「コバルト」の版間の差分
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コバルトの名称と元素記号は、[[ドイツ |
コバルトの名称と元素記号は、16世紀[[ドイツ]]の[[銀山]]鉱夫が、腐食性を有し有毒ガスを発する有害な鉱物として「コベルト」等と呼んだコバルト化合物鉱石から由来する<ref name="EtymWortb2012-ed-kluge&seebold-kobalt"/><ref name="ball2001"/>。 |
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この鉱石名はドイツに伝承される家の精霊「[[コボルト]]」と同じ語であろうとする説明と<ref name="EtymWortb2012-ed-kluge&seebold-kobalt"/>、コベルという鉱山の精霊ノームに由来するという両方の説明<ref name="ball2001"/>{{Refn|group="注"|Ballは精霊の名も"kobelt"としてしまっているが、16世紀当時の文献においては"kobel"が正しく、ルター改革派の Mathesius 説教文では、Ballの引用にはないが、Wothersの引用では精霊(を悪い魔となじって)kobelとしている<ref name="wothers2019"/>。また本家のアグリコラ(すなわち当時の鉱物学の権威でもっぱら言及される著者)がラテン語で"cobalus, cobeli"とした鉱物の精霊はドイツ語で kobel にまちがいない<ref name="agricola1657-gloss"/>。}}が現在において存在する(要は精霊の仕分け・分類の違いだが)。また、精霊と関係しない、その他の説も存在する<ref name="mellor1935"/>。(詳述は{{section link||語源}}参照)。 |
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なお、日本語における「コバルト」というカナ書きは、オランダ語からのものである。 |
なお、日本語における「コバルト」というカナ書きは、オランダ語からのものである。 |
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=== 語源 === |
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元素コバルトの命名は、「コベルト」({{lang|de|kobelt}})鉱石などと16世世紀ドイツの銀山鉱夫が呼んでいた、やっかいなコバルト化合物鉱石に由来する。それは有毒ガスを発し、腐食性があって履物をおかした<ref name="EtymWortb2012-ed-kluge&seebold-kobalt"/><ref name="ball2001"/>。コバルト化合物は太古より青色素に使用されてはいたが、当時の[[製錬]]技術ではまだ純粋な金属を抽出する選別はできなかった<ref name="wothers2019"/>。 |
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その第一史料は[[ゲオルク・アグリコラ]]の記述の「コベルト鉱」(ラテン語では{{lang|la|coballum, cadmia}}と表記、前者は音写で、後者は意訳<ref name="agricola1546"/><ref name="agricola-tr-hoover1912"/>、ドイツ語は {{lang|de|kobelt}}<ref>{{harvp|Agricola|1546}}: (巻末語彙)"{{URL|1=https://books.google.com/books?id=F6tlCB1PdJoC&pg=PA476 |2=Cadmia metallica/ koblt}}", p. 476.</ref>{{Refn|同時代に、早い段階でアグリコラのドイツ訳本も現れている。フーバー夫妻ら英訳者も、ラテン原文のみならず、このドイツ訳を参照している<ref>{{harvp|Agricola|Hoovers trr.|1912}}, {{URL|1=https://books.google.com/books?id=TvFYAAAAYAAJ&pg=PA616|2=p. 616}}</ref> 。ドイツ訳本にもやはり"kobelt"と記述される<ref name="ball2001"/>。}})である。<ref name="ball2001"/><ref name="wothers2019"/>。「コベルト鉱」とは別に、アグリコラはよく似た名の「コベル」と({{lang-la|cobalus, cobali}}、ドイツ語形 {{lang|de|kobel}})いう鉱山の精霊について著述するも<ref name="agricola1614"/><ref name="agricola-tr-hoover1912"/>、これらは関連付けてはいなかった。 |
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少し後、「コベルト鉱」は「コベル」という悪魔のしわざという関連付けを、[[ルター主義|ルター改革派]]の神学者{{仮リンク|ヨハンネス・マテシウス|en|Johannes Mathesius}}(1562年)が説教で行い<ref name="ball2001"/><ref name="wothers2019"/>、さらには18世紀末の科学追求者{{仮リンク|ヨハン・ベックマン|en|Johann Beckmann}}(原文ドイツ語、英訳1797年)が、「コベルト鉱」の名は、「コベル」という精霊の名より形成されたと明言した{{Refn|ベックマンは「コバルス」という精霊から成った語、と言い廻しするが<ref name="wothers2019"/>、アグリコラの「コバルス」はすなわち「コベル」である(前述)。}}。すなわちそれは鉱物の精霊であり、[[ノーム]]の一種である<ref name="ball2001"/>{{Refn|ウォザーズも、上述のマテシウス説教やベックマンの語源説を、引用した解説を、"Gnomes and Goblins"と題した節に置いている<ref name="wothers2019"/>。}}。以上は、「コボルト」を抜きにした近年の語源解説である。 |
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グリムらはしかし、「コボルト」と「コベル」を同源語として辞書に掲載していた<ref name="Grimms-DW-kobold"/>{{Refn|Grimms ''DW'' "kobold" III 3) nebenformen.<ref name="Grimms-DW-kobold"/>}}、すなわち家精「コボルト」の語源由来をラテン語の「コバルス」(ギリシア語の「コバロス」)にみたが<ref name="grimm-tr-stallybrss1883">[[ヤーコプ・グリム]]『ドイツ神話学』により詳しい。Stallybrass 英訳 (1883年)『{{URL|1=https://books.google.com/books?id=8ektAAAAIAAJ&pg=PA502| 2=Teutonic Mythology}}』、Vol. 2, p. 502。</ref>、これはそっくりそのまま、鉱物精「コベル」の訳語に当てられた語である(上述)<ref name="agricola1614"/><ref name="agricola-tr-hoover1912"/>。よってグリム辞書は「コバルト」についても、ベックマンと同じ推理(精霊からつけられたに違いない)を前提とするのだが{{Refn|『グリム辞書』"Kobelt"では、"銀を盗み、悪い坑内空気など健康害をもたらす鉱石を置いていくとされる、精霊の「山のこびと」 Bergmänuchen{{ママ}}"から名付けられたとする<ref name="Grimms-DW-kobalt"/>。