「クリスマス・イヴ」の版間の差分
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2018年1月29日 (月) 00:06時点における版
クリスマス・イヴ(英: Christmas Eve[1])、クリスマス・イブは、クリスマスの前夜、すなわち12月24日の夜を指す英語の音訳である。「イヴ」(eve) は「evening(夜、晩)」と同義の古語「even」の語末音が消失したものである。
転じて、俗に12月24日全体を指すこともある[2]。日常会話では単に「イヴ」と呼ばれることが多い。
概要
ユダヤ暦およびそれを継承する教会暦では、日没をもって日付の変り目とする[3]。このためこの種の暦を採用する教会では、クリスマス・イヴの日没からクリスマスを起算するため「クリスマス・イヴ」は既にクリスマスに含まれている。
カトリックの典礼暦の一日も、日没から始まり日没に終わる[4]。クリスマスをはじめとする重要な祭日や主日(毎週日曜日)の典礼は前日の「晩の祈り」から始まる。ここ時点から日付がかわるまでが前夜(ラテン語: vigilia)と位置づけられている。24日の晩には前夜のための固有のミサが存在するが、日本などでは夜半ミサを前にずらして24日夜に行うことがほとんどで、前夜ミサが行われることは皆無に近い。またプロテスタント一部教派でも、25日に日付が変わったときをもってクリスマスの開始とする。
正教会では24日夜に翌日の聖体礼儀を準備する晩祷が行われる。ただし、ユリウス暦を現在も使用する教会(エルサレム総主教庁、ロシア正教会など)では、クリスマス・イヴは1月6日の晩に祝われ(グレゴリオ暦とユリウス暦の間に現在13日のずれがあるため)、当該地域ではクリスマスも翌1月7日となる。
教会での祭
教会においては、クリスマス・イヴに多くの教派(正教会[5]・聖公会[6]・プロテスタント[7])で晩の礼拝が行われる。前述の通り日没を基準にしている教会暦では12月24日(ユリウス暦使用教会では1月6日に相当)の晩は、既にクリスマス当日に入っているため、クリスマスに入って直ぐに最初のクリスマス礼拝が行われていると位置づけられる。
カトリック教会[8]では12月24日は主の降誕の前日で、かつては断食をして備える日であった。夕刻以降に主の降誕の前夜のミサが行われる。ただし現代では25日の夜半のミサを繰り上げて行うことがある。特に日本の教会では24日に行われるミサのほとんどがこの「夜半のミサ」で、本来の前夜のミサが行われることはほとんどない。
正教会ではクリスマス・イヴには晩祷が行われ、聖体礼儀が翌日朝(ただし正教会暦上は日付は変わっていない)に行われる[5]。
過ごし方
多くの国々ではクリスマスは家族で過ごす日とされている。イルミネーションなどで街は賑わい、数日前からクリスマス関連の商品が店頭に並ぶ。
実は中世まではドイツなど欧州でもクリスマスは馬鹿騒ぎするイベントとして根付いていたが、キリスト教の世俗化を嘆いていた宗教改革者の啓蒙運動により、長い年月を経てではあるが、見直される様になっていく(但し、同じく改革側と知られるマルティン・ルターはクリスマス・ツリー発案者説があるなど、一律とは言えない)。その後もアメリカにおいて、移民者の中の清教徒達が賃貸住宅大家達と共同で静かにクリスマスを過ごす様(入居者が飲酒により大騒ぎして住宅を壊したり汚したりしない様)に啓蒙運動を広めて一定の効果を得たり、1965年にクリスマスの本来の意味を説いたアニメ映画『A Charlie Brown Christmas』が話題を呼んで注目されるなど、日本と同じくクリスマスを賑やかに華やかに祝う風潮の時代が少なからず存在した事を伺わせる出来事も度々あった[9]。
1991年に公開された映画『フィッシャー・キング』では、辛口ラジオDJ(主人公)が、金に飽かせてクリスマス・イヴの夜に気取って高級料理店で食事、その後は性行為に耽るヤッピー・アベック達をステレオタイプ式・痛烈に茶化し、半ば冗談でリスナー達に彼らの殺害を扇動する発言を行い、実際にその被害に遭い事件のトラウマで精神障害のホームレスとなってしまった大学教授の悲劇が描かれている。
日本
日本では「恋人と過ごす日」と言う認識が「家族と過ごす日」とされる欧米諸国よりも多く、宗教的なものではなく、ただのイベントとしての捉え方が多い。祝日ではない上に年末なので企業によっては仕事が増えることもあり、クリスマスやクリスマス・イヴにどうするかという決まりや風習はない。だが日本でもイルミネーションなどで街は賑わい数日前からクリスマス、クリスマス・イヴ関連の商品が店頭に並んでいる。また、日本の多くの府県ではこの日に小中高校の2学期の終業式(3学期制の場合)が行われることも多いので、午後に家に集まって子供同士の間でパーティーを開くケースも多くみられる。また、イヴをクリスマスの前日と誤認している人が多いため、クリスマスの前々日である12月23日を「イヴイヴ」と呼ぶといった、日本独自の誤った使い方も増えているが、欧米からはそういった呼称は嘲笑されている。
