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'''ニオブ'''({{lang-en-short|niobium}} {{IPA-en|naɪˈoʊbiəm|}} {{lang-de-short|Niob}} {{IPA-de|niˈoːp, ˈniːɔp|}})は、[[原子番号]]41、[[元素記号]]'''Nb'''の[[元素]]である。柔らかく灰色で結晶質の延性のある[[遷移金属]]であり、[[パイロクロア]]や[[コルンブ石]]といった鉱物としてしばしば産出し、後者に由来してかつてはコロンビウムと呼ばれていたこともあった。ニオブという名前は[[ギリシア神話]]に由来し、[[タンタル]]の語源となった[[タンタロス]]の娘である[[ニオベー]]から来ている。この名前は、タンタルとニオブが物理的・化学的に非常によく似ており、区別を付けづらいという特徴を反映したものである<ref>Knapp, Brian (2002). ''Francium to Polonium''. Atlantic Europe Publishing Company, p. 40. {{ISBN|0717256774}}.</ref>。
'''ニオブ'''({{lang-en-short|niobium}} {{IPA-en|naɪˈoʊbiəm|}} {{lang-de-short|Niob}} {{IPA-de|niˈoːp, ˈniːɔp|}})は[[原子番号]]41の[[元素]]。[[元素記号]]は '''Nb'''。[[バナジウム族元素]]の1つ。


[[イングランド]]の化学者[[チャールズ・ハチェット]]が1801年に、タンタルに似た新元素を報告し、コロンビウムと名付けた。1809年にやはりイングランドの化学者[[ウイリアム・ウォラストン]]が誤ってタンタルとコロンビウムは同じものであると結論付けた。[[ドイツ]]の化学者[[ハインリヒ・ローゼ]]は1846年に、タンタルの鉱石にはもう1つの元素を含んでいると判断し、これにニオブという名前を付けた。1864年および1865年に、一連の科学的発見によりニオブと、かつてコロンビウムと呼ばれていたものは同じ元素であることが明らかになり、それから1世紀ほどの間にわたってニオブとコロンビウムという名前はどちらも同じものを指す言葉として使われてきた。1949年にニオブという名前が公式にこの元素の名前として採用されたが、その後も[[アメリカ合衆国]]では鉱業の分野において依然としてコロンビウムという名前が残っている。
== 概要 ==
銀白色の軟らかい[[金属]](遷移金属)。常温、常圧で安定な結晶構造は[[体心立方格子構造]] (BCC) で、[[比重]]は8.56、[[融点]]は2415 {{℃}}(異なる実験値あり)、[[沸点]]は2900 {{℃}}(4758 {{℃}}という実験値あり)。空気中で表面が[[不動態]]となる。耐食性、耐酸性があるが、酸化力のある[[酸]]や[[フッ化水素酸]]には可溶。[[水酸化カリウム]]に微溶。原子価は2価から5価までをとる。単体金属としては最高の[[絶対温度]]9.2 K(常圧下)で[[超伝導]]転移を起こす。


ニオブが商業的に初めて利用されたのは20世紀初めになってからであった。ニオブおよび、ニオブと鉄の合金(60-70パーセントがニオブ)である{{仮リンク|フェロニオブ|en|Ferroniobium}}の最大生産国は[[ブラジル]]である。ニオブは主に合金として用いられ、ガスの[[パイプライン輸送|パイプライン]]などに用いられる特殊合金が最大の用途である。こうした合金は最大でも0.1パーセント程度のニオブを含有するだけであるが、このわずかなニオブにより鋼鉄の強度を増大させる。ニオブを含む[[超合金]]の温度安定性の高さから、[[ジェットエンジン]]や[[ロケットエンジン]]といった用途が重要である。
[[コルタン|コルンブ石]] (Fe,Mn)(Nb,Ta)<sub>2</sub>O<sub>6</sub>、[[パイロクロア]]鉱石に[[タンタル]]と共に含まれる。資源としては埋蔵・産出とも世界の90%以上を[[ブラジル]]が占めている。日本名は[[ドイツ語]]に由来。


ニオブは様々な[[超伝導]]材料に用いられる。こうした超伝導合金は、[[チタン]]や[[スズ]]も含むものが、[[核磁気共鳴画像法]] (MRI) の[[超伝導電磁石]]に広く用いられている。ニオブのその他の用途として、溶接、原子力産業、電子、光学、貨幣、宝飾といったものがある。貨幣と宝飾の用途では、毒性が低いことと、陽極酸化処理により虹色を呈することが、非常に望ましい特性として利用されている。
[[タンタル]]に化学的性質がよく似ていて、鉱物中の結晶構造上でも共存している。金属としては、より軟らかく展性・延性に富み、加工し易い。


== 用途 ==
== 歴史 ==
[[ファイル:Charles Hatchett.jpg|thumb|left|[[チャールズ・ハチェット]]は、アメリカ合衆国[[コネチカット州]]産の鉱物からコロンビウムを発見した]]
鉄鋼添加剤としての用途が9割と大部分を占めているが、光学、電気、電子分野でも重要である。
[[ファイル:Sommer, Giorgio (1834-1914) - n. 2990 - Niobe madre - Firenze.jpg|left|thumb|{{仮リンク|ジョルジョ・ゾンマー}}が撮影した、古代ギリシアのニオベー像]]
; 鉄鋼添加剤:フェロニオブとして添加される。自動車や石油パイプライン用の[[高張力鋼]]、海水に対する耐蝕性を高めた[[ステンレス鋼]]、発電所や戦闘機エンジンの[[タービン]]用耐熱超合金など
ニオブはイングランドの化学者[[チャールズ・ハチェット]]により、1801年に発見された<ref name="Hatchett_1802a">{{cite journal |last=Hatchett |first=Charles |author-link=チャールズ・ハチェット |year=1802|url=https://books.google.com/books?id=c-Q_AAAAYAAJ&pg=PA49 |title=An analysis of a mineral substance from North America, containing a metal hitherto unknown|journal=Philosophical Transactions of the Royal Society of London|volume=92|pages=49–66|jstor=107114|doi=10.1098/rspl.1800.0045}}</ref><ref name="Hatchett_1802b">{{Citation |last=Hatchett |first=Charles |author-link=チャールズ・ハチェット |year=1802 |title=Outline of the Properties and Habitudes of the Metallic Substance, lately discovered by Charles Hatchett, Esq. and by him denominated Columbium |journal=Journal of Natural Philosophy, Chemistry, and the Arts |volume=I (January) |pages=32–34 |url=https://books.google.com/books?id=ylZwOmyBA7IC&pg=PA32#v=onepage&f=false |postscript=.}}</ref><ref name="Hatchett_1802c">{{cite journal |last=Hatchett |first=Charles |author-link=チャールズ・ハチェット |year=1802 |title = Eigenschaften und chemisches Verhalten des von Charles Hatchett entdeckten neuen Metalls, Columbium|trans-title = Properties and chemical behavior of the new metal, columbium, (that was) discovered by Charles Hatchett |language=German |journal=Annalen der Physik |volume=11 |issue=5 |pages=120–122 |url=https://books.google.com/books?id=wSYwAAAAYAAJ&pg=PA120 |doi=10.1002/andp.18020110507 |bibcode = 1802AnP....11..120H }}</ref>。ハチェットは、1734年にジョン・ウィンスロップがイングランドにアメリカ合衆国の[[コネチカット州]]から送ったサンプルの鉱物からニオブを発見し、アメリカ合衆国の詩的な名前である[[コロンビア (古名)|コロンビア]]にちなみ、この鉱物を[[コルンブ石]]、新しい元素をコロンビウムと名付けた<ref name="Noyes" /><ref name="1853 Mining Journal">{{cite journal|last=Percival|first=James|title=Middletown Silver and Lead Mines|journal=Journal of Silver and Lead Mining Operations| date=January 1853 |volume=1|page=186|url=https://play.google.com/store/books/details?id=MFILAAAAYAAJ&rdid=book-MFILAAAAYAAJ&rdot=1|accessdate=24 April 2013}}</ref><ref>{{cite journal|title = Charles Hatchett FRS (1765–1847), Chemist and Discoverer of Niobium|first = William P.|last = Griffith|author2=Morris, Peter J. T. |journal = Notes and Records of the Royal Society of London|volume = 57|issue = 3|pages = 299–316|date = 2003|jstor = 3557720|doi = 10.1098/rsnr.2003.0216}}</ref>。ハチェットが発見したコロンビウムは、おそらく新元素とタンタルの混合物であったと思われる<ref name="Noyes">{{cite book| last =Noyes| first = William Albert |title = A Textbook of Chemistry| publisher = H. Holt & Co.| page = 523| url = https://books.google.com/?id=UupHAAAAIAAJ&pg=PA523&dq=columbium+discovered+by+Hatchett+was+a+mixture+of+two+elements| date =1918}}</ref>。
: [[鋼]]中のニオブが[[炭素]]を安定化し粒間腐食を防止する。これにより鋼材の微小構造が保たれ、耐蝕性、耐熱性、耐衝撃性を高める効果を発揮すると考えられている。
; 超硬工具:炭化ニオブを[[焼結]]したものが[[切削工具]]材([[サーメット]]など)に利用されている。
; スパッタリングターゲット材:スズまたはチタンとの合金、高純度酸化物などが利用されている。
; 高屈折率レンズ:五酸化ニオブとして、[[光学ガラス]]の添加剤(鉛フリーの代替材としても検討されているが、価格が20倍)。
; 光学薄膜:主に[[蒸着]]や[[スパッタリング]]によって形成される。自動車・建築資材用ガラスや[[ディスプレイ]]装置用の低[[反射]]膜、[[光学ディスク]]装置用ミラーの多層膜。
; [[光触媒]]:酸化ニオブ(ニオビア、niobia)やニオブ酸塩に見られ、層状酸化物から得られるナノシートを利用した触媒や吸着機能の研究が進められている。これを利用した防汚ガラスが[[西日本旅客鉄道|JR西日本]]により開発され、[[新幹線]]への導入が計画されている。
; [[超伝導磁石]]:Nb<sub>3</sub>Ti、Nb<sub>3</sub>Sn などの[[金属間化合物]]として、[[核磁気共鳴画像法|MRI]]装置で普及しているほか、[[リニアモーターカー]]や[[核融合炉]]、[[粒子加速器]]などへの利用が予想されている。セラミック系の高温超伝導物質を除けば、比較的高い超伝導転移温度を持ち、金属として加工しやすいことから実用化が進んだが、転移温度が10-20 Kと低いため、長期的には新素材へ移行するものと見られる。
; [[圧電素子]]:[[ニオブ酸リチウム]](ナトリウム、カリウム塩も同様)の[[単結晶]]が[[強誘電体]]であることから、[[高周波]]発生装置、光変調素子(レーザー光の波長を変える)、[[表面弾性波フィルター]](携帯電話などのノイズフィルタ)など。
; [[熱電素子]]:[[チタン酸ストロンチウム]]にニオブを添加し、極薄導電体を挟み込んで熱電素子を作ると、温度差1 {{℃}}に付き800 µVの起電力を発揮する。730 {{℃}}前後の[[エンジン]]/[[燃料電池]]排気の熱エネルギーを電気エネルギーとして回収できると期待されている<ref>[http://www.jst.go.jp/pr/info/info373/index.html ありふれた酸化物から巨大な熱起電力を発現する材料の開発に成功]</ref>。
; [[コンデンサ]]:金属粉末を焼結するなどした酸化物による、ニオブコンデンサ(電解コンデンサとセラミックコンデンサ)の誘電体。
:タンタルによる小型コンデンサが、携帯電話などの小型電子製品に不可欠となっている。埋蔵量が多く(タンタルの100倍とも)安定供給されているニオブを、その代替とする研究がすすめられてきた。
; 放射化学:天然安定同位体が1種しかないことから、人工[[同位体]]を作る材料として。
; その他:高圧[[ナトリウムランプ]]の電極部、[[垂直磁気記録方式]]の磁性体、[[ジョセフソン素子]]


その後、コロンビウムと、それによく似たタンタルの違いについて、かなりの混乱があった<ref name="Wolla">{{cite journal|title = On the Identity of Columbium and Tantalum|pages = 246–252|journal = Philosophical Transactions of the Royal Society|first = William Hyde|last = Wollaston|authorlink = ウイリアム・ウォラストン|doi = 10.1098/rstl.1809.0017| jstor = 107264|volume = 99|date = 1809}}</ref>。1809年にイングランドの化学者[[ウイリアム・ウォラストン]]はコロンビウムの酸化物であるコルンブ石の密度(5.918 g/cm<sup>3</sup>)と、タンタルの酸化物である[[タンタル石]]の密度(8 g/cm<sup>3</sup>以上)を比較し、密度がかなり違うにもかかわらずこの2つの酸化物は同じものであると結論付け、タンタルの方の名前を採用した<ref name="Wolla" />。この結論に対し、1846年にドイツの化学者[[ハインリヒ・ローゼ]]は異論を唱え、タンタル石にはさらに2つの異なる元素が含まれていると主張して、タンタロスの子供にちなんで、[[ニオベー]]からニオブ、[[ペロプス]]からペロピウムと名付けた<ref name="Pelop">{{cite journal|title = Ueber die Zusammensetzung der Tantalite und ein im Tantalite von Baiern enthaltenes neues Metall|pages = 317–341|journal = Annalen der Physik|authorlink = ハインリヒ・ローゼ|language=German|first = Heinrich|last = Rose|doi = 10.1002/andp.18441391006|url = http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k15148n/f327.table|volume = 139|issue = 10|date = 1844|bibcode = 1844AnP...139..317R }}</ref><ref>{{cite journal|title = Ueber die Säure im Columbit von Nordamérika|language=German|pages = 572–577|first = Heinrich|last = Rose|journal = Annalen der Physik|doi = 10.1002/andp.18471460410|url = http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k15155x/f586.table |date=1847| volume = 146|issue = 4|authorlink = ハインリヒ・ローゼ|bibcode = 1847AnP...146..572R }}</ref>。こうした混乱は、タンタルとニオブの間の観測された差異が非常に小さいことから生じていた。新しい元素だとされたペロピウム、イルメニウム、ダイアニウム<ref name="Dianium">{{cite journal|title = Ueber eine eigenthümliche Säure, Diansäure, in der Gruppe der Tantal- und Niob- verbindungen|first = V.|last = Kobell|journal =Journal für Praktische Chemie|volume = 79|issue = 1|pages = 291–303 |doi=10.1002/prac.18600790145|date = 1860}}</ref>といったものは、実際にはニオブか、またはニオブとタンタルの混合物であった<ref name="Ilmen" />。
== 主な産出国 ==
* [[ブラジル]]:特に[[ミナスジェライス州]]のアラシャ (Araxá) 鉱山だけで総産出量の8割を担っている。
** ブラジルのパイロクロア鉱石は露天掘りされる上に品位が高く、採掘時で数%のニオブを含んでおり、選鉱すると[[酸化ニオブ(V)]]として65%程度の精鉱が得られるという(価格安定の背景)。
* [[カナダ]]:ブラジルに次ぐ。両者を合わせると99%に達する。


タンタルとニオブの差異は、1864年に{{仮リンク|クリスチャン・ヴィルヘルム・ブロムストラント|sv|Christian Wilhelm Blomstrand}}<ref name="Ilmen" />や{{仮リンク|アンリ・サント=クレール・ドビーユ|fr|Henri Sainte-Claire Deville}}らがはっきりと示し、1864年には{{仮リンク|ルイ・ジョゼフ・トロースト|fr|Louis Joseph Troost}}がいくつかの化合物の構造式を決定し<ref name="Ilmen">{{cite journal|title = Tantalsäure, Niobsäure, (Ilmensäure) und Titansäure|journal = Fresenius' Journal of Analytical Chemistry|volume = 5|issue = 1|date = 1866|doi = 10.1007/BF01302537|pages = 384–389|author= Marignac, Blomstrand|author2= Deville, H. |author3= Troost, L. |author4= Hermann, R. }}</ref><ref name="Gupta" />、最終的に[[スイス]]の化学者[[ジャン・マリニャック]]が1866年に、含まれている元素は2種類だけであることを証明した<ref>{{cite journal|journal = Annales de chimie et de physique|title = Recherches sur les combinaisons du niobium|pages = 7–75|authorlink = ジャン・マリニャック|language=French| first = M. C.|last= Marignac|url = http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k34818t/f4.table|date= 1866|volume = 4|issue = 8}}</ref>。しかしイルメニウムという元素に関する記事は1871年まで残っている<ref>{{cite journal|title = Fortgesetzte Untersuchungen über die Verbindungen von Ilmenium und Niobium, sowie über die Zusammensetzung der Niobmineralien (Further research about the compounds of ilmenium and niobium, as well as the composition of niobium minerals)|first = R.|last = Hermann|journal = Journal für Praktische Chemie|language=German|volume = 3|issue = 1|pages =373–427|doi = 10.1002/prac.18710030137|date = 1871}}</ref>。
このほか精製副産物としてタンタルの産出国などで回収されている。鉱石中のニオブとタンタルの含有比率は一定しておらず、特にコルンブ石とタンタル石は同じ構造で、どちらが多いかで名称が変わるため、[[コルタン]]と総称される。


