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2005年7月24日 (日) 15:47時点における版
学位(がくい)とは、14世紀の欧州の大学における教授資格を起源としており、学術業績に対しての栄誉称号として発展成立、現在は高等教育を行う機関(大学など)が授与する学術上の位のことで、国際的にも法的にも認められた称号を意味する。また、学位ではないが、教育施設は、学位に準じるような名誉学位を付与することがある。
日本の学位 概要
概念
冒頭にある通り、単位取得や一定の業績など、研究上の成果に対して付与される国際的に通用する法的に認められた学術称号のことである。学位、とりわけ学士号は国家資格か大学の認定する公的資格の様に誤解する人もいるが、学位は資格ではない。戦前は文部大臣の授与する称号であり、いわゆる栄典ではないものの、階級・位階・勲等・功級・爵位などと並んで称された非常に栄誉ある称号であった。
種類
日本の法令に基づく学位には、学士の学位、修士の学位、博士の学位、専門職学位があり、学校教育法などに定められている。日本の法令に基づく学位は、各大学(大学院及び短期大学を含む。)、独立行政法人大学評価・学位授与機構などによって授与される。
また、学位のほか、日本で付与されている称号には、準学士の称号、専門士の称号、名誉博士の称号などがある。準学士の称号は、短期大学または高等専門学校を卒業した者に学校教育法に基づいて付与される。また、専門士の称号は、一定要件を満たす専修学校の専門課程(専門学校)を卒業した者に文部科学省告示に基づいて付与されることとなっている。名誉博士については、教育機関が著名な研究を行った者などに独自に与えることが日本において増えてきている。
学位と称号の違い
学位について定めた法令として、現代の日本には、学校教育法や学位規則がある。特に学位規則に規定されていないものは、「学位」ではなく「称号」である。したがって、準学士の称号や専門士の称号などは、称号であって学位でない。なお、平成3年以前は、「学士の学位」ではなく「学士の称号」が付与されていたが、現在では、学校教育法の規定により、従前の学士の称号を授与された者は、学士の学位を授与された者とみなすことになっている。学位は国際的通用性を保証するものだが、称号はあくまで国内でのみ通用するものである。
学位の表記
学位における専攻分野の表し方については、文部科学省令の大学設置基準および学位規則で、平成3年以前において、専攻分野が明示された「○学士」「○学修士」「○学博士」というものが授与されていたが、現在は、「学士(専攻分野)」「修士(専攻分野)」「博士(専攻分野)」という専攻分野を付記する形で授与されている。また、専門職大学院を修了した者に与えられる学位は、専門職学位とされ、文部科学省令により法科大学院の修了者には「法務博士(専門職)」、法科大学院以外の専門職大学院の修了者には「○修士(専門職)」を授与すると定められている。
また、学位規則においては、学位を表記するときに授与した大学又は大学評価・学位授与機構の名称を付記することになっている。
学位の例:
- 学士(経営学)(拓殖大学)
- 修士(情報管理学)(朝日大学)
- 博士(法学)(名古屋大学)
- 法務博士(専門職)(日本大学)
- 公共経営修士(専門職)(早稲田大学)
多様化する学位授与機関の例:
- 学士(法学)(東京大学) 一般の大学
- 学士(教養)(放送大学) 通信制の大学
- 学士(文学)(大学評価・学位授与機構)大学評価と学位授与を所管する独立行政法人
多様性に富んだ専門職学位
全国の大学に設置認可された法科大学院のすべてにおいては一律、法務博士(専門職)(Juris Doctor)の学位が授与されるが、その他の分野においてはまさに各大学により多彩である。ちなみに、日本の法科大学院終了後の法務博士(専門職)は、アメリカのロースクールを真似たものであり、アメリカではロースクールを終了するとjuris doctor(法務博士)がもらえるが、これは日本でいうところの学士である。学部を卒業してから数年勉強したのにBachelor(学士)では可哀想だということで、名前をDoctorにしたものである。実際、アメリカではJuris Doctor取得後に入学する上位コースのLL.M(Master of Laws)(修士(法学))があり、さらに、このLL.M修了後に入学する最上位コースのS.J.D.(Doctor of Juridical Science)(博士(法学))がある。
専門職大学院としては海外のロー・スクールに倣って創設された法科大学院が代表的であるのはいうまでもないが、その他の専門職大学院には米国のハーバード大学ケネディスクール、カリフォルニア大学バークレー校の様な公共政策大学院なとがあり、その他ではビジネス・スクールなどが多い。今後は法曹育成を行う法科の他、政治家、行政官、NPOやNGOのリーダー、ジャーナリストなどの方面に人材を供給する公共政策の他、企業戦略、ファイナンス、会計、助産師、学校教育つまり教員養成、大学経営、医療経営、社会福祉、医療系、工業系、原子力系、情報技術系、心理系、環境系、健康科学系、デザイン系、我が国が誇る文化であるアニメーションをはじめメディアコンテンツなどの分野など序々に高度専門教育の裾野が広がりつつあり、専門職学位の種類も増えていくことが期待される。
特に高齢化社会の進展する中で生涯学習の時代に突入した21世紀の教育環境は社会に出た後もキャリアアップを目的として再び教育を受けようとする人口が増え、社会人大学院や夜間大学院が脚光を浴びてきておりキャリア教育の重要性が高まっている。実践的なスキル修得や専門的教育を施す機関として社会人大学院の中でも有力な受け入れ先である専門職大学院には取得する学位の代表的なものとしてMBA、MOT、MPH、MPA、MPMなどがある。これは、今まで優秀な人材が海外の大学で取得していた様な学位が日本でも本格的に置かれることとなった専門職大学院に注目が集っていることを如実に示しているといえよう。
取得できる学位の中で最も代表的なのはビジネスマンのステータスであるMBA即ちMaster of Business Administrationであるが、新しく出来た専門職大学院の中では経営管理学修士(専門職)または経営学修士(専門職)として置かれている場合が多い。MBAの上位には通常DBA即ちdoctor of Business Administration(和文呼称 経営管理学博士)の学位もあるが、専門職大学院の制度が未発達段階にあることとニーズの関係から専門職大学院の学位としては未だおかれていない。その他、企業戦略やファイナンス大学院、会計大学院で授与する学位も、和文表記では個々の専攻領域だが、英文表記としてはMBAとして一律化しているのも特徴である。MOT即ちMBA in Technology Managementの学位も日本では技術経営管理学修士(専門職)などの名称で置いている。その他、法政大学の様にMBITという学位を置く大学もあるが、これはMaster of Business information technologyといい、情報技術修士(専門職)という和文表記が主に用いられている。
