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|英名 = [[:w:Brown Dipper|Brown Dipper]]<ref name="ITIS">{{Cite web |url=http://www.itis.gov/servlet/SingleRpt/SingleRpt?search_topic=TSN&search_value=559289 |title=''Cinclus pallasii'' Temminck, 1820 |publisher=[[ITIS]] |language=英語 |accessdate=2014-02-13}}</ref>
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'''カワガラス'''(河烏、学名:''Cinclus pallasii'')は、[[スズメ目]][[カワガラス科]]に分類される[[鳥類]]の一種である
'''カワガラス'''(河烏<ref name="中川 (2010)174頁">[[#ひと目でわかる野鳥|中川 (2010)、174頁]]</ref><ref name="真木 (2012)、186頁">[[#名前がわかる野鳥大図鑑|真木 (2012)、186頁]]</ref>、川鴉、[[学名]]:''Cinclus pallasii'' {{AU|Temminck}}, [[1820年|1820]])は、[[スズメ目]][[カワガラス科]][[カワガラス属]]に[[生物の分類|分類]]される[[鳥類]]の一[[ (分類学)|種]]<ref name="worldbirdnames" /><ref name="日本鳥学会">{{Cite web|和書|url=http://ornithology.jp/osj/japanese/katsudo/Publications/Checklist7.html |title=日本鳥類目録 改訂第7版 |publisher=[[日本鳥学会]] |date=2012-09-15 |accessdate=2014-02-13}}</ref>


南北アメリカ大陸([[新北区]]、[[新熱帯区]])に分布する[[メキシコカワガラス]]の近縁種。
南北アメリカ大陸([[新北区]]、[[新熱帯区]])に分布する[[メキシコカワガラス]]の近縁種。


== 分布 ==
== 分布 ==
ヒマラヤ北部からインドシナ北部、中国、[[台湾]]、[[樺太|サハリン]]、[[カムチャツカ半島]]に分布する。生息地では、基本的には[[留鳥]]である。日本では、[[留鳥]]として[[屋久島]]以北に生息する。
[[ヒマラヤ]]北部から[[インドシナ半島]]北部、[[中国]]、[[台湾]]、[[樺太|サハリン]]、[[日本]]、[[カムチャツカ半島]]に分布する<ref name="叶内 (2006)、460頁">[[#山溪ハンディ図鑑7日本の野鳥|叶内 (2006)、460頁]]</ref>。生息地では、基本的には[[留鳥]]である。

日本では、[[北海道]]、[[本州]]、[[四国]]、[[九州]]、[[屋久島]]にかけて広く分布する<ref name="中川 (2010)、174頁" />。留鳥として、[[河川]]の上流から中流域にかけてと[[山地]]の[[渓流]]に生息する<ref name="叶内 (2006)、460頁" /><ref name="中川 (2010)、174頁" />。


