばれ、民衆から絶大な支持を得ていた。ウルディンと講和してからは護堂らとドニの元へ向かい、『最後の王』と戦うことになるが、呪力の使いすぎで目を回しているうちに神刀の暴走によって護堂は行方不明となりドニは女神に体を奪われてしまったため、責任感を発揮して権能で魅了したエリカや恵那の助けを借りてフランク族の2代目大族長に就任し、ドニ=アルティオに戦いを挑むことになる。勝利してから半月後に護堂たちと共に現代へと帰還しイタリアの寒村で監視されていたが、パラス・アテナの宣戦布告後にドニと同じく行方をくらまし、オーストリアの別荘に滞在していたヴォバンを訪れて『最後の王』についての情報をもたらした。
- ヴォバンと共に来日してからは秋葉原のメイド喫茶に住み込みで働きながら、なぜかアイドルを目指す決意をしていた。魔王内戦開戦前は唯一非戦を訴えていたが全員から無視されたあげく、魔王内戦が始まるとその性質を危険視されて、ドニと護堂以外のカンピオーネから相次いで襲撃を受ける羽目になり、最終的に護堂に騙されて開いた「天空通廊」によってスミスと神3柱を太古へ送り、間接的に2柱を消滅に追いやった。その後、呪力を消耗しきったところで羅濠教主から経口摂取の術を受けカンピオーネとしての力を喪失してしまうが、プルタルコスの館にて過去の世界で魅了してきた全ての者から呪力を受け取り復活し、護堂に頼まれて並行世界へと通じる《妖精の通廊》を作り出し、自らもそこへ吸い込まれて姿を消した。その後、二年が過ぎても護堂が消息を掴めずにいるが、知らないところでアイーシャがまたとんでもない事をやらかそうとしているのではと危惧されている。
- 所持する権能は《生か死か》、《幸いなる聖者への恩寵》、《妖精郷の通廊》、《女王の呪縛》、《不思議の国の剣》。どの権能にもどこかしら制御不能な一面(自分の意思では発動できないなど)があり、護堂に「『強い』というより『厄介』」と評される力ばかりがそろっている。
過去の神殺し
- ウルディン
- 5世紀の古代ヨーロッパの神殺し。ガリアを中心にゲルマニアやサルマティアにも拠点を持つフン族の族長。その権能から『テュールの剣(つるぎ)』の二つ名で呼ばれ、アルティオからは「騎馬の民と竜をひきいし大王」と評されている。
- 黒髪黒眼のモンゴロイドでどことなく護堂に似た風貌[注 37]で、豪快で勢い任せに突っ走るが気が利き、人を見抜くのも使うのもうまいなど性格的には護堂に酷似している。だが護堂より欲望に忠実で、自分の領地を広げることを望み、4人の妻を持つ上にその他12人の女性を囲っている[注 38]。優れたカリスマ性を持つが自ら王座に就くつもりはなく、自分の名前を与えた誰かを名代に立てて指示している[注 39]。また、エリカによるとアッティラとも何らかの関わりがあると推測されている。戦闘では権能で操った竜の神獣を騎獣とする。また、神殺しにも効果のある東方の猛毒を所持しており、得意とする弓矢と併用する。剣や手斧も獲物として使用する。
- 略奪行為を生業としているためにガリアの人々からは畏れられており、アイーシャ夫人を娶るべくアウグスタ・ラウリカ市を攻めていた。そこで護堂と出会い戦うこととなるも、痛み分けに終わり、非戦協定を結んだ。後にフランク人とアルティオが戦うことになった際にはエリカたちに自分の竜を貸し与え、戦闘の行く末を見守っていた。
- その後は、5世紀半ばごろに再び顕現した『最後の王』に戦いを挑み、敗れて死亡したとみられている。
- 登場した権能は、《竜使い》、《ルドラの矢》、《テュールの剣》。所有する権能はヴォバン侯爵と同じく総じて「戦争向き」と分類されるもの。賢人議会発足前に誕生した神殺しであるため、当然ながら権能の名称はその内容を見た周囲の者たちが便宜的に名付けたものである。
- 『十の命を持つ神殺し』
- ウルディンより古い青銅武器が主流の時代に現れた神殺しで、いくつもの都市国家を征服・統一し大王として君臨していた。活動していた地域は不詳だが、勢力圏内でインド神話の女神が招聘されていることから南アジア周辺を版図としていた模様。『最後の王』を過去最も苦しめた仇敵であり、幾度も熾烈な争いを繰り広げた。完全覚醒した『最後の王』を、相討ちとはいえ倒した数少ない神殺し。「女性に甘く、敵である女神(後の玻璃の媛)にも情けをかけて、それゆえに無用の苦労を背負い込む」という点から、護堂とよく似ていると玻璃の媛に評されている。女を食い物にする《運命》には嫌悪感を抱いているが宿敵ラーマに対して個人的な恨みは特になく、運命に従い続ける彼に説教するなど、むしろ気にかけるそぶりすらあった。
- 権能の詳細は不明だが、『十個の命を持つ魔神』から簒奪したとされる、最大威力の救世の神刀の雷を喰らっても生き残るという、『最後の王』ですら「歴代で最も不死に近い」と言わしめるほどのしぶとさを持ち、有翼の邪龍へと化身する権能も有していた。
まつろわぬ神
- アテナ
- 声 - 小倉唯
- ギリシア神話の智慧と戦いの女神。エリカに呼び出された護堂がローマで出会った銀の髪と闇色の瞳の少女。戦闘時には17、8歳の乙女の姿をとるほか、下半身のみを蛇に変えた半人半蛇の形態をとることもある。カンピオーネと遭遇したのは数百年か数千年ぶりらしく、まつろわぬ身となってからかなりの年数がたっているが、眠っていたのか現れたのは最近とのことである。
- 地中海一帯で崇拝されたアテナ、メデューサ、メティスの成す三相一体の神。正確にはエジプト神話のネイトやカナン神話のアナトをはじめとする様々な神々にも連なる、北アフリカで生まれた「原初のアテナ(オリジナル)」にあたる女神とされている。その本質は『翼ある蛇』で、本来は大地と冥界を支配する地母神であるため闇の神として最高位の力を有し、見た物すべてを石化させ仮初めの死をもたらす呪詛『蛇の邪眼』の権能を持ち、冥府の主として死神の呪詛を扱い、冥府に吹く絶対零度の雪嵐を呼び、闇の領域を広げることで目眩ましや盾とすることなども可能。不死の神性を持つのでたとえ倒されても甦る。大地母神の叡智により天啓や直感という形で多くの叡智や知識を得、相手の性格や神の力を見抜く智慧の女神の権能も持つ。冥府に関係することから派生して闘神としての神格も獲得しており、死神の鎌や弓矢、大刀も扱い、大地から力を得て無双の強力を振るう。さらには蛇を操るのみならず、智慧の象徴であり冥府を行き来するとされたフクロウを従え自らも翼を生やして飛翔できる。
- 位と齢を取り戻すため、神具ゴルゴネイオンを持ち去った護堂を追い東京に現れ、死の呪詛で一度は護堂を死亡させる。東京一帯を闇で覆い光と火を使用不可にしながら虎ノ門へ向かい、ゴルゴネイオンを奪って本来の力を取り戻した後、蘇生した護堂と浜離宮恩賜庭園で対戦し「戦士」と「白馬」で消耗したところでエリカのゴルゴダの言霊を込めた投槍に貫かれ敗れるも止めは刺されず見逃され、以来彼を宿敵ととらえるようになる。その後夏休みでサルデーニャ島を訪れていた護堂と再会し、ペルセウス顕現を察知して彼をナポリの戦場に連れ出す。苦戦する彼に知恵を授け借りを作り、戦闘後に気絶した護堂に口移しで治癒の術をかけた(アニメ版では治癒完了後に自らの厚意で、もう一度キスをしていた。その上、最終話では抱きついた状態でメティスを倒すというヒロイン的な行動をしていた)。
- 9巻ではブルターニュでグィネヴィアとランスロットの計略を察知し、妨害するために交戦するも 聖杯で大地母神の神力を奪われ、即死を免れるための苦肉の策で聖杯そのものを自らの肉体に取り込むもその影響で緩慢な死を待つ状態となり、『最後の王』復活を企む彼らを追って来日する。しかし聖杯の位置を探知できるグィネヴィアを追い詰めきれなかったため、消耗し宿願も果たせず消滅することを危惧して護堂との決着を優先し彼に宣戦布告、上陸した川崎一帯で住人含め視界内の町や海など全ての物を石化させ、護堂を焦らせる作戦をとり『戦士』の対策として神格をアテナとメデューサとに分け戦いを有利に進めるも、グィネヴィアが護堂に授けていた言霊に反応して聖杯が作動したため自らを石化しその働きを食い止めた。その後、護堂により聖杯が一時的に機能停止したことで復活、護堂との交渉で一帯の石化を解く。直後のランスロットの乱入には護堂と共闘して退け、そして仕切りなおしで護堂に勝利するも止めを刺さず、彼に自身の秘術《黒の剱の大法》の知識を与えて消滅した。
- 聖杯に囚われたアテナの魂は、グィネヴィアの死後に新たな魔女王パラス・アテナとして転生する。また最終決戦では、《運命の担い手》によって全盛期の状態で過去から呼び出されているが、宿敵としてこの場は場違いであると考え、自らの意思で戦いを放棄し消滅した。
- メティス
- 声 - 石原夏織
- ギリシア神話に登場する叡智の神。アテナの三位一体の一つでアテナの母とも呼ばれる女神。アニメ版のオリジナルキャラクター。
- ゴルゴネイオンに移ったアテナの一部から形を成して顕現を果たす。アテナとの戦いで彼女の力と記憶を奪い世界の天を飲み込み闇に沈めようとした。これがアニメでプリンセス・アリスが予言した「星なき夜の予言」であった。
- 天空神ゼウスの妻として知られたが実際は彼に強姦されアテナを身ごもり、予言によってその子供が生まれることを恐れたゼウスによって丸呑みにされ殺された。その恨みから彼女はゼウスが治める天を飲み込み闇に沈めようとした。それが「星なき夜」の正体でもあった。
- 幽世から戻った護堂たちの前に現れ天叢雲を取り込みアテナを完全に取り込もうと襲いかかる。足止めとなったエリカ達を倒し富士山に逃げ込んだ護堂とアテナを強襲。アテナを取り込み女神としての姿を取り戻すも、天叢雲劔を奪い返された上、護堂とエリカ達の攻撃で再び分裂。再び取り込みにかかるも記憶と力を取り戻したアテナと護堂の手により葬られ、アテナの中に還った。
- ウルスラグナ
- 声 - 皆川純子
- 古代ペルシアの軍神にしてゾロアスター教の光の神。あらゆる障害を打ち破る者。10の姿に変身して常に勝利する常勝不敗の神。光明と契約の神ミスラに仕える守護者で、インドラやヘラクレス、執金剛とも同体をなし、炎の髭と髪を持つアルメニアの竜殺しの軍神ヴァハグンとは兄弟のような関係にある《鋼》の系譜の神の一柱でもある。王権や民衆、戦士を守護し、旅人を守る風の神の側面を持つ。神殺しの智慧の剣を主力に、竜巻や太陽の焔、雷撃を操る力、支配の言霊、高い戦闘能力に最高レベルの霊視力といった10の化身に由来する多彩な能力を使う[注 40]。
- 黒髪に象牙色の肌の中性的な美少年(『少年』の化身)。勝負事を好む自信家の負けず嫌いで、イタリアで出会った護堂と意気投合する。名前と記憶を失っていたが、その正体は数日前に神王メルカルトとの戦いで相打ちになって『強風』『少年』『戦士』以外の化身を失い、神獣と化して飛んでいった自分の神力を回収していた神だった。当初は人を引き付ける魅力があったが、神力を取り戻す過程でまつろわぬ神としての性質も取り戻した結果、次第に人間味を失っていき闘争のみを求めるようになる。「プロメテウス秘笈」で盗まれた『白馬』を除く9つの化身を統合しメルカルトとの再戦に向かうが、英雄にふさわしくない行動を友人として止めようとした護堂もメルカルトと共に相手にすることになり、メルカルトとの激戦で満身創痍となっていたところに自らの力であった『白馬』の焔に焼かれ、護堂と相打ちとなる形で最期を迎える。護堂による初めての敗北を笑いながら認め、カンピオーネになったことで生き延びた護堂に対して「再び会うまで誰にも負けるな」と言い残して消滅した。
- 最終決戦では《運命の担い手》の権能で召喚されて護堂としばらく戦うが、用意された土俵で因縁の宿敵と戦わされることに我慢できず自ら運命の糸を断ち切り、「黄金の剣」を残し再会を誓って消滅した。
- メルカルト
- 声 - 大友龍三郎
- フェニキアの神王で、地中海最強の神の一柱。真の名はバアルで、本来は古代オリエント(中東)に起源を持つウガリット神族の王。ヘラクレスとも関わりが深い神格。遊牧民が崇めた雨季の嵐を司る天空神で、農耕民族が崇拝する海や大地の象徴たる竜王ヤムを倒す竜狩人。また、豊穣と旱魃をもたらす生命の神でもあり、その脅威の印である数十万匹ものイナゴを下僕として操る。太陽神でもあるが、職掌の広さから属性としては薄いものとなっている。武具はそれぞれが疾風と稲妻を纏う一対の棍棒ヤグルシとアイムール。
- 護堂が初めてイタリアを訪ねた際、ウルスラグナと戦っていた神。ウルスラグナの強敵を求める意思に刺激されて出現した。まつろわぬ神らしくその性質は歪んでおり、ウルスラグナを打倒した後は自分への信仰を失った地中海の住民を洪水によって島ごと滅ぼそうと企んでいた。ウルスラグナとの戦闘で化身の大半を失わせるが自らも黄金の剣の一撃で痛打を受ける。神力を回復させるべく療養していたがウルスラグナに襲撃され、共闘を申し出た護堂と共に辛くも勝利する。その後、サルデーニャ島をはじめとする地中海の島々を嵐で海に沈めようとしたため、ウルスラグナ消滅後に護堂とも戦い習得したばかりの権能に慣れていなかった彼を圧倒して瀕死の重傷を負わせソルントの遺跡群を海に沈めるが、再戦を挑まれ双方共に力尽きるという痛み分けに終わり、メルカルトは肉体を失い神霊の状態でどこかへと飛び去った。護堂や本人曰く、自身を呼び出したウルスラグナの消滅により精神的に張り合いがなくなり、弱くなっていたとのことである。
- 最終決戦では《運命の担い手》の権能で召喚されて護堂やラーマと戦うが、運命の糸を『戦士』で断ち切られて消滅した。
- ペルセウス
- 声 - 神奈延年
- 『東方から来た者』の名を持つ竜蛇殺しの英雄の典型ともいうべき《鋼》の神の一柱で、女神アテナの加護を得て蛇妖メドゥサを退治した神代の英雄。ドニが破壊したヘライオンからあふれ出た水と大地の精気から竜が生み出されたことより、竜(蛇)殺しとしての性質を刺激されナポリのヴェスヴィオ火山から顕現した。見栄えを気にする人物であり、敵や他人にもそれに相応しい立ち居振る舞いを要求するなど人を魅了する美貌を持つ陽気で派手好きな青年。
- 実は海獣ティアマトを倒したバビロニア神話の嵐の神王マルドゥークにルーツを持つ古代ギリシアの英雄そのものというわけではなく、ローマ帝国が未だ多神教だった3世紀初頭に皇帝ヘリオガバルスによって崇められた『東から来る者』で『太陽神』であるギリシア神話のヘリオス(=ソル)、ペルシアのミトラス(=ミスラ)、そしてペルセウスという3つの神格を一つにまとめ上げた新興の英雄神[注 41]。最高司祭であった皇帝が在位4年で殺害され廃れてしまったために真の名は現代ではヨーロッパでも知名度が低いが、かつて神王の座に近づいた偉大な神であることから「不敗なる太陽(ソル・インヴィクトス)」「ヘリオガバルス」など多くの異名を持つ。「東方から来りし者(ペルセウス)」もその一つに過ぎないが、この名を使い続けているのは現代ではこちらの方が通りがいいため。弓矢と大刀の扱いを得意とし、「ペルセウス」の能力としてメドゥサを倒して得た蛇殺しの権能により大蛇を一瞬で塵に変え闇を吹き散らすことができるほか、メドゥサの血から生まれた神獣ペガサスを操り天翔る。さらに太陽神の証である光の輪から放つ後光にはミスラの神力が込められており、この力で主従関係にあるウルスラグナの力を封じ込めることが出来る。また、「太陽」に由来する不死性として、自らの肉体を光に変え致命的なダメージを回避する能力を持つが、神力の消耗が大きく連発はできない。
- 護堂との初戦で『猪』『鳳』を一方的に打ち消して心臓を射貫くことで一度は勝利するが、プレビシート広場に舞台を移しての再戦時にはミスラの神力を『戦士』の言霊で封じられ、リリアナの矢で動きを止められた瞬間に『猪』で広場ごと押し潰されそうになる。すんでのところで『太陽』の神力を使い致命傷を逃れた後、満身創痍ながら再戦へ赴こうとするが、突如現れたサルバトーレ・ドニに挑み斬り殺された(アニメ版ではメティスに殺された)。
- 死後、『最後の王』の元で三英雄の一柱となり、パラス・アテナの元へ馳せ参じる。プシュパカ・ヴィマーナで護堂を迎え撃つが、リリアナが振るう自身の神格に対応させた「ウルスラグナの聖剣」で斬り裂かれて大量の神力を失い敗走した。その後は雲取山の山中で復活したが突如眼前に開いた『通廊』から現れた神殺し達と遭遇、かつての同僚で護堂の権能となったランスロットと一戦交えることになるも新たに空いた通廊の中に吸い込まれ12000年前まで送られてしまい、弱体化のせいで存在を保てなくなって消滅した模様。
- 最終決戦では《運命の担い手》の権能で『過去』から召喚されて護堂やラーマと戦うが、運命の糸を『戦士』で断ち切られて消滅した。
- 速須佐之男命(ハヤスサノオノミコト)
- 古代日本の《鋼》の英雄神。隠居中の元まつろわぬ神。→詳細は「§ スサノオ」を参照
- 斉天大聖・孫悟空(せいてんたいせい・そんごくう)
- 『西遊記』の主役であり、三蔵法師のお供を務めたことでも知られる火眼金睛を持つ猿神。その昔日本に眠る『最後の王』の覚醒を妨げるための竜蛇避けとして、黒衣の僧正らの手により東照大権現の神力をもって日光東照宮神厩舎奥に隠された「西天宮」に封じられた。
- 中華の大英雄である強大な《鋼》の神の一柱として、神殺しを倒すために世界の力を借りる『盟約の大法』を不完全ながらも使いこなして見せた[注 42]。《鋼》としての不死性は蟠桃を喰らい八卦炉で焼かれたことで得た「鉄頭銅身(鋼鉄の肉体)」で、鉄をも砕く『駱駝』の蹴りも全く通じない。如意金箍棒が得物で単純な戦闘能力だけでも護堂が相手取ったまつろわぬ神の中では上位に位置しており、心眼で神速を見切り、自らも黄金の雲を使い神速で飛行できる。また、「孫悟空神話」の集大成ともいうべき『西遊記』の成立過程で仏教、道教、中国シャーマニズム、さまざまな宗教・民間信仰の神霊だけでなく、スキタイの伝説にみえるコーカサスの英雄バトラズに酷似した出自など、剣神以外の要素も取り込んで成立した混淆神ゆえに複雑な神格を持ち、神仙術の極意を得た神通無限の神でもあるため様々な魔術を使いこなすことができ、作中では巨猿型の神獣を召喚し、奇門遁甲や身外身の術、巨大化なども使用した。まつろわぬ神としての性格はひょうきんではあるが、人間を困らせることが大好きでありとにかく派手好きで小悪党に見られることを嫌う。ちなみに「斉天大聖」「美猴王」といった派手な名乗りも自称でしかなく、そのことをペルセウスからは皮肉られている。一時的に利用していたひかりの肉体から分離できなくなったときもそのうちなんとかなるだろうと放っておくなど、楽観的かつ脳天気な性格で護堂はドニと互角の「アホ」と評している。なお、「ラーマーヤナ」の逸話から「尊き聖者と供をする猿」という要素を受け継いでいることからハヌマーンとは兄弟のような間柄ともいえるため、彼が素性を明らかにしていないうちからそれとなく本性に気づいていた。
- 幽世の中では弼馬温(ひつばおん)の位で猿猴神君の名で呼ばれ、金色の体毛を持つ小柄な猿の姿をしており、ひょうきんな性格も変わらず幽世の中で禍払いの姫巫女といろいろ遊んでいたらしい。弼馬温は呪いの名称でもあり、その効力は日本に蛇神・龍神の類が現れ、暴れた場合に禍払いの姫巫女の力を借りて元のまつろわぬ神に戻り、蛇神・龍神の類を倒すというもの。蛇神・龍神の類が死ねばしばらくして呪いの効力が戻り再び封印される。本来まつろわぬ神と対等に戦えるのは神か神殺しのみであるため、甘粕の予想では御老公達の入れ知恵もあったとみている。
- 封印後は3度ほど解放されており、100年ほど前に封印が解かれたときには媛巫女ごと西天宮を吹き飛ばしている。この時は東京に出現した地竜を倒し、余った時間で羅濠と戦ったが制限時間が来て不完全燃焼のまま引き分けた。なお、護堂がアテナを倒せなかった場合には封印が解かれる予定だった。
- 日光に出現したまつろわぬレヴィアタンの気配を感じ取り、禍祓いの媛巫女であるひかりの肉体を乗っ取って復活し地上に顕現、東照宮の境内を石の海に変えることで羅濠教主を一旦その中に封じた。弼馬温の術を破るために猪八戒と沙悟浄を召喚し、男体山の霊気を集めて自分の神気を高め《鋼》の一柱・不動明王の佩刀倶利伽羅剣で弼馬温の術を破り、馴染みすぎていたひかりの肉体から分離できるようになってからも彼女を人質として手中に残すことで護堂を戦闘に引きずり出した。権能で猿に変え自らの軍勢とした日光中の一般市民も『白馬』と『戦士』を融合させた光速の剣によって無力化され、自身も腹を剣で裂かれて体内に隠していたひかりの身柄も奪還されてしまう。アーシェラを喰らい竜蛇の神力で回復するも電磁砲で宇宙まで吹き飛ばされてしまい、義弟たちと合力することで強大な力を得るが、羅濠教主と護堂の手で動きを封じられスミスの「殲滅の焔」で義弟共々その身を焼き滅ぼされる。
- 死後、『最後の王』の元で三英雄の一柱となり、パラス・アテナの元へ馳せ参じ、魔術の神としての本領を発揮しラーマを復活させた。プシュパカ・ヴィマーナで護堂を迎え撃つが、エリカが振るう自身の神格に対応させた「ウルスラグナの聖剣」で斬り裂かれて大量の神力を失い敗走した。その後は雲取山の山中で復活したが突如眼前に開いた『通廊』から現れた神殺し達と遭遇、アレクと戦っていたが新たに空いた通廊の中に吸い込まれて12000年前まで送られてしまい、弱体化のせいで存在を保てなくなって消滅した模様。
- 最終決戦では《運命の担い手》の権能で『過去』から召喚されて護堂やラーマと戦うが、運命の糸を『戦士』で断ち切られて消滅した。
- 猪剛鬣(ちょごうりょう)
- 聖天大聖の義理の二弟で、猪八戒もしくは猪悟能として知られる妖神。もともとは北極紫微大帝に仕える天蓬元帥でもある武神。猪の顔を持ち、黒毛で恰幅のよい体格をしており、戦闘時には身長15mの三面六臂の巨人になり、それぞれの腕で剣・戟・斧・棍棒・弓矢を操る。かなりの女好きで、顕現するや歓楽街へと繰り出そうとし、義兄が依り代にしているひかりにまで欲情するほど。
- 斉天大聖の従属神として顕現。決戦では羅濠と相対するが仁王の掌打により宇宙に吹き飛ばされ敗北。後に斉天大聖と三位一体になり、斉天大聖の騎獣(猪)になる。
- 深沙神(じんしゃしん)
- 聖天大聖の義理の三弟で、沙悟浄として知られる妖神。沙門に修行の道案内をする導者だが、もともとは殺生戒を犯す罪人の神にして捲廉大将の位を持つ水軍神。赤髪を逆立て、9つの髑髏を首飾りとした痩せこけた青黒い肌の悪鬼の姿をとる。四海竜王を率いたこともある水部の神であるため、穢れを清める神力を有する水を自在に操り、鏡や竜を生み出す権能を持つ。義兄達に比べると多少は常識的。
- 斉天大聖の従属神として深沙大将の伝承が残る大谷川から顕現。決戦ではスミスと空中戦を繰り広げるが魔銃で胸を撃たれ敗北。後に斉天大聖と三位一体になり、水竜となって斉天大聖が羽衣のように纏う。
- ヌアダ
- 不敗の剣を振るうダーナ神族(トゥアハ・デ・ダナーン)の王。ゲオルギウスの槍に宿る神霊に体を乗っ取られ、アイルランドから妖精境を経由してアストラル界へとやってきたカンピオーネになる前のドニと交戦する。ゲオルギウスの霊体を滅ぼしたが、己の武器である輝く光の剣を奪い取ったドニに敗れた。
- ミノス
- クレタ伝説の神王にして、ポセイドンともゆかりのある大地と迷宮の神。ギリシア神話にはクレタ島の君主「ミノス王」として登場する。ミノタウロスともいうべき身の丈30メートルはある牛頭の巨人の姿を持つ。迷宮を作り出す権能だけでなく、巨大な牛に化身して圧倒的パワーと神速に達する突進力を振るう。
- クレタ島に顕現してラシッティ高原に大迷宮を創るが、たまたま蚩尤や牛頭天王のように『牛』の属性を持つ《鋼》の軍神が大地の神の発展形なのかをクレタ島まで調べに来ていたアレクを迷宮内に取り込んでしまい、交戦の末地上への再臨を果たすことなく討たれる。その後、グィネヴィアの手で作られた偽者がサルデーニャ島オセロイ湾に顕現したが、あっけなく滅ぼされた。10巻でも、アレクが作り出した魔の海域を打ち破るため再び召喚され、ランスロットの助力で力を最大限に発揮し、自分の体を崩壊させながらも権能を打ち破った。
- ランスロット・デュ・ラック
- 白き甲冑をまとい、白馬に乗った「湖の騎士」。円卓の騎士の中でも最高にして最強の騎士と称されたアーサー王物語における登場人物の原型となった雷鳴と霧を呼ぶ騎士の神[注 43]。1500年以上前に顕現し、かつては『戦いの王』と崇められ、『槍(ランシア)の神』と名乗るまつろわぬ神であったが、『白き女神』から『最後の王』の噂を聞きブリテンの地に渡った際に彼と出会いその家臣となった。『白き女神』がかけた守護者の呪法により、地上にとどまり続けてグィネヴィアを庇護することができるが、その代償で彼女が危機に瀕したときのみ短時間だけしか顕現できないようになった。8年前にサルデーニャ島にてアレクからグィネヴィアを助けに現れ去っていったことから、その存在が確認されることとなる。
- 作中では最高位の魔女たちの守護神であり、最源流の《鋼》の軍神でもある。神速を見切る武芸者で、迅速果敢な戦いを好む。愛馬は空を駆ける神獣で、雷を吸収することで神速を使い球雷を操る。神槍を携えた神速での突撃は「隕石墜落(メテオストライク)」とも呼ばれる最強の龍蛇殺しの技である。《鋼》としての不死性は大祖母である水の女神から借り受けた霧に変じて攻撃を無効化する権能と、装身具を利用して眷属の『鈍色の騎士団』を復活させる権能。その正体はサルマタイの民に信仰された、軍神アーレスの娘にあたるアマゾネスの女王に由来する《鋼》の女神という極めて稀な女騎士。元は狂える武人であったことから、理性や品格を捨てさせ心に眠る欲望を満たせとそそのかし暴走させるという『狂奔』の呪縛による精神操作の権能を持ち、自身の力を封じたり対象に能力の制約を超えた力を発揮させたりすることが可能。ただし伝説に名が登場するのは12世紀に入ってからのことで、ケイ卿・ガウェイン卿・ベディヴィエール卿のようなケルト神話の神々に由来する他の円卓の騎士とは違ってルーツも判然としないことから、一般的には《鋼》ではないただの軍神として認知されている。
- 9巻では魔女たちの守護神から、本来の姿である狂奔と激情を本地とするまつろわぬ《鋼》の軍神に戻ったが、「正しき神」でも「まつろわぬ神」でもない「神の影」という半端な在り方を長く続けたために長期戦ができなくなっており、雷を浴び続けて神力を回復させていた。初代グィネヴィアが残した「救世の神刀」から作られた「神槍エクスカリバー」を振るい、アテナの命を『魔導の聖杯』で奪う。グィネヴィアとともに来日し、アテナと護堂と戦ったがグィネヴィアがエリカに敗れ、自身の神力も切れたことで停戦する。この戦いで護堂を愚直な戦いを挑める相手と認め、彼を「我が運命」と見定める。アレクが浮島を浮上させたことを知ると『最後の王』復活のために自ら記憶と神力を封じて町をさまよい、遭遇した護堂の一瞬の隙をついて彼に呪縛をかけ[注 44]、一時的に同盟関係を作る。その後、アレクの迷宮を打ち破るために消耗した力を回復させ、正気に戻った護堂と死闘をした末に討たれたが、グィネヴィアの介入で『鏃の円盤』に封じられたため護堂の権能にはならなかった。
- 長い年月の中で自身の神話そのものが変質しすぎたことで、次に地上に顕現しても全く別の男の軍神が顕現すると予測されていたが、『最後の王』の元で三英雄の一柱となり、パラス・アテナの元へ馳せ参じる。本心では戦いを倦む王の命に従い自らも神殺したちと戦うのが本当に正しいのかということと、正々堂々の勝負で勝利を得た護堂の力になれなかったこととで悩んでいたが、彼がラーマの宿命をたたき壊すと宣言したことで迷いを吹っ切り、2つの望みを同時に叶えるために『最後の王』をあえて裏切り、護堂を新たな主と定めてプシュパカ・ヴィマーナを破壊する。力を使い果たした後は護堂の権能の一つとなることを決め、記憶を保ったまま守護騎士(守護霊)として仕える道を選び、ペルセウス戦やヴォバン戦で一騎当千の活躍を見せる。
- グウェンフィファル
- 『白き女神』あるいは『智慧の女王』と呼ばれ、サルマタイの民に崇拝された大地母神。『最後の王』のために魔導の聖杯を生み出し、神祖グィネヴィアとして転生する。→詳細は「§ グィネヴィア」を参照
- サトゥルヌス
- ローマ神話の大地に属する豊穣と農耕の神。太陽神に仕える従属神で、主神ユピテルによって囚われた祝祭の神でもある。サトゥルナリアの冠という神具によって生み出され、そこから力を得て何度でも再生することができる。身分を逆転させ秩序を乱す群衆操作の権能を持つ。また巨大な蔓、爆発する黒い果実、黄色い毒の粉を操り、手にした音叉状の木杖からは破裂すると衝撃波を放つ緑色の光球を発射する。
- かつてローマ帝国の版図であったアナトリア半島にて138年前に顕現し、トルコの人々に狂宴を永遠に続けさせるという大混乱を引き起こすが、羅濠教主によって倒される。12巻にてかつての主人である神霊『灰色の者』と共に来日し、ヤドリギ状の神木という不完全な形で葛西臨海公園沖に顕現。神霊の協力を受けて冬至の完全復活に向け力を蓄えるが、復活目前で完全に解呪した護堂達に戦いを挑まれ、身長30mの木人形型の半神半木状態で「棺」から生み出され彼らを迎え撃つ。夜が明ければ完全に蘇るはずだったが、一時的にとはいえ仲間たちと疎遠にされたために苛立ちを見せた護堂には神霊の懇願も聞き入れられず、かつての悪行を日本で再び起こさないように神になる前に倒されることとなり「黄金の剣」で神具を封じられたうえで『白馬』の権能により大観覧車ごと焼き尽くされて蒸発した。
- キルケー
- 様々な魔術を使う古代ギリシアの魔女神。太陽神ヘリオスの娘であり「暁の女神」とも称される。スミレ色の瞳を持つ銀髪の美少女の姿をとる。英雄オデュッセウスの愛人で彼をたぶらかして一年の間篭絡した。自分が住むアイアイエ島にやって来た人間を魔術で動物に変えていた逸話で知られ、魔力と美貌で英雄を虜にして彼らの目的を妨害する性質を持つ。
- 女神の愛を受けるにふさわしい勇士を見初め愛する性分があり一度愛すると一途な想いを見せるが、たとえ拒まれてもストーカーのように執拗に求愛をし、言動とは裏腹に手足をもいで自分の愛蔵品にしようとするなど行動はまつろわぬ神らしくひどく歪んでいる。
- 聖天大聖に比肩するほどの魔術の使い手であり、大海蛇・神鵰・キュクロプスといった多様な神獣の使役と強化、鴆毒の呪詛、植物の生成、灼熱の業火や稲妻、『白馬』に匹敵する威力を持つ黄金色の太陽フレア、といった数多くの攻撃手段を持つ。『英雄拘束』という英雄を捕らえ虜にすることによりその権能を奪い取り力を削ぐ権能を有しており、例としてオデュッセウスから奪った力を神霊「弓の御霊」として操る。この権能は相手が偉大な英雄であるほどその影響を受けやすいという特徴があり、護堂はウルスラグナの化身のうち7割を奪われてしまった。奪った力を行使する際にはキルケー自身が扱いやすいよう変化するのか、ウルスラグナの化身は神獣として使役された。
- 今まで護堂が出会った剛直な神々と違い「女」であることを強調し、自らは前線に出ずに神獣を使役したり、祐理をかばうことを見越して毒で護堂に攻撃をしたりなど、護堂から「これまでで一番難しい敵」と呼ばれた。なお、アレクの目的を承知していながら一緒にいる間はそのことを黙っており、護堂もそのしたたかさに彼女の恐ろしさを再認識したほど。
- 3年前、『最後の王』の正体を調査するアレクの手によって休眠から復活する。その際アレクに渡された『天之逆鉾』の亜種に当たる神具によってコタキナバル沖に島を生み出した。自らを復活させたアレクを初めに見初めるもその求愛に耐えかねたアレクによって戦闘の末に迷宮の権能に閉じ込められ逃げられてしまう。その際に深手を負い、両腕と腰から下の下半身は真鍮で補っている。
- それから3年間は自分たちが作った島で暮らしていたが、日本での護堂の数々の戦いの気配を察知し自らの神獣たちに護堂と戦わせた結果、彼を勇士として愛するようになり自らの虜にしようとする。自身の本拠地へと向かう護堂一行をアレクと作った島へ誘拐し、『英雄拘束』の権能で護堂から奪ったウルスラグナの化身で苦しめたが暴走する『黒の劔』で魔境の島を消滅させられ一時撤退する。漂流した護堂と祐里を自身の聖域である小島へ連れ去り最終決戦に臨み、自らの命を呪縛して呼び出したオデュッセウスによって彼を追い詰めるも力及ばず敗北して致命傷を負う。その後は女神の矜持として幽世で生きながらえることを拒み、死の間際にアレクへの意趣返しと護堂への愛の証として『最後の王』の名のヒントを伝える。そして愛した男の甘さを心配してその力になることを望み、もともと糧とする命がアレクにより半分程になっていたために権能というには些細なものとなったが、最期に霊視した護堂が将来得るとされる武器を扱うための叡智《暁の秘録》を残して息絶えた。