専門職大学院の前進である専門大学院制度の下で成立した公衆衛生大学院では疫病の治療予防の研究を目的とした人材育成がなされ、当該大学院修了者にはMPH、つまりMaster of Public Health和文呼称 公衆衛生修士号の学位を授与している。またDPH(Doctor of Public Health、和文呼称 公衆衛生博士号)やPh.D.(Doctor of Philosophy、和文呼称 学術博士)を授与する大学院もある。また、次に代表的なものは公共政策大学院の学位である。これらの大学院で取得できる学位にはMPAやMPP、MPMという学位などがある。MPAはMaster of Public Administrationの略で日本では行政修士と訳す。MPPはMaster of Pablic Policyの略で日本では公共政策学修士(専門職)または公共政策修士(専門職)としている。MPMはMaster of Pablic Managementの略で日本では早稲田大学が公共経営研究科という公共政策大学院を設置し、このMPMにあたる公共経営修士(専門職)の学位を授与している。
専門職学位の実情
専門職学位において便宜上、博士なり修士という呼称を用いているが、学術上の博士、修士のそれとは同じではない。専門職学位の制度ははじまったばかりであり、取得そのもののメリットはそうクローズアップされるものではない。今後専門職学位が定着を見るには年月がかかることは予想に難くないといえよう。
いずれにせよ、2003年度以降はじめて高度専門職教育を受けて晴れて学位を受けた人口の活躍と、それを受け入れて活用する社会のインフラをどの様に定着させていくかが課題である。日本では学位といえば博士であり、名刺に刻む肩書きとしても、専門職ではない博士号所有者がほぼ大半である。
研究者向けの学位としての適性を与えるものではない以上、大学院という教育機関の持ち味と社会の即戦力となる人材育成の観点を如何に融合させていくか。それも専門職学位という称号の信用性を付加させていく上での要件となろう。
日本では学士号はもちろんだが修士号をとっても、それを肩書きとして表記する文化はあまりない。これは現代の日本があまり称号という文化が一般化していないという事情もあると思われるが、一面的には学位のうち博士の学位が他の学位に比較してかなり権威化されているという部分もある。しかし、専門職修士号に関しては既存の修士号とは異なり、社会が尊重していける風潮が定着していけば、専門職大学院という制度もより付加価値が高まると考えられる。新しい学位である専門職学位が大きな信用となり、そして社会的に通用する称号として定着していくことが期待される。
また専門職学位の中でビジネスマンのステータスであるMBAの様な分野が先駆けとなって人口を拡大することにより、次第にそれぞれの職域においても専門職学位が認定され、リクルートメントを確立していくことができれば、日本の高等専門教育の水準は非常に高まることとなろう。また、専門職大学院にはそうした取り組みにこそ期待されるところである。また、司法制度改革が急務であったとはいえ、法科大学院だけが専門職大学院でも突出した評価を得、学位呼称としても唯一博士と表記できる点などには多分野からは不可解にもとられるという向きもある。
法科大学院の課題 法務博士(専門職)の将来性
法科大学院は法曹人口の少ない日本にあって、司法試験制度改革を推進し、法律家を増やしていくための国家戦略としてつくられた教育機関である。専門職大学院制度でもとりわけ法科大学院は別格として優遇されてきた。他の専門職大学院に比較して標準修学年限は一年ほど長い分、学位呼称が専門職学位では唯一、法務博士(専門職)とされるなど、その手厚い保障が特徴だが、実際には法務博士(専門職)といっても、学術上の評価あるいは教育課程としての扱いは、日本ではあくまで「修士相当」であり、アメリカでは前述のとおり「学士相当」である。
法科大学院としては最近では現行の司法試験合格者増加にともない司法修習所を落第する層も増加していることから、新司法試験制度下で活躍が見込まれる法科大学院がどれだけ質の高い人材、教育を提供していけるかが課題である。特に法科大学院は大学法学部出身者でない人口もかなり志願しており、教育レベルや指導法については細かく丁寧な対応が求められている。
また、司法試験が新制度に移行した場合は法科大学院の法務博士(専門職)を取得が要件となり、学歴問わず志願できた現行司法試験の様に多彩な人材が応募しにくくなるのではないかという側面もある。同時に新司法試験制度下では法科大学院修了者の受験の権利ははじめての受験から数えて3回までとし、合格者数を増やす代わりに多々基準も高く設定された。ちなみに3回受験に失敗した司法試験受験生は権利を失うことから、「三振法務博士(専門職)」という蔑称もできているほどである。
こうしたことから、法曹になることや、法務に従事できない法務博士も出るのではないかという懸念もあり、専門職大学院の中で唯一、専門職学位としての博士を称する法科大学院にとって果たしてこの優遇措置を活かせるのかという疑問もある。他分野にはMBAや公共政策分野をはじめ有望な分野もあり、法科大学院に国の支援がより充当されていることの効果には社会の反応として厳しいものも予想される。今後において司法試験合格者数を増やした代わりに法科大学院修了を受験要件とし、さらに受験回数を制限することが今後どういう影響をもたらすかが問われているところである。ちなみに日本の博士号はかなり厳格に審査され授与されてきただけに、法務博士(専門職)が社会的にどういう評価を受けるか。それは、学位というよりも司法試験の成否など個人の部分にかかる部分である。
前述のとおり、アメリカなど海外では研究学位と職業学位が別れているところがあり、そういう国では学術上は職業学位としての博士は研究職の学位としての修士よりも低く評価される。そういう点で法務博士(専門職)は国内外通じて学位としての評価が得られるか疑問である。専門職学位にも博士・修士があるという点では研究職学位のそれとどう区別化していくか。それが専門職大学院の意義とも直結する部分でもあることから検討される必要がある。
専門職大学院の課題
- 公共政策大学院等の専門職学位の課題
公共政策大学院は例えば官界の場合、中央官庁や地方公共団体などでの公務員試験にて優遇策はなく公務員制度改革の途にある中である。また、政界への人材輩出も期待されるが、この場合でも政治家には選挙という試練がともない実力本位である。
今後において新分野として人材輩出が期待されるNPO・NGOなどは組織の財政基盤が脆弱であり未成熟であり、受け皿を如何に確立していくかも課題である。
国会では公共政策大学院の学位取得者には国会議員の公設秘書として主に政策立案の補佐を担当する国会議員政策担当秘書(通称 政策秘書)の資格を認定したらどうかという意見もあり、政治分野の政策スタッフ基盤が比較的弱い日本においてはこうした優遇措置もおおいに期待されているところである。
その他、有力な進路先として期待されるマスメディアの分野では学位そのものを評価するというには未だ認知も低い。いずれにせよ、公共政策大学院の学生は実力本位であることがより課せられやすいのが現状である。ただ、だからこそただのエリートではなく現状を打開できる人材を求め、偏差値教育の延長線ではない、リーダーシップと哲学、または歴史観、倫理観、社会観、構想力といった人間力と、そして政策立案・実現能力といったスキルを持った人材の必要性が問われているともいえる。その点では能力や政策スキル習得に終始せずに人物重視の教育が期待できる分野でもある。
