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種村季弘 | |
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誕生 |
1933年3月21日 東京市豊島区池袋 |
死没 | 2004年8月29日(71歳没) |
職業 | 独文学者、評論家、エッセイスト |
主題 | ドイツ文学、神秘学、幻想文学 |
主な受賞歴 | 芸術選奨文部大臣賞、斎藤緑雨賞、泉鏡花文学賞 |
デビュー作 | 『怪物のユートピア』 |
種村 季弘(たねむら すえひろ、1933年(昭和8年)3月21日 - 2004年(平成16年)8月29日)は、日本の独文学者、評論家である。
古今東西の異端的・暗黒的な文化や芸術に関する広汎な知識で知られ、クライストやホフマン、マゾッホなど独文学の翻訳の他、内外の幻想小説や美術、映画、演劇、舞踏に関する多彩な評論を展開し、錬金術や魔術、神秘学研究でも知られる。これに関連して、吸血鬼や怪物、人形、自動機械、詐欺師や奇人など、歴史上のいかがわしくも魅力的な事象を多数紹介。他方幸田露伴、岡本綺堂、泉鏡花、谷崎潤一郎をはじめとする日本文学にも深く精通し、晩年は江戸文化や食文化、温泉文化などの薀蓄をユニークなエッセーに取り上げている。
稀代の「博覧強記」として知られ、教え子の諏訪哲史は種村を “二十世紀の日本の人文科学が世界に誇るべき「知の無限迷宮」の怪人” と評している(自身が編纂した『種村季弘傑作撰Ⅰ・Ⅱ』の解説にて)。
仏文学者で評論家の澁澤龍彦との交流でも知られ、澁澤とともに日本における「幻想文学」のジャンル的な確立に貢献した。
経歴
東京市豊島区池袋に生まれる。東京都立北園高等学校を経て、1951年(昭和26年)に東京大学教養学部文科二類(現在の文科三類)入学。同級に松山俊太郎、石堂淑朗、阿部良雄、吉田喜重、藤田敏八、井出孫六などがおり前者2名とは終生深い交流があった。1953年(昭和28年)、東京大学文学部美学美術史科進学。1954年(昭和29年)、東京大学文学部独文科に転科。在学中は東京大学学生新聞編集部に所属。1957年(昭和32年)に卒業後、財団法人言語文化研究所附属東京日本語学校(現:学校法人長沼スクール東京日本語学校)に就職。
1958年(昭和33年)9月、光文社に入社。『女性自身』編集部を経て書籍部で単行本の編集にあたり、手塚治虫、田宮虎彦、結城昌治、梶山季之たちを担当。1960年(昭和35年)に光文社を退社し、フリーとなる。1964年(昭和39年)、駒澤大学専任講師。1965年(昭和40年)、グスタフ・ルネ・ホッケ『迷宮としての世界』を矢川澄子と共訳、三島由紀夫から絶賛推薦され出版した。1968年(昭和43年)、東京都立大学助教授となる。
1968年に初の単行本である評論集『怪物のユートピア』を刊行。1969年(昭和44年)の『ナンセンス詩人の肖像』では、ルイス・キャロル、エドワード・リア、モルゲンシュテルン、ハンス・アルプらの生涯と作品を紹介。ザッヘル=マゾッホなど多くのドイツ語圏の作家を翻訳、紹介した。澁澤龍彦や唐十郎らと共に1960年代 - 1970年代の、アングラ文化を代表する存在となる。
1971年(昭和46年)、都立大学を退職。1977年(昭和52年)、旧西ドイツのヴォルプスヴェーデに滞在。1978年(昭和53年)、國學院大學専任講師となり、1979年(昭和54年)に助教授を経て、1981年(昭和56年)に教授。教え子に芥川賞作家となった諏訪哲史がいる。
1995年(平成7年)、中世ドイツの女子修道院長ヒルデガルト・フォン・ビンゲンについて書いた『ビンゲンのヒルデガルトの世界』で芸術選奨文部大臣賞、斎藤緑雨賞受賞。1996年(平成8年)「温泉主義ストーンズ」で小原庄助賞を受賞、1997年(平成9年)、トゥウォルシュカ『遍歴 約束の土地を求めて』で日本翻訳出版文化賞を受賞、1999年(平成11年)、著作集『種村季弘のネオ・ラビリントス』で27回泉鏡花文学賞受賞。2001年(平成13年)、國學院大學を退職。
