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「ニミッツ級航空母艦」の版間の差分

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|colspan="2"|[[F-14 (戦闘機)|F-14]]、[[F/A-18 (航空機)|F/A-18A-D]]・[[F/A-18E/F (航空機)|E/F]]、[[A-6 (航空機)|A-6]]、[[E-2 (航空機)|E-2]]、[[EA-6 (航空機)|EA-6B]]、[[EA-18G (航空機)|EA-18G]]、[[S-3 (航空機)|S-3]]、[[C-2 グレイハウンド (航空機)|C-2]]、[[SH-60 シーホーク|H-60]]等<br />
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| style="white-space:nowrap; font-size:smaller" rowspan="7"|[[レーダー]]
|[[:en:AN/SPS-48|AN/SPS-48E]] 3次元式||1基
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|[[AN/SPS-49]] 対空捜索用||1基
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|AN/SPS-67 対水上捜索用||1基
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|AN/SPS-64 航海用||1基
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|AN/SPN-43B 航空管制用||1基
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|[[:en:AN/SPN-46 radar|AN/SPN-46]] 精測進入用||1基
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|Mk.95 短SAM射撃指揮用||4基
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|rowspan="3"|[[電子戦]]
|colspan="2"|[[AN/SLQ-32]](v)4 電波探知妨害装置
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|colspan="2"|[[:en:Nulka|NULKA]] [[デコイ (兵器)|デコイ]]・システム
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|[[Mk 36 SRBOC|Mk.137]] デコイ発射機||4基
|}
|}
'''ニミッツ級航空母艦'''(ニミッツきゅうこうくうぼかん、'''Nimitz class aircraft carrier''')は、[[アメリカ海軍]]が開発した世界最初量産[[原子力空母]]の艦級。40年以上の期間をかけて全10隻が建造された。世界最大の[[軍艦]]としても知られる。
'''ニミッツ級航空母艦'''(ニミッツきゅうこうくうぼかん、{{Lang-en|''Nimitz''-class aircraft carrier}})は、[[アメリカ海軍]]の[[原子力空母]]の艦級。世界で初めて量産された原子力空母のクラスであり、40年以上の期間をかけて、順次に改正されつつ全10隻が建造された。世界最大の[[軍艦]]としても知られる。


==概要==
== 来歴 ==
[[第2次世界大戦]]後の[[核戦争]]時代の到来を受け、[[アメリカ空軍|空軍]][[戦略航空軍団]]への対抗もあり、アメリカ海軍は大型の[[艦上爆撃機]]を運用できる超大型空母(スーパー・キャリアー)の保有を志向した。[[1949年]]度計画の空母「[[ユナイテッド・ステーツ (空母)|ユナイテッド・ステーツ]]」(基準66,400t)は挫折したものの、[[朝鮮戦争]]で[[空母航空団]]の存在意義が再確認されたこともあり、1952年度計画より[[フォレスタル級航空母艦]](基準59,900t)の建造が認可され、同型4隻が建造された<ref name="growth">{{Cite journal|和書|year=2007|month=10|title=アメリカ空母発達史 レキシントンからフォードまで|journal=[[世界の艦船]]|issue=680|pages=84-93|publisher=[[海人社]]|naid=}}</ref>。その[[ネームシップ]]は予算1.9億ドルであったが、その後値上がりして、改良型である[[キティホーク級航空母艦]]のネームシップでは2.6億ドルとなった<ref name="中名生1994">{{Cite journal|和書|author=中名生正己|year=1994|month=12|title=究極のスーパー・キャリアー「ニミッツ」級 その誕生の経緯|journal=世界の艦船|issue=490|pages=70-73|publisher=海人社|naid=}}</ref>。
[[アメリカ合衆国]]では1958年度に計画した最初の原子力空母『[[エンタープライズ (CVN-65)|エンタープライズ]]』に続き、1960年度には2隻目の原子力空母の建造が[[アメリカ合衆国議会|議会]]承認されたが、巨額の建造費を理由に[[ドワイト・D・アイゼンハワー|ドワイト・アイゼンハワー]][[アメリカ合衆国大統領|大統領]]によって通常動力型に変更された。以来2隻の通常動力型空母を経て、9年ぶりとなる1967年度計画で承認されたのが本級である。


一方、1950年の時点で、当時の[[アメリカ海軍作戦部長]][[フォレスト・シャーマン]]大将より、空母を含めた水上艦の原子力推進化の可能性検討が指示された。しかしこの時点では非常に高コストであったことから[[アメリカ原子力委員会|原子力委員会]]が賛成せず、1958年度計画で、やっとキティホーク級をベースとした初の原子力空母として「[[エンタープライズ (CVN-65)|エンタープライズ]]」の建造が認可された。ただし艦型拡大(満載排水量にして9,000t増大)もあり、建造費は7割増の4.5億ドルとなった。これもあり、[[ドワイト・D・アイゼンハワー|ドワイト・アイゼンハワー]]政権下では、1959・60年度ともに空母建造予算が認められず、1961・63年度に各1隻の建造が認可されたものの、原子力推進の実績がまだ乏しかったこともあり、これらは在来型のキティホーク級とされた<ref name="中名生1994"/>。
当初ニミッツ級は[[ミッドウェイ級航空母艦|ミッドウェイ級]]3隻の代替として計画され、2番艦『[[ドワイト・D・アイゼンハワー (空母)|アイゼンハワー]]』が1970年度、3番艦『[[カール・ヴィンソン (空母)|ヴィンソン]]』が1974年度に計画された。その後[[600隻艦隊構想]]によって3隻が追加されることとなり、4番艦『[[セオドア・ルーズベルト (空母)|ルーズベルト]]』が1980年度計画で承認された。以後数年毎の間隔を経て10番艦『[[ジョージ・H・W・ブッシュ (空母)|ブッシュ]]』まで建造され、現用空母として最大勢力を誇る一大ファミリーとなり、アメリカ合衆国[[シーパワー]]の象徴と呼べる存在になっている。


その後、原子力推進技術の成熟を受け、原子力委員会は、1963年度計画のキティホーク級[[ジョン・F・ケネディ_(空母)|最終艦]]の原子力推進化を勧告したものの、同年10月、完成の遅延を理由として、[[ロバート・マクナマラ]][[アメリカ合衆国国防長官|国防長官]]は変更の中止(通常推進の維持)を決定した。1964年6月の時点で、エンタープライズの原子炉4基式よりも安価な2基式が実現可能となり、1965年度予算説明において、マクナマラ長官は高性能の原子炉の研究成果を受けて原子力艦隊の創設を発表した。原子力空母4隻体制が認可されたことから、[[ミッドウェイ級航空母艦|ミッドウェイ級]]3隻を代替して、新型原子力空母3隻の建造が計画された。これにより建造されたのが本級である<ref name="中名生1994"/>。
ネームシップ『[[ニミッツ (空母)|ニミッツ]]』の就役(1975年)から殿艦『ブッシュ』(2009年)まで、33年以上もの間隔が開いており、また45~50年と想定される艦歴<ref>『アメリカ合衆国会計検査院1998年 通常動力と原子力の空母のコスト比較』より</ref>を陳腐化することなく全うするため、逐次設計変更や改装が行われている。中でも5番艦『[[エイブラハム・リンカーン (空母)|リンカーン]]』以降は装甲防御の強化を主眼とした大規模な改良によって、軍艦として史上初めて満載排水量10万tを超過した。また、殿艦『ブッシュ』は次級[[ジェラルド・R・フォード級航空母艦|ジェラルド・R・フォード級]]へのつなぎとして様々な新機軸を採用した。


ネームシップとなる「[[ニミッツ_(空母)|ニミッツ]]」の建造は1967年度計画で着手され、残り2隻は1969・1970年度計画とされたが、マクナマラ長官の解任と政権交代に伴って、それぞれ1970・74年度に遅延した。また[[ニューポート・ニューズ造船所]]のストライキもあり、建造には3隻ともに7年を要することとなった。その後、一度は4番艦の建造が認可されたものの、[[制海艦]](SCS)に由来する小型空母(CVV)計画の台頭に伴い、[[ジェラルド・R・フォード]]大統領は1977年度予算からその要求を削除した。その後を襲った[[ジミー・カーター]]大統領もCVV計画を支持し、[[アメリカ合衆国下院]]は1979年度予算に4番艦の建造費を追加したが、大統領はその執行を拒否した。翌1980年度予算ではCVVの建造が盛り込まれる計画であったが、当初の小型空母から満載67,000tの中型空母に肥大化して低コスト性が失われており、[[イランアメリカ大使館人質事件]]の影響もあり、上院・下院が原子力空母の建造を勧告したことから、CVVにかえて本級4番艦が建造されることとなった。その後、[[ロナルド・レーガン|レーガン]]政権下で打ち出された[[600隻艦隊構想]]を受け、1983年度予算で5・6番艦、[[ジョージ・H・W・ブッシュ|大ブッシュ]]政権下でも7・8番艦と追加され<ref name="中名生1994"/>、最終的に10番艦までが建造されることとなった<ref name="growth"/>。
本級は炉心寿命の問題から就役期間中に[[原子炉]][[燃料棒]]の交換が必要とされ、船体を切断しての数年掛かりの大規模な改装工事「RCOH<ref>RCOH=Refueling and Complex OverHaul(炉心交換工事)</ref>」が逐次実施されている。現在3番艦『ヴィンソン』まで完了し、2013年に『ルーズベルト』が完了の予定だが、近年のアメリカ政府の財政赤字のため計画の遅延が出始めており、改装完了しても出港を延期したり、改修前に契約が出来ずに留め置かれている状況が発生している。