- ビジネス・スクールの挑戦 MBAへの期待
以上の点から専門職学位保有者のリクルートメントの面では苦戦も予想されるが、専門職学位のうちその先駆け的存在であるMBAなどは我が国の専門職学位創設以前から海外などで取得するビジネスマンも多く取得人口も政財官界には多いことから、ビジネス・スクールにて授与されるMBAの学位の知名度と信用、あるいは人脈のあるところから次第に機会が広がっていくのではないかという期待もある。
とりわけMBAはつい先年までキャリア形成において社会的にかなり注目を集め、MBAブームというものもあったが、最近はやや落ち着きを見せ始めたものの依然として資格関係の著籍や経済雑誌等を通じて注目され続けている。MBAはあくまで職業上の学位であることから学位そのものの評価というよりも、ネゴシエーションやマネジメントのスキルやそれ以上に学び舎で得た人脈に対しての期待の方が大きいという傾向もある。また、DBAつまり経営管理学博士に匹敵する課程が必要かどうかという点でも専門職大学院の制度的な部分での考察も必要になるかもしれない。
- 専門職学位の将来
多様性のある教育を可能たらしめる上で、実務にかなった専門職大学院は非常に有意義な制度である。しかし、法科大学院のみが博士と表記され、一般的な学位と比較した場合は修士に相当するという点は、国際標準的には妥当かもしれないが、他の専門職大学院でも、正真正銘の博士としての評価に値する学位を置きたいと考えても、法務博士ですら修士としての評価しかないという点はネックとなる。法務以外の分野で専門職博士を取得できる道を開いても、法務博士同様に修士と同等の評価ということになる。国際的に活躍する人材を輩出する上で実務教育を受けた博士を育成することは次なる国家戦略として課題となる。専門職大学院でもPhDを取得できる道を作るか、あるいは今までの研究職大学院で実践的指導も含めた博士課程を置くか。今後においてそうした手段を講じる必要がある。 ただ、一方で専門職学位である以上、国内で働く上では、実務面で博士を必要としない、あるいは修士で十分とする意見もある。もし、法務博士以外の専門職博士を設置したとしても、修士相当の評価で構わないという指摘もなくはない。 そうした場合、法科大学院で法務博士取得までの標準修了年限として、法学既習者が二年、未習者が三年かかることを踏まえ、他の専門職大学院でも標準年限として専門職博士を取得できる三年コースと、専門職修士の二年ないし一年コースを分けて設置してもよいだろう。 専門職博士の三年コースの入学資格を大学卒業以上とし、修士・専門職学位取得者は一年で修了でき、学士号のみ保有する学生は三年かけて取り組むという手法もあるだろう。 いずれにせよ、そもそも法務博士が修士と同様であって、専門職学位を博士と修士で分けるにはどこまでの意味付けができるかは、もちろん課題として残る。 学術的な能力よりも専門職としてのスキル習得こそがこの専門職大学院の意義であって、この専門職大学院が定着しきっていない段階にあっては、専門職修士取得までの二年間で十分なスキルを身に付けられるとは限らず、上級課程を求めるニーズはあってもおかしくはない。学位としての評価よりもスキル面での差別化という観点から法科以外の専門職大学院のグレードアップ化を求める声は起こりえる。 一番重要なことは、グローバル化と社会の多様化の中で、どの様な人材・スキルが求められるかであり、学位がただの肩書きや称号であっては意味がないのである。そうした長期的な教育政策の視野にたって、専門職大学院は絶えず可能性の追求と同時に反省と改善を図っていく努力を怠ってはならないだろう。 専門職大学院及びそれらの大学院が授与する学位の課題としては、カリキュラムにおける社会のスキルの面とアカデミックな面との調整である。体質としてアカデミックな要素を多分に含んでいる場合、学問としてのクオリティは追求できる反面、社会に対する新たな付加価値としての意義を損ないかねない。特に専門職大学院では法的に学位論文を課すものではないが、大学によっては学位論文を貸している場合もある。在学期間中の集大成として論文を著すこと自体においては大きな意義は有するが、しかし、それが氏や快適に互換性を有するのか、学位論文という形にしなければいけない理由はあるのか。そこは検討が必要である。大学院のカテゴリーや運営方針にもよるが、やはり大学院の論文の必要性についてもケースバイケースによって柔軟さが求められよう。一番の課題は学生と社会との関係性にあるといえる。専門職大学院に通学すること自体、負担、リスクは大きなものがともなう。ただ、最近の大学院人気で年々入学者が増加傾向にある。それだけに得られる知識・経験・スキル・人脈は魅力的であるということの証左でもあるが、学費も高く、そして負担もけして軽くない以上、専門職大学院という場自体が学生にとってはリスキーな場でもある。実務家として社会に出て行かなければならない人間に論文執筆は大きな負担でもある。中にはリサーチペーパーを論文の代替としているケースも多いが、終了における評価体系はより柔軟かつ学生のリスク、そして人材育成の可能性を殺さない、より有効なものとしていく必要もある。 クオリティを追求すれば、専門職大学院の教育も当然、厳しいものとなる。それ自体はよい。しかし、問題はそのバランスである。本来の目的とするところを追求していく上で、社会との需給関係、社会構造の改革に向けた広い視野を以って学生が将来的に期待できるところまで能力が達しているかという評価と、大学院の成績評価が果たして同一といえるのか。ただ、形式主義やアカデミックに走っていないかという批判は常につきまとうところである。その点において、専門職大学院の将来においては、より実務家教授の役割は大きな意義を持つべきであり、独立研究科として社会に根ざした試行錯誤が求められる。
余剰博士(オーバードクター)の実情 研究職大学院の課題
日本において大学就学率は世界的にも高いものの、大学院に進学する人口、及び博士または修士の学位を取得した人材をリクルートする社会風土が中々定着せず、結果として日本の大学院教育は社会的には一般化しづらい情勢にある。日本の将来における学術研究をリードしていくべき学者の卵に対してどの様な人材活用ができるかが問われている。
理系大学院であれば博士や修士は非常に高い評価を受ける一方、文系大学院では院卒者とりわけ博士後期課程を経た人材の雇用に際しては企業側が比較的年齢が高く社会的経験に乏しいことから使いづらいという印象も根強い。文系であっても修士の場合はそれほどまでに深刻ではないが、最近は就職浪人をしたために大学院に進学したモラトリアム的な入学者(モラトリアム院生)も増えているのが実情だ。
こうした中、2004年には政府が博士号を取得しながら定職につけない余剰博士の雇用政策に乗り出した。高等教育が遅れている日本において博士号という高い研究能力を認定された人物が必ずしも社会的な評価を受けていない実情を受けたものである。これは日本の雇用が大学学部の新卒時或いはその他の学校の新卒時に集中し、専門能力よりも若さや成長への期待によって雇用し、なおかつ改善されてきたとはいえ中途採用の枠がまだ依然と広がらないという社会構造にもよるとみられる。