2004年(平成16年)8月29日、胃癌により湯河原町で死去。享年71。
著書
- 怪物のユートピア 評論集 三一書房 1968、新装版1991
- ナンセンス詩人の肖像 竹内書店 1969 のち筑摩叢書、ちくま学芸文庫
- 吸血鬼幻想 薔薇十字社 1970 のち河出文庫
- 薔薇十字の魔法 薔薇十字社 1972、のち青土社、河出文庫
- アナクロニズム 青土社(ユリイカ叢書) 1973、のち河出文庫
- 怪物の解剖学 青土社 1974 のち河出文庫
- 失楽園測量地図 イザラ書房 1974
- 詐欺師の楽園 学芸書林 1975 のち白水社、河出文庫、岩波現代文庫
- 壺中天奇聞 青土社 1976
- パラケルススの世界 青土社 1977 のち新装版
- 山師カリオストロの大冒険 中央公論社 1978 のち中公文庫、河出文庫、岩波現代文庫
- ザッヘル=マゾッホの世界 桃源社 1978 のち筑摩叢書、平凡社ライブラリー
- 箱の中の見知らぬ国 青土社 1978
- 書物漫遊記 筑摩書房 1979、ちくま文庫 1986
- 黒い錬金術 桃源社 1979 のち白水社Uブックス
- 悪魔禮拝 桃源社 1979 のち河出文庫
- 影法師の誘惑 青土社 1979 のち河出文庫
- 夢の舌 北宋社 1979、新装版1996
- 種村季弘のラビリントス 全10巻 青土社 1979
- 怪物のユートピア
- 影法師の誘惑
- 吸血鬼幻想
- 薔薇十字の魔法
- 失楽園測量地図
- 怪物の解剖学
- アナクロニズム
- 悪魔禮拝
- 壷中天奇聞
- パラケルススの世界
- ヴォルプスヴェーデふたたび 筑摩書房 1980
- 愚者の機械学 青土社 1980、新装版1991
- 食物漫遊記 筑摩書房 1981、ちくま文庫 1985 新版2006
- 夢の覗き箱 種村季弘の映画劇場 潮出版社 1982
- 謎のカスパール・ハウザー 河出書房新社 1983 のち河出文庫
- ぺてん師列伝 あるいは制服の研究 青土社 1983 のち河出文庫、岩波現代文庫
- 贋物漫遊記 筑摩書房 1983、ちくま文庫 1989
- 書国探検記 筑摩書房 1984、ちくま学芸文庫 2012.12
- 器怪の祝祭日 種村季弘文芸評論集 沖積舎 1984
- ある迷宮物語 筑摩書房(水星文庫) 1985
- 好物漫遊記 筑摩書房 1985、ちくま文庫 1992
- 迷宮の魔術師たち 幻想画人伝 求龍堂 1985
- 一角獣物語 大和書房 1985
- 贋作者列伝 青土社 1986、新装版1992
- 迷信博覧会 平凡社 1987 ちくま文庫 1991
- 魔術的リアリズム メランコリーの芸術 PARCO出版局 1988、ちくま学芸文庫 2010.2
- 小説万華鏡 日本文芸社 1989
- 日本漫遊記 筑摩書房 1989
- 晴浴雨浴日記 河出書房新社 1989
- 箱抜けからくり綺譚 河出書房新社 1991
- ハレスはまた来る 偽書作家列伝 青土社 1992、「偽書作家列伝」学研M文庫 2001
- 遊読記 書評集 河出書房新社 1992
- ビンゲンのヒルデガルトの世界 青土社 1994
- 澁澤さん家で午後五時にお茶を 河出書房新社 1994、学研M文庫(増補版)2003
- 人生居候日記 筑摩書房 1994
- 魔法の眼鏡 河出書房新社 1994
- 不思議な石のはなし 河出書房新社 1996
- 泉鏡花「海の鳴る時」の宿 晴浴雨浴日記・辰口温泉篇 十月社 1996
- 徘徊老人の夏 筑摩書房 1997、ちくま文庫 2008
- 夢の覗き箱 種村季弘の洋画劇場 北宋社 1997
- 死にそこないの美学 私の日本映画劇場 北宋社 1997。潮出版社(1982)の増補改訂版
- 種村季弘のネオ・ラビリントス 全8巻 河出書房新社 1998-1999
- 怪物の世界
- 奇人伝
- 魔法
- 幻想のエロス
- 異人
- 食物読本
- 温泉徘徊記
- 綺想図書館