==設計==
== 船体 ==
本級の設計は、おおむねスーパー・キャリアーの嚆矢であるフォレスタル級のものを踏襲・拡大したものとなっている。また40年以上に渡って順次に改正されつつ建造され、就役後の改装も度々行われてきたことから、各艦ごとにかなりの差異がある<ref name="GW-Hardware">{{Cite journal|和書|year=2008|month=12|title=ジョージ・ワシントンのハードウェア (極東の新戦力 米CVN「ジョージ・ワシントン」)|journal=世界の艦船|issue=699|pages=88-95|publisher=海人社|naid=}}</ref>。とくに9・10番艦は次級[[ジェラルド・R・フォード級航空母艦|ジェラルド・R・フォード級]]へのつなぎとして様々な新機軸を採用しており、改ニミッツ級と称されることもある<ref>{{Cite journal|和書|year=2013|month=9|title=写真特集 世界の空母2013|journal=世界の艦船|issue=783|pages=21-59|publisher=海人社|naid=}}</ref>。なお本級の運用寿命は45~50年と想定されている<ref>『アメリカ合衆国会計検査院1998年 通常動力と原子力の空母のコスト比較』</ref>。
本級の基本設計は先に建造された『エンタープライズ』を範としつつ、多くの改良が施されている。また前述のように建造・就役期間が長期に亘るため、機会を捉えての改装が逐次施されている。


強度甲板は飛行甲板とされており、かなりの重装甲が施されている。その下には、1層のギャラリー・デッキをおいて[[ハンガー (航空)|ハンガー]]が設置されている。なお、外見から受ける印象と異なり、上甲板にあたる主甲板はハンガー床面とされており、飛行甲板は04甲板(レベル03の天井)に相当することから、艦の大きさの割に乾舷は小さい。主船体は、主甲板および第2-4甲板の4層の甲板で構成されており、その下方はレベル5から8まで機関区画となっている。また水線下には4層程度の防御構造(下記の空間装甲構造も含む)が設けられているほか、艦底は二重底とされている。推進効率向上のため球状艦首が採用されているが、9番艦よりさらに大型化されており、これ以前の艦へのバックフィットも検討されている<ref name="GW-Hardware"/>。
===船体===
上述の通り、前級『エンタープライズ』の改良型である。全長は前級の341mから10m弱短縮されたために「最長の軍艦」とはならなかったが、艦幅の拡大(水線38.5m→40.8m)や吃水の増加(10.8m→11.3m<ref>『ルーズベルト』11.8m、『リンカーン』以降11.9m。『ブッシュ』は12.1m。</ref>)によって排水量では上回った(満載83,350t→95,413t<ref>『ルーズベルト』96,386t、『リンカーン』以降102,000t。</ref>)。なお原子力空母である本級は自艦用の燃料を必要としないため、大量の物資を搭載しており、必要に応じて僚艦に補給されることもあるため、これら搭載物資用のスペース確保も排水量増大に一役買っている。また、これらの数値は就役時点のものであり、'''改修によって逐次変動している'''ので留意されたい。


水線長比は7.8で、「エンタープライズ」とほぼ同値、「キティホーク」の7.6よりも若干長細いことになる<ref name="GW-Hardware"/>。ただし船型としては、抵抗上不利な肥えたものが採用され、速力はやや犠牲とされた。また「エンタープライズ」と比べると、特にニミッツ級初期建造艦においては、排水量が若干減少した一方で燃料・弾薬の搭載量が増加(航空燃料は257万ガロンから300万ガロンへ、航空弾薬も2,500トンから2,970トンへ)したことから、居住性も犠牲になっていると考えられている。燃料タンクは、従来通り空所と重層化して舷側に配置されて[[装甲#工夫・技術|空間装甲]]を兼ねるようになっているが、弾薬庫の配置は、従来の3ヶ所から2ヶ所に削減し、艦の全長に占める割合を減らすことでヴァルネラビリティを低減している。また抗堪性向上のため、4番艦「ルーズヴェルト」以降では弾薬庫の舷側に一部とはいえ2.5インチ厚のケブラー板が張られ、また弾薬庫と機械室の天井が二重構造とされており、これにより満載排水量にして5,000トンほど大きくなり、「エンタープライズ」より大きくなった。5・6番艦ではさらに飛行甲板の装甲を増強するとともに上部構造物にも装甲を施したことにより、満載排水量10万トンの大台を超えることとなった。7番艦以降では、さらに構造部材にHSLA-100[[高張力鋼]]が採用された<ref name="吉原1994">{{Cite journal|和書|author=吉原栄一|year=1994|month=12|title=ニミッツ級のハードウェア|journal=世界の艦船|issue=490|pages=74-85|publisher=海人社|naid=}}</ref>。
『[[ジョン・C・ステニス (空母)|ステニス]]』以降は構造部材にHSLA-100[[高張力鋼]]が採用された。


外観では[[艦橋|アイランド]]が[[キティホーク級航空母艦|キティホーク級]]準拠とり、SPS-32・33[[フェーズドアレイレーダー|フェイズド・アレイ・レーダー]]を四面に張り巡らせた前級とは大きく印象が異なる(というより前級が異端であった)。ブリッジは3層で構成され、下段を司令部、中段を航海艦橋とし、上段は発着管制に充てられた<ref>そのため、上段の窓は飛行甲板を見渡せる左舷側にのみ開けられている。</ref>。アイランド頂部並びに直後には各種電子装備を据え付けるためのマストが設けられている。この構成は近年の改装の機に改められ、ラティス構造の閉囲を経て[[ステルス性]]を向上させた新型のマストをアイランドと一体化させたものに逐次更新している。
艦橋構造はキティホーク級準拠のアイランドされており、SPS-32・33[[フェーズドアレイレーダー|フェイズド・アレイ・レーダー]]を四面に張り巡らせた前級とは大きく印象が異なる(というより前級が異端であった)。ブリッジは3層で構成され、下段を司令部、中段を航海艦橋とし、上段は発着管制に充てられた<ref group="脚注">そのため、上段の窓は飛行甲板を見渡せる左舷側にのみ開けられている。</ref>。アイランド頂部並びに直後には各種電子装備を据え付けるためのマストが設けられている。この構成は近年の改装の機に改められ、ラティス構造の閉囲を経て[[ステルス性]]を向上させた新型のマストをアイランドと一体化させたものに逐次更新している。


===兵装===
== 機関 ==
[[原子力船]]である本級は、主機関としてはもちろん原子力推進を採用しており、原子炉には[[:en:A4W reactor|A4W]][[加圧水型原子炉|加圧水型]]2基を搭載する。A4Wは、アメリカ海軍が空母用に開発した4番目の原子炉であり、Aは空母用であることを、Wはメーカーの[[ウェスティングハウス・エレクトリック]]を意味する記号である。「エンタープライズ」ではやはり加圧水型のA2Wを搭載していたが、原子炉出力が低かったために8基という多数を搭載せざるを得なかったことから、2基に削減できた本級では、船体スペースの活用等で大きな恩恵があったとされている<ref name="GW-Reactor">{{Cite journal|和書|author=[[野木恵一]]|year=2008|month=12|title=A4W原子炉の構造と安全性 (極東の新戦力 米CVN「ジョージ・ワシントン」)|journal=世界の艦船|issue=699|pages=96-99|publisher=海人社|naid=}}</ref>。
本級の固有兵装は個艦防御用に限られる。当初計画では[[ターター・システム|ターターSAM]]発射機2基と[[Mk 33 3インチ砲|Mk 33 50口径3インチ連装両用砲]]2基4門が考えられていたが、結局以下のようになった。


