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2023年パレスチナ・イスラエル戦争

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中東戦争 > 2023年パレスチナ・イスラエル戦争
2023年パレスチナ・イスラエル戦争

戦闘で破壊されたガザの街。なお、これはイスラエルの攻撃とハマースのテロの両方によるものである。
戦争パレスチナ問題[1]
年月日2023年10月7日 - 現在[2]
場所ガザ地区、イスラエル、レバノン南部など[1]
結果:現在継続中[1]
交戦勢力
イスラエルの旗 イスラエル
ハマスの旗 ハマース
ヒズボラの旗 ヒズボラ
指導者・指揮官
イスラエルの旗 ベンヤミン・ネタニヤフ
イスラエルの旗 イツハク・ヘルツォグ
イスラエルの旗 ベニー・ガンツ
イスラエルの旗 ヨアブ・ガラント
イスラエルの旗 ヘルジ・ハレヴィ
イスラエルの旗 ヨエル・ストリク
イスラエルの旗 エリ・シャルビット
イスラエルの旗 トーメル・バー
ハマスの旗 イスマーイール・ハニーヤ
ハマスの旗 サレハ・アル・アロウリ
ハマスの旗 ハーリド・マシャアル
ハマスの旗 ムハンマド・デイフ
ハマスの旗 マルワン・イッサ
ハマスの旗 アイマン・ノファル
ハマスの旗 ムラド・アブ・ムラド
ヒズボラの旗 ハサン・ナスルッラーフ
ヒズボラの旗 ナイーム・カーシム
戦力
イスラエル国防軍
正規軍169,500人
うち陸軍126,000人
海軍9,500人
空軍34,000人
予備役465,000人
うち陸軍400,000人
海軍10,000人
空軍55,000人[3]
アル・カッサム旅団
兵力詳細不明[要出典]
ヒズボラ
戦闘員最大45,000人
うち常勤21,000人
在シリア部隊5,000人[4]
損害
10月17日時点
1,400人以上戦死・犠牲[5]
10月17日時点
2,800人以上戦死・犠牲[5]
冷戦

2023年パレスチナ・イスラエル戦争(2023ねんパレスチナ・イスラエルせんそう)は、2023年10月7日にパレスチナガザ地区を支配するハマースによるイスラエルへの攻撃によって勃発した、ガザ側の武装勢力とイスラエルの戦争である。

なお、パレスチナ自治政府は関与をしておらず、パレスチナ自治政府の大統領であるマフムード・アッバースは、「ハマースはパレスチナ人の代表ではない」、「ハマースは人質の即時解放をすべき」、「ハマースによるイスラエル南部への攻撃を非難する」と表明している[6][7][8]。また、ワリード・アリ・シアム駐日パレスチナ常駐総代表部代表は8日、SNSにて「‎私たちは、パレスチナ人とイスラエル人の両方の民間人の生命の喪失を断固として非難します」とメッセージを投稿している[9]

この戦争でイスラエル側は第四次中東戦争以来の死者数を出した[10]。イスラエルは8日、正式にハマースに対し宣戦布告をした[11]。イスラエル側は戦時内閣を発足させている[12][13]

名称

ハマースは、この戦闘を「アクサーの氾濫作戦[14]」もしくは「アルアクサの洪水作戦アラビア語: عملية طوفان الأقصى‎)[15][16][注釈 1]」とした。一方でイスラエル側は「鉄の剣作戦(ヘブライ語: מבצע חרבות ברזל)」と呼んでいる[18][19]

一部メディアは第一次、第二次インティファーダに続くインティファーダとして「第三次インティファーダ」という名称を使用した[20][21]。また10月に行われる祭りである仮庵の祭りに例え「仮庵戦争」(かりいおせんそう)と表現した[22][23]

攻撃直後イスラエル国民はこれらの事象を「イスラエルの9.11」や「イスラエルの真珠湾攻撃」と過去の奇襲攻撃やイスラム組織の攻撃にたとえた。また、「ホロコースト以来、これほど多くのユダヤ人が殺害されたことはない」という反応も見られた。ホロコーストのたとえは様々な人が使用しており、The Viewの元プロデューサーであるダニエラ・グリーンバウムや、イツハク・ヘルツォグの元スポークスマンであるエイロン・レヴィ、Times of Israelの記者ラザール・バーマンなどがホロコーストという言葉を使用した。1973年の第4次中東戦争のちょうど50周年ということで「'73年の過失、'23年の過失」という言葉も一部メディアで使用された[24]コロンビアグスタボ・ペトロ大統領はイスラエルの行いを、ガザ地区の人質家族はハマースの行いを指して「新たなホロコースト」という言葉を使った[25][26]

背景

パレスチナ問題は「世界で最も解決が難しい紛争」と言われている[27]

2000年以上前の時点におけるパレスチナにはユダヤ人国家であるイスラエル王国があり、ユダヤ人とアラブ人が共存していたが、その後諸国家により侵略、最終的にローマ帝国による支配下となった。その後ユダヤ人はヨーロッパ各地へ移り(ディアスポラ)、パレスチナではイスラム教徒のアラブ人が住んでいた[27]

当時ヨーロッパではキリスト教が主流であり、元々キリスト教と対立している関係であったユダヤ教徒(ユダヤ人)は迫害の対象となった。その後、金融業などで影響を持つようになり19世紀ごろにパレスチナに戻るという所謂シオニズム運動が発生する[28]

シオニズム運動の最中に第一次世界大戦が勃発し連合国側のイギリスがパレスチナにユダヤ人の国家を建設することを支持することを約束した(バルフォア宣言)。ロスチャイルド財閥から金銭を引き出すためである。一方敵対する中央同盟国であるオスマン帝国を落とすためにアラブ人ともオスマン帝国の反旗を翻せばパレスチナに国家を建設することを約束する協定を結んだ(フサイン=マクマホン協定)。そしてフランスとも中東分割の決議をする(サイクス・ピコ協定)。この「三枚舌外交」と言われる外交政策により事態は混迷を極める[27][28]

第一次世界大戦終結時点ではフランスらにより分割された。ユダヤ人などからすると裏切られたというような立場となるものの、バルフォア宣言に基づきパレスチナへの入植者が増えた[27][28]

第二次世界大戦中、ホロコーストにより多くのユダヤ人が殺害される。ホロコーストから逃れるためにユダヤ人はパレスチナに逃げるもパレスチナに住むアラブ人は猛反発。これにより各地で戦闘が起きる[27][28]