現在は博士号取得した後のことをポストドクター(ポスドク)といい、国の機関や研究機関でも博士号取得者が短期間、援助を受けながら研究に携わる制度があるが、こうしたアカデミックポスト(アカポス)の任期満了後のキャリアステージとしては次のステップにつながっていない場合が多く、科学技術立国への成長を図る意味でも、或いは社会全体で高度かつ実践的なスキルを活用する上でもこの余剰博士を生み出す構造は是正されていく必要がある。
社会人に増える博士号取得者のキャリアを如何に活かすか
最近は高等教育への関心が高まりつつある。前述した通り、社会人大学院や夜間大学院、通信制大学院といった形態で、働きながら研究して学位を取る人が増えている。またそうした社会経験の豊富な人口が大学の教授になったりと、世間知らずとも揶揄されがちな学界に新しい風を吹き込んでいるという一面もある。
理系であれば博士号はブランド足り得る。実際に工業系の企業では何人の博士を雇用しているかが、信用の指標とされているケースもある。しかし、社会全体としては依然として博士の持つ力をどう活かすかということにつながっていない。もちろん博士号の取得が何か大きな能力を保障するものでは必ずしもないというのも事実だ。重要なことはあくまで雇用のあり方や世界や社会の変化にともないより戦略的な人材供給の手段として博士の可能性を活かすことにある。
現在の日本の雇用のあり方としては22歳学部新卒に重点が置かれてきたこれまでの日本の雇用のあり方は非常に膠着化してきている。昨今、終身雇用が崩れつつある中で、再雇用や中途採用といった活路も開けてきている情勢にある。これまで見向きもされなかった様な、有用な隠れた才を再評価することで企業価値への貢献の道を探ることもこれからの社会では大いに有効であろう。
国際化や国民人口の高齢化、職業の多様化が進む中、リクルートメントやキャリアアップの面で有効に博士を活かすことが、より専門性を身に着けた国際的に通用する企業への成長を模索することにつながることになろう。
短期大学士の学位創設における現在の動向
少子高齢化の中で、将来的には大学全入時代といわれ、大学も倒産をする時代に来ている。そんな中で社会的にも法的にも大学に準じた評価を受けている短期大学の入学者も減少を続け、大学として再編されるケースも見られる。その様な中で短期大学は2年間という修学期間において外国語や保育や家政などの広い分野で資格や専門能力を身につけ、短期大学の意義は短期の教育期間の中でより多様化した社会構造の中で早くに実社会に人材を送ることができるという側面もある。これまでは高等専門学校と同様に準学士の称号を授与されてきたが、日本国内でのみ通用する称号であったことから、世界標準の評価を与えるべきではないかという声もあった。
そういう声もある中で、今後は国際化の進展の中で短期大学卒業者も国際社会に通じる評価を付加することで、特定の専門能力なり多様な実力を持った人材に活躍の機会を確立することにつながることになるという期待から、短期大学卒業者に対して短期大学士の学位が創設された。
- 準学士は学位足り得ないか?
準学士の称号を学位に昇格することなく、わざわざ「短期大学士」の学位を創設するのは何故か。
準学士の称号そのものが学位として問題なのではなく、準学士の称号が短期大学のみならず「高等専門学校の卒業生」にも授与されるものであるということに他ならない。
つまり、教育課程の段階としては短期大学、高等専門学校ともに同列の扱いであった。しかし、高等専門学校が技術的な専門教育を中心とした機関であるのに対して、短期大学はあくまで四年制大学に準じた学術的教育機関であり、その役割や意味合いは異なる。その上で国際化を迎えるに際しては、外国であれば短期大学の卒業生にも学位が授与されているのに対して日本の短期大学卒業生には学位がないということになれば、日本の学生にとって不利な状況となる場合も想定される。
高等専門学校はそもそも学術的な評価である学位を授与することは目的としたものではないという点も含めて考えれば、この際短期大学と高等専門学校において授与する称号を分けることには、それぞれの特徴を踏まえた対策といえる。
もちろん、高等専門学校の卒業生には大学への準学士入学や大学院修士課程、専門職学位課程への志願が適うことで、キャリア面での不利はない。(国際的な評価である学位がつかないという部分はあるが)学位に関しても、キャリア面で本当に評価される学位とはもちろん博士であり修士であることから、高等専門学校の学生も上級の課程への進学の道が開けており、専攻科を修了すれば大学評価・学位授与機構から学士の学位が授与される。学位における評価を望む場合は進学をすることでそのニーズを補えることだろう。
さらに、日本でも2003年から専門職大学院が創設され、学術的な学位ではない、専門職学位ができたことから高等専門学校から大学の工学部はもちろんだが、工業系の専門職大学院においてより上級の課程で学位の取得ができるという点では今後における学生の進路には選択肢は確実に広がりつつある。
学位の起源・世界における学位の歴史
学位の意味とその起源は、14世紀に欧州の大学における教授資格に始まり、学問領域における著作などでの業績、即ち学術的成果に対して授与された栄誉称号として発展を遂げ今日の学位として成立を見た。
世界でもっとも早く大学院が発達したのはアメリカ合衆国であり、そのため、近代的な学位制度は、アメリカ合衆国において最初に発達したといわれている。
世界における学位制度
アメリカ合衆国式の学位制度
大きくは、doctorate degree(博士学位)、master's degree(修士学位)、bachelor degree(学士学位)、 associate degree(準学位)とFirst-Professional Degree(第一専門職学位)からなる。この体系は、ほかの国々が自国の学位制度を作る際の参考にもしていることが多く、特にdoctorate degree(博士学位)、master's degree(修士学位)、bachelor degree(学士学位)の3つの学位については、多くの国々でこれらと同等の学位が設けられている。アメリカの学位は文学修士などの様な学問的学位と経営学修士いわゆるMBAの様な職業的学位とに別れ、それぞれにおいて評価や期待は異なる。 ちなみに米国では学位ビジネスといい、学術研究成果に基づかない根拠なき称号を売買するビジネスが暗躍しており、学位の社会的な評価の高さと詐欺の実態が浮き彫りとなっている。
現在の日本の学位制度も、おおむねアメリカ合衆国の制度に類似しているといわれる。
グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国式の学位制度
イギリスの学位はHigher Doctorate(上級博士)、Doctor of Philosophy Ph D(博士)、Master of Philosophy(修士)、Bachelor(学士)とある。 上級博士の学位は公刊された著書・論文の審査により授与されるが、名誉学位的意味合いが強い。イギリスの学位は博士が学士号取得後、2~3年、修士の学位が学士号取得後、1~2年の後に取得できるものとして、学士号取得後は進路に合わせ、博士か修士の学位を志すことになる。
ドイツ連邦共和国式の学位制度
ドイツ連邦共和国では、独自の制度があり、ディプロームやマギスターという独自の学位を設けてきた。しかし、国際化の進展とともに独自の学位が不便ともされるようになったため、アメリカ合衆国式の学位制度も創設されるに至っている。
Ph.D.
