「エストニア語」の版間の差分
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{{出典の明記|date=2015年2月19日 (木) 13:39 (UTC)}} |
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{{Infobox Language |
{{Infobox Language |
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|name=エストニア語 |
|name=エストニア語 |
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|fam2=[[フィン・ウゴル語派]] |
|fam2=[[フィン・ウゴル語派]] |
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|fam3=[[バルト・フィン諸語]] |
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|script=[[ラテン文字]] |
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|nation={{EST}}<br />{{EUR}} |
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|agency={{仮リンク|エストニア語言語研究所|label=Eesti Keele Instituut|en|Institute of the Estonian Language}} |
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|vitality=危険 |
|vitality=危険 |
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}} |
}} |
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'''エストニア語'''(エストニアご、eesti |
'''エストニア語'''(エストニアご、{{lang|et|eesti keel}} {{IPA-et|ˈeːsti ˈkeːl||et-eesti keel.ogg}})は、[[ウラル語族]]・[[フィン・ウゴル語派]]・[[バルト・フィン諸語]]に属する[[言語]]。話者は約110万人で、[[エストニア]]の主要言語であり、また[[公用語]]となっている。[[フィンランド語]]に近く、[[ハンガリー語]]とも系統を同じくする。 |
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南エストニア方言と[[タリン]]周辺で使われる北エストニア方言の2つの方言があり、うち後者が現在の[[標準語]]の元となっている。 |
南エストニア方言と[[タリン]]周辺で使われる北エストニア方言の2つの方言があり、うち後者が現在の[[標準語]]の元となっている。 |
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==概要== |
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[[18世紀]]の初めから[[1918年]]に至るまでエストニアは[[ロシア帝国]]の支配下にあり、約20年後再び[[ソ連]]に併合され、[[1991年]]に再び独立したが、エストニア語にはロシア語の影響があまりない。むしろ、[[フィンランド語]]や[[ドイツ語]]のほうが密接に関わりを持っている<ref name="松村、宮野(2012)p.12">[[#松村、宮野(2012)|松村、宮野(2012)]]p.12</ref>。 |
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フィンランド語とエストニア語は同じ[[ウラル語族]]に属しており、語彙の面でも文法の面でも共通点が多い。また、ドイツ語との関係は[[中国語]]と[[日本語]]の関係に似ており、長期にわたってドイツ語やその一方言[[低地ドイツ語]]から影響を受けてきた。その証拠として、[[エストニア共和国]]の首都[[タリン]]には低地ドイツ語で書かれた歴史文書が大量に保管されている<ref name="松村、宮野(2012)p.12">[[#松村、宮野(2012)|松村、宮野(2012)]]p.12</ref>。 |
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== ドイツ語の影響 == |
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他の[[バルト三国|バルト諸国]]同様、エストニアには[[ドイツ人|ドイツ系]]移民が多く、このためエストニア語は語彙および統語法の両面で[[ドイツ語]]の影響を強く受けている。言語形態論的には、ウラル語族に多い[[膠着語]]からインド・ヨーロッパ語族に多い[[屈折語]]([[総合的言語]])への移行形態を見せている。informatsioonやkontsertなどドイツ語と発音が似ている単語もちょくちょく見受けられる。 |
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== |
== 歴史 == |
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エストニア語が文字を使って書かれ始めたのは[[1520年代]]以降だが、当時はキリスト教の教会に住んでいたドイツ人がエストニア人に布教するために使われたもので、実際に使われていたエストニア語とはかけ離れたものだったという<ref name="松村、宮野(2012)p.13">[[#松村、宮野(2012)|松村、宮野(2012)]]p.13</ref>。また、1739年にはエストニア語で書かれた聖書の全訳が出た。 |
