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「炎上 (ネット用語)」の版間の差分

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'''炎上'''(えんじょう)とは、[[インターネット]]上のコメント欄などにおいて、稚拙な批判や[[誹謗中傷]]などを含む投稿が集中することをいう{{sfn|田中|山口|2016|p=5}}<ref>{{Cite web|和書|title=炎上とは|url=https://kotobank.jp/word/%E7%82%8E%E4%B8%8A-447739|website=コトバンク|accessdate=2021-08-19|language=ja|last=日本大百科全書(ニッポニカ),デジタル大辞泉,デジタル大辞泉プラス,IT用語がわかる辞典}}</ref>。炎上による損害は、心理的、経済的なものが発生している{{sfn|田中|山口|2016|pp=12-13}}。
'''炎上'''(えんじょう)とは、サイト管理者の意図する範囲を大幅に超え、非難・批判のコメントやトラックバックが殺到することである(意図したものは「釣り」と呼ばれる)<ref>「学びとコンピューターハンドブック」(東京電機大学出版 CIEC編集 68P~72P)</ref>。


== 概説 ==
== 概説 ==
[[ブログ]]や[[ソーシャル・ネットワーキング・サービス]](SNS)内の日記は、別途設定をしない限り、誰でもコメント欄にメッセージを残すことが出来。ブログ執筆者の発言や行動に反応多数の閲覧者がコメントを集中的に寄せる状態を炎上と表現する。こ場合コメントには当該発言に対す否定的な意見や、発言無関係中傷を包含すものが多い
[[ブログ]]や[[ソーシャル・ネットワーキング・サービス|SNS]]内の[[日記]]は、非公開やコメント禁止といった設定を別途しない限り、誰でもコメント欄にメッセージを残すことができ(ただし、[[スクリーショッ]]撮影は禁止できないため当該の投稿は[[スクリーショッ]]ことになる


ブログ執筆者の言動に反応し、多数の閲覧者がコメントを集中的に寄せる状態を「炎上」と表現する。このとき、コメントにはサイト管理者側の立場に対する賛否の両方が含まれていたとしても、'''「否定的な意見」の方をより多く包含するものを炎上'''とし、応援などの「肯定的な投稿」だけが殺到するものは普通は炎上とは呼ばず<ref>「ネット公共圏と炎上をめぐる問題」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』238頁</ref>、[[対義語]]と言える'''[[バズ]]る'''が用いられることが多い<ref>{{Cite web|和書|url=https://kotobank.jp/word/%E3%83%90%E3%82%BA%E3%82%8B-1711623|title=バズる(バズル)とは|work=[[コトバンク]]|accessdate=2017-10-26}}</ref>。[[憲法学者]][[キャス・サンスティーン]]は、個人がインターネット上で自分自身の欲望の赴くままに振る舞った結果、極端な行動や主張に行き着いてしまうという現象を[[サイバーカスケード]]と呼んでおり、炎上もこの現れの一種といえる<ref>『ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性』34-36頁</ref>。
元々は、[[ネットニュース]](ニュースグループ)において、意見の対立が次第に感情的な人格批判の応酬になって行く様子を『[[電子掲示板#フレーム|フレーミング]]』と呼んでいたことに由来しており、この用語は[[ネチケット#外部リンク|RFC1855]]にも記載されている。[[弁護士]]の[[小倉秀夫]]は、掲示板上で投稿が殺到することをフレーミング・炎上と呼び、ブログ上でコメントが殺到することを'''コメントスクラム'''と呼ぶという使い分けをしている<ref>[[東浩紀]]・[[濱野智史]]編「ネット公共圏と炎上をめぐる問題」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』 [[河出書房新社]]、2010年、245頁。ISBN 978-4309244426。</ref><ref>{{Cite web|author=小倉秀夫|date=2005-04-16|url=http://blog.goo.ne.jp/hwj-ogura/e/139029576ec710c254ea080315dbbdf2|title=コメントスクラムについて|work=小倉秀夫の「IT法のTop Front」|publisher=Wired Vision|accessdate=2008-12-27}}</ref>。


国内外に関係なく、炎上と同様の事象が発生している。英語圏では''Flare''と呼ばれ、炎が燃える様子を表す用語が用いられるなど、日本と共通している<ref>『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』84頁</ref>。[[弁護士]]の[[小倉秀夫]]は、掲示板上で投稿が殺到することを[[電子掲示板#炎上|フレーミング]]・炎上、ブログ上でコメントが殺到することを'''コメントスクラム'''と2つに分類している<ref>「ネット公共圏と炎上をめぐる問題」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』245頁</ref><ref>{{Cite web|和書|author=小倉秀夫|date=2005-04-16|url=http://blog.goo.ne.jp/hwj-ogura/e/139029576ec710c254ea080315dbbdf2|title=コメントスクラムについて|work=小倉秀夫の「IT法のTop Front」|publisher=Wired Vision|accessdate=2008-12-27}}</ref>。外部サイトである掲示板のコメントとブログのコメント欄のコメントを比較すると、前者は批判の対象となっている者が比較的無視しやすいのに対し、後者では私的領域にまで踏み込まれている印象を受けるため、無視するのが心理的に難しいという違いがある<ref>「ネット公共圏と炎上をめぐる問題」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』245-246頁</ref>。
なお、議論は全くなく、無意味な書き込みや煽り文句ばかりの状態は『荒らされる』と表現される。これは例えば、有名人が逮捕されたときや、有名でなくとも世間を震撼とさせる凶悪事件の被疑者主催のブログが明らかになったときに、『逮捕記念』などのコメントが殺到した場合をいう。また、[[インターネット掲示板]]や[[チャット]]に、趣旨と関係のない書き込みや批判、誹謗中傷が多数寄せられ機能不全に陥ることも『[[荒らし|荒らされる]]』という。炎上しているブログが便乗・愉快犯によって『荒らされる』ことも多々見受けられる。


;非実在型炎上
[[ゼロ年代]]末からは1回の投稿につき140字までという制限のある[[ミニブログ]]である[[Twitter]]が台頭しているが、ブログでみられるような炎上現象はそこではあまり観測されない。その理由として、ある特定の利用者に対する他の利用者たちの反応を確認するには通常のタイムラインではなく検索機能を使用する必要があるため炎上に近い現象が起こってもそのことに気づきにくいこと、また各ツイートは(記録としては保存されているとはいえ)時間がたてば流れて消えていくという感覚を強調した設計になっていることが考えられる。<ref>「ポストised、変化したことは何か1」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』472頁。</ref>
:実際は炎上していないのに、話題を作りたいメディアによって炎上があるように報道される場合を非実在型炎上という<ref>[https://toyokeizai.net/articles/-/409471 ネット炎上「少数の意見」が社会の声に見える訳] 東洋経済</ref><ref>[https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00613/00001/ 2021年のネット炎上件数は20年比25%増、企業はどう向き合う?] 日経クロストレンド</ref>。


== 原因 ==
== 認知と状況 ==
インターネット普及期の[[1980年代]]に、[[社会心理学]]では{{仮リンク|対面 (哲学)|en|Face-to-face (philosophy)|label=対面}}場面と[[コンピュータを介したコミュニケーション]]場面の差異に着目したCMC(computer-mediated communication)研究が始まった。炎上現象はCMC研究の初期の段階で観察されている<ref name="Igarasi">五十嵐祐 吉田俊和、橋本剛、小川一美(編)「メディアコミュニケーションの普及は、私たちに何をもたらしたか?」『対人関係の社会心理学』ナカニシヤ出版 2012 ISBN 9784779506932 pp.193-197.</ref>。実名主義のSNS以前のコンピュータを介したコミュニケーションをもっとも特徴づけていたものは利用者の[[匿名|匿名性]]であり、CMC研究では匿名性が集団に及ぼす影響についてさまざまな側面で研究が行われた。
[[コンピュータ利用教育学会]](CIEC、シーク)によれば以下の5つが主原因とされている<ref>学びとコンピューターハンドブック(東京電機大学出版)、68P~72P</ref>。
=== 反社会的な記事・言動 ===
SNS日記や簡易ブログは未成年の利用も多いため、飲酒や喫煙に関しての日記が第三者に発見され、[[2ちゃんねる]]などに晒されることで炎上につながる。また、自身の犯罪行為、反道徳的行動の自慢や、他人の犯罪行為の擁護・社会的弱者の悪口など、反道徳的に受け取れる発言も炎上の原因となる。


「炎上」は、野球において「打者から猛攻され、投手が大量に失点した状態」のことを「炎上」と表現することが、インターネット掲示板「2ちゃんねる」の野球板で2001年に用いられたことが、インターネット上で用いられた現存最古の記録として残っている<ref name=":1">{{Cite web|和書|title=山本一郎が”炎上”の一般化に寄与…「朝日記者ブログへの批判殺到」現象を”野球用語”で表現し定着した |url=https://mag.minkabu.jp/mag-sogo/251785412404/ |website=みんかぶ(マガジン) |date=2023-01-27 |access-date=2023-01-27 |language=ja |publisher=株式会社ミンカブ・インフォノイド}}</ref>。
テレビやラジオの番組で非常識なコメントや視聴者を不快にさせる言動があった場合も炎上の原因になる。