戦後1947年パレスチナ分割決議が採択されイスラエルが建国。ユダヤ人からするとついにユダヤ人国家の建設となったが、アラブ人からすると領土が奪われた形となり、第一次中東戦争が勃発、イスラエルは当時被害者として世論は支持していた。しかし、第三次中東戦争で国際法を超えた範囲でパレスチナ側の領土を支配し始め、一部から加害者側になったと非難を浴びる[27][28]

その後、インティファーダという民衆蜂起が行われ、多くの戦闘が起き、規模は拡大していく。パレスチナ外ではPLOが誕生。その後湾岸戦争でフセイン政権がパレスチナ解放としてイスラエルを攻撃、国際社会は「パレスチナ問題を解決しないと何が起きるかわからないのではないだろうか」という反応となり、1993年オスロ合意により暫定自治政府が認められる[27][28]。合意から2000年までは楽観論が広がり、双方が和解すると世論は考えていった。しかし2000年にアリエル・シャロン首相がユダヤ教の聖地「嘆きの壁」のすぐ近くに位置するイスラム教の聖地であった「岩のドーム」に足を踏み入れ「私は平和の使者だ」と述べたことによりイスラム教徒の反感を買い、7年間続いた平和は終焉した[29]。2006年のパレスチナ国議会選挙でハマースに敗北し、ガザはハマースによる統治に、一方ヨルダン川西岸地区はファタハが統治を行っていたためパレスチナは分裂状態になり、和平交渉が事実上不可能となった。また、ヨルダン川西岸地区には分離壁が設置、分断され(ヨルダン川西岸地区の分離壁)、2008年から2009年までのガザ紛争などいくつかの2ヶ国の戦闘が行われていった[29]

2014年、イスラエル軍がガザ地区に地上侵攻を行い、空爆作戦でハマースの幹部の自宅や軍事施設を爆撃するとともに、予備役の兵士の招集を進め、ガザ地区との境界線近くに地上部隊を着々と集結させるなどし、捕らえられた兵士やその周辺の民間人への危険に配慮せずに集中砲火で攻撃することができる「ハンニバル指令」が実行された[30]。これによりイスラエル軍は少なくとも135名のパレスチナの民間人を殺害した[31]。この2014年のガザ地区侵攻が「イスラエル軍による最後の地上侵攻」であるとされていた[30]。2014年以降、和平交渉は途切れる[27]

ユダヤ系の人々が一律にイスラエルの建国やシオニズムを支持していた訳ではなく、ユダヤ教の最右派であるユダヤ教超正統派はイスラエルの建国に関して聖書の「汝、殺すなかれ、盗むなかれ」に違反しているとし、「メシア(救世主)が現れないと真のユダヤ国家は実現できない、しかし、まだメシアは現れていない、だから現在のイスラエル国家は偽物であり、認められない。」、「メシアが現れるまで建国は待つべきだ。」という立場をとっている[32][33][34]。また、「ユダヤ人はイスラエルの残虐行為を糾弾する」と主張するデモや「イスラエルをパレスチナへ返還すべきである」として反シオニズム活動を行っている[33][32][34]

両国間の緊張状態に加え、イスラエルとサウジアラビアが関係正常化に向けて動き出していることにより「パレスチナ問題、さらにはハマースそのものが見捨てられてしまう」というハマースの危機感が発生、またイスラエルは「司法制度改革問題」という問題により大混乱していたため、ハマースからすると恰好のチャンスとなった。また、パレスチナ市民の若年層は度重なる戦争により失業率が60%を越え、経済も非常に悪い状態であり、加えて封鎖以降の世代は物心ついた時には分断という状況であり、イスラエルに対する恨みも高かったと思われている[35]

奇襲直前の情勢

2023年は、いくつかパレスチナ問題が原因となった暴力的な騒動が発生した。2023年10月7日の奇襲前の時点で、2023年の範囲内だけで双方の戦闘員と民間人を含め、少なくとも247人のパレスチナ人がイスラエル軍によって殺害され、32人のイスラエル人と2人の外国人がパレスチナ人の攻撃によって殺害されていた[36][37]。また、入植者による攻撃が増加し、何百人ものパレスチナ人が避難した。エルサレムの聖地であるアル=アクサー・モスク周辺では激しい衝突があった[38]

イスラエルとハマースの緊張は2023年9月頃に高まり、ワシントン・ポスト紙は両者を「戦争の瀬戸際にある」と表現した。イスラエルはジーンズの積荷に隠された爆発物を発見し、ガザからのすべての輸出を停止した。これに対し、ハマースは厳戒態勢を敷き、イスラエルの入植地を襲撃する練習を公然と行ったり、他の組織と軍事演習を行ったりした。またハマースは、パレスチナ人によるイスラエル・ガザ間の分離壁(鉄の壁)への抗議活動の再開を許可した。9月13日、5人のパレスチナ人が国境で殺害された[39]。9月29日、カタール、国連、エジプトの仲介により、イスラエルとガザ地区のハマス当局者の間で、閉鎖されていた検問所を再開し、緊張を緩和するという合意がなされた[40][41][42]

攻撃の数日前、エジプトはイスラエルに対し、「事態の爆発(我慢の限界を超える)が近づいている、それも非常に近いうちに、そしてそれは大きなものになるだろう」と警告したという[43]。イスラエルはそのような警告を受けたことを否定したが[44]、エジプトの主張は、攻撃の3日前に警告がなされたとする米下院外交委員会マイケル・マッコール委員長によって裏付けられた[45]

そして攻撃は、ユダヤ教の祝日で安息日であるシムハット・トーラーの日で[46]、同じく奇襲攻撃から始まった第四次中東戦争開戦50年の翌日である10月7日に行われた[47]