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[[名詞]]に性はないが、単数と複数の[[数 (文法)|数]]をもち、また14の[[格変化]]を有する。[[形容詞]]は名詞同様に数および格変化を有する。[[対格]]を持たず、直接[[目的語]]は[[属格]]あるいは[[分格]]によって表す。直接目的語は否定文においてはつねに分格となる。肯定文におけるこの区別は[[動詞]]の[[相 (文法)|相]]における[[完了相]]と不完了相の対立におおまかに対応しており一般に可算である個体に対しては属格、非可算な非個体に対しては分格を用いる。また動詞の不定詞は2つあり-ma不定詞と-taまたは-da不定詞が存在する。 |
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19世紀に入るころには徐々にエストニア人にも読み書きのできる人々が学校教育の普及によって増え始め、そのころから新聞や小説などが出るようになった<ref name="松村、宮野(2012)p.13">[[#松村、宮野(2012)|松村、宮野(2012)]]p.13</ref>。独立直後の憲法制定会議の議事録はすでに現代のエストニア語とほぼ変わらないものだという。その後、ソ連時代を経て、現在に至る。 |
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[[母音]]の長短には短・長・超長母音の三段階の変化がある。ウラル語族の特徴である[[母音調和]]は現在は消失している。 |
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表記には[[ラテン文字]]を用いる。ただし c, f, q, w, x, y は外国語由来の語にのみ用いられる。エストニア語独自の文字としては、š, ž, ä, ö, ü, õ がある。ä 、ö、 üはドイツ語と同じでそれぞれのaとe、oとe、uとeの中間の音となり õ は非円唇の o である。 基本的にローマ字読みが可能だがエストニア語においてTとDはタ行、PとBはパ行、KとGはカ行で発音される。 |
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(例としてkaardiとkaartiはそれぞれkaartの属格形と分格形で綴りは若干違うが発音は同じである) |
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他の[[バルト三国|バルト諸国]]同様、エストニアには[[ドイツ人|ドイツ系]]移民が多く、このためエストニア語は語彙および統語法の両面で[[ドイツ語]]の影響を強く受けている。言語形態論的には、ウラル語族に多い[[膠着語]]からインド・ヨーロッパ語族に多い[[屈折語]]([[総合的言語]])への移行形態を見せている。informatsioonやkontsertなどドイツ語と発音が似ている単語もちょくちょく見受けられる。 |
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また母音に挟まれた無声音T、K、Pは促音になるのが特徴で更に長母音の後にこの促音がくると超長母音となる。 |
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== 文字 == |
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<促音> |
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表記には[[ラテン文字]]を用いる。ただし c, f, q, w, x, y, z, š, žは外国語由来の語にのみ用いられる<ref name="松村(1999)i頁">[[#松村(1999)|松村(1999)]]p.i</ref>。また、c, q, w, x, yは言語のつづりのまま表記される場合のみ、f, z, š, žは比較的新しい外来語に用いられる<ref name="松村(1999)i頁">[[#松村(1999)|松村(1999)]]p.i</ref>。 |
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エストニア語独自の文字としては、š, ž, ä, ö, ü, õ がある。ä 、ö、 üはドイツ語と同じでそれぞれのaとe、oとe、uとeの中間の音となり õ は非円唇の o である。 基本的にローマ字読みが可能である。 |
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lõpetama (ルッペッタマ)終わる |
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{{エストニア語アルファベット}} |
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==音韻== |
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===母音=== |
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[[File:Estonian vowel chart.svg|thumb|エストニア語の母音]] |
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{| class="wikitable" |