A4Wの軸出力は公称{{Convert|130000|hp|kW}}、電力にして26,000 kWとされており<ref name="吉原1994"/>、日本の商用原子炉の電気出力と比べると数分の1から十数分の1に相当する。[[アメリカ合衆国国務省|米国務省]]の公式な資料においても、「海軍の原子炉の出力は、最大級のものでも、アメリカの大規模な商業炉のものの5分の1に満たない」とされている<ref group="脚注">この際には2基のA4Wが集合的に捉えられていると考えられている。</ref><ref>{{Cite web|author=[[アメリカ合衆国国務省]]|date=2006-04-17|url=http://www.mofa.go.jp/region/n-america/us/security/fact0604.pdf|title=Fact Sheet on U.S. Nuclear Powered Warship (NPW) Safety|format=PDF|language=英語|accessdate=2013-11-24}}</ref>。
;[[シースパロー (ミサイル)#IBPDMS (NSSMS)|シースパロー短SAM]]
:1~2番艦は、Mk.25発射機(8連装)計3基を右舷前部と艦尾両舷のスポンソンにそれぞれ配置した。
:3番艦以降はこれをMk.29発射機に改め、80年代以降の改装で先の2隻も同じく更新した。


軍艦の原子炉は、通常は巡航出力を発揮するため15パーセント程度の出力で運転されているが、戦闘時には1分以内に100パーセントの全力運転に移行できる。また停泊中は停止されている。なお原子炉は、主機関のほか、カタパルトへの高圧蒸気供給も担っている<ref name="GW-Reactor"/>。
;[[RAM (ミサイル)|RAM近SAM]]
:改装時にファランクスCIWS・シースパロー発射機の一部を置き換え、21連装発射機が逐次搭載されている。


本級は炉心寿命の問題から就役期間中に[[原子炉]][[燃料棒]]の交換が必要とされ、船体を切断しての2・3年掛かりの大規模な改装工事「[[:en:Refueling_and_Overhaul#Refueling_and_Complex_Overhaul|RCOH]]<ref group="脚注">RCOH=Refueling and Complex OverHaul(炉心交換工事)</ref>」が逐次実施されている。核燃料交換のサイクルは、前期艦では13年、後期艦では25年とされている<ref name="原子力水上艦">{{Cite journal|和書|year=2011|month=3|title=世界の原子力水上艦ラインナップ (特集・原子力水上艦建造史)|journal=世界の艦船|issue=738|pages=90-99|publisher=海人社|naid=}}</ref>。2005年に3番艦「ヴィンソン」が、2009年に4番艦「ルーズベルト」が工事に入っている。これらのRCOHは、建造を担当したニューポート・ニューズ造船所(NNSB)でしか行うことができないとされている<ref name="GW-Reactor"/>。
;[[ファランクス (火器)|20mmファランクスCIWS]]
:3~8番艦は新造時より、1~2番艦も改装によって3基乃至4基のファランクスCIWSを装備したが、9~10番艦は装備していない。
:配置箇所は右舷前部のシースパロー短SAM発射機近傍、左舷前部スポンソン、後部両舷、あるいは艦尾[[ジェットエンジン]]整備・試験スペース等である。


== 能力 ==
;その他
=== C4ISR機能 ===
:一時期、ウェーキ・ホーミング魚雷対策として[[Mk 32 短魚雷発射管|Mk 32 324mm短魚雷3連装発射管]]を後部に装備した艦があった。
[[ファイル:The information exchange systems structure around the CVSG.png|thumb|280px|CVSG内外に展開された情報システムの構造。]]
:テロ対策として、キャット・ウォークに[[ブローニングM2重機関銃|M2 12.7mm重機関銃]]を配置することがある。<ref>員数外の装備であり、カタログデータに反映されない。</ref>
本級は、[[空母打撃群]](CVSG)<ref group="脚注">2006年以前は空母戦闘群(CVBG)と呼称されていた。</ref>の[[旗艦]]となることから、充実した司令部設備を備えている。[[作戦術]]レベルの指揮・統制中枢となるのが、[[タスクフォース#アメリカ海軍のタスクフォース|任務部隊]]などの司令官の指揮所となる群司令部指揮所(TFCC)である。当初、司令部幕僚の作業はほとんどが手作業であったが、1980年代初頭、[[ジェリー・O・タトル]]提督が司令部用部隊管理費から捻出した予算で[[JOTS|AN/USQ-112 統合作戦戦術システム(JOTS)]]を組み上げて以後、自動化が急速に進展した。2013年現在、本級をはじめとする空母のTFCCでは、地上の艦隊司令部指揮所(FCC)や[[国家軍事指揮センター]](NMCC)と情報を共有するための[[GCCS|汎地球指揮統制システム(GCCS)]]、艦隊の各艦と情報を共有するためのGCCS-M、そして艦の戦術情報を共有するための[[海軍戦術情報システム]](NTDS)という3つの主要な指揮・統制システムが集中している。また、その指揮・統制を支援するため、空母インテリジェンス・センター(CVIC)も設置される。これは、艦隊自身が収集した情報や、上級司令部あるいは[[Integrated Broadcast Service|統合同軸報送信サービス(IBS)]]を通じてもたらされた情報([[偵察衛星]]・[[偵察機]]や[[諜報活動]]による情報)を総合・分析する部署である。アメリカ海軍では、TFCCからもたらされる作戦(OPS)情報とインテリジェンス(INTEL)情報を総合することにより、はじめて作戦指揮官の健全な[[意思決定]]が可能になると規定している<ref name="大熊2006">{{Cite book|和書|author=[[大熊康之]]|year=2006|title=軍事システム エンジニアリング|chapter=第5章 タトル提督のC4I近代化革命|publisher=[[かや書房]]|pages=143-175|isbn=978-4-906124-63-3}}</ref>。


これに対し、戦術レベルの指揮・統制中枢となるのが、空母艦長の指揮所である空母戦闘指揮所(CDC)であり、ここにはGCCS-MとNTDSが設置され、空母個艦の行動を指揮・統制する<ref name="大熊2006"/>。NTDSの後継として先進戦闘指揮システム([[:en:Advanced combat direction system|ACDS]])の開発が試みられたものの、これは成功しなかった。その後、より包括的な統合戦闘システムとして[[艦艇自衛システム#SSDS_Mk.2|艦艇自衛システム(SSDS Mk.2)]]が開発され、mod.1が本級の一部にも装備化されている<ref name="野木2006">{{Cite journal|和書||author=[[野木恵一]]||year=2006||month=8||title=システムとしての艦隊防空||journal=[[世界の艦船]]||issue=第662集||pages=98-103頁||publisher=海人社}}</ref>。空母自身のセンサーとしては、[[3次元レーダー]]としてAN/SPS-48E、これを補完する長距離対空捜索レーダーとして[[AN/SPS-49]](V)5、対水上捜索レーダーとしてAN/SPS-67が搭載される<ref name="吉原1994"/>。
===電子兵装===
{{-}}
=== 航空運用機能 ===
==== 航空艤装 ====
{{Double image stack|right|USS Harry S. Truman (CVN-75) flight deck.jpg|US Navy 090529-N-1062H-042 Supply and deck department Sailors transfer cargo in the hangar bay of the aircraft carrier USS George Washington (CVN 73) during a replenishment-at-sea.jpg|250|「トルーマン」の飛行甲板。|「ワシントン」のハンガー。}}
[[#船体]]に上記したとおり、本級では04甲板(レベル03の天井)が全通した[[飛行甲板]]とされており、全長332.9メートル×最大幅76.8メートル、面積にして4.5エーカー(1.8ヘクタール)を確保した。飛行甲板上には[[アングルド・デッキ]]が設定されており、長さは243メートル、船体中心線に対する角度は9度3分で、甲板長が長いことから、キティー・ホークの11度と比して小さい角度で済んでいる<ref name="GW-Hardware"/>。また7番艦以降では0.1度増した<ref name="原子力水上艦"/>。


飛行甲板上の配置はキティ・ホーク以降のそれが踏襲されている。カタパルトは、飛行甲板前方に2基(第1・2)、アングルド・デッキ上にさらに2基設置されている。機種としては、キティホーク級が搭載したMk.13の改良型であるMk.13-1が採用されており、4番艦以降ではさらに改良強化されたMk.13-2に改められた。カタパルト長は94メートル、フル装備のF/A-18を2秒で265キロメートル毎時に加速させることができる。また5番艦までは航空要員が飛行甲板に体を露出させてカタパルトを操作していたのに対し、6番艦以降では、NBC防護の観点から、第1・2および第3・4カタパルトの間にそれぞれ統合カタパルト管制室(ICCS)が設置されている<ref name="GW-Hardware"/>。なお、1番艦は前級までと同じく3基のブライドル・レトリーバーを搭載して竣工したが、その後これを不要とする機体が主流となっていったため、2番艦は艦首右舷側1基のみとした。4番艦以降は全廃している。
===防御===
本級はアメリカにとって最重要艦種の一つであり、[[規制が議論されている兵器|NBC]]対策を初めとした各種防御も非常に充実しているとされる。


