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'''抗うつ薬'''(こううつやく、 |
'''抗うつ薬'''(こううつやく、{{lang-en-short|Antidepressant}})とは、典型的には、[[抑うつ]]気分の持続や[[希死念慮]]を特徴とする[[うつ病]]のような[[気分障害]] (MD)に用いられる[[精神科の薬]]である。 |
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[[不安障害]]のうち[[全般性不安障害]]や[[パニック障害]]<ref name=NICECG113 />、[[社交不安障害]] (SAD)、[[強迫性障害]]<ref name=NICECG31 />、[[心的外傷後ストレス障害]] (PTSD)<ref>[http://www.jstss.org/topics/03/224.php 『PTSDの治療薬処方の手引き』]日本トラウマティック・ストレス学会</ref>にも処方される。[[慢性疼痛]]、[[月経困難症]]、[[更年期障害]]、[[耳鳴り]]などへの[[適応外使用]]が行われる場合がある。しかし適用外の処方には議論があり、[[アメリカ合衆国司法省]]による制裁が行われた例もある。 |
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多くの抗うつ薬は、効果の発現が2〜6週間遅れるが、効果はしばしば1週間後に見られる。しかしながら投与直後から、自殺の傾向を高める[[賦活症候群]]の危険性がある<ref name="pmid15265848"/>。日本でも添付文書にて、24歳以下で自殺念慮や自殺企図の危険性を増加させることを注意喚起している<ref name="PMDSI261"/>。WHOガイドラインでは12歳未満の子供については禁忌である{{Sfn|世界保健機関|2010|loc=DEP}}。 |
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== 概要 == |
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抗うつ薬の有効性が議論されており、現在では軽症のうつ病に対しては、必ずしも薬剤の投与は一次選択にはなっていない{{Sfn|世界保健機関|2010|loc=DEP}}{{sfn|日本うつ病学会|2012|pp=20-26}}。また使用にあたっても1種類の抗うつ薬の使用が原則とされる{{sfn|日本うつ病学会|2012|pp=20-26}}。2010年には、精神科領域の4学会により、医師に対して不適切な[[多剤大量処方]]に対する注意喚起がなされている<ref>{{cite press release|author=日本うつ病学会、日本臨床精神神経薬理学会、日本生物学的精神医学会、日本総合病院精神医学会|title=「いのちの日」 緊急メッセージ 向精神薬の適正使用と過量服用防止のお願い|publisher= |date=2010-12-01|url=http://www.jsbp.org/link/dayoflife20101129.pdf|format=pdf|accessdate=2013-03-12}}</ref>。 |
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[[モノアミン酸化酵素阻害薬]]と[[三環系抗うつ薬]]の抗うつ作用が偶然に発見されて以降、セロトニンとノルアドレナリンの挙動が着目され、[[四環系抗うつ薬]]、[[選択的セロトニン再取り込み阻害薬]](SSRI)、[[セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬]](SNRI)、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)が開発されてきた。 |
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抗うつ薬は、効果の発現が服薬開始から2-6週間遅れるが、しばしば1週間後までに効果が見られることもある。抗うつ薬の有効性が議論されており、軽症のうつ病に対しては、必ずしも薬剤の投与は一次選択にはなっていない{{Sfn|世界保健機関|2010|loc=DEP}}{{sfn|日本うつ病学会|気分障害のガイドライン作成委員会|2012|pp=20-25}}{{sfn|日本うつ病学会|気分障害のガイドライン作成委員会|2013|pp=22-27}}。統計的には偽薬との差があるが効果は小さく、臨床的に意味がない差だとされる<ref name="pmid25979317"/>。 |
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抗うつ薬の使用は、口渇といった軽いものから、肥満や[[性機能障害]]など様々な[[#副作用]]が併存する可能性がある。2型糖尿病の危険性を増加させる<ref name="pmid21811871"/>。さらに他者に暴力を加える危険性は抗うつ薬全体で8.4倍に増加させるが、薬剤により2.8倍から10.9倍までのばらつきがある<ref name="pmid21179515"/>。 |
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[[1990年代]]後半から、約30年間の抗うつ薬の大幅な増加は、測定可能な公衆の利益を生み出していない<ref name="pmid28178949"/>。使用にあたっても1種類の抗うつ薬のみを使用する{{sfn|日本うつ病学会|気分障害のガイドライン作成委員会|2012|pp=20-26}}{{sfn|日本うつ病学会|気分障害のガイドライン作成委員会|2013|pp=22-28}}。もし抗うつ薬に対して反応がない場合でも、複数の抗うつ薬の併用はせず、有害作用が臨床上問題にならない範囲で十分量まで増量を行い、十分量まで増量しても反応が見られない場合は薬剤の変更を、一部の抑うつ症状に改善がみられるがそれ以上の改善がない場合は[[増強療法|抗うつ効果増強療法]]を行う{{sfn|日本うつ病学会|気分障害のガイドライン作成委員会|2012|pp=26-28}}{{sfn|日本うつ病学会|気分障害のガイドライン作成委員会|2013|pp=28-30}}{{sfn|日本うつ病学会|気分障害のガイドライン作成委員会|2013|pp=32-36}}。 |
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急に服薬を中止した場合、[[ベンゾジアゼピン離脱症状]]に酷似した[[#離脱症状|離脱症状]]([[抗うつ薬中断症候群]])を生じさせる可能性がある{{Sfn|世界保健機関|2010|loc=DEP}}<ref name="pmid21992148"/>。離脱症状は、少なくとも2〜3週間後の再発とは異なり、数時間程度で発生し、多くは軽度で1〜2週間でおさまる<ref name="AAFP"/>。離脱症状の高い出現率を持つ薬剤、[[パロキセチン]](パキシル)で66%や[[セルトラリン]](ゾロフト)で60%がある<ref name="AAFP"/>。 |
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[[ケタミン]]は、治療抵抗性うつ病に対しても時間単位で効果が現れるという即効性から<ref name="pmid16894061">{{cite journal|last1=Zarate|first1=Carlos A.|last2=Singh|first2=Jaskaran B.|last3=Carlson|first3=Paul J.|last4=Brutsche|first4=Nancy E.|last5=Ameli|first5=Rezvan|last6=Luckenbaugh|first6=David A.|last7=Charney|first7=Dennis S.|last8=Manji|first8=Husseini K.|title=A Randomized Trial of an N-methyl-D-aspartate Antagonist in Treatment-Resistant Major Depression|journal=Archives of General Psychiatry|volume=63|issue=8|pages=856|year=2006|pmid=16894061|doi=10.1001/archpsyc.63.8.856|url=http://archpsyc.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=668195}}</ref>、世界では用いられるケースがある<ref name="ND2015jp" />。ただケタミンは解離性麻酔薬であり、[[薬物乱用]]されうる薬剤でもあることから、製薬会社はケタミンの薬理学的作用に注目した『ケタミン様薬物』の研究を進めている<ref name="pmid19880463" />。 |
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製薬会社は、特許対策のために分子構造を修正し似たような[[医薬品設計]]を行っていたが、2009年には[[グラクソスミスクライン]]が神経科学分野での採算の悪さを理由に研究を閉鎖した<ref name="pmid20671165">{{cite journal|last1=Miller|first1=G.|title=Is Pharma Running Out of Brainy Ideas?|journal=Science|volume=329|issue=5991|pages=502–504|year=2010|month=July|pmid=20671165|doi=10.1126/science.329.5991.502 |format=pdf}}</ref>。その後、大手製薬会社の似たような傾向が続いた<ref>{{cite news|title=Research into brain disorders under threat as drug firms pull out|newspaper=The Guardian|date=13 June 2011|url=http://www.guardian.co.uk/science/2011/jun/13/research-brain-disorders-under-threat|accessdate=2013-01-29}}</ref><ref>{{cite news|title=Insight: Antidepressants give drugmakers the blues|author=Kate Kelland|author2=Ben Hirschler|newspaper=Reuters|date=2012-03|url=http://www.reuters.com/article/2012/03/23/us-depression-drugs-idUSBRE82M0MK20120323|accessdate=2013-01-29}}</ref>。 |
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抗うつ薬の使用は、口渇といった軽い[[副作用]]から、[[肥満]]や[[性機能障害]]など、様々な[[#副作用]]が併存する可能性がある。また[[2型糖尿病]]の危険性を増加させる<ref name="pmid21811871" />。さらに他者に暴力を加える危険性は、抗うつ薬全体で8.4倍に増加させるが、薬剤により2.8倍から10.9倍までのばらつきがある<ref name="pmid21179515" />。投与直後から、[[自殺]]の傾向を高める[[賦活症候群]]の危険性がある<ref name="pmid15265848" />。治験における健康な被験者でも自殺念慮や暴力の危険性が2倍であった<ref name="pmid27729596"/>。日本でも添付文書にて、24歳以下で自殺念慮や自殺企図の危険性を増加させることを注意喚起している<ref name="PMDSI261" />。WHO[[診療ガイドライン|ガイドライン]]では、12歳未満の子供については禁忌である{{Sfn|世界保健機関|2010|loc=DEP}}。 |
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急に服薬を中止した場合、[[ベンゾジアゼピン離脱症状]]に酷似した[[#離脱症状|離脱症状]]([[抗うつ薬中断症候群]])を生じさせる可能性がある{{Sfn|世界保健機関|2010|loc=DEP}}<ref name="pmid21992148" />。離脱症状は、少なくとも2-3週間後の再発とは異なり、数時間程度で発生し、多くは軽度で1-2週間でおさまるとされるが<ref name="AAFP" />、2018年の調査では46%が重症で、数か月までにわたることも珍しくはない<ref name="pmid30292574"/>。離脱症状の高い出現率を持つ薬剤、[[パロキセチン]](パキシル)で66%や[[セルトラリン]](ジェイゾロフト)で60%がある<ref name="AAFP" />。副作用に関するデータは過小評価されており、利益よりも害のほうが大きい可能性がある<ref name="pmid29270136"/><ref name="pmid28178949"/>。 |
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製薬会社は、特許対策のために[[分子]]構造を修正し似たような[[医薬品設計]]を行っていたが、2009年には[[グラクソ・スミスクライン]]が、神経科学分野での採算悪化を理由に、研究を閉鎖した<ref name="pmid20671165">{{cite journal|last1=Miller|first1=G.|title=Is Pharma Running Out of Brainy Ideas?|journal=Science|volume=329|issue=5991|pages=502–504|year=2010|month=July|pmid=20671165|doi=10.1126/science.329.5991.502 |format=pdf}}</ref>。その後、大手製薬会社の似たような傾向が続いた<ref>{{cite news|title=Research into brain disorders under threat as drug firms pull out|newspaper=The Guardian|date=2011-06-13|url=http://www.guardian.co.uk/science/2011/jun/13/research-brain-disorders-under-threat|accessdate=2013-01-29}}</ref><ref>{{cite news|title=Insight: Antidepressants give drugmakers the blues|author=Kate Kelland|author2=Ben Hirschler|newspaper=Reuters|date=2012-03|url=http://www.reuters.com/article/2012/03/23/us-depression-drugs-idUSBRE82M0MK20120323|accessdate=2013-01-29}}</ref>。 |
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== 抗うつ薬の種類 == |
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{| class="wikitable floatright" style="font-size:85%; margin-left:1em" |
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|+日本で用いる事ができる抗うつ薬の一覧<ref>加藤忠史 『うつ病治療の基礎知識』 筑摩選書、2014年(平成26年)。ISBN 978-4480015914。</ref><ref name="IRYO2001">{{cite journal|title=抗うつ薬開発の歴史と未来|year=2001|volume=55|issue=1|journal=医療|work=総説|doi=10.11261/iryo1946.55.13|page=Table2}}</ref> |
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!系統!!style="width:9em;"|一般名||商品名||発売年 |
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| rowspan="8"|三環系 ||[[イミプラミン]]||イミドール<br />トフラニール||1959年 |
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|[[アミトリプチリン]]||トリプタノール||1961年 |
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|{{仮リンク|トリミプラミン|en|Trimipramine}}||スルモンチール||1965年 |
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|{{仮リンク|ドスレピン|en|Dosulepin}}||プロチアデン||1965年 |
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|[[ノルトリプチリン]]||ノリトレン||1971年 |
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|[[クロミプラミン]]||アナフラニール||1973年 |
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|[[アモキサピン]]||アモキサン||1980年 |
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|{{仮リンク|ロフェプラミン|en|Lofepramine}}||アンプリット||1981年 |
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| rowspan="3"|四環系 || [[マプロチリン]]||ルジオミール||1981年 |
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|[[ミアンセリン]]||テトラミド||1983年 |
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|[[セチプチリン]]||テシプール||1989年 |
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| SARI || [[トラゾドン]]||デジレル<br />レスリン||1991年 |
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| rowspan="4"|SSRI || [[フルボキサミン]]||デプロメール<br />ルボックス||1999年 |
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|[[パロキセチン]]||パキシル||2000年 |
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|[[セルトラリン]]||ジェイゾロフト||2006年 |
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|[[エスシタロプラム]]||レクサプロ||2011年 |
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| rowspan="3"|SNRI || [[ミルナシプラン]]||トレドミン||2000年 |
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|[[デュロキセチン]]||サインバルタ||2010年 |
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|[[ベンラファキシン]]||イフェクサー||2015年 |
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| NaSSA || [[ミルタザピン]]||リフレックス<br />レメロン||2009年 |
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| S-RIM || [[ボルチオキセチン]]||トリンテリックス||2019年 |
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SSRI以降をひとまとめにすることが一般的である。例えば、日本うつ病学会の診療ガイドラインは、SSRI、SNRI、NaSSAなどを、「新規抗うつ薬」としてひっくるめている{{sfn|日本うつ病学会|pp=28-30}}。あるいは研究者はこれら新規抗うつ薬を第二世代と呼ぶことが一般的である。 |
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有効性では新規の抗うつ薬と従来の抗うつ薬とに違いはないと言う見解が混在するし、一定した結論はない{{sfn|日本うつ病学会|pp=28-30}}。従来の抗うつ薬では、[[抗コリン作用]]による鎮静作用が強く、また自殺に用いられた際に死亡率が高い{{sfn|日本うつ病学会|pp=28-30}}。忍容性においては新規の抗うつ薬であるが、24歳以下で自殺を誘発する[[賦活症候群]]や中止時の離脱症候群、また高齢者での死亡率の上昇など副作用の違いがある{{sfn|日本うつ病学会|pp=28-30}}。どれが第一選択となるかということはない{{sfn|日本うつ病学会|pp=28-30}}。 |
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〈以下時系列順〉 |
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=== モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害薬) === |
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{{Main|モノアミン酸化酵素阻害薬}} |
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最も初期の抗うつ薬であるが、薬剤相互作用や副作用の多さから日本では抗うつ薬としてはほとんど使われず、パーキンソン病治療薬として専ら用いられている。 |
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=== 三環系抗うつ薬(TCA) === |
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{{Main|三環系抗うつ薬}} |
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もっとも古い抗うつ薬で1950年代に登場した。これらの薬のセロトニンやノルアドレナリンの[[再取り込み]]の阻害が後に発見され、改良につながっていった。三環系抗うつ薬の第1世代としては[[アミトリプチリン]] (トリプタノール、ラントロン)、[[イミプラミン]] (イミドール、トフラニール)、[[クロミプラミン]] (アナフラニール)、{{仮リンク|トリミプラミン|en|Trimipramine}} (スルモンチール)、[[ノルトリプチリン]](ノリトレン)。三環系抗うつ薬の第2世代としては[[アモキサピン]] (アモキサン)、{{仮リンク|ドスレピン|en|Dosulepin}}(プロチアデン)、{{仮リンク|ロフェプラミン|en|Lofepramine}}(アンプリット)が知られている。 |
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初期の抗うつ薬であるが使われ続けている薬である。その理由としては、有効性という点では新規抗うつ薬が優っているとは必ずしも言えず、抗コリン作用をはじめとした多くの副作用が存在するが、緊急入院患者のような重症では有効性が高い可能性があるという見解があるためである{{sfn|日本うつ病学会|pp=28-30}}。特徴としては三級アミンは二級アミンと比べると、鎮静作用、抗コリン作用が強く、起立性低血圧も起こしやすい。鎮静作用と体重増加の作用はヒスタミンH1受容体に対する親和性と相関している。起立性低血圧は[[アドレナリン受容体|アドレナリンα1受容体]]との親和性に相関している。またTCAは内服中断後、1週間は体内にとどまると考えられている。危険な副作用としては[[キニジン]]様作用といわれる心臓障害がある。 |
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;[[イミプラミン]] (イミドール、トフラニール) |
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:最初に作られたTCAである。アミトリプチリン よりも抗コリン作用、鎮静作用が弱いが[[ノルトリプチリン]]よりは強い。起立性低血圧も比較的少ない。 |
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;[[アミトリプチリン]] (トリプタノール、ラントロン) |
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:抗コリン作用、鎮静作用が最も強いTCAである。若年者で入眠障害がある患者に好まれる傾向がある。就寝前に多く飲ませることが多い。 |
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;[[クロミプラミン]] (アナフラニール) |
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:セロトニンの再取り込み阻害作用が強い。[[痙攣]]がおこる頻度が他のTCAよりも強いため、抗痙攣作用の強い抗不安薬を併用することが多い。注射薬があるため、うつ病による不穏、焦燥に対して3時間程度で25mgを点滴静注することもある。 |
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;[[ノルトリプチリン]](ノリトレン) |
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:セロトニンよりもノルアドレナリンの再取り込みを強く抑制する。焦燥感を起こすことが少ない。有効治療量の幅が狭く処方が難しい。 |
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;[[アモキサピン]] (アモキサン) |
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:第二世代のTCAであり、副作用、特に抗コリン作用が軽減されている。他のTCAよりも効果発現が早いといわれている。 |
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=== 四環系抗うつ薬 === |
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{{Main|四環系抗うつ薬}} |
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ノルアドレナリンの再取り込みを選択的に阻害し、セロトニンの再取り込みは阻害しない。抗コリン作用はTCAよりも軽減されている傾向があるが、痙攣を起こしやすく、抗痙攣作用の強い抗不安薬([[ジアゼパム]]や[[ニトラゼパム]])を併用することが多い。[[マプロチリン|塩酸マプロチリン]](ルジオミール)、[[ミアンセリン|塩酸ミアンセリン]](テトラミド)、[[セチプチリン|マレイン酸セチプチリン]](テシプール)が有名である。 |
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;[[ミアンセリン]](テトラミド) |
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:α2受容体を遮断することでノルアドレナリンの放出を促進する。抗ヒスタミン作用が強い薬物である。心毒性がないため非常に使いやすい抗うつ薬である。呼吸抑制と鎮静という副作用がある。SSRIとの併用による増強効果が報告されている数少ない薬物である。 |
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;[[セチプチリン]](テシプール) |
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:[[ミアンセリン]]を改良した薬物。中枢性セロトニン作用をもつ。鎮静の副作用はまれ。 |
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=== セロトニン遮断再取り込み阻害薬(SARI) === |
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トリアゾロピリジン系の抗うつ薬。[[トラゾドン]](商品名レスリン、デジレル)は、セロトニンの再取り込みを阻害する他、セロトニン5-HT<sub>2</sub>受容体の阻害作用が強い薬物である。 |
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=== 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) === |
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{{Main|選択的セロトニン再取り込み阻害薬}} |
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[[フルボキサミン]](ルボックス、デプロメール)、[[パロキセチン]](パキシル)、[[セルトラリン]](ジェイゾロフト)、[[シタロプラム]](日本未発売)、[[エスシタロプラム]](レクサプロ)が知られている。急に服薬を中止すると[[SSRI離脱症候群]]が発現する恐れがある。[[強迫性障害]]、[[社交不安障害]]、[[パニック障害]]、[[心的外傷後ストレス障害]]に適応があるものがある。双極性障害には[[気分安定薬]]と併用しない限り禁忌である。効果発現に2週間程度必要である。投与初期(1〜2週間程度)は悪心、嘔吐、不安、焦燥、不眠といった症状が出現することがあるが継続投与で軽快、消失する。持続することもある。[[セロトニン受容体]]に対する急性刺激と考えられている。少量では[[セロトニン]]選択性であるが、高用量となると[[ノルアドレナリン]]の再取り込みも阻害するようになる。 |
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=== セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI) === |
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{{Main|セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬}} |
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=== ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA) === |
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NaSSA(ナッサ)は、{{lang-en|Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant}} の略。これまでのようにシナプスにおける神経伝達物質の再取り込みを阻害して濃度を上げるのではなく、セロトニン、ノルアドレナリンの分泌量そのものを増やす作用がある。α2ヘテロ受容体とα2受容体をふさぎ、セロトニンやノルアドレナリンが出ていないと錯覚させ分泌を促す。また、5-HT<sup>1</sup>受容体にセロトニンが結びつきやすくするために、5-HT<sup>1</sup>以外のセロトニン受容体をふさぐ。SSRI、SNRIと作用用途が違うため単剤処方で効果が薄いうつ病に対してはこれらの抗うつ薬を併用する[[カリフォルニア・ロケット]]という投薬が行われる場合がある。 |
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* [[ミルタザピン]]、合併した[[メルク・アンド・カンパニー|MSD]]からレメロン、[[Meiji Seika ファルマ]]からリフレックスとして発売されている。国内の臨床試験で、82.7%に何らかの副作用が認められた。50%で傾眠など。 |
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== 医療用途 == |
== 医療用途 == |
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WHOのガイドラインでは、成人のうつ病に対しての選択肢として提案されているが、一方で12歳未満には処方禁止、12歳以上の児童では第一選択肢から除外するとしている{{Sfn|世界保健機関|2010|loc=DEP}}。[[WHO必須医薬品モデル・リスト]]から選択することが望ましい{{Sfn|世界保健機関|2010|loc=DEP}}。 |
WHOのガイドラインでは、成人のうつ病に対しての選択肢として提案されているが、一方で12歳未満には処方禁止、12歳以上の児童では第一選択肢から除外するとしている{{Sfn|世界保健機関|2010|loc=DEP}}。[[WHO必須医薬品モデル・リスト]]から選択することが望ましい{{Sfn|世界保健機関|2010|loc=DEP}}。 |
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[[英国国立医療技術評価機構]](NICE)の2004年のガイドラインは、危険性/利益の比率が悪いという理由で、抗うつ薬を軽症うつ病の初期治療に用いるべきではないとしている;中等度あるいは重度のうつ病では、SSRIのほうが三環系よりも忍容性が高い;重度のうつ病では、抗うつ薬は[[認知行動療法]]のような心理療法と組み合わせるべきである<ref>{{cite report|url=http://www.nice.org.uk/guidance/CG23 |
[[英国国立医療技術評価機構]](NICE)の2004年のガイドラインは、危険性/利益の比率が悪いという理由で、抗うつ薬を軽症うつ病の初期治療に用いるべきではないとしている;中等度あるいは重度のうつ病では、SSRIのほうが三環系よりも忍容性が高い;重度のうつ病では、抗うつ薬は[[認知行動療法]]のような心理療法と組み合わせるべきである<ref>{{cite report|url=http://www.nice.org.uk/guidance/CG23|title=Depression|publisher=[[英国国立医療技術評価機構]]|date=|accessdate=2008-11-06|archiveurl=https://web.archive.org/web/20081115042517/http://www.nice.org.uk/Guidance/CG23|archivedate=2008-11-15|url-status=dead}}</ref>。NICEの2009年の改定されたガイドラインは、危険性/利益の比率が悪いために軽症以下のうつ病に抗うつ薬を使用してはいけない(Do not use antidepressants)としている{{sfn|National Institute for Health and Clinical Excellence|2009|p=1.4.4}}。さらに、[[セントジョーンズワート]]は、軽症あるいは中等度で利益がある可能性についても言及している。 |
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[[アメリカ精神医学会]]による2000年の大うつ病性障害の患者の治療のための診療ガイドラインは<ref>{{cite web|url=http://www.guidelines.gov/summary/summary.aspx?doc_id=2605&nbr=1831 |title=Practice guideline for the treatment of patients with major depressive disorder |publisher=Guidelines.gov |author=[[アメリカ精神医学会]] |date= |accessdate=2008-11-06| |
[[アメリカ精神医学会]]による2000年の大うつ病性障害の患者の治療のための診療ガイドラインは<ref>{{cite web |url=http://www.guidelines.gov/summary/summary.aspx?doc_id=2605&nbr=1831 |title=Practice guideline for the treatment of patients with major depressive disorder |publisher=Guidelines.gov |author=[[アメリカ精神医学会]] |date= |accessdate=2008-11-06 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20081028165751/http://www.guidelines.gov/summary/summary.aspx?doc_id=2605&nbr=1831 |archivedate=2008-10-28 |url-status=dead}}</ref>、患者が望むなら、軽症の大うつ病性障害の最初の一次治療に抗うつ薬を投与してもよいとしている;[[電気けいれん療法|電気痙攣療法]]が計画されていない、中等度から重度の大うつ病性障害では抗うつ薬を投与すべきである;精神病性うつ病には、抗精神病薬と抗うつ薬の併用、あるいは電気痙攣療法を用いるべきである。有効性は、概して分類間と分類内で同等であると示されており、最初の選択は主に個々の患者、患者の選択、医薬品と費用に関する臨床試験のデータの量と質から予想される副作用に基づく。 |
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[[日本うつ病学会]]の2012年の大うつ病障害の治療ガイドラインでは、軽症うつ病の場合、安易な薬物療法は避けるべきであり、中等度から重症のうつ病の場合、1種類の抗うつ薬の使用を基本とし、十分な量の抗うつ薬を十分な期間に渡って投与すべきであるとされる。寛解維持期には十分な継続・維持療法を行い、抗うつ薬の投与の終結を急ぐべきではないとされる |
[[日本うつ病学会]]の2012年の大うつ病障害の治療ガイドラインでは、軽症うつ病の場合、安易な薬物療法は避けるべきであり、中等度から重症のうつ病の場合、1種類の抗うつ薬の使用を基本とし、十分な量の抗うつ薬を十分な期間に渡って投与すべきであるとされる。寛解維持期には十分な継続・維持療法を行い、抗うつ薬の投与の終結を急ぐべきではないとされる{{sfn|日本うつ病学会|気分障害のガイドライン作成委員会|2012}}。 |
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=== 不安障害 === |
=== 不安障害 === |
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NICEのガイドラインでは、[[全般性不安障害]](GAD)および[[強迫性障害]](OCD)への第一選択肢は低強度の心理療法であり、それに効果を示さなかった場合は、選択肢の一つとしてSSRIによる薬物療法を挙げている<ref name="NICECG113">{{Cite report |publisher=[[英国国立医療技術評価機構]] |title=CG113 : Generalised anxiety disorder and panic disorder (with or without agoraphobia) in adults: Management in primary, secondary and community care |url=http://www.nice.org.uk/guidance/CG113 |date=2011 |
NICEのガイドラインでは、[[全般性不安障害]](GAD)および[[強迫性障害]](OCD)への第一選択肢は低強度の心理療法であり、それに効果を示さなかった場合は、選択肢の一つとしてSSRIによる薬物療法を挙げている<ref name="NICECG113">{{Cite report |df=ja |publisher=[[英国国立医療技術評価機構]] |title=CG113 : Generalised anxiety disorder and panic disorder (with or without agoraphobia) in adults: Management in primary, secondary and community care |url=http://www.nice.org.uk/guidance/CG113 |date=January 2011}}</ref><ref name="NICECG31">{{Cite report |df=ja |title=CG31 - Obsessive-compulsive disorder: Core interventions in the treatment of obsessive-compulsive disorder and body dysmorphic disorder |publisher=[[英国国立医療技術評価機構]] |date=November 2005 |url=http://www.nice.org.uk/guidance/cg31 }}</ref>。 |
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=== 疼痛 === |
=== 疼痛 === |
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== 副作用 == |
== 副作用 == |
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抗うつ薬が効果を表すのは、[[セロトニン]]、[[ノルアドレナリン]]、[[ドパミン]]などの[[神経伝達物質]]に作用するからであるとされている。しかし、[[三環系抗うつ薬|三環系]]や[[四環系抗うつ薬]]では、[[抗コリン作用]]、抗α<sub>1</sub>作用なども併せ持っており、そのために以下のような副作用が |
抗うつ薬が効果を表すのは、[[セロトニン]]、[[ノルアドレナリン]]、[[ドパミン]]などの[[神経伝達物質]]に作用するからであるとされている。しかし、[[三環系抗うつ薬|三環系]]や[[四環系抗うつ薬]]では、[[抗コリン作用]]、抗α<sub>1</sub>作用なども併せ持っており、そのために以下のような[[副作用]]が報告されている。また、実際の症例では他の基礎疾患治療薬との併用となる事も多く、[[薬剤相互作用]]や副作用の頻度は上昇すると共に見逃され易い<ref>宮崎雅之、山田清文、「頻用薬物の注意すべき副作用Up to date」 JIM (2014/6/15) 24巻 6号, p.531-533, {{DOI|10.11477/mf.1414103241}}</ref>と指摘されている。 |
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* 抗コリン作用による口渇、便秘、目のかすみ、排尿困難など |
* 抗コリン作用による口渇、便秘、目のかすみ、排尿困難など |
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* 抗ムスカリン作用による視力調節障害 |
* 抗ムスカリン作用による視力調節障害 |
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* 手足の痙攣・振戦、全身の痺れなど(重症になると一ヶ月ほど痺れが続く場合もある) |
* 手足の痙攣・振戦、全身の痺れなど(重症になると一ヶ月ほど痺れが続く場合もある) |
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* 性格変化・他害行為など |
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服用開始直後の吐き気については、これについては制吐剤([[ガスモチン]]など)や[[六君子湯]]などの併用によって緩和することが可能である{{要出典|date=2011年10月}}<ref>[http://www.nakaoclinic.ne.jp/topics/topics14.html SSRI 2002 Nakao Clinic]</ref>。性欲減退については[[DNRI]]との併用で解消できる場合があることが報告されている。 |
服用開始直後の吐き気については、これについては制吐剤([[ガスモチン]]など)や[[六君子湯]]などの併用によって緩和することが可能である{{要出典|date=2011年10月}}<ref>[https://web.archive.org/web/20130106212318/http://www.nakaoclinic.ne.jp/topics/topics14.html SSRI 2002 Nakao Clinic](2013年1月6日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。性欲減退については[[DNRI]]との併用で解消できる場合があることが報告されている。 |
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=== 概要 === |
=== 副作用の概要 === |
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SSRIの副作用には以下が含まれるが、これだけに限定されるわけではない |