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! rowspan="2" | |
|||
! colspan="2" |[[前舌母音|前舌]] |
|||
! colspan="2" |[[後舌母音|後舌]] |
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|- |
|||
|[[非円唇母音|非円唇]] |
|||
|[[円唇母音|円唇]] |
|||
|[[非円唇母音|非円唇]] |
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|[[円唇母音|円唇]] |
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|- |
|||
|[[狭母音|狭]] |
|||
|[[i]]/{{IPA link|i}}/ |
|||
|[[ü]]/{{IPA link|y}}/ |
|||
| rowspan="2" | [[õ]]/{{IPA link|ɤ}}/ |
|||
|[[u]]/{{IPA link|u}}/ |
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|- |
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|[[中央母音|中央]] |
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|[[e]]/{{IPA link|e}}/ |
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|[[ö]]/{{IPA link|ø}}/ |
|||
|[[o]]/{{IPA link|o}}/ |
|||
|- |
|||
|[[広母音|広]] |
|||
|[[ä]]/{{IPA link|æ}}/ |
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| |
|||
|[[a]]/{{IPA link|ɑ}}/ |
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| |
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|} |
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以下の母音は[[日本語の音韻|日本語]]にないため、注意が必要である。 |
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:uは、英語のb''oo''kの''oo''の音。[[円唇母音|唇を丸く]]して発音。 |
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:äは、英語のc''a''tの''a''の音。 |
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:öは、舌を/e/の形にして唇を丸めたもの。 |
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:õは、日本語の[[う]]の音に近い。(但し、同じではない。) |
|||
:üは、[[ドイツ語#音韻|ドイツ語]]のü。/i/の舌の形で舌を丸めたもの。 |
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詳しい発音や、音声データはそれぞれの項目を参照。 |
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====長短==== |
|||
[[母音]]の長短には短・長・超長母音の三段階の変化がある<ref name="松村(1999)iv頁">[[#松村(1999)|松村(1999)]]p.iv</ref>。また、ウラル語族の特徴である[[母音調和]]は現在は消失している。 |
|||
===子音=== |
|||
näitus (ナェイットゥス) 展示 |
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{| class="wikitable" style=text-align:center |
|||
|+ エストニア語の子音 |
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! rowspan=2 colspan=2| |
|||
! rowspan=2| [[唇音|唇]] |
|||
! colspan=2| [[歯茎音|歯茎]] |
|||
! rowspan=2| [[後部歯茎音|後部歯茎]] |
|||
! rowspan=2| [[舌背音|舌背]] |
|||
! rowspan=2| [[声門音|声門]] |
|||
|- |
|||
! <small>通常</small> |
|||
! <small>[[口蓋音|口蓋]]<small> |
|||
|- |
|||
! colspan=2| [[鼻音|鼻]] |
|||
| {{IPA link|m}} |
|||
| {{IPA link|n}} |
|||
| {{IPA|nʲ}} |
|||
| |
|||
| |
|||
| |
|||
|- |
|||
! rowspan=2| [[破裂音|破裂]] |
|||
! {{small|短}} |
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| {{IPA link|p}} |
|||
