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[[File:Atomic Clock Resonator.jpg|thumb|240px|right|1984年から1993年まで国際原子時の校正に使われていたセシウム[[原子時計]]の共振部。[[国立科学博物館]]の展示。]] |
[[File:Atomic Clock Resonator.jpg|thumb|240px|right|1984年から1993年まで国際原子時の校正に使われていたセシウム[[原子時計]]の共振部。[[国立科学博物館]]の展示。]] |
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'''国際原子時'''(こくさいげんしじ、{{lang-fr|Temps Atomique International, '''TAI'''}}、{{lang-en|International Atomic Time, '''IAT'''}})は、[[原子時計]]によって定義される非常に高精度で安定した[[時刻系]]である。地球表面([[ジオイド]]面)上の[[座標]]時の実現と位置付けられる。 |
'''国際原子時'''(こくさいげんしじ、{{lang-fr|Temps Atomique International, '''TAI'''}}、{{lang-en|International Atomic Time, '''IAT'''}})は、[[原子時計]]によって定義される非常に高[[正確度と精度|精度]]で安定した[[時刻系]]である。地球表面([[ジオイド]]面)上の[[座標]]時の実現と位置付けられる。 |
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<!-- [[国際単位系]] (SI) では、「[[秒]]は「[[セシウム|セシウム133]]の[[原子]]の[[基底状態]]の二つの[[超微細準位]]の間の[[遷移]]に対応する[[放射]]の[[周期]]の9 192 631 770倍の継続時間である。」と[[定義]]されている<ref>[https://www.nmij.jp/library/units/si/R8/SI8J.pdf] 「国際文書第 8 版 (2006) 国際単位系 (SI) 日本語版」 2.1.1.3 時間の単位(秒) [[産業技術総合研究所|(独)産業技術総合研究所]] 計量標準総合センター訳・監修、p.23 </ref>。これが[[国際原子時]]である。 --><!-- 時間の計量単位と時刻の目盛である時刻系は異なる --> |
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==概要== |
==概要== |
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TAIは、世界50ヵ国以上に設置されている[[セシウム]]原子時計を数多く含む約300個の原子時計により維持されている、時刻の[[加重平均]]である。 |
国際原子時 (TAI) は、世界50ヵ国以上に設置されている[[セシウム]]原子時計を数多く含む約300個の原子時計により維持されている、時刻の[[加重平均]]である。現在、国際原子時 (TAI) は[[国際度量衡局]] (BIPM) が運用・管理する。 |
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TAIの定義は参加する原子時計同士の定期的な比較による較正であり、時間の遡及により最高精度が維持される。この較正は[[ナノ秒]]精度を要求する用途で用いられ、大多数の時刻サービス利用者は、複数台の原子時計で較正された時間間隔を過去に参照した原子時計から供給される、TAIのリアルタイム評価値を利用する。[[グローバル・ポジショニング・システム|GPS]]はTAIに裏付けられたリアルタイムの時刻源として広く使われている。TAIの原点は[[1958年]][[1月1日]]0時0分0秒 ([[UT2]]) = 1958年1月1日0時0分0秒 (TAI) と定義された。 |
TAIの定義は参加する[[原子時計]]同士の定期的な比較による較正であり、時間の遡及により最高精度が維持される。この較正は[[ナノ秒]]精度を要求する用途で用いられ、大多数の時刻サービス利用者は、複数台の原子時計で較正された時間間隔を過去に参照した原子時計から供給される、TAIのリアルタイム評価値を利用する。[[グローバル・ポジショニング・システム|GPS]]はTAIに裏付けられたリアルタイムの時刻源として広く使われている。TAIの原点は[[1958年]][[1月1日]]0時0分0秒 ([[世界時|UT2]]) = 1958年1月1日0時0分0秒 (TAI) と定義された。 |
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== 定義 == |
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国際原子時 (TAI) は、[[1970年]]に秒の定義に関する諮問委員会(CCDS、現CCTF)の勧告S2を[[国際度量衡委員会]] (CIPM) が採択し、次のように定義されている。 |
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{{Quotation|{{lang|fr|Le Temps atomique international est la coordonnée de repérage temporel établie par le Bureau international de l'heure sur la base des indications d'horloges atomiques fonctionnant dans divers établissements conformément à la définition de la seconde, unité de temps du Système international d'unités.}}{{Sfn|BIPM|2013}}{{Sfn|BIPM|2006|p=1|loc=英文テキストの使用における注意}}<br/> |
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訳:国際原子時(TAI)は, [[国際単位系]]における[[時間]]の[[単位]]である[[秒]]の定義に従って, いくつかの機関で運転されている[[原子時計]]の指示値に基づいて国際報時局が定める基準となる[[時刻]]の座標である.{{Sfn|BIPM|2006|p=68|loc=付録1}} |