日本では、炎上はブログが一般に認知され始めた2004年ごろから発生するようになった。自身もブログ炎上経験を持つウェブコンサルタントの[[伊地知晋一]]は「最初に世間の耳目を集めたのは、2004年10月18日、「弁護士紀藤正樹のLINC TOPNEWS-BLOG版」と言うブログが「楽天 三木谷浩史の嘘」と言う記事を掲載したのをきっかけに発生した炎上騒ぎ」としている<ref name="net">『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』47頁</ref>。2005年1月ごろに『[[朝日新聞]]』記者がブログで「[[イラク日本人人質事件]]」について人質事件直前に起きていた「[[スマトラ島沖地震 (2004年)|スマトラ沖地震]]」を引き合いに出し、「津波の被災者とイラクの被害者は、本質的に違わない」と述べた意見が炎上した際、それに言及した[[山本一郎 (実業家)|山本一郎]]のブログで「炎上」という語が使用されており<ref name=":1" />、小倉秀夫がコメントスクラムと呼んでいたものが炎上と呼ばれるようになっていった<ref>『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』25-26頁</ref>。一般人の投稿による初の炎上と見られる事案は、2005年8月に[[コミックマーケット]]会場付近に出店していた飲食店の従業員がイベントの来場者を誹謗中傷したものとされる<ref name=":0">{{Cite journal|author=平井智尚|year=2012|title=なぜウェブで炎上が発生するのか ―日本のウェブ文化を手がかりとして|journal=情報処理学会誌|volume=|issue=29|page=62}}</ref>。2009年には芸能人のブログのコメント欄に中傷や脅迫の書き込みを行ったものが名誉棄損や脅迫の容疑で書類送検される事件が報道で大きく取り上げられ、社会問題として認識されるようになった<ref name=":0" />。
=== 間違った知識 ===
法律や科学知識、または社会問題の原因に関して、間違った知識を根拠に他者を批判すると炎上の原因となる。特に有名人・知識人などが間違うと揚げ足取り的な炎上が起こる。


上述の[[伊地知晋一]]によれば、炎上の発生件数は調査方法が確立されていないため、正確には不明であるとしながらも、おおよそ年間60 - 70件程度と述べている<ref name="net" />。また、炎上の発生から終息までの期間は、2週間から6か月程度であるという<ref>『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』28頁</ref>。ネット上では炎上中のブログを探して楽しむ「炎上ウォッチャー」と呼ばれる人がおり、炎上中のブログをまとめたウェブサイトも存在する<ref>『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』136頁</ref>。外部リンクも参照。
=== 主義の対立 ===
[[主義]]・[[イデオロギー]]上の対立から、炎上にいたる場合もある。政治的社会的に対立が鮮明なイシューについて、ある一方の立場からの発言をすると、その反対の立場の者から火がつく。対象者は政治家や弁護士、市民団体など、それなりに社会的地位があることが多い。特定の立場からの否定的コメントが一度に多数投稿される事例も後を立たない。


なお、企業や個人などが発言した内容や行為に対する投稿がソーシャルメディアを中心とするメディア上で100件以上存在する場合を炎上と定義した場合、2022年時点での炎上発生件数は1,570件とされている<ref>[https://www.siemple.co.jp/document/hakusho2023/?_ebx=1cbo2iul6r.1683671783.7qg5apx デジタル・クライシス白書2023]</ref>。
=== 提灯記事([[ステルスマーケティング]]) ===
企業などから金品を受け取り、指定商品の広告記事を書くことに関して、広告であることを明示しないと炎上が起こる場合がある。これは米国でもFlog(Fake blog)と呼ばれ、問題とされている。


[[Twitter]]上でも失言、なりすましなどに起因する炎上騒ぎが発生している<ref>『ソーシャルメディア炎上事件簿』18頁・60頁など</ref>。ただ、Twitter上で特定個人への批判が殺到するような事例は、ブログや掲示板が舞台となる場合と比べると、炎上が起こっているということが閲覧者にとって直感的に把握できない造りになっている。Twitterの仕様上、当事者がつぶやく(記事投稿する)ごとに投稿が順次積み重ねられることで、過去の投稿を見つけにくいことが理由とされる。個別に参照するにしても検索機能を逐一利用する必要が生じるため<ref>「ポストised、変化したことは何か1」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』472頁</ref>、見方を変えれば炎上を抑制する方向に設計された[[アーキテクチャ]]であるともいえる<ref>「ポストised、変化したことは何か1」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』474頁</ref>。
=== 身分を隠して自組織の擁護 ===
上記提灯記事に類するが、企業や組織に所属する者がその企業や組織を擁護する記事を身分を隠して第三者を装って書いた場合に炎上する。例として、新聞社の記者が第三者を装い、自社の記事を攻撃した者を非難した際に、ドメインの登録名から身分が判明し、炎上した例がある。


炎上を「現代版の災難」ととらえ、炎上の原因となった画像や発信などの情報を[[供養]]する[[住職]]もいる<ref>[https://www.asahi.com/articles/ASM1J75PRM1JUOHB01K.html SNS炎上、供養します 住職も批判経験「仏教の大義」] - [[朝日新聞]]</ref>。
=== その他 ===
単純な揚げ足取りから盛り上がって炎上する場合もある。ただ、それなりの訪問者がいるブログでもない限り起こりにくい。


== 炎上の実例 ==
== 特徴 ==
炎上のほとんどは、リンクされた引用元の記事をきちんと読まずに「歪曲されたタイトルだけ読んでコメント」という[[脊髄反射]]的かつ感情的な投稿の連鎖によって起き、全国の普通の人も参加して延焼する構図になっている。そのため、[[アメリカ]]の調査でも[[Twitter]]、[[Facebook]]など[[ソーシャル・ネットワーキング・サービス]](SNS)利用者がタイトルだけを見て、リツイートなど拡散・コメント投稿をする者が約60%を超えており、総務省は国民の情報リテラシーの向上を訴えている<ref>{{Cite web|和書|url = https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/html/nc143120.html|title = (2) インターネットリテラシーの重要性|website = www.soumu.go.jp/|publisher = www.soumu.go.jp/|date = |accessdate = 2020-10-20}}</ref>。
===芸人名誉毀損一斉検挙事件===
[[2009年]][[2月5日]]、[[警視庁]]は、“[[スマイリーキクチ]]が[[女子高生コンクリート詰め殺人事件]]に関与した”という前提でブログのコメント欄に誹謗中傷する書き込みをした18人の男女を[[名誉毀損]]被疑で[[書類送検]]し、それとは別に脅迫を行った1名を[[脅迫]]被疑で書類送検し、最終的にはその多くが不起訴となった。


[[日本]]でも『[[虚構新聞]]』の[[ジョーク]]記事などをタイトルを見ただけで事実と信じて拡散したり、SNSなどインターネット上で、リンク先の元記事を読まずに情報源(ソース)の内容・正確性を確認しなかったりする人が多いことが問題になっている。さらに、記事の中身には違うことを誤解・[[ミスリード]]を助長する[[炎上タイトル]]で、記事で受け答えしていた発言者の発言内容が歪曲されたことで炎上が起きることもある。このため、アクセス数稼ぎなどの理由で釣りや煽りを狙ったタイトルをつけるマスメディアに対しても批判の声がある<ref>[https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/366022e388030e6b72772190e3a73259107b19c0]</ref><ref>『効果がすぐ出る[[検索エンジン最適化|SEO]]事典』岡崎良徳 2016年1月28日</ref><ref>[https://www.j-cast.com/2016/06/27270820.html]</ref>。
スマイリーキクチや所属事務所は事件とは無関係であり事実無根であると一部のネットにて表明し、[[刑事告訴]]を明言していたとしている。書き込んだ者たちは[[噂]]を真に受けていたとみられるが、書籍などでスマイリーキクチのかかわりを匂わす物もある<ref>[[北芝健]]「治安崩壊」p71、その他</ref>。


また[[文化庁]]が発表した平成28年度(2016年度)版『[[国語]]に関する[[世論調査]]』で、ネット炎上に参加する意志があるのは2.8%という結果であった<ref>[https://www.huffingtonpost.jp/entry/flaming_jp_5c5a9864e4b0de0c47e452a0 ネット炎上、参加者わずか2.8% それなのに拡散するのはなぜ?]</ref>。
警察の検挙を受け、スマイリーキクチは「10年間もの間、事実無根の噂で誹謗・中傷を受けた。家族や友人に被害を受けるのではと思い被害届を出した<ref>{{cite news
|url=http://www.sponichi.co.jp/entertainment/flash/KFullFlash20090205099.html
|title=ブログ炎上事件でスマイリー「被害に遭ったのは自分」
|publisher=[[スポーツニッポン]]
|date=2009-02-05
|accessdate=2009-02-06
}}</ref>。今後はこのようなことが無いようにしてほしい<ref>{{cite news
|url=http://www.sanspo.com/geino/news/090205/gnj0902052217017-n1.htm
|title=スマイリーキクチのブログ「炎上」で立件
|publisher=[[サンケイスポーツ]]
|date=2009-02-05
|accessdate=2009-02-06
}}</ref>」とコメントした。


[[田代光輝]]は炎上を「サイト管理者の想定を大幅に超え、非難・批判・誹謗・中傷などのコメントや[[トラックバック]]が殺到することである(サイト管理者や利用者が企図したものは「釣り」と呼ばれる)」と定義している<ref>「ブログ炎上」『学びとコンピュータハンドブック』68-72頁</ref>。
ブログ炎上で一斉検挙となった初のケースである。