| {{IPA link|t}} |
|||
| {{IPA|tʲ}} |
|||
| |
|||
| {{IPA link|k}} |
|||
| |
|||
|- |
|||
! {{small|[[長子音]]}} |
|||
| {{IPA|pː}} |
|||
| {{IPA|tː}} |
|||
| {{IPA|tʲː}} |
|||
| |
|||
| {{IPA|kː}} |
|||
| |
|||
|- |
|||
! rowspan=3| [[摩擦音|摩擦]] |
|||
! {{small|無声短}} |
|||
| {{IPA link|f}} |
|||
| {{IPA link|s}} |
|||
| {{IPA|sʲ}} |
|||
| {{IPA link|ʃ}} |
|||
| |
|||
| rowspan=2| {{IPA|h}} |
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|- |
|||
! {{small|有声短}} |
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| {{IPA link|v}} |
|||
| |
|||
| |
|||
| |
|||
| |
|||
|- |
|||
! {{small|[[長子音]]}} |
|||
| {{IPA|fː}} |
|||
| {{IPA|sː}} |
|||
| {{IPA|sʲː}} |
|||
| {{IPA|ʃː}} |
|||
| |
|||
| {{IPA|hː}} |
|||
|- |
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! colspan=2| [[接近音|接近]] |
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| |
|||
| {{IPA link|l}} |
|||
| {{IPA|lʲ}} |
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| |
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| {{IPA link|j}} |
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| |
|||
|- |
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! colspan=2| [[ふるえ音|震え]] |
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| |
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| {{IPA link|r}} |
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| |
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| |
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| |
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| |
|||
|} |
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b, d, gと p, t, kはそれぞれ同じp, t, kの音をあらわす。例)[[wikt:en:paar|paar]]-[[wikt:en:baar|baar]]「対、組」-「バー(酒場)」<ref name="松村、宮野(2012)p.18">[[#松村、宮野(2012)|松村、宮野(2012)]]p.18</ref>。但し、母音にはさまれている場合は、p, t, kは「長い」p, t, kとなる。(日本語の「坂(さか)」と「作家(さっか)」に近い。) |
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語頭のhは読まない話し手も多い。また、šとžはともに{{IPA|ʃː}}(無声後部歯茎摩擦音、英語の''sh'')をあらわし、šは「長く」、žは「短く」発音する(pとbの違いと同じ)<ref name="松村(1999)iii頁">[[#松村(1999)|松村(1999)]]p.iii</ref>。 |
|||
pääsuke (パェースッケ) 燕 |
|||
また、jは[[ドイツ語]]などと同様に/{{IPA link|j}}/をあらわす(ヤ行の音)<ref name="松村(1999)iv頁">[[#松村(1999)|松村(1999)]]p.iv</ref>。 |
|||
===例=== |
|||
<促音> |
|||
*[[wikt:en:lõpetama|lõpetama]] (ルッペッタマ)終わる |
|||
*[[wikt:en:näitus|näitus]] (ナェイットゥス) 展示 |
|||
*[[wikt:en:pääsuke|pääsuke]] (パェースッケ) 燕 |
|||
<超長母音> |
<超長母音> |
||
*[[wikt:en:vaatama|vaatama]] (ヴァーッタマ)見る |
|||
*[[wikt:en:rääkima|rääkima]] (ラェーッキマ)話す |
|||
*[[wikt:en:Euroopa|Euroopa]](エウローッパ)ヨーロッパ |
|||
*[[wikt:en:vaate|vaate]](ヴァーッテ) ←[[wikt:en:vaade|vaade]](ヴァーテ)の属格形 |