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|CCDS、1970年(CIPM、1970年に含まれる)勧告S2|PV, '''38''', 110-111 及び ''Metrologia'', 1971, '''7''', 43}} |
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その後、[[1980年]]、TAI の定義は次のように完成された。 |
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{{Quotation|{{lang|fr|Le TAI est une échelle de temps-coordonnée définie dans un repère de référence géocentrique avec comme unité d'échelle la seconde du SI telle qu'elle est réalisée sur le géoïde en rotation.}}{{Sfn|BIPM|2013}}{{Sfn|BIPM|2006|p=1|loc=英文テキストの使用における注意}}<br/> |
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訳:TAI は, 回転する[[ジオイド]]上で実現される [[国際単位系|SI]] の秒を目盛りの単位とした, 地心座標系で定義される座標時の目盛りである.{{Sfn|BIPM|2006|p=68|loc=付録1}} |
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|CCDS の声明|''BIPM Com. Cons. Déf. Seconde'', 1980, '''9''', S 15 及び ''Metrologia'', 1981, '''17''', 70}} |
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さらに、この定義は[[1991年]]の[[国際天文学連合]] (IAU) の決議A4([[基準系|基準座標系]]部会の勧告Ⅲと勧告Ⅳ)によってさらに詳細なものとなった。 |
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「TAI は、その理想とする地球時 (TT) を実現する一つの[[時刻系]]であり、地球時とは一定の差 32.184 [[秒|s]] だけ異なっている。地球時は、四次元地心座標系の時間座標である地心座標時 (TCG) とは、一定の歩度差を持つと関係付けられている.」(Proc. 21st General Assembly of the IAU, IAU Trans., 1991. vol. XXIB, Kluwer を参照.){{Sfn|BIPM|2006|p=68|loc=付録1}}<ref>{{cite conference|author=IAU |authorlink=国際天文学連合 |date=1991 |year=1991 |title=ⅩⅪth General Assembly, Buenos Aires, Argentina, 1991 / ⅩⅪe Assemblee Buenos Aires, Argentine, 1991 |conference=IAU General Assembly |conferenceurl=http://www.iau.org/administration/meetings/ | publisher=The International Astronomical Union |location=[[パリ|Paris]] |url= http://www.iau.org/static/resolutions/IAU1991_French.pdf |format=pdf |accessdate=2014-02-02 |language=[[英語]]/[[フランス語]] |pages=14-17}}</ref> |
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== 歴史 == |
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=== 積算原子時 === |
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[[1949年]]に[[アメリカ合衆国]]の国立標準局(NBS、現[[アメリカ国立標準技術研究所|国立標準技術研究所]])で、アンモニアを用いた分子周波数標準器が組み立てられ、また[[1955年]]6月には[[イギリス]]の[[イギリス国立物理学研究所|国立物理学研究所]] (NPL) でセシウム原子周波数標準が実用化され、その後、各国のセシウム標準器も相ついで実働されるようになってきた。 |
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当時は[[クォーツ時計|水晶時計]]の原発振周波数を原子標準器で定期的に[[較正]]し、その[[偏差]]率を積分して、水晶時計を補正するという手順で行われたので、この当時の原子時は積算原子時とよばれた。 |
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この積算原子時と[[暦表時]] (ET) との比較から、1秒間におけるセシウム原子の固有振動数が {{gaps|9|192|631|770}} [[ヘルツ|Hz]] と測定され、この周波数値は第13回国際電波科学連合 (URSI) 総会(1960年)で公認された。現在の国際原子時 (TAI) は[[1958年]]1月に原点を置いているが、[[正確度と精度|精度]]は劣るものの積算原子時を1955年7月まで遡ることができる<ref>{{Cite journal|和書|author=飯島重孝 |date=1965-01-05 |year=1965 |title=最近の時間の標準について |journal=日本機械学會誌 |volume=68 |issue=552 |page=131 |publisher=[[日本機械学会]] |location=[[東京都]] |issn=0021-4728 |naid=110002463676 |id={{NCID|AN00187394}} |accessdate=2014-02-02}}{{オープンアクセス}}</ref>{{Sfn|岡崎清市|1982|pp=5-6|loc=§5,§6}}。 |