Ph.D.(ピー・エイチ・ディー)とは、アメリカ合衆国などの英語圏の学位の1つである。日本の学位でPH.D.に相当するものとしては、博士の学位が相当するといわれる。(詳しくは、Ph.D.を参照のこと。)
日本における学位の変遷と学術環境整備の歴史
明治時代 - 昭和前期
日本では、明治11年に東京大学に学位授与権(学士号)が与えられ、東京大学は、法学士・理学士・文学士・医学士・製薬士の5つを学位と定めた。当時、ほかには工部大学校や札幌農学校が学位を授与していた。明治12年には文部省が学術上功績顕著な科学者を優遇するために学術の発達に寄与するため必要な事業を行うことを目的として、東京学士院の創設がなされた。この東京学士院は学術支援を目的としつつ、研究者の研究支援と顕彰を目的とした研究機関、栄誉機関として日本の学術政策における重要な役割を担うこととなった。
明治19年に帝国大学令が発布され、翌20年に学位令が発布された。明治20年の学位令では、日本で教育を受けた者や一定の研究を行った者に、大博士または博士の学位を授与することになった。学位制度そのものは西欧の制度に由来するが、日本語としての学位呼称については、古く律令体制下における官職名がモデルとなっている。博士も中国王朝の制度を基につくられた大宝律令官制において設置されていた官名で大・中・小博士と三階級あった。博士の官職が置かれた部署としては陰陽寮に陰陽博士、暦博士、天文博士、漏刻博士、典楽寮に医博士、針博士、咒禁博士、按摩博士などの職が置かれており、学士という呼称も皇太子の教育官であった東宮学士に由来する。なお、律令官制下の博士の発音は“はかせ”であるが、学位の正式呼称としての博士は“はくし”と発音する。通称、日常生活の中では通称、俗称として“はかせ”と言うことも多いが、正規の用法ではない。
明治19年、東京大学が帝国大学に改組されて初代総長であった加藤弘之男爵が元老院議員に転進し、その謝恩会が開かれたのが発端となり、同大学卒業生により学士会が創設された。現在は社団法人化し学士会館を中心に旧帝国大学出身者の親睦団体となっているが、当時稀少だった学士号がそのまま会の名前になるなど、当時の学士号は非常に重みのあるものであった。 明治20年に発布された学位令では、各博士会の審査を経て、授与権者の文部大臣が授与するものとなった。このため大学が授与できるとされた学士号は称号と位置づけられることとなった。明治20年の学位令発令から平成3年まで、学士号は長い年月、学位ではなく称号として扱われた。(ただし、学校教育法の附則により、現在では、学士の称号を授与された者は学士の学位を授与された者とみなすことになっている。)
学位令は明治31年に改正され、学位は法学博士、医学博士、薬学博士、工学博士、文学博士、理学博士、農学博士、林学博士および獣医学博士の9種とされた。明治19年の学位令が定めていた大博士の学位を授与された者は1人もなく、大博士の学位は、このときに博士の学位に統合されている。当時の学位は学術的能力の指標としての意味もあるが、より栄誉としての意義が強かった。よって封建社会からの位階勲等あるいは爵位や軍人警察の階級などと並んで称される権威あるものであった。いわば当初の学位とは学術上の勲章の様なものであったといえよう。
(例) 従二位勲一等男爵医学博士北里柴三郎
明治34年、明治法律学校(後の明治大学)で明法学士の称号を授与する制度がはじまる。また、明治39年には学術状況を高めるために、東京学士院が帝国学士院に改組された。44年4月には日本の学術成果の向上と業績への顕彰を目的として帝国学士院恩賜賞が創設された。また同年11月には帝国学士院賞も創設され、日本の学界の育成促進を支援し、これを大いに顕彰することとなった。大正9年には、学位令の改正があり、学位授与権が再び大学に移され、博士会制度も廃止された。
一部の旧制専門学校においては、得業士の称号を付与するという制度もあった。
昭和中期 - 平成以降
第二次世界大戦降伏後、日本全体の制度改革によって学校教育法が制定され、学位令は廃止された。学位制度は、学校教育法とその施行省令である学位規則に基づくものとされた。戦後の学術環境の変化としては昭和22年には帝国学士院は日本学士院に改組されて現在に至っている。この改組によって帝国学士院恩賜賞は日本学士院恩賜賞に、同じく帝国学士院賞は日本学士院賞に改称された。この改組によっても日本学士院が文部省の置く研究機関であると同時に、研究者の間での支援機関、栄誉機関であることには変わりなく、同院のおく日本学士院賞は戦後の学術上の栄誉としては文化勲章、文化功労者に次ぐ栄誉として定着した。
昭和28年には、学位規則が公布され、日本の学位において、それまでの博士の学位に加えて修士の学位が創設され、日本の学位は大きく2種類とされた。それ以降、日本の大学院は、修士課程・博士前期課程(標準修業年限2年)、博士後期課程(標準修業年限3年)となり、所定の単位を修得し、学位論文その他の要件を満たす者に対して博士または修士の学位が授与されるようになった。学術環境の面では昭和31年、日本学士院法が制定されることとなり日本学士院は日本学術会議からの分離独立がなされた。
昭和61年には、価値観、生活環境の多様化と高齢化社会の到来に向けて生涯学習の必要性が高まり、大学のほかに学位を授与する機関の創設について検討することが提言された。これにより、平成3年に文部科学省の施設等機関として学位授与機構(現在の独立行政法人大学評価・学位授与機構)が創設され、防衛大学校、防衛医科大学校、海上保安大学校や水産大学校などの特定の大学校の卒業者や大学などで一定の学修を行った者に対して、学力の審査を経て、学位が授与されるようになった。また、日本の学術環境にも変化があり日本学士院においてエジンバラ公賞が創設され、研究業績へのさらなる支援と顕彰がなされることとなった。また、平成3年における学校教育法の改正では、「学士の称号」が「学士の学位」に変更され、日本の学位は、学士の学位が加わって、学士、修士、博士の3種類となった。また平成3年の学校教育法の改正では、短期大学または高等専門学校を卒業した者に準学士の称号が付与されることとなった。
平成6年には、文部省告示により、学校教育法にいう学校(学校教育法第1条の規定に基づく学校、1条学校)ではない専修学校の専門課程(専門学校)を修了した者にも専門士の称号を授与することとなった。さらに平成15年、高度専門職業人養成の観点から、法曹を養成する法科大学院を中心に、専門職大学院の設置が認められた。当初、専門職大学院は研究者の養成ではなく高度専門職業人育成の観点から、博士の学位でも修士の学位でもない第3の学位を創設しようという動きがあった。