===その他の「炎上事例===
== 炎上の経過 ==
炎上の発生から激化までの過程には、[[藤代裕之]]は、巨大な[[電子掲示板]]サイトや[[ニュースサイト]]などが一役買っていることが多いとして、これらを[[ミドルメディア]]と名付けた。
*[[AKB48]]のメンバー[[大島麻衣]]が、2008年1月14日放送の日本テレビ系『[[オジサンズイレブン]]』で、「オジサンにミニスカートから出ている足を見られただけでチカンと思う」と発言。放送後、大島のブログに「自分から見せといて痴漢呼ばわりか」などと批判する書き込みが殺到して炎上した。この件について大島はブログで謝罪した<ref>[http://www.j-cast.com/2008/01/16015650.html?p=all 「足を見るオジサンはチカン」 アイドル「AKB48」大島ブログが大炎上][[ジェイ・キャスト]]2008年1月16日</ref>([[爆笑問題]]がこの炎上を書籍や漫才のネタにしている)。

*[[サイバーエージェント]]が2009年5月13日水曜日に女性の[[婚活]]をサポートするために始めたモバイルサイト『[[男の子牧場]]』は、サービスの開始直後から[[個人情報]]の侵害などを指摘され、同社の広報担当者のブログが炎上する事態となった<ref>[http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0905/15/news097.html ITmedia News 「男の子牧場」炎上、「牧場メーカー」「女の子牧場」などパロディサイト乱立 2009年5月15日]</ref><ref>[http://www.zakzak.co.jp/top/200905/t2009051601_all.html ZAKZAK - 男性を家畜扱い「男の子牧場」開始2日で存亡の危機 2009/05/16]</ref>。同社は直ちに「男の子牧場」のサービスを見直した。週明けの2009年5月18日(月)に新規会員登録を停止し、その翌日の2009年5月19日火曜日にサービスを停止した<ref name="CyperAgent20090518">[http://www.cyberagent.co.jp/news/press/2009/0518_1.html CyberAgentプレスリリース2009年05月18日 「男の子牧場」のサービス停止について] 2009年5月21日閲覧</ref><ref name="sankei20090518">[http://sankei.jp.msn.com/economy/it/090518/its0905182006001-n1.htm 「男の子牧場」サービス停止 家畜扱い批判受け - 産経ニュース 2009.5.18 19:57] 2009年5月23日閲覧。</ref>。同社は「サービスを再開する予定はない」としているとのこと(産経新聞の報道<ref name="sankei20090518" />)。同社のプレスリリースには「ご提供頂きました登録情報、および男性プロフィール情報につきましては、当社で責任をもって廃棄させて頂きます」と明言されている<ref name="CyperAgent20090518" /><ref name="sankei20090518" />。
前者の電子掲示板では、ブログやSNSなどに書き込みが集まる中で大型掲示板に記事を投稿し、さらに多くの人の書き込みがそのブログやSNSなどに集中する。後者のニュースサイトでは、ブログやSNSなどで起こった小規模な炎上が、ネット上のさまざまな出来事を紹介する中規模なニュースサイトに掲載されて炎上が加速し、さらに大手メディアで紹介されることにより炎上の被害が拡大していく。たとえば、[[J-CASTニュース]]は、ネット上の炎上事件を積極的に取り上げることから「炎上メディア」と呼ばれることがある<ref>[[蜷川真夫]] 『ネットの炎上力』 [[文藝春秋]]、2010年、128頁 ISBN 978-4166607396</ref>。この他、[[探偵ファイル]]、[[ガジェット通信]]、[[Narinari.com]]、[[トレビアンニュース]]<!--現在は終了-->といったニュースサイトや各種[[まとめサイト]]などで、炎上の話題が取り上げられる<ref>『ウェブを炎上させるイタい人たち-面妖なネット原理主義者の「いなし方」』165頁</ref>。
*ネット書店[[Amazon.co.jp]]のサイト上で、2006年に書籍化された[[ケータイ小説]]の『[[恋空]]』のカスタマーレビュー欄に、作品内容の稚拙さを非難・揶揄するレビューが殺到したことがある([[恋空#作品への評価]]を参照)。

*2011年4月20日の[[甲子園球場]]の阪神戦において、巨人の[[脇谷亮太]]のプレーを巡って誤審が発生。これに関連して、脇谷が試合終了後に不適切な発言をしたことで、脇谷の本人の[[ツイッター]]に批判が殺到。この発言には他球団のファン、巨人ファン両方からも批判が殺到した<ref>[http://www.excite.co.jp/News/sports_g/20110422/Real_Live_4818.html 世紀の大誤審招いた“ウソつき男”巨人・脇谷内野手に大バッシング!]Exciteニュース、2011年4月22日</ref>。
この両者が複合してきわめて大きな炎上に至る場合や、発火点がブログなどの書き込みではなく、現実世界での何らかの出来事から、大型掲示板やニュースサイトでの報道を経由する場合もある<ref>『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』102-105頁</ref>。

伊地知晋一によれば、炎上が激化すると、抗議はブログ・SNSのコメント欄や掲示板への書き込みに留まらず、多様な方法が見られるとしている。[[電子メール]]、[[電話]](いわゆる[[電凸]])、発展すると関係者への抗議や[[デモ活動]]といった事態に至ることもあるとする<ref>『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』107-108頁</ref>。その途中、有志が[[まとめサイト]]と呼ばれる[[Wiki]]形式のサイトを立ち上げることが、しばしばある([[ウィキペディア]]の項目ではないが、体裁が似ている)。そこでは、炎上に至った事件とその後の経過が整理されて解説されているほか、電話やメールなどで抗議する際の[[テンプレート]]まで用意されている。まとめサイトが設置されるようになると、炎上はかなり深刻な事態に達しているといえる<ref>『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』17頁・20-22頁</ref>。企業ではなく一般の個人を対象とした炎上であっても、それまでのブログやSNSの日記におけるさまざまな写真や日常生活の記述を総合し、住所や勤務先を[[集合知]]的に特定することがある<ref>『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』67-68頁</ref>(いわゆる個人情報の「[[特定]]」)。企業の場合、取引先にまで抗議が及んで営業に支障をきたす場合もある<ref>『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』46-47頁</ref>。また、触法行為を自慢するネット上の書き込みによって炎上を誘発してしまった従業員が、それを理由に会社から解雇されるような事例もある<ref>『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』65-66頁</ref>。

[[田代光輝]]は、[[ゴードン・オールポート|オールポート]]と{{仮リンク|レオ・ポストマン|en|Leo Postman|label=ポストマン}}による噂の公式のR=i×aを応用し、炎上の広がりを「炎上の広がり∝関心の高さ×状況の曖昧さ」であるとしている。たとえば、政治・宗教・スポーツは関心も高く曖昧であるため、炎上しやすいテーマだ。特に[[政策]]による[[原子力発電所|原発]]問題、外交([[歴史認識]]や[[領土問題]])などは曖昧な状況が続くために炎上しやすく、炎上が継続しやすいともされる<ref>『[[AERA]]』2013年8月26日号「SNS新リスクの護身術」</ref>。また、特に「食の衛生」は日本で「関心」が高いテーマだ。1つのテーマで炎上が起こるとそのテーマに対して「関心」が高くなるため、類似の事例で炎上トラブルが連鎖する現象が起こるともしている。ブログ炎上の最終的な結果としては、元の状態に戻る場合、コメント欄が廃止されて双方向性は失われ、一方的な情報発信となるがブログ自体は継続する場合、そしてブログ自体が閉鎖してしまう場合の、大きく3つがありうる<ref>『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』21-22頁</ref>。

一方で、ネットの誹謗中傷などは民事訴訟や刑事罰の対象にもなる(詳細は[[名誉毀損]]、[[侮辱罪]]、[[脅迫罪]]、[[信用毀損罪・業務妨害罪]]を参照)。このため個人攻撃にあたる内容や不確かな情報は拡散しないよう一般のネットユーザーにも注意が求められる。2017年、[[東名高速道路]]で起きた[[あおり運転#あおり運転による事故・事件、裁判・判決など|煽り運転の事件]]をめぐり、加害者と同一苗字であり、かつ同一県に在住していた男性が「『容疑者の父親』だ」などの嘘情報がネット上に流れた問題で、警察が名誉毀損容疑で捜査に着手し、翌年3月に拡散に関与したとみられる11人を特定。被害を受けた男性はこの11人を刑事告訴した<ref>{{Cite web|和書|url=http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3330342.html|title=『「容疑者の父親」とデマ拡散した11人特定、立件へ|publisher=[[TBS NEWS DIG|TBS NEWS]]|date=2018-03-30|accessdate=2018-03-30|archiveurl=https://web.archive.org/web/20180404064953/http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3330342.html|archivedate=2018-04-04}}</ref>。

== 予防法 ==
炎上を発生させないためのもっとも確実な方法は、ブログはコメント欄、企業のウェブサイトであれば問い合わせフォーム・掲示板といった「炎上が発生しうるような場」を、初めから設定しないことである<ref>『ウェブを炎上させるイタい人たち-面妖なネット原理主義者の「いなし方」』153頁</ref>。コメント欄などを設置する場合でも、投稿者を一定の条件で認証する制度を導入(メールアドレスへの紐付けなど)したり、炎上につながるような無礼・不謹慎な発言、犯罪行為の告白、尊大な言動、価値観の押しつけや否定、意見が対立しやすいトピックへの言及などの発言をしないように注意することで、ある程度は炎上を予防することができる<ref>『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』98-101頁</ref><ref>『ソーシャルメディア炎上事件簿』148-149頁</ref>。

== 収束方法 ==
炎上が発生してしまった場合は、まずはじめに実際に自分に非があったと認めるかどうかを判断するべきだと、炎上に関する書籍など<ref>『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』110-116頁、『ウェブを炎上させるイタい人たち-面妖なネット原理主義者の「いなし方」』134頁を参照</ref>では指摘されている。