経過

10月7日

ファイル:Isr vs pla war.jpg
ミサイル攻撃の様子。

ユダヤ教の祝日シムハット・トーラーにあたる10月7日現地時間午前6時30分(UTC 3時30分)、パレスチナのガザ地区を支配するハマースのイゼディーン・アル・カッサム旅団によるイスラエルへのミサイル攻撃が宣戦布告抜きに開始された[36][48][49]。また同時に海上を水上艇が、陸上では歩兵による国境検問所であるケレム・シャローム検問所エレズ検問所への攻撃や白いピックアップトラックによる7つの検問所を突破してでの越境も開始された[50][51][52][15]。ミサイルの本数についてはハマースが5000発以上、イスラエルが2200発以上としている[17]。この出来事により、イスラエル側で少なくとも1,300人以上が死亡し、パレスチナ側で1,100人が死亡した[53][54]テルアビブレホヴォトリション・レジオンパルマヒム空軍基地などではサイレンが鳴り響いたという。スデロットでは戦争としては初期の戦闘が勃発し、警察署などを制圧された[55]。他いくつものキブツへの攻撃も確認され、人口1000人ほどのベエリでは人口の10分の1にあたる約100人が死亡[56]、ガザ近郊のネティヴ・ハアサラでは15人が射殺[57]、南部のニル・オズでも被害が確認された[58]。ジキムでは同日4時40分(GMT)に海上からの侵攻が確認された(ジキムの戦い[59]

同日、イスラエルの首相であるベンヤミン・ネタニヤフは「戦争状態にある。」とする声明を出した[60]。ハマースの軍事部門のトップであるモハメド・デイフ司令官は同日を「地上最後の占領を終わらせるための、偉大な戦いの日」と述べた後「私たちは敵に対し、アル=アクサー・モスクに対する侵略を続けないよう警告した......敵が無反応で侵略を続ける時代は終わった。私は、ヨルダン川西岸地区とグリーンライン(イスラエル領)内のパレスチナ人に対し、自制することなく攻撃を開始するよう呼びかける。すべての通り道に出て行け。私は、あらゆるイスラム教徒に対し、攻撃を開始するよう呼びかける。」としてパレスチナ人に軍事行動への参加を呼びかけた[49][61]。この攻撃にはイラン革命防衛隊の関与も疑われている[62]。また、祝日に戦争が起きるのは第4次中東戦争も同様である[63]

合計で、少なくとも2,200発のロケット弾がガザから発射され、数百人のイスラエル人が犠牲になり、イスラエル政府は緊急事態を宣言した。イスラエルは攻撃開始後の全国演説で「戦争中」であると述べている[64][65][66][67]。イスラエルに潜入したパレスチナ過激派はキブツに侵入、またスデロットを含むガザ地区とイスラエルの都市を取り囲んでいる[67]。パレスチナとイスラエルの両方のメディア情報筋が、イスラエルの兵士と民間人が人質に取られたと報告している[68]。夜、イスラエル国営の電力会社が、電力の80%をイスラエルから供給しているガザ地区への電力供給を停止した。イスラエルの首都テルアヴィヴはロックダウン状態に陥った[49]

これらの攻撃に対してヨルダン川西岸の都市ナーブルスのパレスチナ人の一部が祝っている写真が撮影されている[69]

攻撃の映像はドローンによる撮影により保存されており、ABCnewsが映像の一部を公開した[52]

スプートニクはこの奇襲が成功した原因を以下の二つとしている[70]

  • ハマースの指揮官が、ハッキングすることが難しい中国ファーウェイ製のスマートフォンを使用しており、さらにハマース内でイスラエル側との接触が疑われた者がハマースから追放されていたためモサドが事前に察知しづらかった。
  • ガザ地区とイスラエルの国境沿いの分離壁に対してイスラエルが自信を持っていたことから警備体制が薄く、ハマースの障壁突破の演習や爆弾を開発に対して対応できなかった。

また、同じくスプートニクはこの奇襲に対して「ドイツ国防軍の戦術マニュアルを読んで応用したかと思うほどドイツ式電撃作戦に酷似していた」とした[70]

また7日から数日たった時にイスラエル軍スポークスマンのリチャード・ヘクトが会見にてハマースが占領した町を奪還するのに2日かかったと述べ、これに対し東海大学国際学部教授アルモーメン・アブドーラは「「無敵の軍隊」としてのメンツが打ち砕かれる異例の事態となった。」とした[71]

7日時点でフォーリン・アフェアーズはイスラエルのネタニヤフがとれる選択は3つだと述べた[72]。それは

  • パレスチナ人の抵抗勢力に立ち向かい阻止すること
  • ハマースや他の勢力のさらなる侵入を阻止すること
  • ガザ地区から発射されるロケット弾や砲弾を何としても止めること

であるとしたが、同紙はこれらの目標の実行は至難の業だとしている[72]

また、モサドがこの作戦を予知できなかったということを、一部のモサド出身者が「信じられない」と述べていた[73]日本カウンターインテリジェンス協会代表理事である稲村悠は東洋経済オンラインの記事で、モサドがこの作戦をモサドが察知できなかった理由を、モサドが人的情報収集を軽視し、デジタルにおける情報収集に重きを置いたため、ハマースがアナログな方法を駆使したことによりデジタルで情報を収集できなかったからだと述べている[74]

10月8日

レバノン南部からイスラエル北部へロケット攻撃が発生。同日、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは、イスラエルへの攻撃を実行したとの声明を出した[75]。同日、イスラエルはハマースに対して、7日にイスラエルの基本法第40条によって正式に宣戦布告を決定し、軍事活動を解禁すると発表した[76][10]。イスラエルが正式に宣戦布告を決定するのは、1973年の第四次中東戦争以来である[77]

他にもイスラエル側がエジプトに対してハマースとの交渉の仲介役となるように依頼した他、アメリカ合衆国は東地中海への原子力空母ジェラルド・R・フォード」を中核とする第12空母打撃群を派遣することを決定した[78][79]。打撃群は空母の他、ミサイル巡洋艦ミサイル駆逐艦からなり、中東地域のアメリカ空軍部隊をF-35などで増強するという方針も出した。同日、バイデン米大統領はネタニヤフ首相と会談し、アイアンドームの補充、弾薬供与、ヒズボラなどの軍事行動をめぐる機密情報協力をイスラエル側がアメリカに対し求めた[79]

アメリカのブリンケン国務長官はこの日、CNNテレビに出演し、ハマースによるイスラエル攻撃について「イランが直接関与したという証拠は確認していない」と述べた一方で、長年ハマースや他のテロ組織を支援してきたとしてイランを批判した[80]。また同国のオースティン国防長官はハマースの攻撃を受け、「イスラエルの軍や国民に対する米国の断固たる支援を強調する」として空母打撃群をイスラエル沖の東地中海に派遣すると発表[81]。現在地中海に展開中の空母「ジェラルド・フォード」やミサイル巡洋艦・駆逐艦から成る空母打撃群を東へ移動させるという[81]。また同時に、中東地域でのステルス戦闘機F35F15F16戦闘機・A-10攻撃機の部隊を増強する方針も明らかにした[81]