マリニャックは1864年に、[[水素]]雰囲気中でニオブの塩化物を熱して還元することにより初めてニオブの金属形態を得た<ref name="nauti">{{cite web|url = http://nautilus.fis.uc.pt/st2.5/scenes-e/elem/e04100.html|title = Niobium|publisher = Universidade de Coimbra|accessdate=5 September 2008}}</ref>。マリニャックは1866年にはタンタルを含まないニオブを大規模に得ることに成功していたが、ニオブが初めて商業的な用途に用いられたのは、20世紀初めになってからのことで、[[白熱電球]]のフィラメントとして用いられた<ref name="Gupta" />。しかしこのニオブの用途は、より高い融点を持つ[[タングステン]]によってすぐに代替され、時代遅れのものとなってしまった。鋼鉄の強度をニオブが改善することは1920年代になって初めて発見され、それ以来この用途が最大の用途であり続けている<ref name="Gupta" />。1961年にアメリカの物理学者ユージーン・クンツラーと[[ベル研究所]]の共同研究者らは、{{仮リンク|ニオブスズ|en|Niobium–tin}}が大きな電流や強い磁場の中でも超伝導を維持できることを発見し<ref>Geballe ''et al.'' (1993) によれば、臨界電流は150キロアンペア、臨界磁束は8.8テスラに達するという。</ref>、強力な磁石や大出力電気機械に必要とされる大きな電流や磁束に耐えられる初めての材料となった。この発見により20年後、回転機や粒子加速器、粒子検知器といった用途に用いられる大規模で強力な電磁石用のコイルを製作できる長い巻線を製造できるようになった<ref name="geballe">{{cite journal|last = Geballe|first = Theodore H.| title = Superconductivity: From Physics to Technology|journal = Physics Today|volume = 46|issue = 10|date=October 1993|pages=52–56|doi=10.1063/1.881384|bibcode = 1993PhT....46j..52G }}</ref><ref>{{cite journal|volume = 95|pages = 1435–1435|date = 1954|title = Superconductivity of Nb<sub>3</sub>Sn|author=Matthias, B. T.|author2=Geballe, T. H.|author3=Geller, S.|author4=Corenzwit, E.|doi = 10.1103/PhysRev.95.1435|journal = Physical Review|bibcode = 1954PhRv...95.1435M|issue = 6 }}</ref>。
== 歴史 ==
化学的性質がタンタルと似ていたため、元素と確認されるまで紆余曲折があった。
* 18世紀初め、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[ニューイングランド]]でコルンブ石 (columbite) が発見。
* 1753年 コルンブ石が[[大英博物館]]に送られ、鉱物標本に。
* 1801年 標本を分析した[[チャールズ・ハチェット]]が未知の元素を発見し、鉱石名から'''コロンビウム''' (columbium, Cb) と命名<ref name="Cb">{{Cite |和書 |author =[[桜井弘]]|title = 元素111の新知識|date = 1998| pages = 203-204|publisher =[[講談社]]|isbn=4-06-257192-7 |ref = harv }}</ref>。
* 1802年 タンタルの発見<ref name="Cb" />。
* 1809年 [[ウイリアム・ウォラストン]]によって両者は同じ元素とみなされ、タンタルに統合。
* 1846年 [[ドイツ]]の[[ハインリヒ・ローゼ]]により再発見され、[[ギリシャ神話]]の[[タンタロス]]の娘[[ニオベー]] (niobe) にちなんでニオブと命名。
* 1864年 コロンビウムがニオブだったことが確認される<ref name="Cb" />。
** その後、米英ではコロンビウム、日本を含む他の国ではニオブと呼ばれ、現在もアメリカではコロンビウムが使われている。
* 1949年 [[IUPAC]]により名称がニオブ (niobium) に統一。
<!-- 資料によって暦年が1,2年食い違っています -->


== 製造 ==
=== 元素の命名 ===
コロンビウム(元素記号Cb)<ref>{{cite journal|title = Reaction of Tantalum, Columbium and Vanadium with Iodine|first = F.|last = Kòrösy|journal = Journal of the American Chemical Society|date = 1939|volume = 61|issue = 4|pages = 838–843|doi = 10.1021/ja01873a018}}</ref>は、1801年に初めてニオブが発見された際にハチェットが与えた名前であった<ref name="Hatchett_1802b"/>。この名前は、発見に用いられた鉱石標本がアメリカ([[コロンビア (古名)|コロンビア]])から送られたことにちなんだものであった<ref name="Nicholson_1809">{{Citation |editor-last=Nicholson |editor-first=William |year=1809 |title=The British Encyclopedia: Or, Dictionary of Arts and Sciences, Comprising an Accurate and Popular View of the Present Improved State of Human Knowledge |volume=2 |publisher=Longman, Hurst, Rees, and Orme |pages=284 |url=https://books.google.com/books?id=SzUPAQAAIAAJ&pg=PP284#v=onepage&f=false |postscript=.}}</ref>。アメリカの論文誌ではこの名前が使われ続け、[[アメリカ化学会]]がコロンビウムという名前をタイトルに含む最後の論文を公表したのは1953年のことであった。一方ヨーロッパではニオブという名前が使われていた<ref>{{cite journal|title = Photometric Determination of Columbium, Tungsten, and Tantalum in Stainless Steels|author=Ikenberry, L.|author2=Martin, J. L.|author3=Boyer, W. J.|journal = Analytical Chemistry |date = 1953|volume = 25|issue =9|pages = 1340–1344|doi = 10.1021/ac60081a011}}</ref>。この混乱を終わらせるために、1949年にアムステルダムで開かれた第15回化学連合会議において41番元素の名前としてニオブが選択された<ref name="Contro">{{cite journal |first = Geoff|last = Rayner-Canham|author2=Zheng, Zheng |title = Naming elements after scientists: an account of a controversy|journal = Foundations of Chemistry|volume = 10|issue = 1|date = 2008|doi = 10.1007/s10698-007-9042-1|pages = 13–18}}</ref>。歴史的にはコロンビウムという名前の方が先に用いられていたにもかかわらず、この翌年、100年間に渡る論争を経て、[[国際純正・応用化学連合]] (IUPAC) により正式にニオブという名前が採択された<ref name="Contro" />。これはある種の妥協であり<ref name="Contro" />、IUPACは、ウォルフラムという名前より北アメリカで使用されている[[タングステン]]という名前を採用した代わりに、コロンビウムという名前よりヨーロッパで使用されているニオブという名前を採用した。アメリカ合衆国の多くの化学関連組織や政府組織では公式のIUPAC名を使用しているが、一部の冶金関係者や金属関連組織では依然としてアメリカの名前であるコロンビウムを使っている<ref>{{cite journal|journal = Science|date = 1914|title = Columbium Versus Niobium|pages = 139–140|first = F. W.|last = Clarke|jstor = 1640945|volume = 39|issue = 995|doi = 10.1126/science.39.995.139|pmid = 17780662|bibcode = 1914Sci....39..139C }}</ref><ref name="patel" /><ref name="Gree">{{cite journal|journal = Catalysis Today|date = 2003|title = Vanadium to dubnium: from confusion through clarity to complexity|pages = 5–11|last = Norman N.|first = Greenwood|doi = 10.1016/S0920-5861(02)00318-8 |volume = 78|issue = 1–4}}</ref>。
ニオブの主要用途である製鋼向けフェロニオブは、大部分がブラジルで精製鉱石を直接[[テルミット]]還元して生産されている。日本でも1950年代から1995年まで生産されていたが、ブラジルとカナダが鉱石の輸出を停止したため、撤退した(鉱石は日本でも産出するがコスト面から)。


== 特徴 ==
一方、金属や高純度酸化物を得るための精製は主にアメリカで行われている。方法としては溶媒抽出法が利用され、主成分が五酸化ニオブである精製鉱石を有機溶剤(MIBK、[[メチルイソブチルケトン]])で抽出し酸で逆抽出する。条件を変えてタンタルとの分離を行い、またはアルカリ融解などでニオブ酸とした後、加水分解で酸化物を得る。これを、アルミニウム[[テルミット]]還元、水素還元、電解還元などにより精製し、金属ニオブが得られる。
=== 物理的な特徴 ===
ニオブは[[光沢]]のある灰色で、[[展延性]]があり、[[常磁性]]を持った[[周期表]]の[[第5族元素|第5族]]に属する金属であり、最外殻電子の配置は第5族としては変則的なものである(これは周期表上近傍にある[[ルテニウム]] (44)、[[ロジウム]] (45)、[[パラジウム]] (46) などに共通である)。


{| class="wikitable" style="margin:10px; float:right;"
== ニオブの化合物 ==
|-
* [[炭化ニオブ]] (NbC)
![[原子番号|Z]] !! [[元素]] !! [[電子殻|殻ごとの電子]]
* [[酸化ニオブ(V)]] (Nb<sub>2</sub>O<sub>5</sub>)
|-
* [[塩化ニオブ(V)]] (NbCl<sub>5</sub>)
* [[ニオブ酸ウム]] (BaNb<sub>2</sub>O<sub>6</sub>)
| 23 || [[バナジウム]] || 2, 8, 11, 2
|-
* [[ニオブ酸リチウム]] (LiNbO<sub>3</sub>) - 略称LN
| 41 || ニオブ || 2, 8, 18, 12, 1
|-
| 73 || [[タンタル]] || 2, 8, 18, 32, 11, 2
|-
| 105 || [[ドブニウム]] || 2, 8, 18, 32, 32, 11, 2
|}


絶対零度から融点まで、[[体心立方格子構造]]を取ると考えられているものの、3結晶軸に沿った熱膨張の高解像度測定によれば、立方構造とは矛盾する異方性があることを明らかにしている<ref>{{cite journal |last=Bollinger |first=R. K. |last2=White |first2=B. D. |last3=Neumeier |first3=J. J. |last4=Sandim |first4=H. R. Z. |last5=Suzuki |first5=Y. |last6=dos Santos |first6=C. A. M. |last7=Avci |first7=R. |last8=Migliori |first8=A. |last9=Betts |first9=J. B. |date=2011 |title=Observation of a Martensitic Structural Distortion in V, Nb, and Ta |url=http://link.aps.org/doi/10.1103/PhysRevLett.107.075503 |journal=Physical Review Letters |volume=107 |issue=7 |pages=075503 |doi=10.1103/PhysRevLett.107.075503 |bibcode=2011PhRvL.107g5503B |pmid=21902404}}</ref>。そのため、この分野でのさらなる研究と発見が期待されている。
== 同位体 ==

ニオブはごく低温において[[超伝導]]になる。大気圧では、元素の超伝導体としては最も高い臨界温度である9.2[[ケルビン]]で超伝導となる<ref name="Pein">{{cite journal|title = A Superconducting Nb<sub>3</sub>Sn Coated Multicell Accelerating Cavity|first = M.|last = Peiniger|author2=Piel, H. |journal = Nuclear Science|date= 1985|volume= 32|issue = 5|doi = 10.1109/TNS.1985.4334443|pages = 3610–3612|bibcode = 1985ITNS...32.3610P }}</ref>。ニオブはすべての元素の中で最大の[[磁場侵入長]]を持つ<ref name="Pein" />。これに加えて、[[バナジウム]]・[[テクネチウム]]と並んで、3つだけ存在する元素の[[第二種超伝導体]]でもある。超伝導特性は、金属ニオブの純粋度に強く依存している<ref name="Moura">{{cite journal|title=Melting And Purification Of Niobium|first=Hernane R.|last = Salles Moura|author2=Louremjo de Moura, Louremjo |journal=AIP Conference Proceedings|volume=927|date=2007|issue=927|pages=165–178|doi=10.1063/1.2770689}}</ref>。

非常に純度が高い金属ニオブは比較的柔らかく展延性があるが、不純物の存在により硬くなる<ref name="Nowak" />。

金属ニオブは、熱[[中性子]]の捕獲断面積が小さい<ref>{{cite journal|title = Columbium Alloys Today|author=Jahnke, L. P.|author2=Frank, R. G.|author3=Redden, T. K.|date = 1960|journal = Metal Progr.|volume = 77|issue = 6|pages = 69–74|osti = 4183692}}</ref>。そのため原子力産業において、中性子に透過的な構造が必要な場合に用いられる<ref>{{cite journal|first = A. V.|last = Nikulina|title = Zirconium-Niobium Alloys for Core Elements of Pressurized Water Reactors|journal = Metal Science and Heat Treatment|volume = 45|issue = 7–8|date = 2003|doi = 10.1023/A:1027388503837|pages = 287–292|bibcode = 2003MSHT...45..287N}}</ref>。

=== 化学的な特徴 ===
ニオブは、室温で長期間空気にさらされると、青味がかった色を呈する<ref name="Rubber">{{cite book|title = CRC Handbook of Chemistry and Physics|first = David R.|last = Lide|publisher = CRC Press|date = 2004 |isbn = 978-0-8493-0485-9| pages = '''4'''–21|edition = 85th|chapter = The Elements}}</ref>。元素としては高い融点(摂氏2,468度)を持つにもかかわらず、他の{{仮リンク|耐火金属|en|Refractory metals}}に比べると密度が小さい。また、腐食耐性が高く、超伝導特性があり、誘電酸化物層を形成する。

ニオブは、原子番号が1つ小さい[[ジルコニウム]]に比べるとわずかに[[電気陰性度|陽性度]]が小さくよりコンパクトであるが、一方重い[[タンタル]]と比べると、{{仮リンク|ランタノイド収縮|en|Lanthanide contraction}}の結果ほとんど同じ大きさである<ref name="Nowak" />。結果として、ニオブの化学的特性は、周期表上でニオブの直下にあるタンタルととてもよく似ている<ref name="Gupta">{{cite book|title = Extractive Metallurgy of Niobium|first = C. K.|last = Gupta|author2=Suri, A. K. |publisher = CRC Press|date = 1994 |isbn = 978-0-8493-6071-8|pages = 1–16}}</ref>。ニオブの腐食耐性はタンタルほど優れているわけではないが、価格が安く豊富に入手可能であることから、化学工場におけるタンクの内張りなど、あまり厳しい要求ではない用途にはニオブが向いている<ref name="Nowak" />。

=== 同位体 ===
{{Main|ニオブの同位体}}
{{Main|ニオブの同位体}}
地球の地殻に含まれるニオブの安定[[同位体]]は、<sup>93</sup>Nbのみである<ref name="NUBASE">{{cite journal| first = Audi| last = Georges|title = The NUBASE Evaluation of Nuclear and Decay Properties| journal = Nuclear Physics A| volume = 729| pages = 3–128| date = 2003| doi=10.1016/j.nuclphysa.2003.11.001| bibcode=2003NuPhA.729....3A| last2 = Bersillon| first2 = O.| last3 = Blachot| first3 = J.| last4 = Wapstra| first4 = A. H.| url = http://hal.in2p3.fr/in2p3-00014184}}</ref>。2003年までに、少なくとも32の[[放射性同位体]]が合成されており、その[[原子量]]は81から113に及ぶ。放射性同位体の中でもっとも安定なものは<sup>92</sup>Nbで、その[[半減期]]は3470万年に達する。不安定な同位体としては<sup>113</sup>Nbがあり、その推定半減期は30ミリ秒である。安定同位体の<sup>93</sup>Nbより軽い同位体は[[陽電子放出]]で崩壊する傾向にあり、安定同位体より重い同位体は[[ベータ崩壊]]をする傾向にあるが、<sup>81</sup>Nb、<sup>82</sup>Nb、<sup>84</sup>Nbは遅延[[陽子放出]]の崩壊系列を持ち、<sup>91</sup>Nbは[[電子捕獲]]と陽電子放出し、<sup>92</sup>Nbは陽電子放出とベータ崩壊の両方の崩壊をするという例外がある<ref name="NUBASE" />。


少なくとも25種類の[[核異性体]]が確認されており、その原子量は84から104に及ぶ。この範囲で、<sup>96</sup>Nb、<sup>101</sup>Nb、<sup>103</sup>Nbは核異性体を持たない。ニオブの核異性体の中でもっとも安定なものは<sup>93m</sup>Nbで、半減期16.13年を持つ。もっとも不安定な核異性体は<sup>84m</sup>Nbで、半減期103ナノ秒を持つ。ニオブの核異性体はすべて核異性体転移またはベータ崩壊で崩壊するが、例外として<sup>92m1</sup>Nbは電子捕獲という系列を持つ<ref name="NUBASE" />。
== 出典 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}