一方、[[アレスティング・ワイヤー]](着艦制動索)としてはMk.7-3が採用されており、105ノットで進入してくる重量22.7トン(非常時は27.2トンまで)の機体を安全に停止できる。装備要領としては、アングルド・デッキ後部に、8番艦までは4本が張られていたが、着艦精度の向上を受けて、9番艦以降では3本となった<ref name="GW-Hardware"/>。また3本目と4本目のワイヤーの間には、[[アレスティング・フック]]が故障した機体等を強制的に停止させるため、ネット状のクラッシュ・バリアー(滑走制止装置)が設置されている<ref name="吉原1994"/>。
「とされる」というのは、本級の防御構造の詳細が知られていないためであるが、例えば10万tを超えた『[[ジョージ・ワシントン (空母)|ワシントン]]』の重量増分(『ルーズベルト』から約5,600t増)の多くが装甲重量に割かれたとされることなどからある程度の類推は可能である。


飛行甲板の下に1層のギャラリー・デッキをおいて[[ハンガー (航空)|ハンガー]]が設けられている。全長208.5メートル、最大幅32.9メートルで、高さは3層分、8.1メートルである。船体長の60パーセントを占めるものの、搭載機すべてを収容する容積はなく、主として整備スペースとして用いられる。[[ダメージコントロール]]の必要上、ハンガーは2枚の防火・耐爆シャッターによって3分割することができる。また艦尾側には露天で艦上機エンジンの試運転場も設けられている<ref name="GW-Hardware"/>。
なお、バイタルパートに2.5インチ(64mm)の[[ケブラー]]装甲が貼られていることは判明している<ref>『Aircraft carriers: an illustrated history of their impact』(ABC-CLIO Ltd.)より。</ref>。


飛行甲板とハンガーを連絡するエレベータとしては、右舷アイランド前方2基、後方1基、左舷後方1基の計4基装備する。これらはいずれもデッキサイド式で、寸法は25.9メートル×15.9メートル、力量58.5トンで、前級までと同じく外舷側に向けて前側半分程より広げた変形五角形となっており、主翼を折りたたんだままの[[艦上戦闘機]]2機を同時に載せて昇降することができる。このほか、兵装用のエレベータが9基設けられている<ref name="GW-Hardware"/>。
===機関===
本級最大の特徴の一つである原子炉はA4W[[加圧水型原子炉|加圧水型]]2基を採用しており、A2W加圧水型8基を搭載した前級から著しく進歩している。これによって4基の蒸気タービン(26万馬力)を回し、30ノット超の最大速力を発揮する<ref>非公式には公試で31.5ノットを発揮したとされる。</ref>。


また燃料・弾薬の搭載量も大幅に増強されており、最後の通常動力型空母である「[[ジョン・F・ケネディ (空母)|ジョン・F・ケネディ]]」と比較すると、同艦では[[ジェット燃料|航空燃料]](JP-5)5,919トン、航空機用武器・弾薬1,250トンを搭載していたのに対し、本級ではそれぞれ、4割増の8,205トン、倍増した2,470トンとなっている。これにより継戦能力は飛躍的に強化され、同艦では連続9日ないし11日が限界であったのに対し、本級では無補給で最大16日の作戦行動が可能となっている<ref name="宮本1994">{{Cite journal|和書|author=宮本勲|year=1994|month=12|title=「ニミッツ」級の航空部隊|journal=世界の艦船|issue=490|pages=86-93|publisher=海人社|naid=}}</ref>。
===航空艤装===
;[[飛行甲板]]
:本級の飛行甲板は全長332.9m、最大幅76.8m、面積は4.5エーカー(1.8ヘクタール)に達する。


==== 航空管制 ====
;格納庫
多数機を同時運用することから、本級は充実した[[航空交通管制|航空管制]]能力を備えている。
:全長208.5m、最大幅32.9m。


遠距離から航空機を誘導するための[[電波航法]]装置としては、AN/URN-25[[戦術航法装置]](TACAN)が用いられる。これに基づいて艦に接近した航空機はAN/SPN-43B 航空管制用捜索レーダーにより捕捉される。これは晴天時には50海里、雨天時でも35海里の探知距離を備えており、対空捜索レーダーの補完としても用いられる。さらに接近してからは、AN/SPN-42、あるいは[[:en:Low probability of intercept radar|LPI]]化されたAN/SPN-46[[精測進入レーダー]]が用いられる。条件次第では自動着艦も可能であり、本級では2基が備えられていることから、同時に2機の発着艦が可能である<ref name="宮本1994"/>。
;エレベータ
:前級までと同じく外舷側に向けて前側半分程より広げた、変形五角形のサイド・エレベータを右舷アイランド前方2基、後方1基、左舷後方1基の計4基装備する。このエレベータは主翼を折りたたんだままの[[艦載機]]2機を同時に載せて昇降することができる。


==== 艦上機 ====
;[[カタパルト]]
各種艦上機80~105機程度の搭載・運用が完成時点では想定されていた。しかし全機を格納庫に収容することはできず、一定数は露天繋止の状態であった。
:前級までと同じく艦首2基、[[アングルド・デッキ]]上2基の4基を装備した。機種はC-13-1で、キティホーク級が搭載したC-13の改良型である。『リンカーン』以後はさらに改良強化したC-13-2に改められた。


[[冷戦]]終結後は艦上機の性能向上でより少ない機数でも同様の任務を遂行できるようになったこと、無理な運用の必要性が薄れたことや機種の統合整理等によって、2013年現在の標準搭載機はCTOL機56機とヘリコプター15機の計71機とされている。
;ブライドル・レトリーバー
:1番艦『ニミッツ』は前級までと同じく3基を搭載して竣工したが、その後これを不要とする機体が主流となっていったため、2番艦『アイゼンハワー』は艦首右舷側1基のみとした。4番艦『ルーズベルト』以降は全廃している。

;アレスティング・ギア(着艦制動索)
:Mk.7Mod3をアングルド・デッキ後部に8番艦『[[ハリー・S・トルーマン (空母)|トルーマン]]』までは4本、『[[ロナルド・レーガン (空母)|レーガン]]』と『ブッシュ』は3本装備している。

;燃料・弾薬
:キティホーク級は[[ジェット燃料|航空燃料]](JP-5)5,900t、弾薬1,250tを搭載していたが、ニミッツ級は航空燃料9,000t、弾薬2,000t(2,900t説あり)に増え、航空作戦継戦能力は、キティホーク級11日、『エンタープライズ』12日であるのに対し、ニミッツ級は16日と伸びている。

====艦載機====
各種艦載機80~105機程度の搭載・運用が完成時点では想定されていた。しかし全機を格納庫に収容することはできず、一定数は露天繋止の状態であった。

[[冷戦]]終結後は艦載機の性能向上でより少ない機数でも同様の任務を遂行できるようになったこと、無理な運用の必要性が薄れたことや機種の統合整理等によって、2013年現在の標準搭載機はCTOL機56機とヘリコプター15機の計71機とされている。


;[[空母航空団]]
;[[空母航空団]]
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}}
}}


===その他===
===個艦防御機能===
本級の固有兵装は個艦防御用に限られる。
本級の乗員は諸説あるが合計6,286名、士官439名/下士官兵5,182名、操艦3,200名/航空団2,480名等の数字が各種文献で確認できる。時代や状態によって変動しているが、いずれにせよ5,000名を大きく超える巨大な数字であることは間違いない。

[[防空]]システムとしては、当初は[[ターター・システム]]が検討されたものの、まもなく[[Mk 33 3インチ砲|50口径3インチ連装両用砲]]と[[Mk.56 砲射撃指揮装置]]の組み合わせに取って代わられた。しかし排水量制限の問題等に直面し、最終的に、[[シースパロー (ミサイル)|シースパロー]][[艦対空ミサイル#個艦防空ミサイル|個艦防空ミサイル]]・システムが採用された。1~2番艦では初期型の[[シースパロー_(ミサイル)#BPDMS|BPDMS]]が採用され、発射機としては8連装のMk.25計3基を右舷前部と艦尾両舷のスポンソンにそれぞれ配置した。3番艦以降では改良型の[[シースパロー_(ミサイル)#IBPDMS (NSSMS)|Mk.57 mod.3 IBPDMS]]とされて、発射機はMk.29発射機に改められており、80年代以降の改装で先の2隻も同じく更新している<ref name="吉原1994"/>。

また[[CIWS|近接防空]]用として、3~8番艦は新造時より、1~2番艦も改装によって3基ないし4基の[[ファランクス (火器)|20mmファランクスCIWS]]を装備した。配置箇所は右舷前部のシースパロー短SAM発射機近傍、左舷前部スポンソン、後部両舷、あるいは艦尾[[ジェットエンジン]]整備・試験スペース等である。ただし9~10番艦は装備していないほか、一部の艦では、改装時に、ファランクスCIWSやシースパロー発射機の一部を置き換え、[[RAM (ミサイル)|RAM]][[艦対空ミサイル#近接防空ミサイル|近接防空ミサイル]]の21連装発射機が逐次搭載されている。