== 形態 ==
== 形態 ==
全長は21-23cm、体重65-90g。[[ヒヨドリ]]や[[ツグミ]]より少し小さい。全身が濃い茶色の羽毛におおわれているのが名前の由来だが、[[カラス]]の仲間ではない。幼鳥は喉から腹にかけて白くて細かいうろこ模様がある。くちばしと足は灰色でがっちりしている。
全長は21-23 [[センチメートル|cm]]、[[翼幅|翼開長]]は約32 cm<ref name="中川 (2010)、174頁" /><ref name="高木 (2002)、153頁">[[#水辺の鳥|高木 (2002)、153頁]]</ref>、体重65-90 [[グラム|g]]。[[ヒヨドリ]]や[[ツグミ]]より少し小さい。全身が濃い茶色(チョコレート色<ref name="真木 (2012)、186頁" />、光の具合により赤茶色に見えることもある<ref name="高木 (2002)、153頁" />。)の羽毛におおわれているのが名前の由来だが、[[カラス]]の仲間ではない<ref group="注釈">カワガラスは[[カラス科]]には属さず、カワガラス科に属する。</ref>。尾羽は短めで黒味の強い焦茶色<ref name="高木 (2002)、153頁" />。目は茶色で、目を閉じると白い[[まぶた]]が目立つ<ref name="高木 (2002)、153頁" />。雌雄同色<ref name="叶内 (2006)、460頁" /><ref name="真木 (2012)、186頁" />。[[くちばし]]は黒く<ref name="真木 (2012)、186頁" />、足は灰色でがっちりしている。[[ミソサザイ]]を大きくしたような体形で、短めの[[尾羽]]を立てた独特の姿勢をとる<ref name="中川 (2010)、174頁" />。幼鳥は喉から腹にかけて白くて細かい[[鱗|うろこ]]模様がある。
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ファイル:Cinclus pallasii (back).JPG|後姿と[[尾羽]]
ファイル:Cinclus pallasii (wing).JPG|[[翼]]を広げて目を閉じた様子(白い[[まぶた]])
ファイル:Cinclus pallasii (young).JPG|うろこ模様がある幼鳥
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== 生態 ==
== 生態 ==
[[平地]]から[[亜高山帯]]の川の上流から中流の岩石の多い沢に生息する。冬期(積雪期)には下流側に生息場所を移動することもある。一年中、単独(非繁殖期は単独で行動している<ref>[[#冬季におけるカワガラスCinclus pallasiiの分散様式となわばり的行動|橋口 (1981)、169頁]]</ref>)もしくは番いで行動し群れを形成することはない。つがい形成期には、[[一夫多妻制|一夫二妻]]行動をとることがある<ref>[[#カワガラスCinclus pallasiiのつがい形成期にみられた一夫二妻行動の観察|澤 (2012)、7-13頁]]</ref>。ピッピッと鳴きながら、速い羽ばたきで川面の上を一直線に飛翔する<ref name="叶内 (2006)、460頁" /><ref name="中川 (2010)、174頁" /><ref name="真木 (2012)、186頁" />。頑丈な脚で岩をつかみ、水流の圧力を利用して川底を歩きながら水中で捕食を行う<ref name="真木 (2012)、186頁" />。尾羽を上下に動かしたり、[[風切羽]]を半開きにしたり、まばたきし白いまぶたを見せながら、石や流木の上で休息する<ref name="叶内 (2006)、460頁" />。
{{Vertical_images_list
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|幅= 200px
ファイル:Cinclus pallasii (swimming).JPG|渓流を泳ぐカワガラス
| 1=Brown Dipper-Adult feeding Juvinile DSC05331.jpg
ファイル:Cinclus pallasii (in flight).JPG|水面上を真直ぐに飛ぶ様子
| 2=<center>渓流の岩の上で給餌
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| 3=Cinclus pallasii 01.jpg

| 4=<center>小魚を捕えた瞬間
=== 食性 ===
}}
[[食性]]は[[動物食]]。水に潜って[[カゲロウ]]、[[カワゲラ]]などの[[幼虫]]などの[[水生昆虫]]や[[カニ]]などの[[甲殻類]]、[[小魚]]を捕食する<ref name="叶内 (2006)、460頁" /><ref name="中川 (2010)、174頁" /><ref name="真木 (2012)、186頁" />。水面上を泳ぎながら首を水中に入れて覗き込み、頻繁に潜水する<ref name="梓川鳥類生態研究会 (1993)、137頁">[[#日本アルプスの鳥|梓川鳥類生態研究会 (1993)、137頁]]</ref>。水中では水底を這うように歩き回って川底の餌を探し、『渓流の素潜り名人』と称されることがある<ref name="中川 (2010)、174頁" />。水にもぐっているときは羽毛の間に空気がふくまれるため、全身が銀色にみえる。
<gallery>
ファイル:Brown Dipper (Cinclus pallasii).jpg|幼虫をくわえたカワガラス
ファイル:Cinclus pallasii 01.jpg|川で小魚を捕えた瞬間
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=== 生活史 ===
[[ファイル:Brown Dipper-Adult feeding Juvinile DSC05331.jpg|サムネイル|親から雛へ給餌する様子]]
ほかの鳥にくらべて[[繁殖]]を始めるのが早く<ref name="叶内 (2006)、460頁" />、12月頃からオスがさえずり[[縄張り]]宣言を行う。暖地では1月頃から繁殖を始める<ref name="中川 (2010)、174頁" /><ref name="真木 (2012)、186頁" />。[[]]の裏の岩の隙間に[[苔|コケ]]や植物の根半球状のドーム形の[[]]をつくる<ref name="中川 (2010)174頁" /><ref name="真木 (2012)、186頁" />。岩の陰やコンクリート護岸の排水口、橋桁<ref>[[#香川県香東川の橋梁におけるカワガラスCinclus pallasiiの営巣|野口 (2012)、19-20頁]]</ref>などの人工物巣を作ることもある<ref name="真木 (2012)、186頁" />。造巣の際の雌雄の貢献度はほぼ等しく分業は行われない<ref>[[#カワガラスの営巣場所選択|江口 (1990)、141-148頁]]</ref>。日本では2-6月に1腹4-5個の卵を産む。抱卵日数は15-16日で、雌が抱卵する育雛は雌雄共同で行う<ref name="梓川鳥類生態研究会 (1993)、137頁" />。雛は21-23日で巣立つ。雛は飛べない内から、水中を泳いだり歩くことができる。