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=== 原子時 === |
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市販のセシウム[[原子時計]]が各国の[[天文台]]や標準機関に普及し、[[1958年]]には、[[世界時]] (UT) の集計を行っていた国際報時局(BIH、現[[国際地球回転・基準系事業|IERS]])がこれら原子時のデータを集計処理する責任を担うことになった。国際報時局(BIH、現IERS)の中央局があるフランスの原子標準を仲介として、各国の原子標準との比較結果を集計することにより原子時を算出するようになる。この原子時のうち、最初にイギリスの国立物理学研究所 (NPL)、[[スイス]]のニューシャテル天文台、アメリカ合衆国の国立標準局 (NBS) の3機関のセシウム標準を使って1958年1月1日0時 [[世界時|UT2]] を起算点において積算を始めた原子時系を、A.3(A{{sub|3}}とも表記する)という<ref>{{Cite journal|和書|author=虎尾正久 |date=1969-08-05 |year=1969 |title=原子時と原子時計(<小特集>計測・制御) |journal=日本機械学會誌 |volume=72 |issue=607 |pages=1088-1095 |publisher=[[日本機械学会]] |location=[[東京都]] |issn=0021-4728 |naid=110002467594 |id={{NCID|AN00187394}} |accessdate=2014-02-02}}{{オープンアクセス}}</ref>。 |
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この他に、アメリカ合衆国の数台のセシウム標準を平均した独自の時系である A1 系や、世界10個のセシウム標準の平均でつくる A9 系がある<ref>{{Cite journal|和書|author=虎尾正久 |date=1965-03-30 |year=1965 |title=時についての最近の情勢 : 国際天文連合総会に出席して |journal=日本時計学会誌 |issue=33 |page=5 |publisher=日本時計学会 |location=[[東京都]] |issn=0029-0416 |naid=110002776687 |id={{NCID|AN00195723}} |accessdate=2014-02-02}}{{オープンアクセス}}</ref>。 |
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=== 国際原子時の成立 === |
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[[1967年]]に[[プラハ]]で開催された第13回[[国際天文学連合]] (IAU) の決議(第31委員会、時)により、これまで国際報時局(BIH、現[[国際地球回転・基準系事業|IERS]])がすでに自主的に実施していた[[1958年]][[1月1日]]0時 [[世界時|UT2]] を起点とする原子時 (A.3) が、この際公式の積分時尺度として採用される事が決まり、国際報時局 (BIH、現IERS) のベルナール・ギノー局長 {{lang|fr|(Bernard Guinot)}} が希望した、A.3 から国際原子時への名称変更を満場一致で採択した<ref>{{Cite journal|和書|author=虎尾正久 |date=1967-12 |year=1967 |title=第31(時)委員会 (第13回IAU総会からの報告) |journal=天文月報 |volume=61 |issue=1 |page=9 |publisher=[[日本天文学会]] |location=東京都[[三鷹市]] |issn=0374-2466 |naid=40018111016 |id={{NCID|AN00154555}}、{{NDLJP|3304542}} |url= http://www.asj.or.jp/geppou/archive_open/1968/pdf/19680103.pdf |format=PDF |accessdate=2014-02-02}}</ref><ref>{{cite conference|author=IAU |authorlink=国際天文学連合 |date=1967 |year=1967 |title=ⅩⅢth General Assembly, Prague, Czechoslovakia, 1967 / ⅩⅢe Assemblée Générale, Prague, Tchécoslovaquie, 1967 |conference=IAU General Assembly |conferenceurl=http://www.iau.org/administration/meetings/ |publisher=The International Astronomical Union |location=[[パリ|Paris]] |url= http://www.iau.org/static/resolutions/IAU1967_French.pdf |format=pdf |accessdate=2014-02-02 |language=[[英語]]/[[フランス語]] |page=20}}</ref>。 |
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[[1970年]]に、秒の定義に関する諮問委員会(CCDS、現CCTF)の勧告S2を[[国際度量衡委員会]] (CIPM) が採択し、国際原子時 (TAI) が定義される{{Sfn|BIPM|2006|p=68|loc=付録1}}{{Sfn|BIPM|2013}}。 |