}}、その鉱物(コバルト)も精霊(コボルト)も"遡源は同じ語"、と述べている{{Refn|"namlich urspr[ünglich] ein wort"<ref name="Grimms-DW-kobalt"/>}}。20世紀初頭の『[[オックスフォード英語辞典]]』初版も同様で、「コベルト」鉱と「コボルト」は、しょせん同じ言葉ではないか、とし、「コベル」には触れていない<ref name="OED-cobalt">{{OED|cobalt}}; [[:en:James Murray (lexicographer)|Murray, James A. H.]] ed. (1908) ''A New Eng. Dict.'' '''II''', s.v."[https://books.google.com/books?id=CUPAIeSbvSIC&pg=PA562 cobalt]"</ref>{{Refn|group="注"|1911年版の『[[ウェブスター辞典]]』では、コベルに触れるがコボルトと同語にみている<ref name="Webster1911-cobalt">[[:en:William Torrey Harris|Harris, William Torrey]]; Allen, Frederic Sturges edd. (1911) ''Webster's New International Dictionary'', s.v."[https://books.google.com/books?id=1n3FLI97mDkC&pg=PA426 cobalt]"</ref>}}。また『ドイツ語語源辞典(Etymologisches Wörterbuch)』(第25版、2012年)も同様である<ref name="EtymWortb2012-ed-kluge&seebold-kobalt"/>。 |
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ただし、グリムが同一視の土台とした、「コボルト」(精霊)をラテン/ギリシアの「コバルス/コベロス」に見る語源は旧説として排されていることは{{Refn|『コボルト』オペラの評論ではあるが、カール・グラーゼナップの解説を参照<ref name="glasenapp1911"/>。その後の語源学者によって、kobold/kobolt を kob "家、室" + walt "力、権力者"という語源説にとって代わられた{{sfnp|Glasenapp|1911|p=134}}。もっとも、この代替説を"新説"と呼ぶには語弊があり、なぜならグリムも概ね既知だった説だからである。グリム辞書"kobold"の語源の部には、アングロサクソン語 {{lang|ags|cofgodas}}「家神」に関係する語源を説いた{{仮リンク|クリスティアン・ヴィルヘルム・ミヒャエル・グライン|de|Christian Wilhelm Michael Grein}}(1862年)の説が掲載される。}}{{Refn|『ドイツ語語源辞典』も、じつは"Kobold"の項ではグリム『神話学』が提唱した語源旧説でなく、後の有力説(「家の+力ある者」)を掲げている<ref name="EtymWortb2012-ed-kluge&seebold-kobold"/>。}}、留意すべきであろう{{Refn|group="注"|グリム兄弟の旧説前提の説明をまとめてみると:"Kobald/Kobolt"は、"kobal (cobalus)"のような語形に、ドイツ語ではモンスター系に接尾される -olt から形成された、とし<ref name="grimm-tr-stallybrss1883"/>、辞書の「コボルト」の項でも、「コベル」は「コボルト」の[[指小形]]ではないかと憶測し、強く関連する語、同根語だろうと目している(Grimms ''DW'' "kobold" III 3) nebenformen.<ref name="Grimms-DW-kobold"/>)<ref name="Grimms-DW-kobold"/><!--すなわち鉱石は-tがなぜかついたまま、精霊は指小形によりまたとれてしまった、というような説明だが、この状況をどう形容するかはしかるべき学者の解説を俟たねばならない-->。}} |
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====その他語源説==== |
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また精霊と関連する語源(換言すればギリシア語{{lang|grc|κόβαλος}}を遡源とする説明)は、かならずしも盤石な説ではなく、他の精霊とは関係しない可能性も提唱されている<ref name="mellor1935"/>。 |
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ある異説によれば、「コベルト鉱」というのは精霊ではなく、「バケツ」を意味するキューベル({{linktext|Kübel|perf=wikt:en}})に由来する(カール・ミュラー=フラウロイトの書籍にみつかる)<ref name="mueller-fraureuth1906"/>。このバケツの事は、アグリコラは {{lang|la|modulus}} というラテン語を充てているが、ドイツ語の {{lang|de|kobel}} に当ると語釈で示しており<ref>{{harvp|Agricola|1546|p=481}}: {{lang-la|Modulus}} {{=}} {{lang-de|Kobel}}</ref><ref>グリム辞典の各項も参照:Grimms, ''Deutsches Wörterbuch'', Band 5, s.v. "{{URL|1=https://books.google.com/books?id=ERSZv4n2zpEC&pg=PA1539 |2=Kobel}}"及び "{{URL|1=https://books.google.com/books?id=ERSZv4n2zpEC&pg=PA1541 |2=Köbel}}" and "{{URL|1=https://books.google.com/books?id=ERSZv4n2zpEC&pg=PA2489 |2=Kübel}}"</ref>、作中でも随所でこのバケツにふれている。 |
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また、「コベルト鉱」の元は精霊と関係ない別のギリシア語{{lang|grc|κωβάθια}}(「硫化ヒ素」<ref name="Liddell&Scott-kobalos">Liddell and Scott (1940). ''[[A Greek–English Lexicon]]''. s.v. "{{URL|1=https://www.perseus.tufts.edu/hopper/morph?l=kwba%2Fqia&la=greek&can=kwba%2Fqia0&prior=kaloka)gaqi/a |2=kwba/qia}}". Revised and augmented throughout by Sir Henry Stuart Jones with the assistance of Roderick McKenzie. Oxford: Clarendon Press. {{ISBN|0-19-864226-1}}</ref>)からの由来説も併存する{{Refn|{{仮リンク|ピーター・ウォザース|en|Peter Wothers}}は、有毒ガスを発する物質のギリシア名 ''cobathia''による語源、と説明{{sfnp|Wothers|2019|p=47}}。}}{{Refn|『ドイツ語語源辞典』"Kobalt"の項も、"{{transl|grc|kōbathium}}"の語言説を併記している<ref name="EtymWortb2012-ed-kluge&seebold-kobalt"/>}}。 |