同日には国連安全保障理事会が緊急の非公開会合を開いて対応を協議した[82][83]。会合に先立ってはイスラエルとパレスチナの代表がそれぞれ記者団を前に声明を読み上げ、相手を糾弾するとともに自らを正当化する一幕があり[83]、イスラエルのギラド・エルダン英語版国連大使は被害を伝える写真を掲げながら「われわれが目撃しているのは野蛮な戦争犯罪だ」とハマースを非難し、「野蛮な者たちを説得する時代は終わった。このような恐ろしい事態を決して再び引き起こすことがないよう、ハマースによるテロ行為のインフラを消滅させる時が来た」「イスラエルが(ハマースとの戦いに)負ければ世界がその代償を払うことになる」として、国際社会はハマース壊滅に向けたイスラエルの活動を「全面的に支援しなければならない」と強調した[83]。一方で、パレスチナのリヤド・マンスール英語版国連大使は「イスラエルはガザの封鎖やガザへの度重なる攻撃はハマースの軍事力を破壊し安全を確保するためだと言い続けているが、どちらも成し遂げていない」と指摘し、「イスラエルは今、同じ誤った前提で、新たな攻撃を正当化しようとしている。誰もこの道を歩むことを助長するような言動をしてはならない」と述べた[82]ほか、過去にパレスチナ人が殺害されても国際社会は行動を起こしてこなかったと不満を示した[83]。また、同会合では、ハマースが連れ去った人質の即時解放についても話し合われたが、非難声明や決議案をはじめとする具体的な対応に関しては議論されなかったという[83]

10月9日

前日夜からこの日にかけてイスラエル軍はガザの約500カ所を空爆した[84]。また、同軍はハマース戦闘員が侵入したガザ近くの全ての集落を掌握したと発表した[84]。戦闘は継続され、一連の死者は1,300人を突破した[84]。このほか、イスラエル軍の報道官がハマースのガザ地区指導者であるヤヒヤ・シンワール英語版が死亡したことを発表したと、イスラエルメディアが報じた[85]。また同日、イスラエル国防相のヨアブ・ガラントは、イスラエル軍にガザ地区を完全に包囲するように命令したと発表。「私たちは人間の姿をした獣と戦っており、それに応じて行動しています。」とも付け加えた[86]。イスラエル軍の報道官ダニエル・ハガリは予備役30万人を招集したと発表した[72]

またハマースの拠点であるとしてガザ中心部のビル「パレスチナ・タワー」をイスラエルの手により破壊した。わかっている範囲ではパレスチナ・タワーの屋上にはハマースのラジオ局があった[87]。またイスラエル側もモサドが危険を察知できなかったことで被害を受けた[63]

米国、英国、ドイツ、フランス、イタリアはイスラエル側につくとした共同声明を出した[88]。一方中国はイスラエル、パレスチナ双方に対して仲裁に入り、中立的な立場を見せた[89]。カタールも中立的な立場を取り、双方の拘束された民間人の引き換えなどの交渉に入った。交渉については10日時点では「前向きに動いている」と関係者がロイターへ語っている[90]

戦闘ではパレスチナ・タワーの破壊などの他に、イスラエル軍が戦車などを展開して侵入防ぐといった戦術を見せた[91]。また負傷者の輸血を7日に呼びかけ、9日に輸血がエルサレムで開始されると、1,000人ものイスラエル人が輸血を行った。イスラエル銀行シェケルの大幅な下落を防ぐため為替市場へ初介入した。EUはパレスチナへの資金支払いを即時停止した。EUの行動とは真逆に、ロシアとアラブ連盟はイスラエルとイスラエルを支援する欧米諸国を批判した[17]

イギリス内では英国政府がイスラエルへの全面的支援を表明し、ロンドンでは#人道上の問題節のようなイスラエルによるパレスチナに対する人道上問題がある行動に対し怒りを見せた人々により、デモが行われた。似たような事例で同日ニューヨークのイスラエル総領事館で道路を挟み南北に分かれ、北にイスラエル派100人、南にパレスチナ派300人ほどが集まり大騒動と化した[17]

モスクワではロシアのラブロフ外相とアラブ連盟(21カ国・1機構)のアハマド・アブルゲイト英語版事務局長が会談し、民間人の殺害や誘拐は「容認できない」という立場を確認するとともにハマースとイスラエルの双方に即時停戦を要請した[92]。また、会談冒頭でアブルゲイト氏は「パレスチナ問題の政治解決の見通しや試みがなければ、こうした事態は今後も起こり得る」と指摘している[92]

10月10日

ハマースが460発以上のロケット砲を発射した。また、カバティヤではパレスチナ人2人に発砲されたとしてイスラエル軍が2人を殺害した[93]。また後述の#人道上の問題節にもあるようなイスラエルによるガザ包囲が正式に行われ、イスラエル側は「テロリストのインフラを完全に破壊した。何千もの標的を攻撃し、何百トンもの爆弾を投下してきた。最大限の被害を与え続けている」や「ガザ地区への電力供給は終わる。燃料の備蓄がなければ数日以内に地区の電力はなくなり、井戸水も1週間以内にくみ上げられなくなるだろう」との発言を行った。10日時点では医療物資の枯渇や、空爆などによりガザ全体で安全な場所がほとんどないなどといった状況が発生した[17]

また国境なき医師団はガザ地区内の病院もイスラエル軍の攻撃の被害にあったとし、「医療施設は尊重されるべきで攻撃の対象になってはならない」と訴えた[94]。ハッジタワーというガザ内のタワーへの空爆により、ジャーナリスト3人の死亡などの被害も確認されている[95]

これらの裏でイスラエル軍はハマースの幹部2人の殺害を発表した。ニューヨークではイスラエル支持派による1万人規模のデモが発生した[96]

10月11日

イスラーム聖戦の幹部であるアリ・ハッサン・ガリ司令官が死亡した[93]国際連合人道問題調整事務所は123,000人以上がガザで国内避難民になっていることを公表した[97]ハーバード大学の学生らはイスラエル側を非難したものの、その結果幾つもの大企業より失業宣告を受けた。これに対しハーバード大学内の31の学生サークルが共同声明を発表し批判、ユダヤ人団体である名誉毀損防止同盟はこの声明を反ユダヤ主義的であるとした[98]

同日、米政府高官が匿名でイランがハマースのイスラエル攻撃を予測していた可能性があると述べた[99]。一方9日にイラン外務省は関与を否定している[91]