==関連文献==
=== 存在 ===
ニオブは[[地殻中の元素の存在度|地球の地殻における存在量]]で34番目の元素であるとされており、およそ20 [[Parts-per表記|ppm]]含まれているとされる<ref>{{cite book|title = Nature's Building Blocks: An A-Z Guide to the Elements|last = Emsley|first=John|publisher = Oxford University Press|date = 2001|location = Oxford, England|isbn = 978-0-19-850340-8|chapter = Niobium|pages = 283–286}}</ref>。地球全体での存在度はより大きいと考えている者もおり、ニオブの高い密度のために地球のコアに濃縮されているとしている<ref name="patel" />。ニオブの単体は自然界では発見されておらず、他の元素と化合して鉱物中に含まれている<ref name="Nowak">{{cite journal|title=Niobium Compounds: Preparation, Characterization, and Application in Heterogeneous Catalysis|author=Nowak, Izabela|author2=Ziolek, Maria|journal=Chemical Reviews|date=1999|volume=99|issue=12|pages=3603–3624|doi=10.1021/cr9800208|pmid=11849031}}</ref>。ニオブを含む鉱物は、タンタルも含んでいることが多い。たとえば、[[コルンブ石]] ((Fe,Mn)(Nb,Ta)<sub>2</sub>O<sub>6</sub>) や[[コルタン]] ((Fe,Mn)(Ta,Nb)<sub>2</sub>O<sub>6</sub>) といったものがある<ref name="ICE"/>。コルンブ石、タンタル石といった鉱物(もっとも一般的な種類はコルンブ石-(Fe)またはタンタル石-(Fe)、"-Fe"はマンガンなどほかの元素に対して鉄が多く含まれていることを示すレビンソンのサフィックス<ref>https://www.mindat.org/min-1514.html</ref><ref>https://www.mindat.org/min-1530.html</ref><ref>http://elementsmagazine.org/archives/e4_2/e4_2_dep_mineralmatters.pdf</ref><ref>http://nrmima.nrm.se/</ref>)は、[[ペグマタイト]]の貫入やアルカリ性貫入岩の随伴鉱物として見つかることがもっとも多い。[[カルシウム]]、[[ウラン]]、[[希土類元素]]といったもののニオブ酸塩としても見つかる。こうしたニオブ酸塩の例としては[[パイロクロア]] ((Na,Ca)<sub>2</sub>Nb<sub>2</sub>O<sub>6</sub>(OH,F)) (現在ではグループに与えられた名前となっており、その中で一般的なものはフルオロカルシオパイクロア<ref>https://www.mindat.org/min-3316.html</ref><ref>https://www.mindat.org/min-40341.html</ref><ref>http://elementsmagazine.org/archives/e4_2/e4_2_dep_mineralmatters.pdf</ref><ref>http://nrmima.nrm.se/</ref><ref>http://rruff.info/uploads/AM62_403.pdf</ref>)、{{仮リンク|ユークセン石|en|Euxenite}}(正確にはユークセン石-(Y)<ref>https://www.mindat.org/min-1425.html</ref><ref>http://elementsmagazine.org/archives/e4_2/e4_2_dep_mineralmatters.pdf</ref><ref>http://nrmima.nrm.se/</ref>)((Y,Ca,Ce,U,Th)(Nb,Ta,Ti)<sub>2</sub>O<sub>6</sub>) といったものがある。ニオブの大規模な鉱脈は、パイロクロアの構成物として、[[カーボナタイト]]([[炭酸塩]]-[[ケイ酸塩]][[火成岩]])に関連して発見される<ref name="Pyrochlore">{{cite journal|title = Geochemical alteration of pyrochlore group minerals: Pyrochlore subgroup|date = 1995|first = Gregory R.|last = Lumpkin|author2=Ewing, Rodney C. |journal = American Mineralogist|url = http://www.minsocam.org/msa/AmMin/TOC/Articles_Free/1995/Lumpkin_p732-743_95.pdf|volume = 80|issue = 7–8|pages = 732–743|bibcode = 1995AmMin..80..732L|doi = 10.2138/am-1995-7-810}}</ref>。
*{{Cite journal |和書|author =依田連平|title =Nbについて (I)|date =1964|publisher =日本金属学会|journal =日本金属学会会報|volume =3|issue =7|doi=10.2320/materia1962.3.347|pages =347-357|ref = }}
*{{Cite journal |和書|author =依田連平|title =Nb について (II)|date =1964|publisher =日本金属学会|journal =日本金属学会会報|volume =3|issue =8|doi=10.2320/materia1962.3.415|pages =415-431|ref = }}


現時点で採掘されているパイロクロアの3大鉱床は、2つがブラジルに、1つがカナダにあり、どれも1950年代に発見され、なおもニオブ鉱石の主な供給源となっている<ref name="Gupta" />。最大の鉱床は、ブラジルの[[ミナスジェライス州]]{{仮リンク|アラシャ|pt|Araxá}}にあり、カーボナタイトの貫入物に随伴したもので、CBMM(ブラジル冶金鉱業会社)が保有している。もう1つのブラジルの採掘中鉱床は[[ゴイアス州]][[カタラン (ブラジル)|カタラン]]近郊にあり、やはりカーボナタイト貫入物に伴うもので、{{仮リンク|洛陽欒川モリブデン|zh|洛陽欒川鉬業}}が保有している<ref name="tesla" />。これら2つの鉱床で、世界全体の供給のおよそ88パーセントを生産している<ref name="g1">{{cite news |last=Alvarenga |first=Darlan |url=http://g1.globo.com/economia/negocios/noticia/2013/04/monopolio-brasileiro-do-niobio-gera-cobica-mundial-controversia-e-mitos.html |title='Monopólio' brasileiro do nióbio gera cobiça mundial, controvérsia e mitos |language=Portuguese |trans-title=Brazilian niobium 'monopoly' brings about the world's greed, controversy, and myths |work=G1 |location=São Paulo |date=9 April 2013 |accessdate=23 May 2016 }}</ref>。ブラジルにはほかにも、[[アマゾナス州]]{{仮リンク|サン・ガブリエウ・ダ・カショエイラ|pt|São Gabriel da Cachoeira}}近郊に大規模だが未採掘の鉱床があり、[[ロライマ州]]にあるものなど、より小規模な鉱床もいくつかある<ref name="g1" />。

ニオブの3番目の供給源は、カナダの[[ケベック州]]{{仮リンク|チクーチミ|en|Chicoutimi}}近郊{{仮リンク|サントノーレ (ケベック州)|en|Saint-Honoré, Quebec|label=サントノーレ}}にあるニオベック鉱山で、やはりカーボナタイトに伴うもので、マグリス・リソーシズが保有している<ref name="niobec-magris">{{cite press release |url=http://niobec.com/en/2015/01/magris-resources-officially-owner-of-niobec/ |title=Magris Resources, officially owner of Niobec |publisher=Niobec |date=23 January 2015 |accessdate=23 May 2016 }}</ref>。この鉱山では、世界全体の供給の7パーセントから10パーセント程度を生産している<ref name="tesla">{{cite web|url = http://tesla.desy.de/new_pages/TESLA_Reports/2001/pdf_files/tesla2001-27.pdf|title = Niob für TESLA|accessdate = 2 September 2008|first = J.|last = Kouptsidis|author2 = Peters, F.|author3 = Proch, D.|author4 = Singer, W.|publisher = Deutsches Elektronen-Synchrotron DESY|language = German|deadurl = yes|archiveurl = https://web.archive.org/web/20081217100548/http://tesla.desy.de/new_pages/TESLA_Reports/2001/pdf_files/tesla2001-27.pdf|archivedate = 17 December 2008|df = dmy-all}}</ref><ref name="g1" />。

== 生産 ==
[[ファイル:World Niobium Production 2006.svg|thumb|2006年から2015年にかけてのニオブ生産国]]
他の鉱石の分離処理を行うと、タンタル([[五酸化タンタル]] Ta<sub>2</sub>O<sub>5</sub>)とニオブ([[五酸化ニオブ]] Nb<sub>2</sub>O<sub>5</sub>)の酸化物の混合物が得られる。抽出処理の最初の段階は、この酸化物を[[フッ化水素酸]]と反応させることである<ref name="ICE" />。

:Ta<sub>2</sub>O<sub>5</sub> + 14 HF → 2 H<sub>2</sub><nowiki>[</nowiki>TaF<sub>7</sub><nowiki>]</nowiki> + 5 H<sub>2</sub>O
:Nb<sub>2</sub>O<sub>5</sub> + 10 HF → 2 H<sub>2</sub><nowiki>[</nowiki>NbOF<sub>5</sub><nowiki>]</nowiki> + 3 H<sub>2</sub>O

[[ジャン・マリニャック]]が開発した最初の工業的分離処理では、ニオブのフッ化物の錯体(フッ化ニオブ酸カリウム一水和物 K<sub>2</sub><nowiki>[</nowiki>NbOF<sub>5</sub><nowiki>]</nowiki>·H<sub>2</sub>O)とタンタルのフッ化物の錯体(フッ化タンタル酸カリウム K<sub>2</sub><nowiki>[</nowiki>TaF<sub>7</sub><nowiki>]</nowiki>)の水への溶解度の差を利用していた。新しい処理方法では、フッ化物を[[水溶液]]から[[シクロヘキサノン]]のような有機溶媒へ取り出す[[液液抽出]]を利用する<ref name="ICE" />。ニオブとタンタルのフッ化物の錯体は、この有機溶媒から水に別々に抽出され、[[フッ化カリウム]]を加えてフッ化カリウムの錯体を形成して沈殿させるか、[[アンモニア]]を加えて五酸化物として沈殿させる<ref name="HollemanAF" />。

:H<sub>2</sub><nowiki>[</nowiki>NbOF<sub>5</sub><nowiki>]</nowiki> + 2 KF → K<sub>2</sub><nowiki>[</nowiki>NbOF<sub>5</sub><nowiki>]</nowiki>↓ + 2 HF

または:
:2 H<sub>2</sub><nowiki>[</nowiki>NbOF<sub>5</sub><nowiki>]</nowiki> + 10 NH<sub>4</sub>OH → Nb<sub>2</sub>O<sub>5</sub>↓ + 10 NH<sub>4</sub>F + 7 H<sub>2</sub>O

還元して金属ニオブを得る方法としてはいくつかのものがある。フッ化ニオブ酸カリウム K<sub>2</sub><nowiki>[</nowiki>NbOF<sub>5</sub><nowiki>]</nowiki>と[[塩化ナトリウム]]の溶融塩を[[電気分解]]する方法、[[ナトリウム]]を使ってフッ化物を還元する方法などがある。この方法では比較的高い純度のニオブを得ることができる。大規模な生産では、五酸化ニオブ Nb<sub>2</sub>O<sub>5</sub> は水素または炭素を用いて還元される<ref name="HollemanAF" />。{{仮リンク|アルミノテルミット反応|en|Aluminothermic reaction}}では、鉄の酸化物とニオブの酸化物の混合物を[[アルミニウム]]と反応させる:

: 3 Nb<sub>2</sub>O<sub>5</sub> + Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> + 12 Al → 6 Nb + 2 Fe + 6 Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>

この反応を促進させるために[[硝酸ナトリウム]]のような少量の酸化剤が添加される。得られるのは[[酸化アルミニウム]]と製鉄に用いられる鉄とニオブの合金である{{仮リンク|フェロニオブ|en|Ferroniobium}}である<ref>{{cite journal|title = Progress in Niobium Markets and Technology 1981–2001|author = Tither, Geoffrey|url = http://www.cbmm.com.br/portug/sources/techlib/science_techno/table_content/images/pdfs/oppening.pdf|journal = Niobium Science & Technology: Proceedings of the International Symposium Niobium 2001 (Orlando, Florida, USA)|date = 2001|isbn = 978-0-9712068-0-9|editors = Minerals, Metals and Materials Society, Metals and Materials Society Minerals|format = PDF|deadurl = yes|archiveurl = https://web.archive.org/web/20081217100553/http://www.cbmm.com.br/portug/sources/techlib/science_techno/table_content/images/pdfs/oppening.pdf|archivedate = 17 December 2008|df = dmy-all}}</ref><ref>{{cite journal|title=The Production of Ferroniobium at the Niobec mine 1981–2001 |first=Claude |last=Dufresne |author2=Goyette, Ghislain |url=http://www.cbmm.com.br/portug/sources/techlib/science_techno/table_content/sub_1/images/pdfs/start.pdf |journal=Niobium Science & Technology: Proceedings of the International Symposium Niobium 2001 (Orlando, Florida, USA) |date=2001 |isbn=978-0-9712068-0-9 |editors=Minerals, Metals and Materials Society, Metals and Materials Society Minerals |format=PDF |deadurl=yes |archiveurl=https://web.archive.org/web/20081217100559/http://www.cbmm.com.br/portug/sources/techlib/science_techno/table_content/sub_1/images/pdfs/start.pdf |archivedate=17 December 2008 |df= }}</ref>。フェロニオブは60 - 70パーセントのニオブを含む<ref name="tesla" />。酸化鉄なしでは、アルミノテルミット反応はニオブの生産にも用いられる。超伝導合金の水準に達するためにはさらなる精錬が必要である。ニオブの2大供給業者が用いている方法は、真空下での{{仮リンク|電子ビーム溶解法|en|Electron-beam additive manufacturing}}である<ref name="Aguly" /><ref name="Chou">{{cite journal|journal = The Iron and Steel Institute of Japan International|volume = 32|date = 1992|issue = 5|doi = 10.2355/isijinternational.32.673|title = Electron Beam Melting and Refining of Metals and Alloys|first = Alok|last = Choudhury|author2=Hengsberger, Eckart |pages = 673–681}}</ref>。

2013年現在、ブラジルのCBMMが世界のニオブ生産の85パーセントを占める<ref name=lucchesi2013>{{Citation |last1=Lucchesi |first1=Cristane |last2=Cuadros|first2=Alex |date=April 2013 |title=Mineral Wealth |type=paper |magazine=Bloomberg Markets |page=14}}</ref>。[[アメリカ地質調査所]]は、ニオブの生産量は2005年の38,700トンから2006年の44,500トンへと増加したと推定している<ref name=USGSCS2006>{{cite web |url=http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/niobium/colummcs06.pdf |title=Niobium (Columbium) |first=John F. |last=Papp |publisher=USGS 2006 Commodity Summary |accessdate=20 November 2008}}</ref><ref name=USGSCS2007>{{cite web
|url=http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/niobium/colummcs07.pdf |title=Niobium (Columbium) |first=John F. |last=Papp |publisher=USGS 2007 Commodity Summary |accessdate=20 November 2008}}</ref>。世界のニオブ資源量は440万トンであると推計されている<ref name="USGSCS2007" />。1995年から2005年までの10年間では生産量は1995年の17,800トンから2倍以上に増加している<ref name="USGSCS1997">{{cite web|url = http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/niobium/230397.pdf|title = Niobium (Columbium)|first = John F. |last=Papp|publisher = USGS 1997 Commodity Summary|accessdate=20 November 2008}}</ref>。2009年から2011年まで年間生産量は63,000トンでほぼ安定していたが<ref>[http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/niobium/mcs-2011-niobi.pdf Niobium (Colombium)] U.S. Geological Survey, Mineral Commodity Summaries, January 2011</ref>、2012年には50,000トンへと減少した<ref>[http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/niobium/mcs-2016-niobi.pdf Niobium (Colombium)] U.S. Geological Survey, Mineral Commodity Summaries, January 2016</ref>。

{| class="wikitable" style="text-align:right;"
|+ 生産量(トン)<ref name="USGSNiobi">{{cite web|author=Cunningham, Larry D. |url=http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/niobium/ |title=USGS Minerals Information: Niobium (Columbium) and Tantalum |publisher=Minerals.usgs.gov |date=5 April 2012|accessdate=17 August 2012}}</ref>(アメリカ地質調査所推計)
|-
! scope="col" | 国
! scope="col" | 2000年
! scope="col" | 2001年
! scope="col" | 2002年
! scope="col" | 2003年
! scope="col" | 2004年
! scope="col" | 2005年
! scope="col" | 2006年
! scope="col" | 2007年
! scope="col" | 2008年
! scope="col" | 2009年
! scope="col" | 2010年
! scope="col" | 2011年
! scope="col" | 2012年
! scope="col" | 2013年
|-

| style="text-align:left;"| {{AUS}} || 160 || 230 || 290 || 230 || 200 || 200 || 200 || ? || ? || ? || ? || ?|| ?|| ?
|-
| style="text-align:left;"| {{BRA}} || 30,000 || 22,000 || 26,000 || 29,000 || 29,900 || 35,000 || 40,000 || 57,300 || 58,000 || 58,000 || 58,000 || 58,000|| 45,000|| 53100
|-
| style="text-align:left;"| {{CAN}} || 2,290 || 3,200 || 3,410 || 3,280 || 3,400 || 3,310 || 4,167 || 3,020 || 4,380 || 4,330 || 4,420 || 4,630|| 4,710|| 5260
|-
| style="text-align:left;"| {{COD}} || ? || 50 || 50 || 13 || 52 || 25 || ? || ? || ? || ? || ? || ?|| ?|| ?
|-
| style="text-align:left;"| {{MOZ}} || ? || ? || 5 || 34 || 130 || 34 || 29 || ? || ? || ? || ? || ?|| ?|| ?
|-
| style="text-align:left;"| {{NGA}} || 35 || 30 || 30 || 190 || 170 || 40 || 35 || ? || ? || ? || ? || ?|| ?|| ?
|-
| style="text-align:left;"| {{RWA}} || 28 || 120 || 76 || 22 || 63 || 63 || 80 || ? || ? || ? || ? || ?|| ?|| ?
|-
| 世界全体 || 32,600 || 25,600 || 29,900 || 32,800 || 34,000 || 38,700 || 44,500 || 60,400 || 62,900 || 62,900 || 62,900 || 63,000|| 50,100|| 59400
|}