[[対潜兵器]]は持たないが、一部艦では、ウェーキ・ホーミング魚雷対策として[[Mk 32 短魚雷発射管|Mk.32 3連装短魚雷発射管]]を後部に装備している。また対魚雷のソフト・キル用としては、[[:en:AN/SLQ-25 Nixie|AN/SLQ-36ニクシー]]曳航式[[デコイ (兵器)|デコイ]]が搭載される<ref name="吉原1994"/>。

このほか、[[米艦コール襲撃事件]]のようなテロ対策として、キャット・ウォークに[[ブローニングM2重機関銃|M2 12.7mm重機関銃]]を配置することがある。<ref group="脚注">員数外の装備であり、カタログデータに反映されない。</ref>


==同型艦==
==同型艦==
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! 艦番号 !! 艦名 !! 発注 !! 起工 !! 進水 !! 就役 !! RCOH !! 母港 !! 所在
! 艦番号 !! 艦名 !! 発注 !! 起工 !! 進水 !! 就役 !! RCOH !! 母港 !! 所在
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|CVN-68<ref>1975年6月30日、原子力攻撃空母(CVAN)から原子力空母(CVN)に艦種変更された。</ref>||[[ニミッツ (空母)|ニミッツ]]<br/> ''USS Nimitz''||1967年<br/>3月31日||1968年<br/>6月22日||1972年<br/>5月13日||1975年<br/>5月3日||1998–2001||[[ワシントン州]]<br/>エバレット||大西洋<ref>[http://www.nimitz.navy.mil/nimitz-news-online.html]</ref>
|CVN-68<br /><ref group="脚注">1975年6月30日、原子力攻撃空母(CVAN)から原子力空母(CVN)に艦種変更された。</ref>||[[ニミッツ (空母)|ニミッツ]]<br/> ''USS Nimitz''||1967年<br/>3月31日||1968年<br/>6月22日||1972年<br/>5月13日||1975年<br/>5月3日||1998–2001||[[ワシントン州]]<br/>エバレット||大西洋<ref>[http://www.nimitz.navy.mil/nimitz-news-online.html]</ref>
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|CVN-69||[[ドワイト・D・アイゼンハワー (空母)|ドワイト・D・アイゼンハワー]]<br/> ''USS Dwight D. Eisenhower''||1970年<br/>6月29日||1970年<br/>8月15日||1975年<br/>10月11日||1977年<br/>10月18日||2001–2005||[[バージニア州]]<br/>[[ノーフォーク海軍基地|ノーフォーク]]||[[ノーフォーク海軍造船所]]で増強改修工事中<ref>[http://www.navy.mil/local/cvn69/]</ref>
|CVN-69||[[ドワイト・D・アイゼンハワー (空母)|ドワイト・D・アイゼンハワー]]<br/> ''USS Dwight D. Eisenhower''||1970年<br/>6月29日||1970年<br/>8月15日||1975年<br/>10月11日||1977年<br/>10月18日||2001–2005||[[バージニア州]]<br/>[[ノーフォーク海軍基地|ノーフォーク]]||[[ノーフォーク海軍造船所]]で増強改修工事中<ref>[http://www.navy.mil/local/cvn69/]</ref>
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* 『[[エースコンバット5 ジ・アンサング・ウォー]]』
* 『[[エースコンバット5 ジ・アンサング・ウォー]]』
: 2004年。ニミッツ級をモデルにしたヒューバート級空母「[[ケストレル (エースコンバットシリーズ)|ケストレル]]」が登場。同シリーズの他作品にも艦名不明のニミッツ級が登場している。
: 2004年。ニミッツ級をモデルにしたヒューバート級空母「[[ケストレル (エースコンバットシリーズ)|ケストレル]]」が登場。同シリーズの他作品にも艦名不明のニミッツ級が登場している。

==脚注==
<references group="脚注"/>


==参考文献==
==参考文献==
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*『〈新版〉アメリカ航空母艦史』([[海人社]])
*『〈新版〉アメリカ航空母艦史』([[海人社]])
*『航空母艦全史』(海人社)
*『航空母艦全史』(海人社)
*『世界の海軍 2011-2012』(海人社)
*『世界の海軍 2011-2012』(海人社)
*『U.S.Aircraft Carriers』(Naval Institute Press)
*『U.S.Aircraft Carriers』(Naval Institute Press)

==脚注==
<references/>


==外部リンク==
==外部リンク==
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2013年11月24日 (日) 06:24時点における版

ニミッツ級航空母艦
艦級概観
艦種 航空母艦原子力空母
艦名 海軍功労者。一番艦はチェスター・ニミッツ元帥に因む。
建造期間 1968年 - 2006年
就役期間 1975年 - 就役中
建造費 CVN-69:6億7,900万USドル
CVN-75:45億USドル
CVN-77:62億USドル
前級 エンタープライズ級航空母艦
次級 ジェラルド・R・フォード級航空母艦
性能諸元
排水量 軽荷:78,280 t - 80,750 t
基準:80,000 t以上
満載:95,413 t - 102,000 t以上
全長 330 m - 333 m
全幅 船体幅:41 m / 発着甲板幅:76.8 m
吃水 11.3 m - 12.5 m
機関 A4W加圧水型原子炉 2基
蒸気タービン
(65,000 hp (48 MW)*)
4基
スクリュープロペラ 4軸
速力 30+ノット(56+km/h)
乗員 個艦要員: 3,200名
航空要員: 1,700名
司令部要員: 60名
兵装 ファランクス CIWS
※CVN-68、69、76、77以外
3基
シースパロー短SAM 8連装発射機 2基
RAM近SAM 21連装発射機 2基
搭載機 CTOL機 + ヘリコプター
冷戦期:90機、現在:70機前後
F-14F/A-18A-DE/FA-6E-2EA-6BEA-18GS-3C-2H-60
レーダー AN/SPS-48E 3次元式 1基
AN/SPS-49 対空捜索用 1基
AN/SPS-67 対水上捜索用 1基
AN/SPS-64 航海用 1基
AN/SPN-43B 航空管制用 1基
AN/SPN-46 精測進入用 1基
Mk.95 短SAM射撃指揮用 4基
電子戦 AN/SLQ-32(v)4 電波探知妨害装置
NULKA デコイ・システム
Mk.137 デコイ発射機 4基

ニミッツ級航空母艦(ニミッツきゅうこうくうぼかん、英語: Nimitz-class aircraft carrier)は、アメリカ海軍原子力空母の艦級。世界で初めて量産された原子力空母のクラスであり、40年以上の期間をかけて、順次に改正されつつ全10隻が建造された。世界最大の軍艦としても知られる。

来歴

第2次世界大戦後の核戦争時代の到来を受け、空軍戦略航空軍団への対抗もあり、アメリカ海軍は大型の艦上爆撃機を運用できる超大型空母(スーパー・キャリアー)の保有を志向した。1949年度計画の空母「ユナイテッド・ステーツ」(基準66,400t)は挫折したものの、朝鮮戦争空母航空団の存在意義が再確認されたこともあり、1952年度計画よりフォレスタル級航空母艦(基準59,900t)の建造が認可され、同型4隻が建造された[1]。そのネームシップは予算1.9億ドルであったが、その後値上がりして、改良型であるキティホーク級航空母艦のネームシップでは2.6億ドルとなった[2]

一方、1950年の時点で、当時のアメリカ海軍作戦部長フォレスト・シャーマン大将より、空母を含めた水上艦の原子力推進化の可能性検討が指示された。しかしこの時点では非常に高コストであったことから原子力委員会が賛成せず、1958年度計画で、やっとキティホーク級をベースとした初の原子力空母として「エンタープライズ」の建造が認可された。ただし艦型拡大(満載排水量にして9,000t増大)もあり、建造費は7割増の4.5億ドルとなった。これもあり、ドワイト・アイゼンハワー政権下では、1959・60年度ともに空母建造予算が認められず、1961・63年度に各1隻の建造が認可されたものの、原子力推進の実績がまだ乏しかったこともあり、これらは在来型のキティホーク級とされた[2]

その後、原子力推進技術の成熟を受け、原子力委員会は、1963年度計画のキティホーク級最終艦の原子力推進化を勧告したものの、同年10月、完成の遅延を理由として、ロバート・マクナマラ国防長官は変更の中止(通常推進の維持)を決定した。1964年6月の時点で、エンタープライズの原子炉4基式よりも安価な2基式が実現可能となり、1965年度予算説明において、マクナマラ長官は高性能の原子炉の研究成果を受けて原子力艦隊の創設を発表した。原子力空母4隻体制が認可されたことから、ミッドウェイ級3隻を代替して、新型原子力空母3隻の建造が計画された。これにより建造されたのが本級である[2]

