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炭酸コバルト(II)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
炭酸コバルト(II)
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識別情報
CAS登録番号 513-79-1 チェック, 12602-23-2 (cobalt carbonate hydroxide) チェック
PubChem 10565
ChemSpider 10123 ×
UNII 7H73A68FUV チェック, W58TNI7T29 (cobalt carbonate hydroxide) チェック
特性
化学式 CoCO3
モル質量 118.941 g/mol
外観 赤色-ピンク色固体
密度 4.13 g/cm3
融点

427 °C, 700 K, 801 °F ([2]
融解前に酸化コバルト(II)に分解(無水物)
140 °C (284 °F; 413 K)
分解(六水和物))

への溶解度 蒸留水に不溶
溶解度平衡 Ksp 1.0・10-10[1]
溶解度 酸に可溶
アルコール酢酸メチルに微溶
エタノールに不溶
屈折率 (nD) 1.855
構造
結晶構造 菱面体晶 (無水物)
三方晶(六水和物)
熱化学
標準生成熱 ΔfHo -722.6 kJ/mol[2]
標準モルエントロピー So 79.9 J/mol・K[2]
危険性
GHSピクトグラム 急性毒性(低毒性)経口・吸飲による有害性[3]
GHSシグナルワード 警告(WARNING)
Hフレーズ H302, H315, H317, H319, H335, H351[3]
Pフレーズ P261, P280, P305+351+338[3]
NFPA 704
0
2
0
半数致死量 LD50 640 mg/kg (経口、ラット)
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

炭酸コバルト(II)(Cobalt(II) carbonate)は、化学式CoCO3無機化合物である。赤色の常磁性固体で、鉱石からコバルト湿式製錬する際の中間体である。無機色素であり、触媒の前駆体である[4]。希少な鉱物である菱コバルト鉱英語版としても産出する[5]

合成と構造

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硫酸コバルト(II)炭酸水素ナトリウムの水溶液を混合することで合成される。

CoSO4 + 2NaHCO3CoCO3 + Na2SO4 + H2O + CO2

この反応は、焙焼した鉱石の抽出物からコバルトを沈殿させるのに用いられる[4]

八面体配位したコバルトからなる方解石に似た構造を取る[6]

反応

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ほとんどの遷移金属炭酸塩と同様に水に溶けないが、無機酸とは容易に反応する。

CoCO3 + 2HCl + 5H2O[Co(H2O)6]Cl2 + CO2

この反応は様々なコバルト錯体の合成に用いられる。また、過酸化水素の存在下でアセチルアセトンと反応させるとトリス(アセチルアセトナト)コバルト(III)が得られる[7]

加熱すると典型的な煆焼反応を起こすが、生成物は部分的に酸化され四酸化三コバルトとなる。

6CoCO3 + O2 → 2Co3O4 + 6CO2

四酸化三コバルトは高温下で、可逆的に酸化コバルト(II)に転換できる[8]

利用

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オクタカルボニルコバルトや様々なコバルト塩の前駆体となる。またコバルトは必須元素であるため、サプリメントの材料として用いられる。デルフト陶器に用いられる青い釉薬の材料にもなる。

関連化合物

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炭酸コバルト(II)水酸化物としては、Co2(CO3)(OH)2Co6(CO3)2(OH)8・H2Oの少なくとも2つが知られている[9]

天然の炭酸コバルトには、比較的希少な鉱物である菱コバルト鉱がある。特にコンゴ共和国から良い標本が得られている。

コバルト方解石はコバルトを含む方解石であり、菱コバルト鉱とかなり似た晶癖を持つ[5]

安全性

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毒性はほぼ観測されていない。ヒトを含む動物は、ビタミンB12の成分として痕跡量のコバルトを必要とする[4]

出典

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  1. ^ Solubility product constants”. 2012年6月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年5月17日閲覧。
  2. ^ a b c Cobalt(II) carbonate”. 2022年12月3日閲覧。
  3. ^ a b c Sigma-Aldrich Co., Cobalt(II) carbonate. 2014年5月6日閲覧。
  4. ^ a b c Donaldson, John Dallas; Beyersmann, Detmar (2005), "Cobalt and Cobalt Compounds", Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Weinheim: Wiley-VCH, doi:10.1002/14356007.a07_281.pub2
  5. ^ a b Spherocobaltite: Spherocobaltite mineral information and data”. www.mindat.org. 7 August 2018閲覧。
  6. ^ Pertlik, F. (1986). “Structures of hydrothermally synthesized cobalt(II) carbonate and nickel(II) carbonate”. Acta Crystallographica Section C 42: 4-5. doi:10.1107/S0108270186097524. 
  7. ^ Bryant, Burl E.; Fernelius, W. Conard (1957). “Cobalt(III) Acetylacetonate”. Inorganic Syntheses. pp. 188-189. doi:10.1002/9780470132364.ch53. ISBN 9780470132364 
  8. ^ G.A. El-Shobaky, A.S. Ahmad, A.N. Al-Noaimi and H.G. El-Shobaky Journal of Thermal Analysis and Calorimetry 1996, Volume 46, Number 6 , pp.1801-1808. online abstract
  9. ^ Bhojane, Prateek; Le Bail, Armel; Shirage, Parasharam M. (2019). “A Quarter of a Century After its Synthesis and with >200 Papers Based on its Use, 'Co(CO3)0.5(OH)0.11H2O′ Proves to be Co6(CO3)2(OH)8・H2O from Synchrotron Powder Diffraction Data”. Acta Crystallographica Section C: Structural Chemistry 75 (Pt 1): 61-64. doi:10.1107/S2053229618017734. PMID 30601132. https://zenodo.org/record/3755496. 

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