- 最終決戦では《運命の担い手》の権能で召喚されて、護堂やラーマと戦って『戦士』を奪い取るが、アテナの説得でかつての自分が護堂と紡いだ縁を思い出し、化身を変換して自ら消滅していった。
- オデュッセウス
- 叙情詩『オデュッセイア』の主人公で、大神ゼウスを祖先に持つトロヤを攻め滅ぼした流浪の定めを背負う膂力無双にして機略縦横[注 45]の英雄。《鋼》の属性を持たないため不死ではないが不撓不屈の性質を持つためかなりタフで、護堂と交戦した際には肉体の大部分を失いながらも立ちあがって見せた。身長5m程で、青銅の鎧兜と鉄弓、鉄箭で武装した戦士の姿で顕現する。青白い光の箭を流星雨のように降り注がせたり、手の指から直接鉄箭を放つことができるほか、鉄弓からは青白い光線をレーザーのように照射する。
- キルケーとは対等な関係性であるが、オデュッセウス自身の似姿である神霊「弓の御霊」を核としてキルケーが命を対価にする呪法を使用したことで彼女に従う従属神(同盟神)の形で召喚された。キルケーの盾となって弾幕を張っていたがエリカ達の合流を許してしまい、攻撃を防がれている間に護堂の『白馬』の焔と恵那の「風の劍」で両腕を失う。それでもなお戦意を見せていたが、自身の左肩ごと焔で穿たれたキルケーが致命傷を負ってしまったことで存在を維持しきれなくなり、死ぬことなく肉体が薄れて消え去った。
- アレクからは「最後の王」候補の一人とされたものの、調査中にキルケ-と諍いを起こしたために検証が不十分なまま終了してしまい(確率としては35%)、以来それ以上の確証を得ることができずにいたが、後に顕現した際にその可能性は否定されることとなった。
- アルティオ
- 『熊』を意味する名を持つケルト神話の女神。ヘルヴェチカ族に崇拝された大地母神にして戦いの女神。熊の毛皮をまとった女性の姿で西暦406年のガリアに顕現した。毒の霧や呪いを操り、数体の神獣を含む多数の大型熊を眷属として使役する。
- フランク人に滅ぼされたケルト人の呪いによって呼び出され、フランク人達を殲滅しようとしたがこの時代に漂流したドニと遭遇し深手を負う。息子である英雄神を招聘して再戦を挑もうとしていたが、時を超え神殺しが6人集まったことを知ると予定を変更して『最後の王』を召喚することを決める。召喚には成功したが命の一部しか捧げなかったせいで顕現が不完全なものとなり、全力を発揮できなかった王が護堂に敗れたのを見て、自らの命をすべて神刀に捧げることにより神刀の力を引き出し暴走させなおも魔王殲滅を狙う。肉体が消滅し霊体のみの存在になるが、暴走を止めるため神刀に特攻し神力の爆発を至近距離で受け仮死状態となっていたドニの肉体を乗っ取り、再びフランク人を攻め立てる。その後、護堂やアイーシャと戦い劣勢になるも、意識を取り戻したドニと共闘し、彼が護堂を、神刀が発する「雷の蛇」がアイーシャの顕身を足止めしているうちに戦場一帯の大地の力を吸い取り、それを利用して再び『最後の王』を呼び出して消滅した。
- ラーマ
- グィネヴィアが転生を繰り返し、捜し続けてきた最強の《鋼》。叙情詩『ラーマーヤナ』の主人公でもあるコーサラ国の王子として生を受けた古代インドにおける最高神ヴィシュヌの転生体で、「魔王殲滅の運命」を託され様々な神の加護を受けた英雄神。別名ラーマチャンドラ。5世紀頃には『勇者(アルトス)』を名乗って顕現し、「この世の最後に顕れる王」という伝承を持つことから現代では『最後の王』と呼ばれている。幾人ものカンピオーネが出現し「この世の最後」のような世情となるとこの世に顕現し、全てのカンピオーネを抹殺すると再びカンピオーネが現れるまで眠り続け、眠りについた場所には、朽ちた救世の神刀が竜骨として残される。作中ではアーサー王の直接のモデルとなっている。その真名は禁忌とされ神々の手で厳重に秘匿されており、「虚空の記憶」にも封印がかけられているほか、カンピオーネの味方であるパンドラでもその名を話すことは許されていない。
- 休眠から目覚めると流浪の旅をして、大地から力を得て完全覚醒を遂げるという性質を持つため、流浪の旅を重ねるたびにその力を増す。王の力、救世の神刀の力の源は大地の精気であり、最も望ましいのは母なる大地の女神が宿す命と『最後の王』自らの命である。そして多くの地母神の命を吸い上げ、同時に多くの神祖を生み出してきた。大地から搾取する権能に関しては他の軍神を凌駕していたといわれ、完全覚醒後に大地に与える影響も他の軍神とは遙かに甚大なものとなる。加えて、女神や神祖の居場所を察知する能力を持つ。完全覚醒前は保有する権能の多くを使うことができないが、剣術・格闘技・弓矢の技だけでも十分なほどの実力を持つ。
- カンピオーネとの戦いで数的不利に陥ると、『剣神の宿星』に祈願し魔王を滅し世界を救済する力を天地と星々から引き出す「盟約の大法」を行使することができ、この権能を使った時の力は(世界中に存在するカンピオーネの数にもよるが)全ての平行世界を合わせても最上位クラスであるとも言われている。ただし、完全覚醒する前にこの権能を発動できるのは、盟約を批准した神々が神殺しの手で殺害された場合に限られる。羅刹王ラーヴァナを倒すために授けられた武器の集合体である「救世の神刀」が発生させる《神刀の曼荼羅》からエネルギーの供給を受けることで雷神インドラから賜った最強の武器である「弓と矢筒」の封印を解くことができる。矢筒から際限なく取り出される矢には、最低でも市町村が一つ軽く吹き飛ぶほどの威力があり着弾時に爆発と衝撃波を発生させる。矢の一本一本には様々な神の神力が込められており、インドラ、火神アグニ、太陽神スーリヤ、破壊神シヴァなどインド神話に登場する神々だけでなく、「世界と神々を味方につけた勇者」としての力で他の神話体系の神々からも願っただけで即座に神力を借り受け使用できる[注 46]という特徴がある。また、神具『鏃の円盤』を使った剣神招来の権能も持つ。さらに、ラーヴァナ討伐の報酬として財宝神クベーラから授かった直径15〜16kmはあろうかという都市型空中船プシュパカ・ヴィマーナを召喚でき、天の戦車(ヴィマーナ)に乗って空を駆ける。なお全てのヴィマーナには強力な武装が搭載されている[注 47]が、ラーマ自身の権能の方がはるかに強力であるため使用されない。
- 《鋼》の不死性は「救世の神刀」が無事である限り何度でも復活を遂げることが可能というもので、神刀が朽ちていてもしかるべき手順を経れば再復活を遂げることができる。この権能により、たとえ敗北しても地上に魔王がいる限り数年のうちに復活することができる。さらに覚醒状態では致命的な攻撃を受けて自らの身に危険が迫った時に、「救世の神刀とのつながりを強め自身を生ける神刀と化す」ことで全身から放電して敵を迎撃することもできる。この状態になると攻撃に精彩を欠くようになるものの、近づく者を自動的に排除するようになるため格闘戦を挑むのも難しい。
- 「海を超える征服者」という特性は、時に倒す対象を魔王から鬼や竜などへと変化させながら、仏教を介してアジア圏を中心に大陸の東西に伝播している。キルケーが語った「(ギリシア神話でいう)アルゴー号の系譜に属する」という事実、霊視による「むかしむかし、あるところに」という日本語の言葉から示唆されるおとぎ話に登場する英雄の代表格である桃太郎、13巻にてアレクが予測した「オデュッセウスの系譜の前後に関わりを持ち」「各地を流浪し、時に弓矢で武勇を示す汎ユーラシア的な英雄で鋼の属性を併せ持つ混交種(ハイブリッド)な人物」という3つの事柄は前述の特性に影響を受けたものである。
- 青白い髪を持った白皙の少年の姿で現れる[4]。「人間として誕生する英雄」ということもあってまつろわぬ神としての精神的な歪みは非常に少なく、それでも生じてしまうわずかな歪みも弟が引き受けていることから『真なる神』に極めて近い「菩薩の化身」と称された高潔な人格を保ち続けている。まつろわぬ軍神としては異例なほど温厚かつ誠実な性格でコミュニケーション能力も高く、普通のまつろわぬ神なら一顧だにしない一般市民とも楽しげに語らい、魅了の権能だけでなく「人間的」な魅力もあって容易に人々の輪に溶け込む。はるか昔には、神殺しを斃すため人間の王のもとで軍を率いたこともあった。
- 一方で大地を傷つける《鋼》の中でもその性質を最も強く体現する者であるとされることから、完全覚醒すると神刀を使う度に自分の周囲に溶鉱炉に匹敵する高熱を生じ、加えて強風と大規模な温暖化が発生、草木の立ち枯れが起こるのみならず火山活動が世界各地で活発化してまさしく「世界の終り」のごとき様相を呈するようになり、さらに大地と縁の深い神祖の血を濃く受け継ぐ者たちの体調にも悪影響を与える。自然や人民が傷つくことを嫌っているにもかかわらず全力で戦う度に大きな被害を出し自らを慕う者たちの命までをも奪ってしまうために、剣神でありながら神殺しや《運命》といった自らを戦いに駆り立てる全ての事象を倦み、逆縁もない相手と殺し合うことに疑問を持っているが、《運命》に選ばれた戦士であるが故に与えられた魔王殲滅の宿命に抗えない。自分でも1000年間抵抗して眠り続けていたが、結局目醒めさせられて戦わなければならなくなったことで諦念に捕らわれている。そのためありとあらゆる障害を乗り越え《運命》にさえ抗ってみせる神殺し達に対しては羨望と敬意の念を抱いている。
- 本人の性格に反して所有する権能のほとんどが攻撃的なものであるため攻勢に回っているうちはほぼ無敵であるが、防御に回るとわずかだが隙が出るという弱点がある。そのため「最強」とされてはいるものの決して「無敵」や「不敗」の存在というわけではなく、歴史上何度か敗れていることが確認されている。ただし神刀が破壊されたことはないため、太古に顕現して以来一度も完全な死を迎えたことはない。
- 西暦458年にガリアで顕現し、その後に幾人もの魔王を殺害しブリテンの地で眠りについたと語られている。唐代に当時の神殺しを追って日本列島に渡ったことが確認されており、1000年前から日本の静止軌道上に浮かぶ島に「刃渡り100cmほどの両刃の剛剣」という形で封印され続けている。その影響で、木更津付近には媛巫女の強力な記憶操作によって改竄しているにもかかわらず、数十年周期で「弟橘比売が入水した際に抱いた太刀が、陸でも海でもない浮島に流れ着いた」という旨の伝承が突如として伝えられるようになる。
- 14巻で『通廊』により3人の神殺しが過去に飛んだことで、本来の歴史よりも50年ほど早い西暦406年にアルティオの嘆願を受け彼女の息子の名代として顕現する。不完全な顕現だったために自分が持つ力のほとんどを十分に振るうことができなかったにも関わらず卓越した剣術と神刀の力だけで護堂を追い詰めていったが、天叢雲に神刀の力を奪われたことに驚いた隙に彼の起死回生の反撃を受けて敗北する。その後、アルティオの死に際して再度顕現、今回も不完全でありながら一度だけ魔王殲滅の力を使うことができる状態だったが、護堂との壮絶な打ち合いの末に敗北し眠りについた。その後は元の歴史と同じく50年後に復活して当時の魔王全員を殲滅し、再び長い眠りにつく。
- 17巻で最後の顕現から1000年の時を経て復活、南房総の山中に降り立ち実に1500年以上ぶりに護堂と再会する。復活直後にパラス・アテナの呪力を得て完全覚醒を果たしており、羅濠教主を交えての魔王二人を相手にした戦いでも圧倒し一時は敗走させる。その後は戦闘で生じた熱を冷ますためしばらく彷徨っていた。自らの真名を解き明かした護堂との戦いではハヌマーンと分断され《神刀の曼荼羅》をウルスラグナの聖剣で切り刻まれたにも関わらず戦局を有利に進めていたが、三英雄のうち2柱が敗走し、ランスロットの裏切りによって部下が時間を稼いでいる間に作り直した《神刀の曼荼羅》ごとプシュパカ・ヴィマーナを撃沈される。「弓と矢筒」を失ってなお雷撃と剣技だけで護堂に致命傷を与えるが、恵那が手にしたアテナを宿す刃により神力を奪われ強制的に覚醒状態を解除されて、弱体化したところに護堂の必殺の一撃を喰らい三度目の敗北を喫した。
- 最終決戦では5度目となる護堂との戦いで敗北するも、一戦交えたことで彼からの和解を受け入れて友人となる。その決断をよしとしない《運命の担い手》との戦いでは、権能で召喚される神々を迎え撃ち、護堂の手で救世主としての宿命から解放され、弟ラクシュマナと共に護堂に別れを告げて、どこかへ去って行った。
- ハヌマーン
- 『最後の王』ラーマの盟友である古代インドの天翔る猿神。17巻まで『風の王』という仮称で呼ばれていた。風神ヴァーユの息子であり、風の権能と《鋼》の軍神としての力を併せ持ったハイブリッドの神格で、風を自在に操るのみならず風そのものに化身し、神速を行使できる。神々から自分の死ぬ時を自分で決める権利を与えられたこともあって非常にしぶとく、《鋼》の不死性として鋼鉄の肉体を持ち、先述の風化による攻撃無効化も不死性の一つにあたる。さらに自分の体を真っ二つにされても生存し、上半身と下半身が分断されたままでも戦闘を続行できる。慇懃な口調で話す白い体毛に包まれた身長180cm程の猿の姿で、剛力と鋼の五体を使った拳法を得意とし、さらには巨大化能力まで持つ。ただし初登場時から2000年近く自らの姿から『最後の王』の正体が明らかにならないように、白い布と革鎧を身にまとい、紅い仮面で顔を隠して無言を貫き、武器として大刀を振るっていた。ラーマの盟友であると同時に猿王スグリーヴァに仕える将軍でもあるため、曼荼羅を展開して1000匹もの猿の軍勢を召喚する能力も有する。ラーヴァナに攫われたシーターを見つけ出した伝説から探索能力にも秀でていると言われている。なお猿神である斉天大聖と同類とされることは好まず、自身の逸話の要素を受け継いだ未熟な原型に由来するおそろしく遠い親戚でしかないと見ており「単細胞どの」などと呼んでいる。
- アルティオに呼ばれて西暦406年のガリアに現れ、ドニと激しい戦闘を繰り広げるが、王が敗れると姿をくらました。再び顕現した王と戦う護堂の前に現れるが、『アルテミスの矢』の一撃を受け妨害に失敗する。
- 現代において、パラス・アテナの招聘を受けその姿を現した。そして『最後の王』が眠る浮島に到達し、彼を1000年ぶりに復活させる。主の正体が明かされると同時に、自らの素性も明らかとなった。羅濠教主と激しい肉弾戦を繰り広げるが、主の敗北を悟ると撤退し遺された「救世の神刀」のもとに現れた。その後は雲取山の山中で待機していたが、突如眼前に開いた『通廊』から現れた神殺し達と遭遇、巨大化して魔鳥と化したスミスと戦うことになるも、新たに開いた天空通廊の中に吸い込まれ12000年前へと送られてしまったが、過酷な時間の旅[注 48]に耐え抜いて何とか現代へと帰還を果たし、ラクシュマナが宿った救世の神刀を背負ってアストラル界で魔王内戦の勝者となった護堂の前に現れ交戦するが、アリスの助けで護堂が転移したために取り逃がした。その後、自分がラーマの戦いに横槍を入れないで済むようにあえて先に護堂に戦いを挑み、ランスロットと『猪』の突撃で体に穴を開けられたまま、月まで吹き飛ばされ敗北し消滅した。護堂は時間旅行を休眠して耐えたことでアイデンティティと闘争心が摩耗しており、そのために最後の粘りが出来なかったのではないかと考えている。
- ラクシュマナ
- ラーマの次弟である従属神にしてラーマを影ながら護衛する分身。兄に代わりまつろわぬ神としての歪みと狂気を一身に引き受けているため、褐色の肌以外の容姿は兄と瓜二つでありながら、その表情は悪意に歪んでいる。《鋼》の一柱であり、不死性として灰となった肉体から復活する能力を持つ。その力はあくまで従属神の域を出ないが、《神刀の曼荼羅》をはじめとする兄の武具や『盟約の大法』を使用できる。また神速で動く相手をも捕らえる分銅付きの縄『蛇の縛縄(ナーガバーシャ)』を使いこなす。《運命》に選ばれた兄のような絶大な力はないものの、アイーシャと同じく修正力を利用した攻撃の無効化が可能。
- 兄に使命を全うさせるため、その意に沿わぬ行動をとることがある。かつては『十個の命を持つ魔王』にかくまわれていた兄嫁シーターを殺害しており、現代でも反旗を翻したパラス・アテナとの尋常な勝負を望む兄の意向を無視して完全覚醒を優先させ、聖杯を強制的に起動することにより彼女に致命傷を与えている。ラーマが護堂に敗れてからは救世の神刀と一体化し、突如現れた神殺し達の相手を配下に任せて雲取山の地中に消えた。機を見て最も消耗していた護堂を地中へ引きずり込もうとしたが失敗、そのまま反撃に転じられたため撤退する。しばらくして護堂とスミスに再び襲いかかったが、駆けつけた恵那により痛打を浴びせられ、またしても撤退に追い込まれた。そして、アストラル界で魔王内戦の勝者となった護堂の前にハヌマーンが背負った救世の神刀に宿った状態で三度現れる。
- 最終決戦では、護堂を引きずり出すために兄から借りた焔の矢と凍土の矢でエリカ達に瀕死の重傷を負わせるが、駆けつけた護堂の『白馬』に焼かれて重傷を負い撤退する。その後、兄ラーマが《運命の担い手》から解放されると同時に自身も歪みから解放され、兄を救った護堂に感謝の言葉を告げて、兄ラーマと共にどこかへと旅立った。
- シーター
- 「ラーマーヤナ」のヒロインで、ラーマ王子の妻に当たる大地母神。遥か昔、現世に招聘された際に義弟ラクシュマナに殺害され、「玻璃の媛君」と呼ばれる神祖として転生する。→詳細は「§ 玻璃の媛君」を参照
- ニアヴ
- ケルト神話に登場する常若の国の妖精女王。恋人であるフィアナ騎士団のオシーンを常若の国へ連れてくるために時間を旅させる権能を使ったことで知られる。
- 150年ほど前までアストラル界を統べる妖精王の一柱として君臨していた。大英帝国にあったヴォバン邸にて3人の神殺しが激突した余波により、ヴォバン侯爵の従僕による実験台として拘束されていた邪悪な黒小人たちが解放されたことが遠因となり、彼らによって上司への生贄として連れられてきたアイーシャと戦うも敗北し死亡した。
- アル・シャイターン
- 中東にルーツを持つ魔神族の王にして12柱の妖精王の盟主。尖り耳と真っ赤な肌が特徴的で、皇帝の衣装に身を包んだ屈強な大男の姿を取る。
- 魔王内戦ではスミスに連れられて評議場にやって来た護堂に対してアストラル界に隠棲する者たちの総意を伝え、彼がラーマとできうる限り対等な条件で戦えるよう他のカンピオーネ達を《運命》の権能が及ばない平行世界へ追放する手助けをした。
- 《運命の担い手》
- 本作の黒幕で、「人は大いなる神や大自然の前になすすべなく翻弄されるべし。宇宙のはじまりから終わりまで、あるべきように物事が進み、つつがなく歴史の糸が紡がれるべし」という意思を持つ。その正体は超古代の印欧語族によって発明・拡散された、ギリシャ神話の運命の三女神モイライ(長女で『創造』担当の糸の紡ぎ手クローソー・次女で『維持』担当の糸の長さの決定者ラキシス・三女で『破壊』担当の糸を切るアトロポス)、あるいはより古い単独の運命神モイラ、ローマ神話におけるノナ・デキマ・モルタ、北欧神話におけるウルド・ベルダンディー・スクルド、ケルト神話におけるモリガン・ヴァハ・バズヴ、さらにはインド神話で『時間』に関わるシヴァの3柱の妻パールヴァティー・カーリー・ドゥルガーといった、「運命の三女神」という概念の原型となった時間と運命を司る最源流の運命神と言うべき存在。外見は7,8歳程度の金髪の少女。
- 普段は「運命神の領域」で運命の糸を紡いで、織物を仕立てている。この世界の理に抗い「あの世とこの世の均衡」を崩すとびきりのイレギュラーである神殺したちの存在を決して認めず、彼らを排除するため「魔王殲滅の運命」を託した戦士としてラーマ王子を遣わしている。神殺しのみならず幾柱かの神々もこの存在に対して反感を持っており、アストラル界に隠棲した者たちの多くは《運命》の意思に異を唱える者たちであるが、それでも最低限のしがらみがあるため、表だって刃向かうことは出来ないという。「修正力」を初めとした強大で無慈悲な権能を持つが、自らの手で神殺しを直接殺すことは出来ないなど決して全能の存在ではなく、その力はあくまでこの世界の時間軸にのみ作用する物であるため、異なる時間軸の平行世界へと移動した者までは影響下に置くことが出来ない。巨大な運命を管轄することに特化しているため、直接の戦闘力は運命の糸を裁つための刃物を無数に投げつける程度だが、時間を支配する権能によって相手に逆縁を持つ神を最盛期の状態で呼び寄せ、運命の糸によって使役するという能力を持つ。ただし運命の糸を「智慧の剣」で切断されると神は消滅してしまう上に、召喚対象に協力を拒否されることもある。また、運命の糸を紡いでいるのは自分自身だが、運命の糸そのものを生み出しているわけではない。
- 最終決戦にてラーマが自分を裏切ったことで自ら戦いの場に現れ、神々の召喚によって護堂とラーマを倒そうとする。しかし、護堂が逆縁だけでなく順縁をも結ぶという特殊な神殺しであったことから計画は失敗し、「白馬」によってこれまで織り上げてきた「運命」を概念化した織物ごと焼き滅ぼされて消滅した。
- ラーヴァナ
- 叙情詩『ラーマーヤナ』に登場する最後の敵。10の頭と20本の腕を持ち、20種類の武器を操る羅刹王。黄金の鎧を纏う異形の巨人の姿を持つ。
- 最終決戦においてラーマに逆縁を持つ相手として《運命の担い手》により召喚され、ラーマと戦いを繰り広げたが、護堂の『戦士』で運命の糸を断ち切られて消滅した。
- たたり神
- 40年ほど前、能登に出現した神。当時は現地の人々を半年で20人弱も呪い殺すという事件を起こすが、旅行に来ていた一郎たちに同行していた日本留学時代のルクレチアにより神具「プロメテウス秘笈」に封印される。弱い神格だったおかげでなんとか倒すことはできたものの、それでも1日がかりで神と話し込み隙を見つけなければならなかったほどにしぶとい相手だった。
- その後、最終決戦の2年半後に復活。霊視を得たルクレチアの情報提供で一時的に秘笈の保管場所だった草薙家を襲うことが予測されたため、正史編纂委員会が警護に当たることになる。包囲を破って草薙本家の者でまだ近所にいた静花のことを狙うが、京都から「強風」で駆けつけた護堂と天叢雲の力によって撃破された。
真なる神
- パンドラ
- 声 - 巽悠衣子
- ギリシア神話に登場する不死者エピメテウスの妻で、あらゆる災厄と一掴みの希望を与える魔女にして「全てを与える女」。神話では鍛冶神ヘパイストスに創造され神々からあらゆる「女の魅力」を贈られた女でゼウスから贈られた箱を開け災厄を地上にもたらした悪女とされるが、その本質はオリュンポスの神々が信仰される以前から存在していた「神と人間達にあらゆる恩寵を授ける大地の女神」である。
- その権能を利用してかつて夫が発見した神具「強奪の円環」を改造し「簒奪の円環」を作り上げた。神と人のいる所に顕現し、神を殺した者に神を生贄にすることで初めて成立する儀式を行いカンピオーネへと転生させ、その称号を与えるもので、「カンピオーネの元締めにして支援者」[5]にあたる。カンピオーネが神を殺したことによる更なる権能簒奪も、パンドラの儀式によって行われている。
- 幼く見えるものの蠱惑的な容姿をしている。性格と口調はかなり軽いがこれはあくまで我が子に対する態度であり、ただの人間には歯牙にもかけない冷徹な側面も持っている。まつろわぬ神ではないきちんとした女神なので神殺しが新たに生まれた時などを除いてあまり現世に出てくることはないが、しばしば生と不死の境界で死にかけたカンピオーネと会話している模様。ただし神殺しになるような者が魂の浄化が進んで悟りを開けるレベルに至っていることはまずないため、彼女と会話した記憶を現世で思い出すことはできない。自分たちの子供を殺す『最後の王』ラーマには強い敵対心を持っており、神なので自ら進んで彼の名を明かすことはできないが、生と不死の境界ではカンピオーネ達にいつも発破を掛けている。
- 魔王内戦の直前には、アストラル界の妖精王たちを訪問して回っているスミスの前に虫に宿った状態で現れて、権能によって自分との会話を唯一記憶していられるスミスに発破を掛けた。そして、魔王内戦を勝ち抜き「運命神の領域」に至った護堂と相まみえ、《運命の担い手》に勝利した暁には特別に好きな権能を奪うというごほうびを与えることを約束した。
- 顕聖二郎真君(けんせいじろうしんくん)
- 中国の武神でかつて天界で悪事を働いた孫悟空を退治した英雄。道教における治水を司り怪物退治を行う神格で、三尖刀や弾弓で武装し変化の術と心眼を身につけた武功を見せるほか、額の第3の目を輝かせて敵の呪力を奪うことができる。「天帝の甥でありながら下界を彷徨い戦う」というエピソードを持ち、「高貴なる流浪の英雄の相」という最後の王と同じ相を持つことからスサノオ(ご老公)に護堂の相手を頼まれた。彼の力の宿った符が弼馬温の力の核となっている。斉天大聖を倒した護堂に興味を持ち、護堂が最後の王を倒せる器か測るというスサノオの思惑もあり、討つべき魔王として護堂に戦いを挑む。不死の領域から地上に分身を飛ばして操っており、「まつろわぬ神」ではなく「真なる神」として地上に現れた初めての神でもあった。自分自身を「白馬」の標的として召喚するという護堂の立ち回りを面白く感じわざと受ける形で決着。その後幽世で「いつか縁があればじっくり戦いたい」とスサノオにこぼし、不死の領域へ帰っていった。
- プロメテウス
- ギリシア神話に登場するティタン神族の末裔で、エピメテウスの兄でありパンドラの義兄。「先に考える者」の名を持つ先見の明に満ちた賢人で、知識と叡智にまつわる権能を持つ。神を欺くトリックスターであり、人を導く偸盗の英雄。人間に天界から盗んだ《火》を与え、その罰でコーカサス山につながれて2羽の鷲に腸をついばまれるという責め苦を受けることになった不死者。銀縁の丸メガネをかけた洒脱な逞しい男の姿をしている。
- 神話通り「人間びいき」の神であり、神具「強奪の円環」を最初に発見しそれを弟に教えた。最終決戦直前にプリンセス・アリスに助言することで間接的に護堂を自身の禁足地へと招き、神殺しの誕生秘話をパンドラと共に伝えた。
- エピメテウス
- プロメテウスの弟でパンドラの夫。「後に考える者」の名を持ち、考えるより先に勘と本能にまかせて体を動かす性格。
- 兄から「強奪の円環」の存在を聞かされ、7つの神域と9つの冥府をめぐる旅の末に神具を発見し妻へと手渡した。
神祖
- グィネヴィア
- ブルターニュを本拠地にしている《神祖》の一人で女王となるべき存在で、「魔女王」「最も正統なる神祖」を自称する。
- かつては『白き女神(グウェンフィファル)』と呼ばれる地母神であり、欧州本土では『槍の神(=後のランスロット)』と共に神王の1柱『智慧の女王』としてサルマタイの民に崇められていた。本来の姿は白い竜で、翼から緊縛の呪法を込めた風を起こし、口から氷の息を吐く。『この世の最後に顕れる王』ラーマに惚れ込み自ら臣下となり、復活の度に力を取り戻すための厳しい流浪の旅を強いられる彼の姿を見かねて、女神としての力を全て注ぐことで神具『魔導の聖杯』を創り死にかけの命を自ら望んで聖杯に捧げて女神としての生を終えた。『最後の王』の休眠から数百年後に《神祖》となって復活、神刀の探索を行う傍ら、王を再臨させる触媒とするためクレティアン・ド・トロワらと結託、テンプル騎士団を利用してアーサー王伝説を広め、上位魔女たちのネットワークを作り上げるも、12世紀末ごろ当時のカンピオーネに一度殺された後に再び数百年の時を経て転生したため、現グィネヴィアは2代目である。金髪のクラシックドールのような美しさを持つ12、3歳の美少女だが、「転生してから100年も経っていない」と発言している。
- 神祖としての力は格別で、短時間ならば水と大地の神気を神獣へと変えて顕現させることができ、聖杯の呪力を借りればまがいものの神すら作り出せる。その一方で、視野が狭く見たくないものから目を背けたがるなど精神的に成熟しきっていないところがある。
- 8年前、アレクに接触し、聖杯を取引の材料として『最後の王』探しを持ちかけるが失敗し、それ以来長い因縁がある。6年前には聖杯の魔力の大半を利用して『最後の王』招来を図るも、トーマス・マロリーがアーサー王伝説に手を加えていたため、せっかく招来に成功したまつろわぬアーサーは『最後の王』とは異なる新しい神格となってしまっていた。またそれと前後して妖精境にあった当時の本拠地を侵入してきたアレクによって追われている。
- 6巻では斉天大聖が「最後の王」か否かを確かめるために羅豪教主に取り入り、アーシェラを差し出して斉天大聖の復活に裏で暗躍していた。9巻では長年捜し求めていた最強の《鋼》の手がかりをつかみ、計略をめぐらし、その一環としてアテナとの戦闘を控える護堂たちの前に姿を現し、聖杯を起動させる呪法を授ける。その後、聖杯の活動が停止したため護堂がアテナを倒すよう後押ししようとするも恵那に妨害され、神獣・水竜を直接操るもイタリアから帰国したエリカが『聖絶』を使ったことで敗走する。
- 10巻では東京湾に突如現れた浮島をアヴァロンだと確信した彼女は、ランスロットの権能で味方に取り込んだ護堂にアレクの相手を任せ、聖杯で創り出した偽ミノスの力で魔の海を打ち破る。直後に『さまよう貪欲』に捕えられたランスロットと引き離され、『無貌の女王』により第二海堡まで連れ去られアレクと一騎討ちをせざるを得ない状況に追い込まれる。不死性を捨て去ることによって地母神としての本性を一時的に取り戻し、竜蛇の姿で死闘を繰り広げるが、強力な攻撃を繰り出し続けたのが仇となり『復讐の女神』のカウンターを受けて致命傷を負い敗北。自らに蘇生の魔法をかけることでわずかに延命して浮島に到達、神刀にすがり『最後の王』の来臨を願うも答えはなく、最期まで自身が目指した浮島がアヴァロンではなかったことには気づけないまま、聖杯に後事を託し消滅した。
- アーシェラ
- 邪術師の集まり《蠅の王》を統括する《神祖》で、好戦的で傲慢にして残虐な人物。その名はエリカによるとメソポタミアの女神アシェラトが変化したものだと推測されている。竜蛇としての真の姿はまつろわぬ蛇神レヴィアタンで、全長50mを超える白銀の大蛇の姿をしている。神祖であるため力量は非常に高いが、自身の能力を過信し敵対者、特にカンピオーネの実力を過小評価するという悪癖がある。
- ジョン・プルートー・スミスとは長きにわたる因縁があり、ロサンゼルスにて雌雄を決するべく竜蛇の封印を解き『水と大地の霊気』使って自爆し彼の殺害を図る。部下の命を対価に復活を果たすがスミスも爆発から生き延びており、慢心が祟り油断していたところを魔弾で撃たれ致命傷を負い、再度竜蛇の封印を解き最後の戦いを挑むも敗北。その後はグィネヴィアに回収されて延命措置を受け、死を待つ身という理由もありグィネヴィアの要請を承諾して猿猴神君復活に利用され、日光の人々の精気を奪って再び竜蛇の姿に戻るがエリカとリリアナの攻撃を受け瀕死の重傷を負う。地上に顕現した斉天大聖に有事の備えとして瀕死のまま保管され、最期は護堂との戦いで負った傷を癒すために食べられて断末魔の絶叫を上げながら完全に死亡した。
- 玻璃の媛君
- →詳細は「§ 玻璃の媛君」を参照
- パラス・アテナ
- グィネヴィアの死後、聖杯から誕生した新たな魔女王。転生する前のアテナと同じ姿をした少女。聖杯を体内に宿しているため、歴代の魔女王の中でも最高の力を持つ。
- グィネヴィアから受け継いだ遺志である『最後の王』復活を成し遂げるという使命感以上に、元闘神としての気質故かまつろわぬ神であった頃の宿敵である護堂に対する強い執着を持っている。竜蛇の封印を解くと、身長5m、全長12〜13mの蛇の髪を生やす蛇妖メドゥサの姿へと化身することが可能となり、転生前の力(神格の分離、神罰の青き炎、『蛇の邪眼』など)を発揮できるようになる。