老若男女を対象にしたアンケートによると、32.1%が自宅で家族とパーティーを行うが、後述するように20 - 30歳代の独身者は家族以外の友人・恋人とパーティーを行う人が多い[10]2009年、プランタン銀座による独身者のクリスマス・イヴの過ごし方を聞くクリスマスアンケートによると、「家族とパーティー」が53%で「恋人やパートナーとデート」が47%であり、これを「とても楽しみ」と「まあまあ楽しみ」で76%との回答結果が出ている[11]。
昭和初期
日本のクリスマス・イヴのパーティの記録は、明治時代初期から残っている。1875年に、中村正直の自宅に日本国外の家族が集まってクリスマス・イヴを祝った。
昭和初期から、日本のクリスマス・イヴはカップルが一緒に過ごす日でもあった。1931年に、当時一般紙であった報知新聞がクリスマス・イヴを過ごす若者たちの風景を、下記のように12月25日の記事で伝えている。
- 「クリスマスイーヴ(東京)」
- …(略)
- 「モシモシ、失礼なんですけれど、貴女がたはお二人だけなんですか」
- 「マァ、失礼な方!」
- 「僕たちも二人っきりで、サッキからカスンでるんでス、一緒に御飯をたべさせてくれませんかァ」
- 「マア図々しいワネ」
- 「アラ、いいわよ。そのかはり君たちお払いするのヨ」
- 「O・K!」
- 一九三一年を送らうとしているお嬢様たちは、この位チャッカリしていらっしゃるのです。
- かうして楽しいクリスマスの犠牲になって、くやしがりながらシメられる七面鳥の数は、東京全市で千二三百羽にのぼるのです。
- …(略)
商業主義に対するローマ教皇の懸念
第265代ローマ教皇・ベネディクト16世は、「無原罪の聖マリアの祭日」(12月8日)とクリスマスの間の「聖なる降誕祭を準備する期間」について2005年、以下のようなコメントを発している。
現代の消費社会の中で、この時期が商業主義にいわば「汚染」されているのは、残念なこと。このような商業主義による「汚染」は、降誕祭の本来の精神を変質させてしまう恐れがある。降誕祭の精神は、「精神の集中」と「落ち着き」と「喜び」であり、この喜びとは、内面的なもので、外面的なものではない。 — 教皇ベネディクト十六世の2005年12月11日の「お告げの祈り」のことば(カトリック中央協議会)
また2012年12月19日にはフィナンシャル・タイムズへ寄稿し、その中で、以下のように述べた。教皇が経済紙に寄稿するのは非常に異例だという[12]。
クリスマスには聖書を読んで学ぶべきだ。政治や株式市場など俗世のできごとにどう関わるべきかの啓示は、聖書の中に見つけられる。……
……貧困と闘わなければならない。資源を公平に分かち合い、弱者を助けなければならない。強欲や搾取には反対すべきだ。……
……クリスマスはとても楽しいが、同時に深く内省すべき時でもある。私たちはつつましく貧しい馬小屋の光景から何を学べるだろう。 — A time for Christians to engage with the world(キリスト者が世界と繋がる時)
関連作品
- 『クリスマス・キャロル(SCROOGE)』 1970年
日本
日本にはクリスマス・イヴと恋人を扱った作品が多くあり、例えば日本では、JR東海の「クリスマス・エクスプレス」CM(1988年)での起用を機にクリスマスソングの定番となった山下達郎の「クリスマス・イブ」がある。さらに1990年にはTBSがドラマ『クリスマス・イブ』を放送した。クリスマス・イヴに開かれるイベントも多い。一方ワム!の1984年のシングル「ラスト・クリスマス」は日本でクリスマスソングの定番になっているが、日本国外ではクリスマス・イヴと恋人を結びつける動きはあまり見られない。
脚注
- ^ 英語発音: [ˈkrɪsməs iːv]
- ^ LONGMAN現代英英辞典
- ^ 4教派 期節・祝日対照表(日本版)
- ^ 行事予定 - カトリック宇部・小野田ブロック
- ^ a b 主神我が救世主イイススハリストスの降誕祭
- ^ クリスマスイブ礼拝:日本聖公会 浜田キリスト教会
- ^ 吉祥寺教会クリスマスイブ予定
- ^ 教会でのミサ
- ^ ドキュメンタリー「クリスマスの本当の話」(ヒストリーチャンネル)
- ^ DIMSDRIVE『クリスマスの過ごし方』に関するアンケート
- ^ プランタン銀座2009年版クリスマスアンケート調査 2009年12月10日21:30閲覧
- ^ 「クリスマス、深く内省を」 ローマ法王、経済紙に寄稿 朝日新聞2012年12月24日 ローマ支局・石田博士記者(ウェブ魚拓)