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同年、[[ブライトン]]で開催された国際天文学連合 (IAU) 第14回総会で、旧[[協定世界時]]の大幅な改善策が決議され、[[協定世界時]] (UTC) と国際原子時 (TAI) との差が整数秒であるように国際報時局(BIH、現[[国際地球回転・基準系事業|IERS]])は[[1972年]][[1月1日]]0時に特別時間調整を行い、その際秒の[[分数]]を報知するよう勧告した<ref>{{Cite journal|和書|author=弓滋 |date=1970-10 |year=1970 |title=第19(地球回転)委員会,第31(時)委員会 (IAU第14回総会(特集)) -- (第14回IAU総会からの報告) |journal=天文月報 |volume=63 |issue=11 |pages=282-284 |publisher=[[日本天文学会]] |location=東京都[[三鷹市]] |issn=0374-2466 |naid=40018111122 |id={{NCID|AN00154555}}、{{NDLJP|3304578}} |url= http://www.asj.or.jp/geppou/archive_open/1970/pdf/19701105.pdf |format=PDF |accessdate=2014-01-26}}</ref><ref>{{cite conference|author=IAU |authorlink=国際天文学連合 | date=1970 |year=1970 |title=ⅩⅣth General Assembly, Brighton, UK, 1970 / ⅩⅣe Assemblée Générale, Brighton, UK, 1970 |conference=IAU General Assembly |conferenceurl= http://www.iau.org/administration/meetings/ |publisher=The International Astronomical Union | location = [[パリ|Paris]] |url= http://www.iau.org/static/resolutions/IAU1970_French.pdf | format=pdf |accessdate=2014-01-18 |language=[[英語]]/[[フランス語]] |page=20}}</ref>。 |
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[[1971年]]の第14回[[国際度量衡総会]] (CGPM) の決議1により、国際度量衡委員会 (CIPM) に対し、国際原子時の定義を与えること、および、科学的な能力と現用の施設が関連ある国際機関と協力して、国際原子時目盛の実現のためにできるだけよく活用されるように、そして、国際原子時の利用者の需要を満たすように、必要な処置をとること、を要請した(CR, 77-78 及び ''Metrologia'', 1972, '''8''', 35) |
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{{Sfn|BIPM|2006b|p=69|loc=付録1}}<ref>{{Cite web |url= http://www.bipm.org/fr/CGPM/db/14/1/ |title=BIPM - Résolution 1 de la 14{{sup|e}} réunion de la CGPM (1971) |accessdate=2014-02-02 |author=BIPM |authorlink=国際度量衡局 |date=2014-02-02 |year=2014 |format=html |work=BIPM - CGPM |publisher=国際度量衡局 |language=[[フランス語]]}}</ref>。そして、国際度量衡委員会 (CIPM) は国際報時局(BIH、現IERS)によって決められた原子時を国際原子時 (TAI) と呼ぶことを定め、その合成を正式に国際報時局(BIH、現IERS)に委託した{{Sfn|岡崎清市|1982|p=6|loc=§6}}。 |
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=== 正確さの改善 === |
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[[1974年]]に、秒の定義に関する諮問委員会(CCDS、現CCTF)において、国際原子時 (TAI) の構成法についての研究が報告された。国際原子時 (TAI) は、[[国際単位系|SI]][[秒]]を積算した[[時刻系|時系]]であるが、これまで7機関の独立な原子時系で構成してきたが、これらの時系はいずれも商用のセシウム原子時計によるものであり、各時系の設定方法の違いや、時計の台数の違いなど問題が多かったので、国際報時局(BIH、現IERS)では、個々の原子時計のデータを数多く集め統一した処理による新しい計算法(ALGOSと命名)を開発し、[[1973年]]6月から実施しており、かなり改善する見込みであると説明された。今後はセシウム原子一次標準器による[[較正]]値を取り入れた計算法の研究促進について勧告した。また、[[LORAN|ロランC]]による原子時計の比較では、欧米と極東間など大陸間の時刻比較の[[正確度と精度|精度]]が良くないので時刻比較法の研究促進も勧告した<ref>{{Cite journal|和書|author=古賀保喜 |date=1975-03-30 |year=1975 |title=第7回 CCDS 会議に出席して |journal=日本時計学会誌 |issue=73 |pages=56-62 |publisher=日本時計学会 |location=[[東京都]] |issn=0029-0416 |naid=110002777471 |id={{NCID|AN00195723}} |accessdate=2014-02-02}}{{オープンアクセス}}</ref>。 |
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[[1978年]]には、1976年から開発中だった原子時計群のみ用いた平均原子時の計算法を用いるようになり、国際原子時 (TAI) の他に、各国の標準機関の原子時 TA(i) を決定し公表するようなる{{Sfn|情報通信研究機構|2005}}(“i” は原子時を維持する標準機関の略称で、例えば[[電波研究所]]の場合は RRL、現在の[[情報通信研究機構]]の場合は NICT)<ref>{{Cite journal|和書|author=飯島重孝 |date=1977-03-15 |year=1977 |title=IAU第16回総会に出席して |journal=日本時計学会誌 |issue=80 |pages=51-58 |publisher=日本時計学会 |location=[[東京都]] |issn=0029-0416 |naid=110002777551 |id={{NCID|AN00195723}} |accessdate=2014-01-26}}{{オープンアクセス}}</ref><ref>{{cite conference|author=IAU |authorlink=国際天文学連合 |date=1976 |year=1976 |title=ⅩⅥth General Assembly, Grenoble, France, 1976 / ⅩⅥe Assemblee Generale, Grenoble, France, 1976 |conference=IAU General Assembly |conferenceurl=http://www.iau.org/administration/meetings/ |publisher=The International Astronomical Union |location=[[パリ|Paris]] |url= http://www.iau.org/static/resolutions/IAU1976_French.pdf |format=pdf |accessdate=2014-01-18 |language=[[英語]]/[[フランス語]] |page=28}}</ref>。 |
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=== GPS衛星での時刻比較 === |
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[[1983年]]4月、[[東京天文台]]で[[GPS衛星]]を利用した時刻比較方式の定常運用が開始されたことにより、東京天文台の原子時計は欧米の原子時計と一億分の一秒の[[正確度と精度|精度]]で時計[[較正|比較]]が可能となった。これによって、[[LORAN|ロランC]]の電波で東京天文台と時計比較している[[アジア]]諸国の原子時計も、1983年後半から欧米並の精度となり国際原子時の決定に寄与できることになった。その結果、国際原子時 (TAI) は欧米だけでなくアジア諸国を含む世界中の原子標準が生成に寄与する、本格的に国際的な時系となる。これまでは、[[極東]]地域のロランC電波は欧米の機関では遠すぎて精度よく受信することができないため、欧米の原子時計とアジア諸国の原子時計とは精度のよい時計比較ができず(典型的な精度比較で、欧米内で 0.05 [[マイクロ秒]]であるのに対し、アジアと欧米の間では、0.2 マイクロ秒)、東京天文台の原子時計はパリの国際報時局(BIH、現[[国際地球回転・基準系事業|IERS]])が決めていた国際原子時を形成する[[平均]]の[[母集団]]に参加できていなかった<ref>{{Cite journal|和書|author=青木信仰 |author2=藤本眞克 |authorlink2=藤本眞克 |date=1984-01 |year=1984 |title=一億分の一秒の時計比較-国際的に結ばれた中央標凖時 |journal=天文月報 |volume=77 |issue=2 |pages=36-37 |publisher=[[日本天文学会]] |location=東京都[[三鷹市]] |issn=0374-2466 |naid=40002565686 |id={{NCID|AN00154555}} |url= http://www.asj.or.jp/geppou/archive_open/1984/pdf/19840205.pdf |format=PDF |accessdate=2013-12-29}}</ref>。 |
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さらに、[[1984年]]2月には、[[電波研究所]]でも、[[GPS衛星|汎地球測位システム (GPS) 衛星]]を利用した時刻比較受信機を開発、受信開始し、国際原子時 (TAI) への寄与するようになる{{Sfn|情報通信研究機構|2005}}。 |
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=== 国際報時局から国際度量衡局への移管 === |
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[[1985年]]に[[デリー]]で開催された[[国際天文学連合]] (IAU) 第19回総会において、決議B1号(時の責任)により、[[時刻]]の中央局である国際報時局 (BIH) を改組して、国際地球回転観測事業(IERS、現[[国際地球回転・基準系事業]])を[[1988年]]1月から発足させることになる。そして、国際報時局 (BIH) が管理していた国際原子時 (TAI) を、[[国際度量衡委員会]] (CIPM) と[[国際度量衡総会]] (CGPM) の責任の元で[[国際度量衡局]] (BIPM) に移管すること認めた<ref>{{Cite journal|和書|author=[[古在由秀]] |date=1986-02 |year=1986 |title=第XIX回 IAU総会 |journal=天文月報 |volume=79 |issue=3 |pages=71-72 |publisher=[[日本天文学会]] |location=東京都[[三鷹市]] |issn=0374-2466 |id={{NCID|AN00154555}}、{{NDLJP|3304776}} |url= http://www.asj.or.jp/geppou/archive_open/1986/pdf/19860312.pdf |format=PDF |accessdate=2014-02-01}}</ref><ref>{{cite conference|author=IAU |authorlink=国際天文学連合 |date=1985-11 |year=1985 |title=ⅩⅨth General Assembly, Delhi, India, 1985 / ⅩⅨe Assemblee Generale, Delhi, Inde,1985 |conference=IAU General Assembly |conferenceurl=http://www.iau.org/administration/meetings/ | publisher=The International Astronomical Union |location=[[パリ|Paris]] |url= http://www.iau.org/static/resolutions/IAU1985_French.pdf |format=pdf |accessdate=2014-02-01 |language=[[英語]]/[[フランス語]] |pages=3-7}}</ref>。これにより、国際原子時 (TAI) を国際度量衡局 (BIPM) が管理することになった。 |