- ブルターニュでしばしの雌伏を経て、モン・ヴァントゥにて『風の王』を招聘する。その後、サルデーニャ島を訪れていた護堂とドニの前に現れ宣戦布告し、『最後の王』の眠る日本へと飛び去った。真の目的は護堂と『最後の王』の両者を倒すことであり、竜蛇の封印を解き[注 49]護堂と戦いながらも、地上に帰還した『最後の王』を襲撃したが、ラクシュマナの策略により聖杯と一体化した呪力を奪われて致命傷を負う。余命いくばくもない状態となりながら『最後の王』に一矢報いるため護堂に協力した際に、女神であった頃の記憶を取り戻す。その後、転生前の約束を果たさなかった護堂を許す代わりにラーマに対する復讐の場を与えることを要求し、自らの体をエリカとリリアナが鍛えた即席の魔剣と一体化し、恵那が剣でラーマを傷つけた瞬間に彼から自らの物であった神力を奪い返すことで護堂の勝利に貢献した。戦闘後は潔く死を待つつもりであったが幽世での異変を察知し、ラーマへの復讐の一撃を与える最後の機会を得るべく東京湾から生と不死の境界へと旅立ち、幽世から護堂を援護した。その後は智慧の女王としての見識を評価されてアストラル界の妖精王達の召喚を受け、護堂に《運命》についての話をした。
魔術関係者
イタリア
赤銅黒十字
- パオロ・ブランデッリ
- 魔術結社《赤銅黒十字》の総帥で、エリカの叔父にして保護者。先代《紅き悪魔》。間もなく40歳になるが自身の年齢についてはこだわりがあり、若いことをよく強調する。
- イタリア最強の騎士サルバトーレ・ドニと並んで「イタリア最高の騎士」と称されている。アリスの計略などにより、アレクとは共闘したり対立したりと様々な因縁を持つ関係であり、それに付随して『聖なる殲滅の特権』を発動したまま古城を崩壊させたり、一昼夜を過ごし神獣と対峙したとされるなど様々な伝説を打ち立てた人物。護堂やエリカも敬服する器の持ち主だが、アリスに対して何度かハメられてひどい目にあわされた過去があるため姫に対する騎士としての敬意を忘れた発言をすることがある。14巻にて本編に初登場し、通廊を通ってきたデイノニクスの神獣を聖ラファエロとともに迎え撃った。エリカとの関係もあって、護堂とは親密な対応を見せる。
- ジェンナーロ・ガンツ
- 護堂と仲の良い《赤銅黒十字》の大騎士。レッジョ・カラブリア県出身のイタリア人。妻子持ちの23歳だが、海賊じみた強面のため外見年齢は30代。豪快な性格のいっぽう、日本の幼女向けアニメ『おシャ魔女SORAMI』に傾倒し、「本当の魔法というのは小さな勇気とやさしさであることをこのアニメから教わった」「魔術師もSORAMIのような精神を目指すべき」と熱弁し、護堂にも何が何でも見るよう勧めている。かつて『紅き悪魔』の座を争ったエリカとは仲が悪く、可愛い愛娘に悪影響が及ぶと言ってエリカが自宅に来るのを嫌い、護堂を家に招けずにいる(護堂を招くとエリカが勝手についてくるため)。
- クラレンス
- 《赤銅黒十字》の大騎士で、31歳のスキンヘッドのオランダ出身の黒人。
- 実力・功績の点からして《赤銅黒十字》の実質的な筆頭騎士であるが、イタリア人でないために《紅き悪魔》に就任することはない。エリカにとって戦略・戦術・政治の師でもある。
- アリアンナ・ハヤマ・アリアルディ
- 声 - 三澤紗千香
- エリカの直属の部下兼メイドの女性。19歳。通称アンナ。父方の祖父が日本人という家系[注 50]。
- 一応《赤銅黒十字》に所属しているが剣と魔術の才能が全くないため、エリカの身の回りの世話をしている。真面目な働き者でよく気が利くが、エリカに言わせると「三日に一度は大失敗をする」らしい。日本で国際免許を取得しており自動車を運転することはできるものの、その腕は大変危なっかしく[注 51]、なぜか事故は起こさないが、高速道路を走らせれば「背筋も凍るスペクタクル」の気分を体感できる。また料理の腕はエリカも一流と認めるが、何故か煮込み料理だけは最悪。カレンの親友。
- 最終決戦後はイタリアへ帰国し、ミラノのブランデッリ邸で仕事している模様。
青銅黒十字
- カレン・ヤンクロフスキ
- 声 - 佐藤奏美
- リリアナ付きの侍女で《青銅黒十字》に所属する魔女見習い。14歳。アリアンナの親友。有能ではあるようだが、見習いの身でありながら主であるリリアナをからかって遊ぶのが好きという、割と悪趣味な性格でその点ではエリカと同類。1年ほど前からリリアナの書いた小説を見つけ、これを裏でこっそりとエリカに売り渡しており、エリカはこれを脅迫材料にしてリリアナをプライベート面で手玉に取っている(原作では脅迫する前からヴォバンとのゲームにおいて護堂への協力を了承していたが、アニメでは脅迫が決め手になった)。《青銅黒十字》の運営する私立学校で飛び級を重ね、すでに高校レベルの課程を終えている。リリアナとは家事を分担しており、電子端末のような精密機器は自身が担当している。
- ディアナ・ミリート
- ナポリ在住の《青銅黒十字》ナポリ支部のリーダー格の魔女で、リリアナの魔女術の師匠でもある。ベリニーニ広場周辺の古書店街に「ミリート家の店」という古書店を構えており、表向きは古本屋の店主をしている。若作りしているが、本人はそのことを指摘されるのを嫌っている。
その他のイタリア人
- 紫の騎士、老貴婦人の総帥、雌狼の総帥
- 声 - 高橋良吉(紫の騎士)・御園行洋(老貴婦人)・北村謙次(雌狼)
- 《紫の騎士》はイタリアの魔術結社《百合の都》の長に与えられる称号。三十代半ばの男性で、陰気な顔つきをしている。魔術結社《老貴婦人》の総帥と魔術結社《雌狼》の総帥は二人とも老人で、仲が良くない模様。
- 三人とも本名は不明で、1巻で護堂に神具ゴルゴネイオンを託した。紫の騎士は14巻のドニの神獣狩りに参加している。
- ルクレチア・ゾラ
- 声 - 田中敦子
- 「サルデーニャの魔女」「イタリア最高の魔女」「神を知る女」と呼ばれる魔術師で護堂が神殺しの運命に巻きこまれる一因を作った人物。亜麻色の髪の美女で、見た目は20代半ば。ものぐさな性格。文明生活を享受している。『地』の位を極めた最高位の魔女であり、その知識からアレクの探求における相談相手にもなっている。一朗の昔の友人で高齢のはずだが、その呪力の高さゆえに未だ若々しい外見を保っている。エリカに悪乗りしたのか護堂の「現地妻」を自称するが、時折祖母か姉のような柔和な表情を向けることもある。
- アーサリアンの端くれで、大学時代はイギリスでアーサー王と円卓の騎士についての研究をしていた。40年以上昔にヤマトタケルなどの日本古来の伝承について学ぶため来日、当時大学院生だった一郎と知り合う。一郎たちと訪れた村で連続怪死事件が発生した際、事件を起こしたたたり神からプロメテウス秘笈で神力を奪い取り、相手が弱い神格だったこともあり封印に成功、将来的に神が復活した時のために秘笈を日本に残したまま帰国した[注 52]。かつてグィネヴィアと共に『最後の王』を探していたことがあるが、『最後の王』がアーサーではない可能性と『最後の王』の復活で世界が滅ぶ可能性に至り、グィネヴィアと袂を分かった。
- アンドレア・リベラ
- ドニの旧友にして側近の大騎士。その立場から『王の執事』の異名を持つ。律儀な性格でドニを面と向かって罵倒できる数少ない人物だが、奔放なドニには振り回されっぱなしの苦労人。ドニの策略により拉致されることもしばしばで、その境遇からエリカも含めた様々な人物に同情されている。
- 聖ラファエロ
- 《百合の都》において最高の騎士に与えられる称号であり、本名は不明。当代の聖ラファエロはルクレチア・ゾラと同世代だが、容姿は二十代の黒髪ポニーテールの美女。
- サルバトーレの剣の師匠であり、剣の腕だけならサルバトーレに勝利するほどの凄腕。ただし、あくまで彼女がサルバトーレに対抗できるのは人間としてであり、彼がカンピオーネとして権能を振るえば九割九分九厘勝ち目はない、とのこと。長きにわたる戦歴から旧世代のカンピオーネ三人全員と面識があり、彼らを「兄さん」、「姐さん」と呼ぶ。
- エリカとリリアナが持つ魔剣、『獅子と匠の双剣』クオレ・ディ・レオーネとイル・マエストロの前所有者。本来この魔剣は一振りずつ授かるものであり、彼女はその才ゆえに例外的に二振り受け継いでいる。後に、サルバトーレと対峙した際に、現所有者の二人へと継承させた。14巻にて初めて本編に登場。ドニの神獣狩りにパオロからアイーシャと面識があるということから招待を受け、そこで護堂と対面する。
- ダヴィド・ビアンキ
- サルデーニャの港町カリアリの魔術師で、二十代半ばの美男子。地相術師としては優秀だが、ルクレチア曰く「浮ついた性格で、100%は信用できない」とのこと。自信過剰な人物で、その性格と魔術を使えないという点からドニの実力ひいてはカンピオーネという存在を侮っていた。
- ルクレチアの紹介で訪れた護堂とエリカに、地相術でメルカルトの行き先を導き出すが、同時に護堂がウルスラグナを討ちカンピオーネになったばかりだと見抜き、ドニへの不満もあって護堂を倒して「カンピオーネの中にも魔術師にとっての『王』に値しない存在もいる」ということを証明するために護堂に襲いかかる。しかし、権能を掌握し始めた護堂に撃退され、地元の魔術結社に捕縛されて罰せられた。
- その後はアメリカに渡り邪術にかぶれ、ロサンゼルスのダウンタウンで店を開いて生活していた。しかし内偵に現れたアニーの正体を観相術の結果から知ってしまい逃走を計ったが、魔銃の衝撃波に打ちのめされ意識を失ったまま善の魔術師が運営する精神病院に収監された。
- ワルテル・ザンパリーニ
- シチリアで最大の魔術結社《パノルモス》の総帥にして、シチリアマフィアのボス。銃弾や火薬で『焔』を操る魔術を得意とする。豪快であると同時に抜け目のない人物。2歳になる孫娘がいる。
- 護堂がカンピオーネになって間もない頃、メルカルトとの対決に望む護堂と接触し、護堂に取り入ってイタリア全土では中小規模の魔術結社である《パノルモス》の権威を高めようとした。
- 聖ピントリッキオ
- 聖ラファエロの正統な弟子で、魔術結社《老貴婦人》の次期総帥となる人物。エリカ達とは一世代上の大騎士。
- アレッシア
- BD1巻特典小説に登場。イタリアの中部トスカーナの片田舎に位置する村に住む女子中学生。キリスト教徒。修道院でテンプル騎士の末裔と思われる老修道士から魔術の才能を見込まれ、軽い手ほどきを受けた。老修道士の死後、修道院の地下に封印されていたアルテミスの眷属である神獣が半覚醒している件について、デイノニクスの神獣(時空を超えて出現したウルディンの顕身)との戦いを終え通りかかった護堂とエリカに相談を持ちかけた。
日本
正史編纂委員会
- 沙耶宮 馨(さやのみや かおる)
- 正史編纂委員会・東京分室室長、つまり甘粕の上司に当たり、関東地方一帯を差配している。一見すると少女漫画に出てくるような美少年だが実は媛巫女の一人でもある(いわゆる「男装の麗人」)。名門女子校に通う18歳の高校3年生で、教師、生徒会、PTAを丸め込んで学校にもわざわざ特注した男子用制服で通う。
- 恵那以外の媛巫女には体術・呪術共に勝るという才人にして、正史編纂委員会の次期総帥候補にして沙耶宮家の次期頭首。伊達と酔狂が身上の洒落の分かる人物であり、犠牲を強いるのは好まないが組織のトップとしての義務は果たす人物。エリカとは似た者同士で、有能さを遺憾なく発揮して伊達と酔狂を仕事に持ち込む癖がある。「組織を維持するよりも新しく構築する方が好き」という心情もあって護堂の存在を歓迎している。
- その外見を利用して同性相手に数々の浮名を流している模様。また笑顔で相手に無茶を強いることも少なくない。部下の甘粕に言わせれば「イタズラ好きで嘘つき、おまけに女たらしって三冠王」。女性嫌いを公言している陸鷹化と作中唯一友好関係を結べている女性(鷹化は「沙耶宮の兄さんと呼ぶ)。その外見のため同じ媛巫女達にも人気があり、本人と周囲の希望から媛巫女の儀式のときでも男装をしている。
- 護堂については人柄や能力を高く評価しており、ともすれば「女性」としての感情が喚起されそうになるが、立場的にも性格的にも良くない事になるとしてポーズを堅持している。
- 最終決戦の2年後に正史編纂委員会の長となり、《円卓連盟》の下部組織として正史編纂委員会の大幅な改革を行っている。
- 甘粕 冬馬(あまかす とうま)
- 声 - 松本忍
- 正史編纂委員会のエージェントであり、忍の系譜を持つ馨の側近にして懐刀。忍の技と、陰陽術および修験道が混淆した呪術を得意とする。地味な外見で常に暢気な態度を崩さず、本心を見せることは稀。また、上司の指示に対し「給料以上は働かない」などと言って危険な任務を嫌がる傾向がある。女性関係で困る護堂をからかうなど、お調子者な一面もある。相手が人間ならばほとんどの者から逃げられる実力を持つうえに、権能次第という大前提があるがカンピオーネからも逃げ切れるといい、アレクやグィネヴィアが認めるほどの隠形の呪術の実力者。そのため「マスターニンジャ」と呼ばれることもあるが、本人はその呼び方を嫌がっている。もうすぐ三十路らしい。現在恵那が通う高校のOBで、高校から大学にかけての頃に馨と出会ったらしい。武術の鍛錬に強引に連れて行かれそうになっては逃げ回っているようだが、実際は非常に鍛え上げられた体つきをしている。各種神話体系にも媛巫女たち以上に詳しく、護堂たちに嬉しそうに薀蓄を語る。この特技を生かし、『最後の王』の正体に真っ先にたどり着いた。
- 当初は祐理をそそのかして護堂を篭絡しようとしていた。ツンデレの事例として桜野タズサの名を引き合いに出したり、オフィスにある自分のパソコンに声優のブログをブックマーク登録していたり、とオタクであるかのような描写が散見される。護堂たちが神と戦う際には、おもにバックアップと事後処理を行う。かつては公安に勤めていたり、エセ神職の経験があるなど妖しい経歴を持つ。私生活は謎に包まれているが、料理は得意なのか12巻終盤のクリスマスパーティーでは自家製のフライドチキンを大量に差し入れている。
- 調査活動の中で不運にも人外の相手と遭遇することも多く、不覚を取ってしまうこともある。7巻では斉天大聖の復活による被害を調査していたが、突如顕現した深沙神に遭遇し負傷、一時意識不明となる。その後、アニーに救出されたがひどい風邪をひいてしまう。9巻では天之逆鉾を守護することになり、奪おうとするグィネヴィアを相手に高い実力を見せ振り切ったものの、神速を使うアレクに対しては結局力及ばず、天之逆鉾を強奪されてしまった。
- 17巻では、祐理の啓示が六度集経に収録された物語の一つであることを東京スカイツリーに滞在中の羅濠教主が(エリカ越しに)指摘した事で、考えをまとめて『最後の王』の真名がラーマであることを最初に探り当てた。
古老
- 速須佐之男命(ハヤスサノオノミコト)
- 声 - 大川透
- かつてまつろわぬ神であった神霊。本来は暴風・嵐を司る出雲の土地神で、砂鉄の産地で崇拝されたことから蛇殺しの鉄剣「天叢雲劍」を獲得して《鋼》の征服神として性質を、太陽神である姉の天照大神を天岩戸に追いやった逸話から環太平洋圏に普遍的な「太陽を隠す」変幻自在のトリックスターとしての性質を手に入れた、数々の神との習合によって作り出された古代日本の英雄神。
- 1000年近く地上で暴れまわっていたが、満足した(飽きた)ために1000年前に隠居するようになった。近年では正史編纂委員会の相談役を務めており、恵那の後見人として佩刀の「天叢雲劍」を預け時折力を貸している。正史編纂委員会の者たちなどからは「御老公」と呼ばれ、恵那からは親しみを込めて「おじいちゃま」と呼ばれている。豪快でありながら狡猾さも併せ持つ性格で、神としてあの世とこの世の均衡を保つことに務めている。およそ1000年前に日本に流れ着き眠りにおちた『最後の王』の寝床を静止軌道上へと移し替えた張本人。
- 護堂の資質を見定めようと清秋院家を利用し、恵那に命じて現世に細工を施し護堂を幽世に連れ込んで対面、自身の佩刀をかすめ取ったこともあって粗忽だが油断ならないと高評価している。アニメ版ではこの時に、まつろわぬメティスが星なき夜をもたらすことを護堂に伝える。6巻では、天叢雲に導かれ羅濠教主から逃れてきた護堂に猿猴神君の真の名を教える。『最後の王』の正体を知ってはいるが制約により口外することができなかったため、恵那がしつこく問いただそうと交信を図った時は面倒臭がってしばらく無視し続けていた。年末に行われる大祓の儀の後で会場となった氷川女体神社に招聘され、『最後の王』の始末を人間達に任せることに決めると共に馨の要請で正史編纂委員会のトップを護堂とすることを認めた。魔王内戦の勃発時にはアストラル界の妖精王達の評議場で護堂を待ち受け、《運命》の意図やラーマに対する自分たちのスタンスについて彼に伝えている。
- 玻璃の媛君
- 護堂が幽世で出会った古老たちの一人。外見は玻璃の瞳と亜麻色の髪のうら若い美女だが、実年齢では黒衣の僧正を上回っている。その正体は万里谷たち媛巫女の祖先にあたる《神祖》。妖精王ではないが彼らに匹敵するほどの格の持ち主。
- 前世は『最後の王』ラーマの妻である古代インドの女神シーター。大地より産まれ、ジャナカ王の娘として育てられ、ラーヴァナに攫われラーマによって救い出された後、潔白を証明するため火に身を投じた逸話を持つ大地の女神。太古に大地の精気を糧とするためにラーマを信仰する人間の神官たちによって招来されたが、儀式場へ乱入した『十の命を持つ神殺し』によって保護される。数年間は神殺しの元で生活するも最後の戦いの中でラクシュマナに射殺され、神力は強制的にラーマに奪われてしまう。しかし意思だけの存在となってなお神殺しへの恩義から最後の最後で王子への協力を拒み、元は自分の物であった神力を使用不能にしその呪力を弱めることによって神殺しの勝利に一役買った。
- その後は《神祖》として転生、『最後の王』に仕える身であったが、彼の元を離れ日本にやって来て自身の血を後世に残す。現世での暮らしに倦んで幽世に渡った時に女神だったころの記憶を取り戻し、他の古老たちと共に千年間『最後の王』を隠蔽し続けていた。パンドラとは女神であったころの自身とパンドラの祖となる女神が同郷であるため交流があり、護堂の夢の中に入り込みパンドラの伝言と『六度集教』の一節を伝えたことがある。
- 「女を救うもの」という共通点から前世で自分を救おうとした『十の命を持つ神殺し』と護堂を重ね、彼を良き王と見込み『最後の王』が復活した時には地上の救世主になってくれると期待している。古老の中では良識派で、他の二人の意地の悪い行動を嗜めることもある。
- 17巻で、甘粕が突き止めた『最後の王』の真名が真実であることを確かめる為に幽世にやって来た護堂たちの前に現れて、護堂に「幻視の術」をかけて太古に起こった『十の命を持つ神殺し』の生涯を夢として見せ、護堂が難敵を前にしても自らの流儀を変えないことを確かめると彼らを『最後の王』にまつわる記録の保管場所に導いた。その際に、ラーマ王子の力を削ぐために神殺しの数を減らすという思い付きを実行しなければならなくなった時のために、護堂に魔王殺しの毒を持つ鏃を手渡している。その後、妖精郷を訪れたスミスとも対面し、彼に対してラーマと戦うのは当代の神殺しで最も縁のある護堂であるべきという意見を伝え、自分たちの計画に賛同してもらえるよう要請した。
- 黒衣の僧正
- 護堂が幽世で出会った古老たちの一人。神ではないが、不死の存在。外見は黒衣を着た木乃伊(いわゆる即身成仏)で、丁寧な口調に対して反骨精神に満ちている模様。
- 江戸時代に生きた人間で、地上にいた頃は『最後の王』復活阻止のため、中国の偉大な《鋼》であるまつろわぬ聖天大聖を竜蛇避けとして東照宮に封じている。
その他の日本人
- 九法塚 幹彦(くほうずか みきひこ)
- 四家の一つである九法塚家の総領。とても真面目な性格で、恵那曰く「四家の跡取りの中で一番まとも」である模様。剣術を得意とするが、6巻で鷹化に敗れ魔女アーシェラの操り人形にされ、斉天大聖復活のために利用された。事件後はアーシェラの魔術の後遺症で長期入院中である。
- 沙耶宮 惟道(さやのみや これみち)
- 馨の曽祖父で沙耶宮家先々代当主。欧州に留学して欧州の魔術も学び、正史編纂委員会の創設者となった人物。沙耶宮家の当主は代々蒐集癖がひどく、昭和四十年代で死去してなお沙耶宮家の別邸に取り付き蔵に保管されているコレクションを見張っている。
- 清秋院 蘭(せいしゅういん らん)
- 恵那の祖母で清秋院家現当主。代々漁色家の多い清秋院家の人間のせいか馨も認める程の豪傑さで、夫の隠し子やその母親が見つかった際も次の日には自らの家に招き入れ居候させていたり、孫娘の恵那に早く王様(護堂)に手をつけられて子をもらえと言い放つほどである。恵那と幼馴染である祐理のことも気に入っており、祐理を清秋院の養子にしてもいいかという恵那の要望に許可を出している。
イギリス
賢人議会
- アリス・ルイーズ・オブ・ナヴァール
- グリニッジ賢人議会の元議長にして現在特別顧問を務める24歳の美女。通称「プリンセス・アリス」「白き巫女姫」。ゴドディン公爵家令嬢にして、『天』の位を極めた魔女でもある。
- 「蛇の血に連なる先祖返りの者」と玻璃の媛から呼ばれていることからも窺えるように、祐理と同じく人の身でありながら《神祖》の血を色濃く受け継ぐ存在で、世界最高峰の精神感応者。加えて念力・霊視・予知といった特殊な異能と高い霊力を有している。しかし、その反動で非常に体が弱く、対外的にはエクトプラズム(霊体)で作った分身を利用している。10代の頃までは体が弱いとはいえ生活に困るほどではなかったが、6年前グィネヴィアが復活させたまつろわぬ神(アーサー王)をアレクと共闘して封印した弊害で体を壊してほぼ寝たきりの状態になってしまい賢人議会の議長の座を退いた。
- 12歳のときにアレクに買収と談合を持ちかけて以来、彼とは時に争い、時に共闘してきた旧知の仲[注 53]。若手のカンピオーネとはある程度良好な関係を築いており、特にスミスとは時々通話しては愚痴を聞かせているらしい。
- 言動こそ穏やかだが、その実『匿名希望の謎の美女』で通そうとしたり、護堂と祐理のキス(護堂が『戦士』の化身を使うための準備)をひかりと一緒に覗き見したりと、けっこうお茶目で野次馬な性格をしている。おっとりした容姿に反してかなりの毒舌家で、気心の知れた相手ほどその傾向が強くなる。エレベーターのない最上階を嫌って1階に執務室を移させたり、わざわざ自分で騒動の現場へと足を運んだりと、要職についている割に言動がかなり自由奔放なのも特徴。
- アーシェラの来日に合わせて霊体を日本へ送り込み、その地で出会った護堂達をサポートする。アレクが天之逆鉾を強奪した時には訪英した護堂達と共にランスロットゆかりの地を巡り祐理の素養を見抜いて自分の技術を教授、彼らが帰国すると東京湾上の浮島に向かいグィネヴィアの最期を見届けた。護堂達が過去に飛ばされたときにはアイーシャの権能の情報を手に自らイタリアへ赴き、スミスからの要請を受けリリアナと祐理をアストラル界へ導いた。パラス・アテナの動向を追い三度来日しようとするが、その身に濃く流れる《神祖》の血のためにラーマ復活による大地の異変の影響を強く受けて倒れてしまう。高熱に浮かされるなかでアレクの訪問を受けたため、ラーマの力を封じ込めるための策を問いただした。その後は体調が小康状態になったため、プロメテウスの助言により護堂を「運命神の領域」へと導き、地上に帰還してからは決戦に備えてカンピオーネの魔導力を高めるための秘薬を調合した。
- パトリシア・エリクソン
- 三十代後半の女性で、アリスの御用邸の女官長。堅物で厳格な家庭教師を絵に書いたような女性だが、8年前には結婚相談所に会員登録し秘かに婚活をしていた(10巻で護堂がミス・エリクソンと呼んでいたことから、未だ独身である模様)。自分に内緒で若いカンピオーネ立ちと取引するアリスの扱いに苦労している。
王立工廠
- サー・アイスマン
- アレクの側近でイギリスの騎士勲章を受けたオランダ人。魔術結社「王立工廠」の副総帥で、パオロ・ブランデッリと並ぶ世界有数の騎士。
- 30代半ばの苦み走った美男子で、愛車はハーレーダビッドソン。本名はデニスであると言われるが、名字は不明。アイスマンは、剛毅にして冷静沈着であることからつけられた呼び名である。『聖絶』の使い手にして、メイスの扱いに長ける攻撃に特化した戦士。唯一の弱点が「飛べないオランダ人(アンフライング・ダッチマン)」と揶揄されるほど重度の飛行機恐怖症ということで、毎度のように船での移動を主張し離陸直前までごね続ける悪癖がありしばしばアレクに置いてけぼりを食らっている。
- 魔王内戦時にはアレクから一服盛られ眠ったまま、飛行機に乗せられて来日。アレクの命でリリアナの足止めを行うが、祐理による幽世からの援護で御魂鎮めを使用した彼女に聖絶を中和され、その隙に「禁足」の術で動きを封じられて逃走を許してしまった。
- セシリア・チャン
- 眼鏡をかけた10代後半の少女。優れた道士で東方の神話に詳しい。飛翔術(空行術)も使っていることから巫の資質も持っていると思われる。
- 昔、アレクに助けられた恩があるため《王立工廠》のメンバーになっている。アレクに好意を寄せているようだが、相手が鈍感すぎて気づいてもらえていない。
アメリカ
- ジョー・ベスト
- ジョン・プルートー・スミスの協力者で善の魔術師。表向きはサマンサ大学人文学部外国語文学科の教授であり、世界的に著名な幻想文学の研究者。欧州でも並ぶ者がいないほどの「妖精博士(フェアリードクター)」。アニーとは教授と助手の関係であり、魔術師としての身元保証人でもある。
- 北米の三賢人の一人で、ジョン・プルートー・スミスの正体を知る数少ない人物の一人。アリスとも知己で、高位の魔女たちの秘伝である「幽世渡りの秘術」についても知っている。
- 《蠅の王》との決戦前に足を負傷してしまい、単身彼らの本拠地に向かうジャックへの手向けとして幸運の加護を込めたスミスの魔銃を託して送り出す。その数ヶ月後にアレクの訪問を受け、黒王子と冥王の戦いでつかの間の平穏に水を差すのは得策ではないと判断し、彼の要求を呑んで自身が保管していた竜骨を譲渡した。
- ジャック・ミルバーン
- SSIロサンゼルス支部に属する青年。元ロス市警の刑事。魔術の才能はあるが訓練は積んでいない。
- ジョン・プルートー・スミスの仲間。アニーが片思いしていたが、《蠅の王》との一件で恋人とよりを戻したため、スミスの正体も教えることなく本人の自覚なくご破算になった。
- デニス
- チャールトン家に仕える老執事。ロスフェリスにあるアニーの自宅を管理する。スミスの正体を知る一人でもある。
その他の地域
- 陸 鷹化(りく ようか)
- 香港出身の14歳の少年。4歳の頃に羅濠の前で武道の型を披露して見せ、その類稀なる才能を見込まれ唯一の直弟子となった。両親はすでに死去している。師の義弟となった護堂を「叔父上」と呼ぶようになる。師の遠征に供として付き添っていることから当代の7人のカンピオーネ全員と面識があり、そのため彼らに対して丁寧な態度を心がける癖がついている。
- 師以外には軽口を叩くことも多く傲慢だが、「軽功卓越・掌力絶大」と称されるその武術と軽功の冴えはエリカやリリアナも認めるほどであり、年少ながら体術なら二人以上の実力を持ち、素手で虎を狩った経験もある。それゆえに実力面では「将来モーツァルトやダ・ビンチ並の歴史に名を残しうる天才」と賞賛されている。他方、4歳からの6年間で身近に異性が師父だけという過酷な環境で育ち、現在まで師の理不尽な要求に苦労しているせいか、エリカが評するに「見た目は女の子にモテそうなのに、妙に偏屈だし鬱屈してる」「身内のせいか、綺麗で腕の立つ女が嫌い」といった性格で、女性に対して非常に辛辣な態度をとる。師の食事の世話をさせられていたせいで、料理の腕前は祐理やリリアナ以上どころか一流の料理人並み。
- 陸家は「奸賊以外の賊とつくものほとんどが先祖の職業」という程の先祖代々の侠客の元締め。新宿と池袋にも拠点を持ち、秋葉原でメイド関連の事業(舎弟の願望)を行い、護堂にプロデュースを要請している。護堂には、その女の扱いに対する能力への評価や「師に対する緊急時の盾」となってほしいという打算もあって、積極的に友誼を結ぼうとしている。護堂も身近に同年代で魔術がらみの男性がいないせいか、野球選手時代のライバルを彷彿させる傲慢さも懐かしく思い、そうした目的を承知の上で同情も含めて付き合っている。そうした経緯から7人の魔王の中で唯一護堂に対して親密ともいえる関係を築いており、護堂の妹の静花にも兄貴との親密さを自慢の一つと語っている。一方で護堂の妹の静花からは一目でその内面を見抜かれており、子分にされそうになるため出会いそうになる度逃げ回っている。
- 周囲からは「羅濠教主の扱いを最もよく知る人物」ということで頼りにされており、護堂がサトゥルヌスの相手を義姉から押しつけられた時には詳しい情報を聞き出す役目を依頼され、そのおかげで日本から離れていたため記憶改変は受けずに済み、情報をメールで送ったことで彼らが異変に気づくきっかけを作った。
- 魔王内戦では、歌舞伎町の本拠地を引き払い師に与する。教主の命令でエリカの足止めを行うが、どちらが勝ってもうまく立ち回れるように、あえて見るからに物騒な技を使いながらも絶妙に手を抜いて戦った。
- 最終決戦後、日本の歌舞伎町にある《香港陸家》のアジトで二年間自由を満喫していたが、エリカからの連絡で護堂が師父の消息を掴んだことを聞かされる。17歳となって身長も十五センチ伸びている。師と義姉弟となった護堂一派とも親密な関係を続けており、師父が並行世界へ飛ばされて以降の中国武侠界のとりまとめをエリカたち《円卓連盟》と連携して行っている。最終決戦時からひかりと護堂の妹静花とたびたび交流しているが、女嫌いな性格から常に冷淡な態度をとる(師・羅濠が護堂に平行世界へ追放された話題には満足そうに反応した)。静花がルクレチア・ゾラが封じたたたり神に狙われていることを馨たちから確認すると、ひかりや馨と共にたたり神を迎え撃つ。
- 灰色の者
- 神具「サトゥルナリアの冠」に宿る神霊。黒炭のような肉体を灰色のボロ布で隠している。かつてはサトゥルヌスの主に当たる太陽神[注 54]であったが、遙か昔に敗れ去ったことで零落してしまい、新たにまつろわぬサトゥルヌスを生み出すだけの司祭と化している。その力は制限されているが「冠」の徴から太陽の不死性を引き出すことができ、自分自身や神木状態のサトゥルヌスを復活させられる。さらにサトゥルヌスが持つ身分を逆転させる権能を限定的に使用することも可能。
- 12巻にて長い時を経て力を回復し羅濠にリベンジしようとしたが、再戦の条件として先に義弟を倒すことを挙げられたために海を渡り、日本で民衆から精気と活気を集めはじめる。復活を阻止しようとする護堂達から身を守るために冠に宿る神霊がその力を借りた祭司の呪縛で都内一帯を巻き込み、護堂だけでなく恵那以外のヒロイン達の記憶と認識を書き換え疎遠にすることで追跡をかわそうとした。完全復活までの優に10日間もの時間を稼ぐが、活気を集める度にサンタクロースの灰色化現象が起こるため護堂たちも異変を覚え、時には自ら命を絶ってまで逃げおおせようと足掻き続け、なんとか冬至の日を迎える。司祭としての役目を終え沈黙していたが、黄金の棺の内部にまで侵入してきた護堂達を迎え撃つため再び姿を現す。復活したサトゥルヌスと立ち会うよう懇願するも聞き入れられることはなく、『戦士』の化身で神具の内部から自身が神であった頃の肉体ごと切り刻まれて消滅した。
- 時の番人
- スミスが治めるアストラル界の領土にある「プルタルコスの館」に住まう老人。1800年ほど前に前任者から職務を引き継ぎ番人となった。気難しいうえに神経質で悲観的という難儀な性格の持ち主。黒衣の僧正と同様、神や神殺しではないものの不死の存在。霊視の結果から、偉大なる歴史学者にして神秘学に通じた賢人だったとされる。
- 歴史に刻まれた修正の跡を記録し、修正力が事象を修正しきれなかった時には自らが過去に赴いて修正を行うこともある。その職務の特性上、ここ150年間ほどアイーシャ夫人の気ままな行動に悩まされ続けている。以前の番人より勤勉な性格であり、これまでに修正の失敗が原因の新たな並行世界を発生させたことはないという。
- 3人の神殺しが西暦406年に飛ばされ『最後の王』が顕現した際には、歴史の修正力だけではどうにもならず現代の歴史までもが変わってしまうことを恐れて魔王殺害をスミスに依頼するが、遠隔狙撃による殺害は困難であることを理由に難色を示されたため、道標となる者がいる状況であれば一番まともである護堂に期待するべきだという助言を受け入れ、祐理とリリアナを過去のガリアへと送り届けた。
- 魔王内戦では、自分の館を「当代で最も愚かな二人」であるドニとアイーシャにより勝手に避難所にされたあげく、彼らを追ってきた「当代で最も粗暴な二人」であるヴォバンと羅濠の襲撃を受けるという憂き目に遭い、命は助かったものの地下を除く地上の神殿部分全てを吹き飛ばされてしまった。
その他の登場人物
