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歴史的に、研究用のカンナビノイドの合成は、しばしば薬草のカンナビノイドの構造を基にしており、そして多くの類似体が製造・実験され、特に{{仮リンク|ロジャー・アダムス|en|Roger Adams}}のグループは早くも1941年に、その後{{仮リンク|ラファエル・メコーラム|en|Raphael Mechoulam}}のグループが先導した。新しい化合物はもはや天然のカンナビノイドと関連がないか、あるいは内因性カンナビノイドの構造に基づいている。 |
歴史的に、研究用のカンナビノイドの合成は、しばしば薬草のカンナビノイドの構造を基にしており、そして多くの類似体が製造・実験され、特に{{仮リンク|ロジャー・アダムス|en|Roger Adams}}のグループは早くも1941年に、その後{{仮リンク|ラファエル・メコーラム|en|Raphael Mechoulam}}のグループが先導した。新しい化合物はもはや天然のカンナビノイドと関連がないか、あるいは内因性カンナビノイドの構造に基づいている。合成カンナビノイドは、カンナビノイド分子に系統立てた改良を加えることにより、構造とカンナビノイド化合物の活性を決定する実験に特に有用である。 |
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合成カンナビノイド |
=== 天然<small>または</small>合成カンナビノイドやカンナビノイド類自体を含有する医薬品 === |
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: THCの約100倍強力<ref>{{Cite web |url=http://www.marijuana.org/mydna10-12-05.htm |title=More medicinal uses for marijuana |publisher=www.marijuana.org |date=October 18, 2005|accessdate=2012-12-13 |archiveurl=http://web.archive.org/web/20060207224301/http://www.marijuana.org/mydna10-12-05.htm |archivedate=2007-02-07}}</ref>とされる。 |
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: CB<sub>1</sub>RとCB<sub>2</sub>Rの強力なアゴニストである(EC<sub>50</sub>=0.52nM, 0.88nM)。自発運動は0.31mg/kgから減少し、麻薬指定の[[:en:JWH-122|<small>英</small>:''JWH-122'']](0.61mg/kg; K<sub>i</sub>=0.69nM, 1.2nM)よりも強力である。 |
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2016年9月28日 (水) 12:56時点における版
カンナビノイド (cannabinoid) は大麻に含まれる化学物質の総称である。
60種類を超える成分が大麻草特有のものとして分離されており、主なものに、テトラヒドロカンナビノール (THC)、カンナビノール (CBN)、カンナビクロメン (CBC)、カンナビジオール (CBD)、カンナビエルソイン (CBE)、カンナビゲロール (CBG)、カンナビジバリン (CBDG) などがある。特にTHC、CBN、CBDはカンナビノイドの三大主成分として知られる。なお、陶酔作用がある成分はこの中でもTHCのみとされるが、他のカンナビノイドとの含有比率によって効用には違いが生じる。
カンナビノイドは窒素を含まず、酸素と水素、炭素からなるので、アルカロイドには分類されない。
精神的作用
時間や空間感覚の変調をもたらし、多幸感、鎮痛、幻覚等の精神神経反応を引き起こす。大麻の有効成分であるテトラヒドロカンナビノールは特に強い幻覚作用をもたらす。
生理的作用
カンナビノイド類は、特異的受容体(カンナビノイド受容体)を介して作用する。カンナビノイド受容体としてCB1およびCB2受容体がこれまで同定されている。
医療用途
カンナビノイドは、脳の扁桃体にあるCB1受容体の働きを促進させることにより、恐怖体験などにおいて発症したトラウマの症状を軽減する効果を持ち、PTSDを始めとするトラウマによる疾患を治療するための薬としても使用されることがある。
内因性カンナビノイド
CB受容体の内在性リガンド(脳内マリファナ)として、2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)やパルミトイルエタノールアミド(PEA)などが発見されている。
合成と特許取得済みのカンナビノイド
歴史的に、研究用のカンナビノイドの合成は、しばしば薬草のカンナビノイドの構造を基にしており、そして多くの類似体が製造・実験され、特にロジャー・アダムスのグループは早くも1941年に、その後ラファエル・メコーラムのグループが先導した。新しい化合物はもはや天然のカンナビノイドと関連がないか、あるいは内因性カンナビノイドの構造に基づいている。合成カンナビノイドは、カンナビノイド分子に系統立てた改良を加えることにより、構造とカンナビノイド化合物の活性を決定する実験に特に有用である。
天然または合成カンナビノイドやカンナビノイド類自体を含有する医薬品
- ドロナビノール(マリノール)
- Δ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)であり、食欲増進剤、制吐薬、鎮痛剤として用いられる。
- ナビロン(セサメット)
- 合成カンナビノイドとマリノールの類自体である。スケジュールIIであり、マリノールのスケジュールIIIとは異なる。
- ナビキシモルス(サティベックス)
- カンナビノイド抽出物の経口スプレーで、THC、CBD、ほかのカンナビノイドを含有し、神経因性疼痛とけいれんのためにイギリス、カナダ、スペインを含む22カ国で用いられる。サティベックスは植物全体のカンナビノイド薬を開発する。
- リモナバン(SR141716)
- 選択的CB1受容体逆アゴニストで、アコンプリアの商標名のもと、抗肥満薬として用いられる。また禁煙のために用いられる。上記のようなカンナビノイドがCB受容体を刺激することで食欲を増進することを逆手にとって、内因性カンナビノイドの働きを阻害する医薬品である。ただし、うつ病、自殺といった副作用から、2007年には欧州医薬品庁(EMA)は処方を中止するよう勧告し、アメリカ食品医薬品局(FDA)は治療薬としての許可申請を却下した。