=== 鳴き声 ===
オスは12月頃の繁殖期から「ピピピ チュシュ ピッピッ ピュュ」と鳴き始める<ref name="叶内 (2006)、460頁" />。[[セグロセキレイ]]似た濁った声で「チーチージュピチリリ」と複雑に鳴く<ref name="中川 (2010)、174頁" />。[[地鳴き]]は「ピッ ピッ」<ref name="中川 (2010)、174頁" />。


== 亜種 ==
平地から亜高山帯の川の上流から中流の岩石の多い沢に生息する。冬期(積雪期)には下流側に生息場所を移動することもある。一年中、単独もしくは番いで行動し群れを形成することはない。つがい形成期には、一夫二妻行動をとることがある<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbba/24/1/24_00024/_article/-char/ja/ カワガラスCinclus pallasiiのつがい形成期にみられた一夫二妻行動の観察] 日本鳥類標識協会誌 Vol.24 (2012) No.1 p.7-13</ref>。
本種は以下の[[亜種]]に分類されている<ref name="worldbirdnames" />。日本には亜種カワガラス(学名:''Cinclus pallasii pallasii'' Temminck, 1820)が分布する<ref name="worldbirdnames" /><ref name="日本鳥学会" />。
* ''C. pallasii tenuirostris'' {{AU|Bonaparte}}, [[1850年|1850]] - [[アフガニスタン]]北部と[[中央アジア]]からヒマラヤ中央部にかけての[[山地]]に分布する。
* ''C. pallasii dorjei'' {{AU|Kinnear}}, [[1937年|1937]] - ヒマラヤ東部から[[ミャンマー]]と[[タイ王国|タイ]]北西部にかけて分布する。
* ''C. pallasii pallasii'' Temminck, 1820 - [[シベリア]]東部から中国、サハリン、[[千島列島]]、日本、台湾、インドシナ半島北部にかけて分布する。


== 種の保全状況評価 ==
食性は動物食。水にもぐって[[水生昆虫]]や[[甲殻類]]、小魚を捕食する。水中では、水底を這うように歩き回って川底の餌を探す。水にもぐっているときは羽毛の間に空気がふくまれるため、全身が銀色にみえる。
[[国際自然保護連合]](IUCN)により、[[レッドリスト]]の[[軽度懸念]](LC)の指定を受けている<ref name="IUCN" />。個体数は安定傾向にある<ref name="IUCN" />。


日本では以下の[[都道府県]]でレッドリストの指定を受けている<ref>{{Cite web|和書|url=http://jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=02180090338 |title=日本のレッドデータ検索システム「カワガラス」 |publisher=(エンビジョン環境保全事務局)|accessdate=2014-02-13}} - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。</ref>。河川開発が個体数の減少の原因であると見られている<ref name="okayama">{{Cite web|和書|url=http://www.pref.okayama.jp/seikatsu/sizen/reddatabook/other_pdf/d_06_02_02.pdf |title=岡山県版レッドデータブック2009 |publisher=岡山県 |format=PDF |pages=85 |date=2009 |accessdate=2014-02-13}}</ref><ref name="yamaguchi">{{Cite web|和書|url=http://eco.pref.yamaguchi.jp/rdb/html/02/020087.html |title=レッドデータブックやまぐち・カワガラス |publisher=山口県 |date=2002 |accessdate=2014-02-13}}</ref>。
ほかの鳥にくらべて繁殖を始めるのが早く、12月頃からオスがさえずり縄張り宣言を行う。滝の裏の岩の隙間にコケで巣をつくることで知られるが、岩の陰やコンクリート護岸の排水口などに巣を作ることもある。造巣の際の雌雄の貢献度はほぼ等しく分業は行われない<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjo1986/38/3/38_3_141/_article/-char/ja/ カワガラスの営巣場所選択] 日本鳥学会誌 Vol.38 (1989-1990) No.3 P141-148</ref>。日本では2-6月に1腹4-5個の卵を産む。抱卵日数は15-16日で、雌が抱卵する。雛は21-23日で巣立つ。雛は飛べない内から、水中を泳いだり歩くことができる。
* 絶滅危惧IB類(EN)- [[長崎県]]
* 絶滅危惧II類(VU) - [[東京都]][[西多摩]]地区、[[愛知県]]<ref name="aichi">{{Cite web|和書|url=http://www.pref.aichi.jp/kankyo/sizen-ka/shizen/yasei/rdb/cyourui/animals_137.pdf |title=レッドデータブックあいち2009・カワガラス |publisher=愛知県 |format=PDF |pages=137 |date=2009 |accessdate=2014-02-13}}</ref>
* 準絶滅危惧(NT) - [[大阪府]]、[[山口県]]<ref name="yamaguchi" />
** 希少種 - [[奈良県]]<ref group="注釈">奈良県のカテゴリー「希少種」は、環境省の準絶滅危惧(NT)相当。</ref>
* その他
* 減少種 - [[神奈川県]]
** 希少種 - [[滋賀県]]
** 留意 - [[岡山県]]<ref name="okayama" />