- 草薙 静花(くさなぎ しずか)
- 声 - 日高里菜
- 護堂の妹。私立城楠学院中等部3年2組、14歳[6]。12月3日生まれ。茶道部所属。
- それなりに可愛らしい顔立ちをしているが、兄に対しては事あるごとに生意気な口を叩いて盾突いている。特に、祖父に似てるといわれる兄の女性関係を邪推しては厳しく問い詰める場面が多い。ただ、彼女はまつろわぬ神も魔術の存在も知らない一般人であり、兄や兄の周囲の女性たちの立場についても何も知らされていない。
- 護堂曰く「母親譲り」で、わがままな性格・いくら食べても太らない・いくら飲んでも酔いつぶれないらしい(ウイスキーを一本開けても平然としている。本人は「私は母みたいな女王様じゃない」と否定)。また姉御肌らしく、遠縁の親戚が興した元ヤクザの会社からも一目置かれ「若い衆」を統率する権限を手に入れており、若干世間ズレのある祐理やさくらには甘い一面もある模様。初対面で鷹化の隠された一面を見抜くなど既に大物になりそうな様相を呈している。ちなみに料理の腕前は兄と五十歩百歩。
- 最終決戦後も兄の力は知らず、急にイタリアに行ったまま全然帰ってこないことに不満を持っている。茶道部にしか入っていないが運動部を中心にかなり顔が広く、ひかりは完全に妹分になっている。ちなみに高校入学後も、身長は伸びなかった。ルクレチアの封じたたたり神に狙われることで初めて魔術界の騒動に巻き込まれる。ひかりたちの素性を詳しく知る描写はないが、護衛として現れた甘粕の呪術を目にしている。たたり神に追いつかれ、絶体絶命の窮地に陥ったときに、兄からの伝言を思い出し兄の名前を叫んで助けを求め、強風の力で転移してきた護堂に助けられた。兄と魔術世界の甘粕とのつながりを目にしているが、護堂の正体にまで気付いているかは不明。
- アニメ版12話では、記憶を失ったアテナが天井から落ちてきた後、兄との関係を聞くといろいろと誤解するような想像をする。
- 草薙 一朗(くさなぎ いちろう)
- 護堂の祖父。妻はすでに他界しており現在独身。70歳過ぎにもかかわらず色気を漂わせる恐ろしく垢抜けた男ぶりで、商店街の婦人からは人気が高い。
- 先祖代々女性関係にだらしない男が多い草薙家の中でも近年まれに見る逸材と言われる。護堂に酒の銘柄ごとに燗の適温などを教え込んだり、急性アルコール中毒にならないために以前から晩酌を進める不良老人。かつては相当な遊び人だったらしく、孫の女性関係については放任気味。明日香曰く「護堂の師匠」。料理上手で凝り性であり、普段は家庭内でも料理を担当する。
- 以前は世界と日本の伝統芸能を専門に民俗学を教える教授だったらしいが、6年前に引退し今は隠居をしているため家事全般を受け持っている。日本国内や海外奥地にフィールドワークに出たことがあり、何度か護堂や静花を連れていったことがある。この時(長くても数日)護堂を何度も置き去りにしており、そのため護堂は海外での一人旅にさほど抵抗がない。老齢になった現在もフットワークが異常に軽く、年末にブータンへ旅立ったはずがなぜか新年になってハワイから帰国するというように非常に行動力が高い。民俗学者としては有能で現地の民族に伝わる門外不出の秘薬などについて教えて貰えるほど。何冊か著書があるらしく、その伝手をたどってプロメテウス秘笈が届いた模様。
- 草薙 千代(くさなぎ ちよ)
- 一郎の妻で護堂の祖母。すでに他界している。夫の奔放な行動や女性関係にいつも頭を抱えていたらしく、静花や明日香も同情していた。孫の護堂の行動が一郎と似通っていることに不安を抱き、まだ小学生だった護堂に注意をうながした。
- 弦蔵(げんぞう)
- 護堂と静花の父。護堂曰く『不良中年』。離婚したため家を出ている。静花曰く「とりあえずカッコつけたがる人」。姓は不明だが、「草薙」と同じくらい画数が多いらしい。実業家で金回りはいいが、胡散臭い職業を名乗ることが多いため息子からは山師呼ばわりされている。娘を溺愛する一方、息子が自分と娘との水入らずを妨げると拗ねてしまい、なおかつそれを公言するダメ人間とのこと。
- 草薙 真世(くさなぎ まよ)
- 護堂と静花の母で一郎の娘。『天職・女王様』と呼ばれる程、我侭な性格である模様。護堂が物心つくころには夫と既に離婚しているが、様々な男たちから『貢ぎ物』が送られてくるため生活には困っておらず、その様から息子である護堂に『魔性の女』扱いされている。護堂が知る一般人の中で最も破天荒な性格らしい。度を越した宴会好きで、毎年末年始は様々な宴会場を渡り歩いている。
- 徳永 明日香(とくなが あすか)
- 護堂と幼稚園の頃からの幼馴染だが高校は別。同じ商店街に住んでおり、実家は寿司屋『すし徳』。ツインテール、ややコンプレックスな吊り目、少々きつめな顔の造作をしている。昔から護堂に惚れているものの全く気づいてもらえず半分諦め気味だが、今でも護堂に好意を持っている節がある。
- 7巻の特集ページに掲載された短編『噂のカンピオーネ』の主人公。護堂の過去のモテっぷりとそのルーツを澤・宮間に話し、二人を絶句させた。
- 護堂の留学後に都内の大学に進学し、髪もロングにおろしている。護堂のことも諦めきれないのか、外国語の勉強に励んでいる。
- 高木(たかぎ) / 名波(ななみ) / 反町(そりまち)
- 声 - 山本格(高木)・桑畑裕輔(名波)・井口祐一(反町)
- 護堂のクラスメート男子。剣道部で身長185cm近い大柄な高木、巫女萌えを公言する名波、「二次元に108人の妹がいる」と自称する反町の三人組。「恋愛共産主義者」を自称し、とかく美少女に縁のある護堂を「富を不当に独占するブルジョワジー」と呼んで敵視する。上記の理由で護堂を2度も監禁したり、覗きを先導するなど常軌を逸した行動が目立つが、学園祭でメイド喫茶の際に護堂に鷹化を紹介されたことから護堂への態度が少々軟化した。12巻での記憶改竄の際には護堂と周囲の少女たちが疎遠になったこともあり非常に穏やかな心理状態となるが、記憶が戻ってからクリスマスの寒空の中キャンプ場で悲壮感にあふれた状態で3人バーベキューを敢行し、14巻では護堂から馨のモテぶりを聞いて激しいショックを受け夕日に向かって泣きながら走り去った。残念すぎる言動のせいで周囲からは「三バカ」などと呼ばれているが、意外にも学業の成績はいい方で反町は祐里と同様学年トップを狙える成績。
- 三浦(みうら) / 瑠偉(るい) / 中山(なかやま)
- 護堂の中学時代の野球仲間。護堂によれば三浦は投手の才能はあるものの、性格が読みやすく顔だけでどこに投げるのか分かるらしい[注 55]。東京屈指の速球投手として名を馳せ、強豪校に進学し甲子園にも出場した。残りの2人は高校に入って野球をやめており、球技センスの塊ともいうべき元セカンドの瑠偉はフットサル部に、野武士のような風貌の長打者で元レフトの中山は釣り部に籍を置いている。また明日香曰く、瑠偉(の護堂に対する想い)は「結構微妙だったかも……」。
- 澤(さわ) / 荒川(あらかわ) / 宮間(みやま) / 永里(ながさと)
- 祐理のクラスメート。学年トップクラスの秀才で1年生ながら演劇部で主役を張る眼鏡女子の澤と童顔かつ身長145cmと小柄で料理研究部所属の宮間は明日香のバイト仲間で、『噂のカンピオーネ』では、明日香と共に護堂のモテようとその今後に絶句している。
- 花房 あかり(はなぶさ あかり)
- 茶道部部長で高等部2年。
- 香月 さくら(こうづき さくら)
- 宮城から上京した秋ノ水女子大学1年生だが、中学生にも間違われかねない童顔の19歳。護堂のはとこにあたり、彼が小学三年生時に結婚の約束をした模様。底抜けのお人よし、かつ無邪気な性格。
- 親友の連城冬姫から呪術を教わると共にカンピオーネの事など色々聞かされ、正体を知らぬままその横暴を止めようとする。親には上京後半年は親戚を頼ることを禁止されていたが、これをきっかけとして頻繁に草薙家を訪れるようになる。
- 連城 冬姫(れんじょう ふゆひめ)
- 秋ノ水女子大学の1年生だが、小学生にも間違われかねない容姿の19歳。香月さくらとは同級生で親友同士。四家の一つ、連城家の長女で馨とは幼馴染のせいか対抗意識を持つ。
- さくらに呪術を教えているが、自身は生まれながらに呪力を溜め込めない体質のために「(媛巫女の)資格無し」の烙印を押され、媛巫女を目指すことさえ出来なかった。この体質と容姿がコンプレックスとなり、周囲との関係がうまくいかない模様。女好きだと言われている「日本にいる大魔王」(=護堂)の妾にされるのではないかと怯えて、守秘義務があるにもかかわらず、魔術や呪術、魔王の事などをさくらに話した上、甘粕の手配で中途半端な知識を抱えたまま護堂・さくらを連れて大魔王を探すという騒動を起こすなど、トラブルメーカーとしての一面が強い。高圧的な態度に反して度胸はとことんなく、鷹化や祐理に生意気な口を叩いて一喝されてべそをかいていた。この騒動の後にさくらを通して護堂と文通を試み、馨より上に立とうとしている。12巻ではさくらと一緒に草薙家でのクリスマスパーティに参加している。そこで静花に三つ指を立てて挨拶したが、小学生扱いされて反論していた。術の後遺症か未だ護堂のことを間違えて「ゴローさん」と呼ぶ[注 56]。
- ヤナギさん
- 護堂がバイトをしている店の一つ、上野のダイニングバー「three backs」の店主兼バーテンダー。30代半ばで線の細いイケメンだが、一部では「そっち方面の人」だとささやかれている。未成年のバイトを募集していたときに護堂と出会い、高校生の彼を大学生だということにして雇用した。護堂のことはパートタイムの店長代理を任せるほどに信用している。
過去の人物
古代ヨーロッパの人物
- ウルディン
- →詳細は「§ ウルディン」を参照
- ルスカ
- ウルディンの第1の妻。東洋系の黒髪の美女。
- 神祖の血を受け継ぐ魔女。霊視能力を始め様々な魔女術を使いこなすため、『底が知れない』と評される。かつて、ウルディンの女癖の悪さに怒り、槍で腹を刺したことがあるが、それでもピンピンしていたことに逆に腹を立てたという。
- クロティルド
- ウルディンの第4の妻。身長180cm弱の長身で金髪の美女。
- ルーン魔術の達人で、聖騎士級の腕を持つ猛者。
- 生真面目な性格ゆえ、夫の奔放な行動に悩むこともしばしば。後にエリカたちとは「同じ境遇の女」ということで親しくなった。
- フリウス
- 古代ガリアで護堂たちの生活の面倒を見た老人。
- ローマ人の血を引く貴族で元議員。現在は農園を営む。
- リンデ
- フリウスの小間使いの13、4歳の少女。フリウスから護堂たちの世話を命じられる。
十九世紀半ばの人物
- 鉄輪王(てつりんおう)
- 西蔵に住まう有徳の名僧にして、西域武林の大盟主でもある武芸の達人。
- 当時すでに寿命を迎えようとしていたが、旧知である羅濠教主に末期の望みとしてイギリスへと盗み出された金剛三鈷杵の始末を依頼する。
- ジェラール子爵
- 若かりし頃のヴォバン侯爵の数少ない友人の一人。当時23歳の英国貴族。
- 物怖じしない性格で、孤高の暴君であるヴォバンに対して「デヤン」の愛称で呼ぶ。情報収集を得意としている。
- ブレナン卿
- 肥満体の五十代ほどの男。
- 人の魔術師としては達人級の腕前を持ち、かつてまつろわぬ神の途方もない権能を見たことから神殺しであるヴォバン侯爵の力を疑い決闘を挑む。しかし寿命までも振り絞った切り札の金剛三鈷杵の雷が全く通用せず、侯爵が呼び寄せた嵐に呑まれ消息を絶つ。
用語
神・神殺し関連
- カンピオーネ
- 神(まつろわぬ神参照)を殺してその力(権能と称される)を簒奪した者に与えられる称号。その偉業から「神殺し」とも呼称され、あらゆる災厄とわずかな希望を詰め込んだ箱の中からパンドラとエピメテウスが見つけ出したとされる転生の秘技を使うことから「エピメテウスの落とし子」「愚者の申し子」、人知を越えた力を持つことから様々な魔神の名を冠されて「ラークシャサ」「堕天使」「デイモン」「混沌王(アナーク)」、日本や中国などの漢字文化圏では「魔王」「羅刹王」などとも呼ばれる。ヨーロッパでは一時期「魔術師の王(ロード・オブ・メイガス)」とも呼ばれていたが、必ずしも魔術師たちの中から誕生するとは限らない[注 57]。
- 「カンピオーネ」とはイタリア語でチャンピオン、すなわち勝者を意味する。絶大な力を持つ彼らの第一の呼称が決して強者ではなく勝者であることが、この物語でのカンピオーネの本質にして正しい理解のあり方である。この名称は、賢人議会に所属するイタリア人が彼らについての論文を書いたことに由来するため、19世紀以前には使われていない。陸鷹化曰く「神様だろうがどんな敵でも『勝ち方』を見つけて勝利する、キャリアや実力の差なんて関係ない化物」であり、神と競うことすら不可能な転生前の人間の身ながらも「神殺し」を生物としての実力と運によりなした埒外の存在[注 58]。カンピオーネとなってもまつろわぬ神の方が基本的に実力は上だが、前述のようにそもそも転生前の時点で実力差に関係なく勝利できる規格外の戦士であることに加え、神と対峙すると闘争心が湧く体質になるため互いに討滅し合う関係が十分に成立する。
- 神を殺した瞬間、神具「簒奪の円環」を用いたパンドラの儀式により転生し、瀕死の重傷や四肢欠損などからも回復する。パンドラから生命の息吹を吹き込まれたことで持てる野性が最大限に高まり、人間離れした生命力[注 59]と回復力、そして並みの魔術師の数百倍とされるほどのヒトを超えた呪力を得たことで、心身に直接の影響を与える魔術や呪術を一切受け付けない体質[注 60]を獲得することから、並の人間や魔術師では抗うこともできないとされる。また高い言語習得能力・梟並みの暗視力・人間離れした直感力なども併せ持ち、身体能力は基本的に人間時のままだが闘争心に正比例して勘や反射神経といった集中力とコンディションが最良に近づくため、一度戦闘に入れば潜在能力が完全に発揮される[注 61]。その性質は、手負いの方が恐ろしく戦う毎に強くなるなど魔獣に近い。その異常なまでのしぶとさ(生き汚さ)から彼らを知る者たちは殺される姿が想像できないと評し、大威力であっても遠距離から狙撃するような大味な攻撃では倒しきれないことが本能的に分かっているため戦いでこのような力を使うことはほとんどない。
- 生殖能力も保持し、その血筋は魔術の世界で王族同然の重みを持つ[注 62]ため魔術組織の長・創設者になることもある。天寿は一応あるが、パンドラやアテナ曰く「天寿を全うした者は少なく、戦場で野垂れ死にが多い」。なお、不老に近い体質のようで二百歳を超えても生存可能。ただし容姿は変化する(個人差あり)。
- 人類側が求めるカンピオーネの義務は、「まつろわぬ神が現れた場合、人類代表として戦うこと」のみ。その義務さえ果たせば何をしても許されるという暗黙の了解[注 63]がある。逆に言えば、我欲のために人類の被害を顧みず神を呼び寄せて自身がその神を倒すという、ある種本末転倒なことをしても許される[注 64]。その横暴さなどからカンピオーネに挑む者は歴史上多数存在し、理論上では人間でも殺すことは可能だが「利用することは可能でも暗殺は(異常な勘の良さで気づかれてしまうため)不可能」「理屈が通用しない生物」[注 65]とその規格外さが言及されている。このように、カンピオーネの本質は非常に我が強く自己中心的であり、派手好きのお調子者にして激情家、良くも悪くも周囲を狂わせるなどといった共通点がいくらかある。パンドラによると神殺しになるような人間はどんな出自でも全員自分なりの『勝ち方』をわきまえているらしい。また精神性は勝負師(ギャンブラー)に近く、当代のカンピオーネに関してはほとんどの者で異常に賭け事が強いという共通点を持つ。カンピオーネ同士で互いを同朋・同族などと呼び合うが、その関係はヴォバン曰く「宿敵となるか、相互不干渉の盟約締結や無視が基本」とのこと。ただし、護堂は例外的に作中登場した女性のカンピオーネとは良好な関係を築いている。非戦闘時には同族同士や優れた魔術師であっても神殺しか否かを見分けるのが難しいが、観相術の持ち主から見ると常人の尺度で言う幸運や凶運を超越した「覇者の相」とでも言うべき特異な人相をしているらしい。
- カンピオーネが神を殺した時も同様の儀式により更なる権能を簒奪できるが、カンピオーネの達成条件と同様に「神殺しの母パンドラを満足させうる勝利」を得なければならず、正々堂々の一騎討ちでなくとも相応の戦いぶりを見せる必要がある[注 66]。また、ラーマの権能によりパンドラの力が及ばない状況下だったのか、斉天大聖やランスロットを倒しても権能は増えなかった[注 67]。
- 作中で存在が確認されているのは現代において護堂を含めて7名で、このうち100年以上前に神殺しを為した年長組3名を「旧世代」、近年神殺しとなった年少組4名を「新世代」と呼んで区別することもある。なお、約300年前には智慧の王と呼ばれる老カンピオーネが存在し、ヴォバンと何度も戦った。
- 誕生条件の厳しさから全くいない時代もざらにあったらしく、1世紀に1人現れれば僥倖という程度だが、極稀に複数の神殺しが一つの時代に集中する「当たり年」が訪れることがある。現代や紀元5世紀後半頃など歴史上幾度かその時期があったことが確認されており、かつては王の下に民が集い覇権を争う末世のような状態だったと伝えられる。このような事態は《運命》にとって最も憂慮すべきイレギュラーであるため、それに対処させるべく「最強の《鋼》」と称される英雄神の『最後の王』ラーマが顕現し、魔王を殲滅するための戦いが発生する。
- 作中世界とは別の平行世界にも神を殺した「同族」[注 68]が存在している場合があり、世界ごとにいろいろな呼ばれ方があるが《神殺し》が最も一般的だとされる。
- まつろわぬ神
- 人の紡いだ神話に背いて自侭に流離い、その先々で人々に災いをもたらす神々。神そのものだけでなく、神話において神と同義とされる神代の王や女王、伝承で語られる偉大な英雄に加え、天使に魔獣といった存在が顕現した場合も同様の呼称が使われる。
- 決して朽ちない肉体を持ち、一部の例外を除き化学兵器を含めた地上の武器や魔術も通じず、闘いが生業の神であればデフォルトで人類最高峰以上の武技を持つうえ、「蛇」や「太陽」に由来する神格は不死の能力を持つこともある。カンピオーネ以外にはまず抵抗すらできないが、運だけでは決して成しえない様々な意味での実力と奇跡によってただの人間が神々を殺せた場合、その者はカンピオーネとなる。カンピオーネとは双方本能的に敵として捉えており[注 69]基本的に殺し合う[注 70]が、どちらも生命力自体が不死に近いので勝敗はハッキリつくことの方が稀。また、場合により神同士でも殺し合うが周りの被害を全く考えないため、どちらにしろ人類の災いとなる。意図的に大災害を招く禍つ神もいるが、存在するだけで無意識に超自然現象を引き起こし悪影響を与える神もいる。力の強大さは自我・妄執・アイデンティティーの強さに比例するという特性があり、その神の知名度と強さは無関係である。中には対カンピオーネ用の能力を持つ者もいる。
- (一部のカンピオーネも同様だが)人類などは彼らにとって気に入れば加護などを与えるものの、ランスロット曰く「人間と蟻のようにその気になれば視界に入るが真に理解はできない」という関係で、蟻(人間)一匹を意識して力を揮うのはむしろ恥とする程の格差があるため普段は視界にも入れていない。
- 神話そのものともいえる『不死の領域』から何かのきっかけで神霊となり地上に出でて受肉することで顕現を果たし、地上を彷徨ううちにまつろわぬ神としての性に飲み込まれ、次第に神話の制約が弱かった原始の性質に近づき性格が大きく歪んでいく[注 71]。そして、現世で死した神は、その神格そのものが『生と不死の境界』を経由して『不死の領域』へと戻る。死亡した神の肉体は基本的に砂となって崩れ去り石となって砕け散るが、稀に遺体の一部が「竜骨」として残される。なお「殺す」とは言うものの神々は不滅であり、そのベースが神話である以上一度殺した神が再び顕現する可能性はゼロではないらしい。ただし、信仰心の低下や肉体の消滅などから神祖や神獣と同位の存在である神霊に零落することがある。死した神がそのまま復活することは原則的にありえないが、『最後の王』ラーマの権能「鏃の円盤」の効果やカンピオーネの権能として条件付きで存在することができる場合もある。
- まつろわぬ神の出現には『原則』が存在し、神の降臨の際には、その地と神には何らかの縁があり、降臨時の地上の神話をベースに肉体と精神が形成されてそれに沿った力を持つ。そのため、同じ神でも降臨した時代の伝承内容が変わることで性質が変わり、既に失われた神話の神が長い時間まつろわぬ神として過ごすことによって現代に現れることもある。作中ではナポリで竜が地上に現れた結果、竜蛇を退治するペルセウスがローマ神話の神として降臨した。
- また、儀式によってまつろわぬ神を招来する方法も存在し、それには「きわめて巫力の高い魔女や巫女」、「神の降臨を狂気に近い強さで願う祭司」、「呼び寄せる神に血肉を与える触媒となる神話」の3つの《鍵》が必要となる。実際に、本編から5年半ほど前にアーサー王伝説を触媒としてグィネヴィアの手でまつろわぬアーサーが、4年前にニーベルンゲンの歌を触媒としてヴォバン侯爵の手でまつろわぬジークフリートが招来された。
-
- 大地母神
- 単に地母神とも呼ばれる、大地の恵みを司る女神たちの総称。春に芽吹いた命を冬には刈り取ることから、「生」のみならず「死」をも司るとされ、転じて「冬の女神」「冥府の支配者」としての面を持つものも多い。また「毎年毎年死んでは繰り返し生まれる」ことから不死の属性を持ち、脱皮を繰り返すことから古来不死とみなされた蛇(あるいは竜)をその象徴とする。呪詛や病を武器とするほか、大地にまつわる能力として重力を操ったり、冥界と戦争との関連から闘神としての性質を獲得した者もいる。冷気の攻撃など冥府に由来する力に対しては耐性を持つが、《鋼》にまつわる能力は天敵であり、太陽の力も弱点とする。狩猟や採取を中心とする自給自足の文明黎明期にあっては豊穣を司る「神々の女王」としての高い地位にあったが、時代が下るに連れて武力で他を従える文明の変化とともにその地位は次第に落剥、最終的にその多くは後述する鋼の英雄によって竜蛇として討たれるという伝承が残る。更にこうした英雄譚において、竜討伐に関連して登場することが多い乙女も、鋼の英雄に屈した地母神の零落した姿である。鋼を鍛えるのもまた大地の恵みであることから、自らを討つ鋼の英雄との関係は深く、姉弟や母子、あるいは恋人や配偶者として描かれることもある。海沿いなど、水と関係の深い地方では水を司る女神としての面を持つものもある。
- 神祖(しんそ)
- かつて神の座から追われた大地母神の一部が人の姿をとったもので、「大地の娘」「疑似女神」とでも言うべき存在。神祖の多くは『最後の王』ラーマによって命を吸い上げられて生まれているが、同じ原理で聖杯に命を捧げて神祖となったグィネヴィアなども存在する。強力な者では半神に匹敵すると言われ神やカンピオーネには及ばないが人を超えた異能を持ち、不老不滅であるためたとえ殺されても数百年の時を経て転生し復活を果たす。残りの寿命を捨てることによって、地母神としての神格を取り戻しまつろわぬ神となること[注 72]も可能であるが元に戻ることは出来ず、仮に延命処置を施しても長くは生きられないため最終手段と言える。神性を取り戻した状態で人間に殺害された場合にその人間がカンピオーネになるのか、あるいはカンピオーネに殺された場合にそのカンピオーネに新たな権能が増えるのかについては不明。原則的に前世の記憶は転生の度に失われるが、何らかのきっかけで記憶を取り戻すこともある。また神祖達は『最後の王』に仕える巫女であり、主が再臨を果たしたときは麾下に馳せ参じて献身する者でもあるとされる[7]。人間が神にダメージを与えうる魔術である『聖なる殲滅の特権』は神祖が人間に伝えたものとアレクは推測している。
- 神祖達の末裔は現代において「魔女」や「媛巫女」と呼ばれる特殊な異能を遺伝的に受け継ぐ存在として魔術界に血統を残している。その血が色濃く現れた先祖返りは高水準の霊力を備える傾向にあるが、その代償で肉体的に虚弱となる。
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- 鋼の英雄
- 単に《鋼》とも呼ばれる、生ける剣として外敵をまつろわす軍神・武神・戦神・闘神の総称。存在自体が「剣」の暗喩であり、神話の上で、「石」(鉱石)、鉱石を溶かす「火」、火を強める「風」、焼けた鉱石を冷やす「水」との共生関係にある。その発祥と伝播には軍神アーレスを信仰していた騎馬民族スキタイが深く関わっているとされる。多くは「ペルセウス・アンドロメダ型神話」と呼ばれる逸話を持ち、大地母神が落剥した姿である竜蛇を斃し、武力で国を治めて「世界を創造する」という役割を担う。例外はあるがほとんどが男神。『大地を征する者』として、斃した竜蛇からは力や武具を得、乙女(ほかならぬ自らが倒した地母神の零落した姿)を恋人や支援者などとする伝承が多く伝わることから、竜殺しの権能や大地から搾取する(大地を傷つける)権能を有することが多い。また竜蛇が持っていた不死の神性も、多くは「戦場における不死」という属性として取り込んでおり、「鋼の肉体」(ジークフリート、斉天大聖、ハヌマーン)や「眷属の復活」(ランスロット、テュール、ラーマ)、実体を解く(ペルセウス→光、ランスロット→霧、ハヌマーン→風)などさまざまな能力が作中に登場した。「火山の申し子」とも言えるほどに火山との縁が深いが鋼をも溶かす超高熱は弱点ともなるため、溶岩並みの高温であれば単なる自然現象によっても彼らに影響を与えることが可能。ウルスラグナやラーマのように雷撃を操る能力を持つ者も少なくない。さまざまな神格を取り込んで職掌を広げた混淆神(ハイブリッド)もいるが、より鋼の要素に忠実な伝承をもつ神格は「源流に近い」と称される。基本的に好戦的で血の気の多い性格をしており、多くは策を弄するよりも一気呵成に攻め立てる戦法を好む。この傾向は源流に近いほど顕著になる。魔術など多彩な特殊能力を操る混淆神と比べれば、より源流に近い神格の持つ権能はシンプルにはなるが、その分、一撃一撃の持つ威力がより強力であるため、対峙する神格やカンピオーネにとって(相性の要素はあれど)どちらが上といった問題ではない。
-
- 従属神
- 縁のある別の神に従う神格。関係性によっては同盟神とも呼ばれる。まつろわぬ神の強さがアイデンティティーの強さに比例するという原則により、自我の弱い従属神では必然的に弱体化してしまうため、単体でカンピオーネと戦った場合ほぼ勝ち目はない。しかし、従属神は主の庇護を、主は従属神の支援を受けて強大な力を得るため侮れない。
- なお、召喚するためには莫大な神力を必要とし、「零れ落ちる分だけでカンピオーネ数十人分」とされる聖杯の呪力をもってしても従属神未満の神格しか生み出せず、作中では「古き盟約の大法」を使った斉天大聖とラーマ、自らの命を代償とする呪縛を用いたキルケーの3柱しか成功していない。
- 神獣
- 神やカンピオーネに仕える生物の姿をした眷属のこと。外見はとびきり美しいかとびきり異形かのどちらかであることが多いとされる。あくまで眷属でしかないので、単独では神やカンピオーネに対抗できないがその力は人間からすれば非常に強力。ものにもよるが、1対1なら伝説と謳われるほどの実力者が死力を尽くしてようやく太刀打ちできるかどうかというほどの力を持つため、彼らに対抗するためには「聖なる殲滅者の特権」「神がかり」「御霊鎮め」といった各分野で最高峰の術を使用する必要がある。
- さらには、神やカンピオーネに直接操られたり力を注がれることで単独の時とは桁違いの力を発揮できる[注 73]ため、その脅威度は一気に跳ね上がる。
- 顕身
- 権能を行使する際に、それに適した形態をとること。カンピオーネ自身が狼や雷などへと姿を変える、神獣や使い魔を召喚するといったことを指す。
- 神速
- 作中では電光並の速さで動ける能力(権能)のこと。厳密には物理的なスピードを上昇させることなく「移動時間を短縮する」権能、すなわち時間そのものを歪めるという能力。最初から最高速度で動けるタイプや徐々に加速するタイプがあり、常人では捉えることができず精々何かが動いているという程度しか感知できない。発動中はほぼ無敵となるが、相手も神速を使う、相手が神速を見切る腕利き、神速を封じる力を持つという場合には優位に立てないほか、光速に達することはできないため光による攻撃は回避しきれない場合がある。
- 移動能力としては非常に優秀であるが神速状態では細かい制御がきかないため、高速での突進ならばともかく肉弾戦には向かず、特にカンピオーネが権能として獲得した場合は人の身には余る力であるためか心身に様々な弊害[注 74]が生じる。また、速度自体が上昇しているわけではないので空気抵抗の影響も受けないが衝撃波なども発生せず、神速で運んだ相手を放り出した程度ではそれほどダメージを与えられないなど、攻撃性はそれほど高くない。
- 神速を捉えるには特殊な素質を持つ者や修行を修めた者が得る心眼の極意たる観自在の境地に至る必要があり、最小・最短距離の打ち込みを行える武術[注 75]や神速並の速さを持つ攻撃などでなければまず当たらないが、裏を返せば心眼を持つ武神や人類最高峰の武術家を相手にした場合「ただ速く動くだけ」の技量ではたやすくカウンターを当ててくるため優位には立てない。しかし、神速の扱いに習熟して「遅さ」の制御まで可能となり、その極致たる「緩急自在」の域に達したならば武術の達人にとっても脅威となる。
- 邪眼
- 視界に映ったものを他の物質に変化させる権能のこと。作中には対象を石に変えるアテナの『蛇の邪眼』と生物を塩に変えるヴォバンの『ソドムの瞳』が登場している。対象物は権能の種類によって異なるが、あくまで「ふつうの生き物(や物質)」に対して効果を発揮する能力なので魔術耐性の高いまつろわぬ神やカンピオーネにはほぼ通用せず、彼らの戦いにおいては一時的に動きを止めて一瞬の攻防の役に立てる程度にしか使えない。
- 鋼鉄の肉体
- 《鋼》の不死性を体現する権能の中でも代表的なものの一つ。肉体に鋼鉄以上の硬度を持たせることで身を守るという能力。その特性上攻撃にも転用でき、至近距離の殴り合いで最も効果的に機能する。《鋼》の中でも火と水にまつわる伝承を持つ英雄で多く発現し、有名な所ではジークフリート・斉天大聖・アキレウスなどが所有している。ほぼ全ての攻撃を無効化できるが鋼の弱点である超高熱への防御は完璧ではなく、衝撃は防げないため吹き飛ばされてしまうことなどはある。
- 竜骨
- 地上に顕現した「まつろわぬ神」が肉体を失うとき、まれに残される肉や骨、骸の一部。「竜骨」とは中華の道士たちによる命名で、北米では「天使の骸」と呼ばれるほか「聖遺物」といった別名もある。骸であっても神の一部なので神獣よりもはるかに格上の神格を持ち、魔術師たちに強力すぎる力をあたえることから崇拝の対象となる。作中では中国の創造神・女媧の残したものと、『最後の王』の救世の神刀が登場する。
- 幽世(かくりよ)
- 妖精王と呼ばれる幾柱かの神々が支配する世界で、「命なき死にぞこないどもがたむろする領域」、端的に表現するなら「あの世の直前」「三途の川の手前」のような場所。欧州では「アストラル界」や「妖精境」、中国では「幽冥界」もしくは「幽界」、ギリシアでは「イデアの世界」、ペルシアでは「霊的世界(メーノーグ)」、それ以外の地域では「霊界」、「星幽界」とも言われる。現世と不死の領域の境目に存在するため神々からは主に「生と不死の境界」と呼ばれており、不死の領域にいる神が神話による肉体が形作られることで現世に出現してまつろわぬ神となる。無数の階層で構成された世界で、宇宙開闢から未来にいたるあらゆる時代の記憶が存在しており、この世界の知識を天啓として受けることで霊視を得ることができる。パンドラがカンピオーネと会う場所もここである。妖精たちのほかにも、隠居した元まつろわぬ神や神祖、人の身を超えた魔術師などが住んでいる。肉体より精神、物体より霊体の方が優位な世界であり、魔術師が足を踏み込むためには貴重な霊薬の服用と『世界移動(ブレーンウォーキング)』という高度な魔術の使用が不可欠となる。魔術の素養を持つ者ならイメージしただけで転移が可能となるが、逆に素養の足りない者が迷い込んだ場合は転移に失敗して迷子になってしまう。この場所では比較的自由に霊視を呼び込むことが可能だが、人の住むべき場所ではないため長居しすぎると人としての肉体を失う危険性がある。