SSRIの主な副作用には以下が含まれるが、これだけに限定されるわけではない。[[セロトニン症候群]]、[[吐き気]]、[[下痢]]、血圧の上昇、{{仮リンク|精神運動性激越|en|Psychomotor agitation}}、[[頭痛]]、[[不安]]、神経過敏、情緒不安定、自殺念慮の増加、自殺企図、不眠症、薬物間の相互作用、新生児の薬害反応、{{仮リンク|食欲不振|en|anorexia (symptom)}}、口渇、眠気、振戦、[[性機能障害]]、[[リビドー|性欲]]減衰、無力、消化不良、[[目まい]]、発汗、人格障害、鼻血、頻尿、月経過多、躁/軽躁<ref name=eli>{{cite journal|last=Landry|first=P.|title=Withdrawal hypomania associated with paroxetine|journal=J. Clinical Pharmacology|year=1997|month=February|volume=17|pages=60–61|pmid=9004064|url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9004064}}</ref>、悪寒、動悸、味覚倒錯、排尿障害<ref>{{cite web|title=Highlights of prescribing information|url=http://pi.lilly.com/us/prozac.pdf|publisher=Eli lilly|accessdate=2013-01-19}}</ref>、傾眠、胃腸の不整、筋力低下、長期間の体重増加。 |
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三環系抗うつ薬の一般的な副作用 |
三環系抗うつ薬の一般的な副作用:[[口腔乾燥症|口渇]]、かすみ目、[[wikt:傾眠|傾眠]]、目まい、振戦、性的な問題、皮膚湿疹、また体重の増減。 |
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三環系抗うつ薬の副作用には、心拍数、傾眠、口渇、便秘、尿閉、かすみ目、目まい、精神錯乱、性機能障害。毒性は、常用量で約10倍である;過剰服用では、致命的な不整脈を引き起こし致死的になることが多い。一方で、三環系抗うつ薬は、今なお特にうつ病の重症の症例での有効性を理由として、安価にまた適用外で用いられている。 |
三環系抗うつ薬の副作用には、心拍数、傾眠、口渇、便秘、尿閉、かすみ目、目まい、精神錯乱、性機能障害。毒性は、常用量で約10倍である;過剰服用では、致命的な不整脈を引き起こし致死的になることが多い。一方で、三環系抗うつ薬は、今なお特にうつ病の重症の症例での有効性を理由として、安価にまた適用外で用いられている。 |
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1998年の162のランダム化比較試験からのSSRIと三環系抗うつ薬の有害事象の比較レビューでは、口渇、便秘、目まいではSSRIのほうが半分程度の頻度であるが、吐き気、下痢、不安、興奮、不眠症ではSSRIのほうがおよそ2倍の頻度であり、副作用の合計数では、SSRIのほうが多かった<ref>{{cite journal|last1=Hotopf|first1=M.|title=Review: selective serotonin reuptake inhibitors differ from tricyclic antidepressants in adverse events|journal=Evidence-Based Mental Health|volume=1|issue=2|pages=50–50|year=1998|doi=10.1136/ebmh.1.2.50|url=http://ebmh.bmj.com/content/1/2/50.full.pdf|format=pdf}}</ref>。 |
1998年の162のランダム化比較試験からのSSRIと三環系抗うつ薬の有害事象の比較レビューでは、口渇、便秘、目まいではSSRIのほうが半分程度の頻度であるが、吐き気、下痢、不安、興奮、不眠症ではSSRIのほうがおよそ2倍の頻度であり、副作用の合計数では、SSRIのほうが多かった<ref>{{cite journal|last1=Hotopf|first1=M.|title=Review: selective serotonin reuptake inhibitors differ from tricyclic antidepressants in adverse events|journal=Evidence-Based Mental Health|volume=1|issue=2|pages=50–50|year=1998|doi=10.1136/ebmh.1.2.50|url=http://ebmh.bmj.com/content/1/2/50.full.pdf|format=pdf}}</ref>。 |
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NaSSAの副作用には、傾眠、食欲増加、体重増加が含まれる<ref name="Stimmel">{{Cite journal|last=Stimmel |first=GL|year=1997|title=Mirtazapine: an antidepressant with noradrenergic and specific serotonergic effects|journal=Pharmacotherapy|volume=17|issue=1|pages=10–21|publisher=American College of Clinical Pharmacy|pmid=9017762|last2=Dopheide|first2=JA|last3=Stahl|first3=SM}}</ref>。 |
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MAOI(モノアミン酸化酵素阻害薬)(日本では未認可)の主要副作用を挙げる:MAOIは、熟成チーズや干し肉、酵母エキスのような多量の[[チラミン]]を含有する食品を摂取した場合、重篤な高血圧反応を生じさせる可能性がある。同じく、処方箋医薬品と一般用医薬品(OTC医薬品)に対する致命的な反応を引き起こす。MAOIで治療を受けている患者は、先に服用している処方箋医薬品と一般用医薬品を、処方医師によって詳細に観察される。そのような患者は救急治療室職員に情報提供し、MAOIに関する識別情報を持つことを必要とされる。一部の医師は[[:en:medical identification tag|医療識別タグ]]の使用を提案しているが、反応は致命的な可能性があり、相互作用に起因する総死亡数と食事に関する懸念は、一般医薬品に対するものに匹敵する。 |
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ほかのMAOIの副作用を挙げる:[[肝炎]]、[[心筋梗塞]]、[[脳梗塞]]、[[てんかん]]。 |
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セロトニン症候群は、いくつかの医薬品を併用した場合のMAOIの副作用である。{{仮リンク|モクロベミド|en|Moclobemide}}は、薬物動態に年齢による影響がないため高齢者に推奨される可能性があり、若い成人と同様に高齢者に良好な忍容性を示し、重篤な有害事象が少なく、加えて言えば、副作用の多いほかの抗うつ薬と同様の有効性がある;またモクロベミドは認知における有益作用がある<ref name="pmid7717092">{{cite journal |author=Nair NP, Ahmed SK, Kin NM, West TE |title=Reversible and selective inhibitors of monoamine oxidase A in the treatment of depressed elderly patients |journal=Acta Psychiatr Scand Suppl |volume=386 |issue= |pages=28–35 |year=1995 |pmid=7717092 |doi=10.1111/j.1600-0447.1995.tb05921.x }}</ref>。新しい世代のMAOIが導入されている;[[可逆性モノアミン酸化酵素A阻害薬]](RIMA)として知られる、{{仮リンク|モクロベミド|en|Moclobemide}}(マネリックス)は、うつ病に対しSSRIや三環系抗うつ薬と同様の有効性がある<ref name="pmid7717091">{{cite journal |author=Paykel ES |title=Clinical efficacy of reversible and selective inhibitors of monoamine oxidase A in major depression |journal=Acta Psychiatr Scand Suppl |volume=386 |issue= |pages=22–7 |year=1995 |pmid=7717091 |doi=10.1111/j.1600-0447.1995.tb05920.x }}</ref>。より一時的かつ選択的に作用し特別な食事法を必要としない。 |
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NaSSIの副作用には、傾眠、食欲増加、体重増加が含まれる<ref name="Stimmel">{{Cite journal|last=Stimmel |first=GL|year=1997|month=Jan-Feb|title=Mirtazapine: an antidepressant with noradrenergic and specific serotonergic effects|journal=Pharmacotherapy|volume=17|issue=1|pages=10–21|publisher=American College of Clinical Pharmacy|issn=0277-0008|pmid=9017762|last2=Dopheide|first2=JA|last3=Stahl|first3=SM}}</ref>。 |
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2009年5月に公表された研究によれば、乳がん生存者が、抗がん剤のタモキシフェンの服用中にいくつかの抗うつ薬を用いた場合に、再発の危険性がある<ref>{{Cite news| url=http://www.cbsnews.com/stories/2009/05/30/health/main5050992.shtml?tag=main_home_storiesBySection |work=CBS News |title=Drug Combos Linked To Breast Cancer Risk |date=2009-05-30}}</ref>。 |
2009年5月に公表された研究によれば、乳がん生存者が、抗がん剤のタモキシフェンの服用中にいくつかの抗うつ薬を用いた場合に、再発の危険性がある<ref>{{Cite news| url=http://www.cbsnews.com/stories/2009/05/30/health/main5050992.shtml?tag=main_home_storiesBySection |work=CBS News |title=Drug Combos Linked To Breast Cancer Risk |date=2009-05-30}}</ref>。 |
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双極性うつ病においては抗うつ薬が、SSRIでは頻繁に、[[軽躁]]{{enlink|Hypomania}}と[[躁病|躁]]の症状の悪化あるいは誘因となる<ref>{{cite journal |doi=10.1016/S0165-0327(97)00082-7 |last1=Benazzi |first1=F |title=Antidepressant-associated hypomania in outpatient depression: a 203-case study in private practice |journal=Journal of Affective Disorders |volume=46 |issue=1 |pages=73–7 |year=1997 |pmid=9387089}}</ref>。 |
双極性うつ病においては抗うつ薬が、SSRIでは頻繁に、[[軽躁]]{{enlink|Hypomania}}と[[躁病|躁]]の症状の悪化あるいは誘因となる<ref>{{cite journal |doi=10.1016/S0165-0327(97)00082-7 |last1=Benazzi |first1=F |title=Antidepressant-associated hypomania in outpatient depression: a 203-case study in private practice |journal=Journal of Affective Disorders |volume=46 |issue=1 |pages=73–7 |year=1997 |pmid=9387089}}</ref>。 |
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妊娠中の抗うつ薬の使用は、自然流産の危険性の増加に関連している<ref name="autogenerated1031"/>。 |
妊娠中の抗うつ薬の使用は、自然流産の危険性の増加に関連している<ref name="autogenerated1031" />。 |
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=== 妊娠期 === |
=== 妊娠期 === |
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妊娠は感情の変動の誘因となり、うつ病に対処することを難しくする。発達中の胎児と乳児に対する危険性と反している医薬品の中断と再発の危険性が、比較検討される。一部の抗うつ薬は妊娠中の胎児に対する危険性が低いが、FDAはパキシル使用時の出生異常の危険性について忠告しており<ref>{{cite web|last=U.S. Food and Drug Administration|title=FDA Advising of Risk of Birth Defects with Paxil|url=http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/2005/ucm108527.htm|publisher=FDA|accessdate= |
妊娠は感情の変動の誘因となり、うつ病に対処することを難しくする。発達中の胎児と乳児に対する危険性と反している医薬品の中断と再発の危険性が、比較検討される。一部の抗うつ薬は妊娠中の胎児に対する危険性が低いが、FDAはパキシル使用時の出生異常の危険性について忠告しており<ref>{{cite web|last=U.S. Food and Drug Administration|title=FDA Advising of Risk of Birth Defects with Paxil|url=http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/2005/ucm108527.htm|publisher=FDA|accessdate=2012-11-29}}</ref>、またMAOIは避けるべきである。新生児は、出生時に抗うつ薬の突然の中断により離脱症候群が現れる可能性がある。妊娠中の抗うつ薬の使用は、自然流産<ref name="autogenerated1031">{{Cite journal|pmid= 20513781|year= 2010|last1= Nakhai-Pour|first1= HR|last2= Broy|first2= P|last3= Bérard|first3= A|title= Use of antidepressants during pregnancy and the risk of spontaneous abortion,|volume= 182|issue= 10|pages= 1031–7|doi= 10.1503/cmaj.091208|pmc= 2900326|journal= CMAJ : Canadian Medical Association}}</ref>、出生異常<ref>{{cite journal|last=Louik|first=Carol|coauthors=Lin, A.E.,Werler M.M., Hernández-Díaz S., Mitchell A.A.|title=First-Trimester Use of Selective Serotonin-Reuptake Inhibitors and the Risk of Birth Defects|journal=N Engl J Med|date=2007年6月28日|volume=356|pages=2675–2683|doi=10.1056/NEJMoa067407|accessdate=2012-12-02}}</ref>、発育遅延<ref>{{cite journal|last=Pedersen|first=Lars Henning|coauthors=Henriksen, T.B.,J et al.|title=Fetal Exposure to Antidepressants and Normal Milestone Development at 6 and 19 Months of Age|journal=PEDIATRICS|date=2010-3|volume=125|issue=3|pages=e600-e608|url=http://pediatrics.aappublications.org/content/125/3/e600/suppl/DC1|accessdate=2012-11-29}}</ref>の危険性の増加、自閉症の危険性が2倍に増加する<ref name="pmid21727247">{{cite journal|last1=Croen|first1=Lisa A.|title=Antidepressant Use During Pregnancy and Childhood Autism Spectrum Disorders|journal=Archives of General Psychiatry|volume=68|issue=11|pages=1104|year=2011|month=November|pmid=21727247|doi=10.1001/archgenpsychiatry.2011.73|url=http://archpsyc.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1107329}}</ref>ことに結びついている。抗うつ薬は、母乳中にさまざまな量で含まれているが、乳児に対する影響は不明である<ref>{{cite journal|last=Lanza di Scalea|first=T|coauthors=Wisner KL|title=Antidepressant medication use during breastfeeding|journal=Clin Obstet Gynecol|year=2009|month=September|volume=52|issue=3|pages=483–9|url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19661763|accessdate=2012-11-29}}</ref>。 |
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2006年の『[[ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション|米国医師会雑誌]]』(''JAMA'')における産業的な公表では、妊娠中に抗うつ医薬品を中断することは再発頻度が高いことを見出した<ref>{{Cite journal |
2006年の『[[ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション|米国医師会雑誌]]』(''JAMA'')における産業的な公表では、妊娠中に抗うつ医薬品を中断することは再発頻度が高いことを見出した<ref>{{Cite journal |last = Cohen, MD |first = Lee S. |title = Relapse of Major Depression During Pregnancy in Women Who Maintain or Discontinue Antidepressant Treatment |journal = Journal of the American Medical Association |volume = 295 |issue = 5 |pages = 499–507 |publisher = American Medical Association |date = 2006-02-01 |url = http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/295/5/499 |accessdate = 2007-06-14 |doi = 10.1001/jama.295.5.499 |pmid = 16449615 |last2 = Altshuler |first2 = LL |last3 = Harlow |first3 = BL |last4 = Nonacs |first4 = R |last5 = Newport |first5 = DJ |last6 = Viguera |first6 = AC |last7 = Suri |first7 = R |last8 = Burt |first8 = VK |last9 = Hendrick |first9 = V |archiveurl = https://web.archive.org/web/20070602204124/http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/295/5/499 |archivedate = 2007年6月2日 |deadurl = no |deadlinkdate = 2017年10月 }}</ref>。米国医師会雑誌は後に、金銭的つながりや利害関係の衝突の可能性に言及して訂正を公表し<ref>{{Cite journal |title = Relapse of Major Depression During Pregnancy in Women Who Maintain or Discontinue Antidepressant Treatment—Correction |journal = JAMA |volume = 296 |issue = 2 |page = 170 |date = 2006-07-12 |url = http://jama.ama-assn.org/cgi/content/full/jama;296/2/170 |accessdate = 2007-06-14 |doi = 10.1001/jama.296.2.170 |archiveurl = https://web.archive.org/web/20070929122051/http://jama.ama-assn.org/cgi/content/full/jama%3B296/2/170 |archivedate = 2007年9月29日 |deadlinkdate = 2017年10月 }}</ref>、著者は、つながりは研究活動に関係していないと主張した。産科医で出産期医学者のアダム・ユレート(Adam Urato)は、『[[ウォール・ストリート・ジャーナル]]』で、患者と医療専門家は産業の影響から自由な状態で助言される必要があると述べた<ref>David Armstrong, "Drug Interactions: Financial Ties to Industry Cloud Major Depression Study At Issue: Whether It's Safe For Pregnant Women To Stay on Medication - JAMA Asks Authors to Explain". Wall Street Journal. July 11, 2006 ([http://www.post-gazette.com/pg/06192/705022-114.stm copy] published on post-gazette.com)</ref>。 |
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=== 自殺 === |
=== 自殺 === |
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{{Seealso|賦活症候群}} |
{{Seealso|賦活症候群}} |
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増量でも減量でも、抗うつ薬の服用量を変更した場合、自殺の危険性が2倍になることが認められる<ref name="Valuck 2009 1069–1077">{{cite journal|last=Valuck|first=Robert J.|coauthors=Orton, Heather D.; Libby, Anne M.|title=Antidepressant Discontinuation and the Risk of Suicide Attempt: A retrospective, Nested Case-Control Study|journal=J. Clin. Psychiatry|year=2009|month=August|volume=70|issue=8|pages=1069–1077|url=http://europepmc.org/abstract/MED/19758520/reload=0 |
増量でも減量でも、抗うつ薬の服用量を変更した場合、自殺の危険性が2倍になることが認められる<ref name="Valuck 2009 1069–1077">{{cite journal|last=Valuck|first=Robert J.|coauthors=Orton, Heather D.; Libby, Anne M.|title=Antidepressant Discontinuation and the Risk of Suicide Attempt: A retrospective, Nested Case-Control Study|journal=J. Clin. Psychiatry|year=2009|month=August|volume=70|issue=8|pages=1069–1077|url=http://europepmc.org/abstract/MED/19758520/reload=0}}</ref>。 |
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159,810人のアミトリプチリン、[[フルオキセチン]](日本では未認可)、[[パロキセチン]]、ドチエピンの使用者からの研究から、抗うつ薬の開始から1カ月、特に最初の日から9日目の間に自殺行動の危険性が増加したことが見出された<ref name="pmid15265848">{{cite journal|last=Jick|first=Hershel|coauthors=Kaye J.A., Jick S.S.|title=Antidepressants and the risk of suicidal behavious|journal=JAMA|date=21 |
159,810人のアミトリプチリン、[[フルオキセチン]](日本では未認可)、[[パロキセチン]]、ドチエピンの使用者からの研究から、抗うつ薬の開始から1カ月、特に最初の日から9日目の間に自殺行動の危険性が増加したことが見出された<ref name="pmid15265848">{{cite journal|last=Jick|first=Hershel|coauthors=Kaye J.A., Jick S.S.|title=Antidepressants and the risk of suicidal behavious|journal=JAMA|date=2004年7月21日|volume=292|issue=3|pages=338–343|pmid=15265848|doi=10.1001/jama.292.3.338|url=http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=199120|accessdate=2012-11-29}}</ref>。 |
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アメリカ食品医薬品局は、すべてのSSRIに、子供と若年者における自殺率 |
アメリカ食品医薬品局は、すべてのSSRIに、子供と若年者における自殺率(1,000人あたり2人から4人)を2倍にする、という黒枠警告文を命じた<ref name="Levine-Antonuccio-Healy">[http://www.alternet.org/story/156232/take_a_pill%2C_kill_your_sex_drive_6_reasons_antidepressants_are_misnamed/?page=entire Take a Pill, Kill Your Sex Drive? 6 Reasons Antidepressants Are Misnamed], [[Bruce E. Levine]], [[AlterNet]], July 11, 2012</ref><ref>{{Cite journal| last = Lenzer |first = Jeanne |title = Antidepressants double suicidality in children, says FDA |journal = BMJ |volume = 332 |page = 626 |year = 2006 |url = http://www.bmj.com/cgi/content/full/332/7542/626-c |doi = 10.1136/bmj.332.7542.626-c |accessdate = 2008-04-14 |issue=7542}}</ref>。しかしながら、自殺は医薬品に起因するのか、うつ病自身の要素なのかという議論がある<ref name=Levine-Antonuccio-Healy/><ref>{{cite web|url=http://www.patient.co.uk/health/Antidepressants-SSRIs.htm |title=SSRI Antidepressants | Health |publisher=Patient.co.uk |date=2010-10-27 |accessdate=2012-11-30}}</ref>。25歳以下の成人の自殺傾向や自殺行動の危険性の増加は、子供と若年者でのものに近い<ref>{{cite journal |author=Stone M, Laughren T, Jones ML, ''et al.'' |title=Risk of suicidality in clinical trials of antidepressants in adults: analysis of proprietary data submitted to US Food and Drug Administration |journal=BMJ |volume=339 |issue= |pages=b2880 |year=2009 |pmid=19671933 |pmc=2725270 |doi=10.1136/bmj.b2880}}</ref>。 |
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若い患者は、自殺念慮や行動の兆候を、とりわけ治療開始の8週間は、注意深く観察されるべきである。 |
若い患者は、自殺念慮や行動の兆候を、とりわけ治療開始の8週間は、注意深く観察されるべきである。 |
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米国ではFDAの警告(2007年5月)以降に若年者の自殺死者数が増加している<ref>{{cite journal |author= Dr Andrea Cipriani, PhD,correspondenceemail, Xinyu Zhou, PhD, Cinzia Del Giovane, PhD, Sarah E Hetrick, DPsych, Bin Qin, MD, Craig Whittington, PhD, Prof David Coghill, MD, Yuqing Zhang, MD, Prof Philip Hazell, PhD, Prof Stefan Leucht, MD, Prof Pim Cuijpers, PhD, Juncai Pu, MD, David Cohen, PhD, Prof Arun V Ravindran, PhD, Yiyun Liu, MD, Prof Kurt D Michael, PhD, Lining Yang, MD, Lanxiang Liu, MD, Prof Peng Xie, MDcorrespondenceemail |title=Comparative efficacy and tolerability of antidepressants for major depressive disorder in children and adolescents: a network meta-analysis |journal=[[:en:The Lancet]] |date=2016- |
米国ではFDAの警告(2007年5月)以降に若年者の自殺死者数が増加している<ref>{{cite journal |author= Dr Andrea Cipriani, PhD,correspondenceemail, Xinyu Zhou, PhD, Cinzia Del Giovane, PhD, Sarah E Hetrick, DPsych, Bin Qin, MD, Craig Whittington, PhD, Prof David Coghill, MD, Yuqing Zhang, MD, Prof Philip Hazell, PhD, Prof Stefan Leucht, MD, Prof Pim Cuijpers, PhD, Juncai Pu, MD, David Cohen, PhD, Prof Arun V Ravindran, PhD, Yiyun Liu, MD, Prof Kurt D Michael, PhD, Lining Yang, MD, Lanxiang Liu, MD, Prof Peng Xie, MDcorrespondenceemail |title=Comparative efficacy and tolerability of antidepressants for major depressive disorder in children and adolescents: a network meta-analysis |journal=[[:en:The Lancet]] |date=2016-06-08 |url=http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(16)30385-3/fulltext |doi=10.1016/S0140-6736(16)30385-3}}</ref>。FDA警告の結果、若年者の抗うつ薬治療が少なくなり、結果として自殺者が増えたとすれば問題であると、日本うつ病学会の野村総一郎は述べている<ref>野村総一郎「{{PDFlink|[http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/img/HP070914.pdf 抗うつ薬で自殺が増加するか? ]}}」(日本うつ病学会、2007年9月14日)</ref>。 |
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2009年 |
2009年の英国『モーズレイ処方ガイドライン第10版{{refnest|group="注釈"|David Taylor(チーフ薬剤師、精神薬理学教授)、Carol Paton(チーフ薬剤師、名誉研究員)、Shitij Kapur(精神医学研究所学部長・教授)らによって著された[[向精神薬]]の処方マニュアルである<ref>{{Citation |和書 |author1=David Taylor |author2=Carol Paton |author3=Shitij Kapur |others=内田裕之・鈴木健文・渡邊衡一郎監訳 |date=2011-01 |title=モーズレイ処方ガイドライン第10版 |publisher=[[アルタ出版]] |pages=1-7 |isbn=978-4901694452}}</ref>。}}』では、うつ病の治療が希死念慮および[[自殺]]企図を防ぐ最も効果的な方法であり、ほとんどの場合、抗うつ薬による治療が最も効果的な方法だとしている<ref name="kishi" />。 |
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米国精神医学界(APA)の治療ガイドラインでは、自殺予防の観点から抗うつ薬は特に急性期には必要と認識されている<ref name="kishi">{{PDFlink|[http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/suicide/pdf/medication_suicide_prevention.pdf 自殺予防のために薬物療法によってできることは何か |
2012年のうつ病学会シンポジウムでは、渡邊衡一郎により、米国精神医学界(APA)の治療ガイドラインでは、自殺予防の観点から抗うつ薬は特に急性期には必要と認識されていると意見されている<ref name="kishi">渡邊衡一郎「{{PDFlink|[http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/suicide/pdf/medication_suicide_prevention.pdf 自殺予防のために薬物療法によってできることは何か]}}」(日本うつ病学会、シンポジウム開催年2012年)</ref>。意見は、男女とも[[SSRI]]の処方量が増えると、自殺率は低下する。若年者への投与の減少により、若年者の自殺率が増加している。睡眠障害により自殺率は上昇する。不安障害の併存により自殺率は上昇する。アルコールや物質依存により自殺率は上昇するというものである<ref name="kishi" />。 |
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しかし、2015年のアメリカ国立精神衛生研究所 (NIH) やコロラド大学の教授らによる、自殺予防の観点からの薬物療法についての論文によれば、[[リチウム]]と[[クロザピン]](抗精神病薬)が自殺を防止するという証拠に比べれば、それ以外の抗うつ薬、あるいは[[抗精神病薬]]では、証拠に説得力がないことを報告している<ref name="pmid25145739">{{cite journal|last1=Griffiths|first1=Joshua J.|last2=Zarate|first2=Carlos A.|last3=Rasimas|first3=J.J.|coauthors=et al.|title=Existing and Novel Biological Therapeutics in Suicide Prevention|journal=American Journal of Preventive Medicine|volume=47|issue=3|pages=S195–S203|year=2014|pmid=25145739|pmc=4143783|doi=10.1016/j.amepre.2014.06.012|url=https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4143783/}}</ref>。[[ケタミン]]では、投与から40分で自殺念慮を減少させており、自殺企図と死亡に関する調査はまだないが、今後の研究に期待が寄せられている<ref name="pmid25145739" />。 |
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男女とも[[SSRI]]の処方量が増えると、自殺率は低下する。若年者への投与の減少により、若年者の自殺率が増加している。睡眠障害により自殺率は上昇する。不安障害の併存により自殺率は上昇する。アルコールや物質依存により自殺率は上昇する<ref name="kishi"/>。 |
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2016年4月の研究は、抗うつ薬の長期間の使用中に自殺や自殺企図を防ぐかについて包括的なレビューによってメタアナリシスを実施し、未知の理由による試験からの脱落が多く、結論に至らなかった<ref name="pmid27043848">{{cite journal|last1=Braun|first1=Cora|last2=Bschor|first2=Tom|last3=Franklin|first3=Jeremy|coauthors=et al.|title=Suicides and Suicide Attempts during Long-Term Treatment with Antidepressants: A Meta-Analysis of 29 Placebo-Controlled Studies Including 6,934 Patients with Major Depressive Disorder|journal=Psychotherapy and Psychosomatics|volume=85|issue=3|pages=171–179|year=2016|pmid=27043848|doi=10.1159/000442293|url=https://www.karger.com/Article/Abstract/442293}}</ref>。また北欧コクランセンターの研究は、[[システマティック・レビュー]]を行い、欧州の監督庁に提出されたデータからデュロキセチン、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、ベンラファキシンについて、成人では差がないものの小児および青年では自殺および攻撃のリスクは倍増していることや<ref name="pmid24060917">{{cite journal|last1=Sharma|first1=Tarang|last2=Guski|first2=Louise Schow|last3=Freund|first3=Nanna|coauthors=et al.|title=Suicidality and aggression during antidepressant treatment: systematic review and meta-analyses based on clinical study reports|journal=BMJ|issue=6|pages=i65|year=2016|pmid=24060917|pmc=4096990|doi=10.1136/bmj.i65}}</ref>、欧州とイギリスの監督庁に提出された治験における健康な被験者の自殺念慮や暴力の危険性を2倍にしていることを見出した<ref name="pmid27729596">{{cite journal|last1=Bielefeldt|first1=A. O.|last2=Danborg|first2=P. B.|last3=Gotzsche|first3=P. C.|coauthors=et al.|title=Precursors to suicidality and violence on antidepressants: systematic review of trials in adult healthy volunteers|journal=Journal of the Royal Society of Medicine|volume=109|issue=10|pages=381–392|year=2016|pmid=27729596|pmc=5066537|doi=10.1177/0141076816666805|url=http://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/0141076816666805}}</ref>。前者の研究ではイーライリリー社のデータでは自殺念慮の情報が欠落しているなどの情報の不完全性があり、解明にはそうしたデータの入手が必要であるとしている<ref name="pmid24060917" />。 |
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日本で最初にSSRIが認可されたのは1999年4月の[[フルボキサミン]]で、次に[[パロキセチン]]が2000年9月に認可された。日本の自殺者数が急増したのは1998年であり、自殺者数の統計ではSSRIの登場で増加傾向を示しているわけではない。 |
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腹圧性尿失禁に対するデュロキセチンによる治療のアメリカでの試験で予想を上回る自殺率が報告されたため、欧州医薬品庁 (EMA) に提出されたデータのメタアナリシスしたところ、人数の少なさと自殺や暴力に関連する記載の書き方を原因として信頼性のある評価が行えなかった(なお害が利益を上回っていると結論された)<ref name="MaundSchow Guski2016">{{cite journal|last1=Maund|first1=E.|last2=Schow Guski|first2=L.|last3=Gotzsche|first3=P. C.|title=Considering benefits and harms of duloxetine for treatment of stress urinary incontinence: a meta-analysis of clinical study reports|journal=Canadian Medical Association Journal|year=2016|doi=10.1503/cmaj.151104|PMC=5289870}}</ref>。 |