== 人間との関係 ==
地鳴きは「ピッ ピッ」。
[[若山牧水]]により『川鴉(かわがらす) なきすぎゆきぬ たぎつ瀬の たちき輝き流る上を』と詠まれている。


『[[アイヌ神謡集]]』の「コンクワ 梟の神が自ら歌った謡」ではカワガラスが重要な役割を担っている。梟は村の守り神で、すでに年老い衰えていることを嘆き、それでも最後に『よい使者がいれば天国へ談判を持たせたい』と言う。神々が人間に獲物を下賜してくれないことへの苦情を述べさせたいというものだ。それに応えたのが最初は[[カラス]]、次は山の[[カケス]]だが、いずれも談判の内容を聞き取る前に居眠りして、怒った梟に打ち殺される。最後に慎み深い態度で現れたのがカワガラスで、梟の談判をすべて聞き留めると神々の元へ向かい、談判の返事を持ってくる。人間が獲物への敬意を示すのが大事だという返事を聞き、梟は後のことをカワガラスにあずけ、この世を去る。その去り際の言葉がこの謡だ、というものである。
== Status ==
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== 脚注 ==
== 脚注 ==
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=== 注釈 ===
{{Reflist|group=注釈}}
=== 出典 ===
{{Reflist|3}}


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書 |author=梓川鳥類生態研究会 |date=1993-06 |title=[[日本アルプス]]の鳥 |publisher=[[信濃毎日新聞]] |isbn=4784093087 |ref=日本アルプスの鳥}}
* 高野伸二編 『山カラー名鑑 日本の野鳥』 [[山と谷社]] 、[[1985年]]
* 五百沢日丸 『日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版』 [[文一総合出版]]、[[2004年]]
* 五百沢日丸 『日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版』 [[文一総合出版]]、[[2004年]]
* {{Cite journal |和書 |author=江口和洋 |title=カワガラスの営巣場所選択 |journal=日本鳥学会誌 |volume=38 |number=3 |naid=40004628026 |date=1990-03 |publisher=[[日本鳥学会]] |format=PDF |url=https://doi.org/10.3838/jjo.38.141 |ref=カワガラスの営巣場所選択}}
* {{Cite book|和書 |author=叶内拓哉、安部直哉 |date=2006-10-01 |title=山溪ハンディ図鑑7 日本の野鳥 |publisher=[[山と渓谷|山と溪谷社]] |isbn=4635070077 |edition=第2版 |ref=山溪ハンディ図鑑7日本の野鳥}}
* [[黒田長久]]監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科9 鳥III』、[[平凡社]]、[[1986年]]、154頁。
* [[黒田長久]]監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科9 鳥III』、[[平凡社]]、[[1986年]]、154頁。
* {{Cite journal |和書 |author=澤祐介 |title=カワガラスCinclus pallasiiのつがい形成期にみられた一夫二妻行動の観察 |journal=日本鳥類標識協会誌 |volume=24 |number=1 |naid=40019786337 |date=2012 |publisher=日本鳥類標識協会 |format=PDF |url=https://doi.org/10.14491/jbba.00024 |ref=カワガラス''Cinclus pallasii''のつがい形成期にみられた一夫二妻行動の観察}}
* {{Cite book|和書 |author=高木清和 |date=2002-02-01 |title=フィールドのための野鳥図鑑-水辺の鳥 |publisher=山と溪谷社 |isbn=4635063321 |ref=水辺の鳥}}
* 高野伸二編 『山カラー名鑑 日本の野鳥』 山と谷社、[[1985年]]
* {{Cite journal |和書 |author=野口和恵 |title=香川県香東川の橋梁におけるカワガラスCinclus pallasiiの営巣 |journal=香川生物 |volume=36 |naid=120004117450 |date=2009 |publisher=香川生物学会 |format=PDF |url=http://shark.lib.kagawa-u.ac.jp/kuir/metadata/3277 |ref=香川県香東川の橋梁におけるカワガラスCinclus pallasiiの営巣}}