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- 妖精王
- アストラル界に存在する支配者層の総称。『かつてはまつろわぬ神であったが地上を去ったもの』『神とまでは行かないがかなり上位の霊性を備えた半神』『生身の肉体を捨てて不死となった元人間』などが稀に至ることがある。彼らは自身のプライベートスペースを「禁足地」とし、直接転移できない結界空間としている。現在在位中の妖精王は、盟主たる魔神王アル・シャイターンを筆頭に、神殺しジョン・プルートー・スミス、王女サロメ、北の暴風王ボレアス、黒小人の鍛冶王アルベリヒ、砂嵐の王シムーン、崑崙山に住む人虎大仙、聖木ガジュマルの森を治める聖なる雨の王、笑い声だけで死を招く亡霊王、花食べる鬼女の息子たちシュエピンジとシェピンゲ、妖婆キキーモラの12名。また、かつての妖精王としてスミスに討たれたオーベロン、アイーシャに斃された常若の国の妖精女王ニアヴが挙げられている。
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- プルタルコスの館
- アストラル界のスミスが統治する領域の一角にあるギリシア式の小さな神殿。主は時の番人と呼ばれる老人で、古ラテン語で記された石版として実体化した「虚空(アカシャ)の記憶」の保管庫でもある。また、番人が修正時に利用する『時の門』(望んだ時代に行くことの出来る強化版『妖精郷の通廊』のような物)が存在しており、あらゆる時代に通じる特異点となっている。魔王内戦において最終局面の舞台と成り、戦闘の余波で地上部分はほぼ全壊してしまう。
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- 桃源郷
- 幽冥界に存在する仙女達が住まう桃園。羅翠蓮がカンピオーネとなってからは幽冥界における本拠地兼仮宿として利用されている。
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- 評議場
- 常に夜となっている階層の草原に作られた巨石建造物で、野球場のダイヤモンドほどの大きさのストーンサークル。妖精王や賢人が集い会議をするための評議場であり、禁足地の呪法がかけられているため所定の手順を踏まなければ到達できないようになっている。
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- 運命神の領域
- 生と不死の境界の中で最も不死の領域に近い場所。《運命》そのものである運命の糸を絨毯状に織りあげた色鮮やかな万色の織物が広大無辺に広がる空間。ただしカンピオーネほどの力がない限り見通すことができず、灰色の虚無的な空間にしか見えない。
- 神具
- 神の武器、あるいは天上の叡智や聖なる呪術の法則を刻みつけた魔導書のようなもの。「神宝」とも呼ばれる。外見上は物質であるが、神やカンピオーネでも破壊不可能な「不朽不滅」の品も珍しくない。神に関連した道具が多いため、これが引き金となりまつろわぬ神が招来するといったことも多く、学術や資料・儀式的にも高い価値があるため非常に扱いが難しい。格の高いものの場合、意思を持ち会話する能力を持つこともある。
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- プロメテウス秘笈(プロメテウスひきゅう)
- ギリシア神話に登場する神を欺き人を導く偸盗の英雄神プロメテウスの神力を宿す神具であり、神の力を盗む魔道書。形状はプロメテウスの似姿が刻まれた石版で、そこから吹き出す青い焔を神に当てることで神力をかすめ盗り、貯めた分の力を使用できる特性を持つ。ただし、対象とする神と長く接し話し込んだ人間でないと扱えない。盗むのにはあまり負担が無く魔術の知識が無くても使用できるが、溜め込んだ力を使用することは術者の身体に大きな負担をかけ、人間が使用した瞬間脳髄や全身が沸騰する程の苦痛を受け死亡する[注 76]、強力な神が相手では力の一部しか奪えないといった欠点がある。ルクレチアがコーカサスの山奥で発掘し、40年以上前に日本に置いて行ったものが草薙家に届いた。護堂は自身の力と秘笈を用いてカンピオーネになった。なお、護堂がカンピオーネとなった後の詳細は不明だが、1巻では「もう無い」と述べられている。
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- 鏃の円盤
- 『最後の王』ラーマが使用する英雄招来の権能の核となる神具。自らの前で斃れた《鋼》を鉄と黄金の合金からなるメダリオンとして保管し、実体化した神々に精気と呪力を供給する。死した神を記憶を保ったまま蘇らせる奇跡だが、世界の理に反する権能なので、モチベーションの低下により生前ほどの力は発揮できず、同時に使役する神が多いほど個々の力はさらに弱まり、神力の回復のため一定の時間で実体化を解かなければならないなど制限も多い。なお、この神具に魂を吸い上げられた場合、「簒奪の円環」を回すことはできずカンピオーネの権能は増えない。
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- 魔導の聖杯
- 1500年程前に大地母神グウェンフィファル(のちの神祖グィネヴィア)が『最後の王』ラーマのために作り出した不朽不滅の神具。黄金製で、杯というよりは大甕に近い形をしている。地母神の命を呪力としてプールする力を持ち、一定の手順を踏むことで生きた地母神、あるいは地母神の骸から強制的にその精気を奪い取ることが出来る。これまでに貯め込まれた呪力の量は膨大でカンピオーネが持てばまつろわぬ神さえ一蹴し、世界を滅ぼすほどの力を得るとさえ言われている。本来は『最後の王』が流浪の旅をして地母神から呪力を搾取する手間を省くために作られたものであり、彼が「救世の神刀」を抜くことで蓄積されている呪力を自動的に供給し完全覚醒へ至らせる。グィネヴィアは蓄えられた魔力を利用した『神威招来』で偽りのまつろわぬ神を生み出すことができる(ただし、自我が弱いためその力は従属神以下)。また、グィネヴィア自身の命でできているため、彼女は聖杯の位置を探知できるだけでなく、どこにあっても自分の元へ転移させることが可能。
- アレクの探索目標であり、聖杯を手に入れようとして欧州で大規模な聖杯争奪戦が二度勃発した(結局その聖杯は贋作だった)。グィネヴィアの死の間際にその情報を受けた後、最後に吸い取ったのがアテナの命だったために《神祖》として新たな魔女王パラス・アテナを転生させ、彼女の肉体と一体化した。
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- 救世の神刀
- 『最後の王』ラーマの佩刀にして分身である鋼。アーサー王伝説でカリブルヌス、エスカリブール、エクスカリバーなどと呼ばれる剣の原型となった武器。天地を引き裂き星をも墜とす竜殺しの鋼で、大地母神の精気を奪い白き恒星となる末世の宝刀。救世の力の象徴であり輝ける最後の希望とされる。『最後の王』が眠りにつくとき朽ちた刃渡り1m程の両刃の剣の形をした竜骨として残される。
- ラーマ王子がヴィシュヴァーミトラ仙と神々から与えられた数々の天界の武具を一つに束ねた器であり、一振りの剣でありながらありとあらゆる武器の性質を内包していることから、おびただしい数の武具をモチーフとした《神刀の曼荼羅》[注 77]こそが「魔王殲滅のための究極の神剣」としての真の姿である。曼荼羅は上空に展開される戦術兵器であり、雷光の形で無数の鉄製武器を降らせて攻撃する。武器の中では矢が一番多く含まれているが、その種類は槍・薙刀・斧・剣など多岐に渡り、さらには射抜いた神殺しから本来の呪力や回復力を封じる劇毒が塗られた鏃まで存在している。雷をまとめると白き恒星の如き巨大な球雷が生み出され、その威力は全力の『黒の劔』をも凌駕する圧倒的な破壊力を発揮する。ラーマ以外でも使用することは可能だがどれだけ使いこなせるかは神格に依存しており、《鋼》の方が適正を持つ傾向がある。本来の使用者であるラーマにとっては己の不死性の根幹をなす神具であると同時に、自身が持ちうる最強の武器である「弓と矢筒」の封印を解除するための鍵としての役割も持っている。
- 本物は房総半島上空の衛星軌道上に存在するが、「石に突き刺さった剣」というモチーフは軍神の象徴としてしばしば用いられたものであるため[注 78]、大陸の東西にまたがって同様の神刀が複数存在する。例として初代グィネヴィアが発見しブリュターニュで保管していたものは9巻にて二代目の手でトラキアの地に持ち込まれた後にランスロットが使えるよう「神槍エクスカリバー」として鍛え直され、アレクがインドネシアで発見したものはグィネヴィアを呼び寄せる囮として浮島に運び込まれた。なお、ランスロットは巨大な球雷を発生させるところまでしか披露していないが、使ったのが本物でなかったからなのかどうかは不明。
- 天之逆鉾
- 木更津で発掘された土と巌に関わる神具。通常ではボールペンほどの大きさだが、地母神の「水と大地の霊気」に触れることで1mほどの大きさに伸びる。伊弉諾命と伊弉冉命による『国生み』を再現するための鉾(漁具)で、水中をかき混ぜることで陸地を産み出し地面をかき混ぜることで土を流動体の『蛭子』へと変える力を宿している。一度蛭子に変えた物質は逆方向にかき混ぜ直すことで再び固体化させることが出来る。
- 『最後の王』が寝床としていた「浮島」を蛭子に変えた神具として1000年以上前に古老たち直々の命令で厳重に秘匿されていたが、グィネヴィアがこれを狙ったためカンピオーネである護堂が保管することとなる。しかし、アテナの襲来により甘粕に託され、それをアレクが強奪、女媧の竜骨を利用してグィネヴィアをおびき寄せるため東京湾に沈められていた浮島を浮上させる。東アジアの海洋民族において『島釣り』を行なったとされる釣針と起源を同じくする神具であることから環太平洋圏には同様の効果を持つ神具が他にも存在し、かつてアレクもよく似た『鉾』を発見して13巻に登場する島を作り上げている。
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- サトゥルナリアの冠
- 冬至の祭りを再現しまつろわぬサトゥルヌスを生み出す神具で、器物でありながら会話し、わずかに神性を有する(とはいえ天叢雲劍に比べれば遥かに格下)。冬至が近づくにつれて神力を増す性質を持ち、『灰色の者』と呼ばれる元太陽神の神霊を祭司としてサトゥルヌスを復活させることができる。太陽の印である『鳥』の形をした石造りの立方体で、中には「棺」と呼ばれる黄金に輝く楕円形の空間が存在する。棺の内部には呪術で作られた小麦畑の広がる空間があり、最奥部の神殿に太陽神の亡骸が安置されている。神具の本体は亡骸が身につけている獅子を模した黄金の仮面。
- 羅濠に敗北してから150年かけて力を取り戻したものの、護堂との戦いで『戦士』を吸収した天叢雲劍に本体を切り裂かれ活動を停止した。
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- 簒奪の円環
- 神殺しと化した人間による神の力と権威の簒奪を成就させるための器。かつて「強奪の円環」と呼ばれた自力で殺した神の命を贄に捧げ、その骸から権能を奪い取る神具を利用したものであり、屈服させたものの力を奪う《鋼》の属性と同種のもの。外見は大きな鋼鉄製の円盤で、中央に竜の頭とその周囲に8本の剣を並べる刻印がされている。プロメテウスが発見、エピメテウスが見つけ出し、パンドラに託された。
- 弼馬温(ひつばおん)
- 日本から蛇神・龍神の類を祓うために斉天大聖・孫悟空を日光に封じ込めた大呪術。「弼馬温」とは天界の役職の位で天宮の厩の馬の世話をする厩番のこと。古老の面々と当時地上にいた黒衣の僧によって行われた。斉天大聖から神通力と神の気概を封じ猿猴神君として封じる力を持つ。この術の核となるのは、「顕聖之符」と呼ばれるかつて天界で暴れた孫悟空を捕らえた顕聖二郎真君の破邪の符である[注 79]。この符に宿る力を利用してヴォバンの『ソドムの瞳』によって塩に変えられた正史編纂委員会の職員たちを救ったが、この件がきっかけで顕聖次郎神君本人が顕現することとなった。
- 盟約の大法
- 『最後の王』ラーマが「剣神の宿星」に祈願することで使用できる、「地上に複数の神殺しがいるとき、天地と星々から力を引き出し自身の呪力を爆発的に増やす」という魔王殺しのための大呪法。その正体は『勇者が魔王を倒した』という筋書きを全うさせるために一時的に支援するシステムのようなもので、カンピオーネの数が増えるほど呪力増加率も上昇する[注 80]が、あくまで「修正力」の応用なので無限大に強くなることは出来ない。ラーマ自身も無条件に使えるわけではなく、地母神の命を得て完全覚醒を経ているか、盟約を批准した神々が神殺しの手で殺された場合にのみ発動できる。また、ラーマ以外でも聖天大聖のように然るべき武勇と権威を有する一部の《鋼》ならば使用することも可能だが、その場合、効果は減少する上に発動条件も厳しくなる。
- 歴史の修正
- ギリシア神話のヘルメスや日本神話の八咫烏、猿田彦神といった旅人の権能を有する神々や妖精によって過去に流された人間たちが偶然と奇跡によって歴史を変えるようなことをしても強制的に「なかったこと」になるという現象。その際に働く、時の流れが持つ無慈悲で冷酷な力を「修正力」という。ごく稀に修正しきれないような改変が起こるが、その場合は時の番人が介入し影響を最小限に抑えた結果である「あるべき歴史」に落ち着くこととなる。修正が失敗した場合は改変時に新たな分岐が発生し、「異なる時間軸の平行世界」が生み出されることになる。
権能
神が持つ「神を神たらしめる力」、もしくはカンピオーネが神を殺して手に入れた聖なる力のこと。ここでは後者を説明する。その中には一見すると殺した神とは無関係に見えるものもあるが、エリカは権能の内容は神の特性とカンピオーネの個性を反映してアレンジされると推測している。非常に強大な力であり、使っている本人でも範囲や威力の上限が分かっていない場合がある。発現の仕方にはかなりの幅があり、戦闘用に限っても単純に身体能力を上げるものから超自然的な現象を引き起こすもの、神獣や神そのものを条件付きで顕身として呼び出すものなど様々。権能の名称はほとんどのカンピオーネ当人が頓着しないため、賢人議会が名づけていることが多い。新世代の面々が持つ権能についたは簒奪した神からその能力の詳細に至るまでわかっていることが多いが、旧世代の権能については調査が及ばずよく分からないものがほとんど。
いわゆる「第一の権能」は特にフレキシブルかつ大雑把なものになるため応用を利かせやすい場合が多い。一柱の神から簒奪した権能でありながら複数の発動形態をとるのは珍しい権能とされるが同時に何らかの制限がかかる[注 81]。戦闘でしか権能は磨かれず、また荒ぶる魂が行使に必要なためある程度の緊張感などがほぼ必須とされ、通常訓練は無意味である。ただし、中には戦闘に直接使用できない儀式的な物が発現する場合もあり、恒常的に発動したり日常生活で行使可能な権能もある。
以下に、作中に登場した主な権能を挙げる。
草薙護堂の権能
- 東方の軍神 (The Persian Warlord)
- 草薙護堂がゾロアスター教の《鋼》の軍神ウルスラグナから簒奪した最初の権能。10の化身を適宜用いて敵と戦う。どれも非常に強力だが発動させる条件がかなり厳しいため、作者は護堂のことを「超必殺技しか持たない主人公」と述べている[8]。なお、全ての化身に共通して、1度使用したら同じ化身は一定期間使用不能となる[注 82]。ウルスラグナとは違い化身を2つ同時に使用することもできるが、身体への負担が大きいため基本的には1つずつしか使用されない[注 83]。また、顕現後の所業にも依存するがウルスラグナと同じ「正義の神」に対してはどれも発動させづらいという難点がある。化身によっては申し合わせても使えそうな条件の物もあるが、パンドラ曰く「実戦並の緊張感がないとたぶん行使は不可能」とのことで、相手が自分に対して害意や敵意を抱いていることが発動に関する最低条件であるとも考えられている。エリカの推測では護堂の「来る者は拒まず」という性格が反映された権能ではないかとされている。
- 強風
- ウルスラグナ第一の化身。
- 民衆・旅人の守護者としての化身。知人が護堂の名を呼べば、その場所へ瞬間移動する。転移のときは渦巻く風に包まれる。その際、周囲の人間を同時に移動させることも可能。距離は関係ないため地球外にも転移でき、「幽世と現世の境界」すら飛び越えて移動できる。
- 発動条件は双方が風の吹く場所にいて、呼び出す側がかなりの危機[注 84]に立ち会っていること。この性質から権能が発動可能になった段階で知り合いが危険にさらされていることを逆説的に察知できる。
- 雄牛
- ウルスラグナ第二の化身。
- 人間の限界を超える怪力を持つものと戦う際、大地を通じて圧倒的な怪力を得る。体重の数百倍までの物なら容易に持ち上げて破壊できる[2]。また、行使対象が大きく重いほどに、その怪力の度合いも跳ね上がっていく特徴があり、体重70kgの護堂自身を対象に使っても驚異的な跳躍力などを得られる。野球経験を活かして岩などを時速100km以上の速度で投げつけるなど応用範囲も広い。化身の中では比較的条件が緩く、戦闘時はまずこの化身になることが多い。
- 発動条件は相手(生物以外でも可)が常識外の腕力、力を持っていること。力が強くても人間の枠に入っているもの(ヘヴィー級の格闘家など)は対象外で、少なくとも大型肉食獣や車両が相手である必要がある。対象となる敵が消えると十数分で効果が切れる。
- 白馬
- ウルスラグナ第三の化身。
- 光明神ミスラの馬車を曳く馬を表す化身。東の空に昇る第2の太陽[注 85]から、焔の槍が照射されて地上の標的を焼き尽くす。太陽のかけらを地上に落とす技なので10の化身の中でも最大火力を誇り、攻撃軌道上にある高層ビルや首都高の高架を簡単に溶解させるという圧倒的な破壊力を見せた。単発で連射はできないが、一旦発動すれば視界から消えても自律的に攻撃し続ける。攻撃範囲についてもある程度制御でき、狭めればヨット2〜3艘ほど、最大範囲は不明だが運命神の領域に存在する運命を概念化した端が見えないほど広大な織物を完全に焼失させることができるほどの宇宙的大爆発を引き起こすことすら可能である。冥府に縁のある神格に対しては極めて有効であるが、光や太陽の属性を持つ神などには防がれやすい。7巻では『戦士』と「融合」させることで、特殊な「剣」を作り出した(詳細は後述)。
- 発動条件は、攻撃対象が民衆を苦しめるような大罪を(過去を含め)犯していること。10の化身の中でも使用条件が格段に厳しいが、護堂の敵のほとんどが過去もしくは現在進行形で悪行を行っているために使用頻度は割と高く、いざとなれば自分自身を対象に発動することも可能である。
- 駱駝
- ウルスラグナ第四の化身。
- 大地と深いかかわりを持ち、忍耐と獰猛さを象徴する化身。発動時には、蹴りの威力と耐久力・格闘センスが飛躍的に上昇し、神々と伍する程の格闘能力を(蹴り技限定で)得る接近戦最強の能力。10mの跳躍ができる身軽さも得られる。同時に、負っている傷の痛みが緩和され、治癒力も向上する。そのタフネスぶりは心臓を刺し貫かれてもなお即死せず、しばらく格闘戦を続けられるほどである。また、神速を見切る心眼を不完全ながらも得られる[注 86]。後に掌握が進み、打突部位に呪力を集中させ打撃の威力を爆発的に高められるようになる。強化された蹴りの一撃は神の肉体を一撃で爆裂させ、鋼鉄の肉体を以てしても内部まで衝撃が浸透するので完全に防ぎきることはできない。
- 発動条件は一定以上(刀剣で刺されるなど)の怪我を負うこと。
- 猪
- ウルスラグナ第五の化身。
- ミスラが契約破りの罪人を罰するときに使う化身ともされる、体長約20mの容貌魁偉な黒き猪の神獣を呼ぶ。地面や空中どこからでも召喚でき、地を駆けることで小規模なマグニチュード5程の地震が発生、咆哮に付随する衝撃波により周囲を破壊し、大きな牙を伴う突進で対象を完全に粉砕する。10の化身の中でも特に自由度が高く[注 87]、雄牛と並び発動条件が緩いため多用される、破壊力と使いやすさを兼ね備えた最強の化身。召喚獣ではなく護堂の破壊衝動から生み出される分身に近い存在なので、発動中は護堂自身も『猪』の影響を受けて高い突進力を得る。また意外に打たれ弱く、守勢に回ると脆い側面もある。聖獣でもあるためその咆哮には破邪の力があり、13巻では力を溜め口から衝撃波を大砲のように発射する技と、全身に衝撃波の壁を纏う技を身に付け、17巻では衝撃波だけを先に呼び出すことも可能となった。
- 発動条件は、大きなもの(目安は10t以上)を破壊させる約束で召喚できる。目標が人間大だった場合など巨大でない敵を倒す際には、周囲の巨大建造物や山などの地形を破壊対象に指定し、そこへ目標を巻き込む形をとるか「おあずけ」にして先に敵を倒させるかといった誘導が必要になる。また、新たな目標が出現した場合、猪の合意があれば途中で破壊対象を変更することもできる。猪自身にも意思があるため対象とした物体を破壊させずに帰らせようとしても言うことを聞ない。破壊対象にも好みがあり、動かない建造物よりは神獣などを倒したがる。その性質上護堂が起こした破壊活動の中でも大きなウェイトを占める化身である[注 88]。
- 少年
- ウルスラグナ第六の化身。
- 罪なき民衆を庇護する際に使われた《英雄》の化身で、加護と祝福、支配を司る。対象へウルスラグナの加護を与えることが出来る。加護を授かった者は一時的にカンピオーネと同等の頑強さを得、呪力や霊力も劇的に増加する。さらに加護によって体力は完全に回復し、毒などの状態異常も解消される。ただし、加護を与える際には永遠の従属を誓わせる必要があり、さらに行使時には対象に強烈な苦痛を伴う。加護を与える方法は口移しか、対象者の傷口に護堂の血を接触させるかの2通り[2]。権能を発動すると心が澄み渡り、強引にキスをする、結婚しても構わないと口にするなど、日頃とは打って変わって女性に対し積極的になる[注 89]。
- 発動条件は護堂のために戦った大切な誰かに危機が迫ったときであること。
- 鳳
- ウルスラグナ第七の化身。
- 神速のスピードと身軽さを得、雷をよけるなど目視で捉えられないほどの速度で動けるようになる。荷物の重さが0になる効果もあるため、人一人程度なら抱えて10m以上跳べるほど身軽になる。最初から最高速度で動ける反面、身体への負担が大きいのか、時間経過で胸に激しい痛みが走り、解除後しばらく行動不能になる。ただし痛みに関しては回復魔法で軽減することが可能。また速すぎるため細かい動きは難しく、動く敵を攻撃してもずれやすい。アレクの「電光石火」とは違って飛行能力は獲得できないため、神速で空を飛ぶためには天叢雲のコピー能力を併用する必要がある。
- 掌握が進んだ結果、加速能力のみならず減速能力にも目覚め、常に最高速度で動くだけでなく急制動をかけて緩急をつける技術を得たことで、落下速度を減速させてほぼ浮遊状態に留められるようになった。さらに神速の行使に慣れたことで持続時間が延び、短時間の発動であればデメリットである使用後の行動不能をキャンセルできるようになった。10の化身では例外的に、化身を完全に切り替えない限りは神速状態のオン・オフが可能という特徴があるため、感覚のみを加速させる事や神速をオフにしたまま身軽さだけを引き出すことも可能となっている。高速近接戦闘には向かないという欠点も克服しつつあり、『駱駝』と同時発動することで神速の肉弾戦も可能になっている。
- 発動条件は、高速の攻撃を受けること。剣戟や銃弾の速度でも条件を満たす。
- 雄羊
- ウルスラグナ第八の化身。
- 豊穣や富を表す王権と関わりの深い化身。どんな怪我でも短時間(およそ2時間ほど)で回復する能力で、死の呪詛を直接体内に吹き込まれても、打撲や刺傷によって心臓をはじめとする臓器を損傷しても元通りに復活を果たした。ただしパンドラが「甦る前って一回きっちり死んでいる[注 90]」と語っているとおり、正確には完全に死んだ状態から肉体を再生させた上で蘇生するという能力である。蘇生時間により権能の掌握具合が分かってしまい人間離れの度合いを自覚させるため護堂はあまり使いたがらない。
- 発動条件は自身が瀕死の状態であることと瀕死の時に「黄金の毛皮を持つ羊」をイメージすること[2]。その性質からどれだけダメージが大きくても致命傷を負っていなければ負傷を癒やすことはできず、瀕死の時に自分の意思で発動する必要があるため即死では発動できないという弱点がある。
- 山羊
- ウルスラグナ第九の化身。
- 印欧語系の騎馬民族が稲妻の化身として崇拝した、祭司の特殊な呪力を象徴する「角」を持つ聖獣。化身の発動によって強い精神感応力を獲得し、周囲の仲間や民衆(その生死は問わない)と心を一つにすることでその生命力(負の精神エネルギー)を奪って雷雲と電撃を操る。初めて発動した2巻ではまだ慣れていないためか、ヴォバンの呼び寄せた雷雲を奪い取っていた。周囲の者から生命力を奪う関係上、この化身が発動している間、人によっては意識が遠のくなどの影響がある[注 91]。魔術の才能が無い護堂でも如何なる大魔術師をも超える魔導力が宿り、呪力の扱い方やセンスが格段に向上、雷をボール状にまとめて投げつける、ドーム状に展開するといった細かい制御が可能となる。能力が雷の制御に特化しているため、雷に関しては天候全般を操作するヴォバンの『疾風怒濤』以上の影響力を発揮する。瞬間的な火力では「白馬」や「猪」に及ばないが、単発でもカンピオーネの魔術耐性を突破するほどの威力を連発できるといった利点がある。
- 発動条件は群衆が「不幸」「苦難」「不安」「恐怖」にさらされていること[2]。一旦発動さえしてしまえばその力で民衆の心に干渉し扇動することで恐怖心を束ね、周辺一帯から精神エネルギーを吸い上げてほぼ無限に攻撃し続けることが可能。
- 戦士
- ウルスラグナ第十の化身。
- 「まつろわす神」としての権能を体現した化身で、戦士が持つ黄金の剣の具現。相手となる神の知識を詳らかにすることで、言霊から黄金に輝く光球を無数に創り出して敵の神力を斬り裂く智慧の剣であり、標的本体に当てればダメージと共にカンピオーネや神の権能を一時的に封じることができる。光球を束ねることである程度形を変えることも可能で、実体化させ本物の剣にすることもできるが剣士ではない護堂は主に飛び道具として操る。体内に宿せば対象となる神の攻撃をある程度緩和できるが、こうした消極的な用法にはあまり向かない。神相手なら最強の盾であり最強の剣でもある便利な武器だが、使い続ければ実際の剣同様に消耗し光球の数が減少していく。カンピオーネの場合は基本的に一つの権能しか封じることはできない。神獣程度なら一太刀で滅ぼすことができるが決定力に欠けるためこの化身だけでまつろわぬ神を殺すことはまず不可能で、神々が別の神に由来する力を使った場合もうまく効力が現れず[注 92]、不朽不滅の神具はごく短時間しか機能を封じられない。神格にある程度の類似点があれば発動中でも剣を切り替えて対応できるが、神格の差異が大きくなるほどその効果は弱くなり体への負担も大きくなる。名を隠している相手に対してはその効果が通常より大きくなるが、変身能力を持つ神や複合的な神格を持ちそれぞれを分離できる神とは相性が悪い。発動させている間は身体能力が向上し、対峙する敵を深く理解できる洞察力、神々の本質や呪力を見抜く眼力、『山羊』同様の魔導力を得るため、相手の神が使おうとした技だけでなくカンピオーネが対応させたものとは異なる未知の権能を使用した場合にはその素性まで理解できるなど霊視にも似た能力[注 93]を持つ。これらの特性から、護堂は敵の厄介な力を封じることで劣勢をひっくり返す手段としてこの化身を使うことが多い。また、7巻では『白馬』との併用(太陽と融合)で特殊な「剣」を作りだした。
- さらに、光球同士を結合させることでより強力な効果を持つ「ウルスラグナの聖剣」を作り上げることも可能。数は8つにまで減少するが、攻守ともに能力が通常時の数万倍に上昇、多少別の神格の力が混じったところでそれをも打ち砕くことができる。通常の剣と同様、一度きりだが斬り裂く神の対象を変更できる。
- 発動条件は相手の神またはカンピオーネの権能の源である神について深い知識を得ること[注 94]。普通の高校生である護堂は周囲の魔術師から「教授」の魔術によって知識を得るのだが、カンピオーネの体質的にその手段が口移ししかないため、エリカ・恵那はともかく護堂・祐理・リリアナには抵抗感が大きい模様。
- 『白馬』と『戦士』の融合
- 『白馬』で作った第2の太陽に『戦士』の無数の刃を混ぜ合わせることで、光速の武器を生み出す。これにより、本来単発であるはずの光線を莫大な数まで増やすことができる。斉天大聖との戦いで使用し、彼の権能で猿に帰られた日光一帯の人々をわずか5分ほどですべて救った。強力である反面負担も大きく、使用中は焼けつくような痛みが脳をはじめとする全身の臓器を襲い、防御に気を回す余裕すらなくなる。
- 天叢雲劍(あまのむらくものつるぎ,Ama-no-murakumo)
- 声 - 山口太郎
- 征服神の神格と《鋼》の属性を持つ日本最高峰の神剣であり、速須佐之男命が八岐大蛇を倒してその尾から入手した愛刀。スサノオのまつろわす神としての性質の根幹を成す蛇殺しの鉄剣で、持ち主以上に源流に近い性質を持ち大地母神の霊力を融合させる能力を有する。別名「草薙劍(くさなぎのつるぎ)」。スサノオの他にも日本武尊が振るったことで知られる。形状は刃渡り3尺3寸5分の豪刀で、通常時は白銀の刀身を持つ蕨手刀だがまつろわす力を発揮すると刀身が漆黒に変色した彎刀へと姿を変える。三種の神器として伝わっているものとは別物なので考古学的な意味では偽物だが、神の所有物として見れば限りなく本物に近い宝物。正確には権能ではないが「神刀・天叢雲劍から簒奪した草薙護堂第2の権能」として扱われることも多いため、神にまつわる護堂の能力としてここに記述する。
- 本来の所有者である御老公(速須佐之男命)は幽世で隠棲中のため当初は媛巫女の清秋院恵那に貸与されていたが、幽世での神がかり失敗により巨大化して暴走状態に陥る。現世に転移して暴れ続けていたところを護堂が千鳥ヶ淵ごと破壊して倒したことで彼の所有物となり、天叢雲劍からの提案で「相棒」という関係になった。
- 神が自らのために作り上げた神具に近い器物でありながら従属神のような存在で、高い神性と自分の意思を持っている(一人称は『己〈オレ〉』)。普段は護堂の右腕を「鞘」として眠っており、護堂が意識して話しかけるか闘いにならない限り会話すらしない。派手好きな性格にして本分である闘いのことしか頭になく、それ以外のことに気を回すつもりがないが、戦闘時には普段と打って変わってかなりおせっかいになり積極的に護堂に助言するようになる。
- 主と同じく偸盗の能力を持つ。第一の能力は、「まつろわぬ神やカンピオーネの権能一つをある程度コピーし一時的に自らの力とする」というもので、当初は傷を与えた物から出なければ使用できなかったが後に掌握したためかその過程を経ずともコピーできるようになる。第二の能力は「護堂がウルスラグナの権能を天叢雲劍に流し込むことで自身の権能を強化・発展させ、彼に新たな異能を与える」というもの(それぞれの能力は後述)で、第一の能力とも併用できる。ただし、この能力は天叢雲にも負担が大きいため1度使うと日を空けなければ使うことができず、全ての化身を適用させられるわけでもない。
- 『強風』との融合
- 使い手に風の速さと颶風の破壊力を与える『風の劍』となる。
- 『白馬』との融合
- 刀身が黄金の輝きを放つ「太陽のかけら」となり、魔王殲滅の力を得た救世の神刀に匹敵する攻撃を繰り出せる。
- 『猪』との融合
- 黑金の装甲となり、《鋼》の肉体を持つ「猪の形をした生ける神刀」に化身させる。一対の牙は鋭い刃となり、敵に向けて射出することも可能となる。なお、性格の一致によるものか、両者とも普段よりテンションが上がり生き生きとした状態になった。
- 『山羊』との融合