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抗うつ薬が自殺を引き起こすリスクは過小評価されており<ref name="pmid29270136"/>、システマティックレビューは自殺行動に関するデータがほとんどないことを発見している<ref name="pmid28178949"/>。 |
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=== 他害行為 === |
=== 他害行為 === |
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食品医薬品局(FDA)の有害事象報告システム(AERS)のデータのうち、殺人や暴力の基準を満たしたものを同定し、暴力が起きた件数の79%を31つの薬で占めたが、そのうち抗うつ薬は13つである<ref name="pmid21179515">{{cite journal|last1=Ross|first1=Joseph S.|last2=Moore|first2=Thomas J.|last3=Glenmullen|first3=Joseph|last4=Furberg|first4=Curt D.|title=Prescription Drugs Associated with Reports of Violence Towards Others|journal=PLoS ONE|volume=5|issue=12|pages=e15337|year=2010|pmid=21179515|pmc=3002271|doi=10.1371/journal.pone.0015337|url=http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0015337}}</ref>。抗うつ薬全体では8.4倍、[[フルオキセチン]](プロザック(日本では未認可)、SSRI)で10.9倍、[[パロキセチン]](パキシル、SSRI)10.3倍、[[フルボキサミン]](デプロメール、SSRI)8.4倍、[[ベンラファキシン]](SNRI)8.3倍、{{仮リンク|デスベンラファキシン|en|desvenlafaxine}}(SNRI)7.9倍、[[セルトラリン]](ジェイゾロフト、SSRI)6.7倍、[[エスシタロプラム]](レクサプロ、SSRI)5.0倍、シタロプラム(SSRI)4.3倍、[[アミトリプチリン]](トリプタノール、三環系)4.2 |
食品医薬品局(FDA)の有害事象報告システム(AERS)のデータのうち、殺人や暴力の基準を満たしたものを同定し、暴力が起きた件数の79%を31つの薬で占めたが、そのうち抗うつ薬は13つである<ref name="pmid21179515">{{cite journal|last1=Ross|first1=Joseph S.|last2=Moore|first2=Thomas J.|last3=Glenmullen|first3=Joseph|last4=Furberg|first4=Curt D.|title=Prescription Drugs Associated with Reports of Violence Towards Others|journal=PLoS ONE|volume=5|issue=12|pages=e15337|year=2010|pmid=21179515|pmc=3002271|doi=10.1371/journal.pone.0015337|url=http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0015337}}</ref>。抗うつ薬全体では8.4倍、[[フルオキセチン]](プロザック(日本では未認可)、SSRI)で10.9倍、[[パロキセチン]](パキシル、SSRI)10.3倍、[[フルボキサミン]](デプロメール、SSRI)8.4倍、[[ベンラファキシン]](SNRI)8.3倍、{{仮リンク|デスベンラファキシン|en|desvenlafaxine}}(SNRI)7.9倍、[[セルトラリン]](ジェイゾロフト、SSRI)6.7倍、[[エスシタロプラム]](レクサプロ、SSRI)5.0倍、シタロプラム(SSRI)4.3倍、[[アミトリプチリン]](トリプタノール、三環系)4.2倍、[[トラゾドン]](レスリン、デジレル)3.5倍、[[ミルタザピン]](リフレックス、レメロン、NaSSA)3.4倍、であった。抗うつ薬の服用者の年齢が下がるほど他害行為の傾向が見られた<ref name="PMDSI261">{{Cite report |df=ja |date=September 2009 |title=医薬品・医療機器等安全性情報PMDSI No261|url=http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_anzen/file/PMDSI261.pdf|format=pdf |chapter=SSRI/SNRIと他害行為について|pages= 8-12|publisher=医薬品医療機器総合機構 |accessdate=2013-02-23}}</ref>。 |
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[[#自殺]]の節も参照。 |
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=== 事故 === |
=== 事故 === |
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=== 離脱症状 === |
=== 離脱症状 === |
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{{See also|抗うつ薬中断症候群}} |
{{See also|抗うつ薬中断症候群}} |
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抗うつ薬を急に中断した場合、頻繁に、身体と精神の両方に[[離脱]]の要素のある[[抗うつ薬中断症候群]]を生じさせる<ref name="AAFP">{{cite journal |vauthors=Warner CH, Bobo W, Warner C, Reid S, Rachal J |title=Antidepressant discontinuation syndrome |journal=Am Fam Physician |volume=74 |issue=3 |pages=449–56 |year=2006 |pmid=16913164 |doi= |url=}}</ref><ref>{{cite journal|last=Tamam|first=L.|coauthors=Ozpoyraz N.|title=Selective serotonin reuptake inhibitor discontinuation syndrome: a review.|journal=Adv Ther.| |
抗うつ薬を急に中断した場合、頻繁に、身体と精神の両方に[[離脱]]の要素のある[[抗うつ薬中断症候群]]を生じさせる<ref name="AAFP">{{cite journal |vauthors=Warner CH, Bobo W, Warner C, Reid S, Rachal J |title=Antidepressant discontinuation syndrome |journal=Am Fam Physician |volume=74 |issue=3 |pages=449–56 |year=2006 |pmid=16913164 |doi= |url=}}</ref><ref name="pmid12008858">{{cite journal|last=Tamam|first=L.|coauthors=Ozpoyraz N.|title=Selective serotonin reuptake inhibitor discontinuation syndrome: a review.|journal=Adv Ther.|date=2002|volume=19|issue=1|pages=17–26|pmid=12008858 |doi=10.1007/BF02850015}}</ref>。離脱症状は、抗うつ薬を6週間以上服用した後に服薬をやめた数時間から1日程度で表れる可能性があり、少なくとも2〜3週間後であるうつ病の再発とは異なる<ref name=AAFP />。症状は軽度なことが多いが、少数は医師による治療が必要である<ref name=AAFP />。 |
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離脱症状は、SSRIのほか、三環系抗うつ薬<ref>{{cite journal|last=Kramer|first=J.C.|coauthors=Klein D.Fl, Fink M.|title=Withdrawal symptoms following discontinuation of imiparmine therapy|journal=Am J Psychiatry|year=1961|volume=118|pages=548–550}}</ref>、モノアミン酸化酵素阻害薬(日本では抗うつ薬として未認可)<ref>{{cite journal|last=Haddad|first=P.M.|title=Antidepressant discontinuation syndromes. Clinical relevance, prevention and management|journal=Drug Saf|year=2001|volume=24| issue = 3|pages=183–197|url=http://www.ingentaconnect.com/content/adis/dsf/2001/00000024/00000003/art00003}}</ref>、非定型抗うつ薬(たとえば[[ベンラファキシン]]、[[ミルタザピン]]、[[トラゾドン]]、 |
離脱症状は、SSRIのほか、三環系抗うつ薬<ref>{{cite journal|last=Kramer|first=J.C.|coauthors=Klein D.Fl, Fink M.|title=Withdrawal symptoms following discontinuation of imiparmine therapy|journal=Am J Psychiatry|year=1961|volume=118|pages=548–550}}</ref>、モノアミン酸化酵素阻害薬(日本では抗うつ薬として未認可)<ref>{{cite journal|last=Haddad|first=P.M.|title=Antidepressant discontinuation syndromes. Clinical relevance, prevention and management|journal=Drug Saf|year=2001|volume=24| issue = 3|pages=183–197|url=http://www.ingentaconnect.com/content/adis/dsf/2001/00000024/00000003/art00003}}</ref>、非定型抗うつ薬(たとえば[[ベンラファキシン]]、[[ミルタザピン]]、[[トラゾドン]]、など)で報告されている<ref name=AAFP />。 |
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2018年の[[システマティックレビュー]]では14件の研究から離脱症状の出現率は平均56%(27-86%の範囲)であり、患者への告知、ガイドラインの更新が必要とされる<ref name="pmid30292574">{{cite journal|author=Davies J, Read J|title=A systematic review into the incidence, severity and duration of antidepressant withdrawal effects: Are guidelines evidence-based?|journal=Addict Beha|date=September 2018|pmid=30292574|doi=10.1016/j.addbeh.2018.08.027}}</ref>。46%が重症となり、症状の期間が数か月までにわたることも珍しくはない<ref name="pmid30292574"/>。 |
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デンマークにおけるノルディック・コクラン・センターの研究者は、SSRI中断の兆候と症状を[[ベンゾジアゼピン離脱症状]]におけるものと比較し、両方に離脱反応として[[依存症]]症候群を示し、酷似していたと結論した<ref name="pmid21992148">{{cite journal|last=Nielsen|first=Margrethe|coauthors=Hansen E.H.,Gotzsche P.C.|title=What is the difference between dependence and withdrawal reactions? A comparison of benzodiazepines and selective serortonin re-uptake inhibitors|journal=Addiction|year=2012|month=May|volume=107|issue=5|pages=900–908|pmid=21992148}}</ref>。ほかの場所では、SSRIが依存症を引き起こすという懸念が持ち上がっている<ref>{{cite book|last=Medawar|first=C.|title=Medicines out of Control|year=2004|publisher=Aksant|location=The Netherlands}}</ref>。抗うつ薬は、[[時計遺伝子]]として知られる転写因子と相互に作用する可能性があり<ref>{{Cite journal|author=Uz T, Ahmed R, Akhisaroglu M, Kurtuncu M, Imbesi M, Dirim Arslan A, Manev H |title=Effect of fluoxetine and cocaine on the expression of clock genes in the mouse hippocampus and striatum |journal=Neuroscience |volume=134 |issue=4 |pages=1309–16 |year=2005 |pmid=15994025 |doi=10.1016/j.neuroscience.2005.05.003}}</ref>、薬物の依存性(薬物乱用)とおそらく肥満に関与している<ref>{{Cite journal|author=Yuferov V, Butelman E, Kreek M |title=Biological clock: biological clocks may modulate drug addiction |journal=Eur J Hum Genet |volume=13 |issue=10 |pages=1101–3 |year=2005 |pmid=16094306 |doi=10.1038/sj.ejhg.5201483}}</ref><ref>{{Cite journal|author=Manev H, Uz T |title=Clock genes as a link between addiction and obesity |journal=Eur J Hum Genet |volume=14 |issue=1 |page=5 |year=2006 |pmid=16288309 |doi=10.1038/sj.ejhg.5201524}}</ref>。6〜9か月を超える長期の治療の場合、このプロセスは抗うつ薬の初期の急性効果を妨害する(臨床効果の減少)。薬物治療の終了時にこのプロセスのみとなって離脱症状を生じさせ、再発の脆弱さが増す。このプロセスは必ずしも可逆的ではない。それどころか多くの抗うつ薬が切り替えあるいは増強されており、反耐性が起きる<ref name = fava2011>{{cite journal|last=Fava|first=Giovanni A.|coauthors=Offidani Emanuela|title=The mechanisms of tolerance in antidepressant action|journal=Progress in Neuropsychopharmacology & Biological Psychiatry|year=2011|month=August|volume=35|issue=7|pages=1593–1602 |doi=10.1016/j.pnpbp.2010.07.026 |accessdate=29 November 2012}}</ref>。 |
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デンマークにおけるノルディック・コクラン・センターの研究者は、SSRI中断の兆候と症状を[[ベンゾジアゼピン離脱症状]]におけるものと比較し、両方に離脱反応として[[依存症]]症候群を示し、酷似していたと結論した<ref name="pmid21992148">{{cite journal|last=Nielsen|first=Margrethe|coauthors=Hansen E.H.,Gotzsche P.C.|title=What is the difference between dependence and withdrawal reactions? A comparison of benzodiazepines and selective serortonin re-uptake inhibitors|journal=Addiction|year=2012|month=May|volume=107|issue=5|pages=900–908|pmid=21992148}}</ref>。ほかの場所では、SSRIが依存症を引き起こすという懸念が持ち上がっている<ref>{{cite book|last=Medawar|first=C.|title=Medicines out of Control|year=2004|publisher=Aksant|location=The Netherlands}}</ref>。抗うつ薬は、[[時計遺伝子]]として知られる転写因子と相互に作用する可能性があり<ref>{{Cite journal|author=Uz T, Ahmed R, Akhisaroglu M, Kurtuncu M, Imbesi M, Dirim Arslan A, Manev H |title=Effect of fluoxetine and cocaine on the expression of clock genes in the mouse hippocampus and striatum |journal=Neuroscience |volume=134 |issue=4 |pages=1309–16 |year=2005 |pmid=15994025 |doi=10.1016/j.neuroscience.2005.05.003}}</ref>、薬物の依存性(薬物乱用)とおそらく肥満に関与している<ref>{{Cite journal|author=Yuferov V, Butelman E, Kreek M |title=Biological clock: biological clocks may modulate drug addiction |journal=Eur J Hum Genet |volume=13 |issue=10 |pages=1101–3 |year=2005 |pmid=16094306 |doi=10.1038/sj.ejhg.5201483}}</ref><ref>{{Cite journal|author=Manev H, Uz T |title=Clock genes as a link between addiction and obesity |journal=Eur J Hum Genet |volume=14 |issue=1 |page=5 |year=2006 |pmid=16288309 |doi=10.1038/sj.ejhg.5201524}}</ref>。6〜9か月を超える長期の治療の場合、このプロセスは抗うつ薬の初期の急性効果を妨害する(臨床効果の減少)。薬物治療の終了時にこのプロセスのみとなって離脱症状を生じさせ、再発の脆弱さが増す。このプロセスは必ずしも可逆的ではない。それどころか多くの抗うつ薬が切り替えあるいは増強されており、反耐性が起きる<ref name = fava2011>{{cite journal|last=Fava|first=Giovanni A.|coauthors=Offidani Emanuela|title=The mechanisms of tolerance in antidepressant action|journal=Progress in Neuropsychopharmacology & Biological Psychiatry|year=2011|month=August|volume=35|issue=7|pages=1593–1602 |doi=10.1016/j.pnpbp.2010.07.026 |accessdate=2012-11-29}}</ref>。 |
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SSRI中断の離脱症状の一部を挙げる:怒り、不安、パニック、抑うつ、離人症、剥離、精神錯乱、集中力の低下、記憶の問題、号泣発作、幻覚、躁、せん妄、平衡感覚の問題、視覚障害、電撃の感覚<ref name="JClinPsy2004-Baboolal"/><ref>{{cite journal |author = Reeves R, Mack J, Beddingfield J |title = Shock-like sensations during venlafaxine withdrawal |journal = Pharmacotherapy |volume = 23 |issue = 5 |pages = 678–81 |year = 2003 |pmid = 12741444 |doi = 10.1592/phco.23.5.678.32198}}</ref>、無感覚、知覚障害、むずむず脚、うずき、振戦、震え、パーキンソン、攻撃性、緊張。 |
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SSRI中断の離脱症状の一部を挙げる:怒り、不安、パニック、抑うつ、離人症、剥離、精神錯乱、集中力の低下、記憶の問題、号泣発作、幻覚、躁、せん妄、平衡感覚の問題、視覚障害、電撃の感覚<ref name="JClinPsy2004-Baboolal" /><ref>{{cite journal |author = Reeves R, Mack J, Beddingfield J |title = Shock-like sensations during venlafaxine withdrawal |journal = Pharmacotherapy |volume = 23 |issue = 5 |pages = 678–81 |year = 2003 |pmid = 12741444 |doi = 10.1592/phco.23.5.678.32198}}</ref>、無感覚、知覚障害、むずむず脚、うずき、振戦、震え、パーキンソン、攻撃性、緊張。 |
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さらに、増量でも減量でも抗うつ薬の用量の変更が生じた場合、自殺の危険性が2倍になると見られている<ref name="Valuck 2009 1069–1077"/>。 |
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さらに、増量でも減量でも抗うつ薬の用量の変更が生じた場合、自殺の危険性が2倍になると見られている<ref name="Valuck 2009 1069–1077" />。 |
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離脱と反発の作用の強度を最小化するには<ref>{{cite web|url=http://www.biopsychiatry.com/addictionp.htm |title=Antidepressants and Addiction |publisher=Biopsychiatry.com |date= |accessdate=2012-11-30}}</ref>、抗うつ薬は、減量に対する個人の反応に応じて、数週間から数カ月の期間継続すべきである。中断のためのアシュトンによる手順では、毎週か2週ごとに、残りの用量の10%の減量を勧めている<ref>{{cite report|last=Ashton|first=Heather|title=ベンゾジアゼピン - それはどのように作用し、離脱するにはどうすればよいか|url=http://www.benzo.org.uk/amisc/japan.pdf|format=pdf|date=2002-08|publisher=Professor C H Ashton|accessdate=2013-01-19}}</ref>。 |
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離脱と反発の作用の強度を最小化するには<ref>{{cite web|url=http://www.biopsychiatry.com/addictionp.htm |title=Antidepressants and Addiction |publisher=Biopsychiatry.com |date= |accessdate=2012-11-30}}</ref>、抗うつ薬は、減量に対する個人の反応に応じて、数週間から数カ月の期間継続すべきである。中断のためのアシュトンによる手順では、毎週か2週ごとに、残りの用量の10%の減量を勧めている<ref>{{cite report|df=ja|last=Ashton|first=Heather|title=ベンゾジアゼピン - それはどのように作用し、離脱するにはどうすればよいか|url=http://www.benzo.org.uk/amisc/japan.pdf|format=pdf|date=August 2002|publisher=Professor C H Ashton|accessdate=2013-01-19}}</ref>。 |
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大部分の事例では、中断症状は最後の1〜4週間まで存続するが、おそらく15%までの少数の利用者は、離脱後1年間にわたり離脱症状が持続する<ref>{{cite journal|last=Fava|first=GA|coauthors=Bernardi M, Tomba E, Rafanelli C.|title=Effects of gradual discontinuation of selective serotonin reuptake inhibitors in panic disorder with agoraphobia|journal=Int. J. Neuropsychopharmacology|year=2007|month=December|volume=10|issue=6|pages=835–838|url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17224089}}</ref>。 |
大部分の事例では、中断症状は最後の1〜4週間まで存続するが、おそらく15%までの少数の利用者は、離脱後1年間にわたり離脱症状が持続する<ref>{{cite journal|last=Fava|first=GA|coauthors=Bernardi M, Tomba E, Rafanelli C.|title=Effects of gradual discontinuation of selective serotonin reuptake inhibitors in panic disorder with agoraphobia|journal=Int. J. Neuropsychopharmacology|year=2007|month=December|volume=10|issue=6|pages=835–838|url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17224089}}</ref>。 |
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離脱症状の、出現率は全体では20%程度だが、パロキセチン(パキシル)で66%、セルトラリン(ゾロフト)で60%と薬剤によって異なり、血中半減期が短いものが出現率が高い傾向がある<ref name="AAFP"/>。 |
離脱症状の、出現率は全体では20%程度だが、パロキセチン(パキシル)で66%、セルトラリン(ゾロフト)で60%と薬剤によって異なり、血中半減期が短いものが出現率が高い傾向がある<ref name="AAFP" />。 |
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パロキセチンとベンラファキシンは<ref name="JClinPsy2004-Baboolal">{{cite journal |author = Baboolal N |title = Venlafaxine withdrawal syndrome: report of seven cases in Trinidad |journal = J Clin Psychopharmacol |volume = 24 |issue = 2 |pages = 229–31 |year = 2004 |pmid = 15206672 |doi = 10.1097/01.jcp.0000117427.05703.f2}}</ref><ref name="DrugSaf2001-Haddad">{{cite journal |author = Haddad P |title = Antidepressant discontinuation syndromes |journal = Drug Saf |volume = 24 |issue = 3 |pages = 183–97 |year = 2001 |pmid = 11347722 |doi = 10.2165/00002018-200124030-00003}}</ref><ref name="AmJPsych1997-fava">{{cite journal |author=Fava M, Mulroy R, Alpert J, Nierenberg A, Rosenbaum J |title=Emergence of adverse events following discontinuation of treatment with extended-release venlafaxine |journal=Am J Psychiatry |volume=154 |issue=12 |pages=1760–2 |year=1997 |pmid=9396960}}</ref><ref name="ANZ JPsych1998-parker">{{cite journal |author=Parker G, Blennerhassett J |title=Withdrawal reactions associated with venlafaxine |journal=Aust N Z J Psychiatry |volume=32 |issue=2 |pages=291–4 |year=1998 |pmid=9588310 |doi=10.3109/00048679809062742}}</ref><ref>{{cite journal |author = van Noorden M, Vergouwen A, Koerselman G |title = [Delirium during withdrawal of venlafaxine] |journal = Ned Tijdschr Geneeskd |volume = 146 |issue = 26 |pages = 1236–7 |year = 2002 |pmid = 12132141}}</ref><ref>{{cite journal |author = Nissen C, Feige B, Nofzinger E, Riemann D, Berger M, Voderholzer U |title = Transient narcolepsy-cataplexy syndrome after discontinuation of the antidepressant venlafaxine |journal = J Sleep Res |volume = 14 |issue = 2 |pages = 207–8 |year = 2005 |pmid = 15910521 |doi = 10.1111/j.1365-2869.2005.00447.x}}</ref><ref name="AmJPsych1997-agelink">{{cite journal |author = Agelink M, Zitzelsberger A, Klieser E |title = Withdrawal syndrome after discontinuation of venlafaxine |journal = Am J Psychiatry |volume = 154 |issue = 10 |pages = 1473–4 |year = 1997 |pmid = 9326838}}</ref>、中断が特に困難なようで、18か月以上持続する長期にわたる離脱症状がパロキセチンで報告されている<ref |
パロキセチンとベンラファキシンは<ref name="JClinPsy2004-Baboolal">{{cite journal |author = Baboolal N |title = Venlafaxine withdrawal syndrome: report of seven cases in Trinidad |journal = J Clin Psychopharmacol |volume = 24 |issue = 2 |pages = 229–31 |year = 2004 |pmid = 15206672 |doi = 10.1097/01.jcp.0000117427.05703.f2}}</ref><ref name="DrugSaf2001-Haddad">{{cite journal |author = Haddad P |title = Antidepressant discontinuation syndromes |journal = Drug Saf |volume = 24 |issue = 3 |pages = 183–97 |year = 2001 |pmid = 11347722 |doi = 10.2165/00002018-200124030-00003}}</ref><ref name="AmJPsych1997-fava">{{cite journal |author=Fava M, Mulroy R, Alpert J, Nierenberg A, Rosenbaum J |title=Emergence of adverse events following discontinuation of treatment with extended-release venlafaxine |journal=Am J Psychiatry |volume=154 |issue=12 |pages=1760–2 |year=1997 |pmid=9396960}}</ref><ref name="ANZ JPsych1998-parker">{{cite journal |author=Parker G, Blennerhassett J |title=Withdrawal reactions associated with venlafaxine |journal=Aust N Z J Psychiatry |volume=32 |issue=2 |pages=291–4 |year=1998 |pmid=9588310 |doi=10.3109/00048679809062742}}</ref><ref>{{cite journal |author = van Noorden M, Vergouwen A, Koerselman G |title = [Delirium during withdrawal of venlafaxine] |journal = Ned Tijdschr Geneeskd |volume = 146 |issue = 26 |pages = 1236–7 |year = 2002 |pmid = 12132141}}</ref><ref>{{cite journal |author = Nissen C, Feige B, Nofzinger E, Riemann D, Berger M, Voderholzer U |title = Transient narcolepsy-cataplexy syndrome after discontinuation of the antidepressant venlafaxine |journal = J Sleep Res |volume = 14 |issue = 2 |pages = 207–8 |year = 2005 |pmid = 15910521 |doi = 10.1111/j.1365-2869.2005.00447.x}}</ref><ref name="AmJPsych1997-agelink">{{cite journal |author = Agelink M, Zitzelsberger A, Klieser E |title = Withdrawal syndrome after discontinuation of venlafaxine |journal = Am J Psychiatry |volume = 154 |issue = 10 |pages = 1473–4 |year = 1997 |pmid = 9326838}}</ref>、中断が特に困難なようで、18か月以上持続する長期にわたる離脱症状がパロキセチンで報告されている<ref name="pmid12008858"/>。いくつかのピア・サポートのグループが、患者が抗うつ薬を徐々に減らすための支援を行っている<ref>{{cite web|title=Paxil Progress|url=http://www.paxilprogress.org/forums/|accessdate=2012-11-27}}</ref><ref>{{cite web|title=Surviving Antidepressants|url=http://survivingantidepressants.org/|accessdate=2012-11-27}}</ref>。 |
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2013年に発行された『[[精神障害の診断と統計マニュアル]]』第5版(DSM-5)では、抗うつ薬中断症候群(Antidepressant Discontinuation Syndrome)の診断名が追加された。 |
2013年に発行された『[[精神障害の診断と統計マニュアル]]』第5版(DSM-5)では、抗うつ薬中断症候群(Antidepressant Discontinuation Syndrome)の診断名が追加された。 |
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== 抗うつ薬の種類 == |
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{| class="wikitable floatright" style="font-size:85%; margin-left:1em" |
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|+日本で用いる事ができる抗うつ薬の一覧<ref>加藤忠史 『うつ病治療の基礎知識』 筑摩選書、2014年(平成26年)。ISBN 978-4480015914。</ref> |
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!系統!!薬品名(カッコ内は商品名) |
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| rowspan="8"|三環系 || アモキサピン(アモキサン) |
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|ノルトリプチリン(ノリトレン) |
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|アミトリプチリン(トリプタノール) |
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|トリミプラミン(スルモンチール) |
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|イミプラミン(イミドール、トフラニール) |
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|クロミプラミン(アナフラニール) |
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|ドスレピン(プロチアデン) |
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|ロフェプラミン(アンプリット) |
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| rowspan="3"|四環系 || マプロチリン(ルジオミール) |
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|セチプチリン(テシプール) |
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|ミアンセリン(テトラミド) |
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| rowspan="4"|SSRI || フルボキサミン(デプロメール、ルボックス) |
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|パロキセチン(パキシル) |
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|セルトラリン(ジェイゾロフト) |
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|エスシタロプラム(レクサプロ) |
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| rowspan="3"|SNRI || ミルナシプラン(トレドミン) |
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|デュロキセチン(サインバルタ) |
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|ベンラファキシン(イフェクサー) |
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| NaSSA || ミルタザピン(リフレックス、レメロン) |
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| その他 || トラゾドン(デジレル、レスリン) |
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|} |
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SSRIを、境にしてグループにすることが一般的である。例えば、日本うつ病学会の診療ガイドラインは、SSRI、SNRI、ミルタザピンなどを、「新規抗うつ薬」としてひっくるめている{{sfn|日本うつ病学会|pp=28-30}}。あるいは研究者はこれら新規抗うつ薬を第二世代と呼ぶことが一般的である。 |
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有効性では新規の抗うつ薬と従来の抗うつ薬とに違いはないとう見解は混在する、一定した結論はない{{sfn|日本うつ病学会|pp=28-30}}。従来の抗うつ薬では、[[抗コリン作用]]による鎮静作用が強く、また自殺に用いられた際に死亡率が高い{{sfn|日本うつ病学会|pp=28-30}}。忍容性においては新規の抗うつ薬であるが、24歳以下で自殺を誘発する[[賦活症候群]]や中止時の離脱症候群、また高齢者での死亡率の上昇など副作用の違いがある{{sfn|日本うつ病学会|pp=28-30}}。どれが第一選択となるかということはない{{sfn|日本うつ病学会|pp=28-30}}。 |
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=== モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害薬) === |
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{{Main|モノアミン酸化酵素阻害薬}} |
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最も初期の抗うつ薬であるが、日本では抗うつ薬としてはほとんど使われず、パーキンソン病治療薬として専ら用いられている。 |
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=== 三環系抗うつ薬(TCA) === |