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== 歴史 == |
== 歴史 == |
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そのほか、[[鉄]]よりも錆びづらく[[酸]]や[[アルカリ]]に侵食されにくい性質を利用し、コバルト含有率を大幅に高めたコバルト合金は、[[はさみ|鋏]]などの高級素材として利用されている。 |
そのほか、[[鉄]]よりも錆びづらく[[酸]]や[[アルカリ]]に侵食されにくい性質を利用し、コバルト含有率を大幅に高めたコバルト合金は、[[はさみ|鋏]]などの高級素材として利用されている。 |
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[[ステライト]]に代表される、コバルト・クロム・タングステンあるいは[[モリブデン]]・[[炭素]]を使った4元系の合金は磨耗に強く、表面強化が必要となる工業分野において幅広く利用され始めている。この合金は[[鋳型]]として使用するほか、粉末として吹きつけることや[[溶射]]して利用することも可能であり、利用技術の発達によって[[航空機]]の表面にコー |
[[ステライト]]に代表される、コバルト・クロム・タングステンあるいは[[モリブデン]]・[[炭素]]を使った4元系の合金は磨耗に強く、表面強化が必要となる工業分野において幅広く利用され始めている。この合金は[[鋳型]]として使用するほか、粉末として吹きつけることや[[溶射]]して利用することも可能であり、利用技術の発達によって[[航空機]]の表面にコーティングすることなどをはじめ、広い分野で実用化が始まっている。 |
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; [[マルエージング鋼]] |
; [[マルエージング鋼]] |
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=== 出典 === |
=== 出典 === |
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<ref name="agricola1546">{{cite book|last=Agricola |first=Georgius |author-link=:en:Georgius Agricola |chapter=Bermannus, sive de re metallica dialogus |title=Georgii Agricolae De ortu & causis subterraneorum lib. 5. De natura eorum quae effluunt ex terra lib. 4. De natura fossilium lib. 10. De ueteribus & nouis metallis lib. 2. Bermannus, siue De re metallica dialogus lib.1. Interpretatio Germanica uocum rei metallicæ, addito Indice fœcundissimo |location=Basel |publisher=Froben |year=1546 |orig-year=1530 |url=https://books.google.com/books?id=F6tlCB1PdJoC&pg=PA432 |pages=432–433<!--421ff-->}}</ref> |
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<ref name="agricola1657-gloss">{{cite book|last=Agricola |first=Georgius |author-link=:en:Georgius Agricola |chapter=Animantium nomina latina, graega, q'ue germanice reddita, quorum author in Libro de subterraneis animantibus meminit |title=Georgii Agricolae Kempnicensis Medici Ac Philosophi Clariss. De Re Metallica Libri XII.: Quibus Officia, Instrumenta, Machinae, Ac Omnia Denique Ad Metallicam Spectantia, Non Modo Luculentissime describuntur; sed & per effigies, suis locis insertas ... ita ob oculos ponuntur, ut clarius tradi non possint |location=Basel |publisher=Sumptibus & Typis Emanuelis König |year=1657 |orig-year=1530 |url=https://books.google.com/books?id=uCClFLX0CwUC&pg=PA762 |at=p. [762]<!--761ff--> |quote={{smallcaps|Dæmonum}}: ''Dæmon subterraneus trunculentus'': bergterufel; ''mitis'' bergmenlein/kobel/guttel}}</ref> |
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<ref name="agricola1614">{{cite book|last=Agricola |first=Georgius |author-link=:en:Georgius Agricola |editor=Johannes Sigfridus |chapter=37 |title=Georgii Agricolae De Animantibus subterraneis |place=Witebergæ |publisher=Typis Meisnerianis |year=1614|url=https://books.google.com/books?id=laGePXl89xwC&pg=PA78|pages=78–79}}</ref> |
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<ref name="agricola-tr-hoover1912">{{cite book|last=Agricola |first=Georgius |author-link=:en:Georgius Agricola |others=Translated by [[:en:Herbert Hoover|Hoover, Herbert Clark]] and [[:en:Lou Henry Hoover|Lou Henry Hoover]] |title=Georgius Agricola De Re Metallica: Tr. from the 1st Latin Ed. of 1556 |location=London |publisher=The Mining Magazine |year=1912 |url=https://books.google.com/books?id=MfFYAAAAYAAJ&pg=PA217 |at=p. 217, n26}}</ref> |