同日、イスラエルネタニヤフ首相は自身の連立内閣枠組みに国家団結英語版を加えた挙国一致内閣の戦時内閣を通常の内閣とは別個に発足させ、以降は戦争の遂行に関係ない法案や政府決定は一切凍結されることなったため、現内閣は事実上の機能停止状態となった[100][101]。戦時内閣はネタニヤフ首相、ヨアブ・ガラント国防相、ベニー・ガンツ前国防相の3人のみからなり、このほか元国防軍参謀総長のガディ・エイゼンコット議員、戦略担当相のロン・ダーマー英語版がオブサーバーとして参加することとなったが、戦争開始初期から挙国一致内閣に前向きだったヤイル・ラピド率いるイェシュ・アティッドは右派政党の排除要望が聞き入れられなかったこともあり、最終的には挙国一致内閣に参加しなかった。戦時内閣樹立の声明発表後、ネタニヤフら3人はテレビ出演を行い、ガラント国防相はハマースを地球上から消し去ると警告した[102]

国際赤十字・赤新月社連盟 (IFRC) はガザ地区でスタッフ4人が活動中に救急車両に対する攻撃より死亡したと発表した。IFRCは「国際法に従って、民間人や医療従事者、医療施設は常に尊重され、守られなければならない」と発言した。同様に国連パレスチナ難民救済事業機関 (UNRWA) もガザ地区での活動中にイスラエルによる攻撃によりスタッフ11人が死亡、UNRWAは「国連の職員と民間人は常に守られなければならない。より多くの民間人の命が失われないよう、戦闘の終結を求める」として戦闘の終結を求めた[94]

アメリカは前述の空母打撃群に加えドワイト・D・アイゼンハワーを主力とする空母打撃群を地中海に派遣していることを発表した。またオースティン国防長官はベルギーにてイスラエルにアイアンドームを供与したとした[94]

同じくアメリカのドナルド・トランプ元大統領は一連の戦闘をバイデン政権の外交の失敗であるとし、自身が大統領になれば「私のリーダーシップのもとでイスラエルを全面的に支持し、テログループであるハマースを打ち破って永久的に破壊する」とした[94]

韓国では同国の尹錫悦大統領が訪韓したアメリカ上院の民主党トップのシューマー院内総務率いる超党派上院議員団と会談した[103]。両者はイスラエルへの無差別攻撃を非難するとともに、事態の早期収束に向けて米韓両国が「建設的な役割」を果たしていくことで一致した[103]

10月12日

ブリンケン米国務長官イスラエルに入国した。アメリカイスラエルの協力関係を強くさせる為と思われており、13日にはアッバス自治政府議長と会談する予定[104]。また、中国の中東問題特使、翟雋がイスラエル政府高官と電話会談を行った[105]。フランスはパレスチナを支持するデモを禁止することを発表し、「片方を禁止して片方を認めるなんて不公平だ」といった非難が集まった[106]

ハマースの人質の家族2人がロンドンで会見を行い、「ホロコーストの生存者がハマースによる新たなホロコーストに直面している」と語り、即時解放を訴えた[26]

イラン・アミラブドラヒアン外相がパレスチナ人に対する戦争犯罪が継続されれば「抵抗の枢軸」からの報復を受けることになると発言。抵抗の枢軸が指すものについては明確には判明していないがパレスチナ側の勢力のことであると考えられている[107]

コロンビアのペトロ大統領はガザ地区に対する包囲攻撃と全面封鎖を命じたガラント国防長官に関する記事を掲示した後、「これはナチスがユダヤ人に対して言ったことと同じだ」と指摘[25]。「民主主義市民はナチズムが国際政治舞台に再び登場することを許すことはできない」とし、「(ガラント長官のように)憎しみ発言が続くなら、ホロコーストだけをもたらしてしまう」と主張した[25]

またシリア国営のシリア・アラブ通信によるとイスラエルはガザ外であるダマスカスとアレッポの空港に対しミサイル攻撃を行い滑走路が損害を受け、両空港は使用不能となった[108][109]

イスラエル軍により国際法上禁止されている白リン弾を使用していたことがヒューマン・ライツ・ウオッチ (HRW) により発覚した。使用していたのは10から11日の間に使用された都市、HRWは「人口過密なガザでの使用は民間人被害の危険性を増大させ、国際人道法に違反する」と述べ懸念を示した。2008年12月においてもイスラエル軍は白リン弾を使用したとされているが政府は「戦時国際法には違反しない」と発言していた[110]

また、EUはX(旧Twitter)やフェイスブックを運営するメタに対して嘘の情報や暴力的な映像が流れていることに対してデジタルサービス法に基づく初めての調査を行おうとした。これに対してXは11日に、メタは13日に対応を行ったと報告した[111]

10月13日

イスラム教徒は戦争開始後初の金曜日、祈りの時間が始まった。クアラルンプールではイスラム教徒1,000人が祈りの後に集まり、イスラエルの旗がかかった像を破壊する等のデモや暴動を起こした[112]

国連はイスラエル軍からガザ地区北部の住民が同地区南部(正確にはガザ渓谷以南[113])に退避する必要があるとの通知を受け取ったことを発表した[114]国連パレスチナ難民救済事業機関のフィリップ・ラザリーニ事務局長は、この退避通知について、「ガザ地区の北部に住む100万人以上の市民を24時間以内に移動させるというイスラエル軍の通告は恐ろしい。前例のないレベルの悲惨さをもたらし、ガザの人たちをさらなる奈落の底に突き落とすだけだ」と強く批判している[115]。また13日に、国連は安全保障理事会の緊急会合を行っている[116]

ナフタリ・ベネット元イスラエル首相は、英国スカイニュースの司会者から「イスラエルがガザ地区の電力供給を止める事で生命維持装置の民間人や病院で育てられている赤ん坊の被害が出るのではないか」と質問され、「我々はナチスと戦っている。敵に餌を与えるつもりはない」と述べた[117]

カシミールのカールギル地区ではパレスチナ支持者によるイスラエルに対する大規模な抗議運動が行われた。パレスチナの旗を掲げたり、「Down with Israel and Down With America(イスラエルを倒し、そしてアメリカを倒せ)」というプラカードを掲げている人々もいた[118]。イランでも同様のデモが発生した[119]