ネームシップとなる「ニミッツ」の建造は1967年度計画で着手され、残り2隻は1969・1970年度計画とされたが、マクナマラ長官の解任と政権交代に伴って、それぞれ1970・74年度に遅延した。またニューポート・ニューズ造船所のストライキもあり、建造には3隻ともに7年を要することとなった。その後、一度は4番艦の建造が認可されたものの、制海艦(SCS)に由来する小型空母(CVV)計画の台頭に伴い、ジェラルド・R・フォード大統領は1977年度予算からその要求を削除した。その後を襲ったジミー・カーター大統領もCVV計画を支持し、アメリカ合衆国下院は1979年度予算に4番艦の建造費を追加したが、大統領はその執行を拒否した。翌1980年度予算ではCVVの建造が盛り込まれる計画であったが、当初の小型空母から満載67,000tの中型空母に肥大化して低コスト性が失われており、イランアメリカ大使館人質事件の影響もあり、上院・下院が原子力空母の建造を勧告したことから、CVVにかえて本級4番艦が建造されることとなった。その後、レーガン政権下で打ち出された600隻艦隊構想を受け、1983年度予算で5・6番艦、大ブッシュ政権下でも7・8番艦と追加され[2]、最終的に10番艦までが建造されることとなった[1]

船体

本級の設計は、おおむねスーパー・キャリアーの嚆矢であるフォレスタル級のものを踏襲・拡大したものとなっている。また40年以上に渡って順次に改正されつつ建造され、就役後の改装も度々行われてきたことから、各艦ごとにかなりの差異がある[3]。とくに9・10番艦は次級ジェラルド・R・フォード級へのつなぎとして様々な新機軸を採用しており、改ニミッツ級と称されることもある[4]。なお本級の運用寿命は45~50年と想定されている[5]

強度甲板は飛行甲板とされており、かなりの重装甲が施されている。その下には、1層のギャラリー・デッキをおいてハンガーが設置されている。なお、外見から受ける印象と異なり、上甲板にあたる主甲板はハンガー床面とされており、飛行甲板は04甲板(レベル03の天井)に相当することから、艦の大きさの割に乾舷は小さい。主船体は、主甲板および第2-4甲板の4層の甲板で構成されており、その下方はレベル5から8まで機関区画となっている。また水線下には4層程度の防御構造(下記の空間装甲構造も含む)が設けられているほか、艦底は二重底とされている。推進効率向上のため球状艦首が採用されているが、9番艦よりさらに大型化されており、これ以前の艦へのバックフィットも検討されている[3]

水線長比は7.8で、「エンタープライズ」とほぼ同値、「キティホーク」の7.6よりも若干長細いことになる[3]。ただし船型としては、抵抗上不利な肥えたものが採用され、速力はやや犠牲とされた。また「エンタープライズ」と比べると、特にニミッツ級初期建造艦においては、排水量が若干減少した一方で燃料・弾薬の搭載量が増加(航空燃料は257万ガロンから300万ガロンへ、航空弾薬も2,500トンから2,970トンへ)したことから、居住性も犠牲になっていると考えられている。燃料タンクは、従来通り空所と重層化して舷側に配置されて空間装甲を兼ねるようになっているが、弾薬庫の配置は、従来の3ヶ所から2ヶ所に削減し、艦の全長に占める割合を減らすことでヴァルネラビリティを低減している。また抗堪性向上のため、4番艦「ルーズヴェルト」以降では弾薬庫の舷側に一部とはいえ2.5インチ厚のケブラー板が張られ、また弾薬庫と機械室の天井が二重構造とされており、これにより満載排水量にして5,000トンほど大きくなり、「エンタープライズ」より大きくなった。5・6番艦ではさらに飛行甲板の装甲を増強するとともに上部構造物にも装甲を施したことにより、満載排水量10万トンの大台を超えることとなった。7番艦以降では、さらに構造部材にHSLA-100高張力鋼が採用された[6]

艦橋構造はキティホーク級準拠のアイランドとされており、SPS-32・33フェイズド・アレイ・レーダーを四面に張り巡らせた前級とは大きく印象が異なる(というより前級が異端であった)。ブリッジは3層で構成され、下段を司令部、中段を航海艦橋とし、上段は発着管制に充てられた[脚注 1]。アイランド頂部並びに直後には各種電子装備を据え付けるためのマストが設けられている。この構成は近年の改装の機に改められ、ラティス構造の閉囲を経てステルス性を向上させた新型のマストをアイランドと一体化させたものに逐次更新している。

機関

原子力船である本級は、主機関としてはもちろん原子力推進を採用しており、原子炉にはA4W加圧水型2基を搭載する。A4Wは、アメリカ海軍が空母用に開発した4番目の原子炉であり、Aは空母用であることを、Wはメーカーのウェスティングハウス・エレクトリックを意味する記号である。「エンタープライズ」ではやはり加圧水型のA2Wを搭載していたが、原子炉出力が低かったために8基という多数を搭載せざるを得なかったことから、2基に削減できた本級では、船体スペースの活用等で大きな恩恵があったとされている[7]

A4Wの軸出力は公称130,000馬力 (97,000 kW)、電力にして26,000 kWとされており[6]、日本の商用原子炉の電気出力と比べると数分の1から十数分の1に相当する。米国務省の公式な資料においても、「海軍の原子炉の出力は、最大級のものでも、アメリカの大規模な商業炉のものの5分の1に満たない」とされている[脚注 2][8]

軍艦の原子炉は、通常は巡航出力を発揮するため15パーセント程度の出力で運転されているが、戦闘時には1分以内に100パーセントの全力運転に移行できる。また停泊中は停止されている。なお原子炉は、主機関のほか、カタパルトへの高圧蒸気供給も担っている[7]

本級は炉心寿命の問題から就役期間中に原子炉燃料棒の交換が必要とされ、船体を切断しての2・3年掛かりの大規模な改装工事「RCOH[脚注 3]」が逐次実施されている。核燃料交換のサイクルは、前期艦では13年、後期艦では25年とされている[9]。2005年に3番艦「ヴィンソン」が、2009年に4番艦「ルーズベルト」が工事に入っている。これらのRCOHは、建造を担当したニューポート・ニューズ造船所(NNSB)でしか行うことができないとされている[7]

能力

C4ISR機能

CVSG内外に展開された情報システムの構造。

本級は、空母打撃群(CVSG)[脚注 4]旗艦となることから、充実した司令部設備を備えている。作戦術レベルの指揮・統制中枢となるのが、任務部隊などの司令官の指揮所となる群司令部指揮所(TFCC)である。当初、司令部幕僚の作業はほとんどが手作業であったが、1980年代初頭、ジェリー・O・タトル提督が司令部用部隊管理費から捻出した予算でAN/USQ-112 統合作戦戦術システム(JOTS)を組み上げて以後、自動化が急速に進展した。2013年現在、本級をはじめとする空母のTFCCでは、地上の艦隊司令部指揮所(FCC)や国家軍事指揮センター(NMCC)と情報を共有するための汎地球指揮統制システム(GCCS)、艦隊の各艦と情報を共有するためのGCCS-M、そして艦の戦術情報を共有するための海軍戦術情報システム(NTDS)という3つの主要な指揮・統制システムが集中している。また、その指揮・統制を支援するため、空母インテリジェンス・センター(CVIC)も設置される。これは、艦隊自身が収集した情報や、上級司令部あるいは統合同軸報送信サービス(IBS)を通じてもたらされた情報(偵察衛星偵察機諜報活動による情報)を総合・分析する部署である。アメリカ海軍では、TFCCからもたらされる作戦(OPS)情報とインテリジェンス(INTEL)情報を総合することにより、はじめて作戦指揮官の健全な意思決定が可能になると規定している[10]

これに対し、戦術レベルの指揮・統制中枢となるのが、空母艦長の指揮所である空母戦闘指揮所(CDC)であり、ここにはGCCS-MとNTDSが設置され、空母個艦の行動を指揮・統制する[10]。NTDSの後継として先進戦闘指揮システム(ACDS)の開発が試みられたものの、これは成功しなかった。その後、より包括的な統合戦闘システムとして艦艇自衛システム(SSDS Mk.2)が開発され、mod.1が本級の一部にも装備化されている[11]。空母自身のセンサーとしては、3次元レーダーとしてAN/SPS-48E、これを補完する長距離対空捜索レーダーとしてAN/SPS-49(V)5、対水上捜索レーダーとしてAN/SPS-67が搭載される[6]

航空運用機能

航空艤装

「トルーマン」の飛行甲板。
 
「ワシントン」のハンガー。

#船体に上記したとおり、本級では04甲板(レベル03の天井)が全通した飛行甲板とされており、全長332.9メートル×最大幅76.8メートル、面積にして4.5エーカー(1.8ヘクタール)を確保した。飛行甲板上にはアングルド・デッキが設定されており、長さは243メートル、船体中心線に対する角度は9度3分で、甲板長が長いことから、キティー・ホークの11度と比して小さい角度で済んでいる[3]。また7番艦以降では0.1度増した[9]