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<ref name="ball2001">{{cite book|last=Ball|first=Philip |author-link=:en:Philip Ball |title=Bright Earth: Art and the Invention of Color |location= |publisher=University of Chicago Press |year=2003 |url=https://books.google.com/books?id=3Bd3KqmkhPMC&pg=PA118 |pages=118–119|isbn=<!--0226036286, -->9780226036281}}</ref> |
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<ref name="EtymWortb2012-ed-kluge&seebold-kobalt">{{cite encyclopedia|editor1-last=Kluge |editor1-first=Friedrich |editor1-link=:en:Friedrich Kluge |editor2-last=Seebold |editor2-first=Elmar |editor2-link=:en:Elmar Seebold |entry=Kobalt |title=Etymologisches Wörterbuch der deutschen Sprache |edition=25 |location= |publisher=Walter de Gruyter GmbH & Co KG |year=2012 |orig-year=1899 |entry-url=https://books.google.com/books?id=6FSSDwAAQBAJ&pg=PA510 |page=510|isbn=<!--3110223651, -->9783110223651 }}</ref> |
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<ref name="glasenapp1911">{{cite book|last=Glasenapp |first=Carl Friedrich |author-link=:de:Carl Friedrich Glasenapp |others=Illustrated by [[Franz Stassen]] |chapter=III. Der Kobold |title=Siegfried Wagner und seine Kunst: gesammelte Aufsätze über das dramatische Schaffen Siegfried Wagners vom "Bärenhäuter" bis zum "Banadietrich"|location=Leipzig |publisher=Breitkopf & Härtel |year=1911|chapter-url=https://books.google.com/books?id=hqE5AAAAIAAJ&pg=PA134 |page=134}}</ref> |
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<ref name="mellor1935">[[:en:Joseph William Mellor|Mellor, J. W.]] (1935) {{URL|1=https://books.google.com/books?id=dwdGAQAAMAAJ&q=kowalti |2=Cobalt}} ''A comprehensive treatise on inorganic and theoretical chemistry'' vol. XIV, p. 420.</ref> |
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<ref name="mueller-fraureuth1906">{{cite book|last=Müller-Fraureuth |first=Karl |author-link=<!--Karl Müller-Fraureuth-->|chapter=Kap. 14 |title=Sächsische Volkswörter: Beiträge zur mundartlichen Volkskunde |location=Dresden |publisher=Wilhelm Baensch |year=1906 |chapter-url=https://books.google.com/books?id=EFdsAAAAIAAJ&pg=PA26 |pages=25–25}}</ref> |
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<ref name="wothers2019">{{cite book|last=Wothers |first=Peter |author-link=:en:Peter Wothers |title=Antimony, Gold, and Jupiter's Wolf: How the elements were named |location= |publisher=Oxford University Press |year=2019 |url=https://books.google.com/books?id=PFS_DwAAQBAJ&pg=PA48 |pages=48–49 |isbn=<!--0192569902, -->9780192569905}}</ref> |
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== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
2024年12月8日 (日) 12:17時点における最新版
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外見 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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銀白色 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
一般特性 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
名称, 記号, 番号 | コバルト, Co, 27 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | 遷移金属 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
族, 周期, ブロック | 9, 4, d | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
原子量 | 58.933195(5) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
電子配置 | [Ar] 4s2 3d7 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
電子殻 | 2, 8, 15, 2(画像) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