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{{Main|三環系抗うつ薬}} |
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もっとも古い抗うつ薬で1950年代に登場した。これらの薬のセロトニンやノルアドレナリンの再取り込みの阻害が後に発見され、改良につながっていった。三環系抗うつ薬の第1世代としては[[アミトリプチリン]] (トリプタノール、ラントロン)、[[イミプラミン]] (イミドール、トフラニール)、[[クロミプラミン]] (アナフラニール)、{{仮リンク|トリミプラミン|en|Trimipramine}} (スルモンチール)、[[ノルトリプチリン]](ノリトレン)。三環系抗うつ薬の第2世代としては[[アモキサピン]] (アモキサン)、{{仮リンク|ドスレピン|en|Dosulepin}}(プロチアデン)、{{仮リンク|ロフェプラミン|en|Lofepramine}}(アンプリット)が知られている。 |
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初期の抗うつ薬であるが使われ続けている薬である。その理由としては、有効性という点では新規抗うつ薬が優っているとは必ずしも言えず、抗コリン作用をはじめとした多くの副作用が存在するが、緊急入院患者のような重症では有効性が高い可能性があるという見解があるためである{{sfn|日本うつ病学会|pp=28-30}}。特徴としては三級アミンは二級アミンと比べると、鎮静作用、抗コリン作用が強く、起立性低血圧も起こしやすい。鎮静作用と体重増加の作用はヒスタミンH1受容体に対する親和性と相関している。起立性低血圧は[[アドレナリン受容体|アドレナリンα1受容体]]との親和性に相関している。またTCAは内服中断後、1週間は体内にとどまると考えられている。危険な副作用としては[[キニジン]]様作用といわれる心臓障害がある。 |
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;[[イミプラミン]] (イミドール、トフラニール) |
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:最初に作られたTCAである。アミトリプチリン よりも抗コリン作用、鎮静作用が弱いが[[ノルトリプチリン]]よりは強い。起立性低血圧も比較的少ない。 |
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;[[アミトリプチリン]] (トリプタノール、ラントロン) |
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:抗コリン作用、鎮静作用が最も強いTCAである。若年者で入眠障害がある患者に好まれる傾向がある。就寝前に多く飲ませることが多い。 |
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;[[クロミプラミン]] (アナフラニール) |
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:セロトニンの再取り込み阻害作用が強い。[[痙攣]]がおこる頻度が他のTCAよりも強いため、抗けいれん作用の強い抗不安薬を併用することが多い。注射薬があるため、うつ病による不穏、焦燥に対して3時間程度で25mgを点滴静注することもある。 |
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;[[ノルトリプチリン]](ノリトレン) |
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:セロトニンよりもノルアドレナリンの再取り込みを強く抑制する。焦燥感を起こすことが少ない。有効治療量の幅が狭く処方が難しい。 |
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;[[アモキサピン]] (アモキサン) |
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:第二世代のTCAであり、副作用、特に抗コリン作用が軽減されている。他のTCAよりも効果発現が早いといわれている。 |
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=== 四環系抗うつ薬 === |
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{{Main|四環系抗うつ薬}} |
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ノルアドレナリンの再取り込みを選択的に阻害し、セロトニンの再取り込みは阻害しない。抗コリン作用はTCAよりも軽減されている傾向があるが、痙攣を起こしやすく、抗けいれん作用の強い抗不安薬([[ジアゼパム]]や[[ニトラゼパム]])を併用することが多い。[[マプロチリン|塩酸マプロチリン]](ルジオミール)、[[ミアンセリン|塩酸ミアンセリン]](テトラミド)、[[セチプチリン|マレイン酸セチプチリン]](テシプール)が有名である。 |
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;[[ミアンセリン]](テトラミド) |
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:α2受容体を遮断することでノルアドレナリンの放出を促進する。抗ヒスタミン作用が強い薬物である。心毒性がないため非常に使いやすい抗うつ薬である。呼吸抑制と鎮静という副作用がある。SSRIとの併用による増強効果が報告されている数少ない薬物である。 |
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;[[セチプチリン]](テシプール) |
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:[[ミアンセリン]]を改良した薬物。中枢性セロトニン作用をもつ。鎮静の副作用はまれ。 |
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=== 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) === |
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{{Main|選択的セロトニン再取り込み阻害薬}} |
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[[フルボキサミン]](ルボックス、デプロメール)、[[パロキセチン]](パキシル)、[[セルトラリン]](ジェイゾロフト)、{{仮リンク|シタロプラム|en|Citalopram}}(日本未発売)、[[エスシタロプラム]](レクサプロ)が知られている。急に服薬を中止すると[[SSRI離脱症候群]]が発現する恐れがある。[[強迫性障害]]、[[社交不安障害]]、[[パニック障害]]、[[心的外傷後ストレス障害]]に適応があるものがある。双極性障害には[[気分安定薬]]と併用しない限り禁忌である。効果発現に2週間程度必要である。投与初期(1〜2週間程度)は悪心、嘔吐、不安、焦燥、不眠といった症状が出現することがあるが継続投与で軽快、消失する。持続することもある。[[セロトニン受容体]]に対する急性刺激と考えられている。少量では[[セロトニン]]選択性であるが、高用量となると[[ノルアドレナリン]]の再取り込みも阻害するようになる。 |
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=== セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI) === |
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{{Main|セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬}} |
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[[ミルナシプラン]](トレドミン)、[[ベンラファキシン]](イフェクサー)、[[デュロキセチン]](サインバルタ)、{{仮リンク|ネファゾドン|en|Nefazodone}}(サーゾーン)が含まれる。SSRIよりも意欲を高めるといった効果が期待されている。TCAのイミプラミンに近い作用となるがセロトニンとノルアドレナリン以外の受容体と相互作用をしないため副作用は非常に少ない。頭痛、口渇、排尿障害といった副作用は報告されている。 |
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=== トリアゾロピリジン系抗うつ薬(SARI) === |
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[[トラゾドン]](商品名レスリン、デジレル)は、セロトニンの再取り込みを阻害する他、セロトニン5-HT<sub>2</sub>受容体の阻害作用が強い薬物である。 |
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=== ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA) === |
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NaSSAは、Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressantの略。これまでのようにシナプスにおける神経伝達物質の再取り込みを阻害して濃度を上げるのではなく、セロトニン、ノルアドレナリンの分泌量そのものを増やす作用がある。α2ヘテロ受容体とα2受容体をふさぎ、セロトニンやノルアドレナリンが出ていないと錯覚させ分泌を促す。また、5-HT<sup>1</sup>受容体にセロトニンが結びつきやすくするために、5-HT<sup>1</sup>以外のセロトニン受容体をふさぐ。 |
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* [[ミルタザピン]]、合併した[[MSD]]からレメロン、[[Meiji Seika ファルマ]]からリフレックスとして発売されている。国内の臨床試験で、82.7%に何らかの副作用が認められた。50%で傾眠など。 |
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=== ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬(NDRI) === |
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日本国内においては未承認である。[[ブプロピオン]](商品名ウェルブトリン)が知られている。 |
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=== 選択的セロトニン再取り込み促進薬(SSRE) === |
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日本国内においては未承認である。{{仮リンク|チアネプチン|en|Tianeptine}}が知られている。[[:en:Selective serotonin reuptake enhancer]]も参照のこと。 |
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=== 増補薬 === |
=== 増補薬 === |
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* [[抗不安薬]] - 一般的に[[ベンゾジアゼピン系]]は不安を和らげ睡眠を促進するために処方されている。しかしながら[[ベンゾジアゼピン依存症|依存]]の危険性が高いため、これらの薬物は短期的または頓服用に用いられることが推奨される。 |
* [[抗不安薬]] - 一般的に[[ベンゾジアゼピン系]]は不安を和らげ睡眠を促進するために処方されている。しかしながら[[ベンゾジアゼピン依存症|依存]]の危険性が高いため、これらの薬物は短期的または頓服用に用いられることが推奨される。 |
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* [[抗精神病薬]] - 特に高用量では、目のかすみ・筋肉 |
* [[抗精神病薬]] - 特に高用量では、目のかすみ・筋肉痙攣・落ち着きのなさ・[[遅発性ジスキネジア]]・体重増加などの重篤な副作用を引き起こす可能性がある。 |
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** [[スルピリド]](商品名:ドグマチール等) - 300mg以下/日の低用量では抗うつ薬、300〜1200mg/日の高用量では[[抗精神病薬]]として作用する。うつ病学会によれば、抗精神病薬の副作用のためスルピリドは推奨されない{{sfn|日本うつ病学会|2012|p=24}}。TCA、SSRI、SNRI等と比較して即効性がある。 |
** [[スルピリド]](商品名:ドグマチール等) - 300mg以下/日の低用量では抗うつ薬、300〜1200mg/日の高用量では[[抗精神病薬]]として作用する。うつ病学会によれば、抗精神病薬の副作用のためスルピリドは推奨されない{{sfn|日本うつ病学会|気分障害のガイドライン作成委員会|2012|p=24}}。TCA、SSRI、SNRI等と比較して即効性がある。 |
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** [[アリピプラゾール]](商品名:エビリファイ等) - [[統合失調症]]の薬として開発されたがうつ病・うつ状態にも効果がある(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)<ref>[http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1179045F4022_1_07/ エビリファイ添付文書]</ref> |
** [[アリピプラゾール]](商品名:エビリファイ等) - [[統合失調症]]の薬として開発されたがうつ病・うつ状態にも効果がある(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)<ref>[http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1179045F4022_1_07/ エビリファイ添付文書] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20131023060759/http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1179045F4022_1_07/ |date=2013年10月23日 }}</ref>。 |
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* [[リチウム塩]](商品名:リーマス等) - 日本国内においては[[抗躁薬]]として発売され、保険適応も[[躁病]]・躁うつ病([[双極性障害]])であり、[[気分安定薬]]としての効能が臨床的に認められている。抗うつ薬の補強として用いられる。 |
* [[リチウム塩]](商品名:リーマス等) - 日本国内においては[[抗躁薬]]として発売され、保険適応も[[躁病]]・躁うつ病([[双極性障害]])であり、[[気分安定薬]]としての効能が臨床的に認められている。抗うつ薬の補強として用いられる。 |
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なお、薬物治療抵抗性うつ病や再発性うつ病も含めた中等症から重症のうつ病にたいして抗うつ薬の効果の[[増強療法]]が選択される場合がある{{sfn|日本うつ病学会|2013|p=34}}。[[#増強および併用]]を参照。 |
なお、薬物治療抵抗性うつ病や再発性うつ病も含めた中等症から重症のうつ病にたいして抗うつ薬の効果の[[増強療法]]が選択される場合がある{{sfn|日本うつ病学会|気分障害のガイドライン作成委員会|2013|p=34}}。[[#増強および併用]]を参照。 |
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=== 物忘れ === |
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アミトリプチリンなどの一部の古い抗うつ剤は物忘れを引き起こすので、医師と相談する必要がある<ref>{{Cite web |title=Harvard Health |url=https://www.health.harvard.edu/topics/memory |website=www.health.harvard.edu |access-date=2022-10-23 |language=en}}</ref>。 |
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== 治療効果 == |
== 治療効果 == |
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抗うつ薬の効果は、副作用に関連するリスクを正当化するために偽薬をしのぐべきである。うつ病の重症度の評価に[[ハミルトンうつ病評価尺度]](HAM-D)が、しばしば用いられる<ref>{{cite journal|last=Hamilton|first=M|title=A rating scale for depression.|journal=Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry|year=1960|volume=23|pages=56–62|doi=10.1136/jnnp.23.1.56|pmid=14399272}}</ref>。HAM-Dの17項目のアンケートからの最大スコアは52点である;高いスコアがより重度のうつ病である。何が薬に対する十分な反応に相当するのかについては十分に確立されていないが、寛解あるいはすべてのうつ症状の実際の除去が目標であり、しかしながら寛解率はまれにしか公表されていない。症状軽減の割合は、抗うつ薬による46-54%に対して偽薬では31-38%である<ref>{{cite journal|last=Khan|first=Arif|coauthors=Faucett, J., Lichtenberg P., Kirsch I., Brown W.A.|title=A Systematic Review of Comparative Efficacy of Treatments and Controls for Depression|journal=PLoS One|date=30 |
抗うつ薬の効果は、副作用に関連するリスクを正当化するために偽薬をしのぐべきである。うつ病の重症度の評価に[[ハミルトンうつ病評価尺度]](HAM-D)が、しばしば用いられる<ref>{{cite journal|last=Hamilton|first=M|title=A rating scale for depression.|journal=Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry|year=1960|volume=23|pages=56–62|doi=10.1136/jnnp.23.1.56|pmid=14399272}}</ref>。HAM-Dの17項目のアンケートからの最大スコアは52点である;高いスコアがより重度のうつ病である。何が薬に対する十分な反応に相当するのかについては十分に確立されていないが、寛解あるいはすべてのうつ症状の実際の除去が目標であり、しかしながら寛解率はまれにしか公表されていない。症状軽減の割合は、抗うつ薬による46-54%に対して偽薬では31-38%である<ref>{{cite journal|last=Khan|first=Arif|coauthors=Faucett, J., Lichtenberg P., Kirsch I., Brown W.A.|title=A Systematic Review of Comparative Efficacy of Treatments and Controls for Depression|journal=PLoS One|date=2012年7月30日|pages=e41778|doi=10.1371/journal.pone.0041778|url=http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0041778|accessdate=2012-11-28}}</ref>。 |
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234の研究から、第二世代の13種の抗うつ薬 |
234の研究から、第二世代の13種の抗うつ薬[[シタロプラム]]、{{仮リンク|デスベンラファキシン|en|Desvenlafaxine}}、[[エスシタロプラム]]、[[フルオキセチン]](日本では未認可)、[[フルボキサミン]]、[[ミルタザピン]]、{{仮リンク|ネファゾドン|en|Nefazodone}}、[[パロキセチン]]、[[セルトラリン]]、[[トラゾドン]]、[[ベンラファキシン]])にて、年齢、性別、民族、併発疾患を考慮しても、うつ病の急性期、継続期、維持期の治療に対して、ほかのものを上回る臨床的に意味のある優越は発見されなかった<ref>{{cite journal|last=Gartlehner|first=Gerald|coauthors=Hansen R.A., Morgan L.C et al.|title=Comparative Benefits and Harms of Second-Generation Antidepressants for Treating Major Depressive Disorder: An Updated Meta-analysis|journal=Annals of Internal Medicine|year=2011|month=Dec|volume=155|issue=11|pages=772–785|url=http://annals.org/article.aspx?articleid=1033198|accessdate=2012-11-28}}</ref>。 |
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うつ病の薬物治療の有効性について、アメリカ国立精神衛生研究所によって委託されこれまでに最大規模かつ高額な費用がかかった研究、STAR*D (Sequenced Treatment Alternatives to Relieve Depression) が実施された<ref>{{cite web|title=Sequenced Treatment Alternatives to Relieve Depression (STAR*D) Study|url=http://www.nimh.nih.gov/trials/practical/stard/index.shtml|publisher=National Institute of Mental Health|accessdate=28 |
うつ病の薬物治療の有効性について、アメリカ国立精神衛生研究所によって委託されこれまでに最大規模かつ高額な費用がかかった研究、STAR*D (Sequenced Treatment Alternatives to Relieve Depression) が実施された<ref>{{cite web|title=Sequenced Treatment Alternatives to Relieve Depression (STAR*D) Study|url=http://www.nimh.nih.gov/trials/practical/stard/index.shtml|publisher=National Institute of Mental Health|accessdate=2012-11-28}}</ref>。その結果<ref>{{cite journal|last=Fava|first=Maurizio|coauthors=et al|title=A Compariそのson of Mirtazapine and Nortriptyline Following Two Consecutive Failed Medication Treatments for Depressed Outpatients: A STAR*D Report|journal=Am J Psychiatry|year=2006|volume=163: number 7|pages=1161–1172|url=http://ajp.psychiatryonline.org/article.aspx?articleID=96787&RelatedWidgetArticles=true|accessdate=2012-11-28}}</ref><ref name="pmid16554526"/>の概要は以下である。STAR*Dの各過程は14週間ごとであり、従って14週後における寛解率や脱落率を表す。 |
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*治療の最初の過程の後、2,876人の参加者のうち、27.5%がHAM-Dの点数が7点以下となり寛解に達した。21%が脱落した<ref name="pmid16390886">{{Cite journal|author=Trivedi MH, Rush AJ, Wisniewski SR |title=Evaluation of outcomes with citalopram for depression using measurement-based care in STAR*D: implications for clinical practice |journal=The American Journal of Psychiatry |volume=163 |issue=1 |pages=28–40 |year=2006 |pmid=16390886 |doi=10.1176/appi.ajp.163.1.28}}</ref>。 |
*治療の最初の過程の後、2,876人の参加者のうち、27.5%がHAM-Dの点数が7点以下となり寛解に達した。21%が脱落した<ref name="pmid16390886">{{Cite journal|author=Trivedi MH, Rush AJ, Wisniewski SR |title=Evaluation of outcomes with citalopram for depression using measurement-based care in STAR*D: implications for clinical practice |journal=The American Journal of Psychiatry |volume=163 |issue=1 |pages=28–40 |year=2006 |pmid=16390886 |doi=10.1176/appi.ajp.163.1.28}}</ref>。 |
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* 次の治療の過程の後、残り1,439人の参加者のうち21-30%が寛解した。310人の参加者だけが研究の継続に協力的であるか継続可能であった<ref name="pmid16554526">{{Cite journal|author=Trivedi MH, Fava M, Wisniewski SR |title=Medication augmentation after the failure of SSRIs for depression |journal=N. Engl. J. Med. |volume=354 |issue=12 |pages=1243–52 | |
* 次の治療の過程の後、残り1,439人の参加者のうち21-30%が寛解した。310人の参加者だけが研究の継続に協力的であるか継続可能であった<ref name="pmid16554526">{{Cite journal|author=Trivedi MH, Fava M, Wisniewski SR |title=Medication augmentation after the failure of SSRIs for depression |journal=N. Engl. J. Med. |volume=354 |issue=12 |pages=1243–52 |date=2006年3月23日 |pmid=16554526 |doi=10.1056/NEJMoa052964|url=http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa052964}}</ref>。薬の切り替えでは約25%の患者が寛解に達した<ref name="pmid16554525">{{Cite journal|author=Rush AJ, Trivedi MH, Wisniewski SR |title=Bupropion-SR, sertraline, or venlafaxine-XR after failure of SSRIs for depression |journal=N. Engl. J. Med. |volume=354 |issue=12 |pages=1231–42 |year=2006 |pmid=16554525 |doi=10.1056/NEJMoa052963}}</ref>。 |
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* 3番目の治療の過程の後、残り310人の参加者のうち、17.8%が寛解した。 |
* 3番目の治療の過程の後、残り310人の参加者のうち、17.8%が寛解した。 |
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* 4番目の治療の過程の後、残り109人の参加者のうち、10.1%が寛解した。 |
* 4番目の治療の過程の後、残り109人の参加者のうち、10.1%が寛解した。 |
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* 1年後の追跡調査で、 |
* 1年後の追跡調査で、1,085人の寛解した参加者のうち、93%が再発するかこの研究を脱落した。 |
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この研究で比較されたどの薬の間にも、寛解率、反応率、寛解あるいは反応までの期間に、統計的あるいは意味のある臨床的な違いはない<ref>{{cite journal|last=Warden|first=Diane|coauthors=Rush AJ, Trivedi MH, Fava M, Wisniewski SR|title=The STAR*D Project results: a comprehensive review of findings.|journal=Curr Psychiatry Rep|year=2007|month=Dec|volume=9|issue=6|pages=449–59|url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18221624|accessdate= |
この研究で比較されたどの薬の間にも、寛解率、反応率、寛解あるいは反応までの期間に、統計的あるいは意味のある臨床的な違いはない<ref>{{cite journal|last=Warden|first=Diane|coauthors=Rush AJ, Trivedi MH, Fava M, Wisniewski SR|title=The STAR*D Project results: a comprehensive review of findings.|journal=Curr Psychiatry Rep|year=2007|month=Dec|volume=9|issue=6|pages=449–59|url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18221624|accessdate=2012-11-28}}</ref>。シタロプラム、リチウム、ミルタザピン、ノルトリプチリン、セルトラリン、トリヨードサイロニン、トラニルシプロミン、ベンラファキシン徐放錠が含まれる。 |
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2008年の[[ランダム化比較試験]]のレビューは、症状の改善は、SSRIを使用して1週間目の終わりが最高で、いくらかの改善は少なくとも6週間継続したと結論した<ref>{{Cite journal|author=Taylor MJ, Freemantle N, Geddes JR, Bhagwagar Z |title=Early Onset of Selective Serotonin Reuptake Inhibitor Antidepressant Action: Systematic Review and Meta-analysis |journal=Arch Gen Psychiatry |volume=63 |issue=11 |pages=1217–23 |year=2005 |pmid=17088502 |doi=10.1001/archpsyc.63.11.1217|pmc=2211759}}</ref>。 |
2008年の[[ランダム化比較試験]]のレビューは、症状の改善は、SSRIを使用して1週間目の終わりが最高で、いくらかの改善は少なくとも6週間継続したと結論した<ref>{{Cite journal|author=Taylor MJ, Freemantle N, Geddes JR, Bhagwagar Z |title=Early Onset of Selective Serotonin Reuptake Inhibitor Antidepressant Action: Systematic Review and Meta-analysis |journal=Arch Gen Psychiatry |volume=63 |issue=11 |pages=1217–23 |year=2005 |pmid=17088502 |doi=10.1001/archpsyc.63.11.1217|pmc=2211759}}</ref>。 |
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SSRIのフルオキセチン(日本では未認可)、パロキセチン、エスシタロプラムとSNRIデュロキセチンと偽薬では、反応があった場合、偽薬のほうが改善度が緩やかだが、すべてで時間と共に改善していく傾向が見られた。しかし、抗うつ薬に反応しなかった患者の一部、全体に対する約25%の患者は、HAM-Dスコアが高いままで、8週間では偽薬より著しく高かった<ref name="pmid22147842">{{cite journal|last1=Gueorguieva|first1=Ralitza|title=Trajectories of Depression Severity in Clinical Trials of Duloxetine Insights Into Antidepressant and Placebo Responses|journal=Archives of General Psychiatry|volume=68|issue=12|pages=1227–37|year=2011|month=December|pmid=22147842|pmc=3339151|doi=10.1001/archgenpsychiatry.2011.132|url=http://archpsyc.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1107437}}</ref>。これは抗うつ薬に反応しない場合、中止すべきことを示唆していると解釈された<ref>{{cite news |author=Maia Szalavitz |title=New Research on the Antidepressant-vs.-Placebo Debate |url=http://healthland.time.com/2012/01/18/new-research-on-the-antidepressant-versus-placebo-debate/ |date=Jan, 18, 2012 |newspaper= |accessdate=2013-01-27}}</ref>。 |
SSRIのフルオキセチン(日本では未認可)、パロキセチン、エスシタロプラムとSNRIデュロキセチンと偽薬では、反応があった場合、偽薬のほうが改善度が緩やかだが、すべてで時間と共に改善していく傾向が見られた。しかし、抗うつ薬に反応しなかった患者の一部、全体に対する約25%の患者は、HAM-Dスコアが高いままで、8週間では偽薬より著しく高かった<ref name="pmid22147842">{{cite journal|last1=Gueorguieva|first1=Ralitza|title=Trajectories of Depression Severity in Clinical Trials of Duloxetine Insights Into Antidepressant and Placebo Responses|journal=Archives of General Psychiatry|volume=68|issue=12|pages=1227–37|year=2011|month=December|pmid=22147842|pmc=3339151|doi=10.1001/archgenpsychiatry.2011.132|url=http://archpsyc.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1107437}}</ref>。これは抗うつ薬に反応しない場合、中止すべきことを示唆していると解釈された<ref>{{cite news |author=Maia Szalavitz |title=New Research on the Antidepressant-vs.-Placebo Debate |url=http://healthland.time.com/2012/01/18/new-research-on-the-antidepressant-versus-placebo-debate/ |date=Jan, 18, 2012 |newspaper= |accessdate=2013-01-27}}</ref>。 |
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うつ病は類似した症状を呈する異なる病因の病気の集合なので、抗うつ薬の予後が悪いことを示した。大うつ病性障害の定義は見当違いの可能性がある<ref>{{cite journal|last=Holtzheimer|first=Paul|coauthors=Mayberg, Helen S.|title=Stuck in a Rut: Rethinking Depression and its Treatment|journal=Trends Neurosci.|year=2011|month=January|volume=34|issue=1|pages=1–9|doi=10.1016/j.tins.2010.10.004| |
うつ病は類似した症状を呈する異なる病因の病気の集合なので、抗うつ薬の予後が悪いことを示した。大うつ病性障害の定義は見当違いの可能性がある<ref>{{cite journal|last=Holtzheimer|first=Paul|coauthors=Mayberg, Helen S.|title=Stuck in a Rut: Rethinking Depression and its Treatment|journal=Trends Neurosci.|year=2011|month=January|volume=34|issue=1|pages=1–9|doi=10.1016/j.tins.2010.10.004|PMC=3014414|accessdate=2012-11-29}}</ref>。 |
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抗うつ薬はうつ病の根本にある原因に効果があるかについて、2002年のレビューは、使用を終了した場合、抗うつ薬がうつ病の再発の危険性を減少させるという根拠がないと結論した。このレビューの執筆者らは、対人関係療法(IPT)と認知行動療法(CBT)を挙げ、抗うつ薬を心理療法と組み合わせることを提言した<ref>{{cite web|url=http://www.psychologicalscience.org/journals/pspi/pdf/pspi31101.pdf |title=Hollon SD, Thase ME, Markowitz JC. "Treatment and prevention of depression", ''Psychological Science in the Public Interest'', 2002;3:1–39. |format=PDF |date= |accessdate=2012-11-30}}</ref>。 |
抗うつ薬はうつ病の根本にある原因に効果があるかについて、2002年のレビューは、使用を終了した場合、抗うつ薬がうつ病の再発の危険性を減少させるという根拠がないと結論した。このレビューの執筆者らは、対人関係療法(IPT)と認知行動療法(CBT)を挙げ、抗うつ薬を心理療法と組み合わせることを提言した<ref>{{cite web|url=http://www.psychologicalscience.org/journals/pspi/pdf/pspi31101.pdf |title=Hollon SD, Thase ME, Markowitz JC. "Treatment and prevention of depression", ''Psychological Science in the Public Interest'', 2002;3:1–39. |format=PDF |date= |accessdate=2012-11-30}}</ref>。 |
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=== 増量 === |
=== 増量 === |
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2006年のシステマティックレビューは、増量を推奨する証拠がないことを確認した<ref name="pmid17012653">{{cite journal|last1=Ruhe|first1=H. G.|last2=Huyser|first2=J.|last3=Swinkels|first3=J. A.|last4=Schene|first4=A. H.|title=Dose escalation for insufficient response to standard-dose selective serotonin reuptake inhibitors in major depressive disorder: Systematic review|journal=The British Journal of Psychiatry|volume=189|issue=4|pages=309–316|year=2006|month=October|pmid=17012653|doi=10.1192/bjp.bp.105.018325}}</ref>。パロキセチンの増量は、血中濃度では増加するものの、セロトニン受容体での占有率を増加させていないため、著者はSSRIの増量は推奨できないとしている<ref name="pmid20862644">{{cite journal||title=Dose-escalation of SSRIS in major depressive disorder. Should not be recommended in current guidelines|journal=Tijdschrift Voor Psychiatrie|volume=52|issue=9|pages=615–25|year=2010|pmid=20862644|url=http://www.tijdschriftvoorpsychiatrie.nl/en/issues/431/articles/8280}}</ref>。[[フルオキセチン]](日本では未認可)、[[パロキセチン]]、 |
2006年のシステマティックレビューは、増量を推奨する証拠がないことを確認した<ref name="pmid17012653">{{cite journal|last1=Ruhe|first1=H. G.|last2=Huyser|first2=J.|last3=Swinkels|first3=J. A.|last4=Schene|first4=A. H.|title=Dose escalation for insufficient response to standard-dose selective serotonin reuptake inhibitors in major depressive disorder: Systematic review|journal=The British Journal of Psychiatry|volume=189|issue=4|pages=309–316|year=2006|month=October|pmid=17012653|doi=10.1192/bjp.bp.105.018325}}</ref>。パロキセチンの増量は、血中濃度では増加するものの、セロトニン受容体での占有率を増加させていないため、著者はSSRIの増量は推奨できないとしている<ref name="pmid20862644">{{cite journal||title=Dose-escalation of SSRIS in major depressive disorder. Should not be recommended in current guidelines|journal=Tijdschrift Voor Psychiatrie|volume=52|issue=9|pages=615–25|year=2010|pmid=20862644|url=http://www.tijdschriftvoorpsychiatrie.nl/en/issues/431/articles/8280}}</ref>。[[フルオキセチン]](日本では未認可)、[[パロキセチン]]、[[シタロプラム]]、[[エスシタロプラム]]、[[セルトラリン]]、[[フルボキサミン]]でのメタアナリシスで、反応率は通常の開始用量の50.8%に対して高用量で開始した場合は54.8%であり、有害事象による中止率は通常量9.8%に対して高用量16.5%であり、有害事象のリスクのほうが高まった<ref name="pmid20218793">{{cite journal|last1=Papakostas|first1=George I.|last2=Charles|first2=Dana|last3=Fava|first3=Maurizio|title=Are typical starting doses of the selective serotonin reuptake inhibitors sub-optimal? A meta-analysis of randomized, double-blind, placebo-controlled, dose-finding studies in major depressive disorder|journal=World Journal of Biological Psychiatry|volume=11|issue=2_2|pages=300–307|year=2010|month=March|pmid=20218793|doi=10.3109/15622970701432528}}</ref>。 |