- 雷撃の大電流により磁鉄鉱に磁力を帯びさせることで即席の電磁砲を作り上げ、敵を超高速で打ち出す「電磁鉄鋼の秘術」が可能となる。
- 『戦士』との融合
- 不朽不滅の神具すらも斬り裂く輝く「黄金の剣」となり、斬り裂かれた神具は少なくとも数日間その機能を停止する。
- 権能には効かないが、それより劣る呪詛や魔術の類の力を打ち破る破魔の力をも持つ。また、無数の破片と化して飛散し対象を爆散させる千釼破の神力を有し、魔術の触媒となって神威によりその術を強化することもでき、短時間なら《黒の剱》の制御を単独で行うことも可能。さらに護堂を鞘としていることから、剣を肉体の延長と解釈することによって体の動きを任せて達人並みの剣技を振るうことができるようになる。なお、護堂が貸与の意を示せば元の使用者である清秋院恵那も直接使用できるほか、ドニやランスロットにも貸し出されている。護堂と恵那の間で通信機の役割を果たすこともできるが、そういった扱い方はに関しては消極的な態度をとる。何らかの原因で護堂が呪力を封じられると活動を休止してしまう。
- なお、護堂の名字と同じ別名を持つが全くの無関係で、実際に調査を行った甘粕によると「単なる偶然」に過ぎない。
- 黒の劔(くろのつるぎ,Storm Bringer)
- ギリシア神話の智慧と戦いの女神アテナの原形となった「原初のアテナ」が死の間際に残した破滅と新生の秘術を天叢雲劍に注いで作り上げた剣。対外的には第3の権能とされているがこちらも正確には権能ではない。護堂がアテナとともにランスロットに挑んだ際にエクスカリバーを真似て彼女の地母神の力とアテナの秘術を天叢雲に吸収させて作った。直径25mほどはある巨大な疑似ブラックホールを作り出し、中心に向かってあらゆるものを引き寄せ押しつぶす重力嵐を生み出す。発動中、天叢雲剣の刀身は冷気を発する青い炎をまとっている。その様が宇宙の星の始まりと終わりを示していることから『天地開闢の劍』、『はじまりと終わりの剱』とも呼ばれる。
- キルケーとの戦いで扉が開き、祐里の精神感応によって不完全ながらも発動しキルケーの住む島を消滅させた。当初は天叢雲と護堂両方とも負担の大きい危険な術だったが、キルケーから叡智の権能《暁の秘録》を授かったことで完全に掌握できるようになった。護堂の他の権能と比較しても圧倒的な破壊力を秘めており対多数との戦闘には非常に役立つ術であるが、全力の発動に時間がかかるため1対1の戦いにはあまり向かず、仲間を対象外にすることはできるが多数の中から特定の目標を狙い撃つのも苦手としている。ただし完全発動させなくても微力な重力によって相手の動きを阻害できる。後にアテナの転生体であるパラス・アテナと共闘したことで天叢雲を地中に転移させたまま待機させられるようになり、準備しておいた暗黒星を一瞬で地上へ出現させたり、地下から重力を発生させて敵を地面につなぎ止めることも可能となった。
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- 暁の秘録
- 草薙護堂がギリシア神話の魔女神キルケーから贈られた叡智の権能。一時的に魔女の魔導力を操る言霊であり、アテナの秘法《黒の剱》を運用するために利用される。
- 護堂と戦った時点でキルケーは既に重傷を負っていたため、「パンドラが納得する勝利」は達成できておらず本来であれば権能を得られないはずだったが、キルケーが自身の意思でパンドラに要望したことで、権能と呼ぶにはささやかな物ではあるが護堂に力を託すことが許された。
- 白き騎士の突撃(Lance of White Knight)
- 草薙護堂がアマゾネスの女王たる槍の神ランスロット・デュ・ラックから簒奪した第2の権能。言霊を唱えることで護堂の守護騎士となったランスロットに実体を与え、10分間だけかつての呪力と権能を甦らせる。実体化していない霊体状態でも多少の力は持っており、落雷を起こす程度であれば攻撃も可能。ただしランスロットは従属神になっているため、術に対する抵抗生は生前より低下している。ランスロットの性格は生前と変わらず護堂自身も彼女の行動を制御できているわけではないため、戦闘中に自分をなかなか召喚しなければ急かすように雷を落とすこともある。権能非使用時には風雲と一体化して護堂の元に控えており高速で移動していてもついて来られるだけの機動力を持っているが、主の瞬間移動には同行できないため彼女が追いつくまでの間は使用不能となる。
- 太陽を喰らう者(Sun Stealer)[2]
- 草薙護堂が古代インドの風の白猿神ハヌマーンから簒奪した第3の権能。ハヌマーンが太陽を奪おうとして飛び立ちインドラの手で叩き落とされた逸話を再現した権能で、暴風とハヌマーンの影を呼び、熱エネルギーを吸収する。太陽や火、稲妻に有効で、救世の神刀が生み出す「白き恒星」の雷すら封印してしまう。攻撃者より護堂の方が呪力で勝っていた場合、熱や焔の制御権を奪い自由に操ることが出来る。
- 反運命の戦士(Anti-Fatal Champion)[2]
- 草薙護堂が《運命の担い手》と呼ばれる源印欧語族の運命神から簒奪した第4の権能。運命の糸をほどき、断ち切り、呼び寄せて任意の対象に結びつけることができる力。並行世界からの救援要請を聞く力や、アストラル界からなら運命神の領域へ自在に転移できる能力も獲得する。護堂が女神を倒したご褒美として自分で選び取った権能なので非常に強力だが、「盟約の大法」は使えないなど本来の権能よりは部分的な力となっている。ラーマを捉えていた「魔王殲滅の運命」を自分自身に絡みつかせたことで護堂は救世主の役目も担うことになったが、「運命に逆らえる」ことから気に入らない仕事なら断ることもできる。
サルバトーレ・ドニの権能
- 斬り裂く銀の腕(シルバーアーム・ザ・リッパー,Silver-arm the Ripper)
- サルバトーレ・ドニがケルト神話の神王ヌアダから簒奪した最初の権能。右手で握った物体(食事用ナイフや木の枝などであっても可)を全てを斬り裂く必殺の魔剣へと変える能力。この権能を使用している間、ドニの右腕はヌアザの義手と同じように銀色に光り輝く。シンプルに「斬る」ことに特化した権能であるためかその力は絶大で、呪力を全力で注ぎ込んだときにはヘライオンや天叢雲のような神具や魔剣を封じる言霊を込めた『戦士』の力をも切り裂いた。
- 刃に様々な能力を込めることができ、一例として神やカンピオーネでも簡単に治癒しない魔性の傷を与える、魔術を斬り裂く、一太刀で対象を八つ裂きにする、斬りつけただけで敵を爆発させる、切っ先から光線を放ち遠くの塔や50m先の軍勢をまとめて一刀両断するといった剣技の枠を超越した芸当が可能となる。さらに、巨体を持つ神や魔獣とも戦えるよう刃渡り8m弱、重量300kg超の大剣[注 95]に変形させることも可能で、体長20mの『猪』を一撃で屠るほどの威力を持っている。一度手放した物は魔剣化が解除されるが、ドニの意思で再び魔剣に変えられる。ただしドニには魔導のセンスが致命的に欠けるため、遠くの物を再魔剣化して操るには相当な時間を要する。
- 基本的には手に持てる物体を魔剣に変える権能だが、「大地」に使用して地面から無数の魔剣を出現させる、「小惑星」を魔剣化して『流星剣』とし地上へ落下させ大陸を断ち切るといったことも可能。ただし、前者はドニ自身が自ら手にした剣で切りつけた方が手っ取り早い、後者は魔導のセンスのないドニでは発動に時間がかかりすぎるという欠点を抱えている。さらにドニ自身の成長により、徒手空拳の状態でただの手刀をも魔剣とすることが出来るようになった。
- 鋼の加護(マン・オブ・スチール,Man of Steel)
- サルバトーレ・ドニが北欧神話の《鋼》の英雄ジークフリートから簒奪した第2の権能。《鋼》の不死性を受け継いだ権能であり、周囲に無数のルーン文字を浮かべその内側の肉体を鋼より硬くして身を守る。衝撃までは無効化できないが出力に応じて質量が増していくため、体重をトン単位で増加させて攻撃に耐えることが可能となる。ただし最低出力でも軽自動車ほどの重さはあるため、泳ぐことはできなくなる。重さによって動きが阻害されることもなく、仮に剣を失っていたとしてもこの権能によって生じる重量と硬度のおかげで肉弾戦を演じられるが、使用中は微妙に関節の動きが悪くなったように感じるという欠点がある。
- ある種の不死性も獲得するらしく、発動中は呼吸も食事も不要となるため、水中はおろか真空の宇宙空間でも年単位で活動し続けられる。それでも危険な場合[注 96]は自身の意思で仮死状態になれるが、この時は衣服を含め全身が灰色になり権能非使用時と同程度の柔らかさしかないうえ魔術耐性も失った無防備な状態と化す。さらに仮死状態から復帰するにはある程度時間が必要であるため、信頼のおける者に肉体を守っていてもらうなどの対策が必要となる。
- また天蓋状にルーン文字の範囲を広げることで周囲一帯を鋼鉄体の強度を持つ城壁と化すことも可能となるが、自分自身は不死性を失う、風雷までは防ぎきれない、神やカンピオーネのように強力な魔術耐性を持つ者には突破されてしまうといった欠点がある。
- いにしえの世に帰れ(リターン・トゥ・メディーバル・スタイル,Return to Medieval Style)
- サルバトーレ・ドニがローマ神話の火と鍛冶の神ウルカヌスから簒奪した権能。周囲一帯の文明を中世レベルまで退行させ、全ての近代的な発明品を封じる。発動時には、何らかの物体に『nudus ara』『sere nudus』(裸で耕せ、裸で種を蒔け)とラテン語で刻むのが条件で、文字を刻んだ物を破壊すれば権能を解除できる。通常時の規模としては小都市を覆う程度で半日ほどしか持たないが、呪力を振り絞れば範囲は大都市レベルまで跳ね上がり、持続時間も日単位まで延長させることが可能。
- 聖なる錯乱(Devine Confusion)
- サルバトーレ・ドニがギリシア神話の狂気を司る酒と豊穣の神ディオニュソスから簒奪したあらゆる神秘の力を活性、暴走させる権能。この力を使えば自身の権能を含めあらゆる権能と魔術が制御不能になる。護堂は自爆技と称したが、驚異的な剣技を持つドニにとっては最高の切り札と言える権能。発動までに少々時間がかかるのが難点。
- 鋼鉄の暴走(Iron Stampde)[2]
- サルバトーレ・ドニがギリシア神話の鋼の軍神アーレスの息子フォボスとディモスから簒奪した権能。馬などの畜獣・馬車・自動車といったあらゆる「地上を疾走する道具」にドニをボスと崇める意思に目覚めさせ、軍団を指揮して攻撃・突撃・暴走を行わせる。数万単位で影響下に置くことが出来、鋼鉄の鎧・装甲板・衝角・刃で武装させることも可能だが、突撃と暴走以外の命令を下すことは出来ない。車の多い都市部で凶悪な効果を発揮する。
サーシャ・デヤンスタール・ヴォバンの権能
- 貪る群狼(リージョン・オブ・ハングリーウルヴズ,Legion of Hungry-wolves)
- サーシャ・デヤンスタール・ヴォバンがギリシア神話の太陽神アポロン・リュカイオス[3]から簒奪した最初の権能[注 97]。アポロン神の聖獣にして「闇と大地の獣」である鼠色の体毛を持つ馬並みの大きさの魔狼を使い魔として無数に召喚する。個々の狼は神獣ほどの能力は持たないものの、大騎士クラスの実力者でなければ苦戦するレベルの猛獣である。従僕と同時に使用し騎兵の軍団を指揮することも可能。
- ヴォバン自身も狼へと顕身でき、野獣の身体能力を得られる。狼化した肉体は召喚した魔狼とは比べものにならないほど強靱で、大型自動車をスクラップにできるほどの攻撃でもほとんどダメージを受けない。巨大な敵と戦う場合は「大巨狼」となることも可能で、体長は最大で30mに達する。この状態の時には口から雷撃を放つことができる[注 98]だけでなく、権能の元となった神格の影響で太陽に由来する攻撃に対して高い耐性を持つ。
- また、周囲にいる他者へ狼の刻印を与え永久に狼の姿へと変えることも可能。その気になれば数十名を同時に変化させられるが、ヴォバンはこの力を意味あるものととらえているため滅多なことでは使わない[注 99]。
- 死せる従僕の檻(Death Ring)
- サーシャ・デヤンスタール・ヴォバンがエジプト神話の豊穣と冥府の神オシリスから簒奪した権能。自らが殺した人間・神獣・妖魔・魂を持った人造生物などをアンデッド化して自分に従属させる力。従属させられた人間はこの権能に魂が囚われている限り身体が壊れようと時間がたてば再生できる。しかし、判断力が生前に比べ格段に落ちているため戦術行動や予測などができず、生前に持っていた貴重な資質が失われてしまうおそれもある。隷従させている名だたる魔術師達は魔術の知識を一切持たないヴォバンにとって優秀なブレーン役であるため重宝されている。また、人間より格が上である神獣の場合、手元まで召喚することはできないため本拠地のバルカンで待機させている。
- 支配力は絶対的なものではなく、智慧の剣などで権能を停止させられてしまうと捕らえていた魂が解放されてしまいアンデッドを呼び出せなくなる、死者の魂は権能によって無理矢理捕らえられているだけなので敵が精神感応系の権能を持っている場合は逆に利用されてしまうといった危険性がある。
- 加えて古戦場や墓場などにおいて死者の素性や数を霊視する力も持ち、霊に質問して無理矢理答えさせることもできる。
- 疾風怒濤(シュトルム・ウント・ドランク,Sturm und Drang)
- サーシャ・デヤンスタール・ヴォバンが古代朝鮮の嵐を司る三身一体の神風伯・雨師・雷公から簒奪した権能。嵐を呼び、風雨雷霆を操る力。この権能の影響で、ヴォバンの気が昂ぶると周辺が嵐になる。また天候を操作するだけでなく、避雷針のように相手が落とした雷を躱すなどの応用も可能。さらに全力を注げば国家から世界規模で天候を制御できる。
- ソドムの瞳(Curse of Sodom)
- サーシャ・デヤンスタール・ヴォバンが古代ローマの英雄にして隻眼の軍神であるホラティウス・コクレスから簒奪した権能[注 100][3]。その目でみた生物を数に関わらずすべて塩の柱へと変える邪眼であり、この権能の影響か、ヴォバンは『虎の瞳』と呼称されるエメラルド色の瞳をもつ。生命活動は維持させたまま下半身のみを塩にするなどといったコントロールも可能だが、神や神殺しに対しては肉体の一部を一時的に塩化させるのが限度。対象を石化させるアテナの『蛇の邪眼』にも似た能力だが、この権能はあくまで生物が対象で無機物まで影響を及ぼすことはできない。発動中は視力が増大されて数km先まで見通せるようになり、透視能力も得られるため遮蔽物を無視して作用する。能力に上限は存在せず、その気になればその場をほとんど動かないまま東京都民全員を塩化させることも可能。塩化の解除は非常に困難であり最高峰の治癒の力を持ってしても一時的な復活が限界で、作中では時間経過によるヴォバンからの呪力供給停止・「顕聖之符」の破邪の力・天叢雲劍による呪力吸収・禍祓いという4つの要素があって解除できたのが唯一の成功例となっている。
- 冥界の黒き竜(Otherland's Dragon)
- サーシャ・デヤンスタール・ヴォバンが古代メソポタミアの竜蛇の相を持つ地母神イナンナから簒奪した、肉体から分離させた霊魂を体長30mのブラックドラゴンへと変える権能。霊体は実体を伴っており物理攻撃が可能となっているだけでなく、その口からは強力な炎を噴射する。「死を想起させる儀式(自らの心臓をえぐり出す)」を行うことでアストラル界への転移が可能で、目的地へと強制的に送り込む性質があるアイーシャの『通廊』内でも自由に移動できる。仮死状態となった肉体が無防備となるのが欠点だが、竜蛇の不死性により半ば不滅となった霊魂さえ無事なら再生が可能となっている。敵の攻撃によって死亡した場合はたとえ肉体が灰になっていたとしても五体満足で復活できるが、その時に消耗した呪力は1〜2ヶ月の間決して回復しない。また魔狼状態とは異なり太陽への耐性も失われてしまうほか、《鋼》が持つ竜蛇殺しの権能が弱点となる。
- 劫火の断罪者(Red Punishment)
- サーシャ・デヤンスタール・ヴォバンが中国の炎神祝融から簒奪した[3]、地獄の業火で周囲を焦土と化す権能。神すら灼き殺す焔を天から落とし、最低でも都市一つ覆い尽くすまで燃え広がる。以降はいつでも解除可能で、最高で7日7晩燃え続ける。敵地や戦場を一撃で焼け野原に変えるほどの威力があるが、呪力の消耗が大きいため連戦では使いづらく、遠距離から焼き払うという性質から神殺しのようなしぶとい相手を倒しきれる確証もない大味な攻撃であるため、実質焦土戦術向きの権能である。
- 血の聖餐祭(Bloody Blessing)[3]
- サーシャ・デヤンスタール・ヴォバンがシヴァの妻の1柱とされるインド神話の戦闘女神カーリーから簒奪した権能。血を見た者・臭いをかいだ者・味わった者を数の制限無く対象とし、血を求める殺傷本能に覚醒させる。対象の肉体は強化されて鬼のような戦闘能力を得られるが、凶暴化し手近な生き物を本能のままに殺そうとする殺戮鬼となってしまう。よほど強靱な精神力の持ち主でなければ衝動を押さえ込むことが出来ない。羊1頭程度の犠牲で軍勢を十数万単位で殺し合わせて壊滅させられる強力な権能である。
- 生ける呪文書(Singing Spellbook)[3]
- サーシャ・デヤンスタール・ヴォバンがテンプル騎士団の秘神バフォメットから簒奪した権能。魔術の使い手から知識と術を無理矢理奪い(対象からは1つだけ、犠牲者からは全て)、適当な紙の束に文字化して刻みつけ表紙に口のついた呪文書として保管する力で、ヴォバンの指示で魔術を行使することが可能。《死せる従僕の檻》の方が利便性が高いため本人もあまり使わない。
羅翠蓮の権能
- 大力金剛神功(だいりきこんごうしんこう,The Power)
- 羅翠蓮が阿吽一対の仁王尊・金剛力士から簒奪した権能。無双の剛力を生む力。極めてシンプルな権能だが応用範囲は広く、人の身体に収まりきらないパワーを黄金色の金剛力士の形で具現化させたり、金剛力の精を黄金のオーラに変えることができる。顕身として召喚した金剛力士へのダメージは本人にフィードバックされるが、武器を持たせたり自身の武術を行使させることが可能なほか、緊急時には楯や鎧の代わりとしても利用できる。顕身は最大3000mもの巨体となるが、大きくなるほど強度が低下する弱点があるため、普段は20m未満の大きさで使役する。黄金のオーラの方は巨大な掌として敵を打ちのめしたり鎧のように身に纏って護身することが可能。
- 竜吟虎嘯大法(りゅうぎんこしょうだいほう,Dragon Voice)
- 羅翠蓮がインド神話の賛歌を司る歌の女神ガーヤトリーから簒奪した権能。声を超音波に変え、衝撃波を発生させる力。吟じる時間が伸びるほど破壊力が増すことから詩歌の形で使用する。少し謡った程度でも巨大な神獣を吹き飛ばし周囲の物をなぎ倒し、呪力を込めて軽く一喝するだけでも大型車が追突するのと同程度の破壊力を発揮するほか、声を出さずに軽く息を吹きかけただけでもゲンコツ程度の威力の魔風が発生する。羅濠が限界まで謡い続けた場合の破壊力は想像もつかないほどになるとされている。白兵戦と併用することで、格闘と衝撃波のコンビネーションが可能。加えて羅濠自身の声と風の音以外のあらゆる音を遮断する効果も発揮できる。
- 黄粱一炊夢(Terrible Metropolis)
- 羅翠蓮がローマ神話の大地の豊穣神サトゥルヌスから簒奪した『自分が住んでいる町の農業生産力と経済力を大きく上昇させる』風水的かつ戦略的な権能。それにより権能の範囲内では豊作が続き、商工業が大きく発展する。さらに、そこに住む人々のモラルが向上するため治安も良くなり、住民に幸福が舞い込むようになる。ただし一定以上の人口のいる場所でなければ発動できないため、彼女の現住所(無人の山奥)ではまったく意味を成していない。なお、自身がそこを離れると一気に都市は没落する。
- 百草芳菲、千花繚乱(ひゃくそうほうひ、せんかりょうらん,Hopeless Forest)
- 羅翠蓮が木行の神精太歳神から簒奪した、場所を問わずに草木や花々を生み出し育てる権能。生み出した植物には様々な性質を与えることが可能で、例として「適者生存」をキーワードとすれば毒草から食獣植物まであらゆる凶暴な草花が出現する。時間をかければ日本列島全体を花畑で覆い尽くすことも可能で、さらに呪力を全力で消費すれば中華全土を魔の森に変えることができる。また、特に意識しなくても何か行動を起こすたびに花を咲かせてしまうらしい。何らかの方法で権能自体を停止させられた場合、魔性の植物は活動停止するが異常生育した植物たちまでは元に戻らない。
- 将軍令、男児当自強(Kung fu Cult Master)[3]
- 羅翠蓮が中国白蓮教の弥勒仏から簒奪した権能。羅濠の号令のもとで武術の鍛錬に参加した全ての者が対象となり、教主の勇壮な「戦いの歌」を聞いた者の技術を一流の武術家にまで引き上げ、銃弾すら跳ね返す「鉄頭銅身」の肉体を与える力。対象者は羅濠に絶対服従で、命令されずとも教主が念じたとおりの行動を取る。
- 蒼天巳死(Heavens fall) [3]
- 羅翠蓮がペルシアの天竜ゴーチフルから簒奪した権能。日食や月食を引き起こす力。通常は半日程度で収まるが、大量の呪力を使い年単位で維持することも出来る。
ジョン・プルートー・スミスの権能
- 超変身(メタモルフォセス,Metamorphoses)
- アニー・チャールトン(ジョン・プルートー・スミス)がアステカ神話の魔神テスカトリポカから簒奪した最初の権能。特定の物を『贄』として五つの姿へと変身する力。一度『贄』を得ればしばらくの間なら幾度でも変身体を交換することが可能だが、制限時間を超えると以降7日間は同じ変身体を使用できなくなる。
- 大いなる魔術師
- 《超変身》第1の変身体。《超変身》最強の形態。人が土から作った巨大な建造物を『贄』とする。頭に羽根飾りを付けたシャーマンのような姿をした全高15mの巨人で、全身が黒く右足が黒曜石で出来た「神秘の巨人」となる。全身から迸る雷を武器とするほか、穂先から紅蓮の焰と衝撃波を放つ槍を背中の木筒に納めている。この形態でのみ権能などを打ち破る「神力無効(Spell Canceller)」の呪法を使うことができる。
- 豹(ジャガー / オセロット)
- 《超変身》第2の変身体。照明などの人工の光を『贄』とする。その名の通り、エメラルド色の瞳を持つ豹に姿を変える。ほんの数十秒で数百マイルを走破し、影から影へ移動する能力を持つ。
- 殲滅の焔
- 《超変身》第3の変身体。雨と自分自身[注 101]を『贄』とする。「太陽」の具現である蒼黒い焔の塊に顕身し、我が身諸共滅ぼす最期の化身。その瞬間火力は凄まじく、作中では様々な要素が重なったとはいえ一撃で3柱もの神々を滅ぼした。一時的に実体を失うのを利用して緊急回避にも使える。通常の姿にはすぐ復活でき、他の形態への変身も出来る。
- 黒き魔鳥
- 《超変身》第4の変身体。大地[注 102]を『贄』とする。「滅びの風」を司る、猛禽の姿をした翼長10m程の黒い怪鳥に変身する。高い飛行能力に加え、シロナガスクジラでも一瞬で融解させられる魔性の毒霧を口から吐き、翼からは相手を毒で冒し麻痺させる呪力を持つ灰色の煙を出すことが出来る。
- 蛇使い
- 《超変身》第5の変身体。自分以外の何物かが殺した生き物の屍を『贄』とする。「煙を吐く者」を司るとされる。本編には未登場。
- 魔弾の射手(The Freeshooter)
- ジョン・プルートー・スミスがギリシア神話の遠矢撃つ月と獣の女神アルテミスから簒奪した権能。「アルテミスの矢」の通称で呼ばれる蒼白い光の矢を放つ。非常に柔軟な操作性能を持つ戦術・戦略兵器であり、北米からヨーロッパへの狙撃、爆発や散弾化、発光による目潰し、神速での自動追跡、発射後の自由なコントロールといったことが可能な万能の攻撃手段。また時空間すら飛び越えられるため、アイーシャ夫人の『通廊』を通り抜けた先にある物すら撃ち抜くことができる。さらに、同時に2発放つと威力は倍以上になり、一度に全弾放つとカリフォルニアを七日間決して消えない焔で焼き尽くして荒野にする程の威力をもつとのこと。ただし、1ヶ月に6発までという弾数制限が存在し、残弾が尽きれば新月の日のチャージを待たなければならないという弱点がある。
- 豹や魔鳥形態の時にはその口から、人間形態の時にはアストラル界に住まう闇エルフの鍛冶術師が作ったエオル鋼製の魔銃から放たれる。自身が近くで権能を使うか先に許可を出していれば、他者が魔銃を手にしていても矢を発射することが可能。なお弾丸を装填していない魔銃そのものも強力な品で、空砲の超音波だけでダウンタウンを5区画ほど吹き飛ばし精密機械をダウンさせるほどの威力がある。
- 妖精王の帝冠(Lord of Elves)
- ジョン・プルートー・スミスがアストラル界を統べる妖精王の一柱オーベロンから簒奪した「妖精王の支配力」を得る権能。神以外のアストラル界の住人に対して支配力を発揮し、アストラル生物が適応できる場所にいるときならばあちらの住人を一時的に地上へと呼びよせたりできる。精神集中するだけでアストラル界へ移動できるため、パンドラとも割と気軽にやり取りができ、カンピオーネの中では例外的に彼女との会話内容を比較的鮮明に記憶できる。
- 権能と同時に『オベーロンの森』を初めとするオーベロンが所有していたアストラル界の支配領域も引き継いでおり、王として民の要請を引き受ける責務も持っている。
- 形なきもの(Formless Spawn)
- ジョン・プルートー・スミスがソロモン王が使役した72の魔神の1柱で伯爵位の大悪魔ビフロンスから簒奪した、物体の形を「あいまい」にして、素通りできるようにする権能。主に不法侵入や緊急回避に用いるが、都市まるまる一つを対象にすることでこれを蜃気楼の街に変えることも可能になる。ただし、同じ物体に使用するには15分ほど時間を空ける必要がある。
- 深き底の使徒(EarthSea Shaker)[2]
- ジョン・プルートー・スミスがシュメールの神々を産み出した大地母神にして竜神ティアマトから簒奪した権能。異形の魔神を水底や地底に呼び出して使役し、河川や海の水を操って氾濫や津波を起こし、大地に地震を発生させる。威力を抑えて一軒家を揺らす程度にも出来るが器用ではないので精密な制御は失敗しやすい。逆に威力と範囲を高めるのは容易で、大きく消耗するほどの力を使えばカリフォルニア全土を地震と洪水で呑み込むことが出来る。ただし地表や大気中に魔神を召喚することは出来ない。
アレクサンドル・ガスコインの権能
- 電光石火(ブラック・ライトニング,Black Lightning)
- アレクサンドル・ガスコインが雷と幻視を司る堕天使レミエルから簒奪した最初の権能。雷を纏った超高速移動術で、神速を行使する際には火花が走る兆候がある。分身・飛行といった応用法のほか、他人を神速状態にすることや、軽装で紙より重いものを持たなければ気配を断ち音も影もなく神速となることもできる。ただし人間体での使用は5分で脳が悲鳴を上げ、20分で強烈な時差ボケのような不快感を得、限界を超えて使い続けると元の速さにしばらく戻ってこれないという副作用があり、神速共通の弱点として精密な動きも難しい。
- 自身を電光に顕身させる事も可能で、接触して相手を感電させたり雷光弾で遠距離攻撃したり出来るようになる。この状態では神速による負担が低減するが、カンピオーネの肉体が本来持っている強力な魔術耐性が失われてしまう欠点があり、カンピオーネや神が行う術破りなら容易く破られ、人間でも大がかりな備えがあれば破られる可能性がある。特に高所を飛行中に顕身を解かれると、墜落して大きなダメージを負いかねないというリスクがある。
- なお『黒き雷霆』という地上を焼き払うための攻撃形態が存在し、電光のエネルギーを爆裂させることで護堂の『白馬』並みの破壊力を発揮することが可能。ただし、これを行うと半日ほど神速も電光化も使えなくなる。
- 復讐の女神(ジャッジ・オブ・フューリーズ,Judge of Furies)
- アレクサンドル・ガスコインがギリシア神話の復讐の三女神エリュニエス(鬼女メガイラ・復讐者ティシポネー・時を止めぬ名状しがたきアレクトー)から簒奪した二番目の権能。復讐の三姉妹を召喚して「復讐のフィールド」を形成させ、その眼前で行われた攻撃や呪詛を三女神がたくわえアレクの指示に応じて加害者に叩き返す。反射ではなく「やられた分だけやり返す」能力なので、十分な威力を叩き返すためには自分や周囲にそれなりのダメージを受ける必要がある。召喚には一定時間の瞑想と儀式が必要になるが、前もって召喚しておいて自分の元に出現させることは可能なので罠として設置しておくのが基本的な使い方。ただし最初から女神の姿を晒す形であれば瞬時にフィールドを形成することも可能。また、瞑想時に消費した呪力に応じて準備時間を短縮することもできるほか、アレク自身の苦痛や血を糧にして瞬時に召喚することも出来る。復讐のフィールドは複数展開することも可能。さらにこの女神達は相手の技能や武器を模倣してそのまま使うことが出来る[注 103]。女神達が殺されると権能も解けるが、彼女達は非常に頑丈なのでこの方法で逃れるのも難しい。
- 大迷宮(ザ・ラビリンス,The Labyrinth)
- アレクサンドル・ガスコインがクレタ伝説の大地と迷宮の神ミノスから簒奪した三番目の権能。地底や建造物の中に巨大な迷宮を創り、相手を引きずりこむ。展開した地勢に応じて迷いの森や魔の海域などに変化するが、地上に迷宮を作る場合には前もって周辺地形を把握しておく必要がある。迷宮の主たるアレクサンドルには、最深部へ瞬間移動できるなどの特殊能力が与えられる。
- アレクサンドルが不在の間は黒い仔牛の形をした小さな顕身が迷宮の管理を行う。使用後1カ月ほどは再使用ができず、魔力の供給がなくなれば3、4カ月で消滅する。ただし第三者からの魔力供給でも機能の維持は可能。
- 無貌の女王(クイーン・ザ・フェイスレス,Queen the Faceless)
- アレクサンドル・ガスコインが半人半蛇の女神メリュジーヌから簒奪した権能。配下としたメリュジーヌ本人を召喚する。上半身は白い翼を生やした赤毛で長髪の女性で、下半身が蛇のような姿をしている。顔を見られてはならないというルールが存在するため白兵戦には向かないが、機動力・破壊力共に申し分なく、水空両方の戦闘に対応でき、サイズも自由に変えられる。女神本人であるため高い知性を持ち、探索活動や魔術に占いなどもできる。
- さまよう貪欲(ウィアード・グリード,Weird Greed)
- アレクサンドル・ガスコインが巨獣ベヘモットから簒奪した吸引と重圧の権能。直径20-30mの黒い球体を作り出し、相手を引き寄せて束縛する。球体の移動速度は極めて遅いため、『復讐の女神』と同じく罠として設置しておくのが基本。吸引力を落とすことで球体のサイズを小さくもできる。
アイーシャの権能
- 生か死か(Live or Die)
- アイーシャがギリシア神話の春と冬の女神ペルセポネから簒奪した最初の権能。春の乙女と死の女王というペルセポネの二面性を体現した力。
- 春の女神としての能力で生命力を操り、傷ついた者へ命の息吹を吹き込むことにより瀕死の人間すら一瞬で癒すことが可能[注 104]となる。さらに副次的な作用として怪我だけでなく呪いや毒をも見ただけで察知する眼力を獲得する。呪力を全力で込めれば、邪眼によって無機物に変えられた者を一時的に命ある姿に戻すこともできる。
- 一日ほどかけて準備して「反転」させると、冬と死を司る冥界の女王としてすべてを凍てつかせる「冬の力」となる。猛吹雪を引き起こすのみならず、冬の女王の呪縛として『氷の大蛇』の形で操ることも可能。ただし、力を使いすぎると半年から一年、もしくは以上冬の寒さが残ってしまううえ、自身がふと思いついただけの作戦すらも半自動的に実行してしまうという制御不能な面を持つ。さらに神すらも即死させうる切り札として、地底の冥界に通じる地割れを起こして敵を引きずり落とす『冥府落とし』がある。冥府の穴からは常人ならば周囲にいるだけで凍死しかねないほどの冷気が噴き出るという追加効果まであるが、大地母神を含む冥府の神々や復活を遂げる伝承を持つ神々にはあまり効果がなく、これを使うと「冬の力」はしばらく使用不能になるうえ本来の癒しの力も弱体化してしまう。
- 幸いなる聖者への恩寵(Grand Luck)