* {{Cite journal |和書 |author=橋口大介、山岸哲 |title=冬季におけるカワガラスCinclus pallasiiの分散様式となわばり的行動 |journal=日本生態学会誌 |volume=31 |number=2 |naid=110001881613 |date=1981-06-30 |publisher=[[日本生態学会]] |format=PDF |url=https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282679269580416 |ref=冬季におけるカワガラスCinclus pallasiiの分散様式となわばり的行動}}
* {{Cite book|和書 |editor=中川雄三(監修) |date=2010-01 |title=ひと目でわかる野鳥 |publisher=成美堂出版 |isbn=978-4415305325 |ref=ひと目でわかる野鳥}}
* {{Cite book|和書 |author=真木広造 |date=2012-04-10 |title=名前がわかる野鳥大図鑑 |publisher=[[永岡書店]] |isbn=978-4522430866 |ref=名前がわかる野鳥大図鑑}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
{{commonscat|Cinclus pallasii}}
{{commons&cat|Cinclus pallasii|Cinclus pallasii}}
{{wikispecies|Cinclus pallasii}}
* [[カワガラス科]]
* [[日本の野鳥一覧]]
* [[日本の野鳥一覧]]
{{-}}


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* [http://decochan.net/index.php?q=%E3%82%AB%E3%83%AF%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%82%B9&p=2&o=ss カワガラスの標本] ([[山階鳥類研究所]])
* [http://ci.nii.ac.jp/naid/110001881613/ 冬季におけるカワガラスCinclus pallasiiの分散様式となわばり的行動] 冬季におけるカワガラスCinclus pallasiiの分散様式となわばり的行動
* [http://www.youtube.com/watch?v=klabJUnMfHk カワガラスの生態] (Youtube)
* [http://www.birdfan.net/pg/kind/ord17/fam1708/spe170800/ カワガラス] ([[日本野鳥の会]])
* [https://www.biodic.go.jp/birdRinging/atlas/Cinclus_pallasii/Cinclus_pallasii.html?code=00 鳥類アトラスWEB版(鳥類標識調査 回収記録データ)・カワガラス] ([[環境省]]自然環境局生物多様性センター)
* [https://www.cbr.mlit.go.jp/tenjyo/jimusyo/publication/pbl_bird/pdf/087_096.pdf カワガラス] ([[国土交通省]][[中部地方整備局]]天竜川上流河川事務所)
* [http://www.pref.gifu.lg.jp/kankyo/shizen/yacho/shinzan6.html 岐阜県の野鳥 -深山の鳥6-] ([[岐阜県]])
* [http://avibase.bsc-eoc.org/species.jsp?lang=EN&avibaseid=4E5EB9872F37E3A1 Brown Dipper (''Cinclus pallasii'') Temminck, 1820] ([[バードライフ・インターナショナル]]){{En icon}}


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2024年8月24日 (土) 22:12時点における最新版

カワガラス
渓流の岩に留まるカワガラス
カワガラス Cinclus pallasii pallasii
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: スズメ目Passeriformes
: カワガラス科 Cinclidae
: カワガラス属 Cinclus
: カワガラス C. pallasii
学名
Cinclus pallasii
Temminck, 1820[2]
和名
カワガラス
英名
Brown Dipper[3]
亜種
分布域

カワガラス(河烏[4][5]、川鴉、学名Cinclus pallasii Temminck, 1820)は、スズメ目カワガラス科カワガラス属分類される鳥類の一[2][6]

南北アメリカ大陸(新北区新熱帯区)に分布するメキシコカワガラスの近縁種。

分布

[編集]