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==協定世界時== |
==協定世界時== |
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[[協定世界時]](UTC)は世界の法的な時刻の基礎で、常にTAIと整数秒差を有する。[[UT1]]とのずれを0.9秒未満に保つために[[地球 |
[[協定世界時]](UTC)は世界の法的な[[時刻]]の基礎で、常にTAIと整数秒差を有する。[[世界時|UT1]]とのずれを0.9秒未満に保つために[[地球の自転]]速度の揺れに応じて補正される[[閏秒]]により、[[2013年]]2月現在、UTCはTAIから35秒遅れている。そのため、TAIは連続で安定した[[時刻系]]であるのに対して、[[地球の自転]]に合わせたUTCは不連続な[[時刻系]]である。[[太陽時]]の[[正午]](太陽がちょうど頭上最も高くなる時刻)が12時0分0秒であることは、[[閏秒]]補正により維持されているとも言える。UTCは不連続な時間尺度であるため、2つのUTC時刻間での正確な時間算出はその間に補正された閏秒表の参照を要し、複数年にわたる長時間の正確な測定を要する科学用途では、UTCに代わりTAIが用いられている。このため、TAIは閏秒を扱えないシステムでも広く用いられる。UT1は[[国際地球回転・基準系事業]](IERS)により計算されている。 |
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== 脚注 == |
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{{Reflist|2}} |
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== 参考文献 == |
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* {{Cite journal|和書|author=岡崎清市 |date=1982-03-25 |year=1982 |title=時の標準 (<特集>第100号) |journal=日本時計学会誌 |issue=100 |pages=2-11 |publisher=日本時計学会 |location=[[東京都]] |issn=0029-0416 |naid=110002776045 |id={{NCID|AN00195723}} |accessdate=2014-01-26 |ref=harv}}{{オープンアクセス}} |
|||
* {{Cite web |url=http://jjy.nict.go.jp/QandA/reference/chrono_table.html |title=資料室 標準電波/周波数標準/標準時 年表 |accessdate=2013-12-29 |author=情報通信研究機構 |authorlink=情報通信研究機構 |date=2005 |year=2005 |format=html |work=Q&A及び資料・データ |publisher=情報通信研究機構 |language=日本語 |ref=harv}} |
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* {{Citation|和書|author=BIPM |author-link=国際度量衡局 |year=2006 |date=2006-06 |others=訳・監修 (独)[[産業技術総合研究所]] 計量標準総合センター |title=国際文書第8版 (2006) 国際単位系(SI) 日本語版 |edition=8 |place=[[茨城県]][[つくば市]] |publisher=(独)産業技術総合研究所 計量標準総合センター |id=原書コード:ISBN 92-822-2213-6 |url= https://www.nmij.jp/library/units/si/R8/SI8J.pdf |format=pdf |accessdate=2014-01-30 |ref=harv}} |
|||
* {{Cite web |url= http://www.bipm.org/en/committees/cc/cctf/ccds-1970_fr.html |title=BIPM - CCDS 1970 |accessdate=2014-02-02 |author=BIPM |authorlink=国際度量衡局 |date=2013-09-18 |year=2013 |format=html |work=BIPM - CCTF |publisher=国際度量衡局 |language=[[フランス語]] |ref=harv}} |
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==関連項目== |
==関連項目== |
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* [[閏秒]] |
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* [[原子時計]] |
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* [[太陽時]] |
* [[太陽時]] |
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* [[協定世界時]] |
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{{Time topics}} |
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{{Time measurement and standards}} |
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[[Category:時間|こくさい |
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2014年2月2日 (日) 14:23時点における版