非を認める場合、早急に被害者と世間に対し誠意のある謝罪コメントを発表することがよいとされる。このとき、謝罪文に言い訳や抗議など謝罪以外の要素を含めるとかえって反発を招く可能性があるため、そういったことは書かない方がよい。脅迫・中傷への対応が必要であれば[[警察]]へ通報したり、[[弁護士]]に相談したりするなどの対処を淡々と行う。

非を認めない場合、断固として批判に対して反論を続けるか(できれば証拠を提示できることが望ましい)、徹底的に無視することとなる。個人のブログであれば炎上後も高い頻度でブログを更新することによって、過去のログまで丹念に調べるような閲覧者を除けば、火種となった記事が閲覧されにくくなるため、そのまま終息する場合もある<ref>『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』81頁</ref>。サイトやブログを閉鎖してしまうという対処法もあるが、炎上発生直後の閉鎖はかえって事を大きくしてしまう危険性がある。またネット上での抗議先がなくなったことにより、関係者の居住地や職場など現地訪問を試みる動きが加速する可能性もある。特にブログなどで炎上の火種となった記事だけを削除するなどの対処は、隠蔽行為と解釈されて批判の激化を招きかねず<ref>「ブログ炎上」『学びとコンピュータハンドブック』71頁</ref>、Googleのキャッシュや[[ウェブ魚拓]]などから削除したサイトの中身が閲覧できるようにされることがあるとされる<ref>『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』45頁</ref>。

[[#その他の分類|伊地知晋一による分類]]に沿って考える場合、批判集中型については率直に謝罪するか持論を継続し、議論過熱型は静観し、荒らし型は黙々と削除して対処するのが望ましいとされる<ref>『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』19-20頁</ref>。

山本一郎は、炎上したときの具体的な対策について、速やかな消火のためには「かなり早い段階で謝罪する」ことが肝要だと述べている。お詫びの仕方も「お騒がせしてすみません」と、世間を騒がせたこと、関係者に迷惑をかけたことについて全方位に低姿勢で謝罪する方がよい。嘘をついたり、事実はそうでも部下や関係者がやったと釈明したりするのは最悪の一手であり、監修したのは自身であることを認めるべきである。一方で、初手の有力な方法として「徹底的に無視する」ことも採用し得る。この場合は、その件にいっさい触れない心構えが必要で、炎上の規模の見極めが重要だ。騒ぎが大きくなり過ぎると、謝罪が遅れることで取り返しのつかない話になりやすい。問題が起きて釈明がなければ、関係者の界隈はその誠実さを疑う。鎮火を促す最後の方法は、ネットで騒ぐ連中を次々と訴えること。行き過ぎた、間違った情報を元に話題を炊きつけている人物を特定し、黙々と徹底的に、すべて訴える方法を提案している<ref name="山本一郎-2015">{{Cite web|和書|date=2015-09-10 |url=http://bylines.news.yahoo.co.jp/yamamotoichiro/20150910-00049360/ |title=『GQ』でボツになった「五輪エンブレム」佐野研二郎さんのネット炎上関連の原稿と経緯について |work=Yahoo!ニュース |accessdate=2015-09-10}}</ref>。

[[中川淳一郎]]は、「身内の擁護はかえって炎上を劇化させる」と指摘し、周囲の人間は当事者のことを想うのであれば、ほどぼりが冷めるまで静観するべきだとしている。ネットの作法がわからないまま、身内同士で炎上する本人を擁護し、ネットの意見を「素人は黙ってな」的に上から目線でバカにすることは、ネットでさらに嫌われ、攻撃の対象になってしまう。自分に否があるなら、すぐに謝るという判断が下せるか。逆に相手に間違いがあるなら、訴訟も辞さない強さを持てるか。それができないなら、黙っていた方がいいと諭し、「インターネットを甘く見るな」ということに尽きると強調した<ref name="中川淳一郎-2015">{{Cite web|和書|date=2015-09-02 |url=https://withnews.jp/article/f0150902000qq000000000000000W0080901qq000012434A |title=五輪エンブレム問題 声あげない業界、陰謀論に憤り 中川淳一郎氏 |work=withnews |accessdate=2015-09-02}}</ref>。

炎上に際して「何もしない」ことは有効な対策になり得る。ネット炎上が株式市場に与える影響に関する調査では、2009年から2018年までの日本の上場企業を対象に、154件のネット炎上事例について、対象企業の株価反応が分析された。分析の結果、ネット炎上によって株価が大きく下落し、短期的にその効果が消滅するかどうかは、ネット炎上を起こした企業の対応によって異なることがわかった。154件の炎上のうち、80件は企業が何も対応をしなかった。残りは、謝罪をする、コメントを削除する、反論する、などの対応を行った。対応をした企業の方が、何もしなかった企業と比べて、大きく株価が下落した。<ref>{{Cite web|和書|date=2020-07-30 |url=http://keizaireport.com/423936/ |title= ネット炎上が株式市場に与える影響についての研究 武田史子 森継哉 | publisher=日本証券業協会 |accessdate=2020-07-30}}</ref>

== 分類 ==
=== 田代光輝による分類 ===
[[コンピュータ利用教育学会]](CIEC、シーク)にて田代光輝は、炎上の発生する原因に注目し、以下のような5種類に分類している<ref>「ブログ炎上」『学びとコンピュータハンドブック』69-71頁</ref>。
; 反社会的な行為の告白
: [[窃盗]]・[[器物損壊]]などの[[犯罪]]や、20歳未満だったころの[[飲酒]]・[[喫煙]]といった触法行為を武勇伝的に報告してしまったために炎上するというもの。一度注目されるとブログの過去ログなどをチェックし、さらに粗探しに至る。
; 知識不足・間違い
:著名人・知識人が専門外の話題に言及するなどして知識不足や間違いを露呈してしまった場合に、その権威を挫くために、ここぞとばかりに批判が殺到するというもの。
; 特定ターゲットへの悪口・軽蔑
: [[国籍]]・人種・宗教・[[学歴]](特に中卒者)・職業といった特定の対象(社会的弱者)を中傷・否定的な言及をしたために反感を買って炎上するというもの。
; 提灯記事
: 企業が著名なブロガーに金銭的報酬を与える代わりにその企業の製品をブログで取り上げてもらうといった行為が行われる際に、それが金銭のやりとりを伴ったものであるということをブログ上できちんと公表していなかった場合(いわゆる[[ステルスマーケティング]])、ブログの読者から裏切り・騙しとみなされて非難されやすい。
; 利益誘導
: 自分や自分が所属する組織に対する肯定的な言及を自身の身分を隠して行ったことにより、自作自演として非難の対象となるというもの。

=== 小林直樹による分類 ===
『日経デジタルマーケティング』記者の小林直樹は、炎上のパターンを以下の6つに分類している<ref>『ソーシャルメディア炎上事件簿』第2章</ref>。
; [[やらせ]]、[[捏造]]、[[自作自演]]
: CIECでの分類にもあるように、企業側が自らにとって好都合な内容の情報を他者を騙って発信していることが暴露された場合など。
; なりすまし
: 別人が[[ソーシャルメディア]]のなりすましアカウントを取得し、本人の知らないところでトラブルを引き起こして炎上にいたる場合。
; 悪ノリ
: たとえば飲食店の従業員がふざけて食品を不衛生に扱う動画を[[動画共有サービス]]に投稿することによって<ref>いわゆる[[バイトテロ]]。</ref>企業に批判が集中するというように、悪ノリがきっかけとなって炎上に至る場合。
; 不良品、疑惑、不透明な対応
: 企業が提供するサービス・商品の品質に問題があったり、それを疑われたり、そのときの釈明に問題があったりしたために批判が集中する場合。
; コミュニティー慣習・規則の軽視
: 企業が[[Twitter]]などのソーシャルメディアを利用したマーケティングを行う際に、担当者がそのコミュニティの暗黙の規範などに疎かったために反感を買ってしまうようなケース。
; 放言、暴言、[[逆ギレ]]
: アルバイトから幹部まで、その企業に属する誰かがソーシャルメディア上で迂闊な発言をしたことがきっかけとなる場合。ネット上での投稿だけでなく、現実世界での失言がきっかけとなって炎上に至ることもある。

=== その他の分類 ===
伊地知晋一は、炎上を反社会的な行為の自慢や、非常識・幼稚な主張を行ったりして批判が殺到する「批判集中型」のほか、「議論過熱型」「[[荒らし]]」の3種類に分類し、実際にはそれらが複合的に組み合わされて炎上が起こるとしている<ref>『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』18-20頁</ref>。

ライターの中川淳一郎は、炎上を「義憤型」「[[いじめ]]型&失望型」「便乗&祭り型」「不満&怒り吐き出し型」「嫉妬型」「頭をよく見せたい型」の6つに分類している<ref>『ウェブを炎上させるイタい人たち-面妖なネット原理主義者の「いなし方」』145-150頁</ref>。