- 奇想の展覧会 戯志画人伝 河出書房新社 1998
- 東海道書遊五十三次 朝日新聞社 2001
- 土方巽の方へ 肉体の60年代 河出書房新社 2001
- 江戸東京《奇想》徘徊記 朝日新聞社 2003、朝日文庫 2006
- 畸形の神 あるいは魔術的跛者 青土社 2004
- 楽しき没落 種村季弘の綺想の映画館 論創社 2004
- 断片からの世界 美術稿集成 平凡社 2005
- 雨の日はソファで散歩 筑摩書房 2005、ちくま文庫 2010
- 種村季弘と美術のラビリントス イメージの迷宮へようこそ アトリエサード 2010(相馬俊樹編)
- 東海道寄り道紀行 河出書房新社 2012.7。単行本未収録紀行集
- 種村季弘傑作撰 「Ⅰ-世界知の迷宮」、「Ⅱ-自在郷への退行」 国書刊行会、2013(諏訪哲史編)
- 詐欺師の勉強あるいは遊戯精神の綺想 種村季弘単行本未収録論集 幻戯書房 2014.8
共著
- だまし絵 高柳篤 共著 河出文庫 1987
- 図説アイ・トリック 遊びの百科全書 赤瀬川原平、高柳篤 共著 河出書房新社 2001(ふくろうの本)
- ああ、温泉 種村季弘とマニア7人の温泉主義宣言 アートダイジェスト 2001
- 東京迷宮考 対談集 青土社 2001
- 天使と怪物 対談集 青土社 2002
- 異界幻想 対談集 青土社 2002
- 澁澤龍彦を語る 1992~1996の対話 河出書房新社 1996、「全集」編集委員4名での座談集。
編著
- 東京百話 全3冊 ちくま文庫 1986-1987
- 温泉百話 東の旅/西の旅 池内紀共編 ちくま文庫 1988
- 放浪旅読本 光文社 1989(『光る話』の花束)
- 美食倶楽部 谷崎潤一郎大正作品集 ちくま文庫 1989
- 日本怪談集 上・下 河出文庫 1989
- 日本の名随筆 別巻 18 質屋 作品社 1992
- 日本幻想文学集成 国書刊行会 1991-93、作家4名の解説担当
- 新潮日本文学アルバム54 澁澤龍彦 新潮社、1993、巻末エッセイ平出隆
- 日影丈吉選集 全5巻 河出書房新社 1995
- 泉鏡花集成 全14巻 筑摩書房〈ちくま文庫〉1995-97
- 現代ドイツ幻想小説(編)白水社 1970、「ドイツ幻想小説傑作集」 白水Uブックス 1985、以下は一部訳者
- ドラキュラ・ドラキュラ 吸血鬼小説集(編)薔薇十字社 1973/河出文庫 1986
- ドイツ怪談集(編)河出文庫 1988、16の物語を編・解説
- 綺譚の箱 澁澤龍彦文学館5 筑摩書房 1990、ドイツロマン派を軸に選訳・解説
翻訳
- 迷宮としての世界 グスタフ・ルネ・ホッケ、矢川澄子共訳 美術出版社、1965、新版1981ほか/岩波文庫(上下) 2010-11
- 小遊星物語 シェーアバルト 桃源社「世界異端の文学」 1966/平凡社ライブラリー 1995
- 十三の無気味な物語 ハンス・ヘニー・ヤーン 白水社 1967 のち新版、白水Uブックス 1984
- ブニュエル アド・キルー 三一書房 (現代のシネマ)1970、新版1976
- 象徴主義と世紀末芸術 ハンス・H.ホーフシュテッター 美術出版社 1970、新版1987ほか
- 文学におけるマニエリスム 言語錬金術ならびに秘教的組み合わせ術グスタフ・ルネ・ホッケ 現代思潮社(全2巻) 1971/平凡社ライブラリー(全1巻) 2012
- 異化 エルンスト・ブロッホ 片岡啓治、船戸満之共訳 現代思潮社 1971
- エンツェンスベルガー全詩集 川村二郎、飯吉光夫共訳 人文書院 1971
- 錬金術 タロットと愚者の旅 R.ベルヌーリ 青土社 1972/ 新版「錬金術とタロット」河出文庫 1992
- サセックスのフランケンシュタイン H.C.アルトマン 河出書房新社 1972
- 迷宮と神話 カール・ケレーニイ 藤川芳朗共訳 弘文堂 1973、新版1986ほか
- クロヴィス・トルイユ レイモン・シャルメ シュルレアリスムと画家叢書「骰子の7の目」第4巻 河出書房新社 1974