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三環系([[イミプラミン]]、[[クロミプラミン]])、四環系([[マプロチリン]])、SSRI([[フルオキセチン]](日本では未認可)、 |
三環系([[イミプラミン]]、[[クロミプラミン]])、四環系([[マプロチリン]])、SSRI([[フルオキセチン]](日本では未認可)、[[シタロプラム]]、[[フルボキサミン]]、[[ミルナシプラン]]、[[セルトラリン]]、[[パロキセチン]]、[[ベンラファキシン]])、MAOIs([[イソカルボキサジド]]、{{仮リンク|フェネルジン|en|Phenelzine}}、{{仮リンク|モクロベミド|en|Moclobemide}})、非定型抗うつ薬({{仮リンク|ネファゾドン|en|Nefazodone}}、{{仮リンク|ミナプリン|en|minaprine}}、[[ロリプラム]])を、イミプラミン等価換算で有効性をメタアナリシスした研究があり、高用量は改善率を上昇させないが有害事象の発現率を上げていることが示されている<ref name="pmid10533547" />。 |
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{| class="wikitable" |
{| class="wikitable" style="font-size:90%" |
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|+ 17種類の抗うつ薬のイミプラミン等価換算での有効性の比較 |
|+ 17種類の抗うつ薬のイミプラミン等価換算での有効性の比較({{PMID|10533547}}より作成)<ref name="pmid10533547">{{cite journal |author=Bollini P, Pampallona S, Tibaldi G, Kupelnick B, Munizza C |title=Effectiveness of antidepressants. Meta-analysis of dose-effect relationships in randomised clinical trials |journal=The British Journal of Psychiatry : the Journal of Mental Science |volume=174 |issue= |pages=297–303 |year=1999 |month=April |pmid=10533547 |doi=10.1192/bjp.174.4.297 |url=http://www.crd.york.ac.uk/crdweb/ShowRecord.asp?LinkFrom=OAI&ID=11999000941}}</ref> |
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! 投与量 !! 偽薬群 !! 100mgまで !! 200mgまで !! 250mgまで !! 250mg以上 |
! 投与量 !! 偽薬群 !! 100mgまで !! 200mgまで !! 250mgまで !! 250mg以上 |
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==== 遺伝子に基づく治療の最適化 ==== |
==== 遺伝子に基づく治療の最適化 ==== |
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STAR*Dでは、治療効果と遺伝子を解析し個人に最適化された投薬を探る目的があったが、そのようなデータは得られていない<ref name="pmid19880463"/>。欧州におけるNEWMEDS計画からも、セロトニン再取り込み阻害剤あるいはノルアドレナリン再取り込み阻害剤への反応性を予測する遺伝子との関連性は導き出せていない<ref name="pmid23091423">{{cite journal |author=Tansey KE, Guipponi M, Perroud N, ''et al.'' |title=Genetic predictors of response to serotonergic and noradrenergic antidepressants in major depressive disorder: a genome-wide analysis of individual-level data and a meta-analysis |journal=PLoS Medicine |volume=9 |issue=10 |pages=e1001326 |year=2012 |month=October |pmid=23091423 |pmc=3472989 |doi=10.1371/journal.pmed.1001326 |url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3472989/}}</ref>。 |
STAR*Dでは、治療効果と遺伝子を解析し個人に最適化された投薬を探る目的があったが、そのようなデータは得られていない<ref name="pmid19880463" />。欧州におけるNEWMEDS計画からも、セロトニン再取り込み阻害剤あるいはノルアドレナリン再取り込み阻害剤への反応性を予測する遺伝子との関連性は導き出せていない<ref name="pmid23091423">{{cite journal |author=Tansey KE, Guipponi M, Perroud N, ''et al.'' |title=Genetic predictors of response to serotonergic and noradrenergic antidepressants in major depressive disorder: a genome-wide analysis of individual-level data and a meta-analysis |journal=PLoS Medicine |volume=9 |issue=10 |pages=e1001326 |year=2012 |month=October |pmid=23091423 |pmc=3472989 |doi=10.1371/journal.pmed.1001326 |url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3472989/}}</ref>。 |
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==== 「試行錯誤」による切り替え ==== |
==== 「試行錯誤」による切り替え ==== |
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[[アメリカ精神医学会]](APA)の2000年の診療ガイドラインで、抗うつ薬による治療によって6から8週目までに反応がない場合、同じ種類の別の抗うつ薬に切り替え、次に異なった種類の抗うつ薬にすることを勧告している。この方法を用いたSTAR*D研究で報告された寛解率は21%であった。 |
[[アメリカ精神医学会]](APA)の2000年の診療ガイドラインで、抗うつ薬による治療によって6から8週目までに反応がない場合、同じ種類の別の抗うつ薬に切り替え、次に異なった種類の抗うつ薬にすることを勧告している。この方法を用いたSTAR*D研究で報告された寛解率は21%であった。 |
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2006年のメタ分析レビューは以前の研究の研究結果に多様性を見出した;SSRI抗うつ薬に反応しなかった患者が、新しい薬に対して12%から86%の間の反応があることを示した。しかしながら、個人はすでに多くの抗うつ薬を試しているので、新しい抗うつ薬試験からの恩恵はなさそうである<ref name="SSRIswitch"/>。 |
2006年のメタ分析レビューは以前の研究の研究結果に多様性を見出した;SSRI抗うつ薬に反応しなかった患者が、新しい薬に対して12%から86%の間の反応があることを示した。しかしながら、個人はすでに多くの抗うつ薬を試しているので、新しい抗うつ薬試験からの恩恵はなさそうである<ref name="SSRIswitch" />。 |
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また一方、後のメタ分析は、新しい薬への切り替えと古い薬の継続との間に、違いがないことを見出している;とはいえ、新しい薬に切り替えた場合、治療抵抗性患者の34%が反応し、切り替えなしでも40%の反応があった<ref>{{cite journal |author = Bschor T., Baethge C. |year = 2010 |title = No evidence for switching the antidepressant: systematic review and meta-analysis of RCTs of a common therapeutic strategy |url = |journal = Acta Psychiatrica Scandinavica |volume = 121 |issue = 3| pages = 174–179 |doi = 10.1111/j.1600-0447.2009.01458.x |pmid = 19703121 }}</ref>。 |
また一方、後のメタ分析は、新しい薬への切り替えと古い薬の継続との間に、違いがないことを見出している;とはいえ、新しい薬に切り替えた場合、治療抵抗性患者の34%が反応し、切り替えなしでも40%の反応があった<ref>{{cite journal |author = Bschor T., Baethge C. |year = 2010 |title = No evidence for switching the antidepressant: systematic review and meta-analysis of RCTs of a common therapeutic strategy |url = |journal = Acta Psychiatrica Scandinavica |volume = 121 |issue = 3| pages = 174–179 |doi = 10.1111/j.1600-0447.2009.01458.x |pmid = 19703121 }}</ref>。従って、新しい薬に対する臨床反応は、違う薬を受け取っているという信念に関連した[[偽薬効果]]の可能性がある。 |
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従って、新しい薬に対する臨床反応は、違う薬を受け取っているという信念に関連した[[偽薬効果]]の可能性がある。 |
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==== 増強および併用 ==== |
==== 増強および併用 ==== |
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併用戦略では、通常、作用機序が重ならないように異なる系統の抗うつ薬を追加する。とはいえ、この戦略の有効性及び副作用についてのエビデンスはまだ少ないので、より大規模な臨床試験で有効性等を実証する必要がある<ref>{{Cite journal|author=Lam RW, Wan DD, Cohen NL, Kennedy SH |title=Combining antidepressants for treatment-resistant depression: a review |journal=J Clin Psychiatry |volume=63 |issue=8 |pages=685–93 |year=2002 |month=August |pmid=12197448|doi=10.4088/JCP.v63n0805 }}</ref>。STAR*D計画は、増強戦略で同じような寛解率を報告した。 |
併用戦略では、通常、作用機序が重ならないように異なる系統の抗うつ薬を追加する。とはいえ、この戦略の有効性及び副作用についてのエビデンスはまだ少ないので、より大規模な臨床試験で有効性等を実証する必要がある<ref>{{Cite journal|author=Lam RW, Wan DD, Cohen NL, Kennedy SH |title=Combining antidepressants for treatment-resistant depression: a review |journal=J Clin Psychiatry |volume=63 |issue=8 |pages=685–93 |year=2002 |month=August |pmid=12197448|doi=10.4088/JCP.v63n0805 }}</ref>。STAR*D計画は、増強戦略で同じような寛解率を報告した。 |
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薬剤を切り替えるのではなく、併用して作用増強を図ることは、単剤での副作用を緩和したり、治療抵抗性又は重度の精神病症状の悪化と治療無反応性を改善する可能性があることを示している<ref>{{cite journal|last=Chouinard|first=Guy|coauthors=Chouinard Virginie-Anne|title=Atypical Antipsychotics: CATIE Study, Drug-Induced Movement Disorder and Resulting Iatrogenic Psychiatric-Like Symptoms, Supersensitivity Rebound Psychosis and Withdrawal Discontinuation Syndromes|journal=Psychother Psychosom|year=2008|month=January|volume=77|issue=7|pages=69–77|url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18230939|accessdate= |
薬剤を切り替えるのではなく、併用して作用増強を図ることは、単剤での副作用を緩和したり、治療抵抗性又は重度の精神病症状の悪化と治療無反応性を改善する可能性があることを示している<ref>{{cite journal|last=Chouinard|first=Guy|coauthors=Chouinard Virginie-Anne|title=Atypical Antipsychotics: CATIE Study, Drug-Induced Movement Disorder and Resulting Iatrogenic Psychiatric-Like Symptoms, Supersensitivity Rebound Psychosis and Withdrawal Discontinuation Syndromes|journal=Psychother Psychosom|year=2008|month=January|volume=77|issue=7|pages=69–77|url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18230939|accessdate=2012-11-29}}</ref>。 |
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シタロプラムへの抗精神病薬の[[リスペリドン]](リスパダール)の追加は利点が示せなかった<ref name="pmid16760927">{{cite journal|last1=Rapaport|first1=Mark Hyman|last2=Gharabawi|first2=Georges M|last3=Canuso|first3=Carla M|last4=Mahmoud|first4=Ramy A|last5=Keller|first5=Martin B|last6=Bossie|first6=Cynthia A|last7=Turkoz|first7=Ibrahim|last8=Lasser|first8=Robert A|last9=Loescher|first9=Amy|last10=Bouhours|first10=Philippe|last11=Dunbar|first11=Fiona|last12=Nemeroff|first12=Charles B|title=Effects of Risperidone Augmentation in Patients with Treatment-Resistant Depression: Results of Open-Label Treatment Followed by Double-Blind Continuation|journal=Neuropsychopharmacology|volume=31|issue=11|pages=2505–2513|year=2006|month=November|pmid=16760927|doi=10.1038/sj.npp.1301113|url=http://www.nature.com/npp/journal/v31/n11/full/1301113a.html}}</ref>。[[フルオキセチン]](日本では未認可)に追加した[[オランザピン]](ジプレキサ)でも同様である<ref name="pmed1001403"/>。 |
シタロプラムへの抗精神病薬の[[リスペリドン]](リスパダール)の追加は利点が示せなかった<ref name="pmid16760927">{{cite journal|last1=Rapaport|first1=Mark Hyman|last2=Gharabawi|first2=Georges M|last3=Canuso|first3=Carla M|last4=Mahmoud|first4=Ramy A|last5=Keller|first5=Martin B|last6=Bossie|first6=Cynthia A|last7=Turkoz|first7=Ibrahim|last8=Lasser|first8=Robert A|last9=Loescher|first9=Amy|last10=Bouhours|first10=Philippe|last11=Dunbar|first11=Fiona|last12=Nemeroff|first12=Charles B|title=Effects of Risperidone Augmentation in Patients with Treatment-Resistant Depression: Results of Open-Label Treatment Followed by Double-Blind Continuation|journal=Neuropsychopharmacology|volume=31|issue=11|pages=2505–2513|year=2006|month=November|pmid=16760927|doi=10.1038/sj.npp.1301113|url=http://www.nature.com/npp/journal/v31/n11/full/1301113a.html}}</ref>。[[フルオキセチン]](日本では未認可)に追加した[[オランザピン]](ジプレキサ)でも同様である<ref name="pmed1001403" />。 |
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====長期間の使用==== |
====長期間の使用==== |
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1960年代以降、抗うつ薬の服用はうつ病の長期的転帰を悪化させると |
1960年代以降、抗うつ薬の服用はうつ病の長期的転帰を悪化させるという報告がある<ref>{{harvnb|Robert Whitaker|2009|pp=157-159}} (翻訳書は {{harvnb|ロバート・ウィタカー|2010|pp=230-232}})</ref>。 |
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1990年、{{仮リンク|アメリカ国立精神衛生研究所|en|National Institute of Mental Health|}}は、うつ病に関する全国調査で抗うつ薬([[イミプラミン]])、[[偽薬]]、[[心理療法]](2種類)を比較し、18ヶ月後の健康維持率について、心理療法(認知療法)を受けた患者群が最高(30%)、抗うつ薬を服用した患者群が最低(19%)と報告している<ref>{{harvnb|Robert Whitaker|2009|pp=158, 307}} (翻訳書は {{harvnb|ロバート・ウィタカー|2010|pp=232,456}})</ref>。 |
1990年、{{仮リンク|アメリカ国立精神衛生研究所|en|National Institute of Mental Health|}}は、うつ病に関する全国調査で抗うつ薬([[イミプラミン]])、[[偽薬]]、[[心理療法]](2種類)を比較し、18ヶ月後の健康維持率について、心理療法(認知療法)を受けた患者群が最高(30%)、抗うつ薬を服用した患者群が最低(19%)と報告している<ref>{{harvnb|Robert Whitaker|2009|pp=158, 307}} (翻訳書は {{harvnb|ロバート・ウィタカー|2010|pp=232,456}})</ref>。 |
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抗うつ薬の治療効果は一般的に薬物治療が終了すると続かず、結果として再発率が高い。31のプラセボ対照の抗うつ薬の試験の最近のメタアナリシスでは、研究期間のほとんどは1年であり、抗うつ薬に反応していた18%の患者が服薬中に再発したのに対し、抗うつ薬を偽薬に切り替えた場合41%であったことを見出した<ref>{{Cite journal|author=Geddes JR, Carney SM, Davies C |title=Relapse prevention with antidepressant drug treatment in depressive disorders: a systematic review |journal=Lancet |volume=361 |issue=9358 |pages=653–61 |year=2003 |month=February |pmid=12606176 |doi=10.1016/S0140-6736(03)12599-8 }}</ref>。アメリカ精神医学会のガイドラインは、症状の消失後、4〜5か月の抗うつ薬による継続治療を推奨している。うつ病エピソードの既往歴のある患者に対して、英国精神薬理学会の2000年の抗うつ薬によるうつ病治療のガイドラインは、最低でも6カ月から長くて5年あるいは無期限の抗うつ薬の継続を推奨している。 |
抗うつ薬の治療効果は一般的に薬物治療が終了すると続かず、結果として再発率が高い。31のプラセボ対照の抗うつ薬の試験の最近のメタアナリシスでは、研究期間のほとんどは1年であり、抗うつ薬に反応していた18%の患者が服薬中に再発したのに対し、抗うつ薬を偽薬に切り替えた場合41%であったことを見出した<ref>{{Cite journal|author=Geddes JR, Carney SM, Davies C |title=Relapse prevention with antidepressant drug treatment in depressive disorders: a systematic review |journal=Lancet |volume=361 |issue=9358 |pages=653–61 |year=2003 |month=February |pmid=12606176 |doi=10.1016/S0140-6736(03)12599-8 }}</ref>。アメリカ精神医学会のガイドラインは、症状の消失後、4〜5か月の抗うつ薬による継続治療を推奨している。うつ病エピソードの既往歴のある患者に対して、英国精神薬理学会の2000年の抗うつ薬によるうつ病治療のガイドラインは、最低でも6カ月から長くて5年あるいは無期限の抗うつ薬の継続を推奨している。 |
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5年の追跡によれば、1年以上薬剤を使用した患者群では再発率は23%で、6か月 |
2年間の追跡では抗うつ薬を継続的に使用した約60%が再発しており、認知療法を受け薬を中止していた場合に、再発率の有意な低下が見られた<ref name="pmid18087204">{{cite journal|last1=Bockting|first1=Claudi L.H.|last2=ten Doesschate|first2=Mascha C.|last3=Spijker|first3=Jan|coauthors=et al.|title=Continuation and Maintenance Use of Antidepressants in Recurrent Depression|journal=Psychotherapy and Psychosomatics|volume=77|issue=1|pages=17–26|year=2008|pmid=18087204|doi=10.1159/000110056}}</ref>。 |
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5年の追跡によれば、1年以上薬剤を使用した患者群では再発率は23%で、6か月-12か月間使用した患者群との違いはなかった<ref>{{cite journal|last=Gardarsdottir|first=H|coauthors=van Geffen EC, Stolker JJ, Egberts TC, Heerdink ER|title=Does the length of the first antidepressant treatment episode influence risk and time to a second episode?|journal=J Clin Psychopharmacol.|year=2009|month=Feb|volume=29|issue=1|pages=69–72|url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19142111|accessdate=2012-11-29}}</ref>。さらに、治療上の利益は治療過程の間に漸減した<ref name="fava2011" />。急性期の治療における薬物療法の使用後の残遺期における心理療法を伴う方法が、いくつかの試験によって提案されている<ref>{{Cite journal|author=Fava GA, Park SK, Sonino N |title=Treatment of recurrent depression |journal=Expert Rev Neurother |volume=6 |issue=11 |pages=1735–40 |year=2006 |month=November |pmid=17144786 |doi=10.1586/14737175.6.11.1735 }}</ref><ref>{{Cite journal|author=Petersen TJ |title=Enhancing the efficacy of antidepressants with psychotherapy |journal=J. Psychopharmacol. (Oxford) |volume=20 |issue=3 Suppl |pages=19–28 |year=2006 |month=May |pmid=16644768 |doi=10.1177/1359786806064314 }}</ref>。 |
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抗うつ薬による治療を受けた再発性のうつ病患者40人で、再発した場合を除き抗うつ薬の投与を止めた場合の再発率は、2年後時点で臨床管理群(20人)では80%に対し認知行動療法群(20人)では25%、6年後時点で臨床管理群では90%に対し認知行動療法群では60%であった<ref name="pmid15465985">{{cite journal|last1=Fava|first1=G. A.|title=Six-Year Outcome of Cognitive Behavior Therapy for Prevention of Recurrent Depression|journal=American Journal of Psychiatry|volume=161|issue=10|pages=1872–1876|year=2004|month=October|pmid=15465985|doi=10.1176/appi.ajp.161.10.1872|url=http://ajp.psychiatryonline.org/article.aspx?articleid=177103}}</ref>。 |
抗うつ薬による治療を受けた再発性のうつ病患者40人で、再発した場合を除き抗うつ薬の投与を止めた場合の再発率は、2年後時点で臨床管理群(20人)では80%に対し認知行動療法群(20人)では25%、6年後時点で臨床管理群では90%に対し認知行動療法群では60%であった<ref name="pmid15465985">{{cite journal|last1=Fava|first1=G. A.|title=Six-Year Outcome of Cognitive Behavior Therapy for Prevention of Recurrent Depression|journal=American Journal of Psychiatry|volume=161|issue=10|pages=1872–1876|year=2004|month=October|pmid=15465985|doi=10.1176/appi.ajp.161.10.1872|url=http://ajp.psychiatryonline.org/article.aspx?articleid=177103}}</ref>。 |
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試験では偽薬へと急速に切り替えられており、重度の離脱症状を起こす可能性があることから、試験に欠陥がある可能性があり、維持療法には疑問が呈され、抗うつ薬を用いなくとも再発率は上昇しないことが示唆される<ref name="pmid29270136"/>。一方で、平均8.5ヶ月間の抗うつ薬による治療を受けた後の、うつ病やパニック障害の再発リスクは、2週間以上かけて徐々中止するよりも、7日以内に急速に中止した場合のほうが低いという研究結果がある<ref name="pmid20478876">{{cite journal|last1=Baldessarini|first1=Ross J.|last2=Tondo|first2=Leonardo|last3=Ghiani|first3=Carmen|coauthors=et al.|title=Illness Risk Following Rapid Versus Gradual Discontinuation of Antidepressants|journal=American Journal of Psychiatry|volume=167|issue=8|pages=934–941|year=2010|pmid=20478876|doi=10.1176/appi.ajp.2010.09060880|url=https://ajp.psychiatryonline.org/doi/full/10.1176/appi.ajp.2010.09060880}}</ref>。 |
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== 議論 == |
== 議論 == |
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抗うつ薬は脳内の[[化学的不均衡]]を正すという名目で処方されるが、科学的な根拠があるわけではない。 |
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{{See also|モノアミン神経伝達物質#モノアミン仮説}} |
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{{main|化学的不均衡#議論}} |
{{main|化学的不均衡#議論}} |
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{{See also|モノアミン神経伝達物質#モノアミン仮説}} |
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抗うつ薬は脳内の[[化学的不均衡]]を正すという名目で処方されるが、科学的な根拠があるわけではない。 |
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偽薬の反応率が最近の臨床試験では高くなっている(ため偽薬との効果の差が出にくくなった)と主張されているが、メタアナリシスからは実際には反応率は30年間変わっていないことが判明している<ref name="pmid29270136"/>。 |
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1998年、[[アービング・カーシュ]]らは、[[偽薬]]にも本物の薬の約75%の効果があると発表した。25%の差は、副作用を感じると本物だと分かり、被験者の期待感が高まるからだと説明した。分析には16種類の薬「[[アミトリプチリン]]」「[[イミプラミン]]」「[[アモキサピン]]」「[[マプロチリン]]」「[[フルオキセチン]]」(日本では未認可)「[[パロキセチン]]」「[[ベンラファキシン]]」「[[トラゾドン]]」「[[ブプロピオン]]」「{{仮リンク|イソカルボキサジド|en|Isocarboxazid}}」(日本では未認可)「{{仮リンク|フェネルジン|en|Phenelzine}}」(日本では未認可)「{{仮リンク|トラニルシプロミン|en|Tranylcypromine}}」(日本では未認可)「[[アモバルビタール|アミロバルビトン]]」「{{仮リンク|アジナゾラム|en|adinazolam}}」「[[リチウム]]」「[[リオチロニン]]」の臨床試験データが用いられ、これらを4つの群「[[TCA]](三環系・四環系)」「[[SSRI]]」「他の抗うつ薬」「他の薬」に分けた。全ての群で偽薬は本物の薬に対してほぼ75%の効果であった<ref>{{Cite journal |author=Kirsch, I., & Sapirstein, G|title=Listening to Prozac but hearing placebo: A meta-analysis of antidepressant medication. Prevention and Treatment |journal=Prevention and Treatment |volume=1|issue=2|date=1998-06-26|pages=Article 0002a|doi=10.1037/1522-3736.1.1.12a|url=http://journals.apa.org/prevention/volume1/pre0010002a.html|archiveurl=http://web.archive.org/web/19980715085305/http://journals.apa.org/prevention/volume1/pre0010002a.html |archivedate =1998-08-15}}</ref>。 |
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1998年、[[アービング・カーシュ]]らは、[[偽薬]]にも本物の薬の約75%の効果があると発表した。25%の差は、副作用を感じると本物だと分かり、被験者の期待感が高まるからだと説明した。分析には16種類の薬[[アミトリプチリン]]、[[イミプラミン]]、[[アモキサピン]]、[[マプロチリン]]、[[フルオキセチン]](日本では未認可)、[[パロキセチン]]、[[ベンラファキシン]]、[[トラゾドン]]、[[イソカルボキサジド]](日本では未認可)、{{仮リンク|フェネルジン|en|Phenelzine}}(日本では未認可)、{{仮リンク|トラニルシプロミン|en|Tranylcypromine}}(日本では未認可)、[[アモバルビタール|アミロバルビトン]]、{{仮リンク|アジナゾラム|en|adinazolam}}、[[リチウム]]、[[リオチロニン]]の臨床試験データが用いられ、これらを4つの群「[[TCA]](三環系・四環系)」「[[SSRI]]」「他の抗うつ薬」「他の薬」に分けた。全ての群で偽薬は本物の薬に対してほぼ75%の効果であった<ref>{{Cite journal|author=Kirsch, I., & Sapirstein, G|title=Listening to Prozac but hearing placebo: A meta-analysis of antidepressant medication. Prevention and Treatment|journal=Prevention and Treatment|volume=1|issue=2|date=1998-06-26|pages=Article 0002a|doi=10.1037/1522-3736.1.1.12a|url=http://journals.apa.org/prevention/volume1/pre0010002a.html|archiveurl=https://web.archive.org/web/19980715085305/http://journals.apa.org/prevention/volume1/pre0010002a.html|archivedate=1998年7月15日|deadlinkdate=2017年10月}}</ref>。 |
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2002年、[[アービング・カーシュ]]らは、[[情報公開法]]に基づき、製薬会社が[[アメリカ食品医薬品局]](FDA)に提出した臨床試験データを入手し、分析を行った。公開されていなかったデータを含めると、75%ではなく、約82%であった。この発表は激しい議論を巻き起こした<ref name="Nw20100128">Sharon Begley「[http://www.thedailybeast.com/newsweek/2010/01/28/the-depressing-news-about-antidepressants.html The Depressing News About Antidepressants]」Newsweek国際版2010年1月28日。(邦訳は「[http://mui-therapy.org/newfinding/depressing-news-about-ssri.html がっかりする抗鬱剤]」)</ref>。 |
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2002年、アービング・カーシュらは、[[情報公開法]]に基づき、製薬会社が[[アメリカ食品医薬品局]](FDA)に提出した臨床試験データを入手し、分析を行った。公開されていなかったデータを含めると、75%ではなく、約82%であった。この発表は激しい議論を巻き起こした<ref name="Nw20100128">Sharon Begley「[http://www.thedailybeast.com/newsweek/2010/01/28/the-depressing-news-about-antidepressants.html The Depressing News About Antidepressants]」Newsweek国際版2010年1月28日。(邦訳は「[http://mui-therapy.org/newfinding/depressing-news-about-ssri.html がっかりする抗鬱剤]」)</ref>。 |
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2004年、[[コクラン共同計画]]は、本物の薬のような副作用を持つ偽薬(活性プラセボ)を用いて[[システマティック・レビュー]]を行ったが、偽薬と抗うつ薬の間に有効性の違いは見られなかった<ref name="pmid14974002"/>。 |
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[[アービング・カーシュ]]は、副作用のない通常の偽薬は本物の薬との差が大きくなる可能性を指摘している{{sfn|アービング・カーシュ|2010|pp=30-37}}。 |
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2004年、[[コクラン共同計画]]は、本物の薬のような副作用を持つ偽薬(活性プラセボ)を用いて[[システマティック・レビュー]]を行ったが、偽薬と抗うつ薬の間に有効性の違いは見られなかった<ref name="pmid14974002" />。アービング・カーシュは、副作用のない通常の偽薬は本物の薬との差が大きくなる可能性を指摘している{{sfn|アービング・カーシュ|2010|pp=30-37}}。 |
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臨床試験データの隠ぺいに関する裁判で、[[グラクソ・スミスクライン]]社は全ての臨床試験データを開示することで合意した<ref>{{cite news| author=Gardiner Harris|url=http://www.nytimes.com/2004/08/26/business/26CND-DRUG.html |work=The New York Times |title=Maker of Paxil to Release All Trial Results |date=August 26, 2004 |accessdate=2013-01-10}}</ref>。医学雑誌編集者国際委員会は、一流医学誌では事前登録のない臨床試験を掲載しないとの声明を行い、世界保健機関による登録制度の構築や臨床試験の事前登録の議論へとつながった<ref name="pmid20504337">{{cite journal |author=Bian ZX, Wu TX |title=Legislation for trial registration and data transparency |journal=Trials |volume=11 |issue= |pages=64 |year=2010 |pmid=20504337 |pmc=2882906 |doi=10.1186/1745-6215-11-64 |url=http://www.trialsjournal.com/content/11/1/64}}</ref>。 |
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臨床試験データの隠蔽に関する裁判で、[[グラクソ・スミスクライン]]は全ての臨床試験データを開示することで合意した<ref>{{cite news| author=Gardiner Harris|url=http://www.nytimes.com/2004/08/26/business/26CND-DRUG.html |work=The New York Times |title=Maker of Paxil to Release All Trial Results |date=2004-08-26 |accessdate=2013-01-10}}</ref>。医学雑誌編集者国際委員会は、一流医学誌では事前登録のない臨床試験を掲載しないとの声明を行い、世界保健機関による登録制度の構築や臨床試験の事前登録の議論へとつながった<ref name="pmid20504337">{{cite journal |author=Bian ZX, Wu TX |title=Legislation for trial registration and data transparency |journal=Trials |volume=11 |issue= |pages=64 |year=2010 |pmid=20504337 |pmc=2882906 |doi=10.1186/1745-6215-11-64 |url=http://www.trialsjournal.com/content/11/1/64}}</ref>。 |