== 派生用語 ==
炎上から派生したネット用語として、以下のようなものがある。また、動詞として使う場合、「炎上する」だけでなく「燃える」も用いられる<ref>{{Cite web|和書|url=https://toyokeizai.net/articles/-/704963|title=SNSで「燃える企業」「燃えない企業」の決定的な差 炎上時こそ役立つ日頃のコミュニケーションとは|website=東洋経済オンライン|date=2023-10-04|author=田村憲孝|accessdate=2023-12-02}}</ref>。
; 燃料
: 炎上の状態をさらに加速・悪化させてしまうようなサイト管理者側の新事実・要素・事情のこと<ref>「祭られた人々」(晋遊舎) 20頁</ref>。サイト管理者側が炎上をさらに加速させてしまうような言動・態度を自らとってしまうことを「燃料投下」という<ref>『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』20頁</ref>。中途半端な弁解・謝罪や、炎上中に寄せられた過激なコメントに対する「法的措置をとる」などの発言、炎上のきっかけとなったブログのコメントの削除やサイトの閉鎖といったものも燃料になりうる<ref>『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』19-20頁・61頁・79頁・113頁</ref>。
; 鎮火
: コメントの殺到している状態が一通り終息すること<ref>『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』などで使用されている</ref>。
; 類焼
: なんらかの対象への批判が継続している最中に、まったくの別の対象までもが誤認をされて批判の対象となり、炎上状態に陥ってしまう状態<ref>『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』66-68頁</ref>。
; 延焼
: ある対象が批判され炎上した際に、その対象を擁護した別の人物にまで批判が及ぶこと<ref>『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』70-71頁</ref>。ニュース等の記事について、対象を擁護している判断されたものが先述した「提灯記事」とみなされ批判されるというケースもある。
; 炎上係数
: その話題に言及した場合に炎上が発生してしまう可能性の程度を表す言葉。たとえば「[[韓国]]」「[[オタク]]」といった炎上を誘発しやすいトピックは「炎上係数が高い」といわれる<ref>『ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性』40-41頁</ref>。ほかにも[[皇室]]関係や[[宗教]]・[[政治]]問題といった話題は炎上につながりやすい<ref>『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』63頁</ref>。取り扱う話題だけではなく、[[国籍]]・[[性別]]・[[キャラ (コミュニケーション)|個性]]などの発言者自身の属性も炎上の発生のしやすさに影響しており<ref>『ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性』41頁</ref>、「学歴・社会的地位の高い人」「社会に対して意見・批評を述べる立場の人([[オピニオンリーダー]])」「(一般人より)芸能人」が炎上の対象になりやすい<ref>『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』94-96頁</ref>。企業を対象とした炎上の場合、一般消費者対象取引(BtoC)の企業と[[企業間取引]](BtoB)の企業では、専門知識のない一般ネットユーザーでもとっつきやすい話題として拡大する特性から、一般的には前者のほうが炎上しやすいとされる<ref>『ソーシャルメディア炎上事件簿』166-167頁</ref>。
; [[炎上マーケティング]]
: '''炎上商法'''とも。話題性を獲得するために、大きなトラブルを発展させる話題に言及したり、炎上を狙う言葉を連呼するなどして、意図的に炎上を発生させて注目や[[知名度]]を得ることを期待するマーケティング手法のこと<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.nikkei.com/article/DGXNASFK3000T_Q1A830C1000000/ |title=まんべくん騒動にみる「炎上マーケティング」の教訓 |accessdate=2012-02-09 |author=藤代裕之|authorlink=藤代裕之|date=2011-09-01 |work=[[日本経済新聞]] }}</ref>。「好感の反対は嫌悪ではなく無関心」であることを逆手に取って、たとえ悪い評判であってもその商品や話題に人々の興味や関心を集めることを目的として行われる宣伝手法を意味する。それが成功して注目を集める場合もあれば、逆にネットユーザーに見透かされて空振りに終わる場合もある。過去には2011年の「[[まんべくん]]」のように、事実上の自滅に終わった事例もある。本人が炎上マーケティングを意図して行っているわけではなく、単にもともとから性格や言動の面で非難を集めやすい人物がインターネットでも野放図な言動を行っているだけのものが、「炎上マーケティング」であるかのようにみなされることもあるほか、炎上した側が意図しないあるいはまったく非がないことが理由での炎上がきっかけで結果的にその知名度が上がったことについても「炎上マーケティング」とみなされるケースもある。
; 炎上供養
: [[新潟県]][[燕市]]の[[国上山]]中腹にある[[仏教]][[寺院]]、国上寺が2018年10月7日、問題になった投稿などを書いた木札を焼いて騒ぎの沈静化などを祈願する「炎上[[供養]]」を全国で初めて行った。[[火渡り]]大祭の一環で、企業や個人から約470件の申し込みがあった。今後も継続するとしている<ref>[https://www.sankei.com/economy/news/181003/prl1810030528-n1.html チャイム](社会面コラム)、『産経新聞』朝刊2018年10月8日(2018年10月24日閲覧)。</ref>。

== 文化的考察 ==
[[北田暁大]]は、日本のインターネット上のコミュニティではしばしば、内容そのものよりも形式的な作法や感情の盛り上がりに従ってコミュニケーションを連鎖させていくこと自体を重視する「[[つながりの社会性]]」という現象がみられると論じている。炎上についても、当初は内容面だった対立が次第に語り口などの形式面への批判へスライドしていくという傾向が見られ、この枠組みでとらえることができるといえると論する<ref>[[北田暁大]]「ディスクルス(倫理)の構造転換」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』159頁</ref>。2004年から2年間にわたって開催されたised(情報社会の倫理と設計についての学際的研究)の倫理研では、日本ではインターネット・[[携帯電話]]などの情報技術の発展が新たな民主主義の可能性や電子公共圏の構築には寄与せず、炎上・コメントスクラムを含むつながりの社会性による無内容コミュニケーションを増幅させるにすぎないのではないか、という問題意識からさまざまな議論を行っている<ref>[[濱野智史]]「まえがき」『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』4頁</ref>。

伊地知晋一は、大手メディアが取り上げなくとも炎上がきっかけとなって政治家や大企業が公式に謝罪発表するというような事例はインターネットの台頭以前には考えられなかったことであるとし、ネット上で個人が意見を発表して問題点を共有するネットデモクラシーの動きの象徴として炎上を捉えている<ref>『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』146-148頁</ref>。

[[評論家]]の[[荻上チキ]]は、炎上を含むサイバーカスケード現象について考察する中で[[イラク日本人人質事件]]後のネット上でのバッシングや自作自演説の発生の社会的背景などについて考察した。

ライターの中川淳一郎は、荻上のこの考察や前述の伊地知晋一について2007年ごろまではほぼ同意していた。しかし、自身もネットニュースの編集に携わる中で炎上をウォッチしたり炎上予防に神経をすり減らしたりしているうちに、やがてそれらの意見に疑問を持つようになったと述べており、その背景を分析する立場はとるのは困難であるとしている<ref>『ウェブを炎上させるイタい人たち-面妖なネット原理主義者の「いなし方」』64-70頁</ref>。2015年には「インターネットを甘く見るな」ということに尽きると強調している<ref name="中川淳一郎-2015" />。

山本一郎は、劇場型の炎上が増えていく中で、炎上する「神輿」一人に問題を叩きつけるだけでなく、問題の原因となったそもそもの仕組みを発掘し「正しく」騒がなければならないと論じ、「炎上が楽しいのはわかるけどやり過ぎないようにね」とコメントしている<ref name="山本一郎-2015" />。

[[東浩紀]]は、平成という時代自体が「[[2ちゃんねらー#「祭り」|祭り]]」の時代であったと述べる<ref>[https://www.bookbang.jp/article/566944 東浩紀が時代の節目に自らを振り返る――「平成という病」 | 特集 | Book Bang -ブックバン-]</ref>。

CMC研究では、1980年代には[[:w:Sara Kiesler|キースラー]]によって、炎上は匿名性に加え、表情やしぐさといった身体的手がかり情報や、性別や身分といった社会的・文脈的手がかり情報といった、対面場面にあるはずの情報が欠如するために生じるという主張である「手がかり濾過」アプローチが提唱された<ref name="Igarasi"/>。この説は直感的で理解しやすく関心を集めたが、主張を支持する直接的証拠が見いだされなかった。1990年代にスピアーズとリーは「手がかり濾過」アプローチを批判し、「没個性化の影響に関する社会的アイデンティティ(SIDE)」モデルを提唱した<ref name="Igarasi"/>。SIDEモデルでは、炎上は特定の集団で発生しやすく、それらの集団では参加者間の相互作用により[[規範]]が確立されている。オンラインの匿名性は自己覚醒を低下させ、没個性化を引き起こす。集団において攻撃的な規範が優勢な場合、炎上を起こした集団との同一視が強い、没個性化した参加者が規範に同調してエスカレートするというメカニズムだ。このモデルには攻撃的な規範が発生するメカニズムを直接的に説明しておらず、循環論であるという批判がある。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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=== 出典 ===
{{Reflist|2}}


== 関連項目 ==
== 参考文献 ==
* [[伊地知晋一]] 『ネット炎上であなたの会社が潰れる!―ウェブ上の攻撃から身を守る危機管理バイブル』 [[WAVE出版]]、2009年 ISBN 978-4872904161
*[[ブログ]]
* 伊地知晋一 『ブログ炎上 〜Web2.0時代のリスクとチャンス』 [[アスキー (企業)|アスキー]]、2007年 ISBN 978-4756149015
*[[言葉の暴力]]
* [[中川淳一郎]] 『ウェブを炎上させるイタい人たち-面妖なネット原理主義者の「いなし方」』 [[宝島社]]、2010年 ISBN 978-4796675802
*[[サイバー暴力]]
* 小林直樹 『ソーシャルメディア炎上事件簿』 [[日経BP社]]、2011年 ISBN 978-4822227210
*[[ネット不信]]
* [[荻上チキ]] 『ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性』 [[筑摩書房]]、2007年 ISBN 978-4480063915
*[[2ちゃんねるの歴史]]
* [[田代光輝]] 「ブログ炎上」『学びとコンピュータハンドブック』[[東京電機大学]]出版局、2008年 ISBN 978-4501544201
*[[2ちゃんねらー]]
* [[東浩紀]]・[[濱野智史]]編 『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』 [[河出書房新社]]、2010年 ISBN 978-4309244426
*[[荒らし]]
*{{Citation|和書|last1=田中|first1=辰雄|last2=山口|first2=真一|title=ネット炎上の研究:誰があおり、どう対処するのか|publisher=勁草書房|edition=初版|date=2016-04-25|isbn=978-4-326-50422-0|ncid=BB21154160}}
*[[ネットイナゴ]]
*[[人権蹂躙|人権侵害]]
*[[人肉検索]]