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==文法== |
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{{main|{{仮リンク|エストニア語の文法|en|Estonian Grammar}}}} |
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[[名詞]]に[[性 (文法)|性]]はないが、単数と複数の[[数 (文法)|数]]をもち、また14の[[格変化]]を有する。[[形容詞]]は名詞同様に数および格変化を有する。[[対格]]を持たず、直接[[目的語]]は[[属格]]あるいは{{仮リンク|分格|en|Partitive case}}によって表す。直接目的語は否定文においてはつねに分格となる。肯定文におけるこの区別は[[動詞]]の[[相 (文法)|相]]における[[完了相]]と不完了相の対立におおまかに対応しており一般に可算である個体に対しては属格、非可算な非個体に対しては分格を用いる。また動詞の不定詞は2つあり-ma不定詞と-taまたは-da不定詞が存在する。 |
|||
===名詞=== |
|||
====格変化==== |
|||
エストニア語の名詞はさまざまな[[格変化]]をする。また、[[属格]]は必ず終わりが[[母音]]で、{{仮リンク|分格|en|Partitive case}}は終わりが母音、若しくは[[子音]]のt,dである<ref name="松村、宮野(2012)p.43">[[#松村、宮野(2012)|松村、宮野(2012)]]p.43</ref>。 |
|||
単数[[属格]]形に-dをつけることで複数主格形をあらわす<ref name="松村、宮野(2012)p.44">[[#松村、宮野(2012)|松村、宮野(2012)]]p.44</ref>。 |
|||
vaatama (ヴァーッタマ)見る |
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また、場所をあらわす格は六種類ある。詳細は以下の表を参照。 |
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rääkima (ラェーッキマ)話す |
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{| class="wikitable" |
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|+ 場所格の変化 |
|||
! !! 中 !! 上 |
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|- |
|||
! ~で |
|||
| -s([[内格]]) || -l({{仮リンク|接格|en|Adessive case}}) |
|||
|- |
|||
! ~へ |
|||
| -sse([[入格]]) || -le({{仮リンク|向格|en|Allative case}}) |
|||
|- |
|||
! ~から |
|||
| -st([[出格]]) || -lt([[奪格]]) |
|||
|} |
|||
ただし、「中」、「上」というのはあくまで目安のようなものである。また、以上の語尾は全て単数属格形につける<ref name="松村、宮野(2012)p.56">[[#松村、宮野(2012)|松村、宮野(2012)]]p.56</ref>。 |
|||
====人称代名詞==== |
|||
{| class="wikitable" |
|||
|+ 人称代名詞<ref name="松村、宮野(2012)p.46">[[#松村、宮野(2012)|松村、宮野(2012)]]p.46</ref> |
|||
! !! 単数 !! 複数 |
|||
|- |
|||
! 1人称 |
|||
| mina(ma) || meie(me) |
|||
|- |
|||
! 2人称 |
|||
| sina(sa) || teie(te) |
|||
|- |
|||
! 3人称 |
|||
| tema(ta) || nemad(nad) |
|||
|} |
|||
カッコ内は強勢のない短形と呼ばれる形。対し、入っていないものを長形という。また、英語やドイツ語のように3人称に男女の区別はない。 |
|||
===動詞=== |
|||
動詞の-maで終わる形を不定詞という。-maを取り除いた形を不定詞語幹という<ref name="松村、宮野(2012)p.46">[[#松村、宮野(2012)|松村、宮野(2012)]]p.46</ref>。 |
|||
エストニア語は主語の人称によって動詞が変化する。ここでは、動詞[[wikt:elama|elama]](生きている、住んでいる)を例に挙げる。 |
|||
Euroopa(エウローッパ)ヨーロッパ |
|||
{| class="wikitable" |
|||
|+ 動詞の活用(直接法現在)<ref name="松村(1999)10頁">[[#松村(1999)|松村(1999)]]p.10</ref> |
|||
! !! 単数 !! 複数 |
|||
|- |
|||
! 1人称 |
|||
| ela-n || ela-me |
|||
|- |
|||
! 2人称 |
|||
| ela-d || ela-te |
|||
|- |
|||
! 3人称 |
|||
| ela-b || ela-nad |
|||
|} |
|||
不定詞語幹に「-」以下の部分をつけると、文が成立する。また、エストニア語の現在形は非過去をあらわすため、未来のこともあらわす<ref name="松村(1999)11頁">[[#松村(1999)|松村(1999)]]p.11</ref>。 |
|||