物理特性 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
色 | 銀白色 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
密度(室温付近) | 8.90 g/cm3 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
融点での液体密度 | 7.75 g/cm3 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
融点 | 1768 K, 1495 °C, 2723 °F | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
沸点 | 3200 K, 2927 °C, 5301 °F | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
融解熱 | 16.06 kJ/mol | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
蒸発熱 | 377 kJ/mol | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
熱容量 | (25 °C) 24.81 J/(mol·K) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
蒸気圧 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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原子特性 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
酸化数 | 5, 4 , 3, 2, 1, −1[1] (両性酸化物) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
電気陰性度 | 1.88(ポーリングの値) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
イオン化エネルギー | 第1: 760.4 kJ/mol | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第2: 1648 kJ/mol | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第3: 3232 kJ/mol | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
原子半径 | 125 pm | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
共有結合半径 | 126±3(低スピン), 150±7(高スピン) pm | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
その他 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
結晶構造 | 六方晶系 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
磁性 | 強磁性 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
電気抵抗率 | (20 °C) 62.4 nΩ⋅m | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
熱伝導率 | (300 K) 100 W/(m⋅K) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
熱膨張率 | (25 °C) 13.0 μm/(m⋅K) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
音の伝わる速さ (微細ロッド) |
(20 °C) 4720 m/s | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ヤング率 | 209 GPa | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
剛性率 | 75 GPa | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
体積弾性率 | 180 GPa | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ポアソン比 | 0.31 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
モース硬度 | 5.0 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ビッカース硬度 | 1043 MPa | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ブリネル硬度 | 700 MPa | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
CAS登録番号 | 7440-48-4 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
主な同位体 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
詳細はコバルトの同位体を参照 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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コバルト(英: cobalt [ˈkoʊbɒlt]、羅: cobaltum)は、原子番号27の元素である。元素記号はCo。純粋なものは銀白色の金属である。常温で安定な結晶構造は六方最密充填構造 (hcp) で、420 °C以上で面心立方構造 (fcc) に転移する。鉄族元素のひとつであり、強磁性体である。鉄より酸化されにくく、酸や塩基にも強い。キュリー点は1150 °C。
コバルト化合物は青いことが多いため''コバルト"の名称だけで青色を指すことも多い。
コバルトを用いた核爆弾の1種であるコバルト爆弾についても、本記事で記述する。
名称
[編集]コバルトの名称と元素記号は、16世紀ドイツの銀山鉱夫が、腐食性を有し有毒ガスを発する有害な鉱物として「コベルト」等と呼んだコバルト化合物鉱石から由来する[2][3]。
この鉱石名はドイツに伝承される家の精霊「コボルト」と同じ語であろうとする説明と[2]、コベルという鉱山の精霊ノームに由来するという両方の説明[3][注 1]が現在において存在する(要は精霊の仕分け・分類の違いだが)。また、精霊と関係しない、その他の説も存在する[6]。(詳述は § 語源参照)。
なお、日本語における「コバルト」というカナ書きは、オランダ語からのものである。
語源
[編集]元素コバルトの命名は、「コベルト」(kobelt)鉱石などと16世世紀ドイツの銀山鉱夫が呼んでいた、やっかいなコバルト化合物鉱石に由来する。それは有毒ガスを発し、腐食性があって履物をおかした[2][3]。コバルト化合物は太古より青色素に使用されてはいたが、当時の製錬技術ではまだ純粋な金属を抽出する選別はできなかった[4]。