== 関連文献 ==
== 関連記事 ==
* 「カレー沢薫の炎上エンジョイ!!」[[カレー沢薫]] [[日本文芸社]]の[[週刊漫画ゴラク]]に連載中。毎週さまざまな炎上に対してコメントしている。
{{Refbegin}}

* 中川淳一郎 『ウェブを炎上させるイタい人たち ―面妖なネット原理主義者の「いなし方」』 [[宝島社]]〈宝島社新書〉、2010年2月、ISBN 978-4-7966-7580-2
== 関連項目 ==
{{Refend}}
* [[ネットいじめ]]
* [[言葉の暴力]]
* [[サイバー暴力]]
* [[ネット検閲]]
* [[デジタルタトゥー]]
* [[私刑]]
* [[スマイリーキクチ中傷被害事件]]
* [[サイバーカスケード]]
*[[フレーミング (ネット用語)|フレーミング]]
* [[バッシング]]
* [[ブーイング]]
* [[数の暴力]]
* [[群集心理]]
* [[ネット右翼]]
* [[2ちゃんねらー]]
* [[バイトテロ]]
* [[外食テロ]]
* [[バカッター]]
* [[ネットハイ]] - [[2015年]]に[[PlayStation Vita|PS Vita]]向けに発売された、ネット炎上を題材とした[[コンピュータゲーム|ゲーム]]。
* [[ダメージ・コントロール]]


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* {{Kotobank|炎上}}
*[http://arena.nikkeibp.co.jp/coltop/20051101/114106/ デジタルARENA / インターネットの危ない話] - 炎上という現象を中立的・実践的に述べ、炎上を避けたい、炎上しつつあるという人に参考になる

*[http://blog.goo.ne.jp/enjoublog 炎上blog] - 炎上を専門的に取り上げるblog
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[[cs:Flame war]]
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[[ru:Флейм]]
[[sk:Flame war]]
[[sv:Flejma]]
[[uk:Флейм]]
[[zh:網路論戰]]

2024年12月11日 (水) 18:21時点における最新版

炎上(えんじょう)とは、インターネット上のコメント欄などにおいて、稚拙な批判や誹謗中傷などを含む投稿が集中することをいう[1][2]。炎上による損害は、心理的、経済的なものが発生している[3]

概説

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ブログSNS内の日記は、非公開やコメント禁止といった設定を別途しない限り、誰でもコメント欄にメッセージを残すことができる(ただし、スクリーンショットの撮影は禁止できないため、当該の投稿はスクリーンショットに残ることになる)。

ブログ執筆者の言動に反応し、多数の閲覧者がコメントを集中的に寄せる状態を「炎上」と表現する。このとき、コメントにはサイト管理者側の立場に対する賛否の両方が含まれていたとしても、「否定的な意見」の方をより多く包含するものを炎上とし、応援などの「肯定的な投稿」だけが殺到するものは普通は炎上とは呼ばず[4]対義語と言えるバズが用いられることが多い[5]憲法学者キャス・サンスティーンは、個人がインターネット上で自分自身の欲望の赴くままに振る舞った結果、極端な行動や主張に行き着いてしまうという現象をサイバーカスケードと呼んでおり、炎上もこの現れの一種といえる[6]

国内外に関係なく、炎上と同様の事象が発生している。英語圏ではFlareと呼ばれ、炎が燃える様子を表す用語が用いられるなど、日本と共通している[7]弁護士小倉秀夫は、掲示板上で投稿が殺到することをフレーミング・炎上、ブログ上でコメントが殺到することをコメントスクラムと2つに分類している[8][9]。外部サイトである掲示板のコメントとブログのコメント欄のコメントを比較すると、前者は批判の対象となっている者が比較的無視しやすいのに対し、後者では私的領域にまで踏み込まれている印象を受けるため、無視するのが心理的に難しいという違いがある[10]

非実在型炎上
実際は炎上していないのに、話題を作りたいメディアによって炎上があるように報道される場合を非実在型炎上という[11][12]

認知と状況

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インターネット普及期の1980年代に、社会心理学では対面英語版場面とコンピュータを介したコミュニケーション場面の差異に着目したCMC(computer-mediated communication)研究が始まった。炎上現象はCMC研究の初期の段階で観察されている[13]。実名主義のSNS以前のコンピュータを介したコミュニケーションをもっとも特徴づけていたものは利用者の匿名性であり、CMC研究では匿名性が集団に及ぼす影響についてさまざまな側面で研究が行われた。

「炎上」は、野球において「打者から猛攻され、投手が大量に失点した状態」のことを「炎上」と表現することが、インターネット掲示板「2ちゃんねる」の野球板で2001年に用いられたことが、インターネット上で用いられた現存最古の記録として残っている[14]

日本では、炎上はブログが一般に認知され始めた2004年ごろから発生するようになった。自身もブログ炎上経験を持つウェブコンサルタントの伊地知晋一は「最初に世間の耳目を集めたのは、2004年10月18日、「弁護士紀藤正樹のLINC TOPNEWS-BLOG版」と言うブログが「楽天 三木谷浩史の嘘」と言う記事を掲載したのをきっかけに発生した炎上騒ぎ」としている[15]。2005年1月ごろに『朝日新聞』記者がブログで「イラク日本人人質事件」について人質事件直前に起きていた「スマトラ沖地震」を引き合いに出し、「津波の被災者とイラクの被害者は、本質的に違わない」と述べた意見が炎上した際、それに言及した山本一郎のブログで「炎上」という語が使用されており[14]、小倉秀夫がコメントスクラムと呼んでいたものが炎上と呼ばれるようになっていった[16]。一般人の投稿による初の炎上と見られる事案は、2005年8月にコミックマーケット会場付近に出店していた飲食店の従業員がイベントの来場者を誹謗中傷したものとされる[17]。2009年には芸能人のブログのコメント欄に中傷や脅迫の書き込みを行ったものが名誉棄損や脅迫の容疑で書類送検される事件が報道で大きく取り上げられ、社会問題として認識されるようになった[17]

上述の伊地知晋一によれば、炎上の発生件数は調査方法が確立されていないため、正確には不明であるとしながらも、おおよそ年間60 - 70件程度と述べている[15]。また、炎上の発生から終息までの期間は、2週間から6か月程度であるという[18]。ネット上では炎上中のブログを探して楽しむ「炎上ウォッチャー」と呼ばれる人がおり、炎上中のブログをまとめたウェブサイトも存在する[19]。外部リンクも参照。

なお、企業や個人などが発言した内容や行為に対する投稿がソーシャルメディアを中心とするメディア上で100件以上存在する場合を炎上と定義した場合、2022年時点での炎上発生件数は1,570件とされている[20]

Twitter上でも失言、なりすましなどに起因する炎上騒ぎが発生している[21]。ただ、Twitter上で特定個人への批判が殺到するような事例は、ブログや掲示板が舞台となる場合と比べると、炎上が起こっているということが閲覧者にとって直感的に把握できない造りになっている。Twitterの仕様上、当事者がつぶやく(記事投稿する)ごとに投稿が順次積み重ねられることで、過去の投稿を見つけにくいことが理由とされる。個別に参照するにしても検索機能を逐一利用する必要が生じるため[22]、見方を変えれば炎上を抑制する方向に設計されたアーキテクチャであるともいえる[23]

炎上を「現代版の災難」ととらえ、炎上の原因となった画像や発信などの情報を供養する住職もいる[24]

特徴

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炎上のほとんどは、リンクされた引用元の記事をきちんと読まずに「歪曲されたタイトルだけ読んでコメント」という脊髄反射的かつ感情的な投稿の連鎖によって起き、全国の普通の人も参加して延焼する構図になっている。そのため、アメリカの調査でもTwitterFacebookなどソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)利用者がタイトルだけを見て、リツイートなど拡散・コメント投稿をする者が約60%を超えており、総務省は国民の情報リテラシーの向上を訴えている[25]

日本でも『虚構新聞』のジョーク記事などをタイトルを見ただけで事実と信じて拡散したり、SNSなどインターネット上で、リンク先の元記事を読まずに情報源(ソース)の内容・正確性を確認しなかったりする人が多いことが問題になっている。さらに、記事の中身には違うことを誤解・ミスリードを助長する炎上タイトルで、記事で受け答えしていた発言者の発言内容が歪曲されたことで炎上が起きることもある。このため、アクセス数稼ぎなどの理由で釣りや煽りを狙ったタイトルをつけるマスメディアに対しても批判の声がある[26][27][28]

また文化庁が発表した平成28年度(2016年度)版『国語に関する世論調査』で、ネット炎上に参加する意志があるのは2.8%という結果であった[29]

田代光輝は炎上を「サイト管理者の想定を大幅に超え、非難・批判・誹謗・中傷などのコメントやトラックバックが殺到することである(サイト管理者や利用者が企図したものは「釣り」と呼ばれる)」と定義している[30]

炎上の経過

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炎上の発生から激化までの過程には、藤代裕之は、巨大な電子掲示板サイトやニュースサイトなどが一役買っていることが多いとして、これらをミドルメディアと名付けた。