- アイーシャが中国の善なる民衆の守護神地蔵菩薩[3]から簒奪した二番目の権能。善行の成就に努めている限り自らの行動が成功するように幸運が発生し、逆に自分の行動を妨げようとする者に対しては不幸が訪れる。訪れる不幸の度合いは相手の力量に応じて変化する[注 105]。『通廊』とは異なり自在に権能をオンオフできるが、すでに起こってしまっている現象を中断させることはできないため、自らもその不幸に巻き込まれてしまうことがある。また、何度も連続して幸運に恵まれているとその反動で大きな不運に見舞われてしまう。
- 『妖精郷の通廊』と密接な関係を持つ権能であり、発動中ならば大量の呪力を代償に「修正力」をも利用して通廊の中に緊急避難することも可能となる。さらに「起こりうる最大の吉凶」を願った場合には、夜空を血のように赤黒く染めると同時に足下から噴出する強い呪力をはらんだ熱風で移動を妨害した直後、勝手に通廊が空き強制転移が起こりまつろわぬ神3柱の眼前へと飛ばされた。
- 妖精郷の通廊(Beyond the Timeless Horizon)
- アイーシャが常若の国の妖精女王ニアヴから簒奪した三番目の権能。アストラル界や過去の時代など「地上でないどこか」の世界に通じる「妖精の門を開く権能」。「門」は洞穴のような漆黒の穴の形をしている。この力によりアイーシャはいろいろな過去へ時間旅行を行っているが自分自身でも上手く制御できず、作ろうと思っても作れなかったり何年か後に勝手に穴が開いてしまい、一度開けば作った本人さえ抗えずに吸い込まれてしまう。また作品終盤にて、条件付きではあるがこの世界に初めて出現した「異なる時間軸の平行世界への転移も可能とする権能」であることが明らかになった。アイーシャが通った後は自然に閉じるようになっているが、夫人の意思で残したままにもでき、よく晴れた満月の日に自然と開くほか、大勢の優れた魔術師が半月から1カ月ほど時間をかけて準備をすれば魔術的に開けることも可能[注 106]。他人を強制的に転移させる場合、相手の人数や力量が増すごとに消耗も大きくなる[注 107]。なお元があくまで「異界を旅する権能」でしかないためこの権能自体の殺傷力は非常に低く、相手を危険な場所へ送りその瞬間に死なせることは出来ない模様。穴が見えなくなった後でも道は残っており、神力などの細かい力はそこを通ることができる。通廊内には直通の出口のほかに周囲に無数の出口も存在するが、アイーシャ自身もそれぞれの出口がどこにつながっているか判別できない[注 108]。なお、大体の時代を決めることはできても時期に関しては完全にランダムとなっている。現代から直接未来に飛ぶことは今のところできないが、通廊は両方向性なので過去から現代へやってくることは可能であり、過去から現代に帰る際に呪力を一気に使うことである程度任意に時代を選ぶこともできるため、元の時代から30年後などに飛んで意図的に浦島太郎状態を作り出すといった裏技的な用法も存在する。
- 加護で生じた「起こりうる最大限の凶兆」という下地にアイーシャ自身の怒りと絶望が作用すると、色取り取りの花に包まれた直径数百mはある「天空通廊」が上空2500mほどの高さに発生する。周囲は黄金色の光に包まれた幻想的な光景となるが、妖精王であっても抗えぬほどの桁違いな吸引力が発生し、さらには通廊からは小妖精達が現れて微笑みながら内部へ連れ去ろうとする。
- また、本来あるべきでない世界へ「繋ぎ止めようとする力」により、起こるはずの事象をなかったことにし、起こった事象さえ修正する力に守られることに加え、ある程度恣意的に「修正力」を操ることもできるため過去の時代で何かしらの攻撃を受けても結果をなかったことにできる。この攻撃無効化を破るには、神やカンピオーネでも全力で攻撃する必要がある。なお、この権能の副次的な効果によりアイーシャは不老になっている。
- 女王の呪縛(Charm and Curse)
- アイーシャがバビロニアの古き太母神イシュタルから簒奪した[3]周囲の人間の好意を自分に向けさせる魅了の権能。初めて会ったばかりの人々に自分のためなら命を惜しまないほどの忠誠心を植え付け狂信的な教団を作り、魅了した者たちの身体機能と戦闘技術を強化する効果により精強な軍団に変えることも出来る力だが、アイーシャの性格的に普段は人捜しや移動手段の確保程度にしか使われない。ほほえみを見せたりお願いをするだけでも権能はわずかながら常時発動しており、微弱な権能しかかけていなくとも何度も重ね掛けすることで結果として狂信者を生み出してしまうこともある。これまでの時間旅行で魅了してきた人間との繋がりはアイーシャの帰還後も残っており、プルタルコスの館にある「時の門」のような特異点を利用すれば彼らから莫大な呪力を瞬時に徴収できる。神や神殺しには通用しないが、神の眷属ですら沈静化させ権能の支配下にある者をも魅了するほどの絶大な効果を持つ。ただし敵対者を完全に魅了するには時間と回数が必要となる。権能に魅了された人々も時間と距離を置けば呪縛から解放され、それまでにかかる時間は呪力の量や魔術に慣れているかどうかによって違いが生じる模様。生物の種類によって効きやすさに違いがあり、草木の類にはあまり通用しない。
- 不思議の国の剣(ジャバウォック・スレイヤー,Jabberwock Slayer)
- アイーシャが伝説の騎士にして守護聖人である竜殺しの英雄サン・ジョルディ[3]から簒奪した顕身召喚の権能。顕身は剣で武装し甲冑に包まれた上半身と煙の下半身を持つずんぐりした魔神の姿をとる。民衆の庇護を求める声がなければ決して召喚することはできないものの、支持さえあれば自身がどれだけ呪力を消耗していても顕現させることができる。ただし、魔神がダメージを受けると蒸気と共に甲冑の継ぎ目から火の玉が噴出し、地上へ落下してくる火の玉の射程範囲は数kmに及ぶため、庇護すべき民衆すらも危険にさらしてしまう。発動条件自体は非常に厳しいが、アイーシャの場合は『女王の呪縛』のおかげで発動難易度が下がっており、「時の門」のような特異点を利用できる状況ならば過去に魅了した人々に頼むことで簡単に発動できる。
ウルディンの権能
- 竜使い
- ウルディンがティアマトに随獣として産み出された古代メソポタミアの竜神ウシュムガルから簒奪した最初の権能。騎獣としても扱える体長7m程の肉食恐竜型の竜の神獣を操る権能。この竜は煙・稲妻・火を吐き、前肢を翼に変えて飛行する能力を持ち、神力を分け与えて強化もできる。操る数が多くなると呪力の消耗が激しくなり、他の権能を使用できなくなるため柔軟な対応ができる適当な数を3体としている。なお、この神獣は1、2年で寿命を迎える。自身が側にいるとき以外は他者が神獣に乗ることは至難だが、竜の牙を身につけていれば数日間は竜を手なずけていられる。
- 騎乗には向かなくなるが、神獣を2体融合させてサソリの尾と7本の角を持つ体長約20m翼長40mの赤き巨竜と化すことも可能。また、強さは数段劣るが、竜の牙や爪から新たに体長4m程度の小型の竜の眷属を生み出すこともでき、こちらは一気に100体程まで操れる。
- ルドラの矢
- ウルディンが古代インド神話の嵐の神にして火と光を司る太陽神ルドラから簒奪した権能。ただの矢を暴風暴雨や稲妻を纏う矢として放ったり、空に矢を撃つことで空から無数の火の玉を落すといった攻撃ができる。
- また、太陽神としての権能も「黄金の矢」によって体現できる。発動時には上空に直径40-50m程の疑似太陽が出現、射放たれた「黄金の矢」は焔と閃光の矢へと変化し対象を焼く。「10の化身の1つ」でしかない護堂の権能より限定的であるためか、「白馬」と違って連射が可能。疑似太陽へ直接二発打ち込めば太陽を落下させ地上を焼き払う攻撃となるが、一度太陽を落とすとしばらくは権能そのものを最使用できなくなる模様。
- テュールの剣
- ウルディンが北欧神話の戦争と勝利を司る鋼の軍神テュールから簒奪した権能。ウルディンの切り札。鋼の不死性を操る権能で、ウルディンの手に刃渡り80cm程の簡素な長剣が顕れ、中空に↑に似たテュールを表すルーン文字を発生させその文字を死亡した神獣に突き刺すことで自身の軍勢を復活させる。その際、生前についた傷はすべて回復するが、死体そのものが何らかの理由で消滅してしまうと復活させることはできない。
- また、アッティラが「テュールの剣」を所持していたという伝承を持つことから、ウルディンと何らかの関わりがあるとされている。
魔術関連
- 呪術師 / 魔術師
- 魔力や呪力、気などの精神力を消費するなどして魔法などの超常の術を扱うもののこと。国や地域によって呼称と立ち場は変わり、場所ごとの特色が強い[注 109]。霊能力者である媛巫女や魔女などの特殊能力を持つ存在も魔術師の中に含まれる。一般にはこうした存在は知られていないが、ある程度の権力者などとは付き合いがある。
- 性別による力の差はあまり無いとされるが、適正は女性の方が上とのこと。作中では呪力と表現されることが多く、呪力が至純の域に達すると魔術師は肉体をある程度若返らせることが可能。この若返りの力は女性の方が強い[注 110]。カンピオーネの権能もこの呪力を消費して行使している。
- 莫大な呪力・神力を体内に宿すカンピオーネや神にはほぼ魔術は効かない。西欧戦闘魔術の秘奥である『聖なる殲滅の特権』や神をその身に降臨させる降臨術(神がかり)はダメージを与えることが可能で急所に当たれば殺すこともできるとされるが、地力が違いすぎるので殺すことはまず無理である。ただ魔術によって生じた衝撃までは耐性でも無効化できないため、術の余波を利用して隙を作るだけなら不可能ではない。
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- 魔女
- 特殊な術法を扱える魔女の資質を持ち魔女術を学んだものをいう[注 111]。中華圏にも同様の存在がおり、そちらでは「巫(かんなぎ)」と呼ばれている。かつて天と地の女神に使えた巫女の末裔であり《神祖》の血統を受け継いでいるため、強力な霊能力を持つアリスのような「先祖返り」が誕生することがある。大別して『地』や『天』という位があり、霊視のような巫女の能力に加え、鳥獣の使役や霊薬の調合などの主に自然や風土に干渉する様々な能力を持つ。飛翔術をはじめとする魔女術は彼女たちにしか使えない。また西洋魔術において「ダヴィデによる勲の書」に記されているような、聖騎士位階の者しか閲覧できない戦闘魔術は魔女学の影響を多大に受けている。非常に身軽で移動系の能力に長けるという特徴があり、「跳躍」の術や水泳等を得意とする。ただし地母神の天敵に当たる鋼の軍神と関連する錬鉄術とは相性が悪い。上位の魔女たちには独自のネットワークが存在する。魔女と蛇の守護者である神格に遭遇すると呪力が最大限に高まる性質があるが、英雄の神格に対しては通常の魔術師以上に逆らい難いという弱点がある。
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- 媛巫女
- 日本の呪術界の女の呪術師で「媛」の称号をもつ高位の巫女。通常日本の呪術師は正史編纂委員会へ協力する義務があるが媛巫女には千年に及ぶ血脈とそれに対する崇敬が伝統として受け継がれているため委員会の人間も下手に出るほどの権威がある[注 112]。委員会による情報操作によって彼女たちの存在はほとんど公にはなっていない。旧華族でも下級なら凡庸とされる程に高貴な血筋の家系の者達ばかりで構成されている。また静岡を境に東西で管轄が分かれている。
- 神祖『玻璃の媛君』の遠い裔でもあり皆それぞれに希少な霊能力を所有している。「巫女の資質=魔女の資質」であることから本気で修行して成果がでれば魔女になれる可能性もあるが、委員会は方針として固有の能力を高めることに専念させている。
- 一定の年齢を超えると媛の職を退き、委員会の相談役となる。神道の関係者ではあるもののそこまで規律は厳しくないようで、クリスマスやバレンタインデーといった異教の行事にも寛容である。
- 獅子と匠の双剣
- ウーツ鋼で作られ、欧州最高の剣士である当代の聖ラファエロが特別に二振り授けられた名剣。聖ラファエロが隠居してからは彼女が管理する武器庫におさめられていたが、4年前にエリカとリリアナへ一振りずつ授けられる。
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- クオレ・ディ・レオーネ
- 『獅子の魂』を意味する名を持つ魔剣。不滅の属性を持つ「剛」の剣で刃こぼれはおろか刀身が破壊されても元通り再生できる。
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- イル・マエストロ
- 『名匠』を意味する名を持つ魔剣。魔曲の霊力を秘める「柔」の剣で、戦闘中は様々な曲目を奏でることで相手の行動を阻害する。
- ダヴィデによる勲の書
- 聖騎士の位階に達した騎士のみ開くことを許される神をも切り裂く戦闘魔術を記した書。古いギリシア語で書かれており、エリカの体格を基準とするとその縦は上半身ほど、厚さは指先から肘までの長さほどはあるという巨大な書物。聖ラファエロの隠棲場所に存在する地下神殿で管理していたが、ドニとの立ち合い時から彼にこの任を引き継がせ彼の腹心であるアンドレアが現在保管している。エリカとリリアナはこの書から「ダヴィデの言霊」や「聖なる殲滅の特権」を会得している。
- 雷法鞭(らいほうべん)
- 香港陸家に伝わる秘宝の九節鞭。黒曜石のような光沢を放つ鋼鉄製、15cmの金属棒をリングで繋ぎ全体の長さは110cmほど。先端には槍の穂先のような刃がついている。「百邪斬断」「万精駆逐」の文字が彫刻され、駆邪浄鬼の雷法が込められており、接触した魔術を打ち消すことができる。
- 呪文
- カンピオーネが己の呪力を高めたり権能を行使する時に唱える聖句、魔術師が魔術を行使する時に唱える口訣や言霊、媛巫女が術を使用する時に唱える文言などがある。なお、さくら曰く「魔術を使用するうえで大切なのは呪文ではなく、そこに込めた魂であるとか、それがどういう魔術であるかをきちんと理解しているか」らしい。であるからして、魔術使用時の呪文は結構適当である[注 113]。
術・技能
- ダヴィデの言霊
- まつろわぬ神にすら手傷を負わせる古の勇壮な呪詛。
- ゴルゴタの言霊
- 神への憎悪と絶望の言霊でゴルゴタの丘と同じ冷気を呼び込む戦闘魔術。神をも傷つける強力な死の呪詛で、これを身に浴びただけで常人ならば心臓麻痺を起こして即死し、強力な魔術師であっても立っていられないほどに衰弱させる効果を持つ。
- 聖絶の言霊
- 使用者に『聖なる殲滅の特権』を与える欧州戦闘魔術の最高秘儀。習得には聖騎士級の武芸と魔力が要求されるが、神獣・神霊に対しては非常に有効な対抗手段となる。魔女の素質を持たぬ者でも、短距離の飛行が可能になるなどの効果もある。瞬発力に関しては熟練度の影響は少ないが、使いこなせるようになるほど安定感が増す。現在完璧に使いこなせる者は、聖ラファエロ、パオロ・ブランデッリ、サー・アイスマンといった伝説的な騎士たちばかり。
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- ジェリコの殲滅
- 悲運の都ジェリコを壊滅させた聖なる虐殺の呪詛。
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- ミデアンの殲滅
- ミデアンの民と王を地上から殲滅した滅びの言霊。
- 霊視
- 生と不死の境界にたゆたうアカシャの記憶を読み取る技術。正確には「今起きている現象」を霊感で読み取り、「起こりうる未来」を無意識に予測する能力のことを言う。魔女による霊視で効果的なものを呼び込む率は1割程度なので基本的に人海戦術で行う。自ら強く知りたいと思うことはうまく視えないが、祐理ほどの能力者であれば色即是空の境地に至ることで望んで啓示を得ることもできる(ただし、身体への負担が非常に大きい)。この能力を持つ者たちは直感にも優れており、彼女たちにとっては「なんとなく」という感覚であっても実際は真実を言い当てていることが多い。
- 精神感応
- 精神を研ぎ澄まし、他者の気配や感情を漠然と読み取るだけでなく、霊体や魂に干渉して巧みに操る能力。ただし、カンピオーネや神、《神祖》などの心を読むことはできない。ごく一部の魔女や巫女にしかない極めて特異な能力である。霊体を作り出す、強制的に精神的苦痛を与えて攻撃する、自分の呪力を他者に渡すなど、様々な応用方法がある。かなり広範囲に作用する異能であり、強力なものであれば都市一つ丸ごと影響下に収められる。また《神祖》の系譜に連なる者同士であれば、遠隔地から感応力のパスを繋げて魂を同調させ自分の術を他者を介して発動させることも可能となる。
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- 御霊鎮め
- 精神感応力を最大限に高め、媛巫女の和魂を放出し呪力の高まりを鎮めることで、神秘や怪異現象を沈静化する術。破壊力はないものの『聖絶』をも打ち消せる力があり、特定条件下で膨大な呪力の供給を受ければ神の権能のみならず物理攻撃すら無効化できるが、肉体にかかる負担はかなり大きい。
- 神がかり
- 神の声を聞き、己の呪力を無に近づけることで神の力を一部だけその身に宿す力。欧州魔術においては降臨術と呼ばれる。非常に稀有な素質で、欧州では最近300年は誕生していない。ヒトの限界として精々一万分の一以下の神力しか使えないとされるが、曲りなりにも神力を行使するので神やカンピオーネの魔術耐性を破ることが可能。半神や神獣に比肩するという人類最高峰の力を得る一方で、集中力がすり減り体力的にも消耗する(フルマラソンをハイペースで走りきる程)ため、使用後1週間は時間を空けるべきとされる。また、街に居続けると体に俗気がたまり神がかりが使えなくなるため、頻繁に深山に籠もり五穀断ちなどをしなければならない。不確定要素が多すぎるものの、意図的に大量の神気を呼び込んで暴走状態を起こし瞬間的な爆発力を利用することもできる。精神が肉体の上位にある幽世で行うと、神の御霊に体を乗っ取られてしまい暴走の危険性が非常に高まる。降臨術の技量が高まると2種類の神々の神気を肉体に宿らせる「二重の神がかり」が可能となり、この状態では一時的に従属神に匹敵するほどの戦闘力を操ることが可能となる。
- 禍祓い(まがはらい)
- 魔術や呪力などの超自然の力を打ち消す力。神やカンピオーネの権能も一部なら消去が可能。非常に稀有な能力の一つでこの術の使い手のひかりは100年ぶりに現れた逸材。欧州では思い入れの強い物に妖精や精霊の祝福である「幸運の加護」を蓄えることでも同じことができるがそれには加護を蓄えるのに長い時間がかかるので魔術無効化の手段では最も有効的。ただし未熟な場合は直接触れなければならないなどの制限がかかる。
- 名伏せ
- 人の記憶をいじって書き換えることのできる霊力。また、記憶検索で本人が忘れているようなことも強引に思い出させることも可能だが、頭の中をいじられる弊害で2、30人に一人ほどの確率で記憶障害を引き起こしてしまう。『狂わし』という特殊な霊力を必要としない記憶操作の術も存在するが、こちらはある程度魔術に触れた人間であればふとしたきっかけで記憶を取り戻してしまうほどの効果しかない。
- 跳躍
- 自らに人間離れした跳躍力と身軽さを与える、ドニも使用可能な体術の一種。『跳躍』はテンプル騎士団の呼び名で、武侠には『軽功』、日本では『猿飛』と呼ばれる。
- 飛翔術
- 魔女術の一つ。中国では空行術という。人間が使える術の中では最高の速度を出すことができ、ヨーロッパでは陸続きの国境を超えることも可能なほど移動距離も長いが、使用前に目的地を決める必要があるため追跡には向かず、直線的にしか飛ぶことができないため使用中は無防備になる。
- 魔女の目
- 魔女術の一つ。視覚を遠方に飛ばし、自在に動かす千里眼系の術の一種。同系統の術の中で最も速く動かせるという特徴から、主に尾行や飛翔術の目的地を定めるときによく用いられる。類似のものに媛巫女の「物見の術」があるが、こちらは視力が強化され俯瞰的な視点から対象を見る(速度については不明)。
- 隠れ身
- 魔女術の一つ。自分を周囲の景色と同化させ、姿を隠す術。特定の人間にのみその姿を見せることも可能。一部の魔女のほか、妖精たちも使うことができる。
- 世界移動(ブレーンウォーキング)
- 現世から「生と死の境界」へと移動するための呪術。日本では『幽世渡り』と呼ばれる。最高位の魔女にのみ口伝で伝えられる秘術であり、特殊な霊薬を服用する必要がある。
- 縮地法
- いわゆる瞬間移動を行う方術。非常に難易度が高いが、優れた道姑である羅濠教主の場合は舌打ちだけで術を発動することができ、カンピオーネ特有の膨大な呪力を利用して短距離転移を連発し近接戦闘にも役立てている。
- 飛鳳十二神掌(ひほうじゅうにしんしょう)
- 羅翠蓮が得意とする中華武術の絶技。鳳雛登門・鳳眼穿廉・鳳爪掏心・飛鳳墜落・丹鳳朝暘・金鳳亮翅・群鳳連環・雄鳳千斤・鳳翼天象・鳳龍陰陽・鳳凰双飛・大鳳無天の十二手からなる技で、元々「飛鳳五仙掌」と呼ばれていた技法に羅濠が自ら編み出した7掌を加えて完成させた掌法。直弟子である鷹化にも伝授している。後に魔除けの雷法を体に纏って放つ「十二神掌忽雷架式(こつらいかしき)」という魔術破りの効果が付与された技も開発している。
- 虚空蔵求聞持法(こくうぞうぐもんじほう)
- 虚空蔵菩薩を一心に念じることにより、超人的な記憶力を得る秘法。空海も会得していたとされる術で、一読した仏典の内容をすべて一言一句も欠けずに記憶できるようになる。
- 天山童姥功(てんざんどうぼこう)
- 2ヶ月分の修行に匹敵するだけの気をわずかな期間で速成できる内功。その分無理がかかるため、代償として一時的に体格が幼くなってしまい、体力と筋力が低下する。
- 吸星奪魂掌(きゅうせいだつこんしょう)
- 奇経八脈に流れる気をあえて空にすることで、掌で触れた相手から気を抜きだし奪い取るという邪派の武芸の一つ。
- 禹歩
- 武術と奇門遁甲の方術を組み合わせた遁甲歩法の絶技。縮地とは異なる移動術。北斗七星をなぞる「七星点心歩法」、南斗六星をなぞる「六甲迷蹤歩法」、カシオペア座をなぞる「王良五星歩法」など複数の種類が存在する。
- 教授
- 『啓示』とも言い、一瞬にして莫大な量の知識を教え込む術。効果は約1日しか持続しない。類似の効果を持つ術には、神祖や神しか行使できない超高位の術として時間制限もなく知識に加えセンスのない者にも特定の魔術などを使用可能にする『秘法伝授』、大人数で行う儀式魔術の際に感覚や想いを他者と共有する『霊感共有』、過去の記憶を映像として相手に伝える『幻視の術』もある。
- 元老院最終勧告(セナトゥス・コンスルトゥム・ウルティムム)
- 鉄の鎖で悪しき魔術や悪魔から身を守るための五芒星の印を作り、堅牢な防御障壁を構築する秘術。
- 召喚・送還
- 西洋の騎士達が武器を持ち運ぶときに使用する魔術。武器を自在に出し入れできる利便性の高い術だが、重量に上限があり剣以上の重さを持つ物(人間など)を転移させることはできない。また手紙のようなごく軽い物を届ける『投函』という術も存在する。
- 千の言語
- 長年魔術を学び、言霊の奥義を悟った達人のみが会得する秘術。会話相手の言葉から他言語を短期間で習得する。魔術師たちは幼いころから言語センスを鍛えることによって身につけるが、霊的ステージが高いカンピオーネには最初から備わっているらしく、護堂はイタリア語をこれで覚えたと述べられている。文字に対しても適用されるかは不明。
- 護堂は他言語を三日ほどで、ヴォバンはほんの五、六十分で日本語を収得した。
組織
- 正史編纂委員会
- 日本の呪術師や霊能者のうち特に都市部に住む在野の呪術師達を統括し、彼らが関わった事件の情報操作などを行う政府直属の秘密組織(平たく言えば、作中日本におけるメン・イン・ブラックのようなもの)。沙耶宮惟道によって創設された。文部科学省や国会図書館、宮内庁や神社庁、警視庁などから識者を招いて構成され、一応は国家公務員である。国内の呪術師や霊能者は彼らに協力する義務がある。呪術師や霊能者に対して守秘義務を課しているが強制ではない。そのため、冬姫からさくらに様々な情報が漏れるという事態が起きた。青葉台には機密文書館があり、全国から収集・没収された魔道書が保管されている。媛巫女の集まりや祭事の区分は、静岡を境界として大まかに東西に分かれている。従来は隔世の古老の指示を仰いでいたが、13巻で正式に現世の護堂をトップとすることが馨によって宣言された。
- 四家
- 古来より呪力を以って帝に仕えてきた、清秋院・九法塚・連城・沙耶宮の一族。現在も氏族の間で勢力争いを繰り返している様子。中には自分達以外の家の者(例として本来敬われるべき媛巫女の中で家格の低い出自の者)を下に見る人間もいるようで、特に年寄りの世代に多いという。
-
- 清秋院(せいしゅういん)
- 政治と武力において力を持つ一族。本家は秩父にある。清和源氏の末裔であり、祖先は戦国大名だったことから、本家の蔵には貴重な骨董品が大量に保管されているほか、神具「七支大刀」の管理も行なっている。
-
- 沙耶宮(さやのみや)
- 正史編纂委員会のトップを代々務める智慧者の一族。ここ150年ほどの間は四家の中で最も強い発言力を持ち続けている。歴代当主は代々蒐集癖がひどいらしい。
-
- 九法塚(くほうづか)
- 300年ほど前の江戸時代初期に、日光東照宮に建立された「西天宮」とそこに祀られる猿猴神君の守護を行う一族。職務の性質上、禍祓いの力を持つ媛巫女との協力が不可欠である。
- 古老
- 正史編纂委員会に指示する立場にある存在[注 115]。元まつろわぬ神である御老公(スサノオ)を筆頭に、人を超えて不死に近づき、幽世で生きることを選んだ者たちの集団。その権威は絶大で、委員会はおろか四家でも彼らの指示を無下にはできない。1000年以上前から活動しており、日本に流れ着いた『最後の王』ラーマを目醒めさせないために、寝床を制止軌道上に移動させた上で元の場所にはダミーとなる浮島を沈め、浮島を消すのに使った神具「天之逆鉾」は厳重に保管、龍蛇の接近で王が目覚めるのを防ぐために斉天大聖を配置し、時に強力な記憶操作の呪術まで使って真実を隠蔽するといった幾重もの策を巡らせていた。
- 撃剣会(げきけんかい)
- 「帝都古流」と呼ばれる古武術の研究会。第二次世界大戦の敗北後、GHQに解体された日本武道の専門家を正史編纂委員会が指南役として囲い込んで作った。委員会の職員や媛巫女だけでなく、自衛隊や警察官の中でも呪術業界に近い人間が参加して稽古をしている。稽古は剣道とは比べものにならないほどに荒っぽく、鮫皮の「切っ先」がついた竹刀を使い、組打ちありで流血も日常茶飯事と、体系としては戦前の武道に近い。4人の師範代は「撃剣世話係」と呼ばれており、それぞれが四神に由来する通り名を持ち、「青龍」が浅草に、「白虎」が世田谷に、「朱雀」が麻布に、「玄武」が王子にそれぞれ道場を開いている。師範代級にもなると武術の腕では恵那を凌駕するほどで、中には羅濠に匹敵する剣術家までいる。
- 七姉妹
- イタリアで名門とされる七つの魔術結社。テンプル騎士団の壊滅後、その生き残りが遺した魔術・武芸・資産を受け継いだ『騎士』によって創られた。
- ローマの《雌狼》《蒼穹の鷲》、トリノの《老貴婦人》、フィレンツェの《百合の都》、パルマの《楯》、ミラノの《赤銅黒十字》《青銅黒十字》の総称。これらの結社に所属する新米騎士が叙勲を受ける際には、サン・ジラルディーノ修道院で錬金術で作られた特殊な剣を贈られるという風習がある。
- 赤銅黒十字
- テンプル騎士団の秘術を継承する魔術結社の中でも最強の一つ。現総帥はパオロ・ブランデッリ。表向きは財団の形をとっており、いくつもの事業を営む優良企業でもある。組織を象徴する色は、紅と黒。イタリア国外の魔術師にも広く門戸を開いているが、総帥と筆頭騎士「紅き悪魔」の地位にはイタリア人しか就任できないという決まりがある。
- 青銅黒十字
- 古の時代から赤銅黒十字とやりあっていたライバル関係の魔術結社。組織を象徴する色は、青と黒。
- 賢人議会(けんじんぎかい)
- ロンドンはグリニッジに本拠を置く、魔術・オカルトの研究機関。産業革命当時成長著しいロンドンに興味を持ったヴォバンがロンドンに居宅を構えたために、ヴィクトリア女王を守るべく「ディオゲネス・クラブ」の魔術師たちが中核となって発足した。神々とカンピオーネの情報を収集し、彼らが絡む有事の際には率先して対応しようとする。作中世界における魔術の総本山といえる組織。しかし発足したのは19世紀頃と魔術の歴史の中では日が浅いため、サルバトーレや護堂についての情報は豊富だが、ヴォバンに関しては近年の情報しかなかった。あくまで研究機関なので魔術結社のように戦闘員は多くない。また、カンピオーネたちに関するレポートを定期的に発表、呪術関係者の中で希望者に情報提供しており、彼らの権能にも暫定的な名称を与えている。知識全てを公開しているわけではなく、カンピオーネへの無謀な挑戦を減らすためにその危険性を知らしめることを目的としている[注 116]。
- 王立工廠(おうりつこうしょう)
- アレクが総帥を務める魔術結社。アレクの賢人議会に対する嫌がらせと恐怖に慄く姿を見たいという理由から、ロンドンに近いコーンウォールを本拠地とする。
- メンバーは雑多な人材の寄せ集めであり、強力な魔術師から魔術や神の存在を知っただけの一般人まで様々だが、エリート魔術師集団に対する対抗意識を共通してもつ。魔術に関するレベルはまちまちなので、総帥のアレク自身がその美学から魔術などについて教鞭を執ることもしばしばある。アレクの指示でカンピオーネと敵対した場合には即座に本拠地を捨てて逃げるよう強く言い含められている。
- 五嶽聖教(ごがくせいきょう)
- 羅濠が教主を務める魔術結社。中華の技芸を学んだ武侠や方術使いの三割近くがこれに所属している。構成員は教主に絶対の服従を誓い、教主の姿を見ただけで目を潰し、声を聴いただけで耳を削ぎ落とすほど。
- 日本には陸家が常駐し新宿歌舞伎町を本拠地としている。陸家も連絡員として用いられており、最近秋葉原でメイド事業を始めた。
- SSI (Sorcerous Sacrilege Investigation)
- アメリカ国内における魔術、超自然現象に関わる事件の調査、関連情報の隠蔽に従事する政府機関。日本の正史編纂委員会に相当する。
- 蠅の王
- ロサンゼルスに拠点を置く、《神祖》であるアーシェラが総帥を務める邪術師の組織。ヨーロッパから開拓時代のアメリカ大陸に渡った神祖たちを女王として崇める魔女の系譜に連なり『天使の骸』を追い求めて組織されたというが、スミスとの戦いにより壊滅した。組織崩壊の影響で、アメリカでは野良の邪術士が増加することとなった。
その他
- 私立城楠学院
- 護堂たちが通う学校。根津にある草薙家から歩いて20分の近所に位置し、中等部から大学部まで存在する。一応進学校に分類され、文科系の部活が盛ん。一方で運動部の成績はいまいちで、本編の前年、チアリーディング部が10年ぶりに全国大会に出場した以外は目立ったところがない。校内には大学病院も併設されている。
- 草薙一族
- 護堂の親族。静香曰く「由緒正しい庶民」の家柄だが、男子には代々ひどい遊び人のろくでなしが多く、火が付いたら止まらない性格で、有り余る生命力が暴走して周囲に迷惑をかける傾向が強い[注 117]。例として芸者遊びで身代を潰した若旦那、不倫の末上海に逃げた禅僧、死後に原稿用紙3000枚に及ぶ幼女に虐げられる快楽をつづった小説が発見された当主などがこの200年程続けて現れており、たとえ固い職業についていてもアウトローなところがある者が多いらしい。
- 明治から昭和初期にかけて激動の人生を送った者が多いため、直系は護堂の祖父ぐらいしかいないが、分家はそこそこ残っており、なおかつそのつながりが非常に強いため毎年始には日本中から一族が東京に集まって盛大な新年会が催される。なお、この新年会の2次会では小料理屋などを貸し切って様々なギャンブルが行われ、護堂は数年間チャンピオンの座に座り続けていた[注 118]。
- 国士無双
- 香港陸家が日本での3番目の拠点として秋葉原で運営しているメイド飲茶房。鷹化は当初激安PCパーツショップか同人誌ショップにして集客を図る心算でいたが、舎弟たちがメイドテーマパークを作りたいと懇願したためこのような形になった。ここのVIPルームでは鷹化達による「男子会」(メンバーは護堂、鷹化、甘粕、馨)が時折開催される。また護堂と縁があるということで、10月に開催された城楠学院の学園祭では1年5組の「チャイナ猫耳メイド喫茶・飲茶アレンジ館」のバックアップを行った。