国際原子時(こくさいげんしじ、フランス語: Temps Atomique International, TAI、英語: International Atomic Time, IAT)は、原子時計によって定義される非常に高精度で安定した時刻系である。地球表面(ジオイド面)上の座標時の実現と位置付けられる。
概要
国際原子時 (TAI) は、世界50ヵ国以上に設置されているセシウム原子時計を数多く含む約300個の原子時計により維持されている、時刻の加重平均である。現在、国際原子時 (TAI) は国際度量衡局 (BIPM) が運用・管理する。
TAIの定義は参加する原子時計同士の定期的な比較による較正であり、時間の遡及により最高精度が維持される。この較正はナノ秒精度を要求する用途で用いられ、大多数の時刻サービス利用者は、複数台の原子時計で較正された時間間隔を過去に参照した原子時計から供給される、TAIのリアルタイム評価値を利用する。GPSはTAIに裏付けられたリアルタイムの時刻源として広く使われている。TAIの原点は1958年1月1日0時0分0秒 (UT2) = 1958年1月1日0時0分0秒 (TAI) と定義された。
定義
国際原子時 (TAI) は、1970年に秒の定義に関する諮問委員会(CCDS、現CCTF)の勧告S2を国際度量衡委員会 (CIPM) が採択し、次のように定義されている。
Le Temps atomique international est la coordonnée de repérage temporel établie par le Bureau international de l'heure sur la base des indications d'horloges atomiques fonctionnant dans divers établissements conformément à la définition de la seconde, unité de temps du Système international d'unités.[1][2]
訳:国際原子時(TAI)は, 国際単位系における時間の単位である秒の定義に従って, いくつかの機関で運転されている原子時計の指示値に基づいて国際報時局が定める基準となる時刻の座標である.[3]
— CCDS、1970年(CIPM、1970年に含まれる)勧告S2、PV, 38, 110-111 及び Metrologia, 1971, 7, 43
その後、1980年、TAI の定義は次のように完成された。
Le TAI est une échelle de temps-coordonnée définie dans un repère de référence géocentrique avec comme unité d'échelle la seconde du SI telle qu'elle est réalisée sur le géoïde en rotation.[1][2]
訳:TAI は, 回転するジオイド上で実現される SI の秒を目盛りの単位とした, 地心座標系で定義される座標時の目盛りである.[3]
— CCDS の声明、BIPM Com. Cons. Déf. Seconde, 1980, 9, S 15 及び Metrologia, 1981, 17, 70
さらに、この定義は1991年の国際天文学連合 (IAU) の決議A4(基準座標系部会の勧告Ⅲと勧告Ⅳ)によってさらに詳細なものとなった。 「TAI は、その理想とする地球時 (TT) を実現する一つの時刻系であり、地球時とは一定の差 32.184 s だけ異なっている。地球時は、四次元地心座標系の時間座標である地心座標時 (TCG) とは、一定の歩度差を持つと関係付けられている.」(Proc. 21st General Assembly of the IAU, IAU Trans., 1991. vol. XXIB, Kluwer を参照.)[3][4]
歴史
積算原子時
1949年にアメリカ合衆国の国立標準局(NBS、現国立標準技術研究所)で、アンモニアを用いた分子周波数標準器が組み立てられ、また1955年6月にはイギリスの国立物理学研究所 (NPL) でセシウム原子周波数標準が実用化され、その後、各国のセシウム標準器も相ついで実働されるようになってきた。 当時は水晶時計の原発振周波数を原子標準器で定期的に較正し、その偏差率を積分して、水晶時計を補正するという手順で行われたので、この当時の原子時は積算原子時とよばれた。 この積算原子時と暦表時 (ET) との比較から、1秒間におけるセシウム原子の固有振動数が 9192631770 Hz と測定され、この周波数値は第13回国際電波科学連合 (URSI) 総会(1960年)で公認された。現在の国際原子時 (TAI) は1958年1月に原点を置いているが、精度は劣るものの積算原子時を1955年7月まで遡ることができる[5][6]。
原子時
市販のセシウム原子時計が各国の天文台や標準機関に普及し、1958年には、世界時 (UT) の集計を行っていた国際報時局(BIH、現IERS)がこれら原子時のデータを集計処理する責任を担うことになった。国際報時局(BIH、現IERS)の中央局があるフランスの原子標準を仲介として、各国の原子標準との比較結果を集計することにより原子時を算出するようになる。この原子時のうち、最初にイギリスの国立物理学研究所 (NPL)、スイスのニューシャテル天文台、アメリカ合衆国の国立標準局 (NBS) の3機関のセシウム標準を使って1958年1月1日0時 UT2 を起算点において積算を始めた原子時系を、A.3(A3とも表記する)という[7]。 この他に、アメリカ合衆国の数台のセシウム標準を平均した独自の時系である A1 系や、世界10個のセシウム標準の平均でつくる A9 系がある[8]。
国際原子時の成立
1967年にプラハで開催された第13回国際天文学連合 (IAU) の決議(第31委員会、時)により、これまで国際報時局(BIH、現IERS)がすでに自主的に実施していた1958年1月1日0時 UT2 を起点とする原子時 (A.3) が、この際公式の積分時尺度として採用される事が決まり、国際報時局 (BIH、現IERS) のベルナール・ギノー局長 (Bernard Guinot) が希望した、A.3 から国際原子時への名称変更を満場一致で採択した[9][10]。
1970年に、秒の定義に関する諮問委員会(CCDS、現CCTF)の勧告S2を国際度量衡委員会 (CIPM) が採択し、国際原子時 (TAI) が定義される[3][1]。 同年、ブライトンで開催された国際天文学連合 (IAU) 第14回総会で、旧協定世界時の大幅な改善策が決議され、協定世界時 (UTC) と国際原子時 (TAI) との差が整数秒であるように国際報時局(BIH、現IERS)は1972年1月1日0時に特別時間調整を行い、その際秒の分数を報知するよう勧告した[11][12]。