エストニア語の英語で言うbe動詞に当たるもの([[コピュラ]])はエストニア語では[[wikt:olema|olema]]という。olemaは不規則動詞で、動詞の規則に当てはまらない<ref name="松村、宮野(2012)p.46">[[#松村、宮野(2012)|松村、宮野(2012)]]p.46</ref>。 |
|||
{| class="wikitable" |
|||
|+ olemaの活用(直接法現在) |
|||
! !! 単数 !! 複数 |
|||
|- |
|||
! 1人称 |
|||
| ole-n || ole-me |
|||
|- |
|||
! 2人称 |
|||
| ole-d || ole-te |
|||
|- |
|||
! 3人称 |
|||
| on || on |
|||
|} |
|||
また、否定形を作る際は否定の小詞「[[wikt:en:ei#Estonian|ei]]」を動詞の前に置く。例)Ma olen eestlane. → Ma '''ei ole''' eestlane.(私はエストニア人です→私はエストニア人ではありません<ref name="松村、宮野(2012)p.47">[[#松村、宮野(2012)|松村、宮野(2012)]]p.47</ref>。) |
|||
但し、ei oleに限っては、特殊な否定形[[wikt:en:pole|pole]]を代わりに使用することもある<ref name="松村、宮野(2012)p.47">[[#松村、宮野(2012)|松村、宮野(2012)]]p.47</ref>。 |
|||
vaate(ヴァーッテ) ←vaade(ヴァーテ)の属格形 |
|||
現存するエストニア語の最古のテキストは、手稿、印刷稿とも16世紀前半に書かれたものである。エストニア語の文章語はこの時期から確立していった。当初はドイツ人ルター派宣教者が主なエストニア語文章化の担い手であり、当初使われた表記は[[低地ドイツ語]]の影響を強く受けたものであった。しかし[[フィンランド語|フィン語]]の影響を受けた新しい表記法が次第に使われるようになり、19世紀には後者が優位を占めるようになった。現在の正書法は後者に由来する。 |
|||
{{エストニア語アルファベット}} |
|||
{| class="wikitable" |
|||
|+ 動詞の活用(直接法過去)<ref name="松村(1999)27頁">[[#松村(1999)|松村(1999)]]p.27</ref> |
|||
! !! 単数 !! 複数 |
|||
|- |
|||
! 1人称 |
|||
| ela-si-n || ela-si-me |
|||
|- |
|||
! 2人称 |
|||
| ela-si-d || ela-si-te |
|||
|- |
|||
! 3人称 |
|||
| ela-s || ela-si-'''d''' |
|||
|} |
|||
以上のように、elamaという動詞は人称語尾の直前に-si-をつけている。これはエストニア語の動詞の多くが持つ特徴である<ref name="松村(1999)27頁">[[#松村(1999)|松村(1999)]]p.27</ref>。(但し、olemaはsiの代わりにiを使う。) |
|||
==脚注== |
==脚注== |
||
{{脚注ヘルプ}} |
{{脚注ヘルプ}} |
||
{{Reflist}} |
{{Reflist}} |
||
==参考文献== |
|||
ウェブ |
|||
*{{Cite book |author=松村一登 |authorlink=松村一登 |coauthors= |year=1999 |title=エストニア語文法 |location= |publisher= |language=日本語 |page= |id= |isbn= |quote= |url=http://sipsik.world.coocan.jp/download/opik_pdf/Opik99_2005.pdf#search=%27%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%8B%E3%82%A2%E8%AA%9E+%E6%96%87%E6%B3%95%27 |ref=松村(1999)}} |
|||
書籍 |
|||
*{{Cite book |和書 |author=松村一登 |author2=宮野恵理 |authorlink=松村一登 |authorlink2=宮野恵理 |coauthors= |translator= |year=2012 |title=まずはこれだけエストニア語 |publisher=国際語学社 |page= |id= |isbn=978-4-87731-625-9 |quote= |ref=松村、宮野(2012)}} |
|||
==関連項目== |
==関連項目== |
||
70行目: | 279行目: | ||
== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
||
{{Wikipedia|et}} |
{{Wikipedia|et}} |
||
{{Wikibooks}} |
|||
* [http://homepage2.nifty.com/kmatsum/ エストニアとエストニア語のページ] |
* [http://homepage2.nifty.com/kmatsum/ エストニアとエストニア語のページ] |
||
* [http://www.panglosskool.eu/index.php?id=23 "Eesti keel ja meel (エストニア: 語と文化)"] (Audiovisual computerized course in Estonian for intermediate students. Languages of instruction: English, German, Dutch, French, Italian, Romanian, Russian, Greek, and Hungarian.) ISBN 9789985979457 |