既刊一覧
タイトル | 第1刷発行日 | 第1刷発売日 | ISBN | 備考 | |
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1 | カンピオーネ! 神はまつろわず | 2008年5月28日 | 2008年5月23日 | ISBN 978-4-0863-0428-3 | |
2 | カンピオーネ! II 魔王来臨 | 2008年11月26日 | 2008年11月21日 | ISBN 978-4-0863-0460-3 | |
3 | カンピオーネ! III はじまりの物語 | 2009年3月30日 | 2009年3月25日 | ISBN 978-4-0863-0481-8 | サイト内書き下ろし有 |
4 | カンピオーネ! IV 英雄と王 | 2009年7月29日 | 2009年7月24日 | ISBN 978-4-0863-0496-2 | |
5 | カンピオーネ! V 剣の巫女 | 2009年11月30日 | 2009年11月25日 | ISBN 978-4-0863-0516-7 | |
6 | カンピオーネ! VI 神山飛鳳 | 2010年3月30日 | 2010年3月25日 | ISBN 978-4-0863-0539-6 | |
7 | カンピオーネ! VII 斉天大聖 | 2010年7月28日 | 2010年7月23日 | ISBN 978-4-0863-0557-0 | サイト内書き下ろし有 |
8 | カンピオーネ! VIII 受難の魔王たち | 2010年11月30日 | 2010年11月25日 | ISBN 978-4-0863-0579-2 | 短編集 |
9 | カンピオーネ! IX 女神再び | 2011年3月30日 | 2011年3月25日 | ISBN 978-4-0863-0600-3 | |
10 | カンピオーネ! X 槍の戦神 | 2011年8月30日 | 2011年8月25日 | ISBN 978-4-0863-0623-2 | |
11 | カンピオーネ! XI ふたつめの物語 | 2011年12月27日 | 2011年12月22日 | ISBN 978-4-0863-0653-9 | サイト内書き下ろし有 |
12 | カンピオーネ! XII かりそめの聖夜 | 2012年5月30日 | 2012年5月25日 | ISBN 978-4-0863-0677-5 | サイト内書き下ろし有 |
13 | カンピオーネ! XIII 南洋の姫神 | 2012年8月29日 | 2012年8月24日 | ISBN 978-4-0863-0697-3 | サイト内書き下ろし有 |
14 | カンピオーネ! XIV 八人目の神殺し | 2013年5月29日 | 2013年5月24日 | ISBN 978-4-0863-0738-3 | サイト内書き下ろし有 |
15 | カンピオーネ! XV 女神の息子 | 2013年10月30日 | 2013年10月25日 | ISBN 978-4-0863-0757-4 | サイト内書き下ろし有 |
16 | カンピオーネ! XVI 英雄たちの鼓動 | 2014年2月28日 | 2014年2月25日 | ISBN 978-4-0863-0772-7 | 短編集 |
17 | カンピオーネ! XVII 英雄の名 | 2014年9月30日 | 2014年9月25日 | ISBN 978-4-0863-0800-7 | スーパーダッシュ文庫刊行はこの巻まで |
18 | カンピオーネ! XVIII 魔王たちの断章 | 2015年4月30日 | 2015年4月24日 | ISBN 978-4-0863-1039-0 | 短編集。この巻からはダッシュエックス文庫にて刊行 |
19 | カンピオーネ! XIX 魔王内戦 | 2016年10月30日 | 2016年10月25日 | ISBN 978-4-0863-1147-2 | |
20 | カンピオーネ! XX 魔王内戦2 | 2016年12月27日 | 2016年12月22日 | ISBN 978-4-0863-1162-5 | |
21 | カンピオーネ! XXI 最後の戦い | 2017年11月27日 | 2017年11月22日 | ISBN 978-4-0863-1162-5 |
ドラマCD
- 『スーパーダッシュ&ゴー!』創刊第3号(2012年4月号)特別付録ドラマCD
漫画
Template:漫画 は 廃止されました |
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スーパーダッシュ&ゴー!にて2011年12月号から2013年6月号まで原作2巻までの内容が連載された。作画は坂本次郎。既刊3巻。
- カンピオーネ! I - 2012年5月25日発売 ISBN 978-4-0878-2451-3
- カンピオーネ! II - 2013年5月24日発売 ISBN 978-4-0878-2600-5
- カンピオーネ! III - 2013年10月25日発売 ISBN 978-4-0878-2715-6
テレビアニメ
『カンピオーネ! 〜まつろわぬ神々と神殺しの魔王〜』のタイトルで、2012年7月から9月にかけて、TOKYO MX、サンテレビ、テレビ愛知、BS11、AT-Xにて放送された。ナレーションは立木文彦。TOKYO MXでの放送時に限り、原作者の丈月城による解説がTwitter上で行われていた。
スタッフ
- 原作 - 丈月城(集英社スーパーダッシュ文庫刊)
- イラスト - シコルスキー
- 監督 - 草川啓造
- シリーズ構成 - 花田十輝
- キャラクターデザイン・総作画監督 - 石川雅一
- クリーチャーデザイン - ヒラタリョウ
- アクション作画監督 - 津熊健徳(第3話、第4話、第7話、第8話、第10話、第12話、第13話)
- 美術監督 - 岩瀬栄治
- 美術設定 - 高橋麻穂
- 色彩設計 - 海鋒重信
- 撮影監督 - 羽田巧
- 編集 - 岡祐司
- 音響監督 - 岩浪美和
- 音楽プロデューサー - 小池克実
- 音楽 - 加藤達也
- 音楽制作 - ランティス
- プロデュース - 足立聡史、川瀬浩平
- プロデューサー - 三條場一正、中山信宏、兼光一博、伊藤善之、福田順、藤田敏
- アニメーションプロデュース - 里見哲朗
- アニメーションプロデューサー - 山本健一郎
- アニメーション制作 - ディオメディア
- 製作 - 『カンピオーネ!』製作委員会(集英社、ワーナー・ホーム・ビデオ、ブルズ・アイ、ランティス、ディオメディア、クロックワークス、AT-X)
主題歌
- オープニングテーマ「BRAVE BLADE!」(第2話 - 第13話)
- 作詞 - 松井洋平 / 作曲・編曲 - 菊田大介 / 歌 - 桜川めぐ
- 第1話はOPがないため未使用。
- 第12話ではEDとして使用。
- エンディングテーマ「Raise」(第2話 - 第11話、第13話)
- 作詞 - 只野菜摘 / 作曲 - 俊龍 / 編曲 - 藤田淳平 / 歌 - 小倉唯
- 第1話はEDがないため未使用。
原作からの主な変更点
この節に雑多な内容が羅列されています。 |
- 原作の順番ではなく時系列順で、3巻のエリカとの出会い話が第1話になっている。
- ウルスラグナと護堂は友誼を結んでおらず、またそれに付随してプロメテウス秘笈の効果などが変化している。
- 『戦士』の化身が、敵や仲間ごと黄金に輝く異空間に取り込み、黄金に輝く剣が無数に護堂の周囲に出現し敵に投射する・前述の剣より大型の黄金に輝く剣が護堂の手中に直接出現し攻撃に使用する等、かなり異なる演出になっている。
- 護堂がカンピオーネとなってからアテナとの遭遇までの期間が一週間後に短縮されている。
- 護堂と祐理の初対面の時期が、原作では護堂がゴルゴネイオンを手に入れた直後なのに対し、アニメではゴルゴネイオンを手に入れる前のエリカが転校してきた直後となっている。
- アテナとの戦いのときにリリアナが日本に来ている。
- ヴォバンとの戦いで原作では祐理が護堂に「教授」を施していたが、アニメではアポロンの知識をエリカから、オシリスの知識を祐理から受け取っており、さらにエリカが祐理の行動を後押ししていた。
- 祐理がヴォバンにさらわれリリアナと再会したとき原作では彼女のことを覚えていなかったがアニメでは覚えておりそのことからリリアナの説得に参加していた。
- 恵那がエリカと戦う時、幽世で自分から神がかりを暴走させている。さらにオリジナルの最終回に合わせてか、ウルスラグナの加護を受けたエリカと恵那が戦うシーンがカットされている。
- アニメの最終回がアテナの分身のメティスと戦うというアニメオリジナルになっている。
各話リスト
話数 | サブタイトル | 脚本 | 絵コンテ | 演出 | 作画監督 | 原作収録巻 |
---|---|---|---|---|---|---|
#1 | はじまりの物語 | 花田十輝 | 草川啓造 満仲勧 |
草川啓造 | 本多美乃、井出直美、松本麻友子 | 3巻 |
#2 | 王様のいる風景 | 満仲勧 | 小菅和久、武本大介 | 1巻 | ||
#3 | 遠方より敵来たる | 山本靖貴 | 山本真嗣、松原栄介 | |||
#4 | まつろわぬアテナ | 吉田泰三 | 間島崇寛 | 佐藤麻里那、北村晋哉 | ||
#5 | 好日ならざる日々 | あおしまたかし | 佐藤広志 | 酒井智史、のりみそのみ | 2巻 | |
#6 | 王たちは話し合う | 鴻野貴光 | 平川哲生 | 守田芸成 | 志賀道憲、成川多加志 | |
#7 | 風よ、雨よ、狼よ | 子安秀明 | 平牧大輔 | 小菅和久、本田敬一 | ||
#8 | 英雄推参 | 福田道生 | 吉田りさこ | 冨谷美香、武本大介、佐藤麻里那 | 4巻 | |
#9 | 行方不明の王様たち | あおしまたかし | 満仲勧 | 駒屋健一郎 | 山本真嗣、志賀道憲、松原栄介 | |
#10 | 荒ぶる魔王、太陽の勇者 | 鴻野貴光 | 平川哲生 | 山本靖貴 | 玉木慎吾、佐藤麻里那 | |
#11 | 太刀の媛巫女 | 吉田泰三 | のりみそのみ | Seo Jung Ha、井本由紀 木下ゆうき、井嶋けい子 |
5巻 | |
#12 | 天叢雲劍 | あおしまたかし | 満仲勧 | 佐藤麻里那、武本大介、桜井正明 本田敬一、石井和久 | ||
#13 | 神殺しの物語 | 花田十輝 | 草川啓造 小平麻紀 |
玉木慎吾、飯野誠、工藤利春 佐藤麻里那、木村邦彦、長谷川亨雄 清水明日香、小菅和久、齊田博之 |
オリジナル |
放送局
放送地域 | 放送局 | 放送期間 | 放送日時 | 放送系列 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
日本全域 | AT-X | 2012年7月6日 - 9月28日 | 金曜 23:30 - 土曜 0:00 | CS放送 | 製作委員会参加 リピート放送あり |
東京都 | TOKYO MX | 2012年7月7日 - 9月29日 | 土曜 1:00 - 1:30(金曜深夜) | 独立局 | |
兵庫県 | サンテレビ | 2012年7月10日 - 10月2日 | 火曜 0:35 - 1:05(月曜深夜) | ||
愛知県 | テレビ愛知 | 2012年7月12日 - 10月4日 | 木曜 2:00 - 2:30(水曜深夜) | テレビ東京系列 | |
日本全域 | ニコニコ動画 | 木曜 23:30 - 金曜 0:00 | ネット配信 (ストリーミング形式) |
ニコニコ生放送で30分先行配信 | |
BS11 | 2012年7月14日 - 10月6日 | 土曜 0:00 - 0:30(金曜深夜) | 独立系BS放送 | ANIME+枠 | |
バンダイチャンネル | |||||
ワーナー・オンデマンド | |||||
PlayStation Store | |||||
Video Unlimited | |||||
TSUTAYA TV |
BD / DVD
2012年9月26日から2013年3月27日まで、BD初回限定版・通常版、DVD初回限定版・通常版の4種類で発売された。
巻 | 発売日 | 収録話 | 規格品番 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
BD初回版 | BD通常版 | DVD初回版 | DVD通常版 | |||
1 | 2012年9月26日 | #1 | 1000335285 | 1000335286 | 1000335283 | 1000335287 |
2 | 2012年10月31日 | #2 - 3 | 1000335279 | 1000335280 | 1000335277 | 1000335281 |
3 | 2012年11月28日 | #4 - 5 | 1000335273 | 1000335274 | 1000335271 | 1000335275 |
4 | 2012年12月26日 | #6 - 7 | 1000335267 | 1000335268 | 1000335265 | 1000335269 |
5 | 2013年1月30日 | #8 - 9 | 1000335261 | 1000335262 | 1000335259 | 000335263 |
6 | 2013年2月27日 | #10 - 11 | 1000335255 | 1000335256 | 1000335253 | 1000335257 |
7 | 2013年3月27日 | #12 - 13 | 1000335249 | 1000335250 | 1000335247 | 1000335251 |
BOX | 2014年10月29日 | 全13話 | 1000519562 |
Webラジオ
『ラジオ「カンピオーネ!」 〜日笠・日高はまつろわず〜』は、2012年6月21日から10月11日までHiBiKi Radio Stationで隔週木曜日に配信されていたラジオ番組[9]。パーソナリティは日笠陽子(エリカ・ブランデッリ 役)、日高里菜(草薙静花 役)。
- ゲスト
脚注
注釈
- ^ 正史編纂委員会曰く、日本に誕生した初めての神殺し。
- ^ 本人曰く「平和主義と無抵抗主義は違う」。
- ^ エリカ曰く「戦いを正当化できる理由を見つけたら、すぐ戦闘態勢になる」。
- ^ とはいえ、目的達成を第一とし敢えて命まで取る気はない。
- ^ 基本的に戦闘の余波だが自らの意思でも多くの名所・史跡など建造物を壊滅させている。
- ^ それぞれアレク、「時の番人」、アルティオからの評価。
- ^ 室内で発動した「マッチ棒を折る」魔術で街路樹を折った。
- ^ 天叢雲などの剣を扱うときも、剣術の心得がないためバットのようにしてふるう。
- ^ 駱駝の化身になれば神と伍する格闘能力を得られる。
- ^ 調査書から抜粋第5巻p.21
- ^ この時から、護堂を恋愛対象として意識しはじめた模様。
- ^ 面識だけならそれより前の4月中にもあったが、すれ違う程度で言葉は交わしていない。
- ^ 留学生のエリカより元からいた祐理との方が先に出来ていると周囲が早合点したため。実際、護堂は高校からの編入生であり祐理に初めて会ったのもエリカより後のことである。
- ^ アリスのように本人と瓜二つの霊体を作り出せるほどの技量はない。
- ^ 髪型は憧れている聖ラファエロに倣った物。
- ^ あくまで媛巫女の中で最強というだけで、剣術などに限れば及ばない相手が幾人か国内には存在している。
- ^ OBである甘粕曰く、「虎の穴」「陸軍中野学校、少林寺、裏高野を足して3で割ったようなところ」。
- ^ 通常剣術と魔術は並行して覚えなければ高みへ至れないとされ、剣術のみを極めたドニは異端の天才といわれる。
- ^ いずれ決着をつける強敵という意味合いもある。
- ^ 作者からも「知力:もちろん悪い」「死なないのでバカは治らない」などと評されている(漫画版第3巻より)。
- ^ 武術も魔術も全く知らずに王となり権能を闘志と知恵で使いこなすという点から、護堂と自分の境遇を似ているとも語っている。
- ^ 前侯爵家の人々はその犬の飼育係として扱われた。
- ^ この儀式で祐理の力を見たことが来日の理由。
- ^ 本人によると、生涯で5回「通廊」に飲み込まれてしまっている模様。
- ^ 才覚を認め直答を許す相手は非常に少ない。希少な例は武術の才能を見込んで唯一の直弟子とした陸鷹化、聡明さと周到さを持ち合わせるエリカ・ブランデッリ、わずかな情報から『最後の王』の真名を推理して見せた甘粕冬馬など。
- ^ アヘン戦争の頃に汚れた町中で大量のアヘン中毒者を目撃したことがきっかけになっている。
- ^ 例として飛行機に乗ったことがなく(空行術が使えないほどに消耗したとき初めてヘリコプターに乗った)、「車」といえば牛馬が牽く「御料車」を連想するなど。
- ^ 我慢すれば渋々ながらも社会に溶け込むことはできるらしい。
- ^ 初めての麻雀で対戦相手全員がグルでイカサマし放題だったため、卓上にある四人分の手牌を素早く集めて、短時間で役を作る遊びだと勘違いしたまま今に至るため。
- ^ 事実痛み分けに近い形であったが、自身の方が魔王としてのキャリアが長いことから「一本とられた」ような気持ちで勝ちを譲る。
- ^ 英語の名称に関しては賢人議会が勝手に付けたものである。配下にはそのことを知る者も多いが報告すれば間違いなく報告した当人と賢人議会へ粛清が及ぶため、それを恐れて現在まで誰も進言していない。
- ^ この時「スミス」の声は変身時に着用しているヘルメットから聞こえる。
- ^ ルクレチア曰く「(女性の扱いは)イタリアの小学生より下」
- ^ それでも大飢饉を引き起こす程度の力は持っている。
- ^ 例えば戦うそぶりを見せずに「冬の力」の暴走で不意打ちを加え序盤から切り札の『冥府落とし』で相手を地下深くへ叩き込む、「氷の大蛇」で拘束した敵の真下に冥府の穴をあけ金剛三鈷杵による神の雷で追い打ちを加えるなど。
- ^ そもそも孤児であるヴォバンに家族はいない。
- ^ 護堂曰く「血を分けた従兄弟程度」。
- ^ 作者曰く、中世以前の時代に生まれた護堂。
- ^ 本人曰くその名代は頼りにならず、近い将来国ごと滅亡すると予想している。
- ^ ただし2つの化身を同時に使うことはできないという制約がある。
- ^ ギリシアでもイランでもなくナポリに顕現したのはローマ帝国の神だったため。
- ^ 複数の神殺しが身近にいなければ発動できず、その力も通常の神の3〜4倍程度にとどまる(『最後の王』に比べれば3割以下)。
- ^ 物語のランスロットではないためか湖の妖精から加護と共に授かったとされる霊剣は使用しない。
- ^ その正体の意外さに動揺していたこと、完全に神力を封じていたためにまつろわぬ神であると認識できず闘争心が沸かなかったことが大きな原因。
- ^ 作中では主人であるキルケーに枷をかけられた状態だったため、トロヤ戦争で『トロヤの木馬』を考案した時のような智慧や弁舌の才は封じられていた。
- ^ 例としてインド神話がルーツとなるペルシア神話の太陽王ミスラや、中国神話で「9つの太陽を射落とした英雄」の力を使った。
- ^ 例としてプシュパカ・ヴィマーナにある電光を放つ白亜の塔など。
- ^ 人類の文化が未発達な太古の時代では現地に存在する神格も素朴なものばかりであることから援助も受けにくく、現代への帰還はおろかモチベーションを保ち続けることすら難しいとされる。
- ^ この行動には竜蛇の気配によって『最期の王』の覚醒を促すという意味もあった。
- ^ 祖父母は健在で長崎に在住している。
- ^ この描写は原作とアニメで大きく異なる。原作ではMT車とAT車の区別がついていない上に、どちらを運転しても確実に暴走する。アニメでの愛車は赤いオペル・アストラH(MT)。第4話では運転中にもかかわらず、護堂とエリカのやり取りをルームミラー越しに見ようと(早い話が脇見運転)していた。
- ^ たたり神から奪われ秘笈に蓄えられていた黒い呪詛の雷の神力はウルスラグナが『山羊』の化身を倒すために使い切っている。
- ^ しかし争う場合はカンピオーネに敵うはずもないので、政治的な手段に出ることがほとんど。
- ^ ソル、アポロ、ミトラスなどが挙げられている。
- ^ 護堂がピッチャーの癖を見抜くことに関して異様なまでに高いセンスを持っていたためである可能性はある。
- ^ 甘粕の手配で護堂の名前を「くささぎごろー」と覚えさせられたためである。
- ^ 事実、当代のカンピオーネの仲で神殺しを為す前から優れた魔術師だったのは羅翠蓮のみで、ヴォバン・ドニ・護堂の3名は魔術を使えない。
- ^ 作中ではドニと護堂以外のカンピオーネがどのようにして大抵の手段では傷一つ負わせられない神を殺したのかについては明言されていない。
- ^ 骨はたいていの金属より硬く、筋肉はしなやかで千切れにくい。戦闘中はアドレナリンの分泌が増加するようで、出血してもかなり早く血が止まる模様。
- ^ 魔術による直接攻撃は自動で無効化する。直接でない場合(周囲の空気ごと念力で動かすなど)は影響を受けるが、呪力を高めるだけで容易に抗える。例外は経口摂取などで体内に直接呪術を送り込むことのみであり、魔術的な治療行為なども口移しで行う必要がある。逆に闘争心が湧かなければ権能や経口摂取などによる毒や術が影響を及ぼすことがあるが、危機的な状況下に追いやられ自然に闘争心が高まると呪力も湧き上がるため、容易にかけられた術を破ることが可能となる。
- ^ 護堂曰く「スポーツにおいて反則に近い」とのこと。あくまでも最良の状態になるだけで強くなるわけではないため、それを超える腕力などを発揮する人間も普通にいる。
- ^ ブランデッリ家もその一つだが、権能を含むカンピオーネの能力そのものは遺伝しない。
- ^ その力から逆らえないというのが正しいらしく、少なくともドニは人類の全武力をもってしても勝てないとエリカに評されている。
- ^ 当代のカンピオーネでは、少なくともドニ・ヴォバン侯爵・羅濠教主・護堂は『白馬』の使用が可能な「民衆を苦しめる大罪人」に当てはまる。
- ^ 大手の魔術組織は歴史で逸話などからその理不尽さを学ぶ。
- ^ パンドラ曰く「弱った神様を倒しても権能は増えない」とのことで、実際護堂との死闘で満身創痍だったペルセウスをドニが倒した時や、アレクとの戦いで既に重傷を負っていたキルケーを護堂が倒したときは権能は増えなかった。ただし倒された神が自ら望めば権能未満の力を残す可能性があることが示唆されている。
- ^ ただしランスロットに関しては護堂に倒された後で『鏃の円盤』に魂を捕らわれたものの、3ヶ月以上経ってから自らの意思で円盤との繋がりを絶ち護堂の権能になった。
- ^ 『神域のカンピオーネス』の世界でも神殺しは生まれており、作中世界と同様に「あらゆる魔術師を凌駕する呪力」「生物としてありえないレベルの生命力」「多言語習得能力」「殺した神から権能を奪う」「獣のように夜闇を見通す視力」という能力が備わっている。
- ^ 斉天大聖曰く「神と世界の理に逆らう存在であり、魔王が一人現れるごとに現世と幽冥の均衡が失われるため、これを一掃するのが神々の正義であり使命」とのこと。
- ^ ただし、護堂とアテナ、ドニとアルティオのようにかつては敵対していたが共通の敵を前に一時的に共闘することもある。
- ^ 例としてウルスラグナは英雄としての性質を、ランスロットはグィネヴィアの守護者としての性質を失い、戦神としての性に飲まれてただ戦いを求めるだけの存在と化した。
- ^ 「竜蛇の封印を解く」と表現される。
- ^ キルケーの例を挙げると、「大海蛇」はその肉体が衝撃に強いゴム状へと変化、「神鵰」は肉体から炎を発する「火の鳥」になった。
- ^ 護堂の『鳳』では心臓の激痛と使用後の行動不能、アレクの『電光石火』では強烈な時差ボケのような症状といった副作用が出る。加速が急なものほど負荷が大きくなる傾向がある。
- ^ ちなみに神速を使っている側からすると、コマ送り再生のような不自然な動きで攻撃が迫ってくるように見えるという。
- ^ 実際、ルクレチアの前の所有者は秘笈の使用で死亡している。護堂もそれで瀕死になったが、カンピオーネに転生することで蘇生した。
- ^ 「盟約の大法」を使うことで曼荼羅は最大で4つまで展開可能。ただし神力が不足していると曼荼羅の展開はできないようで、白き光球から直接雷を降り注がせる形になる。
- ^ 作中ではアーサー王の「選定の剣」、スキタイの民による軍神アーレスの祭壇、不動明王の倶利伽羅剣などが挙げられている。
- ^ DVD・BD5巻特典小説にて。
- ^ 神殺しが7人の場合は、通常のまつろわぬ神の10倍以上の魔力を有するようになった。
- ^ 護堂の『東方の軍神』とスミスの『超変身』が該当する。どちらも個々の能力に発動条件があり、発動後の使用不能期間(護堂のものは発動後1日→半日間、スミスのものは時間切れから7日間)が存在する。
- ^ 初期は丸1日は使用不能だったが、護堂が権能を掌握しつつあることにより20巻時点で半日にまで短縮されている。なおスミスの「超変身」とは違い、途中で権能を解除した場合でも再使用できなくなる。ただし10巻で、ランスロットがかけた呪縛により使用直後に回復した等の例外もある。
- ^ 化身の「融合」はさらに負担が大きい。
- ^ 「神やカンピオーネと至近距離で対峙している」レベルの危機であれば確実に発動できる。
- ^ 発動時は時刻・天候に関わらず東の空から曙光がさす。
- ^ 成功率で言えば7割弱程度。
- ^ 月を破壊対象に指定した際には一跳びで大気圏を突破するほどの大ジャンプが可能となり、神を倒し宇宙空間へ飛び出したまま活動し続け月面へたどり着くとその一部を変形させるほどの大暴れをしている。
- ^ 名のある建造物に限れば時系列順に、カリアリ港、スフォルツェスコ城(11巻)、コロッセオ(1巻)、プレシビート広場(4巻)、千鳥ヶ淵(5巻)、横浜ベイブリッジ(10巻)、犬吠埼灯台(13巻)、月(21巻)。
- ^ 護堂本人は「権能による暴走」と言い張るが、エリカ曰く「何年か時を経たら、あんな風に成熟していそう」とのこと。実際に最近では感情が高ぶると同じような言動を取るようになっている。
- ^ エリカやリリアナは、初見の発動時「後で生き返るなら死ぬ前にそう言ってくれ」と護堂を叱っている。
- ^ 立っていられないほどに消耗するのは裕理のような虚弱体質の者だけで、それなりに鍛えていれば少しだるくなる程度に止まる。
- ^ 匠の神コシャル・ハシスが鍛えたメルカルトの棍棒「ヤグルシ・アイムール」やランスロットが水の女神から与えられた霧の恩寵は切り裂けなかった。
- ^ 新たに剣を切り替えられるほどの知識までは得られない。
- ^ 200字の小論文程度の口頭で伝えられる知識では不十分で、神話を形作った民族の歴史なども含んだ「本を1、2冊かけるほどの知識」が必要。
- ^ 剣は自分の肉体の一部とみなされるのか、どれだけ巨大化させても本人は重さを感じない。
- ^ 『白馬』による太陽の焔に焼かれながら湖底に沈む(11巻)、至近距離で「救世の神刀」の暴発の直撃を受ける(15巻)など。
- ^ 護堂との戦闘以前は情報が不十分だったため、詳細は不明で北欧神話の魔狼フェンリルから簒奪したと考えられていた(16巻120頁)。
- ^ 顕身そのものの力か『疾風怒濤』によるものかは不明。
- ^ 自分に忠誠を誓う物への報償、あるいは自分に反旗を翻した者への罰として使用する。
- ^ 詳細な情報が無いため、賢人議会ではケルト神話の魔神バロールから簒奪したと推測していた。
- ^ その一帯にはしばらく雨が降らなくなり、強靭な肉体に変身することで自分が焼け死ぬことを防いでいる。
- ^ 周囲に地震を発生させることで大地を傷つける。
- ^ 達人の技術までは完全再現できず、ドニの剣技は7割ほどの再現率が限界だった。
- ^ ただし、神殺しには通じない。
- ^ 相手が人間の範疇にあるなら事故に巻き込まれたり同行者が急病にかかる程度で収まるが、カンピオーネとなれば天災級の災害に巻き込まれる。
- ^ 作中で見つかっている通廊は5世紀初頭のライン川流域と現代のカゼンティーノ森林公園をつなぐ物。また、魔王内乱でお台場と雲取山を繋げる物が新たに生み出された。
- ^ 何人もの神殺しや神を転移させたときには意識を保てないほどに呪力を消費した。
- ^ 本人の談では上位妖精や旅の神でなければわからないとのこと。
- ^ 欧州ではテンプル騎士団の系譜を受け継ぐ武術も魔術も使いこなす騎士達が魔術結社を形成し、時代とともに修道士としての側面が薄れたことで女性の登用も増え、現代の魔術師の多くは結社の傘下に入る。中国では道教方術(中国魔術)を使う者が「方士」「道姑」と呼ばれる。日本では都市部の呪術師は正史編纂委員会の管理下に置かれ、地方には仏教系の呪術師集団が存在している。北米では《神祖》に従う移民の魔女達に対抗してプロテスタントによる大規模な魔女狩りが行われたせいで、邪術士に対抗する《善の魔術師》はかなり希少な存在となっている。
- ^ 実際、ルクレチアや聖ラファエロ、羅濠教主などは老人とよんでも差支えない年代だがいまだに三十路前ほどの若々しい姿を保ち続けている。
- ^ 例としては、リリアナ・クラニチャールは魔女だが、エリカ・ブランデッリは魔女では無く魔術師にあたる。
- ^ ただし媛として遇されているのには婚姻に干渉して血統に由来する異能を維持させるという目的もある。
- ^ 極論すれば洋綴じの魔術書を前に、柏手を打って神に祈っても発動することはある。
- ^ 世界最高峰の精神感応者であるアリスは自身と寸分違わぬ容姿の霊体を作りイギリスに居ながら日本へと送り込むことも可能だが、加護を受けていない状態の祐理では霊体を白い光にして上空に飛ばす程度が限界。
- ^ 委員会を行政府に見立てた場合、元老院に相当する。
- ^ 例として護堂の権能に設けられている制限や、ドニのアホさ加減については公表されていない。
- ^ 護堂曰く「サルバトーレ・ドニの心の兄弟みたいな連中」。
- ^ 13巻において年末からコタキナバルを訪れ、新年会に不参加だったためディフェンディングチャンピオンではなくなった。
出典
- ^ “「カンピオーネ!」TVアニメ化決定!!”. スーパーダッシュ文庫. 2013年5月8日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k 【雑文『カンピオーネ!』】 カンピオーネと例の七人についてあれこれ2(2017年12月26日閲覧)
- ^ a b c d e f g h i j k l 【雑文『カンピオーネ!』】 カンピオーネと例の七人についてあれこれ1(2017年12月26日閲覧)
- ^ そのためか、御老公(速須佐之男命)からは「あのガキ」「野郎」とよばれる(第13巻p.49 - 50)
- ^ 4巻147頁。
- ^ 1-2巻・14巻の記述。11-12巻では中等部2年と記述。
- ^ 10巻123頁。
- ^ 1巻あとがきより。
- ^ “番組紹介:ラジオ「カンピオーネ!」 〜日笠・日高はまつろわず〜”. 2012年6月21日閲覧。
外部リンク
- カンピオーネ!(スーパーダッシュ文庫・作品紹介)
- スーパーダッシュ文庫公式サイト内特集ページ(3巻発売時)
- スーパーダッシュ文庫公式サイト内特集ページ(7巻発売時)
- スーパーダッシュ文庫公式サイト内特集ページ(11巻発売時)
- スーパーダッシュ文庫公式サイト内特集ページ(12巻発売時)
- スーパーダッシュ文庫公式サイト内特集ページ(13巻発売時)
- スーパーダッシュ文庫公式サイト内特集ページ(14巻発売時)
- スーパーダッシュ文庫公式サイト内特集ページ(15巻&コミックス3巻発売時)
- TVアニメ「カンピオーネ! 〜まつろわぬ神々と神殺しの魔王〜」
- カンピオーネ! (@anime_campione) - X(旧Twitter)