1971年の第14回国際度量衡総会 (CGPM) の決議1により、国際度量衡委員会 (CIPM) に対し、国際原子時の定義を与えること、および、科学的な能力と現用の施設が関連ある国際機関と協力して、国際原子時目盛の実現のためにできるだけよく活用されるように、そして、国際原子時の利用者の需要を満たすように、必要な処置をとること、を要請した(CR, 77-78 及び Metrologia, 1972, 8, 35) [13][14]。そして、国際度量衡委員会 (CIPM) は国際報時局(BIH、現IERS)によって決められた原子時を国際原子時 (TAI) と呼ぶことを定め、その合成を正式に国際報時局(BIH、現IERS)に委託した[15]。
正確さの改善
1974年に、秒の定義に関する諮問委員会(CCDS、現CCTF)において、国際原子時 (TAI) の構成法についての研究が報告された。国際原子時 (TAI) は、SI秒を積算した時系であるが、これまで7機関の独立な原子時系で構成してきたが、これらの時系はいずれも商用のセシウム原子時計によるものであり、各時系の設定方法の違いや、時計の台数の違いなど問題が多かったので、国際報時局(BIH、現IERS)では、個々の原子時計のデータを数多く集め統一した処理による新しい計算法(ALGOSと命名)を開発し、1973年6月から実施しており、かなり改善する見込みであると説明された。今後はセシウム原子一次標準器による較正値を取り入れた計算法の研究促進について勧告した。また、ロランCによる原子時計の比較では、欧米と極東間など大陸間の時刻比較の精度が良くないので時刻比較法の研究促進も勧告した[16]。
1978年には、1976年から開発中だった原子時計群のみ用いた平均原子時の計算法を用いるようになり、国際原子時 (TAI) の他に、各国の標準機関の原子時 TA(i) を決定し公表するようなる[17](“i” は原子時を維持する標準機関の略称で、例えば電波研究所の場合は RRL、現在の情報通信研究機構の場合は NICT)[18][19]。
GPS衛星での時刻比較
1983年4月、東京天文台でGPS衛星を利用した時刻比較方式の定常運用が開始されたことにより、東京天文台の原子時計は欧米の原子時計と一億分の一秒の精度で時計比較が可能となった。これによって、ロランCの電波で東京天文台と時計比較しているアジア諸国の原子時計も、1983年後半から欧米並の精度となり国際原子時の決定に寄与できることになった。その結果、国際原子時 (TAI) は欧米だけでなくアジア諸国を含む世界中の原子標準が生成に寄与する、本格的に国際的な時系となる。これまでは、極東地域のロランC電波は欧米の機関では遠すぎて精度よく受信することができないため、欧米の原子時計とアジア諸国の原子時計とは精度のよい時計比較ができず(典型的な精度比較で、欧米内で 0.05 マイクロ秒であるのに対し、アジアと欧米の間では、0.2 マイクロ秒)、東京天文台の原子時計はパリの国際報時局(BIH、現IERS)が決めていた国際原子時を形成する平均の母集団に参加できていなかった[20]。 さらに、1984年2月には、電波研究所でも、汎地球測位システム (GPS) 衛星を利用した時刻比較受信機を開発、受信開始し、国際原子時 (TAI) への寄与するようになる[17]。
国際報時局から国際度量衡局への移管
1985年にデリーで開催された国際天文学連合 (IAU) 第19回総会において、決議B1号(時の責任)により、時刻の中央局である国際報時局 (BIH) を改組して、国際地球回転観測事業(IERS、現国際地球回転・基準系事業)を1988年1月から発足させることになる。そして、国際報時局 (BIH) が管理していた国際原子時 (TAI) を、国際度量衡委員会 (CIPM) と国際度量衡総会 (CGPM) の責任の元で国際度量衡局 (BIPM) に移管すること認めた[21][22]。これにより、国際原子時 (TAI) を国際度量衡局 (BIPM) が管理することになった。
協定世界時
協定世界時(UTC)は世界の法的な時刻の基礎で、常にTAIと整数秒差を有する。UT1とのずれを0.9秒未満に保つために地球の自転速度の揺れに応じて補正される閏秒により、2013年2月現在、UTCはTAIから35秒遅れている。そのため、TAIは連続で安定した時刻系であるのに対して、地球の自転に合わせたUTCは不連続な時刻系である。太陽時の正午(太陽がちょうど頭上最も高くなる時刻)が12時0分0秒であることは、閏秒補正により維持されているとも言える。UTCは不連続な時間尺度であるため、2つのUTC時刻間での正確な時間算出はその間に補正された閏秒表の参照を要し、複数年にわたる長時間の正確な測定を要する科学用途では、UTCに代わりTAIが用いられている。このため、TAIは閏秒を扱えないシステムでも広く用いられる。UT1は国際地球回転・基準系事業(IERS)により計算されている。
脚注
- ^ a b c BIPM 2013.
- ^ a b BIPM 2006, p. 1, 英文テキストの使用における注意.
- ^ a b c d BIPM 2006, p. 68, 付録1.
- ^ IAU (1991). ⅩⅪth General Assembly, Buenos Aires, Argentina, 1991 / ⅩⅪe Assemblee Buenos Aires, Argentine, 1991 (pdf). IAU General Assembly (英語/フランス語). Paris: The International Astronomical Union. pp. 14–17. 2014年2月2日閲覧。
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参考文献
- 岡崎清市「時の標準 (<特集>第100号)」『日本時計学会誌』第100号、日本時計学会、東京都、1982年3月25日、2-11頁、ISSN 0029-0416、NAID 110002776045、NCID AN00195723、2014年1月26日閲覧。
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- BIPM『国際文書第8版 (2006) 国際単位系(SI) 日本語版』(pdf)訳・監修 (独)産業技術総合研究所 計量標準総合センター(8版)、(独)産業技術総合研究所 計量標準総合センター、茨城県つくば市、2006年6月。原書コード:ISBN 92-822-2213-6 。2014年1月30日閲覧。
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