その呼称決定における審議の過程で中国や韓国での修士の学位にあたる「碩士」(せきし)という名称で新たな学位を置くべきかという議論もあったが、最終的には第3の学位たるべき実務者のための学位は、学校教育法に「文部科学大臣が定める学位」として規定された上でそれぞれの分野における事情を踏まえて専門職学位と総称されることとなった。その上で具体的な名称については審議を経て、学位規則において法科大学院修了者には「法務博士(専門職)」、その他の専門職大学院修了者には「○○修士(専門職)」という専門職学位を授与することとなった。
専門職学位が第三の学位である以上、博士、修士という表記はあくまで国際標準に照らした通用性を確保するために便宜的に通用しやすい呼称を採用したものであり、研究領域の大学院で授与する博士、修士とは概念を異にする。よって、専門職学位における博士、修士という区分は研究学位の博士・修士の差ほどはない。むしろ国際的には学術的分野においては法務博士(専門職)の学位は学術分野の修士の学位よりも下位に扱われることとなろう。これは専門職学位の期待するところがあくまで特定の分野や職業におけるキャリア形成であったり、スキルの向上を主眼としているからに他ならない。今日では、短期大学の卒業者にも国際的な基準に合わせて学位を授与しようという動きがあり、中央教育審議会の答申を経て、新たに「短期大学士」という学位を創設する法案が国会に提出されている。
日本における学位制度
●日本の学位
日本の学位には、学校教育法で定められているものとして「学士」「修士」「博士」の学位が、学校教育法に規定があるが学位規則で名称が定められているものとして「専門職学位」がある。 短期大学卒業者に対して授与される「短期大学士」の学位を付加する学校教育法改正案が上程されている。
学士の学位
大学の学部における所定の課程を修め、卒業を認められた者、大学校を卒業して独立行政法人大学評価・学位授与機構大学評価学位授与機構の学位審査を合格した者、その他大学評価学位授与機構に学位を申請し審査を合格した者に授与される学位。学士の学位は大学卒業者に対しては当該大学から、それと同等の能力を持つ者に対しては大学評価・学位授与機構から授与される。 学位令発布当時は学位授与権が文部大臣にあったため、帝国大学などが授与する学士号は当初、称号とされた。平成3年以降、学位に編入された。 独立行政法人大学評価・学位授与機構は、防衛大学校、防衛医科大学校、海上保安大学校など学校教育法による大学以外でかつ他の法律に規定がある教育施設(大学校など)を卒業した者に学位を授与する。また、短期大学や高等専門学校を卒業し、一定の学習を行い大学卒業と同等の学力があると認められた者に学士の学位を授与する。
日本では、明治20年から平成3年までの間学位ではなく称号として扱われた。学士の授与権は常に大学が持っていたため、明治・大正期に出版された古い学術書の著者名に例えば「醫學士」(医学士)などと冠されているのを見れば、大学の数が少なかったころは学士は充分に価値の高い称号だったことが伺える。
修士の学位
修士の学位は、大学院博士前期課程(修士課程)修了者に対しては当該大学から、それと同等の能力を持つ者に対しては独立行政法人大学評価・学位授与機構から授与される学位である。日本では昭和28年の学位規則制定後に現れた新しい学位である。
博士の学位
博士の学位は大学院博士後期課程(博士課程)修了者に対しては当該修了した大学や防衛大学校や防衛医科大学校の研究科の修了者に対しては独立行政法人大学評価・学位授与機構から、それと同等の能力を持つ者に対しては大学や独立行政法人大学評価・学位授与機構から授与される学位である。博士後期課程(博士課程)を修了するには、大学に学位論文を提出し、審査に合格しなければならない。通常は博士号の取得を志した場合、博士論文提出までに修士課程の時分から学会での発表を行い、博士課程在籍中に2本から3本の投稿論文を執筆するといった業績が求められるのが一般的な博士の学位審査を受ける要件となっている。博士課程を修了したものをさす課程博士と博士課程修了によらない、いわゆる論博つまり論文博士があるが最近は論文博士を縮小するようになってきている。
博士の学位を授与された者には、学位論文を出版するとともに、国立国会図書館に納本する義務がある。
人文科学や法学、理学などの専攻分野において博士の学位は、以前は大学の教員が生涯の研究の集大成として取得するものであったので、取ろうと思ってもなかなか取らせてもらえず大学の教員といえども博士の学位を持っていない人が多かった(分野によっては今でもそうである)。対照的に医学の分野においてはとらなくても困らないがとっていないと気持ちが悪い「足の裏の米粒」のようなものと言われている。近年は、博士号は研究者の目標ではなくスタートラインだと考えられるようになり、平成3年の学位規則改正後は若いうちから博士号をとる方向に大学院の指導も変化してきている。
なお、「学位をもっている」といえば日常的には博士の学位をさす。
英語の表記ではDr.、DR.、またはPh.D.と記述することが多い。
専門職学位
専門職大学院を修了した者に授与される学位。 「法務博士(専門職)」は法科大学院の修了者に、「○○修士(専門職)」はそれ以外の専門職大学院を修了した者に授与される。 法科大学院の場合は標準修業年限が3年で、法学部卒などの法学既習者は2年で修了することも可能である。その他の専門職大学院では標準修業年限が2年となっている。高度専門職業人育成の観点から修了に際して学位論文は必須ではなく、院生に課さない大学院も多い。但し、その代わりとしてリサーチペーパーの提出やその後において大学院の修士課程ないしは博士課程進学希望者については、入学審査に学位論文の提出を求められるケースもあることから、希望者は論文指導を受け学位論文を提出するという選択肢を置いている場合が多い。また、中には学位論文を提出を義務付ける大学院も一部にはある。
短期大学士の学位
短期大学を卒業した者に授与される学位として新設される学位。
大博士の学位
明治20年の学位令で、大博士の学位が置かれ、文部大臣が授与することとなっていたが、授与例は1例もないまま廃止された。
学位や称号の授与
なお、学位は、大学又は大学評価・学位授与機構の学位記授与式(学位授与式)にて学位記の交付を以って授与される。それに対して準学士の称号は卒業証書授与式にて卒業証書を交付することで授与される。