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2007年、抗うつ薬は米国で最も問題について議論される処方薬となった。一部の医師は、人々が問題の最終的な救いを求めているサインだと考えている。他はこれらの人々が抗うつ薬に依存しすぎていると反論している<ref>{{Cite news|url=http://www.cnn.com/2007/HEALTH/07/09/antidepressants/index.html |title=CDC: Antidepressants most prescribed drugs in U.S |date=2007-07-09 |accessdate=2011-05-21 |work=CNN}}</ref>。 |
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2007年、抗うつ薬は米国で最も問題について議論される処方薬となった。一部の医師は、人々が問題の最終的な救いを求めているサインだと考えている。他はこれらの人々が抗うつ薬に依存しすぎていると反論している<ref>{{Cite news|url=https://edition.cnn.com/2007/HEALTH/07/09/antidepressants/index.html |title=CDC: Antidepressants most prescribed drugs in U.S |date=2007-07-09 |accessdate=2011-05-21 |work=CNN}}</ref>。 |
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2008年、[[アービング・カーシュ]]らは、[[アメリカ食品医薬品局]](FDA)に「[[フルオキセチン]]」(日本では未認可)「[[ベンラファキシン]]」「{{仮リンク|ネファゾドン|en|Nefazodone}}」「[[パロキセチン]]」の臨床試験データを請求し、分析を行った。[[英国国立医療技術評価機構]](NICE)のガイドラインで臨床的意義があるとされる基準は、効果量([[w:effect size|effect size]])が0.50以上、または抗うつ薬と偽薬とのハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)得点差が3点以上である。結果は、効果量0.32、得点差1.8点(抗うつ薬9.6点、偽薬7.8点)で、偽薬は抗うつ薬の82%の効果であった<ref name="pmid18303940">{{cite journal |author=Kirsch I, Deacon BJ, Huedo-Medina TB, Scoboria A, Moore TJ, Johnson BT |title=Initial severity and antidepressant benefits: a meta-analysis of data submitted to the Food and Drug Administration |journal=PLoS Medicine |volume=5 |issue=2 |pages=e45 |year=2008 |month=February |pmid=18303940 |pmc=2253608 |doi=10.1371/journal.pmed.0050045 |url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2253608/}}</ref><ref>「[http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2356414/2684300 軽度・中度のうつ病患者に抗うつ剤は不要、英研究結果]」AFPBB News 2008年2月27日。</ref>。 |
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2008年、アービング・カーシュらは、[[アメリカ食品医薬品局]](FDA)にフルオキセチン(日本では未認可)、[[ベンラファキシン]]、{{仮リンク|ネファゾドン|en|Nefazodone}}、[[パロキセチン]]の臨床試験データを請求し、分析を行った。[[英国国立医療技術評価機構]](NICE)のガイドラインで臨床的意義があるとされる基準は、{{仮リンク|効果量|en|effect size}}が0.50以上、または抗うつ薬と偽薬とのハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)得点差が3点以上である。結果は、効果量0.32、得点差1.8点(抗うつ薬9.6点、偽薬7.8点)で、偽薬は抗うつ薬の82%の効果であった<ref name="pmid18303940">{{cite journal |author=Kirsch I, Deacon BJ, Huedo-Medina TB, Scoboria A, Moore TJ, Johnson BT |title=Initial severity and antidepressant benefits: a meta-analysis of data submitted to the Food and Drug Administration |journal=PLoS Medicine |volume=5 |issue=2 |pages=e45 |year=2008 |month=February |pmid=18303940 |pmc=2253608 |doi=10.1371/journal.pmed.0050045 |url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2253608/}}</ref><ref>「[https://www.afpbb.com/articles/-/2356414?pid=2684300 軽度・中度のうつ病患者に抗うつ剤は不要、英研究結果]」AFPBB News 2008年2月27日。</ref>。カーシュは[[ハミルトンうつ病評価尺度]] (HAM-D) ではなく、医師が知覚した変化の印象に適合している全般印象評価尺度-改善度(CGI-I)にて違いを検出できず、統計的に有意な差があるだけでなく、臨床的に意味があるかどうかを医薬品の承認の際に検討すべきだとした<ref name="pmid25979317">{{cite journal|last1=Moncrieff|first1=Joanna|last2=Kirsch|first2=Irving|title=Empirically derived criteria cast doubt on the clinical significance of antidepressant-placebo differences|journal=Contemporary Clinical Trials|volume=43|pages=60–62|year=2015|pmid=25979317|doi=10.1016/j.cct.2015.05.005|url=https://doi.org/10.1016/j.cct.2015.05.005}}</ref>。 |
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世界保健機関とその関連機関は、「[[パロキセチン]]」の未公表試験を含めて[[メタ分析]]し、偽薬は抗うつ薬の83%の効果であった<ref>{{cite journal |author=Barbui C, Furukawa TA, Cipriani A |title=Effectiveness of paroxetine in the treatment of acute major depression in adults: a systematic re-examination of published and unpublished data from randomized trials |journal=CMAJ |volume=178 |issue=3 |pages=296–305 |year=2008 |month=January |pmid=18227449 |pmc=2211353 |doi=10.1503/cmaj.070693}}</ref>。 |
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世界保健機関とその関連機関は、パロキセチンの未公表試験を含めて[[メタ分析]]し、偽薬は抗うつ薬の83%の効果であった<ref>{{cite journal |author=Barbui C, Furukawa TA, Cipriani A |title=Effectiveness of paroxetine in the treatment of acute major depression in adults: a systematic re-examination of published and unpublished data from randomized trials |journal=CMAJ |volume=178 |issue=3 |pages=296–305 |year=2008 |month=January |pmid=18227449 |pmc=2211353 |doi=10.1503/cmaj.070693}}</ref>。 |
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欧州の規制機関も、認可された抗うつ薬([[SSRI]]、[[SNRI]])の保有データを分析したところ、同様の結果であった<ref name="pmid18621509">{{cite journal |author=Melander H, Salmonson T, Abadie E, van Zwieten-Boot B. |title=A regulatory Apologia--a review of placebo-controlled studies in regulatory submissions of new-generation antidepressants |journal=European Neuropsychopharmacology : the Journal of the European College of Neuropsychopharmacology |volume=18 |issue=9 |pages=623–7 |year=2008 |month=September |pmid=18621509 |doi=10.1016/j.euroneuro.2008.06.003 |url=}}</ref>。 |
欧州の規制機関も、認可された抗うつ薬([[SSRI]]、[[SNRI]])の保有データを分析したところ、同様の結果であった<ref name="pmid18621509">{{cite journal |author=Melander H, Salmonson T, Abadie E, van Zwieten-Boot B. |title=A regulatory Apologia--a review of placebo-controlled studies in regulatory submissions of new-generation antidepressants |journal=European Neuropsychopharmacology : the Journal of the European College of Neuropsychopharmacology |volume=18 |issue=9 |pages=623–7 |year=2008 |month=September |pmid=18621509 |doi=10.1016/j.euroneuro.2008.06.003 |url=}}</ref>。 |
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2009年、[[アメリカ国立精神衛生研究所]](NIMH)の[[トーマス・インセル]]は、偽薬効果を疑問視する証拠を挙げた上で、抗うつ薬の効果が全て偽薬効果だとしても、STAR*D計画における14週後の最適な寛解率である28%を受け入れるべきかと問い、数時間で寛解をもたらす「[[ケタミン]]」を次世代の抗うつ薬の目標にしている<ref name="pmid19880463">{{cite journal |last1=Insel|first1=T. R.|authorlink1=トーマス・インセル|last2=Wang|first2=P. S. |title=The STAR*D trial: revealing the need for better treatments |journal=Psychiatr Serv |volume=60 |issue=11 |pages=1466–7 |year=2009 |month=November |pmid=19880463 |doi=10.1176/appi.ps.60.11.1466 |url=http://ps.psychiatryonline.org/article.aspx?articleid=100921}}</ref>。 |
2009年、[[アメリカ国立精神衛生研究所]](NIMH)の[[トーマス・インセル]]は、偽薬効果を疑問視する証拠を挙げた上で、抗うつ薬の効果が全て偽薬効果だとしても、STAR*D計画における14週後の最適な寛解率である28%を受け入れるべきかと問い、数時間で寛解をもたらす「[[ケタミン]]」を次世代の抗うつ薬の目標にしている<ref name="pmid19880463">{{cite journal |last1=Insel|first1=T. R.|authorlink1=トーマス・インセル|last2=Wang|first2=P. S. |title=The STAR*D trial: revealing the need for better treatments |journal=Psychiatr Serv |volume=60 |issue=11 |pages=1466–7 |year=2009 |month=November |pmid=19880463 |doi=10.1176/appi.ps.60.11.1466 |url=http://ps.psychiatryonline.org/article.aspx?articleid=100921}}</ref>。 |
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2010年、[[ペンシルベニア大学]]、[[バンダービルト大学]]、[[コロラド大学]]、[[ニューメキシコ大学]]の別々の心理学者により行われた |
2010年、[[ペンシルベニア大学]]、[[バンダービルト大学]]、[[コロラド大学]]、[[ニューメキシコ大学]]の別々の心理学者により行われた[[パキシル]]、[[イミプラミン]]を対象とした研究では、軽症から中等度のうつ病に対して、偽薬との比較でほとんど改善度に差がないことが分かった。この研究は米国医学会誌に掲載された<ref>{{Cite news|url=http://www.forbes.com/2010/01/05/antidepressant-paxil-placebo-business-healthcare-depression.html|title=Study Undermines Case for Antidepressants|date=2010-01-05|accessdate=2010-07-01|work=Forbes|first=Robert|last=Langreth|archiveurl=https://archive.is/20121208170044/http://www.forbes.com/2010/01/05/antidepressant-paxil-placebo-business-healthcare-depression.html|archivedate=2012年12月8日|deadlinkdate=2017年10月}}</ref><ref>「[http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2679872/5127812 抗うつ剤、軽中度の症状に効果みられず 米研究]」AFPBB News 2010年1月6日。</ref>。このことは、重症度が増すにつれて、抗うつ薬の使用がより適切なものとなることを示唆するともいえる<ref>生物学的精神医学会世界連合『大うつ病性障害の急性期と継続機の治療』2013。P27</ref>。 |
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2011年、[[英国国立医療技術評価機構]](NICE)の臨床ガイドラインは、[[全般性不安障害]](GAD)と[[パニック障害]]に対して長期的な有効性の証拠が存在するのは抗うつ薬だけであるとしている{{sfn|英国国立医療技術評価機構|2011|pp=1.2.22-1.4.4}}。 |
2011年、[[英国国立医療技術評価機構]](NICE)の臨床ガイドラインは、[[全般性不安障害]](GAD)と[[パニック障害]]に対して長期的な有効性の証拠が存在するのは抗うつ薬だけであるとしている{{sfn|英国国立医療技術評価機構|2011|pp=1.2.22-1.4.4}}。 |
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[[厚生労働省]]によれば、[[強迫性障害]]の主要な治療は[[SSRI]]を主とした薬物、および[[認知行動療法]]であり、 |
[[厚生労働省]]によれば、[[強迫性障害]]の主要な治療は[[SSRI]]を主とした薬物、および[[認知行動療法]]であり、[[クロミプラミン]]、[[フルボキサミン]]、[[パキシル]]が挙げられている<ref>[https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_compel.html 強迫性障害 厚生労働省]</ref>。 |
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2012年、『摂食障害国際ジャーナル』誌(''International Journal of Eating Disorders'')の報告では、[[摂食障害]]にはいかなる薬物治療の利益も示されていないが、48.4%が抗うつ薬を処方されている<ref name="pmid22733643">{{cite journal|last1=Fazeli|first1=Pouneh K.|last2=Calder|first2=Genevieve L.|last3=Miller|first3=Karen K.|last4=Misra|first4=Madhusmita|last5=Lawson|first5=Elizabeth A.|last6=Meenaghan|first6=Erinne|last7=Lee|first7=Hang|last8=Herzog|first8=David|last9=Klibanski|first9=Anne|title=Psychotropic medication use in anorexia nervosa between 1997 and 2009|journal=International Journal of Eating Disorders|volume=45|issue=8|pages=970–976|year=2012|month=December|pmid=22733643|doi=10.1002/eat.22037}}</ref>。 |
2012年、『摂食障害国際ジャーナル』誌(''International Journal of Eating Disorders'')の報告では、[[摂食障害]]にはいかなる薬物治療の利益も示されていないが、48.4%が抗うつ薬を処方されている<ref name="pmid22733643">{{cite journal|last1=Fazeli|first1=Pouneh K.|last2=Calder|first2=Genevieve L.|last3=Miller|first3=Karen K.|last4=Misra|first4=Madhusmita|last5=Lawson|first5=Elizabeth A.|last6=Meenaghan|first6=Erinne|last7=Lee|first7=Hang|last8=Herzog|first8=David|last9=Klibanski|first9=Anne|title=Psychotropic medication use in anorexia nervosa between 1997 and 2009|journal=International Journal of Eating Disorders|volume=45|issue=8|pages=970–976|year=2012|month=December|pmid=22733643|doi=10.1002/eat.22037}}</ref>。 |
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2013年、うつ病に対する[[非定型抗精神病薬]]の |
2013年、うつ病に対する[[非定型抗精神病薬]]のメタ分析では、効果量は0.32-0.34であり、抗うつ薬と同様であった<ref name="pmed1001403">{{cite journal|last1=Hay|first1=Phillipa J.|last2=Spielmans|first2=Glen I.|last3=Berman|first3=Margit I.|last4=Linardatos|first4=Eftihia|last5=Rosenlicht|first5=Nicholas Z.|last6=Perry|first6=Angela|last7=Tsai|first7=Alexander C.|title=Adjunctive Atypical Antipsychotic Treatment for Major Depressive Disorder: A Meta-Analysis of Depression, Quality of Life, and Safety Outcomes|journal=PLoS Medicine|volume=10|issue=3|pages=e1001403|year=2013|doi=10.1371/journal.pmed.1001403|url=http://www.plosmedicine.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pmed.1001403}}</ref>。これらの[[抗精神病薬]]には、セロトニンやドーパミンを遮断する薬剤、セロトニン・ドーパミン拮抗薬(SDA)と呼ばれる抗精神病薬が含まれる。 |
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日本の[[厚生労働省]]は、[[大うつ病性障害]]に対し、18歳未満に投与しても効果を確認できなかったとして、添付文書を改訂し医師に慎重な投与を求めるよう[[日本製薬団体連合会]]に要請した。対象は |
日本の[[厚生労働省]]は、[[大うつ病性障害]]に対し、18歳未満に投与しても効果を確認できなかったとして、添付文書を改訂し医師に慎重な投与を求めるよう[[日本製薬団体連合会]]に要請した。対象は[[レクサプロ]]、[[ジェイゾロフト]]、[[ルボックス]]、[[デプロメール]]、[[レメロン]]、[[リフレックス]]、[[トレドミン]]の7製品である<ref>「[http://jp.wsj.com/article/JJ11997891205565913637118548438832743842789.html 18歳未満「効果確認できず」=抗うつ剤の注意改訂要請—厚労省]」The Wall Street Journal 日本語版(時事通信社配信)2013年3月29日。</ref><ref>「[https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002ygw3.html SSRIなど抗うつ薬6種類の「使用上の注意」改訂を要請]」厚生労働省2013年3月29日。</ref>。高齢者では全死亡率が高い<ref name="pmid29270136">{{cite journal|last1=Hengartner|first1=Michael P.|title=Methodological Flaws, Conflicts of Interest, and Scientific Fallacies: Implications for the Evaluation of Antidepressants’ Efficacy and Harm|journal=Frontiers in Psychiatry|volume=8|pages=275|year=2017|pmid=29270136|pmc=5725408|doi=10.3389/fpsyt.2017.00275|url=https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyt.2017.00275/full}}</ref>。 |
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2017年のシステマティックレビューは、見つかった131のランダム化比較試験すべてでバイアスのリスクが高く、統計的に有意だが、臨床的意義は疑わしく、重篤な有害事象のリスクを有意に増加させており、自殺行動、生活の質、長期的影響に関するデータはほとんどないため、小さな有益な効果を有害な影響が上回るようであると結論した<ref name="pmid28178949">{{cite journal|last1=Jakobsen|first1=Janus Christian|last2=Katakam|first2=Kiran Kumar|last3=Schou|first3=Anne|coauthors=et al.|title=Selective serotonin reuptake inhibitors versus placebo in patients with major depressive disorder. A systematic review with meta-analysis and Trial Sequential Analysis|journal=BMC Psychiatry|volume=17|issue=1|pages=58|year=2017|pmid=28178949|pmc=5299662|doi=10.1186/s12888-016-1173-2|url=https://doi.org/10.1186/s12888-016-1173-2}}</ref>。 |
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=== 効果の持続性 === |
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抗うつ薬([[アリピプラゾール]]など)には[[ギャンブル依存症]]や[[過食]]などの[[嗜癖行動]]を誘発する作用がある。そうした作用が投与中止で消失し永続しないのであれば、抗うつ作用も投与中止で消失することになる。 |
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== 歴史 == |
== 歴史 == |
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[[File:Bundesarchiv Bild 141-1875A, Peenemünde, V2 auf Abschussbahn.jpg|thumb|150px|right|[[V2ロケット]]]] |
[[File:Bundesarchiv Bild 141-1875A, Peenemünde, V2 auf Abschussbahn.jpg|thumb|150px|right|[[V2ロケット]]]] |
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[[第二次世界大戦]]が終わると、[[V2ロケット]]の燃料の1つである[[ヒドラジン]]の在庫を、製薬会社は非常に安価に入手し、構造を変化させて新しい化合物を作った{{sfn|エリオット・S・ヴァレンスタイン|2008|pp=49-50}}。[[エフ・ホフマン・ラ・ロシュ|ホフマン・ラ・ロッシュ]] |
[[第二次世界大戦]]が終わると、[[V2ロケット]]の燃料の1つである[[ヒドラジン]]の在庫を、製薬会社は非常に安価に入手し、構造を変化させて新しい化合物を作った{{sfn|エリオット・S・ヴァレンスタイン|2008|pp=49-50}}。[[エフ・ホフマン・ラ・ロシュ|ホフマン・ラ・ロッシュ]]は、ヒドラジン化合物の[[イソニアジド]]と[[イプロニアジド]]に、[[結核菌]]を死滅させる薬の特性を見出した{{sfn|エリオット・S・ヴァレンスタイン|2008|pp=49-50}}。 |
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1952年には、この薬による治療によって、[[結核]]患者が楽しそうに踊りだすといった多幸症の副作用が知られ、その経緯で[[精神科]]の患者で試験され、1956年にはイプロニアジドのうつ病への有効性が見出された{{sfn|エリオット・S・ヴァレンスタイン|2008|pp=49-50}}。イプロニアジドは、[[モノアミン酸化酵素阻害薬]](MAOI)の抗うつ薬である(日本の商品エフピーに、うつ病の適応はない)。 |
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同じ頃、三環系という種類の抗うつ薬も発見された。1856年にイギリスの化学者[[ウィリアム・パーキン]]が、[[コールタール]]から得られる[[フェノチアジン]]に似た化合物が染料として用いることができることを発見した{{sfn|エリオット・S・ヴァレンスタイン|2008|pp=27-28}}。このフェノチアジンに似た合成染料の[[イミノベンジル]]系の[[サマーブルー]]から、スイスのガイギー社が[[イミプラミン]]を合成した{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2012|pp=113-115}}。1955年にローランド・クーンが、イミプラミンをメランコリーで入院中の患者に投与し{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2012|pp=113-115}}、1957年にはチューリッヒの国際精神医学会議において、うつ病患者の症状を軽減させたと報告した{{sfn|エリオット・S・ヴァレンスタイン|2008|pp=52-54}}。翌1958年に、イミプラミンはトフラニールの商品名で販売された{{sfn|エリオット・S・ヴァレンスタイン|2008|pp=52-53}}。 |
同じ頃、三環系という種類の抗うつ薬も発見された。1856年にイギリスの化学者[[ウィリアム・パーキン]]が、[[コールタール]]から得られる[[フェノチアジン]]に似た化合物が染料として用いることができることを発見した{{sfn|エリオット・S・ヴァレンスタイン|2008|pp=27-28}}。このフェノチアジンに似た合成染料の[[イミノベンジル]]系の[[サマーブルー]]から、スイスのガイギー社が[[イミプラミン]]を合成した{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2012|pp=113-115}}。1955年に[[:en:Roland Kuhn|ローランド・クーン]]が、イミプラミンをメランコリーで入院中の患者に投与し{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2012|pp=113-115}}、1957年にはチューリッヒの国際精神医学会議において、うつ病患者の症状を軽減させたと報告した{{sfn|エリオット・S・ヴァレンスタイン|2008|pp=52-54}}。翌1958年に、イミプラミンはトフラニールの商品名で販売された{{sfn|エリオット・S・ヴァレンスタイン|2008|pp=52-53}}。 |
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シルドクラウトの理論の根拠には、高血圧剤の[[レセルピン]]がウサギのセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンの濃度を減少させたことや<ref name="pmid13246642">{{cite journal|last1=Pletscher|first1=A.|last2=Shore|first2=P. A.|last3=Brodie|first3=B. B.|title=Serotonin Release as a Possible Mechanism of Reserpine Action|journal=Science|volume=122|issue=3165|pages=374–375|year=1955|month=August|pmid=13246642|doi=10.1126/science.122.3165.374}}</ref>、偽薬と比較してレセルピンが抑うつと不安の症状を改善させたという『[[ランセット]]』誌の同じ号のすぐ前のページに掲載された論文<ref name="pmid14392947">{{cite journal|last1=Davies|first1=D.L.|last2=Shepherd|first2=Michael|title=Reserpine in the treatment of anxious and depressed patients |journal=The Lancet|volume=266|issue=6881|pages=117–120|year=1955|month=July|pmid=14392947|doi=10.1016/S0140-6736(55)92118-8}}</ref>がある{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2005|pp=23-26}}。しかしながら、『ランセット』誌の同じ号に掲載されたすぐ前のページ、116〜117ページに掲載された論文はレセルピンの服用者が自殺傾向を示すというものであった<ref name="pmid14392946">{{cite journal|last1=Wallace|first1=D.C.|title=Treatment of Hypertension Hypotensive Drugs and Mental Changes|journal=The Lancet|volume=266|issue=6881|pages=116–117|year=1955|month=July|pmid=14392946|doi=10.1016/S0140-6736(55)92117-6}}</ref>。1970年代には、セロトニンの減少ではないという結論に達したが、抗うつ薬のマーケティングの際に利用されていった{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2005|pp=23-26}}。 |
シルドクラウトの理論の根拠には、高血圧剤の[[レセルピン]]がウサギのセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンの濃度を減少させたことや<ref name="pmid13246642">{{cite journal|last1=Pletscher|first1=A.|last2=Shore|first2=P. A.|last3=Brodie|first3=B. B.|title=Serotonin Release as a Possible Mechanism of Reserpine Action|journal=Science|volume=122|issue=3165|pages=374–375|year=1955|month=August|pmid=13246642|doi=10.1126/science.122.3165.374}}</ref>、偽薬と比較してレセルピンが抑うつと不安の症状を改善させたという『[[ランセット]]』誌の同じ号のすぐ前のページに掲載された論文<ref name="pmid14392947">{{cite journal|last1=Davies|first1=D.L.|last2=Shepherd|first2=Michael|title=Reserpine in the treatment of anxious and depressed patients |journal=The Lancet|volume=266|issue=6881|pages=117–120|year=1955|month=July|pmid=14392947|doi=10.1016/S0140-6736(55)92118-8}}</ref>がある{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2005|pp=23-26}}。しかしながら、『ランセット』誌の同じ号に掲載されたすぐ前のページ、116〜117ページに掲載された論文はレセルピンの服用者が自殺傾向を示すというものであった<ref name="pmid14392946">{{cite journal|last1=Wallace|first1=D.C.|title=Treatment of Hypertension Hypotensive Drugs and Mental Changes|journal=The Lancet|volume=266|issue=6881|pages=116–117|year=1955|month=July|pmid=14392946|doi=10.1016/S0140-6736(55)92117-6}}</ref>。1970年代には、セロトニンの減少ではないという結論に達したが、抗うつ薬のマーケティングの際に利用されていった{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2005|pp=23-26}}。 |
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[[ドーパミン]]の発見などで後に |
[[ドーパミン]]の発見などで後にノーベル賞を受賞した神経科学者の[[アルビド・カールソン]]が、セロトニンの再取り込みだけを阻害する薬を作ろうとし、スウェーデンのアストラ社で[[抗ヒスタミン薬]]の[[クロルフェニラミン]]の化学構造を修正し{{仮リンク|ジメリジン|en|Zimelidine}}を合成し、1972年に欧州のいくつかの国で特許が下り、1982年にツェルミドの商品名で認可された{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2005|pp=30-32}}。しかしながら同じ年に[[アメリカ食品医薬品局]]の認可を得る際に、[[ギラン・バレー症候群]]という致命的な副作用が報告され、市場から消えた{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2005|pp=30-32}}。これが世界初の[[選択的セロトニン再取り込み阻害薬]](SSRI)であるとされる。後に[[クロルフェニラミン]]自体にセロトニン再取り込み阻害様の作用があることが明らかになったが、特許を取ることができず、特許がなければ臨床試験を行いマーケティングを行い販売し収益を確保するといった採算の見込みはない{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2005|pp=34-35、57-58}}。 |
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ツェルミドに続いて、フランスのフルニエ社のジュラール・ル・フェールが、抗ヒスタミン薬の分子構造を修正した{{仮リンク|インダルピン|en|Indalpine}}を開発し、アップステンの商品名で市場に出たが白血球減少の副作用ですぐに市場から消えた{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2005|pp=34-35}}。 |
ツェルミドに続いて、フランスのフルニエ社のジュラール・ル・フェールが、抗ヒスタミン薬の分子構造を修正した{{仮リンク|インダルピン|en|Indalpine}}を開発し、アップステンの商品名で市場に出たが白血球減少の副作用ですぐに市場から消えた{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2005|pp=34-35}}。 |
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はじめに市場に生き残ったSSRIは、[[フルボキサミン]](ルボックス)であり、1983年にはスイスにて販売されたのを皮切りに各国で認可されていったが、ドイツでは臨床試験中に自殺と自殺企図が生じて承認されなかった{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2005|pp=38-40}}。 |
はじめに市場に生き残ったSSRIは、[[フルボキサミン]](ルボックス)であり、1983年にはスイスにて販売されたのを皮切りに各国で認可されていったが、ドイツでは臨床試験中に自殺と自殺企図が生じて承認されなかった{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2005|pp=38-40}}。 |
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プロザック(日本では未認可)の認可は、アメリカとカナダで1988年、イギリスでは1989年であり、この頃までには[[ベンゾジアゼピン系]]の薬剤の危険性に関する話題は深刻になっており、不安障害の背後にうつ病があるとして販売された{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2005|pp=58-60}}。 |
[[フルオキセチン|プロザック]](日本では未認可)の認可は、アメリカとカナダで1988年、イギリスでは1989年であり、この頃までには[[ベンゾジアゼピン系]]の薬剤の危険性に関する話題は深刻になっており、不安障害の背後にうつ病があるとして販売された{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2005|pp=58-60}}。 |
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頭文字を組み合わせたSSRIという単語は、スミスクライン・ビーチャム(後の[[グラクソ・スミスクライン]]社)が、[[パロキセチン]]のマーケティングのために作ったが薬の種類を指すまでに一般化した{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2005|pp=44-46}}。パロキセチンは、1991年にイギリスでセロキサット、1992年にアメリカでパキシルの商品名で市場に出た。 |
頭文字を組み合わせたSSRIという単語は、スミスクライン・ビーチャム(後の[[グラクソ・スミスクライン]]社)が、[[パロキセチン]]のマーケティングのために作ったが薬の種類を指すまでに一般化した{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2005|pp=44-46}}。パロキセチンは、1991年にイギリスでセロキサット、1992年にアメリカでパキシルの商品名で市場に出た。 |
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日本では2000年あたりから、パキシルのマーケティングのために軽症のうつ病を |
日本では2000年あたりから、パキシルのマーケティングのために、軽症のうつ病を[[病気喧伝]]する「心の風邪」という言葉が用いられた<ref>{{cite news| author=Kathryn Schulz|url=http://www.nytimes.com/2004/08/22/magazine/did-antidepressants-depress-japan.html?pagewanted=4 |work=The New York Times |title=Did Antidepressants Depress Japan?| date=2004-08-22| accessdate=2013-01-10}}</ref>。 |
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2003年から2004年にかけて、欧米でパロキセチンが小児の自殺を誘発するという試験が隠 |
2003年から2004年にかけて、欧米でパロキセチンが小児の自殺を誘発するという試験が隠蔽されていたという話題が持ち上がると、[[双極性障害]]の[[病気喧伝|売り込み]]へと変わっていったと、デイヴィッド・ヒーリーは主張する{{sfn|デイヴィッド・ヒーリー|2012|pp=251-253}}。他にも2003年にイギリスの[[医薬品・医療製品規制庁]] (MHRA) は、グラクソ・スミスクラインに臨床試験開始前の自殺を偽薬群の数としてカウントすべきではないと告げ、これにはFDAは気づかなかったようだが、同様のことはプロザックでもゾロフトでも行われていた<ref>{{Cite book|和書|author=デイヴィッド・ヒーリー|authorlink=デイヴィッド・ヒーリー (精神科医)|translator=田島治監訳、中里京子|title=ファルマゲドン|publisher=みすず書房|date=2015|isbn=978-4-622-07907-1|pages=332-333}} ''Pharmageddon'', 2012.</ref>。 |
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2010年ころから製薬会社は、既存の薬の構造を少し修正し特許を取得した模倣薬([[:en:Pharmaceutical industry#"Me-too" drugs|me too drug]])を販売するという手法ではすでに収益の見込みがないとみて、グラクソ・スミスクライン、アストラゼネカ、メルクなどの大手製薬会社が精神科領域の薬の開発から撤退しはじめた<ref name="pmid20671165"/>。 |
2010年ころから製薬会社は、既存の薬の構造を少し修正し特許を取得した模倣薬([[:en:Pharmaceutical industry#"Me-too" drugs|me too drug]])を販売するという手法ではすでに収益の見込みがないとみて、グラクソ・スミスクライン、アストラゼネカ、メルクなどの大手製薬会社が精神科領域の薬の開発から撤退しはじめた<ref name="pmid20671165" />。 |