その第一史料はゲオルク・アグリコラの記述の「コベルト鉱」(ラテン語ではcoballum, cadmiaと表記、前者は音写で、後者は意訳[7][8]、ドイツ語は kobelt[9][11])である。[3][4]。「コベルト鉱」とは別に、アグリコラはよく似た名の「コベル」と(ラテン語: cobalus, cobali、ドイツ語形 kobel)いう鉱山の精霊について著述するも[12][8]、これらは関連付けてはいなかった。
少し後、「コベルト鉱」は「コベル」という悪魔のしわざという関連付けを、ルター改革派の神学者ヨハンネス・マテシウス(1562年)が説教で行い[3][4]、さらには18世紀末の科学追求者ヨハン・ベックマン(原文ドイツ語、英訳1797年)が、「コベルト鉱」の名は、「コベル」という精霊の名より形成されたと明言した[13]。すなわちそれは鉱物の精霊であり、ノームの一種である[3][14]。以上は、「コボルト」を抜きにした近年の語源解説である。
グリムらはしかし、「コボルト」と「コベル」を同源語として辞書に掲載していた[15][16]、すなわち家精「コボルト」の語源由来をラテン語の「コバルス」(ギリシア語の「コバロス」)にみたが[17]、これはそっくりそのまま、鉱物精「コベル」の訳語に当てられた語である(上述)[12][8]。よってグリム辞書は「コバルト」についても、ベックマンと同じ推理(精霊からつけられたに違いない)を前提とするのだが[19]、その鉱物(コバルト)も精霊(コボルト)も"遡源は同じ語"、と述べている[20]。20世紀初頭の『オックスフォード英語辞典』初版も同様で、「コベルト」鉱と「コボルト」は、しょせん同じ言葉ではないか、とし、「コベル」には触れていない[21][注 2]。また『ドイツ語語源辞典(Etymologisches Wörterbuch)』(第25版、2012年)も同様である[2]。
ただし、グリムが同一視の土台とした、「コボルト」(精霊)をラテン/ギリシアの「コバルス/コベロス」に見る語源は旧説として排されていることは[25][27]、留意すべきであろう[注 3]
その他語源説
[編集]また精霊と関連する語源(換言すればギリシア語κόβαλοςを遡源とする説明)は、かならずしも盤石な説ではなく、他の精霊とは関係しない可能性も提唱されている[6]。
ある異説によれば、「コベルト鉱」というのは精霊ではなく、「バケツ」を意味するキューベル(Kübel)に由来する(カール・ミュラー=フラウロイトの書籍にみつかる)[28]。このバケツの事は、アグリコラは modulus というラテン語を充てているが、ドイツ語の kobel に当ると語釈で示しており[29][30]、作中でも随所でこのバケツにふれている。
また、「コベルト鉱」の元は精霊と関係ない別のギリシア語κωβάθια(「硫化ヒ素」[31])からの由来説も併存する[33][34]。
歴史
[編集]1735年、スウェーデンのイェオリ・ブラント (Georg Brandt) によって発見された[35]。
産出地
[編集]コバルトの主要産出国は以下の通り(2011年実績)[36]。
国 | 産出量/t | 埋蔵量/t |
---|---|---|
コンゴ民主共和国 | 64000 | 3500000 |
ロシア | 5600 | 250000 |
オーストラリア | 5000 | 1200000 |
カナダ | 4300 | 250000 |
キューバ | 4200 | 500000 |
フィリピン | 4000 | 280000 |
マダガスカル | 3800 | 150000 |
パプアニューギニア | 3200 | 51000 |
ザンビア | 2900 | 270000 |
ニューカレドニア | 2800 | - |
南アフリカ | 2500 | 29000 |
モロッコ | 1500 | |
アメリカ | 650 | 23000 |
その他 | 5900 | 560000 |
世界合計 | 110000 | 7100000 |
紛争鉱物として知られ、2016年に人権団体のアムネスティ・インターナショナルが「年間産出量の53%を占めるコンゴ民主共和国最大のコバルト鉱山テンケ・フングルーメ鉱山などを買収してコバルトの精製品の8割近くを生産している中国の企業が、児童労働などで得たコバルトをApple、マイクロソフト、サムソン、ソニー、ダイムラー、フォルクスワーゲンなど多国籍企業に供給している」と批判し、国際的な問題となった[38][39][40][41]。なお、コバルトは日本国内において産業上重要性が高いものの、地殻存在度が低く供給構造が脆弱である。日本では国内で消費する鉱物資源の多くを他国からの輸入で支えている実情から、万一の国際情勢の急変に対する安全保障策として国内消費量の最低60日分を国家備蓄すると定められている。
用途
[編集]合金材料
[編集]単体金属としてのコバルトの利用は一部用途にとどまっているが、合金材料として重要であり、工業的に利用される。初期のコバルト合金は、高速度工具鋼にコバルトを添加したコバルトハイス鋼に用いられた。また、切断工具材料としてそれまでの合金に添加されることにより、コバルトの需要は増していった。
ニッケル・クロム・モリブデン・タングステン、あるいはタンタルやニオブを添加したコバルト合金は、高温でも磨耗しにくく腐食に強いため、ガスタービンやジェットエンジンといった高温で高い負荷が生じる装置などに用いられているほか、溶鉱炉や石油化学コンビナートなどでも充分に役割を果たす。
そのほか、鉄よりも錆びづらく酸やアルカリに侵食されにくい性質を利用し、コバルト含有率を大幅に高めたコバルト合金は、鋏などの高級素材として利用されている。
ステライトに代表される、コバルト・クロム・タングステンあるいはモリブデン・炭素を使った4元系の合金は磨耗に強く、表面強化が必要となる工業分野において幅広く利用され始めている。この合金は鋳型として使用するほか、粉末として吹きつけることや溶射して利用することも可能であり、利用技術の発達によって航空機の表面にコーティングすることなどをはじめ、広い分野で実用化が始まっている。
- マルエージング鋼
- 航空宇宙分野では必須の合金で高性能ミサイルの製造に重要であることから、戦略物資として扱われている。
- コバルト-モリブデン-ケイ素合金
- 耐摩耗性を有して摩擦係数が小さい(滑らかな)性質を示し、ベアリングの特徴を併せ持つなど、有用な特性を持った合金も開発されている。
- コバルト-クロム-モリブデン合金(コバリオンなど)やコバルト-クロム-タングステン-ニッケル合金
- 腐食しにくいため、歯科医療や外科手術(人工関節)などでも使われている。
- ニッケル-コバルト-モリブデン鋼
- 非常に強い強度と高い靭性を持ち、多くの分野での応用が期待されて研究が進んでいる。
以上に加え、コバルト合金はほかにも磁気材料として鉄とともにもっとも重要な役割を果たしてきた。コバルトを添加することによって磁性やキュリー値が上昇するなど、磁気材料としての性能が高まる。コバルトを使った合金のひとつであるアルニコ合金は、かつてもっとも幅広く用いられていた永久磁気材料であった。サマリウムコバルト磁石はコバルトとサマリウムの金属間化合物で、強い保磁力がある。
化合物
[編集]- ケイ酸コバルトとして入ることにより、ガラスなどが青色を呈する。
- アルミン酸コバルトは青色の顔料であるコバルト青の原料となり、陶磁器の着色や絵具などに用いられている。ほかにも亜鉛とコバルトの複合酸化物やコバルト、ニッケル、チタン、亜鉛の複合酸化物はコバルト緑と呼ばれる緑色の顔料として利用される。
- ヘキサニトロコバルト(III)酸カリウムはコバルトイエローと呼ばれる黄色の顔料となり、その絵具はオーレオリンと呼ばれる。
- 塩化コバルト(II)は、シリカゲルに混ぜて湿気の吸収具合の指示薬として使われる(乾燥状態で青紫色、湿気を吸収すると赤紫色を示す)。同水溶液(6水和物)は赤色で、濃塩酸を加えたり高温にすると赤紫色から青紫色を経て、無水物の青色を呈する[42]。