[[マラウイ]]のケニカ鉱脈にもいくらか発見されている。

== 化合物 ==
ニオブは多くの点で[[タンタル]]や[[ジルコニウム]]に類似している。高温ではほとんどの非金属と反応する。[[フッ素]]とは室温で、[[塩素]]および[[水素]]とは摂氏200度で、[[窒素]]とは摂氏400度で反応し、得られる化合物は多くが侵入型で不定比である<ref name="Nowak" />。大気中では摂氏200度で酸化し始める<ref name="HollemanAF">{{cite book|publisher = Walter de Gruyter|date = 1985|edition = 91–100|pages = 1075–1079|isbn = 978-3-11-007511-3|title = Lehrbuch der Anorganischen Chemie|author=Holleman, Arnold F.|author2=Wiberg, Egon|author3=Wiberg, Nils|chapter = Niob| language = German}}</ref>。[[王水]]、[[塩酸]]、[[硫酸]]、[[硝酸]]、[[リン酸]]など、アルカリや酸による腐食に耐える<ref name="Nowak" />。[[フッ化水素酸]]およびフッ化水素酸と硝酸の混合物には腐食される。

ニオブの[[酸化数]]は+5から-1までのすべてを取りうるが、ニオブの化合物のほとんどではニオブの酸化数は+5を取る<ref name="Nowak" />。特徴として、+5より小さな酸化数を取る化合物ではニオブ-ニオブ結合を示す。

=== 酸化物と硫化物 ===
ニオブの酸化物は酸化数+5(Nb<sub>2</sub>O<sub>5</sub>)<ref>{{Cite web|url=https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Niobium_oxide#section=Top|title=Niobium oxide {{!}} Nb2O5 - PubChem|last=Pubchem|website=pubchem.ncbi.nlm.nih.gov|accessdate=29 June 2016}}</ref>、+4(NbO<sub>2</sub>)、+3({{chem|Nb|2|O|3}})<ref name="HollemanAF" />、そして珍しい酸化数として+2(NbO)がある<ref>{{Greenwood&Earnshaw}}</ref>。もっとも一般的な酸化物は五酸化ニオブで、ほとんどのニオブの化合物や合金の前駆体となる<ref name="HollemanAF" /><ref name="Cardarelli">{{cite book|first = Francois|last = Cardarelli|date = 2008|title = Materials Handbook |publisher = Springer London|isbn = 978-1-84628-668-1}}</ref>。ニオブ酸塩は、五酸化物を[[水酸化物イオン]]の溶液に溶かすか、アルカリ金属の酸化物に溶融させることで得られる。例として[[ニオブ酸リチウム]](LiNbO<sub>3</sub>)やニオブ酸ランタン(LaNbO<sub>4</sub>)がある。ニオブ酸リチウムは三角形にゆがめられた[[ペロブスカイト構造]]のような構造で、一方ニオブ酸ランタンは孤立した{{chem|NbO|4|3-}}イオンを持つ<ref name="HollemanAF" />。層状の硫化ニオブ (NbS<sub>2</sub>) も知られている<ref name="Nowak" />。

摂氏350度以上で{{仮リンク|ニオブ(V)エトキシド|en|Niobium(V) ethoxide}}を熱分解して、[[化学気相成長]]または[[原子層堆積]]により酸化ニオブの薄膜で材料をコーティングすることができる<ref>{{cite thesis | title = Atomic Layer Deposition of High Permittivity Oxides: Film Growth and In Situ Studies | author = Rahtu, Antti | publisher = University of Helsinki | url = http://hdl.handle.net/10138/21065 | date = 2002 | isbn = 952-10-0646-3}}</ref><ref>{{cite journal | doi = 10.1149/1.2059247 | title = Electrochromic Properties of Niobium Oxide Thin Films Prepared by Chemical Vapor Deposition | date = 1994 | last1 = Maruyama | first1 = Toshiro | journal = Journal of the Electrochemical Society | volume = 141 | issue = 10 | pages = 2868}}</ref>。

=== ハロゲン化物 ===
[[ファイル:Niobium pentachloride solid.jpg|thumb|left|五塩化ニオブ(黄色の部分)、部分的に加水分解している(白い物質)]]
[[ファイル:Niobium-pentachloride-from-xtal-3D-balls.png|thumb|left|五塩化ニオブの[[球棒モデル]]、[[二量体]]となっているもの]]
ニオブは、酸化数+5および+4で、様々な[[不定比化合物]]としてハロゲン化物を形成する<ref name="HollemanAF" /><ref name="Aguly">{{cite book|first = Anatoly|last = Agulyansky|title = The Chemistry of Tantalum and Niobium Fluoride Compounds|pages = 1–11|publisher = Elsevier|date=2004| isbn = 978-0-444-51604-6}}</ref>。五ハロゲン化ニオブ ({{chem|NbX|5}}) は八面体の中心にニオブが配置される構造を特徴とする。[[五フッ化ニオブ]] (NbF<sub>5</sub>) は融点が摂氏79度の白い固体である。{{仮リンク|五塩化ニオブ|en|Niobium(V) chloride}} (NbCl<sub>5</sub>) は融点が摂氏203.4度の黄色い固体である。どちらも[[加水分解]]されて酸化物またはNbOCl<sub>3</sub>のようなオキシハロゲン化物を与える。五塩化ニオブは、[[二塩化ニオボセン]] ({{chem|(C|5|H|5|)|2|NbCl|2}}) のような[[有機金属化学|有機金属]]化合物を生成するために使われる多用途の試薬である<ref>{{cite journal|author = Lucas, C. R. |author2 = Labinger, J. A. |author3 = Schwartz, J. |title = Dichlorobis(η5-Cyclopentadienyl)Niobium(IV)|editor = Robert J. Angelici|journal = Inorganic Syntheses|date = 1990|volume = 28|pages = 267–270|isbn = 978-0-471-52619-3|doi = 10.1002/9780470132593.ch68|location = New York|series = Inorganic Syntheses}}</ref>。四ハロゲン化物 ({{chem|NbX|4}}) はNb-Nb結合を有する暗色のポリマーであり、たとえば黒く[[吸湿性]]のある{{仮リンク|四フッ化ニオブ|en|Niobium(IV) fluoride}} (NbF<sub>4</sub>) や、茶色の{{仮リンク|四塩化ニオブ|en|Niobium(IV) chloride}} (NbCl<sub>4</sub>) がある。

ニオブのハロゲン化物の陰イオンは、五ハロゲン化物の[[ルイスの理論|ルイスの酸性度]]も部分的に手伝って、よく知られている。もっとも重要なものは [NbF<sub>7</sub>]<sup>2−</sup> で、鉱石からニオブとタンタルを分離する過程の途中物質である<ref name="ICE">{{cite journal|title = Staff-Industry Collaborative Report: Tantalum and Niobium|author=Soisson, Donald J.|author2=McLafferty, J. J.|author3=Pierret, James A.| journal = Industrial and Engineering Chemistry|date = 1961|volume = 53|issue = 11|pages = 861–868|doi = 10.1021/ie50623a016}}</ref>。この七フッ化物は、タンタル化合物よりも容易にオキソペンタフルオライドを形成する傾向がある。その他のハロゲン化物の錯体としては八面体状の[NbCl<sub>6</sub>]<sup>−</sup>などがある。

:Nb<sub>2</sub>Cl<sub>10</sub> + 2 Cl<sup>−</sup> → 2 [NbCl<sub>6</sub>]<sup>−</sup>

原子番号の小さなほかの金属と同様に、多くの還元ハロゲン化物のクラスターイオンが知られており、主な例としては[Nb<sub>6</sub>Cl<sub>18</sub>]<sup>4−</sup>がある<ref>{{Greenwood&Earnshaw2nd}}</ref>。

=== 窒化物と炭化物 ===
他に[[二元化合物]]として、低温で超伝導体となり、また赤外線検知器として用いられる[[窒化ニオブ]] (NbN) がある<ref><!--highly specialized vanity paper, it appears:-->{{cite journal|doi = 10.1080/09500340410001670866|title = Ultrafast superconducting single-photon detectors for near-infrared-wavelength quantum communications|author=Verevkin, A.|display-authors=4|author2=Pearlman, A.|author3=Slstrokysz, W.|author4=Zhang, J.|author5=Currie, M.|author6=Korneev, A.|author7=Chulkova, G.|author8=Okunev, O.|author9=Kouminov, P.|author10=Smirnov, K.|author11=Voronov, B.|author12=N. Gol'tsman, G.|author13=Sobolewski, Roman|journal = Journal of Modern Optics|volume = 51|issue = 12|date = 2004|pages = 1447–1458}}</ref>。主な{{仮リンク|炭化ニオブ|en|Niobium carbide}}はNbCで、非常に硬く耐熱性のある[[セラミックス]]材料であり、商業的には[[切削加工]]の[[バイト (工具)|バイト]]に用いられる。

== 用途 ==
[[ファイル:Niobium metal.jpg|thumb|ニオブ箔]]
2006年に生産されたニオブ44,500トンのうち、推定で90パーセントは高級構造用鋼鉄の生産に用いられた。2番目の用途は[[超合金]]の生産である<ref name="USGS2006">{{cite web|url = http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/niobium/myb1-2006-niobi.pdf|title = Niobium (Columbium ) and Tantalum|first = John F. |last=Papp|publisher = USGS 2006 Minerals Yearbook|accessdate=3 September 2008}}</ref>。ニオブ合金による超伝導体や電気部品などでのニオブ消費は、世界のニオブ総生産量のほんのわずかな部分を占めるに過ぎない<ref name="USGS2006" />。

=== 鋼材 ===
ニオブは鋼鉄に{{仮リンク|マイクロアロイ|en|Microalloyed steel}}(少量を添加して性質改善を行う)を行う上で有用な材料であり、鋼材内では炭化ニオブや[[窒化ニオブ]]を形成する<ref name="patel" />。こうした化合物は細粒化を改善し、再結晶化と析出硬化を遅らせる。こうした効果により、硬度・強度・成形性・溶接性などを改善する<ref name="patel" />。マイクロアロイを実施した[[ステンレス鋼]]に含まれるニオブは少ないが(0.1パーセント以下<ref name="heister">{{cite journal|title = Niobium: Future Possibilities – Technology and the Market Place|first = Friedrich|last = Heisterkamp|author2 = Carneiro, Tadeu|url = http://www.cbmm.com.br/portug/sources/techlib/science_techno/table_content/images/pdfs/closing.pdf|journal = Niobium Science & Technology: Proceedings of the International Symposium Niobium 2001 (Orlando, Florida, USA)|date = 2001|isbn = 978-0-9712068-0-9|editors = Minerals, Metals and Materials Society, Metals and Materials Society Minerals|format = PDF|deadurl = yes|archiveurl = https://web.archive.org/web/20081217100604/http://www.cbmm.com.br/portug/sources/techlib/science_techno/table_content/images/pdfs/closing.pdf|archivedate = 17 December 2008|df = dmy-all}}</ref>)、現代の自動車に構造上広く用いられている[[高張力鋼]]にとって重要な添加剤である<ref name="patel">{{cite journal|journal =Metallurgist|volume = 45|issue = 11–12|doi = 10.1023/A:1014897029026|pages = 477–480|date = 2001|title = Niobium for Steelmaking |first = Zh.|last = Patel|author2=Khul'ka K.}}</ref>。

同様のニオブ合金は、パイプラインの建設にも用いられる<ref name="eggert">{{cite journal|journal = Economic Bulletin|volume = 19|issue = 9|doi = 10.1007/BF02227064|pages = 8–11|date = 1982|title = Niobium: a steel additive with a future|author=Eggert, Peter|author2=Priem, Joachim|author3=Wettig, Eberhard}}</ref><ref name="Hillenbrand">{{cite journal|url=http://www.europipe.com/files/ep_tp_43_01en.pdf |title=Development and Production of High Strength Pipeline Steels |author=Hillenbrand, Hans-Georg |author2=Gräf, Michael |author3=Kalwa, Christoph |journal=Niobium Science & Technology: Proceedings of the International Symposium Niobium 2001 (Orlando, Florida, USA) |date=2 May 2001 |deadurl=bot: unknown |archiveurl=https://web.archive.org/web/20150605054604/http://www.europipe.com/files/ep_tp_43_01en.pdf |archivedate=5 June 2015 |df= }}</ref>。

=== 超合金 ===
[[ファイル:Apollo CSM lunar orbit.jpg|thumb|月の軌道上の[[アポロ15号]]の[[アポロ司令・機械船|司令・機械船]]、ロケットノズルはニオブチタン合金でできている]]
多くのニオブが[[ニッケル]]、[[コバルト]]、[[鉄]]をベースとした[[超合金]]に用いられており、その含有比率は6.5パーセントにも達する<ref name="heister" />。[[ジェットエンジン]]部品、[[ガスタービン]]、ロケット部品、ターボチャージャー装置、耐熱部品、燃焼設備などに用いられる。ニオブは超合金の粒状組織内において、γ<nowiki>''</nowiki>相の硬化を促進する<ref name="Donachie">{{cite book|publisher = ASM International|date = 2002|isbn = 978-0-87170-749-9|title = Superalloys: A Technical Guide|first = Matthew J.|last = Donachie|pages = 29–30}}</ref>。

超合金の一例として、[[インコネル]]718があり、おおむね50パーセントの[[ニッケル]]、18.6パーセントの[[クロム]]、18.5パーセントの[[鉄]]、5パーセントのニオブ、3.1パーセントの[[モリブデン]]、0.9パーセントの[[チタン]]、そして0.4パーセントの[[アルミニウム]]で構成されている<ref name="super">{{cite web|url = http://www.msm.cam.ac.uk/phase-trans/2003/Superalloys/superalloys.html|title = Nickel Based Superalloys|first = H. k. d. h|last = Bhadeshia|publisher = University of Cambridge|accessdate = 4 September 2008|deadurl = yes|archiveurl = https://web.archive.org/web/20060825053006/http://www.msm.cam.ac.uk/phase-trans/2003/Superalloys/superalloys.html|archivedate = 25 August 2006|df = dmy-all}}</ref><ref>{{cite journal|journal = Thermochimica Acta|volume = 382|date = 2002|pages= 55–267|doi = 10.1016/S0040-6031(01)00751-1|title = Thermophysikalische Eigenschaften von festem und flüssigem Inconel 718|language=German|author=Pottlacher, G.|author2=Hosaeus, H.|author3=Wilthan, B.|author4=Kaschnitz, E.|author5=Seifter, A.|issue = 1––2}}</ref>。こうした超合金はたとえば、[[ジェミニ計画]]における先進的な機体システムなどで用いられた。ニオブの合金は他に、[[アポロ司令・機械船]]のノズルにも用いられた。ニオブは摂氏400度以上になると酸化されるため、こうした用途では合金が脆くならないように保護コーティングが必要となる<ref name="hightemp" />。

=== ニオブ合金 ===
C-103合金は1960年代初頭に{{仮リンク|ワー・チャン|en|Wah Chang Corporation}}と[[ボーイング]]が共同で開発した。[[デュポン]]、[[ユニオンカーバイド]]、[[ゼネラル・エレクトリック]]他数社が、[[冷戦]]と[[宇宙開発競争]]を背景として{{仮リンク|ニオブ合金|en|Niobium alloy}}を同時期に開発していた。89パーセントのニオブ、10パーセントの[[ハフニウム]]、1パーセントの[[チタン]]で構成されており、[[アポロ月着陸船]]のメインエンジンなど、[[液体燃料ロケット]]のスラスターノズルに使われている<ref name="hightemp">{{cite journal|url=http://www.cbmm.com.br/portug/sources/techlib/science_techno/table_content/sub_3/images/pdfs/016.pdf |title=Niobium alloys and high Temperature Applications |first=John |last=Hebda |journal=Niobium Science & Technology: Proceedings of the International Symposium Niobium 2001 (Orlando, Florida, USA) |date=2 May 2001 |format=PDF |deadurl=yes |archiveurl=https://web.archive.org/web/20081217080513/http://www.cbmm.com.br/portug/sources/techlib/science_techno/table_content/sub_3/images/pdfs/016.pdf |archivedate=17 December 2008 |df= }}</ref>。