ヒマラヤ北部からインドシナ半島北部、中国台湾サハリン日本カムチャツカ半島に分布する[7]。生息地では、基本的には留鳥である。

日本では、北海道本州四国九州屋久島にかけて広く分布する[4]。留鳥として、河川の上流から中流域にかけてと山地渓流に生息する[7][4]

形態

[編集]

全長は21-23 cm翼開長は約32 cm[4][8]、体重65-90 gヒヨドリツグミより少し小さい。全身が濃い茶色(チョコレート色[5]、光の具合により赤茶色に見えることもある[8]。)の羽毛におおわれているのが名前の由来だが、カラスの仲間ではない[注釈 1]。尾羽は短めで黒味の強い焦茶色[8]。目は茶色で、目を閉じると白いまぶたが目立つ[8]。雌雄同色[7][5]くちばしは黒く[5]、足は灰色でがっちりしている。ミソサザイを大きくしたような体形で、短めの尾羽を立てた独特の姿勢をとる[4]。幼鳥は喉から腹にかけて白くて細かいうろこ模様がある。

生態

[編集]

平地から亜高山帯の川の上流から中流の岩石の多い沢に生息する。冬期(積雪期)には下流側に生息場所を移動することもある。一年中、単独(非繁殖期は単独で行動している[9])もしくは番いで行動し群れを形成することはない。つがい形成期には、一夫二妻行動をとることがある[10]。ピッピッと鳴きながら、速い羽ばたきで川面の上を一直線に飛翔する[7][4][5]。頑丈な脚で岩をつかみ、水流の圧力を利用して川底を歩きながら水中で捕食を行う[5]。尾羽を上下に動かしたり、風切羽を半開きにしたり、まばたきし白いまぶたを見せながら、石や流木の上で休息する[7]

食性

[編集]

食性動物食。水に潜ってカゲロウカワゲラなどの幼虫などの水生昆虫カニなどの甲殻類小魚を捕食する[7][4][5]。水面上を泳ぎながら首を水中に入れて覗き込み、頻繁に潜水する[11]。水中では水底を這うように歩き回って川底の餌を探し、『渓流の素潜り名人』と称されることがある[4]。水にもぐっているときは羽毛の間に空気がふくまれるため、全身が銀色にみえる。

生活史

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親から雛へ給餌する様子

ほかの鳥にくらべて繁殖を始めるのが早く[7]、12月頃からオスがさえずり縄張り宣言を行う。暖地では1月頃から繁殖を始める[4][5]の裏の岩の隙間にコケや植物の根で半球状のドーム形のをつくる[4][5]。岩の陰やコンクリート護岸の排水口、橋桁[12]などの人工物にも巣を作ることもある[5]。造巣の際の雌雄の貢献度はほぼ等しく分業は行われない[13]。日本では2-6月に1腹4-5個の卵を産む。抱卵日数は15-16日で、雌が抱卵する育雛は雌雄共同で行う[11]。雛は21-23日で巣立つ。雛は飛べない内から、水中を泳いだり歩くことができる。

鳴き声

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オスは12月頃の繁殖期から「ピピピ チュシュ ピッピッ ピュュ」と鳴き始める[7]セグロセキレイ似た濁った声で「チーチージュピチリリ」と複雑に鳴く[4]地鳴きは「ピッ ピッ」[4]

亜種

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本種は以下の亜種に分類されている[2]。日本には亜種カワガラス(学名:Cinclus pallasii pallasii Temminck, 1820)が分布する[2][6]

種の保全状況評価

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国際自然保護連合(IUCN)により、レッドリスト軽度懸念(LC)の指定を受けている[1]。個体数は安定傾向にある[1]

日本では以下の都道府県でレッドリストの指定を受けている[15]。河川開発が個体数の減少の原因であると見られている[16][17]

人間との関係

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若山牧水により『川鴉(かわがらす) なきすぎゆきぬ たぎつ瀬の たちき輝き流る上を』と詠まれている。