12日の確認に続き、アムネスティ・インターナショナルはガザ地区の港と、イスラエルとヨルダン川西岸地区の国境において白リン弾が確認されたと公表した。中東・北アフリカ局長ラマ・ファキは白リン弾について「白リンが混雑した民間人居住区で使用された場合、耐え難い火傷を負い、生涯にわたって苦しむことになる危険性が高い」と懸念を示している[112]

イギリス政府は2隻のイギリス海軍艦船と観測機が東地中海に配備する予定であることを発表した。オースティン国防長官はテルアビブでの会見において「(ハマースの行動は)ISISを思い出させる行動である」と話した[112]

中国では北京でイスラエル大使館員の家族が刺されるという事件が発生した。中国政府のしわざではないかという疑いもあるが、当局は否定している。刺された外交官の家族は病院に運ばれ、容態は安定しているとのことである[112]。この事件で、外国籍の53歳の男が北京の警察当局に拘束された。なお、本戦争とこの事件の関係はまだわかっていない[120]

パレスチナ暫定自治区内であるヨルダン川西岸地区でもベツレヘムを中心に大規模なデモが行われた。デモ内で一部のデモ隊がタイヤを燃やして抗議したほか、治安当局もデモ隊に対して催涙ガスで応戦するなどといった騒ぎとなっていた[121]

ヒズボラのナイム・カセム副議長は、戦争に参加しないようにという声に動じないと述べ、「(戦闘に貢献する)完全な準備ができている」と語った[122]

イスラエル軍の激しい空爆で負傷者が急増する中、救急医療などを担うパレスチナ赤新月社は、「患者を見殺しにはできない」として避難を拒否すると表明した[123]

10月14日

13日にイスラエル側が通知した退避勧告から24時間経過した。24時間経過時点では「局地的な急襲」をイスラエル側が行ったことは判明しているものの、大規模な攻撃は確認されていない[124][121]。勧告は地上侵攻を示唆しているのではないかという分析も出ている[125]

国連の安全保障理事会の緊急会合が開かれ、ロシアは、即時停戦を求める決議案を各国に提案したが、ハマースは非難しなかった。このことについてネベンジャ国連大使は「これは人道決議であり非難決議ではない」と述べた。一方この会合の後、10月の議長国であるブラジルはハマースを非難する決議案を各国に示した[126]。なお、ロシアの決議案は16日に否決された[127]

韓国外務省は韓国人を退避させるための輸送機に韓国人162人、日本人51人、シンガポール人8人が搭乗していることを明かした。座席に余裕があったため、日本側に人道支援を提案し、協力が実現した[128]。この輸送機は、14日23時頃にソウル近郊に到着した[129]

イスラエル軍は、7日の奇襲にかかわったとされるハマース指揮官のアリ・カディ氏と同じくハマース軍幹部のムラド・アブ・ムラド氏も、空爆によって殺害したと発表した[130]

10月15日

シリアの国営通信は、北部アレッポの国際空港がイスラエル軍による攻撃を受け、施設などに被害が出たと報じた。なお、15日時点でけが人は確認されていない[131]

ガザ地区の保健当局は15日、イスラエル軍ハマースとの衝突で、これまでにガザ地区で2,329人が死亡したと発表した。こうした中イスラエル軍は15日朝にかけて、ガザ地区にある指揮所や発射台など100以上の軍事施設を攻撃したとしたほか、ハマースの幹部1人を殺害したと発表した[132]

ガザ地区から10kmほどのイスラエル南部のアシュケロン郊外に、イスラエル軍の軍用車などが集まり、近く行われるとみられる地上侵攻へ態勢を整えている[133]。それに合わせスデロトなどでは政府主導で市民の避難が行われた[134]

ハマースを支援しているイランアブドラヒアン外相はドーハを訪れ、ハマースの最高幹部のイスマーイール・ハニーヤ氏と会談した。イラン外務省の声明によると、アブドラヒアン外相は「イスラエル戦争犯罪からガザ地区の人々を守るため、われわれは努力を続ける」と述べ、今後も協力を続けることを確認した。そのうえで、「イスラエルガザで戦争犯罪を続けるなら、この地域で何が起きてもおかしくない」と、イスラエルをけん制した。これに対しイスマーイール・ハニーヤ氏は「イスラエルによる残虐な殺人や家の破壊などにもかかわらず、パレスチナの抵抗勢力は強さを保っている」と述べ、徹底抗戦を続ける姿勢を強調した[135]

パレスチナ自治政府の大統領であるマフムード・アッバースは、「ハマースはパレスチナ人の代表ではない」、「ハマースは人質の即時解放をすべき」、「ハマースによるイスラエル南部への攻撃を非難する」と声明を出した[136][137][138]

アメリカは正式にドワイト・D・アイゼンハワーを主力とする空母打撃群をジェラルド・R・フォードを主力とする空母打撃群と合流させようとしていることを発表し、「このような事態をエスカレートさせようとする国家や非国家勢力を抑止する決意を、我々は持っている」と国防長官は述べた[139][140]。『THE TIMES OF ISRAEL』は国家がイラン、非国家勢力がヒズボラを指していると分析している[139]

イリノイ州では本戦争を受けて男性が「イスラム教徒は死ななければならない」と叫びながら、イスラム教徒の親子を襲撃し、6歳の少年を鋸歯状の刃を持つ軍用ナイフで26回刺し殺し、32歳の母親に重傷を負わせた。その後イリノイ州の男性はヘイトクライムで起訴された。刑事によると、本紛争に腹を立てており、そこでイスラム教徒である被害者家族を標的にした[141][142][143]。これに対してアメリカ・イスラム関係評議会 (CAIR) シカゴ支部の事務局長は「誰に対しても憎しみの余地はない」と本事件を非難した[140]

また、イスラエル側が避難勧告において南部へ避難するよう促していながら、カーンユーニス病院などの南部地域にイスラエル側が攻撃を行っていることが判明した。他、ガザ地区外であるヨルダン川西岸地区に対してイスラエル軍が一晩に数十回ものペースで夜間襲撃を行っていることが発表された[140]

イスラエル大統領府がハマースの戦闘員が所持していた「戦闘員ガイド・ジハード(聖戦)編」というタイトルの指示書を公開した。7日に同国に侵入した戦闘員を殺害した際、押収したものの中から見つかった。指示書では戦闘員に対して、人質に電気ショックを与えたり、人質を「人間の盾」として使い、戦闘員に刃向かった場合は処刑したりするよう求めていた。また、ヘルツォグ大統領は指示書の公開に合わせ「悪を根絶することが、より良い地域と世界を作る方法だ」と述べた[144]