早稲田大学などのように学帽と呼ばれる房のついたキャップ、式服と呼ばれるガウンと学位章というフードの授与もなされる大学もある。大阪大学、桜美林大学、大阪学院大学、桃山学院大学などのように学位記授与式や卒業式の間だけ式服や学位章を貸与する大学もある。
博士号・修士号・学士号の意義
博士号は日本及び海外でも権威があり、「末は博士か大臣か」という言葉もあるくらいに信頼の高い学位である。日本の学術研究をリードしていく人材の育成と国際機関などにも人材供給していく上では大きな意義を持つ。
博士学位の周辺事情としては理系の研究領域においては博士号は授与例が多い。文系においては、授与例が少ないという傾向にある。大学教授でもすべてが保有しているわけではなく割合としては多いわけではない。逆に博士号を有する人口の中で無職であるという層も多く、上記までの説明にある通り、余剰博士といわているという側面もある。
日本では博士号にはそれなりに高い信用があるが、実際のところは最大限に活かされているかという点では、大学院教育が諸外国と比較して遅れている面があったり、博士の学位授与が厳格でそこまで育成する時間とコストが多大であるという面もある。また、大学教授や研究者になるには学位があるにこしたことはないが、必ずしも必須ではないため、取らなくても支障はないが、取らないと気になるという「足の裏の米粒」と表現される場合も多い。その上、博士の持つ能力を一般社会ではまだまだ活かせていないという側面も浮き彫りになっている。
日本の研究者になること、博士の学位をとることは非常に至難であり、厳しい世界であるが、大成した研究者は文部科学省の機関である日本学士院の会員に選ばれる機会にも恵まれる。日本学士院は研究機関であると同時に研究者の支援を目的としていることから同院の会員に選ばれた者は、会員の身分が終身保障を受け文化功労者よりも低い年金も支給される。さらに国家公務員としての待遇を受けることから給与も受ける。
一方、国際機関職員や海外での勤務の伴う仕事においては、博士の学位は絶大な効果を持ち、国際的な人材育成における戦略的な博士人口の拡大も必要となっており、その意味で博士の学位に期待されることは、けしてシンクタンクの研究者や大学教授ばかりではなく、国際社会などの分野に人材を供給していく上でのキャリア支援の部分もある。国際社会では国家元首や閣僚、大使といった政府要人も博士号保有者も多くおり、敬意を表して呼称する場合は相手の官名、氏名の後に博士閣下と呼称されることがある。
修士の学位はシンクタンク研究員や医療製薬関係の分野や理工系の分野での需要が多い。また、臨床心理士の資格では心理学の修士号が必須であり、学校教諭の専修免許の資格を認定する上でも修士号が必須要件になっている。最近では、生涯学習時代に入り社会人大学院というものも増加しつつある。また、日本では公務員に国内外の大学院に派遣して修士号をとらせるなどの制度も定着してきていることから次第に大学院修了人口が増え、今後ステータスとしても、あるいはスキルとしても認知を得られる部分も期待される。国家資格である税理士の取得では大学院商学研究科博士前期課程の修了者が大学院法学研究科博士前期課程(修士課程)へ、大学院法学研究科博士前期課程修了者は大学院商学研究科博士前期課程(修士課程)に修学し学位論文を国税庁に提出した場合、かつては税理士の資格試験が免除となった(いわゆる「ダブルマスター」)。現在は、一部の試験免除が認められる状況にある。また、自衛隊では幹部候補生試験に合格した者で通常は三尉に補せられるところを、修士号保有者は二尉に補せられるといった尊重を受ける機関もある。修士号保有者が社会的に増加していくことは、日本の研究人口も増加し高等教育水準の向上によりあらゆる効果が期待されるという部分もあるが、リクルートメントや人材活用の難しさが根底にあることが当面の問題である。
学士号は明治期においては、大学卒業人口が少なかった面もあり、「学士様」と尊称された時期もあるが、最近では大学学部卒業者人口が拡大し、いわゆる大卒が一般化したことで、学士の学位自体が意識されることは少ない。これまで、資格取得の要件や他大学並びに他学部への学士入学の機会や、大学院進学の要件として保有することが求められてきたことから、学士号は社会なり次のステップアップを図る上での基礎資格的性格を帯びてきたともいえる。但し、中卒、高卒或いは高専卒、短大卒など大学を卒業せず社会に出た人にとって、この生涯学習の時代にあっては学士号もひとつの目標としてとらえる人も多い。これは大学評価・学位授与機構などの機関が発足し、大卒者以外にも学位取得の門戸を広げた結果によるものであり、教育を受ける権利などを鑑みてもとても意義のある傾向である。また、既に学位を取得している人も複数の学位を取るべく同機構の審査を受ける人もおり、学ぶ意欲、そして目標において学位取得を志願している人口も増えつつあるというのが現状である。特に現在の教育事情はイジメの深刻化により不登校者の数も多い現状にある。フリースクールなどに通ったり通信教育や独学により大検を取る人も多い。たとえ様々な事情はあっても、能力と意欲のある人に学位取得の機会を広げることによって、社会における可能性の拡大や再チャレンジに対して大きな原動力としていくことが期待される。
但し、学士号を取得することは確かに大卒者と同じ学力を有する証明にはなるが、キャリアやリクルートの面で必ずしも大卒者として遇せられるかどうかは別の話である。学士号を取得する機会を広げると同時に、より学士の学位が社会においてキャリアプランのバックアップにつながることが重要である。
●日本の称号
法律で定められているものとして「準学士」が、文部科学省の告示で定められているものとして「専門士」があり、そのほかに各大学が独自に授与する「名誉博士」などが有名である。
準学士の称号
短期大学、高等専門学校を卒業した者に付与される。学校教育法に定めがある。称号表記は称号に括弧書きで専攻名を記す。
例 準学士(工学) 英文表記 Associate Degree of Engineering
専門士の称号
- 修業年限が2年以上のもの。
- 課程の修了に必要な総時間数が1700時間以上であること。
- 試験等で成績評価を行い、その評価に基づいて課程修了の認定を行っていること。
を満たす文部科学大臣が認定し、官報で公示した専修学校の専門課程の課程を卒業した者に授与される。「専修学校の専門学校の修了者に対する専門士の称号の付与に関する規程」(平成6年文部省告示第84号)に定めがある。文部科学省の指導により、専門士の表記は、「専門士(○専門課程)」と括弧書きで修了した分野の専門課程や学科の名称が付記されることになっている。最近は民間資格などで○○専門士というものもあるが、専門学校の称号である専門士とは関わりはない。