アイヌ神謡集』の「コンクワ 梟の神が自ら歌った謡」ではカワガラスが重要な役割を担っている。梟は村の守り神で、すでに年老い衰えていることを嘆き、それでも最後に『よい使者がいれば天国へ談判を持たせたい』と言う。神々が人間に獲物を下賜してくれないことへの苦情を述べさせたいというものだ。それに応えたのが最初はカラス、次は山のカケスだが、いずれも談判の内容を聞き取る前に居眠りして、怒った梟に打ち殺される。最後に慎み深い態度で現れたのがカワガラスで、梟の談判をすべて聞き留めると神々の元へ向かい、談判の返事を持ってくる。人間が獲物への敬意を示すのが大事だという返事を聞き、梟は後のことをカワガラスにあずけ、この世を去る。その去り際の言葉がこの謡だ、というものである。

脚注

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注釈

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  1. ^ カワガラスはカラス科には属さず、カワガラス科に属する。
  2. ^ 奈良県のカテゴリー「希少種」は、環境省の準絶滅危惧(NT)相当。

出典

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  1. ^ a b c Cinclus pallasii (Brown Dipper) in IUCN Red List of Threatened Species. Version 2013.2” (英語). 国際自然保護連合(IUCN). 2014年2月13日閲覧。
  2. ^ a b c d IOC World Bird List 4.1 (Dippers, Sunbirds, Old World Sparrows)” (英語). 国際鳥類学会議(IOC). 2014年2月13日閲覧。
  3. ^ Cinclus pallasii Temminck, 1820” (英語). ITIS. 2014年2月13日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l 中川 (2010)、174頁
  5. ^ a b c d e f g h i j 真木 (2012)、186頁
  6. ^ a b 日本鳥類目録 改訂第7版”. 日本鳥学会 (2012年9月15日). 2014年2月13日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h 叶内 (2006)、460頁
  8. ^ a b c d 高木 (2002)、153頁
  9. ^ 橋口 (1981)、169頁
  10. ^ 澤 (2012)、7-13頁
  11. ^ a b 梓川鳥類生態研究会 (1993)、137頁
  12. ^ 野口 (2012)、19-20頁
  13. ^ 江口 (1990)、141-148頁
  14. ^ シャルル・リュシアン・ボナパルト or en:José Bonaparte
  15. ^ 日本のレッドデータ検索システム「カワガラス」”. (エンビジョン環境保全事務局). 2014年2月13日閲覧。 - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。
  16. ^ a b 岡山県版レッドデータブック2009” (PDF). 岡山県. pp. 85 (2009年). 2014年2月13日閲覧。
  17. ^ a b レッドデータブックやまぐち・カワガラス”. 山口県 (2002年). 2014年2月13日閲覧。
  18. ^ レッドデータブックあいち2009・カワガラス” (PDF). 愛知県. pp. 137 (2009年). 2014年2月13日閲覧。

参考文献

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  • 梓川鳥類生態研究会『日本アルプスの鳥』信濃毎日新聞、1993年6月。ISBN 4784093087 
  • 五百沢日丸 『日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版』 文一総合出版2004年
  • 江口和洋「カワガラスの営巣場所選択」(PDF)『日本鳥学会誌』第38巻第3号、日本鳥学会、1990年3月、NAID 40004628026 
  • 叶内拓哉、安部直哉『山溪ハンディ図鑑7 日本の野鳥』(第2版)山と溪谷社、2006年10月1日。ISBN 4635070077 
  • 黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科9 鳥III』、平凡社1986年、154頁。
  • 澤祐介「カワガラスCinclus pallasiiのつがい形成期にみられた一夫二妻行動の観察」(PDF)『日本鳥類標識協会誌』第24巻第1号、日本鳥類標識協会、2012年、NAID 40019786337 
  • 高木清和『フィールドのための野鳥図鑑-水辺の鳥』山と溪谷社、2002年2月1日。ISBN 4635063321 
  • 高野伸二編 『山溪カラー名鑑 日本の野鳥』 山と溪谷社、1985年
  • 野口和恵「香川県香東川の橋梁におけるカワガラスCinclus pallasiiの営巣」(PDF)『香川生物』第36巻、香川生物学会、2009年、NAID 120004117450 
  • 橋口大介、山岸哲「冬季におけるカワガラスCinclus pallasiiの分散様式となわばり的行動」(PDF)『日本生態学会誌』第31巻第2号、日本生態学会、1981年6月30日、NAID 110001881613 
  • 中川雄三(監修) 編『ひと目でわかる野鳥』成美堂出版、2010年1月。ISBN 978-4415305325 
  • 真木広造『名前がわかる野鳥大図鑑』永岡書店、2012年4月10日。ISBN 978-4522430866 

関連項目

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外部リンク

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