[[スペースX]]が[[ファルコン9]]の上段用に開発した[[マーリン (ロケットエンジン)|マーリン・バキューム]]シリーズのロケットエンジンのノズルはニオブ合金で作られている<ref name="NSPO">{{cite conference |title=Low-cost Launch Opportunities Provided by the Falcon Family of Launch Vehicles |first1=Aaron |last1=Dinardi |first2=Peter |last2=Capozzoli |first3=Gwynne |last3=Shotwell |conference=Fourth Asian Space Conference |year=2008 |location=Taipei |url=http://www2.nspo.org.tw/ASC2008/4th%20Asian%20Space%20Conference%202008/oral/S12-11.pdf |format=PDF |deadurl=yes |archiveurl=https://web.archive.org/web/20120315135217/http://www2.nspo.org.tw/ASC2008/4th%20Asian%20Space%20Conference%202008/oral/S12-11.pdf |archivedate=15 March 2012 |df=dmy-all }}</ref>。

ニオブは、[[酸素]]との反応性のため、真空中または[[不活性気体]]中で加工する必要があり、生産の費用と難度を大きく上げる原因となっている。当時新規開発されていた{{仮リンク|真空アーク溶解|en|Vacuum arc remelting}}または{{仮リンク|電子ビーム溶解|en|Electron-beam additive manufacturing}}により、ニオブやそのほか反応性の高い金属に関する開発が可能となった。C-103合金を開発したプロジェクトは1959年に始まり、ボタン状の金属を溶かして[[板金]]に圧延できる、256ものCシリーズ(おそらくコロンビウムの頭文字に由来する)の試作ニオブ合金を開発した。ワー・チャンは、原子力用[[ジルカロイ]]を精製する過程で得られたハフニウムを在庫しており、これを商業用に利用したいと考えていた。Cシリーズ合金で103番目に試したニオブ89パーセント、ハフニウム10パーセント、チタン1パーセントの組み合わせが、成形性と高温特性の点で最適であった。ワー・チャンは1961年に、真空アーク溶解および電子ビーム溶解を用いて、最初のC-103合金500ポンド(約225キログラム)を製造し、インゴットから板金にした。意図されていた用途は[[ガスタービンエンジン]]や液体金属用[[熱交換器]]であった。当時C-103に競合していたニオブ合金としては、ファンスティール冶金製のFS85(ニオブ61パーセント、[[タングステン]]10パーセント、タンタル28パーセント、ジルコニウム1パーセント)、ワー・チャンおよびボーイング製Cb129Y(ニオブ79.8パーセント、タングステン10パーセント、ハフニウム10パーセント、[[イットリウム]]0.2パーセント)、ユニオンカーバイド製Cb752(ニオブ87.5パーセント、タングステン10パーセント、ジルコニウム2.5パーセント)、およびスペリアー・チューブ製のニオブ99パーセント、ジルコニウム1パーセント合金であった<ref name="hightemp" />。

=== 超伝導電磁石 ===
[[ファイル:Modern 3T MRI.JPG|right|thumb|ニオブ合金を使用した超伝導電磁石を利用している病院用3[[テスラ (単位)|テスラ]][[核磁気共鳴画像法]] (MRI) 装置]]
{{仮リンク|ニオブゲルマニウム|en|Niobium-germanium}}、{{仮リンク|ニオブスズ|en|Niobium–tin}}、{{仮リンク|ニオブチタン|en|Niobium–titanium}}などの合金は、{{仮リンク|第二種超伝導体|en|Type-II superconductor}}としてワイヤーにして超伝導電磁石を作るために用いられる<ref>{{cite journal|doi = 10.1109/77.828394|title = Powder-in-tube (PIT) Nb/sub 3/Sn conductors for high-field magnets|date = 2000|author = Lindenhovius, J.L.H.|journal=IEEE Transactions on Applied Superconductivity|volume = 10|pages = 975–978|display-authors = 4|last2 = Hornsveld|first2 = E. M.|last3 = Den Ouden|first3 = A.|last4 = Wessel|first4 = W. A. J.|last5 = Ten Kate|first5 = H. H. J.|bibcode = 2000ITAS...10..975L}}</ref><ref>{{cite web|url = http://hyperphysics.phy-astr.gsu.edu/Hbase/solids/scmag.html|title = Superconducting Magnets|first = Carl R.|last = Nave|publisher = Georgia State University, Department of Physics and Astronomy|accessdate=25 November 2008}}</ref>。こうした超伝導電磁石は、[[核磁気共鳴画像法]] (MRI)、[[核磁気共鳴]] (NMR) 装置、[[加速器]]といった用途に用いられる<ref>{{cite journal|journal = Physica C: Superconductivity|volume= 372–376|issue = 3|date = 2002|pages = 1315–1320|doi = 10.1016/S0921-4534(02)01018-3|title = Niobium based intermetallics as a source of high-current/high magnetic field superconductors|first=B. A.|last = Glowacki|author2=Yan, X. -Y. |author3=Fray, D. |author4=Chen, G. |author5=Majoros, M. |author6= Shi, Y. |arxiv = cond-mat/0109088 |bibcode = 2002PhyC..372.1315G }}。</ref>たとえば、[[大型ハドロン衝突型加速器]]には600トンの超伝導撚線が用いられており、[[ITER]](国際熱核融合実験炉)には推定で600トンのニオブスズの撚線と250トンのニオブチタンの撚線が用いられている<ref name="alstrom">{{cite journal|journal = Fusion Engineering and Design (Proceedings of the 23rd Symposium of Fusion Technology)|volume= 75–79|date = 2005|pages = 1–5|title = A success story: LHC cable production at ALSTOM-MSA|author=Grunblatt, G.|author2=Mocaer, P.|author3=Verwaerde Ch.|author4=Kohler, C.| doi = 10.1016/j.fusengdes.2005.06.216}}</ref>。1992年だけで、ニオブチタンの巻線を使った病院用のMRI装置がアメリカドルにして10億ドル以上製造された<ref name="geballe" />。

==== その他の超伝導体 ====
[[ファイル:A 1.3 GHz nine-cell superconducting radio frequency.JPG|thumb|[[フェルミ国立加速器研究所]]に展示されている1.3 GHz 9セル超伝導加速空洞]]
[[自由電子レーザー]]の{{仮リンク|FLASH|en|FLASH}}(中止されたTESLA線形加速器プロジェクトの成果)や{{仮リンク|European XFEL|en|European XFEL}}に用いられている{{仮リンク|超伝導加速|en|Superconducting radio frequency}}空洞は、純粋なニオブで作られている<ref>{{cite journal|journal = Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment|volume = 524|date = 2004|pages = 1–12|doi = 10.1016/j.nima.2004.01.045|title = Achievement of 35 MV/m in the superconducting nine-cell cavities for TESLA|author=Lilje, L.|display-authors=4|author2=Kako, E.|author3=Kostin, D.|author4=Matheisen, A.|author5=Möller, W.-D.|author6=Proch, D.|author7=Reschke, D.|author8=Saito, K.|author9=Schmüser, P.|author10=Simrock, S.|author11=Suzuki T.|author12=Twarowski, K.|issue = 1–3|arxiv = physics/0401141 |bibcode = 2004NIMPA.524....1L }}</ref>。[[フェルミ国立加速器研究所]]の{{仮リンク|クライオモジュール|en|Cryomodule}}チームは、同じFLASHプロジェクトに由来する超伝導加速技術を利用して、純粋なニオブ製の1.3 GHz 9セル超伝導加速空洞を開発した。この装置は[[国際リニアコライダー]]の30キロメートルに及ぶ線形加速器でも用いられることになっている<ref>{{cite book|title=The International Linear Collider Technical Design Report 2013|date=2013|publisher=International Linear Collider|url=http://edmsdirect.desy.de/edmsdirect/file.jsp?edmsid=D00000001021265&fileClass=native|accessdate=15 August 2015}}</ref>。同じ技術は、[[SLAC国立加速器研究所]]のLCLS-II計画、フェルミ研究所のPIP-II計画でも用いられることになっている<ref>{{cite news|title=ILC-type cryomodule makes the grade|url=http://cerncourier.com/cws/article/cern/59319|accessdate=15 August 2015|work=CERN Courier|publisher=IOP Publishing|date=27 November 2014}}</ref>。

超伝導窒化ニオブで作られた[[ボロメータ]]は高い感度を持っており、テラヘルツ周波数帯における{{仮リンク|電磁放射|en|Electromagnetic radiation}}の理想的な検知器である。この検知器は{{仮リンク|ハインリッヒ・ヘルツサブミリ波望遠鏡|en|Heinrich Hertz Submillimeter Telescope}}、[[南極点望遠鏡]]、Receiver Lb Telescope、{{仮リンク|アタカマ・パスファインダー実験施設|en|Atacama Pathfinder Experiment}}などで試験され、[[ハーシェル宇宙望遠鏡]]に搭載されてHIFI観測機器に用いられた<ref>{{cite journal|journal = Review of Scientific Instruments|volume = 79|date = 2008|pages = 0345011–03451010|doi = 10.1063/1.2890099|title = A Hot-electron bolometer terahertz mixers for the Herschel Space Observatory|author=Cherednichenko, Sergey|display-authors=4|author2=Drakinskiy, Vladimir|author3=Berg, Therese|author4=Khosropanah, Pourya|author5=Kollberg, Erik|pmid = 18377032|issue = 3|bibcode = 2008RScI...79c4501C }}</ref>。

=== その他の利用 ===
==== 電子セラミックス ====
[[強誘電体]]である[[ニオブ酸リチウム]]は、[[携帯電話]]、{{仮リンク|光変調素子|en|Optical modulator}}、[[表面弾性波]]デバイスの製造などに広く用いられている。[[タンタル酸リチウム]]や[[チタン酸バリウム]]などと同じように、[[ペロブスカイト構造]]を取る強誘電体に属する<ref>{{cite book|title = Lithium Niobate: Defects, Photorefraction and Ferroelectric Switching|first = Tatyana|last = Volk|author2=Wohlecke, Manfred |publisher = Springer|date = 2008|isbn = 978-3-540-70765-3|pages = 1–9}}</ref>。{{仮リンク|ニオブコンデンサ|en|Niobium capacitor}}は、{{仮リンク|タンタルコンデンサ|en|Tantalum capacitor}}の代替となりうるが<ref>{{cite journal|journal = Quality and Reliability Engineering International|volume = 14|issue = 2|doi = 10.1002/(SICI)1099-1638(199803/04)14:2<79::AID-QRE163>3.0.CO;2-Y|pages = 79–82|date = 1991 |title = Reliability comparison of tantalum and niobium solid electrolytic capacitors|first = Y.|last = Pozdeev}}</ref>、依然としてタンタルコンデンサが支配的である。高い[[屈折率]]を持つガラスを製造するためにニオブが添加され、[[眼鏡]]のレンズを薄く軽くすることができる。

==== 低刺激性用途:医療および宝飾 ====
ニオブおよびニオブの合金は、生理学的に不活性でアレルギーをおこしにくい。このため、人工装具や[[心臓ペースメーカー]]のような埋め込みデバイスに用いられる<ref>{{cite journal|author=Mallela, Venkateswara Sarma|author2=Ilankumaran, V.|author3=Srinivasa Rao, N.| title = Trends in Cardiac Pacemaker Batteries|journal = Indian Pacing Electrophysiol J.|volume = 4|issue = 4|pages = 201–212|date=1 January 2004|pmid = 16943934|pmc = 1502062}}</ref>。[[水酸化ナトリウム]]で処理したニオブは多孔質層を形成し、[[オッセオインテグレーション]](骨と金属の接合)に資する<ref>{{cite journal|author=Godley, Reut|author2=Starosvetsky, David|author3=Gotman, Irena|date = 2004|title = Bonelike apatite formation on niobium metal treated in aqueous NaOH|journal = Journal of Materials Science: Materials in Medicine|volume = 15|pages = 1073–1077|doi = 10.1023/B:JMSM.0000046388.07961.81|url = http://www.springerlink.com/content/l5613670648017wp/|format = PDF|pmid = 15516867|issue = 10}}</ref>。

チタン、タンタル、アルミニウムなどと同様に、ニオブは熱して陽極酸化処理をすることができ、多彩な[[玉虫色]]を呈して宝飾用にすることができ<ref>{{cite journal|journal = Journal of Applied Electrochemistry|volume = 21|issue = 11|doi = 10.1007/BF01077589|pages = 1023–1026 |date = 1991|title = Anodization of niobium in sulphuric acid media|author=Biason Gomes, M. A.|author2=Onofre, S.|author3=Juanto, S.|author4=Bulhões, L. O. de S.}}</ref><ref>{{cite journal|journal = Thin Solid Films|volume = 8|issue = 4|doi = 10.1016/0040-6090(71)90027-7|pages = R37–R39|date = 1971|title = A note on the thicknesses of anodized niobium oxide films|first = Y. L.|last = Chiou|bibcode = 1971TSF.....8R..37C }}</ref>、アレルギーを起こしにくい性質はこの点でも好ましいものとなっている<ref>{{cite journal|doi = 10.1361/152981502770351860|author=Azevedo, C. R. F.|author2=Spera, G.|author3=Silva, A. P.|title = Characterization of metallic piercings that caused adverse reactions during use|journal = Journal of Failure Analysis and Prevention|volume = 2|issue = 4|pages = 47–53|date =2002|url = http://www.springerlink.com/content/575x64408lnk560j/}}</ref>。

==== 貨幣 ====
ニオブは記念硬貨において、銀や金などとともに貴金属として利用される。たとえば、[[オーストリア]]は銀とニオブのユーロ硬貨のシリーズを2003年から開始し、その色は陽極酸化処理による薄い酸化層が光を[[回析]]して呈したものである<ref>{{cite journal|doi = 10.1016/j.ijrmhm.2005.10.008|journal = International Journal of Refractory Metals and Hard Materials|volume = 24|issue = 4|date = 2006|pages = 275–282|title = Niobium as mint metal: Production–properties–processing|first =Robert|last = Grill|author2=Gnadenberge, Alfred }}</ref>。2012年には、硬貨の中央に青、緑、茶、紫、黄など様々な色を呈する10種類の硬貨が入手可能であった。さらに、2004年のオーストリアの25ユーロ[[ゼメリング鉄道]]150周年記念硬貨<ref>{{cite web|url =http://austrian-mint.at/bimetallmuenzen?l=en&muenzeSubTypeId=113&muenzeId=217|archiveurl =https://web.archive.org/web/20110721053534/http://austrian-mint.at/bimetallmuenzen?l=en&muenzeSubTypeId=113&muenzeId=217|archivedate=21 July 2011|title = 25 Euro – 150 Years Semmering Alpine Railway (2004)|accessdate=4 November 2008|publisher = Austrian Mint}}</ref>、2006年のオーストリアの25ユーロヨーロッパ測位衛星([[ガリレオ (測位システム)|ガリレオ]])記念硬貨がある<ref>{{cite web|url =http://www.austrian-mint.at/cms/download.php?downloadId=131|archiveurl =https://web.archive.org/web/20110720002739/http://www.austrian-mint.at/cms/download.php?downloadId=131|archivedate=20 July 2011|title = 150 Jahre Semmeringbahn|accessdate=4 September 2008| publisher = Austrian Mint| language=German}}</ref>。オーストリアの造幣局は2004年開始の同様の硬貨シリーズをラトビア向けに製造しており<ref>{{cite web|url =http://www.bank.lv/eng/main/all/lvnaud/jubmon/nmp/time/|archiveurl =https://web.archive.org/web/20080109033431/http://www.bank.lv/eng/main/all/lvnaud/jubmon/nmp/time/ |archivedate=9 January 2008 |title = Neraža – mēs nevarējām atrast meklēto lapu!|language=Latvian|accessdate=19 September 2008|publisher = Bank of Latvia}}</ref>、2007年にも1種類発行した<ref>{{cite web|url = http://www.bank.lv/eng/main/all/lvnaud/jubmon/nmp/time2/|archiveurl = https://web.archive.org/web/20090522101540/http://www.bank.lv/eng/main/all/lvnaud/jubmon/nmp/time2/|archivedate=22 May 2009|title = Neraža – mēs nevarējām atrast meklēto lapu!|language=Latvian|accessdate=19 September 2008|publisher = Bank of Latvia}}</ref>。2011年にはカナダ造幣局が5ドルの[[スターリングシルバー]]とニオブの「ハンターズ・ムーン」という名前の硬貨を製造開始し<ref>{{Cite web|url=http://www.mint.ca/store/coin/5-sterling-silver-and-niobium-coin-hunters-moon-2011-prod1110013|title=$5 Sterling Silver and Niobium Coin – Hunter's Moon (2011)|publisher=Royal Canadian Mint|accessdate=1 February 2012}}</ref>、ニオブは選択的に酸化されているため、同じ硬貨が2つとないような独特の仕上げとなっている。