専門士の例:専門士(工業専門課程)
名誉博士の称号
日本においては、各大学が独自に授与するものである。多くは授与する大学に関係する人の中で、著名な研究を行ったり、社会的に有名になった人に授与される。学術的評価というよりは社会的な活動なり功績を称えるという顕彰の意味合いが強い。通例、各大学の規則に定めがある。
得業士の称号
旧制の専門学校、特に医学専門学校の卒業生などの称号として、一部の学校で授与していた。現在は廃止。
準学士と専門士 それぞれの称号の意義
上記までの通り、現行の短期大学(執筆:2005年)及び高等専門学校は準学士の称号、専門学校では専門士の称号を付与してきた。
準学士については、短期大学卒業者、高等専門学校卒業者の社会的評価に付加を与える意味で称号の創設が求められ、教員免許において二種免許取得の要件に準学士の称号取得が課せられたことで一定の意義が定着した。
また、これまで大学学部の3年生に準学士入学と称して編入学できる制度も確立されてきたが最近では、短期大学卒業者、高等専門学校卒業者にも大学を超えて大学院博士前期課程(もしくは修士課程)並びに専門職大学院専門職学位課程に志願できる制度が定着し、準学士の可能性は広がりつつある。
これは優秀な人材が集る高等専門学校などでは数多ある大学よりも低く評価され、技術能力に対して正当な評価とは言い難い面があり、高等専門学校卒業者にも大学院進学の道が出来たことは大きな意義があった。
しかし、学位が国際標準であるのに対して称号は国内でのみ通用するものである。よって、準学士の称号を授与してきた短期大学では国際的評価につながる学位として短期大学士の創設を求め、これが認められた場合は準学士の称号は高等専門学校特有のものとなる。
しかし、実態として準学士であっても大学院進学の道がある以上、短期大学士と準学士の相違点は国際的に公認されるかどうかという点に留まるという見方もある。短期大学士の学位創設の後も国内的な評価としては大学(学士)>短期大学(短期大学士)=高等専門学校(準学士)=専門学校(専門士)という形で並列化しているともいえる。企業によっては短期大学卒・高等専門学校卒・専門学校卒とを厳格に区別するところもあれば、同格とするところもあり、社会的評価としてはまばらでもあることから一概にはいえないのが現状だ。
とりわけ短期大学をとりまく情勢は依然と厳しく、こうした情勢に対して短期大学士という評価も含めて、学生のニーズや社会的な人材供給への期待にどう応えるかという点が重要となってくる。
さて、専門士の称号については、これは短大や高等専門学校の卒業生に与えられている「準学士」の称号に対応してつくられたものである。専門学校の社会的評価の向上と、留学生からの要望が増大したことなどの背景があり、こうしたニーズに応じて創設された。専門士の称号は上記までの紹介の通り、学校教育法第一条の定める学校ではないことから、あくまで職業訓練のための教育機関である学校の称号として、学位としての評価を受ける性質のものではない。
しかし、実質的には準学士と同列の評価を受け、専門学校卒業者がストレートに大学院博士前期課程(もしくは修士課程)並びに専門職大学院専門職学位課程に志願し、合格の後入学できる道があることから、社会構造の変化にともない専門士の地位も向上しつつある。
ただ一方で、この称号が格別高い能力を保障し、リクルートメントの面で社会がそれを高く評価するかという点には疑問であり、むしろ専門学校在学中にて得た資格なり能力・技術その他の面で評価されているという方が実態に近いだろう。
また、称号とは別に専門学校のリクルートメントはかなり厳しいのも現状であり、こうした点では専門学校のメリットを如何に活かしていくかが問われてくる。
いずれにせよ、専門士の称号を通じて専門学校卒業者には今後社会の門戸が広がりつつあることは間違いなく、学歴社会の中で一律大学入学思考の様な慢性的進路選択を迫られてきた、これまでの青少年の進路に多様性と可能性を与えるきっかけにはなったのではないかとも考えられる。
以上の点からいえば法的機会均等の面では大学学部卒も短期大学、高等専門学校、専門学校ともに同一の評価には乗っているともいえ、就職の評価にもつながる学歴面や資格取得面で多少の差異が出る点はともかく、機会の拡大の面ではかなり階級的な学歴構造から多様性の含む学校教育制度へと転換しつつあるのではないか。
その他の称号(学位称号ではないもの)
名誉教授の称号
名誉教授の称号は学校教育法に規定された称号であって、大学が名誉教授称号授与規定などに基づいて個別に授与するものである。いわゆる学位やその延長線上にある称号とは違い、大学の学長、副学長、学部長などの歴任者や大学教授として長年勤務した者、設置者である法人の理事や監事など、または大学において特に功績ある者に授与される。長年の研究・大学行政・教育への貢献から名誉教授称号授与式などで称号の記あるいは称号辞令の付与をもって称号を授与される。名誉教授の称号は非常に権威があり、叙位叙勲の際にも考慮される指標にもなっている。特に称号に保障はつかないものの、社会的信用は大きいものである。
大学の授与する称号
大学への寄付を行った篤志家などに対して、名誉校友、推薦校友、学賓、塾員、賛助員、維持員など個別の大学にて定める称号を贈る制度もある。これは学位やその延長線上にある称号とは違い、法的あるいは行政の政令に基づくものではない。大学としての感謝の意を示すものである。
大学病院の授与する称号
大学附属病院などで功績ある医師に名誉院長などの称号を贈る制度も存在する。法的なものではなく機関の定める規定に基づく。
学会の授与する称号
個々の学会の定める称号として、その学会で発表された業績或いは学会の中で功績を上げた者に対して名誉会員やフェローなどの称号を贈る制度なども存在する。 法的あるいは公的性格は有さず、学位称号としての性質とは異なる。
市民カレッジなどの称号
生涯学習の広がりにともない、大学や行政が市民カレッジや市民塾などの講座を主催し、法的な学位に基づかない大学として塾員の称号を授与するケースがある。 これは学術上の法的信用性を付与するものではなく、修了に際しての記念あるいは象徴的な意味合いが強い。
団体などの称号
各種団体が特定の業種並びに知識を社会に広めるため、大学に模した講座等を主催して、独自の称号を贈るケースも存在する。 法的公的信用を付与するものではないが、その業界の定める特典を受けるという意味合いの性格のものといてよい。