* [http://www.panglosskool.eu/index.php?id=23 "Eesti keel ja meel (エストニア: 語と文化)"] (Audiovisual computerized course in Estonian for intermediate students. Languages of instruction: English, German, Dutch, French, Italian, Romanian, Russian, Greek, and Hungarian.) ISBN 9789985979457 |
2018年4月17日 (火) 16:32時点における版
エストニア語 | |
---|---|
eesti keel | |
話される国 |
エストニア ラトビア ロシア |
地域 | 北ヨーロッパ |
話者数 | 110万人 |
言語系統 | |
表記体系 | ラテン文字 |
公的地位 | |
公用語 |
エストニア 欧州連合 |
統制機関 | Eesti Keele Instituut |
言語コード | |
ISO 639-1 |
et |
ISO 639-2 |
est |
ISO 639-3 |
est – マクロランゲージ個別コード: ekk — 標準エストニア語vro — ヴォロ語 |
消滅危険度評価 | |
Definitely endangered (Moseley 2010) |
エストニア語(エストニアご、eesti keel [ˈeːsti ˈkeːl] ( 音声ファイル))は、ウラル語族・フィン・ウゴル語派・バルト・フィン諸語に属する言語。話者は約110万人で、エストニアの主要言語であり、また公用語となっている。フィンランド語に近く、ハンガリー語とも系統を同じくする。
南エストニア方言とタリン周辺で使われる北エストニア方言の2つの方言があり、うち後者が現在の標準語の元となっている。
概要
18世紀の初めから1918年に至るまでエストニアはロシア帝国の支配下にあり、約20年後再びソ連に併合され、1991年に再び独立したが、エストニア語にはロシア語の影響があまりない。むしろ、フィンランド語やドイツ語のほうが密接に関わりを持っている[1]。
フィンランド語とエストニア語は同じウラル語族に属しており、語彙の面でも文法の面でも共通点が多い。また、ドイツ語との関係は中国語と日本語の関係に似ており、長期にわたってドイツ語やその一方言低地ドイツ語から影響を受けてきた。その証拠として、エストニア共和国の首都タリンには低地ドイツ語で書かれた歴史文書が大量に保管されている[1]。
歴史
エストニア語が文字を使って書かれ始めたのは1520年代以降だが、当時はキリスト教の教会に住んでいたドイツ人がエストニア人に布教するために使われたもので、実際に使われていたエストニア語とはかけ離れたものだったという[2]。また、1739年にはエストニア語で書かれた聖書の全訳が出た。
19世紀に入るころには徐々にエストニア人にも読み書きのできる人々が学校教育の普及によって増え始め、そのころから新聞や小説などが出るようになった[2]。独立直後の憲法制定会議の議事録はすでに現代のエストニア語とほぼ変わらないものだという。その後、ソ連時代を経て、現在に至る。
他のバルト諸国同様、エストニアにはドイツ系移民が多く、このためエストニア語は語彙および統語法の両面でドイツ語の影響を強く受けている。言語形態論的には、ウラル語族に多い膠着語からインド・ヨーロッパ語族に多い屈折語(総合的言語)への移行形態を見せている。informatsioonやkontsertなどドイツ語と発音が似ている単語もちょくちょく見受けられる。
文字
表記にはラテン文字を用いる。ただし c, f, q, w, x, y, z, š, žは外国語由来の語にのみ用いられる[3]。また、c, q, w, x, yは言語のつづりのまま表記される場合のみ、f, z, š, žは比較的新しい外来語に用いられる[3]。
エストニア語独自の文字としては、š, ž, ä, ö, ü, õ がある。ä 、ö、 üはドイツ語と同じでそれぞれのaとe、oとe、uとeの中間の音となり õ は非円唇の o である。 基本的にローマ字読みが可能である。
A | B | D | E | F | G | H | I | J | K | L | M | N | O | P | R | S | Š | Z | Ž | T | U | V | Õ | Ä | Ö | Ü |
a | b | d | e | f | g | h | i | j | k | l | m | n | o | p | r | s | š | z | ž | t | u | v | õ | ä | ö | ü |
音韻
母音
前舌 | 後舌 | |||
---|---|---|---|---|
非円唇 | 円唇 | 非円唇 | 円唇 | |
狭 | i/i/ | ü/y/ | õ/ɤ/ | u/u/ |
中央 | e/e/ | ö/ø/ | o/o/ | |
広 | ä/æ/ | a/ɑ/ |
以下の母音は日本語にないため、注意が必要である。
- uは、英語のbookのooの音。唇を丸くして発音。
- äは、英語のcatのaの音。
- öは、舌を/e/の形にして唇を丸めたもの。
- õは、日本語のうの音に近い。(但し、同じではない。)
- üは、ドイツ語のü。/i/の舌の形で舌を丸めたもの。
詳しい発音や、音声データはそれぞれの項目を参照。
長短
母音の長短には短・長・超長母音の三段階の変化がある[4]。また、ウラル語族の特徴である母音調和は現在は消失している。
子音
唇 | 歯茎 | 後部歯茎 | 舌背 | 声門 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
