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=== その他カンナビノイド作用物質 === |
=== その他カンナビノイド作用物質 === |
2016年10月4日 (火) 05:26時点における版
カンナビノイド(英語: Cannabinoid)は、大麻に含まれる化学物質の総称である。
60種類を超える成分が大麻草特有のものとして分離されており、主なものに、テトラヒドロカンナビノール (THC)、カンナビノール (CBN)、カンナビクロメン (CBC)、カンナビジオール (CBD)、カンナビエルソイン (CBE)、カンナビゲロール (CBG)、カンナビジバリン (CBDG) などがある。特にTHC、CBN、CBDはカンナビノイドの三大主成分として知られる。なお、陶酔作用がある成分はこの中でもTHCのみとされるが、他のカンナビノイドとの含有比率によって効用には違いが生じる。
カンナビノイドは窒素を含まず、酸素と水素、炭素からなるので、アルカロイドには分類されない。
精神的作用
時間や空間感覚の変調をもたらし、多幸感、鎮痛、幻覚等の精神神経反応を引き起こす。大麻の有効成分であるテトラヒドロカンナビノールは特に強い幻覚作用をもたらす。
生理的作用
カンナビノイド類は、特異的受容体(カンナビノイド受容体)を介して作用する。カンナビノイド受容体としてCB1およびCB2受容体がこれまで同定されている。
医療用途
カンナビノイドは、脳の扁桃体にあるCB1受容体の働きを促進させることにより、恐怖体験などにおいて発症したトラウマの症状を軽減する効果を持ち、PTSDを始めとするトラウマによる疾患を治療するための薬としても使用されることがある。
内因性カンナビノイド
CB受容体の内在性リガンド(脳内マリファナ)として、2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)やパルミトイルエタノールアミド(PEA)などが発見されている。
合成と特許取得済みのカンナビノイド
歴史的に、研究用のカンナビノイドの合成は、しばしば薬草のカンナビノイドの構造を基にしており、そして多くの類似体が製造・実験され、特にロジャー・アダムスのグループは早くも1941年に、その後ラファエル・メコーラムのグループが先導した。新しい化合物はもはや天然のカンナビノイドと関連がないか、あるいは内因性カンナビノイドの構造に基づいている。合成カンナビノイドは、カンナビノイド分子に系統立てた改良を加えることにより、構造とカンナビノイド化合物の活性を決定する実験に特に有用である。
カンナビノイド作用のある医薬品
- ドロナビノール(マリノール)
- Δ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)であり、食欲増進剤、制吐薬、鎮痛剤として用いられる。
- ナビロン(セサメット)
- 合成カンナビノイドとマリノールの類自体である。スケジュールIIであり、マリノールのスケジュールIIIとは異なる。
- ナビキシモルス(サティベックス)
- カンナビノイド抽出物の経口スプレーで、THC、CBD、ほかのカンナビノイドを含有し、神経因性疼痛とけいれんのためにイギリス、カナダ、スペインを含む22カ国で用いられる。サティベックスは植物全体のカンナビノイド薬を開発する。
- リモナバン(SR141716、アコンプリア)
- 選択的CB1受容体逆アゴニストであり、抗肥満薬や禁煙補助薬として用いられる。CB受容体アゴニストが食欲増進することを逆手にとって、内因性カンナビノイドの働きを阻害する医薬品である。しかし、うつ病や自殺未遂の報告が多く、2007年に欧州医薬品庁(EMA)は処方を中止するよう勧告し、アメリカ食品医薬品局(FDA)は治療薬としての許可申請を却下した。英国の有害事象報告(1998〜2011年)では、”うつ病の報告数”と”自殺未遂の割合”がニキビ治療薬イソトレチノインに次いで2番目に多かった。自殺既遂はランク外で目立っていない[1]。
- ミノサイクリン(ミノマイシン)
- JWH-133と同様の神経保護作用が確認され、CB1受容体逆アゴニストのAM-251や[2]、CB2受容体逆アゴニストのAM-630によってその作用は拮抗し[2][3]、エンドカンナビノイドシステム (ECS) の関与が実証された[2][3]。動物研究における自発運動は0.5mg/kgから減少し[4]、カンナビノイド作用の薬剤としては非常に強力である[5]。東大病院では、鎮痛剤として第III相の臨床試験が行われている[6]。海外(EU)では抗精神病薬として第III相の臨床試験が行われている[7][8]。類薬のドキシサイクリンは健常者において異常な体重増加が示されており、発展途上国における栄養失調児の治療として提案されている[9]。
その他カンナビノイド作用物質
- APINACA - 指定薬物
- 俗称 AKB48 で知られるCB1Rのアゴニスト(Ki=304.5nM, EC50=585nM)である。
- ADB-PINACA - 指定薬物
- CB1RとCB2Rの強力なアゴニスト(EC50=0.52nM, 0.88nM)である。自発運動は0.31mg/kgから減少し、麻薬指定の英:JWH-122(0.61mg/kg; Ki=0.69nM, 1.2nM)よりも強力である。
- JWH-018 - 麻薬
- クレムゾン大学のジョン・W・ハフマン博士によって発見された強力な合成カンナビノイドアゴニストである。0.3 - 10mg/kgで徐脈や低体温を引き起こす。「スパイス」の総称で知られる合法的な喫煙ブレンドの中に入りだんだんと販売されている。いくつかの国々や米国ではそれを法律的に禁止しようと動くことになった。日本では麻薬に指定されている。
- JWH-133
- 強力な選択的CB2受容体アゴニスト。米国の一部の州では規制物質法のスケジュール1となっている。日本では法規制されていないため、未承認医薬品の扱いになる。
- AM-2201 - 麻薬
- CB受容体の強力なアゴニスト(Ki=1.0nM, 2.6nM; EC50=38nM, 58nM)である。JWH-018に匹敵する作用がある。日本では麻薬に指定されている。
- WIN 55,212-2
- 強力なCB受容体アゴニストである。
- CP 50,556-1 (Levonantradol)
- THCの約30倍強力とされる。元々は制吐剤や鎮痛剤だが、現在は治療に用いられていない。
- CP 55,940
- 1974年に合成されたCB受容体アゴニストで、THCよりも何倍も強力である。
- HU-210
- THCの約100倍強力[10]とされる。
- HU-331
- トポイソメラーゼIIを特異的に阻害するCBDに由来する潜在的な抗癌剤である。
- SR-144,528