飛行甲板上の配置はキティ・ホーク以降のそれが踏襲されている。カタパルトは、飛行甲板前方に2基(第1・2)、アングルド・デッキ上にさらに2基設置されている。機種としては、キティホーク級が搭載したMk.13の改良型であるMk.13-1が採用されており、4番艦以降ではさらに改良強化されたMk.13-2に改められた。カタパルト長は94メートル、フル装備のF/A-18を2秒で265キロメートル毎時に加速させることができる。また5番艦までは航空要員が飛行甲板に体を露出させてカタパルトを操作していたのに対し、6番艦以降では、NBC防護の観点から、第1・2および第3・4カタパルトの間にそれぞれ統合カタパルト管制室(ICCS)が設置されている[3]。なお、1番艦は前級までと同じく3基のブライドル・レトリーバーを搭載して竣工したが、その後これを不要とする機体が主流となっていったため、2番艦は艦首右舷側1基のみとした。4番艦以降は全廃している。

一方、アレスティング・ワイヤー(着艦制動索)としてはMk.7-3が採用されており、105ノットで進入してくる重量22.7トン(非常時は27.2トンまで)の機体を安全に停止できる。装備要領としては、アングルド・デッキ後部に、8番艦までは4本が張られていたが、着艦精度の向上を受けて、9番艦以降では3本となった[3]。また3本目と4本目のワイヤーの間には、アレスティング・フックが故障した機体等を強制的に停止させるため、ネット状のクラッシュ・バリアー(滑走制止装置)が設置されている[6]

飛行甲板の下に1層のギャラリー・デッキをおいてハンガーが設けられている。全長208.5メートル、最大幅32.9メートルで、高さは3層分、8.1メートルである。船体長の60パーセントを占めるものの、搭載機すべてを収容する容積はなく、主として整備スペースとして用いられる。ダメージコントロールの必要上、ハンガーは2枚の防火・耐爆シャッターによって3分割することができる。また艦尾側には露天で艦上機エンジンの試運転場も設けられている[3]

飛行甲板とハンガーを連絡するエレベータとしては、右舷アイランド前方2基、後方1基、左舷後方1基の計4基装備する。これらはいずれもデッキサイド式で、寸法は25.9メートル×15.9メートル、力量58.5トンで、前級までと同じく外舷側に向けて前側半分程より広げた変形五角形となっており、主翼を折りたたんだままの艦上戦闘機2機を同時に載せて昇降することができる。このほか、兵装用のエレベータが9基設けられている[3]

また燃料・弾薬の搭載量も大幅に増強されており、最後の通常動力型空母である「ジョン・F・ケネディ」と比較すると、同艦では航空燃料(JP-5)5,919トン、航空機用武器・弾薬1,250トンを搭載していたのに対し、本級ではそれぞれ、4割増の8,205トン、倍増した2,470トンとなっている。これにより継戦能力は飛躍的に強化され、同艦では連続9日ないし11日が限界であったのに対し、本級では無補給で最大16日の作戦行動が可能となっている[12]

航空管制

多数機を同時運用することから、本級は充実した航空管制能力を備えている。

遠距離から航空機を誘導するための電波航法装置としては、AN/URN-25戦術航法装置(TACAN)が用いられる。これに基づいて艦に接近した航空機はAN/SPN-43B 航空管制用捜索レーダーにより捕捉される。これは晴天時には50海里、雨天時でも35海里の探知距離を備えており、対空捜索レーダーの補完としても用いられる。さらに接近してからは、AN/SPN-42、あるいはLPI化されたAN/SPN-46精測進入レーダーが用いられる。条件次第では自動着艦も可能であり、本級では2基が備えられていることから、同時に2機の発着艦が可能である[12]

艦上機

各種艦上機80~105機程度の搭載・運用が完成時点では想定されていた。しかし全機を格納庫に収容することはできず、一定数は露天繋止の状態であった。

冷戦終結後は艦上機の性能向上でより少ない機数でも同様の任務を遂行できるようになったこと、無理な運用の必要性が薄れたことや機種の統合整理等によって、2013年現在の標準搭載機はCTOL機56機とヘリコプター15機の計71機とされている。

空母航空団

2013年現在

  • 戦闘攻撃飛行隊×1個(12-14機)
  • 戦闘攻撃飛行隊×1個(12-14機)
    • F/A-18F
  • 海兵戦闘攻撃飛行隊×2個(20-24機)
  • 電子攻撃飛行隊×1個(4-6機)
  • 早期警戒飛行隊×1個(4-6機)
  • 艦載輸送飛行隊分遣隊×1個(1-2機)
  • 対潜ヘリコプター飛行隊×1個(6-8機)

個艦防御機能

本級の固有兵装は個艦防御用に限られる。

防空システムとしては、当初はターター・システムが検討されたものの、まもなく50口径3インチ連装両用砲Mk.56 砲射撃指揮装置の組み合わせに取って代わられた。しかし排水量制限の問題等に直面し、最終的に、シースパロー個艦防空ミサイル・システムが採用された。1~2番艦では初期型のBPDMSが採用され、発射機としては8連装のMk.25計3基を右舷前部と艦尾両舷のスポンソンにそれぞれ配置した。3番艦以降では改良型のMk.57 mod.3 IBPDMSとされて、発射機はMk.29発射機に改められており、80年代以降の改装で先の2隻も同じく更新している[6]

また近接防空用として、3~8番艦は新造時より、1~2番艦も改装によって3基ないし4基の20mmファランクスCIWSを装備した。配置箇所は右舷前部のシースパロー短SAM発射機近傍、左舷前部スポンソン、後部両舷、あるいは艦尾ジェットエンジン整備・試験スペース等である。ただし9~10番艦は装備していないほか、一部の艦では、改装時に、ファランクスCIWSやシースパロー発射機の一部を置き換え、RAM近接防空ミサイルの21連装発射機が逐次搭載されている。

対潜兵器は持たないが、一部艦では、ウェーキ・ホーミング魚雷対策としてMk.32 3連装短魚雷発射管を後部に装備している。また対魚雷のソフト・キル用としては、AN/SLQ-36ニクシー曳航式デコイが搭載される[6]

このほか、米艦コール襲撃事件のようなテロ対策として、キャット・ウォークにM2 12.7mm重機関銃を配置することがある。[脚注 5]

同型艦

建造並びに大規模改修は、アメリカでも唯一その能力を保持するニューポート・ニューズ造船所が全てを担当している。

艦番号 艦名 発注 起工 進水 就役 RCOH 母港 所在
CVN-68
[脚注 6]
ニミッツ
USS Nimitz
1967年
3月31日
1968年
6月22日
1972年
5月13日
1975年
5月3日
1998–2001 ワシントン州
エバレット
大西洋[13]
CVN-69 ドワイト・D・アイゼンハワー
USS Dwight D. Eisenhower
1970年
6月29日
1970年
8月15日
1975年
10月11日
1977年
10月18日
2001–2005 バージニア州
ノーフォーク
ノーフォーク海軍造船所で増強改修工事中[14]
CVN-70 カール・ヴィンソン
USS Carl Vinson
1974年
4月5日
1975年
10月11日
1980年
3月15日
1982年
3月13日
2005–2009 カリフォルニア州
サンディエゴ
太平洋[15]
CVN-71 セオドア・ルーズベルト
USS Theodore Roosevelt
1980年
9月30日
1981年
10月31日
1984年
10月27日
1986年
10月25日
2009–2013 バージニア州
ノーフォーク
ニューポート・ニューズ停泊中(出港待ち)[16]
CVN-72 エイブラハム・リンカーン
USS Abraham Lincoln
1982年
12月27日
1984年
11月3日
1988年
2月13日
1989年
11月11日
バージニア州
ノーフォーク
ノーフォーク停泊中(RCOH待ち)[17]
CVN-73 ジョージ・ワシントン
USS George Washington
1982年
12月27日
1986年
8月25日
1990年
7月21日
1992年
7月4日
神奈川県
横須賀海軍基地
香港寄港→
台風30号による国際支援のためフィリピンへ向け緊急航行中[18]
CVN-74 ジョン・C・ステニス
USS John C. Stennis
不明 1991年
3月13日
1993年
11月11日
1995年
12月9日
ワシントン州
ブレマートン
ブレマートン帰港[19]
CVN-75 ハリー・S・トルーマン
USS Harry S. Truman
1988年
6月30日
1993年
11月29日
1996年
9月7日
1998年
7月25日
バージニア州
ノーフォーク
第5艦隊へ派遣中
アラビア海航行中・アフガニスタン作戦支援)[20]
CVN-76 ロナルド・レーガン
USS Ronald Reagan
1994年
12月8日
1998年
2月12日
2001年
3月4日
2003年
7月12日
カリフォルニア州
サンディエゴ
サンディエゴ帰港[21]
CVN-77 ジョージ・H・W・ブッシュ
USS George H. W. Bush
2001年
1月26日
2003年
9月6日
2006年
10月9日
2009年
1月10日
バージニア州
ノーフォーク
ノーフォーク帰港[22]