- コバルト酸リチウムは、リチウムイオン二次電池の正極材として用いられ、携帯電話など小型デジタル機器の急速な普及により需要が増大している。2020年にテスラが自社の一部製品にコバルトフリーバッテリーを採用することを発表してはいる[43]が、欧米[注 4]と中国では2035年から2040年[44]を目処として内燃機関自動車の販売を禁止する法律の整備を急いでいる状況があり[45]、急激なEVシフトによるコバルトの枯渇が不安視されている。
- ビタミンB12(コバラミン)は、その名の通り分子の中心にコバルトを持つ生理活性物質であり、欠乏すれば人体に深刻かつ不可逆的な損傷をもたらしうるビタミンである。すなわちコバルトは、人体にとってごく微量ながらもほかの元素では代替できない必須元素である。
同位体
[編集]放射性同位体のコバルト60は、γ線源として用いられる。医療分野での放射線療法、ガンマ線滅菌、食品分野での食品照射(ジャガイモの発芽防止)、工業分野での非破壊検査などに広く利用されている。
コバルト爆弾
[編集]コバルト爆弾とは、核開発への警告としてレオ・シラードが発表した核爆弾の1種である。原子爆弾もしくは水素爆弾の周囲をコバルトで覆ったものであり、具体的にはタンパー[注 5]にコバルトを用いる。
原子量が59であるコバルトが、核分裂反応に伴って放出される中性子を取り込むことでコバルト60が生成され、これが爆弾の爆発とともに広範囲へまき散らされる。コバルト60は半減期が約5.27年でγ線を放射するため、コバルト爆弾は放射線兵器となる。しかし、半減期の長いコバルト60による汚染は味方にも被害がおよぶうえ、被爆地の占領も困難であるなどの理由から、実用化されることはなかった。
SF作品の第三次世界大戦など、核戦争で世界が破滅するジャンルには、中性子爆弾と並んでよく登場する。また、その際には爆弾自体の破壊力もきわめて高く描写されており、作品によっては地球を消滅させるという設定すら盛り込まれている(1970年の映画『続・猿の惑星』など)。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ Ballは精霊の名も"kobelt"としてしまっているが、16世紀当時の文献においては"kobel"が正しく、ルター改革派の Mathesius 説教文では、Ballの引用にはないが、Wothersの引用では精霊(を悪い魔となじって)kobelとしている[4]。また本家のアグリコラ(すなわち当時の鉱物学の権威でもっぱら言及される著者)がラテン語で"cobalus, cobeli"とした鉱物の精霊はドイツ語で kobel にまちがいない[5]。
- ^ 1911年版の『ウェブスター辞典』では、コベルに触れるがコボルトと同語にみている[22]
- ^ グリム兄弟の旧説前提の説明をまとめてみると:"Kobald/Kobolt"は、"kobal (cobalus)"のような語形に、ドイツ語ではモンスター系に接尾される -olt から形成された、とし[17]、辞書の「コボルト」の項でも、「コベル」は「コボルト」の指小形ではないかと憶測し、強く関連する語、同根語だろうと目している(Grimms DW "kobold" III 3) nebenformen.[15])[15]。
- ^ 2020年現在、米国はカリフォルニア州のみ。
- ^ 核反応が充分に進行しないうちに核物質が四散して爆発が不完全に終わることを防ぐ、重金属製の覆い。日本語でタンパーと称される締固め用機械とは無関係である。
出典
[編集]- ^ グリーンウッド, ノーマン; アーンショウ, アラン (1997). Chemistry of the Elements (英語) (2nd ed.). バターワース=ハイネマン. pp. 1117–1119. ISBN 978-0-08-037941-8。
- ^ a b c d e Kluge, Friedrich [in 英語]; Seebold, Elmar [in 英語], eds. (2012) [1899]. "Kobalt". Etymologisches Wörterbuch der deutschen Sprache (25 ed.). Walter de Gruyter GmbH & Co KG. p. 510. ISBN 9783110223651。
- ^ a b c d e f g Ball, Philip (2003). Bright Earth: Art and the Invention of Color. University of Chicago Press. pp. 118–119. ISBN 9780226036281
- ^ a b c d e f Wothers, Peter (2019). Antimony, Gold, and Jupiter's Wolf: How the elements were named. Oxford University Press. pp. 48–49. ISBN 9780192569905
- ^ Agricola, Georgius (1657). “Animantium nomina latina, graega, q'ue germanice reddita, quorum author in Libro de subterraneis animantibus meminit”. Georgii Agricolae Kempnicensis Medici Ac Philosophi Clariss. De Re Metallica Libri XII.: Quibus Officia, Instrumenta, Machinae, Ac Omnia Denique Ad Metallicam Spectantia, Non Modo Luculentissime describuntur; sed & per effigies, suis locis insertas ... ita ob oculos ponuntur, ut clarius tradi non possint. Basel: Sumptibus & Typis Emanuelis König. p. [762] . "Dæmonum: Dæmon subterraneus trunculentus: bergterufel; mitis bergmenlein/kobel/guttel"
- ^ a b Mellor, J. W. (1935) Cobalt A comprehensive treatise on inorganic and theoretical chemistry vol. XIV, p. 420.
- ^ Agricola, Georgius (1546). “Bermannus, sive de re metallica dialogus”. Georgii Agricolae De ortu & causis subterraneorum lib. 5. De natura eorum quae effluunt ex terra lib. 4. De natura fossilium lib. 10. De ueteribus & nouis metallis lib. 2. Bermannus, siue De re metallica dialogus lib.1. Interpretatio Germanica uocum rei metallicæ, addito Indice fœcundissimo. Basel: Froben. pp. 432–433
- ^ a b c Agricola, Georgius (1912). Georgius Agricola De Re Metallica: Tr. from the 1st Latin Ed. of 1556. Translated by Hoover, Herbert Clark and Lou Henry Hoover. London: The Mining Magazine. p. 217, n26
- ^ Agricola (1546): (巻末語彙)"Cadmia metallica/ koblt", p. 476.