- CB2受容体アンタゴニストである。
- ジメチルヘプチルピラン
- -
規制
2013年(平成25年)2月20日、厚生労働省は幻覚や興奮作用などがある、脱法ドラッグに使われる「合成カンナビノイド類」を指定薬物として包括指定(772物質)する厚生労働省令を公布し、2013年(平成25年)3月22日から施行された[11][12][13][14]。
脚注
- ^ Thomas KH, Martin RM, Potokar J, Pirmohamed M, Gunnell D. (2014-9-30). “Reporting of drug induced depression and fatal and non-fatal suicidal behaviour in the UK from 1998 to 2011.”. BMC Pharmacology and Toxicology. 15 (54). doi:10.1186/2050-6511-15-54. PMC 4184159. PMID 25266008 .
- ^ a b c Lopez-Rodriguez AB, Siopi E, Finn DP, Marchand-Leroux C, Garcia-Segura LM, Jafarian-Tehrani M, Viveros MP. (2013-9). “CB1 and CB2 cannabinoid receptor antagonists prevent minocycline-induced neuroprotection following traumatic brain injury in mice.”. en:Neurology. 25 (1): 35-45. doi:10.1093/cercor/bht202. PMID 23960212 .
- ^ a b Tang J, Chen Q, Guo J, Yang L, Tao Y, Li L, Miao H, Feng H, Chen Z, Zhu G. (2015-4-2). “Minocycline Attenuates Neonatal Germinal-Matrix-Hemorrhage-Induced Neuroinflammation and Brain Edema by Activating Cannabinoid Receptor 2.”. en:Molecular Neurobiology.: 1-14. doi:10.1007/s12035-015-9154-x. PMID 25833102 .
- ^ “医薬品インタビューフォーム(2016年4月改訂 第14版)ミノマイシン” (pdf). www.info.pmda.go.jp. 医薬品医療機器総合機構(PMDA) (2016年4月). 2016年8月18日閲覧。
- ^ Gatch MB, Forster MJ. (2016-5). “Δ(9)-Tetrahydrocannabinol-like effects of novel synthetic cannabinoids in mice and rats.”. Psychopharmacology. 233 (10): 1901-10. doi:10.1007/s00213-016-4237-6. PMID 26875756 .
- ^ “侵害受容性・炎症性疼痛および神経障害性疼痛患者に対するミノサイクリンの鎮痛効果に関するOpen label探索試験”. upload.umin.ac.jp. 東京大学 (2014年2月1日). 2016年5月19日閲覧。
- ^ “The Benefit of Minocycline on Negative Symptoms in Psychosis: Extent and Mechanisms”. clinicaltrialsregister.eu. en:European Medicines Agency (2011年5月11日). 2016年6月18日閲覧。
- ^ Lisiecka DM, Suckling J, Barnes TR, Chaudhry IB, Dazzan P, Husain N, Jones PB, Joyce EM, Lawrie SM, Upthegrove R, Deakin B. (2015-3-2). “The benefit of minocycline on negative symptoms in early-phase psychosis in addition to standard care - extent and mechanism (BeneMin): study protocol for a randomised controlled trial.”. Trials. 16 (1): 71. doi:10.1186/s13063-015-0580-x. PMC 4351843. PMID 25886254 .
- ^ Angelakis E, Million M, Kankoe S, Lagier JC, Armougom F, Giorgi R, Raoult D. (2014-6). “Abnormal weight gain and gut microbiota modifications are side effects of long-term doxycycline and hydroxychloroquine treatment.”. en:Antimicrobial Agents and Chemotherapy. 58 (6): 3342-7. doi:10.1128/AAC.02437-14. PMC 4068504. PMID 24687497 .
- ^ “More medicinal uses for marijuana”. www.marijuana.org (October 18, 2005). 2007年2月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年12月13日閲覧。
- ^ “脱法ドラッグ成分700種以上「違法」に 初の包括指定 厚労省”. msn産経ニュース. (2013年2月20日) 2013年2月20日閲覧。
- ^ "指定薬物を包括指定する省令の公布" (Press release). 厚生労働省. 20 February 2013. 2013年2月20日閲覧。
- ^ 厚生労働省令第十九号2013年2月20日 (PDF)
- ^ cf. s:薬事法第2条第14項に規定する指定薬物及び同法第76条の4に規定する医療等の用途を定める省令
関連項目
外部リンク
- International Association for Cannabinoid Medicines 国際カンナビノイド医療協会(ICAM)
- 日本臨床カンナビノイド学会