- イマージュの解剖学 ハンス・ベルメール 滝口修造共訳 河出書房新社 1975、新版1992
- マゾッホ選集 1 毛皮を着たヴィーナス 桃源社 1976/河出文庫 新版2004
- F.S-ゾンネンシュターン シュルレアリスムと画家叢書「骰子の7の目」第7巻 河出書房新社 1976
- マゾッホ選集 4 密使、コロメアのドン・ジュアン 桃源社 1977
- 絶望と確信 20世紀末の芸術と文学のために グスタフ・ルネ・ホッケ 朝日出版社(エピステーメー選書) 1977/白水社 2013.3
- 錬金術 精神変容の秘術 スタニスラス・クロソウスキー・デ・ロラ 共訳 平凡社(イメージの博物誌) 1978、新版2013
- 砂男・ブランビラ王女 ホフマン 世界文学全集18 集英社 1979
- オスカル・パニッツァ小説全集 三位一体亭 南柯書局 1983
- 夢の王国 夢解釈の四千年 M.ポングラチュ・I.ザントナー 共訳 河出書房新社 1987
- ブランビラ王女 エルンスト・ホフマン ちくま文庫 1987
- ナペルス枢機卿 グスタフ・マイリンク 国書刊行会(バベルの図書館) 1989、新版新編2013
- チリの地震 クライスト 王国社 1990/河出文庫 新版2011
- ユーゲントシュティール絵画史 ヨーロッパのアール・ヌーヴォー ハンス・H.ホーフシュテッター 池田香代子共訳 河出書房新社 1990
- パニッツァ全集(全3巻) オスカル・パニッツァ 筑摩書房 1991
- 白雪姫 グリム 三起商行 1991(ミキハウスの絵本)
- バルトルシャイティス著作集 1巻 アベラシオン 形態の伝説をめぐる四つのエッセー 巌谷国士共訳 国書刊行会 1991
- 魔法物語 ヴィルヘルム・ハウフ 河出書房新社 1993
- 化学の結婚 ヨーハン・ヴァレンティン・アンドレーエ 紀伊国屋書店 1993
- 世界温泉文化史 ウラディミール・クリチェク 高木万里子共訳 国文社 1994
- 永久機関 シェーアバルトの世界 パウル・シェーアバルト 作品社 1994
- 夢占い事典 M.ポングラチュ、I.ザントナー 河出文庫 1994
- 砂男 E.T.A.ホフマン + 無気味なもの S.フロイト 河出文庫 1995
- リッツェ 少女たちの時間 ホルスト・ヤンセン トレヴィル 1995
- マグナ・グラエキア-ギリシア的南部イタリア遍歴 グスタフ・ルネ・ホッケ 平凡社 1996/平凡社ライブラリー 2013.7
- 遍歴 約束の土地を求めて ウド・トゥウォルシュカ 青土社(叢書象徴のラビリンス) 1996
- くるみ割り人形とねずみの王様 E.T.A.ホフマン 河出文庫 1996
- グラディーヴァ ヴィルヘルム・イェンゼン、妄想と夢 ジークムント・フロイト 作品社 1996/平凡社ライブラリー 2014.3
- 狂気の王国 フリードリヒ・グラウザー 作品社 1998
- クロック商会 フリードリヒ・グラウザー 作品社 1999
- 砂漠の千里眼 フリードリヒ・グラウザー 作品社 2000
- 絞首台の歌 クリスティアン・モルゲンシュテルン 書肆山田 2003
- ビリッヒ博士の最期 リヒャルト・ヒュルゼンベック 未知谷 2003
- 外人部隊 フリードリヒ・グラウザー 国書刊行会 2004
- 老魔法使い 種村季弘遺稿翻訳集 フリードリヒ・グラウザー 国書刊行会 2008(短篇12編と長篇2編)
- 怪奇・幻想・綺想文学集 種村季弘翻訳集成 国書刊行会 2012
ムック・図録
- 『別冊幻想文学13 「怪人タネラムネラ~種村季弘の箱」』 幻想文学出版局 2002
- 『種村季弘 ぼくたちの伯父さん 追悼特集』KAWADE道の手帖 河出書房新社 2006
- 『種村季弘の眼 迷宮の美術家たち』 柿沼裕朋編、平凡社 2014。板橋区立美術館での展覧会図録
関連項目・人物
外部リンク
- 種村季弘のウェブ・ラビリントス (著作や対談に関するリストを掲載。索引、関連文献リストも充実)