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2010年には、精神科領域の4学会により、医師に対して不適切な[[多剤大量処方]]に対する注意喚起がなされている<ref>{{Cite press release|和書|author=日本うつ病学会、日本臨床精神神経薬理学会、日本生物学的精神医学会、日本総合病院精神医学会|title=「いのちの日」 緊急メッセージ 向精神薬の適正使用と過量服用防止のお願い|publisher= |date=2010-12-01|url=http://www.jsbp.org/link/dayoflife20101129.pdf|format=pdf|accessdate=2013-03-12}}</ref>。以降、対策が立てられ2剤以上の抗うつ薬の処方は診療報酬が削減されるなどの改定があった。 |
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1990年代後半からの約30年間の抗うつ薬の大幅な増加は、測定可能な公衆の利益を生み出していない<ref name="pmid28178949"/>。2013年には、架空の抗うつ薬をテーマにした映画[[サイド・エフェクト (映画)|サイド・エフェクト]]が公開された。 |
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[[ケタミン]]の早い抗うつ作用が見いだされ、2015年にはアメリカでは既に医療現場で[[適応外使用]]で用いることも増えている<ref name="ND2015jp">{{Cite journal |和書|author=Sara Reardon、(翻訳)船田晶子|date=2015|title=うつ病治療薬として臨床試験が進むケタミン|url=http://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v12/n4/%E3%81%86%E3%81%A4%E7%97%85%E6%B2%BB%E7%99%82%E8%96%AC%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E8%87%A8%E5%BA%8A%E8%A9%A6%E9%A8%93%E3%81%8C%E9%80%B2%E3%82%80%E3%82%B1%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3/61976|format=pdf|journal=Natureダイジェスト|volume=12|issue=4|doi=10.1038/ndigest.2015.150414}}</ref>。また、イギリスでは、医学研究審議会(MRC)の資金提供を受け、幻覚剤の[[シロシビン]]を治療抵抗性うつ病に対して用いる研究が開始され<ref name="pmid25391924">{{cite journal|last1=Nutt|first1=David|authorlink1=デビッド・ナット|title=Help luck along to find psychiatric medicines|journal=Nature|volume=515|issue=7526|pages=165–165|year=2014|pmid=25391924|doi=10.1038/515165a|url=http://www.nature.com/news/help-luck-along-to-find-psychiatric-medicines-1.16311}}</ref>、その結果、8年から30年のうつ病を患う患者12人の約半分は、服用体験から3週間後に寛解に達した(うつ病の基準を満たさなかった)<ref name="pmid27210031">{{cite journal|last1=Nutt|first1=David J|authorlink1=デビッド・ナット|last2=Carhart-Harris|first2=Robin L|last3=Bolstridge|first3=Mark|coauthors=et al.|title=Psilocybin with psychological support for treatment-resistant depression: an open-label feasibility study|journal=The Lancet Psychiatry|volume=3|issue=7|pages=619–627|year=2016|pmid=27210031|doi=10.1016/S2215-0366(16)30065-7|url=http://www.thelancet.com/journals/lanpsy/article/PIIS2215-0366(16)30065-7/fulltext}}</ref>。 |
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== 訴訟 == |
== 訴訟 == |
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2012年には、[[グラクソスミスクライン]](GSK)の違法なマーケティングに対して司法省は30億ドルの制裁を課したが、それには同社の[[パキシル]]の若年者で有効性を示さなかった研究と自殺の危険性を高めた研究の隠 |
2012年には、[[グラクソ・スミスクライン]](GSK)の違法なマーケティングに対して司法省は30億ドルの制裁を課したが、それには同社の[[パキシル]]の若年者で有効性を示さなかった研究と自殺の危険性を高めた研究の隠蔽、FDAによる若年者に対する承認がないにもかかわらず販売促進したことが含まれる<ref>{{cite web|url=http://www.justice.gov/opa/pr/2012/July/12-civ-842.html |title=USDOJ: GlaxoSmithKline to Plead Guilty and Pay $3 Billion to Resolve Fraud Allegations and Failure to Report Safety Data |publisher=Justice.gov |date=2012-07-02 |accessdate=2013-01-27}}</ref>。 |
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==代替手段や研究== |
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==他の物質== |
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{{See also|#議論}} |
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===NアセチルLシステイン=== |
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[[ω-3脂肪酸]]による抗うつ作用は議論されてきた。2015年のコクラン共同計画によるシステマティック・レビューは、臨床的に有意ではない小さな効果を見出しており、また研究の質が十分ではないと結論した<ref name="pmid26537796">{{cite journal|author=Appleton KM, Sallis HM, Perry R, Ness AR, Churchill R|title=Omega-3 fatty acids for depression in adults|journal=Cochrane Database Syst Re|issue=11|pages=CD004692|date=November 2015|pmid=26537796|pmc=5321518|doi=10.1002/14651858.CD004692.pub4|url=https://doi.org/10.1002/14651858.CD004692.pub4}}</ref>。2016年の別のアナリシスは、有効だということを見出した<ref name="pmid26978738">{{cite journal|author=Mocking RJ, Harmsen I, Assies J, Koeter MW, Ruhé HG, Schene AH|title=Meta-analysis and meta-regression of omega-3 polyunsaturated fatty acid supplementation for major depressive disorder|journal=Transl Psychiatry|pages=e756|date=March 2016|pmid=26978738|pmc=4872453|doi=10.1038/tp.2016.29|url=https://doi.org/10.1038/tp.2016.29}}</ref>。 |
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{{大言壮語|date=2016年3月|section=1}} |
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臨床試験にてアミノ酸であるNアセチルLシステイン(別称:アセチルシステイン、またはNAC)の摂取により、著しい効果がある事が証明された。NアセチルLシステインはLシステインの前駆体、安定体である。メカニズムとしては非常に強い体内抗酸化物質のグルタチオン生成に必要なNACが存在する事でグルタチオン量が増加・安定し、結果的に脳内ドーパミン量の増加、安定につながり、それが精神の安定へとつながる。グルタチオンは人体内でストレスや毒素に対しての対抗物質であり、一種のバッファー、バランサーの役割を果たしている。そのため体内グルタチオン量の管理は健康全般にとって重要である。 |
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コクラン共同計画による[[S-アデノシルメチオニン]] (SAMe) のレビューでは、結論を導くための質の高い研究がないとした<ref name="pmid27727432">{{cite journal|author=Galizia I, Oldani L, Macritchie K, et al.|title=S-adenosyl methionine (SAMe) for depression in adults|journal=Cochrane Database Syst Re|pages=CD011286|date=October 2016|pmid=27727432|doi=10.1002/14651858.CD011286.pub2}}</ref>。 |
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NアセチルLシステインは基本的なアミノ酸であり、不足時に摂取すると全臓器や人体機能の全体的向上が認められる。特にストレスによっても発症する肝機能障害とうつ病の関連性は過去から指摘されており、それを証明した形となる。NACの摂取によって、近年の臨床試験により、症状が改善または完治する病気は幅広いことが判ってきたため、現在も様々な臨床試験が行われており、シンプルかつ明快、基本的な作用メカニズムから良い結果が期待されている。精神障害において幅広く現在臨床実験が進められている。精神障害では、ADHD、うつ病からアルツハイマー、パーキンソン病に至るまで効果が確認されており、有望な物質である。 |
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[[L-アセチルカルニチン]]でのシステマティック・レビューでは、12のランダム化比較試験があり、3研究では抗うつ薬と比較して同等の効果であり副作用が抗うつ薬より少なく、また高齢者で特に有効だということを示唆した<ref name="pmid29076953">{{cite journal|author=Veronese N, Stubbs B, Solmi M, Ajnakina O, Carvalho AF, Maggi S|title=Acetyl-L-Carnitine Supplementation and the Treatment of Depressive Symptoms: A Systematic Review and Meta-Analysis|journal=Psychosom Med|issue=2|pages=154–159|date=2018|pmid=29076953|doi=10.1097/PSY.0000000000000537}}</ref>。高齢者で行われたランダム化比較試験では、フルオキセチン(プロザック)と同等の効果を示したが、1週間で効果を示し、フルオキセチンでは2週間かかった<ref name="pmid23428336">{{cite journal|author=Bersani G, Meco G, Denaro A, et al.|title=L-Acetylcarnitine in dysthymic disorder in elderly patients: a double-blind, multicenter, controlled randomized study vs. fluoxetine|journal=Eur Neuropsychopharmacol|issue=10|pages=1219–25|date=October 2013|pmid=23428336|doi=10.1016/j.euroneuro.2012.11.013}}</ref>。この早い作用から異なる作用機序に注目されている<ref name="pmid29267192">{{cite journal|author=Chiechio S, Canonico PL, Grilli M|title=l-Acetylcarnitine: A Mechanistically Distinctive and Potentially Rapid-Acting Antidepressant Drug|journal=Int J Mol Sci|issue=1|date=December 2017|pmid=29267192|pmc=5795963|doi=10.3390/ijms19010011|url=http://www.mdpi.com/1422-0067/19/1/11/htm}}</ref>。 |
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また、過大な処方をしない限り、重度の副作用はほぼ無いのも特徴である(人体換算20,000mg/日(20g/日)にてアレルギー症状を発生した例はマウスのテストではあるが、通常はその7分の1程度が最大の処方量であり、問題は無いと考えられる)。通常量で発生する一番頻度の高い副作用は、空腹時に摂取した際に多少の腹部の不快感である。体内で処理されるアミノ酸一種のため他の抗うつ薬の様な重篤な副作用が無い。 |
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[[テトラサイクリン系抗生物質]]の[[ミノサイクリン]]は、[[メタアナリシス]]・[[システマティックレビュー]]で大きな抗うつ効果が示された(効果量:-0.78 :95%[[信頼区間|CI]]:0.4-1.33、P=0.005 であり、前述の通り現行の抗うつ薬は0.32であり臨床的に有意な効果ではない)<ref name="pmid29102836">{{cite journal |vauthors=Rosenblat JD, McIntyre RS |title=Efficacy and tolerability of minocycline for depression: A systematic review and meta-analysis of clinical trials |journal=J Affect Disord |volume=227 |issue= |pages=219–225 |date=2017-10-28 |pmid=29102836 |doi=10.1016/j.jad.2017.10.042 |url=http://www.jad-journal.com/article/S0165-0327(17)31998-5/fulltext}}</ref>。抗生物質の使用は、[[薬剤耐性|薬剤耐性菌]]を生む問題があり感染症においても適正使用が言われており、感染症でもない状況での抗生物質の不適切使用は戒められる<ref>{{cite report ja|author=厚生労働省健康局結核感染症課|title=抗微生物薬適正使用の手引き 第一版|publisher=厚生労働省 |date=June 2017|url=https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000166612.pdf|format=pdf|accessdate=2017-12-10}}</ref>。 |
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他の抗うつ薬で発生する様な疾患などに対しても、NACの摂取によって改善が認められているため、ある意味正反対の反応である(例、イミプラミンでは口渇、倦怠感、脱力感、集中力低下、眠気、頭痛、めまい、立ちくらみ、便秘、頻脈の副作用があるが、NAC処方時にはこの副作用が全く無いどころか、逆にドライアイ、ドライマウス、倦怠感、集中力、頻脈については向上が見られるなど、全く逆の良作用が確認されている)。 |
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抗うつ薬は抗菌効果を有するという報告がある<ref name="pmid27744123" />。うつ病治療における抗うつ薬の抗菌メカニズムを評価し、抗うつ薬耐性への影響を決定するために、さらなる研究が必要とされている<ref name="pmid27744123">{{cite journal |vauthors=Macedo D, Filho AJMC, Soares de Sousa CN, et al. |title=Antidepressants, antimicrobials or both? Gut microbiota dysbiosis in depression and possible implications of the antimicrobial effects of antidepressant drugs for antidepressant effectiveness |journal=J Affect Disord |volume=208 |issue= |pages=22–32 |year=2017 |pmid=27744123 |doi=10.1016/j.jad.2016.09.012 |url=http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0165-0327(16)30881-3}}</ref>。 |
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患者にとっては、副作用をあまり考える必要がなく効果を期待できる、摂取可能な数少ない物質である。NアセチルLシステインは基本的にアミノ酸であり、副作用が無いため薬物指定がなく、世界中でサプリメントとして販売されているので簡単に入手可能である。 |
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抗うつ薬と膜輸送体OCTN1の薬物相互作用が研究されている。OCTN1による[[エルゴチオネイン]]の脳への取り込みは[[海馬 (脳)|海馬]]歯状回における神経新生を促進し、抗うつ効果を発揮する可能性が示唆された<ref>{{cite | author=KAKEN |title=膜輸送体OCTN1による神経細胞の機能制御機構とうつ病治療への応用に関する研究 | url=https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-25460092/25460092seika.pdf |date=2015}}</ref>。 |
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モノアミン仮説以外では、{{仮リンク|ニューロキニン1|en|Neurokinin 1}}(NK1)周辺の研究がなされている。[[サブスタンスP]]受容体アンタゴニストの[[アプレピタント]]に抗うつ作用が報告された<ref name="IRYO2001"/>。 しかしながら、プラセボ対照⼆重盲検ランダム化臨床試験では有意差を示せていない<ref>{{cite journal|title=Lack of efficacy of the substance p (neurokinin1 receptor) antagonist aprepitant in the treatment of major depressive disorder|journal=Biological psychiatry|year=2006|volume=59|issue=3|pmid=16248986|doi=10.1016/j.biopsych.2005.07.013}}</ref>。 |
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<ref>{{cite |url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3044191/ |title=N-acetylcysteine in psychiatry: current therapeutic evidence and potential mechanisms of action}}</ref> |
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一方、既存抗うつ薬の慢性投与では海馬での[[BDNF]]の発現を増加させることから、ニューロンの萎縮を防止するのではないかとBDNFも注目されている<ref name="IRYO2001"/>。 |
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== 脚注 == |
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{{脚注ヘルプ}} |
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=== 注釈 === |
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== 出典 == |
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== 参考文献 == |
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; 診療ガイドライン |
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*{{Cite report|publisher=[[世界保健機関]] |title=mhGAP Intervention Guide for mental, neurological and substance use disorders in non-specialized health settings |date=2010 |isbn=9789241548069 |url=http://www.who.int/mental_health/publications/mhGAP_intervention_guide/en/ |ref={{SfnRef|世界保健機関|2010}} }} |
:*{{Cite report|df=ja|publisher=[[世界保健機関]] |title=mhGAP Intervention Guide for mental, neurological and substance use disorders in non-specialized health settings |date=2010 |isbn=9789241548069 |url=http://www.who.int/mental_health/publications/mhGAP_intervention_guide/en/ |ref={{SfnRef|世界保健機関|2010}} }} |
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*{{cite report |author=英国国立医療技術評価機構|title=Anxiety - Clinical guidelines CG113 |url=http://guidance.nice.org.uk/CG113 |date=2011 |
:*{{cite report |df=ja |author=英国国立医療技術評価機構|title=Anxiety - Clinical guidelines CG113 |url=http://guidance.nice.org.uk/CG113 |date=January 2011 |publisher=National Institute for Health and Clinical Excellence |accessdate=2013-03-10|ref={{SfnRef|英国国立医療技術評価機構|2011}} }} |
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*{{cite report |author=英国国立医療技術評価機構|authorlink=英国国立医療技術評価機構|title=Depression in adults - Clinical guidelines CG90 |url=http://guidance.nice.org.uk/CG90 |date=2009 |
:*{{cite report |df=ja |author=英国国立医療技術評価機構|authorlink=英国国立医療技術評価機構|title=Depression in adults - Clinical guidelines CG90 |url=http://guidance.nice.org.uk/CG90 |date=June 2009 |publisher=National Institute for Health and Clinical Excellence |accessdate=2013-02-23|ref={{SfnRef|英国国立医療技術評価機構|2009}} }} |
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*{{Cite report | |
:*{{Cite report ja|author1=日本うつ病学会 |author2=気分障害のガイドライン作成委員会|date=2012-07-26 |title=日本うつ病学会治療ガイドライン II.大うつ病性障害2012 Ver.1 |url=http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/mood_disorder/img/120726.pdf |publisher=日本うつ病学会、気分障害のガイドライン作成委員会 |format=pdf |edition=2012 Ver.1 |accessdate=2013-01-01|ref={{SfnRef|日本うつ病学会|気分障害のガイドライン作成委員会|2012}} }} |
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*{{Cite report | |
:*{{Cite report ja|author1=日本うつ病学会 |author2=気分障害のガイドライン作成委員会|date=2013-09-24 |title=日本うつ病学会治療ガイドライン II.大うつ病性障害2013 Ver.1.1 |url=http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/mood_disorder/img/130924.pdf |publisher=日本うつ病学会、気分障害のガイドライン作成委員会 |format=pdf |edition=2012 Ver.1.1 |accessdate=2013-01-01|ref={{SfnRef|日本うつ病学会|気分障害のガイドライン作成委員会|2013}} }} |
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; その他 |
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*{{ |
:*{{Cite book|和書|author=アービング・カーシュ|authorlink=アービング・カーシュ|others=石黒千秋訳 |title=抗うつ薬は本当に効くのか |year=2010 |isbn=978-4767809540|ref=harv}}、{{cite book |author=Kirsch, I|title=The Emperor's New Drugs: Exploding the Antidepressant Myth |publisher=The Bodley Head |location=London |year=2009 |isbn=1-84792-083-7|ref=harv}} |
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*{{Cite book |和書|author=エリオット・S・ヴァレンスタイン|translator=功刀浩監訳、中塚公子 |
:*{{Cite book |和書|author=エリオット・S・ヴァレンスタイン|translator=功刀浩監訳、中塚公子|date=2008-02|title=精神疾患は脳の病気か?|publisher=みすず書房|isbn=978-4-622-07361-1|ref=harv}}、Blaming the Brain, 1998 |
||
*{{Cite book |和書|author=デイヴィッド・ヒーリー|translator=田島治監訳、谷垣暁美 |
:*{{Cite book |和書|author=デイヴィッド・ヒーリー|translator=田島治監訳、谷垣暁美|date=2005-08|title=抗うつ薬の功罪|publisher=みすず書房|isbn=4-622-07149-5|ref=harv}}、Let Them Eat Prozac, 2003 |
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*{{Cite book|和書|author=デイヴィッド・ヒーリー|translator=江口重幸監訳、坂本響子|date=2012-11|title=双極性障害の時代―マニーからバイポーラーへ|publisher=みすず書房|isbn=978-4-622-07720-6|pages=|ref=harv}}、MANIA: A Short History of Bipolar Disorder, 2008 |
:*{{Cite book|和書|author=デイヴィッド・ヒーリー|translator=江口重幸監訳、坂本響子|date=2012-11|title=双極性障害の時代―マニーからバイポーラーへ|publisher=みすず書房|isbn=978-4-622-07720-6|pages=|ref=harv}}、MANIA: A Short History of Bipolar Disorder, 2008 |
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*{{Citation|author=Robert Whitaker|date=January 1, 2009|year=2009|title=[[w:Anatomy of an Epidemic|Anatomy of an Epidemic: Magic Bullets, Psychiatric Drugs, and the Astonishing Rise of Mental Illness in America]]|publisher=[[w:Crown Publishing Group|Crown Publishing Group]]|place=New York|asin=B004RU7U5C}}.(翻訳書は {{Citation|和書|author=ロバート・ウィタカー|others=小野善郎監訳、門脇陽子・森田由美訳|date=2010-9-19|title=心の病の「流行」と精神科治療薬の真実|publisher=福村出版|isbn= |
:*{{Citation|author=Robert Whitaker|date=January 1, 2009|year=2009|title=[[w:Anatomy of an Epidemic|Anatomy of an Epidemic: Magic Bullets, Psychiatric Drugs, and the Astonishing Rise of Mental Illness in America]]|publisher=[[w:Crown Publishing Group|Crown Publishing Group]]|place=New York|asin=B004RU7U5C}}.(翻訳書は {{Citation|和書|author=ロバート・ウィタカー|others=小野善郎監訳、門脇陽子・森田由美訳|date=2010-9-19|title=心の病の「流行」と精神科治療薬の真実|publisher=福村出版|isbn=978-4571500091}}) |
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== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
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* {{仮リンク|抗うつ薬の一覧|en|List of Antidepressants}} |
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* [[うつ病]] |
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* [[プラシーボ効果]] |
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* [[多剤大量処方]] |
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* [[化学的不均衡]] |
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* [[偽薬]] |
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* [[賦活症候群]] |
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* [[セロトニン症候群]] |
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* [[抗コリン作用]] |
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* [[ドラッグ・ラグ]] |
* [[ドラッグ・ラグ]] |
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== 外部リンク == |
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*{{脳科学辞典|記事名=抗うつ薬}} |
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2024年12月1日 (日) 03:18時点における最新版
抗うつ薬(こううつやく、英: Antidepressant)とは、典型的には、抑うつ気分の持続や希死念慮を特徴とするうつ病のような気分障害 (MD)に用いられる精神科の薬である。
不安障害のうち全般性不安障害やパニック障害[1]、社交不安障害 (SAD)、強迫性障害[2]、心的外傷後ストレス障害 (PTSD)[3]にも処方される。慢性疼痛、月経困難症、更年期障害、耳鳴りなどへの適応外使用が行われる場合がある。しかし適用外の処方には議論があり、アメリカ合衆国司法省による制裁が行われた例もある。
概要
[編集]モノアミン酸化酵素阻害薬と三環系抗うつ薬の抗うつ作用が偶然に発見されて以降、セロトニンとノルアドレナリンの挙動が着目され、四環系抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)が開発されてきた。
抗うつ薬は、効果の発現が服薬開始から2-6週間遅れるが、しばしば1週間後までに効果が見られることもある。抗うつ薬の有効性が議論されており、軽症のうつ病に対しては、必ずしも薬剤の投与は一次選択にはなっていない[4][5][6]。統計的には偽薬との差があるが効果は小さく、臨床的に意味がない差だとされる[7]。
1990年代後半から、約30年間の抗うつ薬の大幅な増加は、測定可能な公衆の利益を生み出していない[8]。使用にあたっても1種類の抗うつ薬のみを使用する[9][10]。もし抗うつ薬に対して反応がない場合でも、複数の抗うつ薬の併用はせず、有害作用が臨床上問題にならない範囲で十分量まで増量を行い、十分量まで増量しても反応が見られない場合は薬剤の変更を、一部の抑うつ症状に改善がみられるがそれ以上の改善がない場合は抗うつ効果増強療法を行う[11][12][13]。
ケタミンは、治療抵抗性うつ病に対しても時間単位で効果が現れるという即効性から[14]、世界では用いられるケースがある[15]。ただケタミンは解離性麻酔薬であり、薬物乱用されうる薬剤でもあることから、製薬会社はケタミンの薬理学的作用に注目した『ケタミン様薬物』の研究を進めている[16]。
抗うつ薬の使用は、口渇といった軽い副作用から、肥満や性機能障害など、様々な#副作用が併存する可能性がある。また2型糖尿病の危険性を増加させる[17]。さらに他者に暴力を加える危険性は、抗うつ薬全体で8.4倍に増加させるが、薬剤により2.8倍から10.9倍までのばらつきがある[18]。投与直後から、自殺の傾向を高める賦活症候群の危険性がある[19]。治験における健康な被験者でも自殺念慮や暴力の危険性が2倍であった[20]。日本でも添付文書にて、24歳以下で自殺念慮や自殺企図の危険性を増加させることを注意喚起している[21]。WHOガイドラインでは、12歳未満の子供については禁忌である[4]。
急に服薬を中止した場合、ベンゾジアゼピン離脱症状に酷似した離脱症状(抗うつ薬中断症候群)を生じさせる可能性がある[4][22]。離脱症状は、少なくとも2-3週間後の再発とは異なり、数時間程度で発生し、多くは軽度で1-2週間でおさまるとされるが[23]、2018年の調査では46%が重症で、数か月までにわたることも珍しくはない[24]。離脱症状の高い出現率を持つ薬剤、パロキセチン(パキシル)で66%やセルトラリン(ジェイゾロフト)で60%がある[23]。副作用に関するデータは過小評価されており、利益よりも害のほうが大きい可能性がある[25][8]。
製薬会社は、特許対策のために分子構造を修正し似たような医薬品設計を行っていたが、2009年にはグラクソ・スミスクラインが、神経科学分野での採算悪化を理由に、研究を閉鎖した[26]。その後、大手製薬会社の似たような傾向が続いた[27][28]。
抗うつ薬の種類
[編集]系統 | 一般名 | 商品名 | 発売年 |
---|---|---|---|
三環系 | イミプラミン | イミドール トフラニール |
1959年 |
アミトリプチリン | トリプタノール | 1961年 | |
トリミプラミン | スルモンチール | 1965年 | |
ドスレピン | プロチアデン | 1965年 | |
ノルトリプチリン | ノリトレン | 1971年 | |
クロミプラミン | アナフラニール | 1973年 | |
アモキサピン | アモキサン | 1980年 | |
ロフェプラミン | アンプリット | 1981年 | |
四環系 | マプロチリン | ルジオミール | 1981年 |
ミアンセリン | テトラミド | 1983年 | |
セチプチリン | テシプール | 1989年 | |
SARI | トラゾドン | デジレル レスリン |
1991年 |
SSRI | フルボキサミン | デプロメール ルボックス |
1999年 |
パロキセチン | パキシル | 2000年 | |
セルトラリン | ジェイゾロフト | 2006年 | |
エスシタロプラム | レクサプロ | 2011年 | |
SNRI | ミルナシプラン | トレドミン | 2000年 |
デュロキセチン | サインバルタ | 2010年 | |
ベンラファキシン | イフェクサー | 2015年 | |
NaSSA | ミルタザピン | リフレックス レメロン |
2009年 |
S-RIM | ボルチオキセチン | トリンテリックス | 2019年 |
SSRI以降をひとまとめにすることが一般的である。例えば、日本うつ病学会の診療ガイドラインは、SSRI、SNRI、NaSSAなどを、「新規抗うつ薬」としてひっくるめている[31]。あるいは研究者はこれら新規抗うつ薬を第二世代と呼ぶことが一般的である。
有効性では新規の抗うつ薬と従来の抗うつ薬とに違いはないと言う見解が混在するし、一定した結論はない[31]。従来の抗うつ薬では、抗コリン作用による鎮静作用が強く、また自殺に用いられた際に死亡率が高い[31]。忍容性においては新規の抗うつ薬であるが、24歳以下で自殺を誘発する賦活症候群や中止時の離脱症候群、また高齢者での死亡率の上昇など副作用の違いがある[31]。どれが第一選択となるかということはない[31]。
〈以下時系列順〉
モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害薬)
[編集]最も初期の抗うつ薬であるが、薬剤相互作用や副作用の多さから日本では抗うつ薬としてはほとんど使われず、パーキンソン病治療薬として専ら用いられている。
三環系抗うつ薬(TCA)
[編集]もっとも古い抗うつ薬で1950年代に登場した。これらの薬のセロトニンやノルアドレナリンの再取り込みの阻害が後に発見され、改良につながっていった。三環系抗うつ薬の第1世代としてはアミトリプチリン (トリプタノール、ラントロン)、イミプラミン (イミドール、トフラニール)、クロミプラミン (アナフラニール)、トリミプラミン (スルモンチール)、ノルトリプチリン(ノリトレン)。三環系抗うつ薬の第2世代としてはアモキサピン (アモキサン)、ドスレピン(プロチアデン)、ロフェプラミン(アンプリット)が知られている。
初期の抗うつ薬であるが使われ続けている薬である。その理由としては、有効性という点では新規抗うつ薬が優っているとは必ずしも言えず、抗コリン作用をはじめとした多くの副作用が存在するが、緊急入院患者のような重症では有効性が高い可能性があるという見解があるためである[31]。特徴としては三級アミンは二級アミンと比べると、鎮静作用、抗コリン作用が強く、起立性低血圧も起こしやすい。鎮静作用と体重増加の作用はヒスタミンH1受容体に対する親和性と相関している。起立性低血圧はアドレナリンα1受容体との親和性に相関している。またTCAは内服中断後、1週間は体内にとどまると考えられている。危険な副作用としてはキニジン様作用といわれる心臓障害がある。
- イミプラミン (イミドール、トフラニール)
- 最初に作られたTCAである。アミトリプチリン よりも抗コリン作用、鎮静作用が弱いがノルトリプチリンよりは強い。起立性低血圧も比較的少ない。
- アミトリプチリン (トリプタノール、ラントロン)
- 抗コリン作用、鎮静作用が最も強いTCAである。若年者で入眠障害がある患者に好まれる傾向がある。就寝前に多く飲ませることが多い。
- クロミプラミン (アナフラニール)
- セロトニンの再取り込み阻害作用が強い。痙攣がおこる頻度が他のTCAよりも強いため、抗痙攣作用の強い抗不安薬を併用することが多い。注射薬があるため、うつ病による不穏、焦燥に対して3時間程度で25mgを点滴静注することもある。
- ノルトリプチリン(ノリトレン)
- セロトニンよりもノルアドレナリンの再取り込みを強く抑制する。焦燥感を起こすことが少ない。有効治療量の幅が狭く処方が難しい。
- アモキサピン (アモキサン)
- 第二世代のTCAであり、副作用、特に抗コリン作用が軽減されている。他のTCAよりも効果発現が早いといわれている。
四環系抗うつ薬
[編集]ノルアドレナリンの再取り込みを選択的に阻害し、セロトニンの再取り込みは阻害しない。抗コリン作用はTCAよりも軽減されている傾向があるが、痙攣を起こしやすく、抗痙攣作用の強い抗不安薬(ジアゼパムやニトラゼパム)を併用することが多い。塩酸マプロチリン(ルジオミール)、塩酸ミアンセリン(テトラミド)、マレイン酸セチプチリン(テシプール)が有名である。
- ミアンセリン(テトラミド)
- α2受容体を遮断することでノルアドレナリンの放出を促進する。抗ヒスタミン作用が強い薬物である。心毒性がないため非常に使いやすい抗うつ薬である。呼吸抑制と鎮静という副作用がある。SSRIとの併用による増強効果が報告されている数少ない薬物である。
- セチプチリン(テシプール)
- ミアンセリンを改良した薬物。中枢性セロトニン作用をもつ。鎮静の副作用はまれ。
セロトニン遮断再取り込み阻害薬(SARI)
[編集]トリアゾロピリジン系の抗うつ薬。トラゾドン(商品名レスリン、デジレル)は、セロトニンの再取り込みを阻害する他、セロトニン5-HT2受容体の阻害作用が強い薬物である。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
[編集]フルボキサミン(ルボックス、デプロメール)、パロキセチン(パキシル)、セルトラリン(ジェイゾロフト)、シタロプラム(日本未発売)、エスシタロプラム(レクサプロ)が知られている。急に服薬を中止するとSSRI離脱症候群が発現する恐れがある。強迫性障害、社交不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害に適応があるものがある。双極性障害には気分安定薬と併用しない限り禁忌である。効果発現に2週間程度必要である。投与初期(1〜2週間程度)は悪心、嘔吐、不安、焦燥、不眠といった症状が出現することがあるが継続投与で軽快、消失する。持続することもある。セロトニン受容体に対する急性刺激と考えられている。少量ではセロトニン選択性であるが、高用量となるとノルアドレナリンの再取り込みも阻害するようになる。
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