==== その他 ====
[[ナトリウムランプ]]の高圧発光管の密封材はニオブで作られており、場合によっては1パーセントの[[ジルコニウム]]を含んだ合金となっている。発光管は、動作中のランプ内に含まれる熱い液体ナトリウムや気体ナトリウムによる化学的な反応や還元に耐えられる半透明材料となる、焼結された[[酸化アルミニウム|アルミナ]]のセラミックスで作られ、ニオブはこれと非常によく似た熱膨張係数を持っている<ref>{{cite book|title = Lamps and Lighting|author=Henderson, Stanley Thomas|author2=Marsden, Alfred Michael|author3=Hewitt, Harry|publisher = Edward Arnold Press|date = 1972|isbn = 978-0-7131-3267-0|pages = 244–245}}</ref><ref>{{cite journal|title = Refractory metals: crucial components for light sources|last = Eichelbrönner|first = G.|date =1998|journal = International Journal of Refractory Metals and Hard Materials|volume = 16|issue = 1|pages = 5–11|doi = 10.1016/S0263-4368(98)00009-2}}</ref><ref>{{cite journal|title = Niobium and Niobium 1% Zirconium for High Pressure Sodium (HPS) Discharge Lamps|author=Michaluk, Christopher A.|author2=Huber, Louis E.|author3=Ford, Robert B.| journal = Niobium Science & Technology: Proceedings of the International Symposium Niobium 2001 (Orlando, Florida, USA)|date = 2001|isbn = 978-0-9712068-0-9 |editors=Minerals, Metals and Materials Society, Metals and Materials Society Minerals}}</ref>。

ニオブは、ある種の安定化ステンレス鋼に対する[[アーク溶接]]用の溶接棒として使われ<ref>{{US patent reference|number = 5254836|issue-date=19 October 1993|inventor = Okada, Yuuji; Kobayashi, Toshihiko; Sasabe, Hiroshi; Aoki, Yoshimitsu; Nishizawa, Makoto; Endo, Shunji|title = Method of arc welding with a ferrite stainless steel welding rod}}</ref>、またある種の水タンクにおけるカソード防蝕システムの陽極側に用いられる。この際、タンクは通常[[白金]]でメッキされる<ref>{{cite book|author=Moavenzadeh, Fred |title=Concise Encyclopedia of Building and Construction Materials|url=https://books.google.com/books?id=YiJaEAUj258C&pg=PA157|accessdate=18 February 2012 |date=14 March 1990|publisher=MIT Press|isbn=978-0-262-13248-0|pages=157–}}</ref><ref>{{cite book|author=Cardarelli, François |title=Materials handbook: a concise desktop reference|url=https://books.google.com/books?id=PvU-qbQJq7IC&pg=PA352|accessdate=18 February 2012 |date=9 January 2008|publisher=Springer|isbn=978-1-84628-668-1|pages=352–}}</ref>。

ニオブは、[[プロパン]]の選択的酸化により[[アクリル酸]]を生産する際に用いられる、高性能で不均一な触媒の重要な構成要素となる<ref>{{cite journal|title=Surface chemistry of phase-pure M1 MoVTeNb oxide during operation in selective oxidation of propane to acrylic acid|journal=Journal of Catalysis|volume=285|pages=48–60|doi=10.1016/j.jcat.2011.09.012|year=2012|last1=Hävecker|first1=Michael|last2=Wrabetz|first2=Sabine|last3=Kröhnert|first3=Jutta|last4=Csepei|first4=Lenard-Istvan|last5=Naumann d'Alnoncourt|first5=Raoul|last6=Kolen'Ko|first6=Yury V|last7=Girgsdies|first7=Frank|last8=Schlögl|first8=Robert|last9=Trunschke|first9=Annette|hdl=11858/00-001M-0000-0012-1BEB-F|url=http://pubman.mpdl.mpg.de/pubman/item/escidoc:1108560/component/escidoc:1402724/1108560.pdf|format=Submitted manuscript}}</ref><ref>{{cite journal|title=Multifunctionality of Crystalline MoV(TeNb) M1 Oxide Catalysts in Selective Oxidation of Propane and Benzyl Alcohol|journal=ACS Catalysis|volume=3|issue=6|page=1103|doi=10.1021/cs400010q|year=2013|last1=Amakawa|first1=Kazuhiko|last2=Kolen'Ko|first2=Yury V|last3=Villa|first3=Alberto|last4=Schuster|first4=Manfred E/|last5=Csepei|first5=Lénárd-István|last6=Weinberg|first6=Gisela|last7=Wrabetz|first7=Sabine|last8=Naumann d'Alnoncourt|first8=Raoul|last9=Girgsdies|first9=Frank|last10=Prati|first10=Laura|last11=Schlögl|first11=Robert|last12=Trunschke|first12=Annette|hdl=11858/00-001M-0000-000E-FA39-1}}</ref><ref>{{cite book|title=Kinetic studies of propane oxidation on Mo and V based mixed oxide catalysts|date=2011|publisher=Technische Universität Berlin|pages=157–166|doi=10.14279/depositonce-2972}}</ref><ref>{{cite journal|title=The reaction network in propane oxidation over phase-pure MoVTeNb M1 oxide catalysts|journal=Journal of Catalysis|volume=311|pages=369–385|doi=10.1016/j.jcat.2013.12.008|year=2014|last1=Naumann d'Alnoncourt|first1=Raoul|last2=Csepei|first2=Lénárd-István|last3=Hävecker|first3=Michael|last4=Girgsdies|first4=Frank|last5=Schuster|first5=Manfred E|last6=Schlögl|first6=Robert|last7=Trunschke|first7=Annette|hdl=11858/00-001M-0000-0014-F434-5|url=http://pubman.mpdl.mpg.de/pubman/item/escidoc:1896844/component/escidoc:1896843/JCAT-13-716_revised_06Dec2013.pdf|format=Submitted manuscript}}</ref>。

太陽探査機の[[パーカー・ソーラー・プローブ]]の[[コロナ]]微粒子捕獲モジュールの高電圧ワイヤを作成するためにニオブが用いられている<ref>{{cite AV media |people=Dr. Tony Case |date=Aug 24, 2018 |title=Scientist Interview: Dr. Tony Case (Parker Solar Probe) |language=English |url=https://www.youtube.com/watch?v=m3GKfvPc2ns&t=214s |access-date=Aug 24, 2018}}</ref>。

== 人体への影響 ==
{{Chembox
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|Section7={{Chembox Hazards
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| GHSPictograms =
| GHSSignalWord = Not listed as hazardous<ref>https://www.sigmaaldrich.com/MSDS/MSDS/DisplayMSDSPage.do?country=US&language=en&productNumber=262781&brand=ALDRICH&PageToGoToURL=https%3A%2F%2Fwww.sigmaaldrich.com%2Fcatalog%2Fproduct%2Faldrich%2F262781%3Flang%3Den</ref>
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}}
ニオブには生物学的な役割が見つかっていない。ニオブの細粉は目や肌に対する刺激物であり、また火災の危険もあるが、より大きなサイズの元素としてのニオブは生理学的に不活性であり(そのためアレルギー的にも低刺激であり)、無害である。宝飾品によく用いられ、またある種の医学用の埋め込み物(インプラント)の製作にも試験されてきた<ref>{{cite journal|title = New trends in the use of metals in jewellery|author=Vilaplana, J.|author2=Romaguera, C.|author3=Grimalt, F.|author4=Cornellana, F.|journal = Contact Dermatitis|volume = 25|issue = 3 |pages = 145–148|date = 1990|doi = 10.1111/j.1600-0536.1991.tb01819.x|pmid = 1782765}}</ref><ref>{{cite journal|title = New developments in jewellery and dental materials|first = J.|last = Vilaplana|author2=Romaguera, C. | journal = Contact Dermatitis|volume = 39|issue = 2| pages = 55–57|date = 1998|doi = 10.1111/j.1600-0536.1998.tb05832.x|pmid = 9746182}}</ref>。

多くの人にとって、ニオブを含む化合物に接することはまれであるが、毒性のあるものもあり注意して取り扱う必要がある。水溶性の化学物質であるニオブ酸塩や塩化ニオブについて、短期および長期の暴露がラットで実験されている。塩化ニオブまたはニオブ酸塩を単回投与されたラットの[[半数致死量]] (LD<sub>50</sub>) は10 - 100 mg/kgであった<ref name="Haley">{{cite journal|title = Pharmacology and toxicology of niobium chloride|author=Haley, Thomas J.|author2=Komesu, N.|author3=Raymond, K.|journal = Toxicology and Applied Pharmacology|volume = 4|issue = 3|pages = 385–392|date = 1962|doi = 10.1016/0041-008X(62)90048-0|pmid=13903824}}</ref><ref>{{cite journal|title = The Toxicity of Niobium Salts |author=Downs, William L. |display-authors=4 |author2=Scott, James K. |author3=Yuile, Charles L. |author4=Caruso, Frank S. |author5=Wong, Lawrence C. K.|journal = American Industrial Hygiene Association Journal|volume = 26|issue = 4|pages = 337–346|date = 1965|doi = 10.1080/00028896509342740|pmid = 5854670}}</ref><ref>{{cite journal|title = Zirconium, Niobium, Antimony, Vanadium and Lead in Rats: Life term studies|author=Schroeder, Henry A.|author2=Mitchener, Marian|author3=Nason, Alexis P.|journal = Journal of Nutrition|volume = 100|issue = 1|pages = 59–68|date=1970|pmid =5412131|url=http://jn.nutrition.org/content/100/1/59.short}}</ref>。経口投与では毒性はより弱く、ラットに対する実験では7日経過後のLD<sub>50</sub>は940 mg/kgであった<ref name="Haley" />。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist|30em}}

{{clear}}
== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
{{Commons|Niobium}}
{{wiktionary|Niobium}}
* [[化学元素発見の年表]]
* [[化学元素発見の年表]]


== 外部リンク ==
{{Commons|Niobium}}
* [http://periodic.lanl.gov/41.shtml Los Alamos National Laboratory – Niobium]
{{wiktionary}}
* [http://www.tanb.org/ Tantalum-Niobium International Study Center]
* [http://www.symmetrymag.org/cms/?pid=1000173 Niobium for particle accelerators eg ILC. 2005]
* {{Cite EB1911|wstitle=Columbium|short=x}}
* {{Cite NIE|wstitle=Columbium}}
* [http://www.periodicvideos.com/videos/041.htm Niobium] at ''The Periodic Table of Videos'' (University of Nottingham)


{{元素周期表}}
{{元素周期表}}

2018年11月26日 (月) 15:05時点における版

ジルコニウム ニオブ モリブデン
V

Nb

Ta
Element 1: 水素 (H),
Element 2: ヘリウム (He),
Element 3: リチウム (Li),
Element 4: ベリリウム (Be),
Element 5: ホウ素 (B),
Element 6: 炭素 (C),
Element 7: 窒素 (N),
Element 8: 酸素 (O),
Element 9: フッ素 (F),
Element 10: ネオン (Ne),
Element 11: ナトリウム (Na),
Element 12: マグネシウム (Mg),
Element 13: アルミニウム (Al),
Element 14: ケイ素 (Si),
Element 15: リン (P),
Element 16: 硫黄 (S),
Element 17: 塩素 (Cl),
Element 18: アルゴン (Ar),
Element 19: カリウム (K),
Element 20: カルシウム (Ca),
Element 21: スカンジウム (Sc),
Element 22: チタン (Ti),
Element 23: バナジウム (V),
Element 24: クロム (Cr),
Element 25: マンガン (Mn),
Element 26: 鉄 (Fe),
Element 27: コバルト (Co),
Element 28: ニッケル (Ni),
Element 29: 銅 (Cu),
Element 30: 亜鉛 (Zn),
Element 31: ガリウム (Ga),
Element 32: ゲルマニウム (Ge),
Element 33: ヒ素 (As),
Element 34: セレン (Se),
Element 35: 臭素 (Br),
Element 36: クリプトン (Kr),
Element 37: ルビジウム (Rb),
Element 38: ストロンチウム (Sr),
Element 39: イットリウム (Y),
Element 40: ジルコニウム (Zr),
Element 41: ニオブ (Nb),
Element 42: モリブデン (Mo),
Element 43: テクネチウム (Tc),
Element 44: ルテニウム (Ru),
Element 45: ロジウム (Rh),
Element 46: パラジウム (Pd),
Element 47: 銀 (Ag),
Element 48: カドミウム (Cd),
Element 49: インジウム (In),
Element 50: スズ (Sn),
Element 51: アンチモン (Sb),
Element 52: テルル (Te),
Element 53: ヨウ素 (I),
Element 54: キセノン (Xe),
Element 55: セシウム (Cs),
Element 56: バリウム (Ba),
Element 57: ランタン (La),
Element 58: セリウム (Ce),
Element 59: プラセオジム (Pr),
Element 60: ネオジム (Nd),
Element 61: プロメチウム (Pm),
Element 62: サマリウム (Sm),
Element 63: ユウロピウム (Eu),
Element 64: ガドリニウム (Gd),
Element 65: テルビウム (Tb),
Element 66: ジスプロシウム (Dy),
Element 67: ホルミウム (Ho),
Element 68: エルビウム (Er),
Element 69: ツリウム (Tm),
Element 70: イッテルビウム (Yb),
Element 71: ルテチウム (Lu),
Element 72: ハフニウム (Hf),
Element 73: タンタル (Ta),
Element 74: タングステン (W),
Element 75: レニウム (Re),
Element 76: オスミウム (Os),
Element 77: イリジウム (Ir),
Element 78: 白金 (Pt),
Element 79: 金 (Au),
Element 80: 水銀 (Hg),
Element 81: タリウム (Tl),
Element 82: 鉛 (Pb),
Element 83: ビスマス (Bi),
Element 84: ポロニウム (Po),
Element 85: アスタチン (At),
Element 86: ラドン (Rn),
Element 87: フランシウム (Fr),
Element 88: ラジウム (Ra),
Element 89: アクチニウム (Ac),
Element 90: トリウム (Th),
Element 91: プロトアクチニウム (Pa),
Element 92: ウラン (U),
Element 93: ネプツニウム (Np),
Element 94: プルトニウム (Pu),
Element 95: アメリシウム (Am),
Element 96: キュリウム (Cm),
Element 97: バークリウム (Bk),
Element 98: カリホルニウム (Cf),
Element 99: アインスタイニウム (Es),
Element 100: フェルミウム (Fm),
Element 101: メンデレビウム (Md),
Element 102: ノーベリウム (No),
Element 103: ローレンシウム (Lr),
Element 104: ラザホージウム (Rf),
Element 105: ドブニウム (Db),
Element 106: シーボーギウム (Sg),
Element 107: ボーリウム (Bh),
Element 108: ハッシウム (Hs),
Element 109: マイトネリウム (Mt),
Element 110: ダームスタチウム (Ds),
Element 111: レントゲニウム (Rg),
Element 112: コペルニシウム (Cn),
Element 113: ニホニウム (Nh),
Element 114: フレロビウム (Fl),
Element 115: モスコビウム (Mc),
Element 116: リバモリウム (Lv),
Element 117: テネシン (Ts),
Element 118: オガネソン (Og),
Niobium has a body-centered cubic crystal structure
41Nb
外見
銀白色
一般特性
名称, 記号, 番号 ニオブ, Nb, 41
分類 遷移金属
, 周期, ブロック 5, 5, d
原子量 92.90638
電子配置 [Kr] 4d4 5s1
電子殻 2, 8, 18, 12, 1(画像
物理特性
固体
密度室温付近) 8.57 g/cm3
融点 2750 K, 2477 °C, 4491 °F
沸点 5017 K, 4744 °C, 8571 °F
融解熱 30 kJ/mol
蒸発熱 689.9 kJ/mol
熱容量 (25 °C) 24.60 J/(mol·K)
蒸気圧
圧力 (Pa) 1 10 100 1 k 10 k 100 k
温度 (K) 2942 3207 3524 3910 4393 5013
原子特性
酸化数 5, 4, 3, 2, -1(弱酸性酸化物
電気陰性度 1.6(ポーリングの値)
イオン化エネルギー 第1: 652.1 kJ/mol
第2: 1380 kJ/mol
第3: 2416 kJ/mol
原子半径 146 pm
共有結合半径 164±6 pm
その他
結晶構造 体心立方
磁性 常磁性
電気抵抗率 (0 °C) 152 nΩ⋅m
熱伝導率 (300 K) 53.7 W/(m⋅K)
熱膨張率 7.3 μm/(m⋅K)
音の伝わる速さ
(微細ロッド)
(20 °C) 3480 m/s
ヤング率 105 GPa
剛性率 38 GPa
体積弾性率 170 GPa
ポアソン比 0.40
モース硬度 6.0
ビッカース硬度 1320 MPa
ブリネル硬度 736 MPa
CAS登録番号 7440-03-1
主な同位体
詳細はニオブの同位体を参照
同位体 NA 半減期 DM DE (MeV) DP
91Nb syn 6.8×102 y ε - 91Zr
91mNb syn 60.86 d IT 0.104 e 91Nb
92Nb syn 3.47×107 y ε - 92Zr
γ 0.561, 0.934 -
92mNb syn 10.15 d ε - 92Zr
γ 0.934 -
93Nb 100% 中性子52個で安定
93mNb syn 16.13 y IT 0.031 e 93Nb
94Nb syn 2.03×104 y β- 0.471 94Mo
γ 0.702, 0.871 -
95Nb syn 34.991 d β- 0.159 95Mo
γ 0.765 -
95mNb syn 3.61 d IT 0.235 95Nb