前者の電子掲示板では、ブログやSNSなどに書き込みが集まる中で大型掲示板に記事を投稿し、さらに多くの人の書き込みがそのブログやSNSなどに集中する。後者のニュースサイトでは、ブログやSNSなどで起こった小規模な炎上が、ネット上のさまざまな出来事を紹介する中規模なニュースサイトに掲載されて炎上が加速し、さらに大手メディアで紹介されることにより炎上の被害が拡大していく。たとえば、J-CASTニュースは、ネット上の炎上事件を積極的に取り上げることから「炎上メディア」と呼ばれることがある[31]。この他、探偵ファイルガジェット通信Narinari.comトレビアンニュースといったニュースサイトや各種まとめサイトなどで、炎上の話題が取り上げられる[32]

この両者が複合してきわめて大きな炎上に至る場合や、発火点がブログなどの書き込みではなく、現実世界での何らかの出来事から、大型掲示板やニュースサイトでの報道を経由する場合もある[33]

伊地知晋一によれば、炎上が激化すると、抗議はブログ・SNSのコメント欄や掲示板への書き込みに留まらず、多様な方法が見られるとしている。電子メール電話(いわゆる電凸)、発展すると関係者への抗議やデモ活動といった事態に至ることもあるとする[34]。その途中、有志がまとめサイトと呼ばれるWiki形式のサイトを立ち上げることが、しばしばある(ウィキペディアの項目ではないが、体裁が似ている)。そこでは、炎上に至った事件とその後の経過が整理されて解説されているほか、電話やメールなどで抗議する際のテンプレートまで用意されている。まとめサイトが設置されるようになると、炎上はかなり深刻な事態に達しているといえる[35]。企業ではなく一般の個人を対象とした炎上であっても、それまでのブログやSNSの日記におけるさまざまな写真や日常生活の記述を総合し、住所や勤務先を集合知的に特定することがある[36](いわゆる個人情報の「特定」)。企業の場合、取引先にまで抗議が及んで営業に支障をきたす場合もある[37]。また、触法行為を自慢するネット上の書き込みによって炎上を誘発してしまった従業員が、それを理由に会社から解雇されるような事例もある[38]

田代光輝は、オールポートポストマン英語版による噂の公式のR=i×aを応用し、炎上の広がりを「炎上の広がり∝関心の高さ×状況の曖昧さ」であるとしている。たとえば、政治・宗教・スポーツは関心も高く曖昧であるため、炎上しやすいテーマだ。特に政策による原発問題、外交(歴史認識領土問題)などは曖昧な状況が続くために炎上しやすく、炎上が継続しやすいともされる[39]。また、特に「食の衛生」は日本で「関心」が高いテーマだ。1つのテーマで炎上が起こるとそのテーマに対して「関心」が高くなるため、類似の事例で炎上トラブルが連鎖する現象が起こるともしている。ブログ炎上の最終的な結果としては、元の状態に戻る場合、コメント欄が廃止されて双方向性は失われ、一方的な情報発信となるがブログ自体は継続する場合、そしてブログ自体が閉鎖してしまう場合の、大きく3つがありうる[40]

一方で、ネットの誹謗中傷などは民事訴訟や刑事罰の対象にもなる(詳細は名誉毀損侮辱罪脅迫罪信用毀損罪・業務妨害罪を参照)。このため個人攻撃にあたる内容や不確かな情報は拡散しないよう一般のネットユーザーにも注意が求められる。2017年、東名高速道路で起きた煽り運転の事件をめぐり、加害者と同一苗字であり、かつ同一県に在住していた男性が「『容疑者の父親』だ」などの嘘情報がネット上に流れた問題で、警察が名誉毀損容疑で捜査に着手し、翌年3月に拡散に関与したとみられる11人を特定。被害を受けた男性はこの11人を刑事告訴した[41]

予防法

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炎上を発生させないためのもっとも確実な方法は、ブログはコメント欄、企業のウェブサイトであれば問い合わせフォーム・掲示板といった「炎上が発生しうるような場」を、初めから設定しないことである[42]。コメント欄などを設置する場合でも、投稿者を一定の条件で認証する制度を導入(メールアドレスへの紐付けなど)したり、炎上につながるような無礼・不謹慎な発言、犯罪行為の告白、尊大な言動、価値観の押しつけや否定、意見が対立しやすいトピックへの言及などの発言をしないように注意することで、ある程度は炎上を予防することができる[43][44]

収束方法

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炎上が発生してしまった場合は、まずはじめに実際に自分に非があったと認めるかどうかを判断するべきだと、炎上に関する書籍など[45]では指摘されている。

非を認める場合、早急に被害者と世間に対し誠意のある謝罪コメントを発表することがよいとされる。このとき、謝罪文に言い訳や抗議など謝罪以外の要素を含めるとかえって反発を招く可能性があるため、そういったことは書かない方がよい。脅迫・中傷への対応が必要であれば警察へ通報したり、弁護士に相談したりするなどの対処を淡々と行う。

非を認めない場合、断固として批判に対して反論を続けるか(できれば証拠を提示できることが望ましい)、徹底的に無視することとなる。個人のブログであれば炎上後も高い頻度でブログを更新することによって、過去のログまで丹念に調べるような閲覧者を除けば、火種となった記事が閲覧されにくくなるため、そのまま終息する場合もある[46]。サイトやブログを閉鎖してしまうという対処法もあるが、炎上発生直後の閉鎖はかえって事を大きくしてしまう危険性がある。またネット上での抗議先がなくなったことにより、関係者の居住地や職場など現地訪問を試みる動きが加速する可能性もある。特にブログなどで炎上の火種となった記事だけを削除するなどの対処は、隠蔽行為と解釈されて批判の激化を招きかねず[47]、Googleのキャッシュやウェブ魚拓などから削除したサイトの中身が閲覧できるようにされることがあるとされる[48]

伊地知晋一による分類に沿って考える場合、批判集中型については率直に謝罪するか持論を継続し、議論過熱型は静観し、荒らし型は黙々と削除して対処するのが望ましいとされる[49]

山本一郎は、炎上したときの具体的な対策について、速やかな消火のためには「かなり早い段階で謝罪する」ことが肝要だと述べている。お詫びの仕方も「お騒がせしてすみません」と、世間を騒がせたこと、関係者に迷惑をかけたことについて全方位に低姿勢で謝罪する方がよい。嘘をついたり、事実はそうでも部下や関係者がやったと釈明したりするのは最悪の一手であり、監修したのは自身であることを認めるべきである。一方で、初手の有力な方法として「徹底的に無視する」ことも採用し得る。この場合は、その件にいっさい触れない心構えが必要で、炎上の規模の見極めが重要だ。騒ぎが大きくなり過ぎると、謝罪が遅れることで取り返しのつかない話になりやすい。問題が起きて釈明がなければ、関係者の界隈はその誠実さを疑う。鎮火を促す最後の方法は、ネットで騒ぐ連中を次々と訴えること。行き過ぎた、間違った情報を元に話題を炊きつけている人物を特定し、黙々と徹底的に、すべて訴える方法を提案している[50]

中川淳一郎は、「身内の擁護はかえって炎上を劇化させる」と指摘し、周囲の人間は当事者のことを想うのであれば、ほどぼりが冷めるまで静観するべきだとしている。ネットの作法がわからないまま、身内同士で炎上する本人を擁護し、ネットの意見を「素人は黙ってな」的に上から目線でバカにすることは、ネットでさらに嫌われ、攻撃の対象になってしまう。自分に否があるなら、すぐに謝るという判断が下せるか。逆に相手に間違いがあるなら、訴訟も辞さない強さを持てるか。それができないなら、黙っていた方がいいと諭し、「インターネットを甘く見るな」ということに尽きると強調した[51]

炎上に際して「何もしない」ことは有効な対策になり得る。ネット炎上が株式市場に与える影響に関する調査では、2009年から2018年までの日本の上場企業を対象に、154件のネット炎上事例について、対象企業の株価反応が分析された。分析の結果、ネット炎上によって株価が大きく下落し、短期的にその効果が消滅するかどうかは、ネット炎上を起こした企業の対応によって異なることがわかった。154件の炎上のうち、80件は企業が何も対応をしなかった。残りは、謝罪をする、コメントを削除する、反論する、などの対応を行った。対応をした企業の方が、何もしなかった企業と比べて、大きく株価が下落した。[52]

分類

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田代光輝による分類

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コンピュータ利用教育学会(CIEC、シーク)にて田代光輝は、炎上の発生する原因に注目し、以下のような5種類に分類している[53]

反社会的な行為の告白
窃盗器物損壊などの犯罪や、20歳未満だったころの飲酒喫煙といった触法行為を武勇伝的に報告してしまったために炎上するというもの。一度注目されるとブログの過去ログなどをチェックし、さらに粗探しに至る。
知識不足・間違い
著名人・知識人が専門外の話題に言及するなどして知識不足や間違いを露呈してしまった場合に、その権威を挫くために、ここぞとばかりに批判が殺到するというもの。
特定ターゲットへの悪口・軽蔑
国籍・人種・宗教・学歴(特に中卒者)・職業といった特定の対象(社会的弱者)を中傷・否定的な言及をしたために反感を買って炎上するというもの。
提灯記事
企業が著名なブロガーに金銭的報酬を与える代わりにその企業の製品をブログで取り上げてもらうといった行為が行われる際に、それが金銭のやりとりを伴ったものであるということをブログ上できちんと公表していなかった場合(いわゆるステルスマーケティング)、ブログの読者から裏切り・騙しとみなされて非難されやすい。
利益誘導
自分や自分が所属する組織に対する肯定的な言及を自身の身分を隠して行ったことにより、自作自演として非難の対象となるというもの。