その他の有名な合成カンナビノイド
- JWH-018
- 強力な合成カンナビノイドアゴニストで、クレムゾン大学のジョン・W・ハフマン博士によって発見された。「スパイス」の総称で知られる合法的な喫煙ブレンドの中に入りだんだんと販売されている。いくつかの国々や米国ではそれを法律的に禁止しようと動くことになった。
- CP 50,556-1 (Levonantradol)
- THCの約30倍強力とされる。元々は制吐剤や鎮痛剤だが、現在は治療に用いられていない。
- CP 55,940
- 1974年に合成されたCB受容体アゴニストで、THCよりも何倍も強力である。
- ジメチルヘプチルピラン
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- HU-210
- THCの約100倍強力[1]とされる。
- HU-331
- トポイソメラーゼIIを特異的に阻害するCBDに由来する潜在的な抗癌剤である。
- SR-144,528
- CB2受容体アンタゴニスト
- WIN 55,212-2
- 強力なCB受容体アゴニスト
- JWH-133
- 強力な選択的CB2受容体アゴニスト
- AM-2201
- CB受容体の強力なアゴニストである(Ki=1.0nM, 2.6nM; EC50=38nM, 58nM)。0.3 - 10mg/kgで徐脈や低体温を引き起こし、英:JWH-018に匹敵する。
- APINACA(指定薬物)
- 俗称AKB48で知られるCB1Rのアゴニストである(Ki=304.5nM, EC50=585nM)。
- ADB-PINACA(指定薬物)
- CB1RとCB2Rの強力なアゴニストである(EC50=0.52nM, 0.88nM)。自発運動は0.31mg/kgから減少し、麻薬指定の英:JWH-122(0.61mg/kg; Ki=0.69nM, 1.2nM)よりも強力である。
- ミノサイクリン(半合成抗菌剤)
- JWH-133と同様の神経保護作用が確認され、CB1R逆アゴニストのAM-251や、CB2R逆アゴニストのAM-630によってその作用は拮抗し、エンドカンナビノイドシステム (ECS) の関与が実証された[2][3]。動物研究における自発運動は0.5mg/kgから減少し、カンナビノイド作用の薬剤としては非常に強力であり、指定薬物クラスと同等、麻薬指定の薬剤に匹敵する[4][5]。東大病院で鎮痛剤として臨床試験(第Ⅲ相)が行われている[6]。
規制
2013年(平成25年)2月20日、厚生労働省は幻覚や興奮作用などがある、脱法ドラッグに使われる「合成カンナビノイド類」を指定薬物として包括指定(772物質)する厚生労働省令を公布し、2013年(平成25年)3月22日から施行された[7][8][9][10]。
脚注
- ^ “More medicinal uses for marijuana”. www.marijuana.org (October 18, 2005). 2007年2月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年12月13日閲覧。
- ^ Lopez-Rodriguez AB, Siopi E, Finn DP, Marchand-Leroux C, Garcia-Segura LM, Jafarian-Tehrani M, Viveros MP. (2013-9). “CB1 and CB2 cannabinoid receptor antagonists prevent minocycline-induced neuroprotection following traumatic brain injury in mice.”. en:Neurology. 25 (1): 35-45. doi:10.1093/cercor/bht202. PMID 23960212 .
- ^ Tang J, Chen Q, Guo J, Yang L, Tao Y, Li L, Miao H, Feng H, Chen Z, Zhu G. (2015-4-2). “Minocycline Attenuates Neonatal Germinal-Matrix-Hemorrhage-Induced Neuroinflammation and Brain Edema by Activating Cannabinoid Receptor 2.”. Mol Neurobiol.: 1-14. doi:10.1007/s12035-015-9154-x. PMID 25833102.
- ^ “医薬品インタビューフォーム(2016年4月改訂 第14版)ミノマイシン” (pdf). www.info.pmda.go.jp. 医薬品医療機器総合機構(PMDA) (2016年4月). 2016年8月18日閲覧。
- ^ Gatch MB, Forster MJ. (2016-5). “Δ(9)-Tetrahydrocannabinol-like effects of novel synthetic cannabinoids in mice and rats.”. Psychopharmacology. 233 (10): 1901-10. doi:10.1007/s00213-016-4237-6. PMID 26875756 .
- ^ “侵害受容性・炎症性疼痛および神経障害性疼痛患者に対するミノサイクリンの鎮痛効果に関するOpen label探索試験”. upload.umin.ac.jp. 東京大学 (2014年2月1日). 2016年5月19日閲覧。
- ^ “脱法ドラッグ成分700種以上「違法」に 初の包括指定 厚労省”. msn産経ニュース. (2013年2月20日) 2013年2月20日閲覧。
- ^ "指定薬物を包括指定する省令の公布" (Press release). 厚生労働省. 20 February 2013. 2013年2月20日閲覧。
- ^ 厚生労働省令第十九号2013年2月20日 (PDF)
- ^ cf. s:薬事法第2条第14項に規定する指定薬物及び同法第76条の4に規定する医療等の用途を定める省令
関連項目
外部リンク
- International Association for Cannabinoid Medicines 国際カンナビノイド医療協会(ICAM)
- 日本臨床カンナビノイド学会