ニオブ: niobium [naɪˈoʊbiəm] : Niob [niˈoːp, ˈniːɔp])は、原子番号41、元素記号Nb元素である。柔らかく灰色で結晶質の延性のある遷移金属であり、パイロクロアコルンブ石といった鉱物としてしばしば産出し、後者に由来してかつてはコロンビウムと呼ばれていたこともあった。ニオブという名前はギリシア神話に由来し、タンタルの語源となったタンタロスの娘であるニオベーから来ている。この名前は、タンタルとニオブが物理的・化学的に非常によく似ており、区別を付けづらいという特徴を反映したものである[1]

イングランドの化学者チャールズ・ハチェットが1801年に、タンタルに似た新元素を報告し、コロンビウムと名付けた。1809年にやはりイングランドの化学者ウイリアム・ウォラストンが誤ってタンタルとコロンビウムは同じものであると結論付けた。ドイツの化学者ハインリヒ・ローゼは1846年に、タンタルの鉱石にはもう1つの元素を含んでいると判断し、これにニオブという名前を付けた。1864年および1865年に、一連の科学的発見によりニオブと、かつてコロンビウムと呼ばれていたものは同じ元素であることが明らかになり、それから1世紀ほどの間にわたってニオブとコロンビウムという名前はどちらも同じものを指す言葉として使われてきた。1949年にニオブという名前が公式にこの元素の名前として採用されたが、その後もアメリカ合衆国では鉱業の分野において依然としてコロンビウムという名前が残っている。

ニオブが商業的に初めて利用されたのは20世紀初めになってからであった。ニオブおよび、ニオブと鉄の合金(60-70パーセントがニオブ)であるフェロニオブ英語版の最大生産国はブラジルである。ニオブは主に合金として用いられ、ガスのパイプラインなどに用いられる特殊合金が最大の用途である。こうした合金は最大でも0.1パーセント程度のニオブを含有するだけであるが、このわずかなニオブにより鋼鉄の強度を増大させる。ニオブを含む超合金の温度安定性の高さから、ジェットエンジンロケットエンジンといった用途が重要である。

ニオブは様々な超伝導材料に用いられる。こうした超伝導合金は、チタンスズも含むものが、核磁気共鳴画像法 (MRI) の超伝導電磁石に広く用いられている。ニオブのその他の用途として、溶接、原子力産業、電子、光学、貨幣、宝飾といったものがある。貨幣と宝飾の用途では、毒性が低いことと、陽極酸化処理により虹色を呈することが、非常に望ましい特性として利用されている。

歴史

チャールズ・ハチェットは、アメリカ合衆国コネチカット州産の鉱物からコロンビウムを発見した
ジョルジョ・ゾンマー()が撮影した、古代ギリシアのニオベー像

ニオブはイングランドの化学者チャールズ・ハチェットにより、1801年に発見された[2][3][4]。ハチェットは、1734年にジョン・ウィンスロップがイングランドにアメリカ合衆国のコネチカット州から送ったサンプルの鉱物からニオブを発見し、アメリカ合衆国の詩的な名前であるコロンビアにちなみ、この鉱物をコルンブ石、新しい元素をコロンビウムと名付けた[5][6][7]。ハチェットが発見したコロンビウムは、おそらく新元素とタンタルの混合物であったと思われる[5]

その後、コロンビウムと、それによく似たタンタルの違いについて、かなりの混乱があった[8]。1809年にイングランドの化学者ウイリアム・ウォラストンはコロンビウムの酸化物であるコルンブ石の密度(5.918 g/cm3)と、タンタルの酸化物であるタンタル石の密度(8 g/cm3以上)を比較し、密度がかなり違うにもかかわらずこの2つの酸化物は同じものであると結論付け、タンタルの方の名前を採用した[8]。この結論に対し、1846年にドイツの化学者ハインリヒ・ローゼは異論を唱え、タンタル石にはさらに2つの異なる元素が含まれていると主張して、タンタロスの子供にちなんで、ニオベーからニオブ、ペロプスからペロピウムと名付けた[9][10]。こうした混乱は、タンタルとニオブの間の観測された差異が非常に小さいことから生じていた。新しい元素だとされたペロピウム、イルメニウム、ダイアニウム[11]といったものは、実際にはニオブか、またはニオブとタンタルの混合物であった[12]

タンタルとニオブの差異は、1864年にクリスチャン・ヴィルヘルム・ブロムストラントスウェーデン語版[12]アンリ・サント=クレール・ドビーユらがはっきりと示し、1864年にはルイ・ジョゼフ・トローストフランス語版がいくつかの化合物の構造式を決定し[12][13]、最終的にスイスの化学者ジャン・マリニャックが1866年に、含まれている元素は2種類だけであることを証明した[14]。しかしイルメニウムという元素に関する記事は1871年まで残っている[15]

マリニャックは1864年に、水素雰囲気中でニオブの塩化物を熱して還元することにより初めてニオブの金属形態を得た[16]。マリニャックは1866年にはタンタルを含まないニオブを大規模に得ることに成功していたが、ニオブが初めて商業的な用途に用いられたのは、20世紀初めになってからのことで、白熱電球のフィラメントとして用いられた[13]。しかしこのニオブの用途は、より高い融点を持つタングステンによってすぐに代替され、時代遅れのものとなってしまった。鋼鉄の強度をニオブが改善することは1920年代になって初めて発見され、それ以来この用途が最大の用途であり続けている[13]。1961年にアメリカの物理学者ユージーン・クンツラーとベル研究所の共同研究者らは、ニオブスズが大きな電流や強い磁場の中でも超伝導を維持できることを発見し[17]、強力な磁石や大出力電気機械に必要とされる大きな電流や磁束に耐えられる初めての材料となった。この発見により20年後、回転機や粒子加速器、粒子検知器といった用途に用いられる大規模で強力な電磁石用のコイルを製作できる長い巻線を製造できるようになった[18][19]

元素の命名

コロンビウム(元素記号Cb)[20]は、1801年に初めてニオブが発見された際にハチェットが与えた名前であった[3]。この名前は、発見に用いられた鉱石標本がアメリカ(コロンビア)から送られたことにちなんだものであった[21]。アメリカの論文誌ではこの名前が使われ続け、アメリカ化学会がコロンビウムという名前をタイトルに含む最後の論文を公表したのは1953年のことであった。一方ヨーロッパではニオブという名前が使われていた[22]。この混乱を終わらせるために、1949年にアムステルダムで開かれた第15回化学連合会議において41番元素の名前としてニオブが選択された[23]。歴史的にはコロンビウムという名前の方が先に用いられていたにもかかわらず、この翌年、100年間に渡る論争を経て、国際純正・応用化学連合 (IUPAC) により正式にニオブという名前が採択された[23]。これはある種の妥協であり[23]、IUPACは、ウォルフラムという名前より北アメリカで使用されているタングステンという名前を採用した代わりに、コロンビウムという名前よりヨーロッパで使用されているニオブという名前を採用した。アメリカ合衆国の多くの化学関連組織や政府組織では公式のIUPAC名を使用しているが、一部の冶金関係者や金属関連組織では依然としてアメリカの名前であるコロンビウムを使っている[24][25][26]

特徴

物理的な特徴

ニオブは光沢のある灰色で、展延性があり、常磁性を持った周期表第5族に属する金属であり、最外殻電子の配置は第5族としては変則的なものである(これは周期表上近傍にあるルテニウム (44)、ロジウム (45)、パラジウム (46) などに共通である)。

Z 元素 殻ごとの電子
23 バナジウム 2, 8, 11, 2
41 ニオブ 2, 8, 18, 12, 1
73 タンタル 2, 8, 18, 32, 11, 2
105 ドブニウム 2, 8, 18, 32, 32, 11, 2

絶対零度から融点まで、体心立方格子構造を取ると考えられているものの、3結晶軸に沿った熱膨張の高解像度測定によれば、立方構造とは矛盾する異方性があることを明らかにしている[27]。そのため、この分野でのさらなる研究と発見が期待されている。

ニオブはごく低温において超伝導になる。大気圧では、元素の超伝導体としては最も高い臨界温度である9.2ケルビンで超伝導となる[28]。ニオブはすべての元素の中で最大の磁場侵入長を持つ[28]。これに加えて、バナジウムテクネチウムと並んで、3つだけ存在する元素の第二種超伝導体でもある。超伝導特性は、金属ニオブの純粋度に強く依存している[29]

非常に純度が高い金属ニオブは比較的柔らかく展延性があるが、不純物の存在により硬くなる[30]

金属ニオブは、熱中性子の捕獲断面積が小さい[31]。そのため原子力産業において、中性子に透過的な構造が必要な場合に用いられる[32]

化学的な特徴

ニオブは、室温で長期間空気にさらされると、青味がかった色を呈する[33]。元素としては高い融点(摂氏2,468度)を持つにもかかわらず、他の耐火金属に比べると密度が小さい。また、腐食耐性が高く、超伝導特性があり、誘電酸化物層を形成する。

ニオブは、原子番号が1つ小さいジルコニウムに比べるとわずかに陽性度が小さくよりコンパクトであるが、一方重いタンタルと比べると、ランタノイド収縮の結果ほとんど同じ大きさである[30]。結果として、ニオブの化学的特性は、周期表上でニオブの直下にあるタンタルととてもよく似ている[13]。ニオブの腐食耐性はタンタルほど優れているわけではないが、価格が安く豊富に入手可能であることから、化学工場におけるタンクの内張りなど、あまり厳しい要求ではない用途にはニオブが向いている[30]

同位体

地球の地殻に含まれるニオブの安定同位体は、93Nbのみである[34]。2003年までに、少なくとも32の放射性同位体が合成されており、その原子量は81から113に及ぶ。放射性同位体の中でもっとも安定なものは92Nbで、その半減期は3470万年に達する。不安定な同位体としては113Nbがあり、その推定半減期は30ミリ秒である。安定同位体の93Nbより軽い同位体は陽電子放出で崩壊する傾向にあり、安定同位体より重い同位体はベータ崩壊をする傾向にあるが、81Nb、82Nb、84Nbは遅延陽子放出の崩壊系列を持ち、91Nbは電子捕獲と陽電子放出し、92Nbは陽電子放出とベータ崩壊の両方の崩壊をするという例外がある[34]

少なくとも25種類の核異性体が確認されており、その原子量は84から104に及ぶ。この範囲で、96Nb、101Nb、103Nbは核異性体を持たない。ニオブの核異性体の中でもっとも安定なものは93mNbで、半減期16.13年を持つ。もっとも不安定な核異性体は84mNbで、半減期103ナノ秒を持つ。ニオブの核異性体はすべて核異性体転移またはベータ崩壊で崩壊するが、例外として92m1Nbは電子捕獲という系列を持つ[34]

存在

ニオブは地球の地殻における存在量で34番目の元素であるとされており、およそ20 ppm含まれているとされる[35]。地球全体での存在度はより大きいと考えている者もおり、ニオブの高い密度のために地球のコアに濃縮されているとしている[25]。ニオブの単体は自然界では発見されておらず、他の元素と化合して鉱物中に含まれている[30]。ニオブを含む鉱物は、タンタルも含んでいることが多い。たとえば、コルンブ石 ((Fe,Mn)(Nb,Ta)2O6) やコルタン ((Fe,Mn)(Ta,Nb)2O6) といったものがある[36]。コルンブ石、タンタル石といった鉱物(もっとも一般的な種類はコルンブ石-(Fe)またはタンタル石-(Fe)、"-Fe"はマンガンなどほかの元素に対して鉄が多く含まれていることを示すレビンソンのサフィックス[37][38][39][40])は、ペグマタイトの貫入やアルカリ性貫入岩の随伴鉱物として見つかることがもっとも多い。カルシウムウラン希土類元素といったもののニオブ酸塩としても見つかる。こうしたニオブ酸塩の例としてはパイロクロア ((Na,Ca)2Nb2O6(OH,F)) (現在ではグループに与えられた名前となっており、その中で一般的なものはフルオロカルシオパイクロア[41][42][43][44][45])、ユークセン石英語版(正確にはユークセン石-(Y)[46][47][48])((Y,Ca,Ce,U,Th)(Nb,Ta,Ti)2O6) といったものがある。ニオブの大規模な鉱脈は、パイロクロアの構成物として、カーボナタイト炭酸塩-ケイ酸塩火成岩)に関連して発見される[49]

現時点で採掘されているパイロクロアの3大鉱床は、2つがブラジルに、1つがカナダにあり、どれも1950年代に発見され、なおもニオブ鉱石の主な供給源となっている[13]。最大の鉱床は、ブラジルのミナスジェライス州アラシャにあり、カーボナタイトの貫入物に随伴したもので、CBMM(ブラジル冶金鉱業会社)が保有している。もう1つのブラジルの採掘中鉱床はゴイアス州カタラン近郊にあり、やはりカーボナタイト貫入物に伴うもので、洛陽欒川モリブデン中国語版が保有している[50]。これら2つの鉱床で、世界全体の供給のおよそ88パーセントを生産している[51]。ブラジルにはほかにも、アマゾナス州サン・ガブリエウ・ダ・カショエイラポルトガル語版近郊に大規模だが未採掘の鉱床があり、ロライマ州にあるものなど、より小規模な鉱床もいくつかある[51]

ニオブの3番目の供給源は、カナダのケベック州チクーチミ英語版近郊サントノーレ英語版にあるニオベック鉱山で、やはりカーボナタイトに伴うもので、マグリス・リソーシズが保有している[52]。この鉱山では、世界全体の供給の7パーセントから10パーセント程度を生産している[50][51]

生産

2006年から2015年にかけてのニオブ生産国

他の鉱石の分離処理を行うと、タンタル(五酸化タンタル Ta2O5)とニオブ(五酸化ニオブ Nb2O5)の酸化物の混合物が得られる。抽出処理の最初の段階は、この酸化物をフッ化水素酸と反応させることである[36]

Ta2O5 + 14 HF → 2 H2[TaF7] + 5 H2O
Nb2O5 + 10 HF → 2 H2[NbOF5] + 3 H2O

ジャン・マリニャックが開発した最初の工業的分離処理では、ニオブのフッ化物の錯体(フッ化ニオブ酸カリウム一水和物 K2[NbOF5]·H2O)とタンタルのフッ化物の錯体(フッ化タンタル酸カリウム K2[TaF7])の水への溶解度の差を利用していた。新しい処理方法では、フッ化物を水溶液からシクロヘキサノンのような有機溶媒へ取り出す液液抽出を利用する[36]。ニオブとタンタルのフッ化物の錯体は、この有機溶媒から水に別々に抽出され、フッ化カリウムを加えてフッ化カリウムの錯体を形成して沈殿させるか、アンモニアを加えて五酸化物として沈殿させる[53]

H2[NbOF5] + 2 KF → K2[NbOF5]↓ + 2 HF

または:

2 H2[NbOF5] + 10 NH4OH → Nb2O5↓ + 10 NH4F + 7 H2O

還元して金属ニオブを得る方法としてはいくつかのものがある。フッ化ニオブ酸カリウム K2[NbOF5]と塩化ナトリウムの溶融塩を電気分解する方法、ナトリウムを使ってフッ化物を還元する方法などがある。この方法では比較的高い純度のニオブを得ることができる。大規模な生産では、五酸化ニオブ Nb2O5 は水素または炭素を用いて還元される[53]アルミノテルミット反応英語版では、鉄の酸化物とニオブの酸化物の混合物をアルミニウムと反応させる:

3 Nb2O5 + Fe2O3 + 12 Al → 6 Nb + 2 Fe + 6 Al2O3

この反応を促進させるために硝酸ナトリウムのような少量の酸化剤が添加される。得られるのは酸化アルミニウムと製鉄に用いられる鉄とニオブの合金であるフェロニオブ英語版である[54][55]。フェロニオブは60 - 70パーセントのニオブを含む[50]。酸化鉄なしでは、アルミノテルミット反応はニオブの生産にも用いられる。超伝導合金の水準に達するためにはさらなる精錬が必要である。ニオブの2大供給業者が用いている方法は、真空下での電子ビーム溶解法英語版である[56][57]

2013年現在、ブラジルのCBMMが世界のニオブ生産の85パーセントを占める[58]アメリカ地質調査所は、ニオブの生産量は2005年の38,700トンから2006年の44,500トンへと増加したと推定している[59][60]。世界のニオブ資源量は440万トンであると推計されている[60]。1995年から2005年までの10年間では生産量は1995年の17,800トンから2倍以上に増加している[61]。2009年から2011年まで年間生産量は63,000トンでほぼ安定していたが[62]、2012年には50,000トンへと減少した[63]

生産量(トン)[64](アメリカ地質調査所推計)
2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年
オーストラリアの旗 オーストラリア 160 230 290 230 200 200 200 ? ? ? ? ? ? ?
ブラジルの旗 ブラジル 30,000 22,000 26,000 29,000 29,900 35,000 40,000 57,300 58,000 58,000 58,000 58,000 45,000 53100
カナダの旗 カナダ 2,290 3,200 3,410 3,280 3,400 3,310 4,167 3,020 4,380 4,330 4,420 4,630 4,710 5260
 コンゴ民主共和国 ? 50 50 13 52 25 ? ? ? ? ? ? ? ?
モザンビークの旗 モザンビーク ? ? 5 34 130 34 29 ? ? ? ? ? ? ?
ナイジェリアの旗 ナイジェリア 35 30 30 190 170 40 35 ? ? ? ? ? ? ?
ルワンダの旗 ルワンダ 28 120 76 22 63 63 80 ? ? ? ? ? ? ?
世界全体 32,600 25,600 29,900 32,800 34,000 38,700 44,500 60,400 62,900 62,900 62,900 63,000 50,100 59400

マラウイのケニカ鉱脈にもいくらか発見されている。

化合物

ニオブは多くの点でタンタルジルコニウムに類似している。高温ではほとんどの非金属と反応する。フッ素とは室温で、塩素および水素とは摂氏200度で、窒素とは摂氏400度で反応し、得られる化合物は多くが侵入型で不定比である[30]。大気中では摂氏200度で酸化し始める[53]王水塩酸硫酸硝酸リン酸など、アルカリや酸による腐食に耐える[30]フッ化水素酸およびフッ化水素酸と硝酸の混合物には腐食される。

ニオブの酸化数は+5から-1までのすべてを取りうるが、ニオブの化合物のほとんどではニオブの酸化数は+5を取る[30]。特徴として、+5より小さな酸化数を取る化合物ではニオブ-ニオブ結合を示す。

酸化物と硫化物

ニオブの酸化物は酸化数+5(Nb2O5[65]、+4(NbO2)、+3(Nb2O3[53]、そして珍しい酸化数として+2(NbO)がある[66]。もっとも一般的な酸化物は五酸化ニオブで、ほとんどのニオブの化合物や合金の前駆体となる[53][67]。ニオブ酸塩は、五酸化物を水酸化物イオンの溶液に溶かすか、アルカリ金属の酸化物に溶融させることで得られる。例としてニオブ酸リチウム(LiNbO3)やニオブ酸ランタン(LaNbO4)がある。ニオブ酸リチウムは三角形にゆがめられたペロブスカイト構造のような構造で、一方ニオブ酸ランタンは孤立したNbO3−
4
イオンを持つ[53]。層状の硫化ニオブ (NbS2) も知られている[30]

摂氏350度以上でニオブ(V)エトキシド英語版を熱分解して、化学気相成長または原子層堆積により酸化ニオブの薄膜で材料をコーティングすることができる[68][69]

ハロゲン化物

五塩化ニオブ(黄色の部分)、部分的に加水分解している(白い物質)
五塩化ニオブの球棒モデル二量体となっているもの

ニオブは、酸化数+5および+4で、様々な不定比化合物としてハロゲン化物を形成する[53][56]。五ハロゲン化ニオブ (NbX5) は八面体の中心にニオブが配置される構造を特徴とする。五フッ化ニオブ (NbF5) は融点が摂氏79度の白い固体である。五塩化ニオブ英語版 (NbCl5) は融点が摂氏203.4度の黄色い固体である。どちらも加水分解されて酸化物またはNbOCl3のようなオキシハロゲン化物を与える。五塩化ニオブは、二塩化ニオボセン ((C5H5)2NbCl2) のような有機金属化合物を生成するために使われる多用途の試薬である[70]。四ハロゲン化物 (NbX4) はNb-Nb結合を有する暗色のポリマーであり、たとえば黒く吸湿性のある四フッ化ニオブ英語版 (NbF4) や、茶色の四塩化ニオブ英語版 (NbCl4) がある。

ニオブのハロゲン化物の陰イオンは、五ハロゲン化物のルイスの酸性度も部分的に手伝って、よく知られている。もっとも重要なものは [NbF7]2− で、鉱石からニオブとタンタルを分離する過程の途中物質である[36]。この七フッ化物は、タンタル化合物よりも容易にオキソペンタフルオライドを形成する傾向がある。その他のハロゲン化物の錯体としては八面体状の[NbCl6]などがある。

Nb2Cl10 + 2 Cl → 2 [NbCl6]

原子番号の小さなほかの金属と同様に、多くの還元ハロゲン化物のクラスターイオンが知られており、主な例としては[Nb6Cl18]4−がある[71]

窒化物と炭化物

他に二元化合物として、低温で超伝導体となり、また赤外線検知器として用いられる窒化ニオブ (NbN) がある[72]。主な炭化ニオブ英語版はNbCで、非常に硬く耐熱性のあるセラミックス材料であり、商業的には切削加工バイトに用いられる。

用途

ニオブ箔

2006年に生産されたニオブ44,500トンのうち、推定で90パーセントは高級構造用鋼鉄の生産に用いられた。2番目の用途は超合金の生産である[73]。ニオブ合金による超伝導体や電気部品などでのニオブ消費は、世界のニオブ総生産量のほんのわずかな部分を占めるに過ぎない[73]

鋼材

ニオブは鋼鉄にマイクロアロイ英語版(少量を添加して性質改善を行う)を行う上で有用な材料であり、鋼材内では炭化ニオブや窒化ニオブを形成する[25]。こうした化合物は細粒化を改善し、再結晶化と析出硬化を遅らせる。こうした効果により、硬度・強度・成形性・溶接性などを改善する[25]。マイクロアロイを実施したステンレス鋼に含まれるニオブは少ないが(0.1パーセント以下[74])、現代の自動車に構造上広く用いられている高張力鋼にとって重要な添加剤である[25]

同様のニオブ合金は、パイプラインの建設にも用いられる[75][76]

超合金

月の軌道上のアポロ15号司令・機械船、ロケットノズルはニオブチタン合金でできている

多くのニオブがニッケルコバルトをベースとした超合金に用いられており、その含有比率は6.5パーセントにも達する[74]ジェットエンジン部品、ガスタービン、ロケット部品、ターボチャージャー装置、耐熱部品、燃焼設備などに用いられる。ニオブは超合金の粒状組織内において、γ''相の硬化を促進する[77]

超合金の一例として、インコネル718があり、おおむね50パーセントのニッケル、18.6パーセントのクロム、18.5パーセントの、5パーセントのニオブ、3.1パーセントのモリブデン、0.9パーセントのチタン、そして0.4パーセントのアルミニウムで構成されている[78][79]。こうした超合金はたとえば、ジェミニ計画における先進的な機体システムなどで用いられた。ニオブの合金は他に、アポロ司令・機械船のノズルにも用いられた。ニオブは摂氏400度以上になると酸化されるため、こうした用途では合金が脆くならないように保護コーティングが必要となる[80]

ニオブ合金

C-103合金は1960年代初頭にワー・チャン英語版ボーイングが共同で開発した。デュポンユニオンカーバイドゼネラル・エレクトリック他数社が、冷戦宇宙開発競争を背景としてニオブ合金英語版を同時期に開発していた。89パーセントのニオブ、10パーセントのハフニウム、1パーセントのチタンで構成されており、アポロ月着陸船のメインエンジンなど、液体燃料ロケットのスラスターノズルに使われている[80]

スペースXファルコン9の上段用に開発したマーリン・バキュームシリーズのロケットエンジンのノズルはニオブ合金で作られている[81]

ニオブは、酸素との反応性のため、真空中または不活性気体中で加工する必要があり、生産の費用と難度を大きく上げる原因となっている。当時新規開発されていた真空アーク溶解英語版または電子ビーム溶解英語版により、ニオブやそのほか反応性の高い金属に関する開発が可能となった。C-103合金を開発したプロジェクトは1959年に始まり、ボタン状の金属を溶かして板金に圧延できる、256ものCシリーズ(おそらくコロンビウムの頭文字に由来する)の試作ニオブ合金を開発した。ワー・チャンは、原子力用ジルカロイを精製する過程で得られたハフニウムを在庫しており、これを商業用に利用したいと考えていた。Cシリーズ合金で103番目に試したニオブ89パーセント、ハフニウム10パーセント、チタン1パーセントの組み合わせが、成形性と高温特性の点で最適であった。ワー・チャンは1961年に、真空アーク溶解および電子ビーム溶解を用いて、最初のC-103合金500ポンド(約225キログラム)を製造し、インゴットから板金にした。意図されていた用途はガスタービンエンジンや液体金属用熱交換器であった。当時C-103に競合していたニオブ合金としては、ファンスティール冶金製のFS85(ニオブ61パーセント、タングステン10パーセント、タンタル28パーセント、ジルコニウム1パーセント)、ワー・チャンおよびボーイング製Cb129Y(ニオブ79.8パーセント、タングステン10パーセント、ハフニウム10パーセント、イットリウム0.2パーセント)、ユニオンカーバイド製Cb752(ニオブ87.5パーセント、タングステン10パーセント、ジルコニウム2.5パーセント)、およびスペリアー・チューブ製のニオブ99パーセント、ジルコニウム1パーセント合金であった[80]

超伝導電磁石

ニオブ合金を使用した超伝導電磁石を利用している病院用3テスラ核磁気共鳴画像法 (MRI) 装置

ニオブゲルマニウム英語版ニオブスズニオブチタン英語版などの合金は、第二種超伝導体としてワイヤーにして超伝導電磁石を作るために用いられる[82][83]。こうした超伝導電磁石は、核磁気共鳴画像法 (MRI)、核磁気共鳴 (NMR) 装置、加速器といった用途に用いられる[84]たとえば、大型ハドロン衝突型加速器には600トンの超伝導撚線が用いられており、ITER(国際熱核融合実験炉)には推定で600トンのニオブスズの撚線と250トンのニオブチタンの撚線が用いられている[85]。1992年だけで、ニオブチタンの巻線を使った病院用のMRI装置がアメリカドルにして10億ドル以上製造された[18]

その他の超伝導体

フェルミ国立加速器研究所に展示されている1.3 GHz 9セル超伝導加速空洞

自由電子レーザーFLASH(中止されたTESLA線形加速器プロジェクトの成果)やEuropean XFEL英語版に用いられている超伝導加速英語版空洞は、純粋なニオブで作られている[86]フェルミ国立加速器研究所クライオモジュール英語版チームは、同じFLASHプロジェクトに由来する超伝導加速技術を利用して、純粋なニオブ製の1.3 GHz 9セル超伝導加速空洞を開発した。この装置は国際リニアコライダーの30キロメートルに及ぶ線形加速器でも用いられることになっている[87]。同じ技術は、SLAC国立加速器研究所のLCLS-II計画、フェルミ研究所のPIP-II計画でも用いられることになっている[88]

超伝導窒化ニオブで作られたボロメータは高い感度を持っており、テラヘルツ周波数帯における電磁放射の理想的な検知器である。この検知器はハインリッヒ・ヘルツサブミリ波望遠鏡英語版南極点望遠鏡、Receiver Lb Telescope、アタカマ・パスファインダー実験施設英語版などで試験され、ハーシェル宇宙望遠鏡に搭載されてHIFI観測機器に用いられた[89]

その他の利用

電子セラミックス

強誘電体であるニオブ酸リチウムは、携帯電話光変調素子英語版表面弾性波デバイスの製造などに広く用いられている。タンタル酸リチウムチタン酸バリウムなどと同じように、ペロブスカイト構造を取る強誘電体に属する[90]ニオブコンデンサ英語版は、タンタルコンデンサ英語版の代替となりうるが[91]、依然としてタンタルコンデンサが支配的である。高い屈折率を持つガラスを製造するためにニオブが添加され、眼鏡のレンズを薄く軽くすることができる。

低刺激性用途:医療および宝飾

ニオブおよびニオブの合金は、生理学的に不活性でアレルギーをおこしにくい。このため、人工装具や心臓ペースメーカーのような埋め込みデバイスに用いられる[92]水酸化ナトリウムで処理したニオブは多孔質層を形成し、オッセオインテグレーション(骨と金属の接合)に資する[93]

チタン、タンタル、アルミニウムなどと同様に、ニオブは熱して陽極酸化処理をすることができ、多彩な玉虫色を呈して宝飾用にすることができ[94][95]、アレルギーを起こしにくい性質はこの点でも好ましいものとなっている[96]

貨幣

ニオブは記念硬貨において、銀や金などとともに貴金属として利用される。たとえば、オーストリアは銀とニオブのユーロ硬貨のシリーズを2003年から開始し、その色は陽極酸化処理による薄い酸化層が光を回析して呈したものである[97]。2012年には、硬貨の中央に青、緑、茶、紫、黄など様々な色を呈する10種類の硬貨が入手可能であった。さらに、2004年のオーストリアの25ユーロゼメリング鉄道150周年記念硬貨[98]、2006年のオーストリアの25ユーロヨーロッパ測位衛星(ガリレオ)記念硬貨がある[99]。オーストリアの造幣局は2004年開始の同様の硬貨シリーズをラトビア向けに製造しており[100]、2007年にも1種類発行した[101]。2011年にはカナダ造幣局が5ドルのスターリングシルバーとニオブの「ハンターズ・ムーン」という名前の硬貨を製造開始し[102]、ニオブは選択的に酸化されているため、同じ硬貨が2つとないような独特の仕上げとなっている。

その他

ナトリウムランプの高圧発光管の密封材はニオブで作られており、場合によっては1パーセントのジルコニウムを含んだ合金となっている。発光管は、動作中のランプ内に含まれる熱い液体ナトリウムや気体ナトリウムによる化学的な反応や還元に耐えられる半透明材料となる、焼結されたアルミナのセラミックスで作られ、ニオブはこれと非常によく似た熱膨張係数を持っている[103][104][105]

ニオブは、ある種の安定化ステンレス鋼に対するアーク溶接用の溶接棒として使われ[106]、またある種の水タンクにおけるカソード防蝕システムの陽極側に用いられる。この際、タンクは通常白金でメッキされる[107][108]

ニオブは、プロパンの選択的酸化によりアクリル酸を生産する際に用いられる、高性能で不均一な触媒の重要な構成要素となる[109][110][111][112]

太陽探査機のパーカー・ソーラー・プローブコロナ微粒子捕獲モジュールの高電圧ワイヤを作成するためにニオブが用いられている[113]

人体への影響

ニオブ
危険性
GHSシグナルワード Not listed as hazardous[114]
NFPA 704
0
0
0
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ニオブには生物学的な役割が見つかっていない。ニオブの細粉は目や肌に対する刺激物であり、また火災の危険もあるが、より大きなサイズの元素としてのニオブは生理学的に不活性であり(そのためアレルギー的にも低刺激であり)、無害である。宝飾品によく用いられ、またある種の医学用の埋め込み物(インプラント)の製作にも試験されてきた[115][116]

多くの人にとって、ニオブを含む化合物に接することはまれであるが、毒性のあるものもあり注意して取り扱う必要がある。水溶性の化学物質であるニオブ酸塩や塩化ニオブについて、短期および長期の暴露がラットで実験されている。塩化ニオブまたはニオブ酸塩を単回投与されたラットの半数致死量 (LD50) は10 - 100 mg/kgであった[117][118][119]。経口投与では毒性はより弱く、ラットに対する実験では7日経過後のLD50は940 mg/kgであった[117]

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関連項目

外部リンク