特記事項

  • 8番艦『トルーマン』は、当初『ユナイテッド・ステーツ』と命名される予定だった。
  • 2008年9月より、『ワシントン』が日本横須賀基地を母港としている。同艦はアメリカ国防予算縮減の影響により、RCOHに入ることなく早期退役させる案が取りざたされている(2011年現在)。
  • 前述の通り、『ブッシュ』は以下のような種々の新機軸を採用している。当初の構想ではほぼ別級と言えるほどに艦容が変貌するはずであったが、次級フォード級の設計が比較的保守的なものに落ち着いたことや建造費抑制等の理由から、外見上は小改正に留まることとなった。
  1. ステルス・マストと一体化したアイランド(既存艦にも逐次導入中)
  2. 新型多機能レーダー・システム
  3. ボリューム探索レーダー
  4. オープン・アーキテクチャ情報ネットワーク
  5. 乗組員数の削減

登場作品

ニミッツ級は現代アメリカ海軍を象徴する、ひいては現用空母を象徴する存在であり、数多くの媒体に露出している。

映画
1980年。アメリカ海軍の全面協力の下1979年当時の「ニミッツ」がCVW-8と共に出演。
1998年。日本を襲った二体の怪獣に対応するために「エイブラハム・リンカーン」が出動し、終盤で日本近海に到着する。劇中ではニュースでその名が語られるのみで、姿は登場しない。
2001年。主人公が搭乗するF/A-18Fの母艦として「カール・ヴィンソン」が登場。
2002年。「ジョン・C・ステニス」が米・の大戦勃発の引き金として、裏切り将校の命令を受けたロシア空軍Tu-22Mから攻撃を受ける、沈没はまぬがれるが大破/飛行甲板が使用不能となる。
2005年。「エイブラハム・リンカーン」がステルス機の母艦として登場。ストーリー上では「リンカーン」だが、スケジュールの関係で後半部分は「カール・ヴィンソン」や「ニミッツ」で撮影された。
2009年。「セオドア・ルーズベルト」と「ジョン・C・ステニス」が登場。「ルーズベルト」はディセプティコンの攻撃を受け沈没。ただし沈没シーンではハルナンバーが74になっており、これは「ジョン・C・ステニス」の番号である。
2009年。エピローグにG.I.ジョーの母艦として、架空のニミッツ級空母「フラッグ」が登場。ハルナンバーは99である。
2012年。「ロナルド・レーガン」が登場。リムパック演習に各国の軍艦で構成されたリムパック艦隊の旗艦として参加。主人公のホッパー大尉の恋人の父親で艦隊司令官でもあるシェーン提督が座乗する。エイリアンのバリアによってホッパー大尉らの救援に向かえずバリアの外で待機していたが、戦艦ミズーリ」の砲撃でバリア発生装置が破壊され中に入れるようになると、すぐさま艦載機を発艦させ彼らの窮地を救った。
2013年。過去の記録映像として、怪獣「Kaiceph」の死骸を甲板上に乗せた「ジョン・C・ステニス」が登場する。
2013年。ニミッツ級をモデルとしたキャラクター「ヨーキ」が登場する。ハルナンバーは81。
小説・漫画・アニメ
1987年。ニミッツ級をモデルにした空母「アクアポリス」と「イースヨー」が登場。
1987年~。架空のニミッツ級空母「覇王(ダイナスト)」が登場。「四人姉妹」の指揮下に置かれている。
1988年~1996年。「カール・ヴィンソン」、「エイブラハム・リンカーン」、「セオドア・ルーズベルト」が登場。
1992年~1998年。米国(こめこく)海軍の「ミニッツ級空母」として登場。同型艦のうち約半数は巨大ロボット「空母マン」に変形する事が可能である。劇中にはハルナンバー88の「空母マン'88」が登場した
1995年。国連軍所属という設定のニミッツ級架空空母8番艦「オーバー・ザ・レインボウ」ほか数隻が登場する。なお「オーバー・ザ・レインボウ」の米海軍時代の名は「ユナイテッド・ステイツ」であるという設定がある。
1995年~1996年。ニミッツ級と思しき艦が、フォレスタル級などと共に国連軍特別平和維持部隊に参加している。
2002年。地球統合軍所属という設定のニミッツ級後期型架空空母「イラストリア」が第1話に登場する。
2006年~。「ジョージ・H・W・ブッシュ」が登場し、小泉ジュンイチローと金将軍の麻雀試合の舞台となる。
2009年~2013年。第二回漆黒宴の舞台として、ニミッツ級空母「ブラック」(通称「黒船」)が登場。個人のコレクションとされており、ハルナンバーは「ジョージ・ワシントン」と同じ73になっている。
2012年~2013年。サンダース大学付属高校の学園艦として、サイズを除いてニミッツ級に酷似した艦が登場する。
2013年。UDF参加艦としてオープニング等に6番艦「ジョージ・ワシントン」が登場する。
ゲーム
1984年。自機の母艦として、架空のニミッツ級4番艦「ロナルド・レーガン」(実在するロナルド・レーガンは9番艦)が登場。ハルナンバーはなぜか52となっている。
1996年。自機の母艦として、ハルナンバー79のニミッツ級架空艦(実在するCVN-79はジェラルド・R・フォード級2番艦「ジョン・F・ケネディ」)が登場する。
F』(2000年)以降に実装された空母登場マップに、ハルナンバー93のニミッツ級架空艦が登場。
2003年。「ジョージ・ワシントン」が登場する。
2004年。ニミッツ級をモデルにしたヒューバート級空母「ケストレル」が登場。同シリーズの他作品にも艦名不明のニミッツ級が登場している。

脚注

  1. ^ そのため、上段の窓は飛行甲板を見渡せる左舷側にのみ開けられている。
  2. ^ この際には2基のA4Wが集合的に捉えられていると考えられている。
  3. ^ RCOH=Refueling and Complex OverHaul(炉心交換工事)
  4. ^ 2006年以前は空母戦闘群(CVBG)と呼称されていた。
  5. ^ 員数外の装備であり、カタログデータに反映されない。
  6. ^ 1975年6月30日、原子力攻撃空母(CVAN)から原子力空母(CVN)に艦種変更された。

参考文献

  1. ^ a b 「アメリカ空母発達史 レキシントンからフォードまで」『世界の艦船』第680号、海人社、2007年10月、84-93頁。 
  2. ^ a b c d 中名生正己「究極のスーパー・キャリアー「ニミッツ」級 その誕生の経緯」『世界の艦船』第490号、海人社、1994年12月、70-73頁。 
  3. ^ a b c d e f g h 「ジョージ・ワシントンのハードウェア (極東の新戦力 米CVN「ジョージ・ワシントン」)」『世界の艦船』第699号、海人社、2008年12月、88-95頁。 
  4. ^ 「写真特集 世界の空母2013」『世界の艦船』第783号、海人社、2013年9月、21-59頁。 
  5. ^ 『アメリカ合衆国会計検査院1998年 通常動力と原子力の空母のコスト比較』
  6. ^ a b c d e f 吉原栄一「ニミッツ級のハードウェア」『世界の艦船』第490号、海人社、1994年12月、74-85頁。 
  7. ^ a b c 野木恵一「A4W原子炉の構造と安全性 (極東の新戦力 米CVN「ジョージ・ワシントン」)」『世界の艦船』第699号、海人社、2008年12月、96-99頁。 
  8. ^ アメリカ合衆国国務省 (2006年4月17日). “Fact Sheet on U.S. Nuclear Powered Warship (NPW) Safety” (PDF) (英語). 2013年11月24日閲覧。
  9. ^ a b 「世界の原子力水上艦ラインナップ (特集・原子力水上艦建造史)」『世界の艦船』第738号、海人社、2011年3月、90-99頁。 
  10. ^ a b 大熊康之「第5章 タトル提督のC4I近代化革命」『軍事システム エンジニアリング』かや書房、2006年、143-175頁。ISBN 978-4-906124-63-3 
  11. ^ 野木恵一「システムとしての艦隊防空」『世界の艦船』第662集、海人社、2006年8月、98-103頁。 
  12. ^ a b 宮本勲「「ニミッツ」級の航空部隊」『世界の艦船』第490号、海人社、1994年12月、86-93頁。 
  13. ^ [1]
  14. ^ [2]
  15. ^ [3]
  16. ^ [4]
  17. ^ [5]
  18. ^ [6]
  19. ^ [7]
  20. ^ [8]
  21. ^ [9]
  22. ^ [10]
  • 『〈新版〉アメリカ航空母艦史』(海人社
  • 『航空母艦全史』(海人社)
  • 『世界の海軍 2011-2012』(海人社)
  • 『U.S.Aircraft Carriers』(Naval Institute Press)

外部リンク

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