パレスチナ解放運動などを支援しているアメリカのモデルであるジジ・ハディッドが、Instagramにおいて「パレスチナ支援が反ユダヤ主義やハマス支援だと誤解されている」と投稿し物議を醸した件について、イスラエル政府が直々に「ジジ、ここ1週間、寝ていたの? それとも、ユダヤ人の赤ちゃんが自宅で切り殺されているのを見て見ぬふりをしていいと思っているの? あなたの沈黙は、あなたの立ち位置を明確に示している」と名指しで批判した[145]

国際連合レバノン暫定駐留軍は、レバノン南部に所在する本部がミサイルにより攻撃されたと発表した[146]

ヒズボラは、イスラエル北部に向けて対戦車ミサイル5発を発射し、シュトゥラ英語版で民間人1人が死亡、3人が負傷した[147][148]。また、アミタイ・グラノット中尉(IDFゴラ二旅団第75大隊長、ラビ・タミール・グラノットの息子)は、レバノンと国境を接するIDF駐屯地へのミサイル攻撃で死亡した[149]

10月16日

中東を訪問中のアメリカのブリンケン国務長官は、16日に再びイスラエルを訪れることが決まった[150]

イスラエル緊急内閣の閣僚会議が初めて開かれ、イスラエルのネタニヤフ首相は 「怪物を根絶やしにする準備はできている」と述べた。地上侵攻を示唆していると見られる[151]

国連パレスチナ難民救済事業機関 (UNRWA) はガザ地区でこの1週間で少なくとも100万人が退避を余儀なくされていると発表した。また世界保健機関 (WHO) はガザ地区北部の4つの病院がイスラエル軍による攻撃で標的となり、稼働できなくなっているなど、人道的な問題も発生している[152]

バイデン米大統領はCBSの取材に対して再び紛争に対して発言し、イスラエル戦時国際法を守っているかについて「確信している」と述べ、60 Minutesのインタビューではハマースは完全に排除されなければならないという一方で、パレスチナ国家までの道のりは残さなければならないという考えを示した[153]

交渉により、エジプトイスラエルアメリカガザ南部の停戦で合意した[154]。このことからガザ地区エジプトの国境沿いに位置し、本戦争で事実上封鎖状態となっていたラファ検問所の期限付きでの解放も行われた[140][155][150]

この日、双方の死者が4200人を超えた[156]

国連安全保障理事会がロシアの提出した決議案を否決した。中国など5か国が賛成、日米英仏が反対、残り6か国が棄権し、採択に必要な9か国以上の賛成に達しなかった。内容は民間人への暴力とテロ行為を非難し人道支援の提供を求めるもので、人道的停戦を呼び掛けていたが、ハマースには言及していない。アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は反対理由を「ハマスを非難しないことで、ロシアはテロリストを擁護している」と説明した[157]。この結果に対しロシアのネベンジャ英語版国連大使は「世界は安保理が血で血を洗う事態に終止符を打つことを期待していたが、西側諸国がそれを裏切った」として欧米を批判した。これに対し米トーマスグリーンフィールド国連大使は「ハマスによるテロはホロコースト以来最悪のユダヤ人虐殺だった。ハマスは無実の人たちを人質にとり、その残虐行為はガザ地区の人たちの人道危機にもつながっている。ハマスを非難しないことはテロリストを擁護することになり、言語道断だ」としてロシアに反論した[158]

ハマースのカッサム旅団は人質だとする21歳の女性の映像を公開した。女性は「土曜日の夜明けにガザ地区に近いスデロットでのパーティーから戻っていたところで連れ去られました。手に重傷を負い、3時間におよぶ手術や手当をして薬をもらいました。私は大丈夫ですが、早く家に帰りたいです。家族へ、お父さん、お母さん、きょうだいへ、早くここから出してください。ありがとう」と映像内で話した[158]

フランスは10月12日節参照のようなパレスチナを支持するデモを禁止する法律に基づき「反ユダヤ主義的」として102人を拘束したことを発表した。102人の中にはフランス人以外の人々27人もいるとされている。地方メディアによるとフランスには50万人ほどの大規模なユダヤ人コミュニティがあり、政府は、ユダヤ教の礼拝所・シナゴーグの警備を強化するなどの対策を行っている[158]

イギリスは「パレスチナの人たちもハマスの被害者だ」としてパレスチナに1000万ポンドの追加支援を行うことを発表した。ロシアもプーチン大統領がイスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ暫定自治政府のアッバス議長、イランのライシ大統領、シリアのアサド大統領、エジプトのシシ大統領と、複数の中東首脳と電話会談を行ったことが判明した[158]

10月17日

ブリンケン国務長官は訪問先のエルサレムで18日にバイデン大統領がイスラエルを訪問することを発表した[159]。またドイツショルツ首相は訪問先のアルバニアで、イスラエルを訪れることを明らかにした。日程はわかっていない[160]。またマイケル・エリック・クリラ米中央軍司令官はイスラエル軍の幹部と会談するため、テルアビブに到着した[158]

午後にはUNRWAが運営する避難所として運用されていたガザ地区中部の国連学校に攻撃があり、6名の死亡が確認された[161]

17日夜、ガザ市のアル・アハリ病院で爆発があり(アル・アハリ病院爆破事件)、ハマースはイスラエルの攻撃であるとした[162]。一方イスラエルはハマース以外の武装勢力のミサイルの失敗によるものとしている[161]。この爆発により約500人が死亡した。これに対しアッバス議長は「おぞましい戦争の虐殺」「イスラエルはすべてのレッドライン(越えてはならない一線)を越えた」と述べ、ハマースのイスマイル・ハニヤは襲われた責任はアメリカにあると主張した[162]

この攻撃にWHOは「医療活動(を行う施設や人々)は優先的に保護されなければならないし、攻撃対象としてはならない」として非難し、国連のグテーレス事務総長や、ヴォルカー・ターク国連人権高等弁務官も「全く受け入れられない」と述べた[163][161]。ユニセフのキャサリン・ラッセル事務局長も声明を出し、「攻撃は容認できず、即時停戦求める」と批判した[164]。トルコのエルドアン大統領は「女性や子どもたち、罪なき市民がいる病院を攻撃することは、イスラエルによる人間の尊厳を欠く攻撃の最新の事例だ」とSNSで述べた[161]

またバイデン米大統領のヨルダン訪問はこの攻撃により中止となった[161]