通常 | 口蓋 | ||||||
鼻 | m | n | [nʲ] | ||||
破裂 | 短 | p | t | [tʲ] | k | ||
長子音 | [pː] | [tː] | [tʲː] | [kː] | |||
摩擦 | 無声短 | f | s | [sʲ] | ʃ | [h] | |
有声短 | v | ||||||
長子音 | [fː] | [sː] | [sʲː] | [ʃː] | [hː] | ||
接近 | l | [lʲ] | j | ||||
震え | r |
b, d, gと p, t, kはそれぞれ同じp, t, kの音をあらわす。例)paar-baar「対、組」-「バー(酒場)」[5]。但し、母音にはさまれている場合は、p, t, kは「長い」p, t, kとなる。(日本語の「坂(さか)」と「作家(さっか)」に近い。)
語頭のhは読まない話し手も多い。また、šとžはともに[ʃː](無声後部歯茎摩擦音、英語のsh)をあらわし、šは「長く」、žは「短く」発音する(pとbの違いと同じ)[6]。
また、jはドイツ語などと同様に/j/をあらわす(ヤ行の音)[4]。
例
<促音>
<超長母音>
文法
名詞に性はないが、単数と複数の数をもち、また14の格変化を有する。形容詞は名詞同様に数および格変化を有する。対格を持たず、直接目的語は属格あるいは分格によって表す。直接目的語は否定文においてはつねに分格となる。肯定文におけるこの区別は動詞の相における完了相と不完了相の対立におおまかに対応しており一般に可算である個体に対しては属格、非可算な非個体に対しては分格を用いる。また動詞の不定詞は2つあり-ma不定詞と-taまたは-da不定詞が存在する。
名詞
格変化
エストニア語の名詞はさまざまな格変化をする。また、属格は必ず終わりが母音で、分格は終わりが母音、若しくは子音のt,dである[7]。
また、場所をあらわす格は六種類ある。詳細は以下の表を参照。
中 | 上 | |
---|---|---|
~で | -s(内格) | -l(接格) |
~へ | -sse(入格) | -le(向格) |
~から | -st(出格) | -lt(奪格) |
ただし、「中」、「上」というのはあくまで目安のようなものである。また、以上の語尾は全て単数属格形につける[9]。
人称代名詞
単数 | 複数 | |
---|---|---|
1人称 | mina(ma) | meie(me) |
2人称 | sina(sa) | teie(te) |
3人称 | tema(ta) | nemad(nad) |
カッコ内は強勢のない短形と呼ばれる形。対し、入っていないものを長形という。また、英語やドイツ語のように3人称に男女の区別はない。
動詞
動詞の-maで終わる形を不定詞という。-maを取り除いた形を不定詞語幹という[10]。
エストニア語は主語の人称によって動詞が変化する。ここでは、動詞elama(生きている、住んでいる)を例に挙げる。
単数 | 複数 | |
---|---|---|
1人称 | ela-n | ela-me |
2人称 | ela-d | ela-te |
3人称 | ela-b | ela-nad |
不定詞語幹に「-」以下の部分をつけると、文が成立する。また、エストニア語の現在形は非過去をあらわすため、未来のこともあらわす[12]。 エストニア語の英語で言うbe動詞に当たるもの(コピュラ)はエストニア語ではolemaという。olemaは不規則動詞で、動詞の規則に当てはまらない[10]。
単数 | 複数 | |
---|---|---|
1人称 | ole-n | ole-me |
2人称 | ole-d | ole-te |
3人称 | on | on |
また、否定形を作る際は否定の小詞「ei」を動詞の前に置く。例)Ma olen eestlane. → Ma ei ole eestlane.(私はエストニア人です→私はエストニア人ではありません[13]。)
但し、ei oleに限っては、特殊な否定形poleを代わりに使用することもある[13]。
単数 | 複数 | |
---|---|---|
1人称 | ela-si-n | ela-si-me |
2人称 | ela-si-d | ela-si-te |
3人称 | ela-s | ela-si-d |
以上のように、elamaという動詞は人称語尾の直前に-si-をつけている。これはエストニア語の動詞の多くが持つ特徴である[14]。(但し、olemaはsiの代わりにiを使う。)
脚注
- ^ a b 松村、宮野(2012)p.12
- ^ a b 松村、宮野(2012)p.13
- ^ a b 松村(1999)p.i
- ^ a b 松村(1999)p.iv
- ^ 松村、宮野(2012)p.18
- ^ 松村(1999)p.iii
- ^ 松村、宮野(2012)p.43
- ^ 松村、宮野(2012)p.44
- ^ 松村、宮野(2012)p.56
- ^ a b c 松村、宮野(2012)p.46
- ^ 松村(1999)p.10
- ^ 松村(1999)p.11
- ^ a b 松村、宮野(2012)p.47
- ^ a b 松村(1999)p.27
参考文献
ウェブ
書籍
- 松村一登、宮野恵理『まずはこれだけエストニア語』国際語学社、2012年。ISBN 978-4-87731-625-9。
関連項目
外部リンク
- エストニアとエストニア語のページ
- "Eesti keel ja meel (エストニア: 語と文化)" (Audiovisual computerized course in Estonian for intermediate students. Languages of instruction: English, German, Dutch, French, Italian, Romanian, Russian, Greek, and Hungarian.) ISBN 9789985979457