[編集]ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)
[編集]NaSSA(ナッサ)は、英語: Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant の略。これまでのようにシナプスにおける神経伝達物質の再取り込みを阻害して濃度を上げるのではなく、セロトニン、ノルアドレナリンの分泌量そのものを増やす作用がある。α2ヘテロ受容体とα2受容体をふさぎ、セロトニンやノルアドレナリンが出ていないと錯覚させ分泌を促す。また、5-HT1受容体にセロトニンが結びつきやすくするために、5-HT1以外のセロトニン受容体をふさぐ。SSRI、SNRIと作用用途が違うため単剤処方で効果が薄いうつ病に対してはこれらの抗うつ薬を併用するカリフォルニア・ロケットという投薬が行われる場合がある。
- ミルタザピン、合併したMSDからレメロン、Meiji Seika ファルマからリフレックスとして発売されている。国内の臨床試験で、82.7%に何らかの副作用が認められた。50%で傾眠など。
医療用途
[編集]大うつ病
[編集]WHOのガイドラインでは、成人のうつ病に対しての選択肢として提案されているが、一方で12歳未満には処方禁止、12歳以上の児童では第一選択肢から除外するとしている[4]。WHO必須医薬品モデル・リストから選択することが望ましい[4]。
英国国立医療技術評価機構(NICE)の2004年のガイドラインは、危険性/利益の比率が悪いという理由で、抗うつ薬を軽症うつ病の初期治療に用いるべきではないとしている;中等度あるいは重度のうつ病では、SSRIのほうが三環系よりも忍容性が高い;重度のうつ病では、抗うつ薬は認知行動療法のような心理療法と組み合わせるべきである[32]。NICEの2009年の改定されたガイドラインは、危険性/利益の比率が悪いために軽症以下のうつ病に抗うつ薬を使用してはいけない(Do not use antidepressants)としている[33]。さらに、セントジョーンズワートは、軽症あるいは中等度で利益がある可能性についても言及している。
アメリカ精神医学会による2000年の大うつ病性障害の患者の治療のための診療ガイドラインは[34]、患者が望むなら、軽症の大うつ病性障害の最初の一次治療に抗うつ薬を投与してもよいとしている;電気痙攣療法が計画されていない、中等度から重度の大うつ病性障害では抗うつ薬を投与すべきである;精神病性うつ病には、抗精神病薬と抗うつ薬の併用、あるいは電気痙攣療法を用いるべきである。有効性は、概して分類間と分類内で同等であると示されており、最初の選択は主に個々の患者、患者の選択、医薬品と費用に関する臨床試験のデータの量と質から予想される副作用に基づく。
日本うつ病学会の2012年の大うつ病障害の治療ガイドラインでは、軽症うつ病の場合、安易な薬物療法は避けるべきであり、中等度から重症のうつ病の場合、1種類の抗うつ薬の使用を基本とし、十分な量の抗うつ薬を十分な期間に渡って投与すべきであるとされる。寛解維持期には十分な継続・維持療法を行い、抗うつ薬の投与の終結を急ぐべきではないとされる[35]。
不安障害
[編集]NICEのガイドラインでは、全般性不安障害(GAD)および強迫性障害(OCD)への第一選択肢は低強度の心理療法であり、それに効果を示さなかった場合は、選択肢の一つとしてSSRIによる薬物療法を挙げている[1][2]。
疼痛
[編集]線維筋痛症(FMS)の疼痛管理選択肢の一つとしてガイドラインで挙げられている。
副作用
[編集]抗うつ薬が効果を表すのは、セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンなどの神経伝達物質に作用するからであるとされている。しかし、三環系や四環系抗うつ薬では、抗コリン作用、抗α1作用なども併せ持っており、そのために以下のような副作用が報告されている。また、実際の症例では他の基礎疾患治療薬との併用となる事も多く、薬剤相互作用や副作用の頻度は上昇すると共に見逃され易い[36]と指摘されている。
- 抗コリン作用による口渇、便秘、目のかすみ、排尿困難など
- アドレナリンα1受容体遮断作用による低血圧、めまいなど
- 抗ヒスタミン作用による眠気、体重増加
- 抗ムスカリン作用による視力調節障害
- 手足の痙攣・振戦、全身の痺れなど(重症になると一ヶ月ほど痺れが続く場合もある)
- 性格変化・他害行為など
服用開始直後の吐き気については、これについては制吐剤(ガスモチンなど)や六君子湯などの併用によって緩和することが可能である[要出典][37]。性欲減退についてはDNRIとの併用で解消できる場合があることが報告されている。
副作用の概要
[編集]SSRIの主な副作用には以下が含まれるが、これだけに限定されるわけではない。セロトニン症候群、吐き気、下痢、血圧の上昇、精神運動性激越、頭痛、不安、神経過敏、情緒不安定、自殺念慮の増加、自殺企図、不眠症、薬物間の相互作用、新生児の薬害反応、食欲不振、口渇、眠気、振戦、性機能障害、性欲減衰、無力、消化不良、目まい、発汗、人格障害、鼻血、頻尿、月経過多、躁/軽躁[38]、悪寒、動悸、味覚倒錯、排尿障害[39]、傾眠、胃腸の不整、筋力低下、長期間の体重増加。
三環系抗うつ薬の一般的な副作用:口渇、かすみ目、傾眠、目まい、振戦、性的な問題、皮膚湿疹、また体重の増減。
三環系抗うつ薬の副作用には、心拍数、傾眠、口渇、便秘、尿閉、かすみ目、目まい、精神錯乱、性機能障害。毒性は、常用量で約10倍である;過剰服用では、致命的な不整脈を引き起こし致死的になることが多い。一方で、三環系抗うつ薬は、今なお特にうつ病の重症の症例での有効性を理由として、安価にまた適用外で用いられている。
1998年の162のランダム化比較試験からのSSRIと三環系抗うつ薬の有害事象の比較レビューでは、口渇、便秘、目まいではSSRIのほうが半分程度の頻度であるが、吐き気、下痢、不安、興奮、不眠症ではSSRIのほうがおよそ2倍の頻度であり、副作用の合計数では、SSRIのほうが多かった[40]。
NaSSAの副作用には、傾眠、食欲増加、体重増加が含まれる[41]。
2009年5月に公表された研究によれば、乳がん生存者が、抗がん剤のタモキシフェンの服用中にいくつかの抗うつ薬を用いた場合に、再発の危険性がある[42]。
双極性うつ病においては抗うつ薬が、SSRIでは頻繁に、軽躁 (Hypomania) と躁の症状の悪化あるいは誘因となる[43]。
妊娠中の抗うつ薬の使用は、自然流産の危険性の増加に関連している[44]。
妊娠期
[編集]妊娠は感情の変動の誘因となり、うつ病に対処することを難しくする。発達中の胎児と乳児に対する危険性と反している医薬品の中断と再発の危険性が、比較検討される。一部の抗うつ薬は妊娠中の胎児に対する危険性が低いが、FDAはパキシル使用時の出生異常の危険性について忠告しており[45]、またMAOIは避けるべきである。新生児は、出生時に抗うつ薬の突然の中断により離脱症候群が現れる可能性がある。妊娠中の抗うつ薬の使用は、自然流産[44]、出生異常[46]、発育遅延[47]の危険性の増加、自閉症の危険性が2倍に増加する[48]ことに結びついている。抗うつ薬は、母乳中にさまざまな量で含まれているが、乳児に対する影響は不明である[49]。
2006年の『米国医師会雑誌』(JAMA)における産業的な公表では、妊娠中に抗うつ医薬品を中断することは再発頻度が高いことを見出した[50]。米国医師会雑誌は後に、金銭的つながりや利害関係の衝突の可能性に言及して訂正を公表し[51]、著者は、つながりは研究活動に関係していないと主張した。産科医で出産期医学者のアダム・ユレート(Adam Urato)は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』で、患者と医療専門家は産業の影響から自由な状態で助言される必要があると述べた[52]。
自殺
[編集]増量でも減量でも、抗うつ薬の服用量を変更した場合、自殺の危険性が2倍になることが認められる[53]。 159,810人のアミトリプチリン、フルオキセチン(日本では未認可)、パロキセチン、ドチエピンの使用者からの研究から、抗うつ薬の開始から1カ月、特に最初の日から9日目の間に自殺行動の危険性が増加したことが見出された[19]。
アメリカ食品医薬品局は、すべてのSSRIに、子供と若年者における自殺率(1,000人あたり2人から4人)を2倍にする、という黒枠警告文を命じた[54][55]。しかしながら、自殺は医薬品に起因するのか、うつ病自身の要素なのかという議論がある[54][56]。25歳以下の成人の自殺傾向や自殺行動の危険性の増加は、子供と若年者でのものに近い[57]。
若い患者は、自殺念慮や行動の兆候を、とりわけ治療開始の8週間は、注意深く観察されるべきである。
米国ではFDAの警告(2007年5月)以降に若年者の自殺死者数が増加している[58]。FDA警告の結果、若年者の抗うつ薬治療が少なくなり、結果として自殺者が増えたとすれば問題であると、日本うつ病学会の野村総一郎は述べている[59]。
2009年の英国『モーズレイ処方ガイドライン第10版[注釈 1]』では、うつ病の治療が希死念慮および自殺企図を防ぐ最も効果的な方法であり、ほとんどの場合、抗うつ薬による治療が最も効果的な方法だとしている[61]。
2012年のうつ病学会シンポジウムでは、渡邊衡一郎により、米国精神医学界(APA)の治療ガイドラインでは、自殺予防の観点から抗うつ薬は特に急性期には必要と認識されていると意見されている[61]。意見は、男女ともSSRIの処方量が増えると、自殺率は低下する。若年者への投与の減少により、若年者の自殺率が増加している。睡眠障害により自殺率は上昇する。不安障害の併存により自殺率は上昇する。アルコールや物質依存により自殺率は上昇するというものである[61]。
しかし、2015年のアメリカ国立精神衛生研究所 (NIH) やコロラド大学の教授らによる、自殺予防の観点からの薬物療法についての論文によれば、リチウムとクロザピン(抗精神病薬)が自殺を防止するという証拠に比べれば、それ以外の抗うつ薬、あるいは抗精神病薬では、証拠に説得力がないことを報告している[62]。ケタミンでは、投与から40分で自殺念慮を減少させており、自殺企図と死亡に関する調査はまだないが、今後の研究に期待が寄せられている[62]。
2016年4月の研究は、抗うつ薬の長期間の使用中に自殺や自殺企図を防ぐかについて包括的なレビューによってメタアナリシスを実施し、未知の理由による試験からの脱落が多く、結論に至らなかった[63]。また北欧コクランセンターの研究は、システマティック・レビューを行い、欧州の監督庁に提出されたデータからデュロキセチン、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、ベンラファキシンについて、成人では差がないものの小児および青年では自殺および攻撃のリスクは倍増していることや[64]、欧州とイギリスの監督庁に提出された治験における健康な被験者の自殺念慮や暴力の危険性を2倍にしていることを見出した[20]。前者の研究ではイーライリリー社のデータでは自殺念慮の情報が欠落しているなどの情報の不完全性があり、解明にはそうしたデータの入手が必要であるとしている[64]。 腹圧性尿失禁に対するデュロキセチンによる治療のアメリカでの試験で予想を上回る自殺率が報告されたため、欧州医薬品庁 (EMA) に提出されたデータのメタアナリシスしたところ、人数の少なさと自殺や暴力に関連する記載の書き方を原因として信頼性のある評価が行えなかった(なお害が利益を上回っていると結論された)[65]。
抗うつ薬が自殺を引き起こすリスクは過小評価されており[25]、システマティックレビューは自殺行動に関するデータがほとんどないことを発見している[8]。
他害行為
[編集]食品医薬品局(FDA)の有害事象報告システム(AERS)のデータのうち、殺人や暴力の基準を満たしたものを同定し、暴力が起きた件数の79%を31つの薬で占めたが、そのうち抗うつ薬は13つである[18]。抗うつ薬全体では8.4倍、フルオキセチン(プロザック(日本では未認可)、SSRI)で10.9倍、パロキセチン(パキシル、SSRI)10.3倍、フルボキサミン(デプロメール、SSRI)8.4倍、ベンラファキシン(SNRI)8.3倍、デスベンラファキシン(SNRI)7.9倍、セルトラリン(ジェイゾロフト、SSRI)6.7倍、エスシタロプラム(レクサプロ、SSRI)5.0倍、シタロプラム(SSRI)4.3倍、アミトリプチリン(トリプタノール、三環系)4.2倍、トラゾドン(レスリン、デジレル)3.5倍、ミルタザピン(リフレックス、レメロン、NaSSA)3.4倍、であった。抗うつ薬の服用者の年齢が下がるほど他害行為の傾向が見られた[21]。
#自殺の節も参照。
事故
[編集]抗うつ薬の使用は、高齢者の転倒と関連している[66]。
1か月以内に抗うつ薬を摂取していた場合、自動車事故の危険性が70%増加する[67]。
レム睡眠の抑制
[編集]トリミプラミン、ミルタザピン、ネファゾドンを除くすべての主要な抗うつ薬は、レム睡眠を抑制し、これらの薬の臨床効果は、概してレム睡眠における抑制効果に由来するという説がある。 抗うつ薬の3つの主要な種類、モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)、三環系抗うつ薬(TCA)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)は、レム睡眠を大きく抑制する[68]。MAOIはほぼ完全にレム睡眠を抑制する。ミルタザピンはレム睡眠に影響がないか、それを僅かに増加させるかのどちらかである[69]。この作用は、長期間にわたり高用量の抗うつ薬を服用している患者の疲労を増大させる原因となる。
体重増加
[編集]多くの抗うつ薬(TCA、TecA、SSRIのグループからパロキセチン)は、通常は5〜25キログラムの範囲で、まれに50キログラム以上の体重増加に結びついている。約165万人からのメタアナリシスで、SSRIや主に三環系抗うつ薬であるほかの抗うつ薬の使用は、2年で2型糖尿病の危険性を68パーセント増加させる[17]。
離脱症状
[編集]抗うつ薬を急に中断した場合、頻繁に、身体と精神の両方に離脱の要素のある抗うつ薬中断症候群を生じさせる[23][70]。離脱症状は、抗うつ薬を6週間以上服用した後に服薬をやめた数時間から1日程度で表れる可能性があり、少なくとも2〜3週間後であるうつ病の再発とは異なる[23]。症状は軽度なことが多いが、少数は医師による治療が必要である[23]。
離脱症状は、SSRIのほか、三環系抗うつ薬[71]、モノアミン酸化酵素阻害薬(日本では抗うつ薬として未認可)[72]、非定型抗うつ薬(たとえばベンラファキシン、ミルタザピン、トラゾドン、など)で報告されている[23]。
2018年のシステマティックレビューでは14件の研究から離脱症状の出現率は平均56%(27-86%の範囲)であり、患者への告知、ガイドラインの更新が必要とされる[24]。46%が重症となり、症状の期間が数か月までにわたることも珍しくはない[24]。
デンマークにおけるノルディック・コクラン・センターの研究者は、SSRI中断の兆候と症状をベンゾジアゼピン離脱症状におけるものと比較し、両方に離脱反応として依存症症候群を示し、酷似していたと結論した[22]。ほかの場所では、SSRIが依存症を引き起こすという懸念が持ち上がっている[73]。抗うつ薬は、時計遺伝子として知られる転写因子と相互に作用する可能性があり[74]、薬物の依存性(薬物乱用)とおそらく肥満に関与している[75][76]。6〜9か月を超える長期の治療の場合、このプロセスは抗うつ薬の初期の急性効果を妨害する(臨床効果の減少)。薬物治療の終了時にこのプロセスのみとなって離脱症状を生じさせ、再発の脆弱さが増す。このプロセスは必ずしも可逆的ではない。それどころか多くの抗うつ薬が切り替えあるいは増強されており、反耐性が起きる[77]。
SSRI中断の離脱症状の一部を挙げる:怒り、不安、パニック、抑うつ、離人症、剥離、精神錯乱、集中力の低下、記憶の問題、号泣発作、幻覚、躁、せん妄、平衡感覚の問題、視覚障害、電撃の感覚[78][79]、無感覚、知覚障害、むずむず脚、うずき、振戦、震え、パーキンソン、攻撃性、緊張。
さらに、増量でも減量でも抗うつ薬の用量の変更が生じた場合、自殺の危険性が2倍になると見られている[53]。
離脱と反発の作用の強度を最小化するには[80]、抗うつ薬は、減量に対する個人の反応に応じて、数週間から数カ月の期間継続すべきである。中断のためのアシュトンによる手順では、毎週か2週ごとに、残りの用量の10%の減量を勧めている[81]。 大部分の事例では、中断症状は最後の1〜4週間まで存続するが、おそらく15%までの少数の利用者は、離脱後1年間にわたり離脱症状が持続する[82]。 離脱症状の、出現率は全体では20%程度だが、パロキセチン(パキシル)で66%、セルトラリン(ゾロフト)で60%と薬剤によって異なり、血中半減期が短いものが出現率が高い傾向がある[23]。 パロキセチンとベンラファキシンは[78][83][84][85][86][87][88]、中断が特に困難なようで、18か月以上持続する長期にわたる離脱症状がパロキセチンで報告されている[70]。いくつかのピア・サポートのグループが、患者が抗うつ薬を徐々に減らすための支援を行っている[89][90]。
2013年に発行された『精神障害の診断と統計マニュアル』第5版(DSM-5)では、抗うつ薬中断症候群(Antidepressant Discontinuation Syndrome)の診断名が追加された。
増補薬
[編集]- 抗不安薬 - 一般的にベンゾジアゼピン系は不安を和らげ睡眠を促進するために処方されている。しかしながら依存の危険性が高いため、これらの薬物は短期的または頓服用に用いられることが推奨される。
- 抗精神病薬 - 特に高用量では、目のかすみ・筋肉痙攣・落ち着きのなさ・遅発性ジスキネジア・体重増加などの重篤な副作用を引き起こす可能性がある。
- リチウム塩(商品名:リーマス等) - 日本国内においては抗躁薬として発売され、保険適応も躁病・躁うつ病(双極性障害)であり、気分安定薬としての効能が臨床的に認められている。抗うつ薬の補強として用いられる。
なお、薬物治療抵抗性うつ病や再発性うつ病も含めた中等症から重症のうつ病にたいして抗うつ薬の効果の増強療法が選択される場合がある[93]。#増強および併用を参照。
物忘れ
[編集]アミトリプチリンなどの一部の古い抗うつ剤は物忘れを引き起こすので、医師と相談する必要がある[94]。
治療効果
[編集]抗うつ薬の効果は、副作用に関連するリスクを正当化するために偽薬をしのぐべきである。うつ病の重症度の評価にハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)が、しばしば用いられる[95]。HAM-Dの17項目のアンケートからの最大スコアは52点である;高いスコアがより重度のうつ病である。何が薬に対する十分な反応に相当するのかについては十分に確立されていないが、寛解あるいはすべてのうつ症状の実際の除去が目標であり、しかしながら寛解率はまれにしか公表されていない。症状軽減の割合は、抗うつ薬による46-54%に対して偽薬では31-38%である[96]。
234の研究から、第二世代の13種の抗うつ薬シタロプラム、デスベンラファキシン、エスシタロプラム、フルオキセチン(日本では未認可)、フルボキサミン、ミルタザピン、ネファゾドン、パロキセチン、セルトラリン、トラゾドン、ベンラファキシン)にて、年齢、性別、民族、併発疾患を考慮しても、うつ病の急性期、継続期、維持期の治療に対して、ほかのものを上回る臨床的に意味のある優越は発見されなかった[97]。
うつ病の薬物治療の有効性について、アメリカ国立精神衛生研究所によって委託されこれまでに最大規模かつ高額な費用がかかった研究、STAR*D (Sequenced Treatment Alternatives to Relieve Depression) が実施された[98]。その結果[99][100]の概要は以下である。STAR*Dの各過程は14週間ごとであり、従って14週後における寛解率や脱落率を表す。
- 治療の最初の過程の後、2,876人の参加者のうち、27.5%がHAM-Dの点数が7点以下となり寛解に達した。21%が脱落した[101]。
- 次の治療の過程の後、残り1,439人の参加者のうち21-30%が寛解した。310人の参加者だけが研究の継続に協力的であるか継続可能であった[100]。薬の切り替えでは約25%の患者が寛解に達した[102]。
- 3番目の治療の過程の後、残り310人の参加者のうち、17.8%が寛解した。
- 4番目の治療の過程の後、残り109人の参加者のうち、10.1%が寛解した。
- 1年後の追跡調査で、1,085人の寛解した参加者のうち、93%が再発するかこの研究を脱落した。
この研究で比較されたどの薬の間にも、寛解率、反応率、寛解あるいは反応までの期間に、統計的あるいは意味のある臨床的な違いはない[103]。シタロプラム、リチウム、ミルタザピン、ノルトリプチリン、セルトラリン、トリヨードサイロニン、トラニルシプロミン、ベンラファキシン徐放錠が含まれる。
2008年のランダム化比較試験のレビューは、症状の改善は、SSRIを使用して1週間目の終わりが最高で、いくらかの改善は少なくとも6週間継続したと結論した[104]。
SSRIのフルオキセチン(日本では未認可)、パロキセチン、エスシタロプラムとSNRIデュロキセチンと偽薬では、反応があった場合、偽薬のほうが改善度が緩やかだが、すべてで時間と共に改善していく傾向が見られた。しかし、抗うつ薬に反応しなかった患者の一部、全体に対する約25%の患者は、HAM-Dスコアが高いままで、8週間では偽薬より著しく高かった[105]。これは抗うつ薬に反応しない場合、中止すべきことを示唆していると解釈された[106]。
うつ病は類似した症状を呈する異なる病因の病気の集合なので、抗うつ薬の予後が悪いことを示した。大うつ病性障害の定義は見当違いの可能性がある[107]。
抗うつ薬はうつ病の根本にある原因に効果があるかについて、2002年のレビューは、使用を終了した場合、抗うつ薬がうつ病の再発の危険性を減少させるという根拠がないと結論した。このレビューの執筆者らは、対人関係療法(IPT)と認知行動療法(CBT)を挙げ、抗うつ薬を心理療法と組み合わせることを提言した[108]。
研究のレビュー
[編集]- (2007) 小児うつ病のための抗うつ薬の使用のレビュー[109][110]
- (2004) 「活性プラシボ」と比較した抗うつ薬の評価[111]
- (2001) 異なる種類の抗うつ薬の相対的な有効性の比較[112] 異なる設定におけるもの[113] うつ病の性質の差異を考慮したもの[114]
- (1999) 新しいタイプのMAOIの評価[115]
増量
[編集]2006年のシステマティックレビューは、増量を推奨する証拠がないことを確認した[116]。パロキセチンの増量は、血中濃度では増加するものの、セロトニン受容体での占有率を増加させていないため、著者はSSRIの増量は推奨できないとしている[117]。フルオキセチン(日本では未認可)、パロキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、セルトラリン、フルボキサミンでのメタアナリシスで、反応率は通常の開始用量の50.8%に対して高用量で開始した場合は54.8%であり、有害事象による中止率は通常量9.8%に対して高用量16.5%であり、有害事象のリスクのほうが高まった[118]。
三環系(イミプラミン、クロミプラミン)、四環系(マプロチリン)、SSRI(フルオキセチン(日本では未認可)、シタロプラム、フルボキサミン、ミルナシプラン、セルトラリン、パロキセチン、ベンラファキシン)、MAOIs(イソカルボキサジド、フェネルジン、モクロベミド)、非定型抗うつ薬(ネファゾドン、ミナプリン、ロリプラム)を、イミプラミン等価換算で有効性をメタアナリシスした研究があり、高用量は改善率を上昇させないが有害事象の発現率を上げていることが示されている[119]。
投与量 | 偽薬群 | 100mgまで | 200mgまで | 250mgまで | 250mg以上 |
---|---|---|---|---|---|
改善率 | 34.8% | 46.0% | 53.3% | 46.3% | 48.3% |
有害事象発現率 | 1倍 | 1倍 | 1.5倍 | 1.63倍 | 2.18倍 |
高用量の抗うつ薬によるハミルトンうつ病評価尺度の改善度は、9.97点であったのに対し、低用量では9.57点であり、臨床的には無視できるほどの差であった。解析に使用されたのは、フルオキセチン(プロザック(日本では未認可))、パロキセチン(パキシル)、セルトラリン(ゾロフト)、ベンラファキシン(イフェクサー))、ネファゾドン(サーゾーン)、およびシタロプラム(セレクサ)のデータである[120]。
効果の限界と方策
[編集]抗うつ薬が投与された30%から50%の間の患者が反応を示さない[121][122]。着実な反応があった場合でも、うつ病と機能不全の有意な継続は一般的で、そういう事例では再発率は3から6倍高い[123]。さらに、抗うつ薬は治療の過程で効果を失っていく傾向がある[124]。これらの限界と変動を打開するいくらかの方法が実際の診療で試みられている[125]。薬の切り替えと増強と併用である。
遺伝子に基づく治療の最適化
[編集]STAR*Dでは、治療効果と遺伝子を解析し個人に最適化された投薬を探る目的があったが、そのようなデータは得られていない[16]。欧州におけるNEWMEDS計画からも、セロトニン再取り込み阻害剤あるいはノルアドレナリン再取り込み阻害剤への反応性を予測する遺伝子との関連性は導き出せていない[126]。
「試行錯誤」による切り替え
[編集]アメリカ精神医学会(APA)の2000年の診療ガイドラインで、抗うつ薬による治療によって6から8週目までに反応がない場合、同じ種類の別の抗うつ薬に切り替え、次に異なった種類の抗うつ薬にすることを勧告している。この方法を用いたSTAR*D研究で報告された寛解率は21%であった。
2006年のメタ分析レビューは以前の研究の研究結果に多様性を見出した;SSRI抗うつ薬に反応しなかった患者が、新しい薬に対して12%から86%の間の反応があることを示した。しかしながら、個人はすでに多くの抗うつ薬を試しているので、新しい抗うつ薬試験からの恩恵はなさそうである[122]。 また一方、後のメタ分析は、新しい薬への切り替えと古い薬の継続との間に、違いがないことを見出している;とはいえ、新しい薬に切り替えた場合、治療抵抗性患者の34%が反応し、切り替えなしでも40%の反応があった[127]。従って、新しい薬に対する臨床反応は、違う薬を受け取っているという信念に関連した偽薬効果の可能性がある。
増強および併用
[編集]アメリカ精神医学会のガイドラインは、部分的な反応に対して、増強あるいは違う種類の薬を追加することを勧めている。以下が含まれる:リチウム、甲状腺強化、ドーパミン作動薬、性ホルモン、NRI、糖質コルチコイド特性の薬剤、また新しい抗てんかん薬[128]STAR*D計画は、この方法で30%の寛解率を報告した。
併用戦略では、通常、作用機序が重ならないように異なる系統の抗うつ薬を追加する。とはいえ、この戦略の有効性及び副作用についてのエビデンスはまだ少ないので、より大規模な臨床試験で有効性等を実証する必要がある[129]。STAR*D計画は、増強戦略で同じような寛解率を報告した。
薬剤を切り替えるのではなく、併用して作用増強を図ることは、単剤での副作用を緩和したり、治療抵抗性又は重度の精神病症状の悪化と治療無反応性を改善する可能性があることを示している[130]。
シタロプラムへの抗精神病薬のリスペリドン(リスパダール)の追加は利点が示せなかった[131]。フルオキセチン(日本では未認可)に追加したオランザピン(ジプレキサ)でも同様である[132]。
長期間の使用
[編集]1960年代以降、抗うつ薬の服用はうつ病の長期的転帰を悪化させるという報告がある[133]。
1990年、アメリカ国立精神衛生研究所は、うつ病に関する全国調査で抗うつ薬(イミプラミン)、偽薬、心理療法(2種類)を比較し、18ヶ月後の健康維持率について、心理療法(認知療法)を受けた患者群が最高(30%)、抗うつ薬を服用した患者群が最低(19%)と報告している[134]。
1998年、世界保健機関(WHO)は、うつ病のスクリーニングの意義に関する研究を世界15都市で実施し、12ヵ月後の転帰について、抗うつ薬を服用した患者群は薬物療法を受けなかった患者群に比べて健康状態が悪いと報告している[135]。
抗うつ薬の治療効果は一般的に薬物治療が終了すると続かず、結果として再発率が高い。31のプラセボ対照の抗うつ薬の試験の最近のメタアナリシスでは、研究期間のほとんどは1年であり、抗うつ薬に反応していた18%の患者が服薬中に再発したのに対し、抗うつ薬を偽薬に切り替えた場合41%であったことを見出した[136]。アメリカ精神医学会のガイドラインは、症状の消失後、4〜5か月の抗うつ薬による継続治療を推奨している。うつ病エピソードの既往歴のある患者に対して、英国精神薬理学会の2000年の抗うつ薬によるうつ病治療のガイドラインは、最低でも6カ月から長くて5年あるいは無期限の抗うつ薬の継続を推奨している。
2年間の追跡では抗うつ薬を継続的に使用した約60%が再発しており、認知療法を受け薬を中止していた場合に、再発率の有意な低下が見られた[137]。
5年の追跡によれば、1年以上薬剤を使用した患者群では再発率は23%で、6か月-12か月間使用した患者群との違いはなかった[138]。さらに、治療上の利益は治療過程の間に漸減した[77]。急性期の治療における薬物療法の使用後の残遺期における心理療法を伴う方法が、いくつかの試験によって提案されている[139][140]。
抗うつ薬による治療を受けた再発性のうつ病患者40人で、再発した場合を除き抗うつ薬の投与を止めた場合の再発率は、2年後時点で臨床管理群(20人)では80%に対し認知行動療法群(20人)では25%、6年後時点で臨床管理群では90%に対し認知行動療法群では60%であった[141]。
試験では偽薬へと急速に切り替えられており、重度の離脱症状を起こす可能性があることから、試験に欠陥がある可能性があり、維持療法には疑問が呈され、抗うつ薬を用いなくとも再発率は上昇しないことが示唆される[25]。一方で、平均8.5ヶ月間の抗うつ薬による治療を受けた後の、うつ病やパニック障害の再発リスクは、2週間以上かけて徐々中止するよりも、7日以内に急速に中止した場合のほうが低いという研究結果がある[142]。
議論
[編集]抗うつ薬は脳内の化学的不均衡を正すという名目で処方されるが、科学的な根拠があるわけではない。
偽薬の反応率が最近の臨床試験では高くなっている(ため偽薬との効果の差が出にくくなった)と主張されているが、メタアナリシスからは実際には反応率は30年間変わっていないことが判明している[25]。
1998年、アービング・カーシュらは、偽薬にも本物の薬の約75%の効果があると発表した。25%の差は、副作用を感じると本物だと分かり、被験者の期待感が高まるからだと説明した。分析には16種類の薬アミトリプチリン、イミプラミン、アモキサピン、マプロチリン、フルオキセチン(日本では未認可)、パロキセチン、ベンラファキシン、トラゾドン、イソカルボキサジド(日本では未認可)、フェネルジン(日本では未認可)、トラニルシプロミン(日本では未認可)、アミロバルビトン、アジナゾラム、リチウム、リオチロニンの臨床試験データが用いられ、これらを4つの群「TCA(三環系・四環系)」「SSRI」「他の抗うつ薬」「他の薬」に分けた。全ての群で偽薬は本物の薬に対してほぼ75%の効果であった[143]。
2002年、アービング・カーシュらは、情報公開法に基づき、製薬会社がアメリカ食品医薬品局(FDA)に提出した臨床試験データを入手し、分析を行った。公開されていなかったデータを含めると、75%ではなく、約82%であった。この発表は激しい議論を巻き起こした[144]。
2004年、コクラン共同計画は、本物の薬のような副作用を持つ偽薬(活性プラセボ)を用いてシステマティック・レビューを行ったが、偽薬と抗うつ薬の間に有効性の違いは見られなかった[111]。アービング・カーシュは、副作用のない通常の偽薬は本物の薬との差が大きくなる可能性を指摘している[145]。
臨床試験データの隠蔽に関する裁判で、グラクソ・スミスクラインは全ての臨床試験データを開示することで合意した[146]。医学雑誌編集者国際委員会は、一流医学誌では事前登録のない臨床試験を掲載しないとの声明を行い、世界保健機関による登録制度の構築や臨床試験の事前登録の議論へとつながった[147]。
2007年、抗うつ薬は米国で最も問題について議論される処方薬となった。一部の医師は、人々が問題の最終的な救いを求めているサインだと考えている。他はこれらの人々が抗うつ薬に依存しすぎていると反論している[148]。
2008年、アービング・カーシュらは、アメリカ食品医薬品局(FDA)にフルオキセチン(日本では未認可)、ベンラファキシン、ネファゾドン、パロキセチンの臨床試験データを請求し、分析を行った。英国国立医療技術評価機構(NICE)のガイドラインで臨床的意義があるとされる基準は、効果量が0.50以上、または抗うつ薬と偽薬とのハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)得点差が3点以上である。結果は、効果量0.32、得点差1.8点(抗うつ薬9.6点、偽薬7.8点)で、偽薬は抗うつ薬の82%の効果であった[149][150]。カーシュはハミルトンうつ病評価尺度 (HAM-D) ではなく、医師が知覚した変化の印象に適合している全般印象評価尺度-改善度(CGI-I)にて違いを検出できず、統計的に有意な差があるだけでなく、臨床的に意味があるかどうかを医薬品の承認の際に検討すべきだとした[7]。
世界保健機関とその関連機関は、パロキセチンの未公表試験を含めてメタ分析し、偽薬は抗うつ薬の83%の効果であった[151]。 欧州の規制機関も、認可された抗うつ薬(SSRI、SNRI)の保有データを分析したところ、同様の結果であった[152]。
2009年、アメリカ国立精神衛生研究所(NIMH)のトーマス・インセルは、偽薬効果を疑問視する証拠を挙げた上で、抗うつ薬の効果が全て偽薬効果だとしても、STAR*D計画における14週後の最適な寛解率である28%を受け入れるべきかと問い、数時間で寛解をもたらす「ケタミン」を次世代の抗うつ薬の目標にしている[16]。
2010年、ペンシルベニア大学、バンダービルト大学、コロラド大学、ニューメキシコ大学の別々の心理学者により行われたパキシル、イミプラミンを対象とした研究では、軽症から中等度のうつ病に対して、偽薬との比較でほとんど改善度に差がないことが分かった。この研究は米国医学会誌に掲載された[153][154]。このことは、重症度が増すにつれて、抗うつ薬の使用がより適切なものとなることを示唆するともいえる[155]。
2011年、英国国立医療技術評価機構(NICE)の臨床ガイドラインは、全般性不安障害(GAD)とパニック障害に対して長期的な有効性の証拠が存在するのは抗うつ薬だけであるとしている[156]。 厚生労働省によれば、強迫性障害の主要な治療はSSRIを主とした薬物、および認知行動療法であり、クロミプラミン、フルボキサミン、パキシルが挙げられている[157]。
2012年、『摂食障害国際ジャーナル』誌(International Journal of Eating Disorders)の報告では、摂食障害にはいかなる薬物治療の利益も示されていないが、48.4%が抗うつ薬を処方されている[158]。
2013年、うつ病に対する非定型抗精神病薬のメタ分析では、効果量は0.32-0.34であり、抗うつ薬と同様であった[132]。これらの抗精神病薬には、セロトニンやドーパミンを遮断する薬剤、セロトニン・ドーパミン拮抗薬(SDA)と呼ばれる抗精神病薬が含まれる。
日本の厚生労働省は、大うつ病性障害に対し、18歳未満に投与しても効果を確認できなかったとして、添付文書を改訂し医師に慎重な投与を求めるよう日本製薬団体連合会に要請した。対象はレクサプロ、ジェイゾロフト、ルボックス、デプロメール、レメロン、リフレックス、トレドミンの7製品である[159][160]。高齢者では全死亡率が高い[25]。
2017年のシステマティックレビューは、見つかった131のランダム化比較試験すべてでバイアスのリスクが高く、統計的に有意だが、臨床的意義は疑わしく、重篤な有害事象のリスクを有意に増加させており、自殺行動、生活の質、長期的影響に関するデータはほとんどないため、小さな有益な効果を有害な影響が上回るようであると結論した[8]。
歴史
[編集]第二次世界大戦が終わると、V2ロケットの燃料の1つであるヒドラジンの在庫を、製薬会社は非常に安価に入手し、構造を変化させて新しい化合物を作った[161]。ホフマン・ラ・ロッシュは、ヒドラジン化合物のイソニアジドとイプロニアジドに、結核菌を死滅させる薬の特性を見出した[161]。
1952年には、この薬による治療によって、結核患者が楽しそうに踊りだすといった多幸症の副作用が知られ、その経緯で精神科の患者で試験され、1956年にはイプロニアジドのうつ病への有効性が見出された[161]。イプロニアジドは、モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)の抗うつ薬である(日本の商品エフピーに、うつ病の適応はない)。
同じ頃、三環系という種類の抗うつ薬も発見された。1856年にイギリスの化学者ウィリアム・パーキンが、コールタールから得られるフェノチアジンに似た化合物が染料として用いることができることを発見した[162]。このフェノチアジンに似た合成染料のイミノベンジル系のサマーブルーから、スイスのガイギー社がイミプラミンを合成した[163]。1955年にローランド・クーンが、イミプラミンをメランコリーで入院中の患者に投与し[163]、1957年にはチューリッヒの国際精神医学会議において、うつ病患者の症状を軽減させたと報告した[164]。翌1958年に、イミプラミンはトフラニールの商品名で販売された[165]。
また同じ頃に、うつ病を説明する仮説が生まれた。1954年に神経伝達物質であるセロトニンが脳内に存在することが報告され、 1960年にジョージ・アシュクロフトにより、うつ病ではセロトニン濃度が低くなっているかもしれないという理論が提唱された[167]。北米ではノルアドレナリンが関与していると考えられており、1965年にアメリカ国立精神衛生研究所(NIMH)のジョセフ・シルドクラウトがうつ病のカテコールアミン仮説を提唱し、うつ病では脳内のノルアドレナリンが減少し、抗うつ薬はこれを増加させるという内容である[168]。 シルドクラウトの理論の根拠には、高血圧剤のレセルピンがウサギのセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンの濃度を減少させたことや[169]、偽薬と比較してレセルピンが抑うつと不安の症状を改善させたという『ランセット』誌の同じ号のすぐ前のページに掲載された論文[170]がある[167]。しかしながら、『ランセット』誌の同じ号に掲載されたすぐ前のページ、116〜117ページに掲載された論文はレセルピンの服用者が自殺傾向を示すというものであった[171]。1970年代には、セロトニンの減少ではないという結論に達したが、抗うつ薬のマーケティングの際に利用されていった[167]。
ドーパミンの発見などで後にノーベル賞を受賞した神経科学者のアルビド・カールソンが、セロトニンの再取り込みだけを阻害する薬を作ろうとし、スウェーデンのアストラ社で抗ヒスタミン薬のクロルフェニラミンの化学構造を修正しジメリジンを合成し、1972年に欧州のいくつかの国で特許が下り、1982年にツェルミドの商品名で認可された[172]。しかしながら同じ年にアメリカ食品医薬品局の認可を得る際に、ギラン・バレー症候群という致命的な副作用が報告され、市場から消えた[172]。これが世界初の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であるとされる。後にクロルフェニラミン自体にセロトニン再取り込み阻害様の作用があることが明らかになったが、特許を取ることができず、特許がなければ臨床試験を行いマーケティングを行い販売し収益を確保するといった採算の見込みはない[173]。
ツェルミドに続いて、フランスのフルニエ社のジュラール・ル・フェールが、抗ヒスタミン薬の分子構造を修正したインダルピンを開発し、アップステンの商品名で市場に出たが白血球減少の副作用ですぐに市場から消えた[174]。
はじめに市場に生き残ったSSRIは、フルボキサミン(ルボックス)であり、1983年にはスイスにて販売されたのを皮切りに各国で認可されていったが、ドイツでは臨床試験中に自殺と自殺企図が生じて承認されなかった[175]。
プロザック(日本では未認可)の認可は、アメリカとカナダで1988年、イギリスでは1989年であり、この頃までにはベンゾジアゼピン系の薬剤の危険性に関する話題は深刻になっており、不安障害の背後にうつ病があるとして販売された[176]。
頭文字を組み合わせたSSRIという単語は、スミスクライン・ビーチャム(後のグラクソ・スミスクライン社)が、パロキセチンのマーケティングのために作ったが薬の種類を指すまでに一般化した[177]。パロキセチンは、1991年にイギリスでセロキサット、1992年にアメリカでパキシルの商品名で市場に出た。
日本では2000年あたりから、パキシルのマーケティングのために、軽症のうつ病を病気喧伝する「心の風邪」という言葉が用いられた[178]。
2003年から2004年にかけて、欧米でパロキセチンが小児の自殺を誘発するという試験が隠蔽されていたという話題が持ち上がると、双極性障害の売り込みへと変わっていったと、デイヴィッド・ヒーリーは主張する[179]。他にも2003年にイギリスの医薬品・医療製品規制庁 (MHRA) は、グラクソ・スミスクラインに臨床試験開始前の自殺を偽薬群の数としてカウントすべきではないと告げ、これにはFDAは気づかなかったようだが、同様のことはプロザックでもゾロフトでも行われていた[180]。
-
ベンラファキシンは、アメリカで1993年に認可された抗うつ薬である。
-
デスベンラファキシンは、アメリカで2007年に認可された抗うつ薬である。
2010年ころから製薬会社は、既存の薬の構造を少し修正し特許を取得した模倣薬(me too drug)を販売するという手法ではすでに収益の見込みがないとみて、グラクソ・スミスクライン、アストラゼネカ、メルクなどの大手製薬会社が精神科領域の薬の開発から撤退しはじめた[26]。
2010年には、精神科領域の4学会により、医師に対して不適切な多剤大量処方に対する注意喚起がなされている[181]。以降、対策が立てられ2剤以上の抗うつ薬の処方は診療報酬が削減されるなどの改定があった。 1990年代後半からの約30年間の抗うつ薬の大幅な増加は、測定可能な公衆の利益を生み出していない[8]。2013年には、架空の抗うつ薬をテーマにした映画サイド・エフェクトが公開された。
ケタミンの早い抗うつ作用が見いだされ、2015年にはアメリカでは既に医療現場で適応外使用で用いることも増えている[15]。また、イギリスでは、医学研究審議会(MRC)の資金提供を受け、幻覚剤のシロシビンを治療抵抗性うつ病に対して用いる研究が開始され[182]、その結果、8年から30年のうつ病を患う患者12人の約半分は、服用体験から3週間後に寛解に達した(うつ病の基準を満たさなかった)[183]。
訴訟
[編集]2012年には、グラクソ・スミスクライン(GSK)の違法なマーケティングに対して司法省は30億ドルの制裁を課したが、それには同社のパキシルの若年者で有効性を示さなかった研究と自殺の危険性を高めた研究の隠蔽、FDAによる若年者に対する承認がないにもかかわらず販売促進したことが含まれる[184]。
代替手段や研究
[編集]ω-3脂肪酸による抗うつ作用は議論されてきた。2015年のコクラン共同計画によるシステマティック・レビューは、臨床的に有意ではない小さな効果を見出しており、また研究の質が十分ではないと結論した[185]。2016年の別のアナリシスは、有効だということを見出した[186]。
コクラン共同計画によるS-アデノシルメチオニン (SAMe) のレビューでは、結論を導くための質の高い研究がないとした[187]。
L-アセチルカルニチンでのシステマティック・レビューでは、12のランダム化比較試験があり、3研究では抗うつ薬と比較して同等の効果であり副作用が抗うつ薬より少なく、また高齢者で特に有効だということを示唆した[188]。高齢者で行われたランダム化比較試験では、フルオキセチン(プロザック)と同等の効果を示したが、1週間で効果を示し、フルオキセチンでは2週間かかった[189]。この早い作用から異なる作用機序に注目されている[190]。
テトラサイクリン系抗生物質のミノサイクリンは、メタアナリシス・システマティックレビューで大きな抗うつ効果が示された(効果量:-0.78 :95%CI:0.4-1.33、P=0.005 であり、前述の通り現行の抗うつ薬は0.32であり臨床的に有意な効果ではない)[191]。抗生物質の使用は、薬剤耐性菌を生む問題があり感染症においても適正使用が言われており、感染症でもない状況での抗生物質の不適切使用は戒められる[192]。
抗うつ薬は抗菌効果を有するという報告がある[193]。うつ病治療における抗うつ薬の抗菌メカニズムを評価し、抗うつ薬耐性への影響を決定するために、さらなる研究が必要とされている[193]。 抗うつ薬と膜輸送体OCTN1の薬物相互作用が研究されている。OCTN1によるエルゴチオネインの脳への取り込みは海馬歯状回における神経新生を促進し、抗うつ効果を発揮する可能性が示唆された[194]。
モノアミン仮説以外では、ニューロキニン1(NK1)周辺の研究がなされている。サブスタンスP受容体アンタゴニストのアプレピタントに抗うつ作用が報告された[30]。 しかしながら、プラセボ対照⼆重盲検ランダム化臨床試験では有意差を示せていない[195]。 一方、既存抗うつ薬の慢性投与では海馬でのBDNFの発現を増加させることから、ニューロンの萎縮を防止するのではないかとBDNFも注目されている[30]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
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- エリオット・S・ヴァレンスタイン 著、功刀浩監訳、中塚公子 訳『精神疾患は脳の病気か?』みすず書房、2008年2月。ISBN 978-4-622-07361-1。、Blaming the Brain, 1998
- デイヴィッド・ヒーリー 著、田島治監訳、谷垣暁美 訳『抗うつ薬の功罪』みすず書房、2005年8月。ISBN 4-622-07149-5。、Let Them Eat Prozac, 2003
- デイヴィッド・ヒーリー 著、江口重幸監訳、坂本響子 訳『双極性障害の時代―マニーからバイポーラーへ』みすず書房、2012年11月。ISBN 978-4-622-07720-6。、MANIA: A Short History of Bipolar Disorder, 2008
- Robert Whitaker (January 1, 2009), Anatomy of an Epidemic: Magic Bullets, Psychiatric Drugs, and the Astonishing Rise of Mental Illness in America, New York: Crown Publishing Group, ASIN B004RU7U5C.(翻訳書は ロバート・ウィタカー『心の病の「流行」と精神科治療薬の真実』小野善郎監訳、門脇陽子・森田由美訳、福村出版、2010年9月19日。ISBN 978-4571500091。)