- ^ Agricola & Hoovers trr. (1912), p. 616
- ^ 同時代に、早い段階でアグリコラのドイツ訳本も現れている。フーバー夫妻ら英訳者も、ラテン原文のみならず、このドイツ訳を参照している[10] 。ドイツ訳本にもやはり"kobelt"と記述される[3]。
- ^ a b Agricola, Georgius (1614). “37”. In Johannes Sigfridus. Georgii Agricolae De Animantibus subterraneis. Witebergæ: Typis Meisnerianis. pp. 78–79
- ^ ベックマンは「コバルス」という精霊から成った語、と言い廻しするが[4]、アグリコラの「コバルス」はすなわち「コベル」である(前述)。
- ^ ウォザーズも、上述のマテシウス説教やベックマンの語源説を、引用した解説を、"Gnomes and Goblins"と題した節に置いている[4]。
- ^ a b c d Grimms; Hildebrand, Rudolf (1868). Deutsches Wörterbuch, Band 5, s.v. "Kobold"
- ^ Grimms DW "kobold" III 3) nebenformen.[15]
- ^ a b ヤーコプ・グリム『ドイツ神話学』により詳しい。Stallybrass 英訳 (1883年)『Teutonic Mythology』、Vol. 2, p. 502。
- ^ a b Grimms; Hildebrand, Rudolf (1868). Deutsches Wörterbuch, Band 5, s.v. "Koalt"
- ^ 『グリム辞書』"Kobelt"では、"銀を盗み、悪い坑内空気など健康害をもたらす鉱石を置いていくとされる、精霊の「山のこびと」 Bergmänuchen〔ママ〕"から名付けられたとする[18]。
- ^ "namlich urspr[ünglich] ein wort"[18]
- ^ "cobalt". Oxford English Dictionary (3rd ed.). Oxford University Press. September 2005. (要購読、またはイギリス公立図書館への会員加入。); Murray, James A. H. ed. (1908) A New Eng. Dict. II, s.v."cobalt"
- ^ Harris, William Torrey; Allen, Frederic Sturges edd. (1911) Webster's New International Dictionary, s.v."cobalt"
- ^ Glasenapp, Carl Friedrich (1911). “III. Der Kobold”. Siegfried Wagner und seine Kunst: gesammelte Aufsätze über das dramatische Schaffen Siegfried Wagners vom "Bärenhäuter" bis zum "Banadietrich". Illustrated by Franz Stassen. Leipzig: Breitkopf & Härtel. p. 134
- ^ Glasenapp (1911), p. 134.
- ^ 『コボルト』オペラの評論ではあるが、カール・グラーゼナップの解説を参照[23]。その後の語源学者によって、kobold/kobolt を kob "家、室" + walt "力、権力者"という語源説にとって代わられた[24]。もっとも、この代替説を"新説"と呼ぶには語弊があり、なぜならグリムも概ね既知だった説だからである。グリム辞書"kobold"の語源の部には、アングロサクソン語 cofgodas「家神」に関係する語源を説いたクリスティアン・ヴィルヘルム・ミヒャエル・グライン(1862年)の説が掲載される。
- ^ Kluge, Friedrich [in 英語]; Seebold, Elmar [in 英語], eds. (2012) [1899]. "Kobold". Etymologisches Wörterbuch der deutschen Sprache (25 ed.). Walter de Gruyter GmbH & Co KG. p. 510. ISBN 9783110223651。
- ^ 『ドイツ語語源辞典』も、じつは"Kobold"の項ではグリム『神話学』が提唱した語源旧説でなく、後の有力説(「家の+力ある者」)を掲げている[26]。
- ^ Müller-Fraureuth, Karl (1906). “Kap. 14”. Sächsische Volkswörter: Beiträge zur mundartlichen Volkskunde. Dresden: Wilhelm Baensch. pp. 25–25
- ^ Agricola (1546), p. 481: ラテン語: Modulus = ドイツ語: Kobel
- ^ グリム辞典の各項も参照:Grimms, Deutsches Wörterbuch, Band 5, s.v. "Kobel"及び "Köbel" and "Kübel"
- ^ Liddell and Scott (1940). A Greek–English Lexicon. s.v. "kwba/qia". Revised and augmented throughout by Sir Henry Stuart Jones with the assistance of Roderick McKenzie. Oxford: Clarendon Press. ISBN 0-19-864226-1
- ^ Wothers (2019), p. 47.
- ^ ピーター・ウォザースは、有毒ガスを発する物質のギリシア名 cobathiaによる語源、と説明[32]。
- ^ 『ドイツ語語源辞典』"Kobalt"の項も、"kōbathium"の語言説を併記している[2]
- ^ 桜井弘『元素111の新知識』講談社、1998年、151頁。ISBN 4-06-257192-7。
- ^ 「Mineral Commodity Summaries 2012[1]」p47、USGS
- ^ Cobalt Statistics and Information, U.S. Geological Survey, (2018)
- ^ Hon, Tracy; Jansson, Johanna; Shelton, Garth; Liu, Haifang; Burke, Christopher; Kiala, Carine (January 2010). "Evaluating China's FOCAC commitments to Africa and mapping the way ahead" . Centre for Chinese Studies, Stellenbosch University.
- ^ “世界のバッテリー支配狙う中国、コバルト供給牛耳る”. ウォール・ストリート・ジャーナル (2018年2月13日). 2018年6月26日閲覧。
- ^ “コンゴ民主共和国:巨大企業 コバルト採掘での児童労働問題を放置”. アムネスティ (2017年11月29日). 2018年6月26日閲覧。
- ^ “コンゴ民主共和国:スマートフォンの裏に児童労働”. アムネスティ (2016年1月25日). 2018年6月26日閲覧。
- ^ “コバルト(Co)〜銀を食らう山の精コボルト、印象派の画家たちも愛した青い元素〜”. 高純度化学研究所 (2018年6月25日). 2019年12月9日閲覧。
- ^ “テスラ、中国EVにコバルト使わない電池”. 日本経済新聞 (2020年6月12日). 2020年12月3日閲覧。
- ^ “フランスがガソリン車の販売を禁止する真の理由”. 日経ビジネス (2017年7月27日). 2020年12月3日閲覧。
- ^ “政府、2030年代半ばにガソリン車新車販売禁止へ 欧米中の動きに対抗”. 毎日新聞 (2020年12月3日). 2020年12月3日閲覧。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 「コバルト及びその化合物 (PDF) 」『化学物質の環境リスク評価』第11巻、環境省、2013年(平成25年)3月。
- 『コバルト』 - コトバンク