小林直樹による分類

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『日経デジタルマーケティング』記者の小林直樹は、炎上のパターンを以下の6つに分類している[54]

やらせ捏造自作自演
CIECでの分類にもあるように、企業側が自らにとって好都合な内容の情報を他者を騙って発信していることが暴露された場合など。
なりすまし
別人がソーシャルメディアのなりすましアカウントを取得し、本人の知らないところでトラブルを引き起こして炎上にいたる場合。
悪ノリ
たとえば飲食店の従業員がふざけて食品を不衛生に扱う動画を動画共有サービスに投稿することによって[55]企業に批判が集中するというように、悪ノリがきっかけとなって炎上に至る場合。
不良品、疑惑、不透明な対応
企業が提供するサービス・商品の品質に問題があったり、それを疑われたり、そのときの釈明に問題があったりしたために批判が集中する場合。
コミュニティー慣習・規則の軽視
企業がTwitterなどのソーシャルメディアを利用したマーケティングを行う際に、担当者がそのコミュニティの暗黙の規範などに疎かったために反感を買ってしまうようなケース。
放言、暴言、逆ギレ
アルバイトから幹部まで、その企業に属する誰かがソーシャルメディア上で迂闊な発言をしたことがきっかけとなる場合。ネット上での投稿だけでなく、現実世界での失言がきっかけとなって炎上に至ることもある。

その他の分類

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伊地知晋一は、炎上を反社会的な行為の自慢や、非常識・幼稚な主張を行ったりして批判が殺到する「批判集中型」のほか、「議論過熱型」「荒らし」の3種類に分類し、実際にはそれらが複合的に組み合わされて炎上が起こるとしている[56]

ライターの中川淳一郎は、炎上を「義憤型」「いじめ型&失望型」「便乗&祭り型」「不満&怒り吐き出し型」「嫉妬型」「頭をよく見せたい型」の6つに分類している[57]

派生用語

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炎上から派生したネット用語として、以下のようなものがある。また、動詞として使う場合、「炎上する」だけでなく「燃える」も用いられる[58]

燃料
炎上の状態をさらに加速・悪化させてしまうようなサイト管理者側の新事実・要素・事情のこと[59]。サイト管理者側が炎上をさらに加速させてしまうような言動・態度を自らとってしまうことを「燃料投下」という[60]。中途半端な弁解・謝罪や、炎上中に寄せられた過激なコメントに対する「法的措置をとる」などの発言、炎上のきっかけとなったブログのコメントの削除やサイトの閉鎖といったものも燃料になりうる[61]
鎮火
コメントの殺到している状態が一通り終息すること[62]
類焼
なんらかの対象への批判が継続している最中に、まったくの別の対象までもが誤認をされて批判の対象となり、炎上状態に陥ってしまう状態[63]
延焼
ある対象が批判され炎上した際に、その対象を擁護した別の人物にまで批判が及ぶこと[64]。ニュース等の記事について、対象を擁護している判断されたものが先述した「提灯記事」とみなされ批判されるというケースもある。
炎上係数
その話題に言及した場合に炎上が発生してしまう可能性の程度を表す言葉。たとえば「韓国」「オタク」といった炎上を誘発しやすいトピックは「炎上係数が高い」といわれる[65]。ほかにも皇室関係や宗教政治問題といった話題は炎上につながりやすい[66]。取り扱う話題だけではなく、国籍性別個性などの発言者自身の属性も炎上の発生のしやすさに影響しており[67]、「学歴・社会的地位の高い人」「社会に対して意見・批評を述べる立場の人(オピニオンリーダー)」「(一般人より)芸能人」が炎上の対象になりやすい[68]。企業を対象とした炎上の場合、一般消費者対象取引(BtoC)の企業と企業間取引(BtoB)の企業では、専門知識のない一般ネットユーザーでもとっつきやすい話題として拡大する特性から、一般的には前者のほうが炎上しやすいとされる[69]
炎上マーケティング
炎上商法とも。話題性を獲得するために、大きなトラブルを発展させる話題に言及したり、炎上を狙う言葉を連呼するなどして、意図的に炎上を発生させて注目や知名度を得ることを期待するマーケティング手法のこと[70]。「好感の反対は嫌悪ではなく無関心」であることを逆手に取って、たとえ悪い評判であってもその商品や話題に人々の興味や関心を集めることを目的として行われる宣伝手法を意味する。それが成功して注目を集める場合もあれば、逆にネットユーザーに見透かされて空振りに終わる場合もある。過去には2011年の「まんべくん」のように、事実上の自滅に終わった事例もある。本人が炎上マーケティングを意図して行っているわけではなく、単にもともとから性格や言動の面で非難を集めやすい人物がインターネットでも野放図な言動を行っているだけのものが、「炎上マーケティング」であるかのようにみなされることもあるほか、炎上した側が意図しないあるいはまったく非がないことが理由での炎上がきっかけで結果的にその知名度が上がったことについても「炎上マーケティング」とみなされるケースもある。
炎上供養
新潟県燕市国上山中腹にある仏教寺院、国上寺が2018年10月7日、問題になった投稿などを書いた木札を焼いて騒ぎの沈静化などを祈願する「炎上供養」を全国で初めて行った。火渡り大祭の一環で、企業や個人から約470件の申し込みがあった。今後も継続するとしている[71]

文化的考察

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北田暁大は、日本のインターネット上のコミュニティではしばしば、内容そのものよりも形式的な作法や感情の盛り上がりに従ってコミュニケーションを連鎖させていくこと自体を重視する「つながりの社会性」という現象がみられると論じている。炎上についても、当初は内容面だった対立が次第に語り口などの形式面への批判へスライドしていくという傾向が見られ、この枠組みでとらえることができるといえると論する[72]。2004年から2年間にわたって開催されたised(情報社会の倫理と設計についての学際的研究)の倫理研では、日本ではインターネット・携帯電話などの情報技術の発展が新たな民主主義の可能性や電子公共圏の構築には寄与せず、炎上・コメントスクラムを含むつながりの社会性による無内容コミュニケーションを増幅させるにすぎないのではないか、という問題意識からさまざまな議論を行っている[73]

伊地知晋一は、大手メディアが取り上げなくとも炎上がきっかけとなって政治家や大企業が公式に謝罪発表するというような事例はインターネットの台頭以前には考えられなかったことであるとし、ネット上で個人が意見を発表して問題点を共有するネットデモクラシーの動きの象徴として炎上を捉えている[74]

評論家荻上チキは、炎上を含むサイバーカスケード現象について考察する中でイラク日本人人質事件後のネット上でのバッシングや自作自演説の発生の社会的背景などについて考察した。

ライターの中川淳一郎は、荻上のこの考察や前述の伊地知晋一について2007年ごろまではほぼ同意していた。しかし、自身もネットニュースの編集に携わる中で炎上をウォッチしたり炎上予防に神経をすり減らしたりしているうちに、やがてそれらの意見に疑問を持つようになったと述べており、その背景を分析する立場はとるのは困難であるとしている[75]。2015年には「インターネットを甘く見るな」ということに尽きると強調している[51]

山本一郎は、劇場型の炎上が増えていく中で、炎上する「神輿」一人に問題を叩きつけるだけでなく、問題の原因となったそもそもの仕組みを発掘し「正しく」騒がなければならないと論じ、「炎上が楽しいのはわかるけどやり過ぎないようにね」とコメントしている[50]

東浩紀は、平成という時代自体が「祭り」の時代であったと述べる[76]

CMC研究では、1980年代にはキースラーによって、炎上は匿名性に加え、表情やしぐさといった身体的手がかり情報や、性別や身分といった社会的・文脈的手がかり情報といった、対面場面にあるはずの情報が欠如するために生じるという主張である「手がかり濾過」アプローチが提唱された[13]。この説は直感的で理解しやすく関心を集めたが、主張を支持する直接的証拠が見いだされなかった。1990年代にスピアーズとリーは「手がかり濾過」アプローチを批判し、「没個性化の影響に関する社会的アイデンティティ(SIDE)」モデルを提唱した[13]。SIDEモデルでは、炎上は特定の集団で発生しやすく、それらの集団では参加者間の相互作用により規範が確立されている。オンラインの匿名性は自己覚醒を低下させ、没個性化を引き起こす。集団において攻撃的な規範が優勢な場合、炎上を起こした集団との同一視が強い、没個性化した参加者が規範に同調してエスカレートするというメカニズムだ。このモデルには攻撃的な規範が発生するメカニズムを直接的に説明しておらず、循環論であるという批判がある。

脚注

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出典

[編集]
  1. ^ 田中 & 山口 2016, p. 5.
  2. ^ 日本大百科全書(ニッポニカ),デジタル大辞泉,デジタル大辞泉プラス,IT用語がわかる辞典. “炎上とは”. コトバンク. 2021年8月19日閲覧。
  3. ^ 田中 & 山口 2016, pp. 12–13.
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  24. ^ SNS炎上、供養します 住職も批判経験「仏教の大義」 - 朝日新聞
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参考文献

[編集]
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  • 田代光輝 「ブログ炎上」『学びとコンピュータハンドブック』東京電機大学出版局、2008年 ISBN 978-4501544201
  • 東浩紀濱野智史編 『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』 河出書房新社、2010年 ISBN 978-4309244426
  • 田中辰雄; 山口真一『ネット炎上の研究:誰があおり、どう対処するのか』(初版)勁草書房、2016年4月25日。ISBN 978-4-326-50422-0NCID BB21154160 

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関連項目

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外部リンク

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