イギリス・スナク首相はサウジアラビアのムハンマド皇太子と電話会談を行い、その後カタールのタミム首長とも電話会談を行った[161]

レバノンとイスラエルの国境に沿って衝突が発生し、5人のヒズボラの戦闘機が損失した。またその戦闘内でレバノン領から発射された対戦車ミサイルがイスラエル北部のメトゥラ英語版に直撃し、3人が負傷した。またその後イフタ英語版を目標として2発の対戦車ミサイルが発射されるも、負傷者は出なかった。IDFは報復としてレバノン領に砲撃を行った。ヒズボラは殺害された14人のパイロットをマフムード・バエズ、フッシェン・ファサイ、フセイン・アル・タウィル、マハディ・アトウィ、イブラヒム・アル・ドゥブクと特定したが、彼らの死に対する詳細は明らかにしなかった。またIDFのスポークスマンは、イスラエルの防空システムがレバノンから国境に近づくドローンを迎撃したと述べた。トルコのフィダン外相は「(本戦争は)より大きな戦争につながる可能性がある」として「戦争が他国に広がらないように、私たちはできる限りのことをする」とした[165]。またこの戦闘中に越境を行おうとした4人のヒズボラ戦闘員は殺害された[166]

この日にはイスラエル国防軍によるガザ地区中部への空爆で幹部のアイマン・ノファル英語版最高司令官が殺害されたことが発表され、このことはイスラエルとハマースの双方が確認している[167]

10月18日

バイデン米大統領は大統領専用機でワシントンD.C近郊の空軍基地を出発し、イスラエルのテルアビブに到着。イスラエルのネタニヤフ首相と会談し、「アメリカはイスラエルとともにある」と述べ、イスラエルへの連帯を示し、ハマースについては「テロリストの集団だ」として非難した[161]。またガザ地区に隣国であるエジプトから人道支援物資が入ることを条件付きで認めるとする声明を発表した[168]

また17日の病院爆破に対して18日には日本・上川陽子外相が「罪のない一般市民に多大な被害が発生し、強い憤りを覚える」とする談話を発表した[161][169]

イスラエル国外の超正統派のラビ(ユダヤ教の宗教指導者)が「私たちはパレスチナの隣人たちと平和に暮らしたいのです。」と声明を出し、イスラエルに対する抗議活動を行った[170]

アメリカではアメリカ合衆国議会の建物内にデモ隊が侵入し即時停戦を訴えた。これにより300人が逮捕された[168]

国連安保理ではロシアがまた提出した即時停戦案に対して15か国のうち日本を含む12か国が賛成したものの、アメリカが拒否権を発動したことで否決された。アメリカはトーマスグリーンフィールド国連大使が「決議案にはイスラエルの自衛権が言及されておらず失望している」と述べ、それに対しロシアのネベンジャ国連大使は「われわれはアメリカの偽善とダブルスタンダードを目の当たりにした。アメリカは解決策を見つけることを望んでいなかった」してアメリカを非難した[168]

イランは、ライシ大統領が演説を行い、「誰がこんな恐ろしい犯罪を受け入れられるだろうか」とイスラエル側が戦争の原因だとして批判し、アメリカに対しては「世界の人々があなたたちをイスラエルの共犯者だとみなしており、その憎しみを目の当たりにするだろう」と警告を行った。またイスラム協力機構(OIC)もイスラエル側に責任があるとして非難した[168]

10月19日

WHOは、ガザ地区において戦闘中に26の医療機関が被害にあったことを報告し、国連人口基金(UNFPA)はガザ内で現在妊娠している5万人の内、来月に出産を予定している5500人は安全な出産をするための環境が整っていないことを公表、ユニセフも数百人のガザの子供が死亡し、30万人以上が家を追われているとした[168]

イギリスはスナク首相がイスラエルを19日訪問し、ネタニヤフ首相と戦闘の拡大防止などに向けて会談することを明らかにし、スナク首相は20日にかけてイスラエルや周辺国を訪れ、戦闘の拡大防止やガザ地区への人道支援の早期実現に向けて話し合うとしている。スナク首相は声明で、大勢の民間人が犠牲になったガザ地区の病院の爆発について「世界中の指導者が戦闘の拡大を防ぐため、結束する分岐点にするべきだ」と強調した[168]

人道上の問題

ハマースによる人道上の問題

クファルアザ英語版での虐殺現場。家の壁には弾丸の痕がある。

ハマース戦闘員によるイスラエル人や外国人の誘拐が行われている[171][172]

また、ハマース戦闘員がイスラエル国内で民間人の虐殺を行ったことが指摘されており、イスラエル南部地区レイムで行われていた音楽祭の会場から250人以上の遺体が発見され、数多くの拉致や残虐行為の目撃が報告されたレイム音楽祭虐殺事件のように、民間のイベント会場や集落をハマース戦闘員が無差別に襲撃している[173]。イスラエル軍報道官の発表によると、一連のハマース戦闘員の行動によってイスラエル史上最大の民間人虐殺が行われたとされており[173]、現時点でもクファルアザ英語版虐殺が確認されている[174][175]スデロットでは民家への放火も確認されている[69]。ハマースによる拉致被害は多く確認されており、イスラエル人だけでなくドイツ人1人やタイ人11人なども拉致された[91]。ハマースのロケット弾は主に無誘導爆弾であり、イスラエル国防軍によると戦闘開始から7日間で6000発以上のロケット弾がハマースからイスラエル側の広い範囲に打ち込まれた。また以前からハマースがガザ地区の学校病院を軍事拠点化しているという指摘も専門家からなされており[176]、イスラエル軍も同様の主張を行っている。

イスラエルによる人道上の問題

イスラエルからの空爆は、1日で6000発の爆弾の投下が行われ[177]、10月16日までに、空爆によって700人以上の子どもを含む2750人が死亡し、10000人近くが負傷した[178]。同日には、空爆によって、消防や捜索救助などの緊急対応サービスを担当するパレスチナ民間防衛(PCD)の本部が破壊された[179]

イスラエル軍によるガザ地区に対する攻撃

一方でイスラエル側によるガザ地区に住む民間人への被害も確認されており、8日時点でガザの高層住宅4棟を破壊するなどの被害が確認されている[180]。イスラエルのガラント国防相はガザ封鎖を宣言した9日、「われわれは「人間の顔をした獣」と戦っており、それにふさわしい行動をする」と述べ、特定集団を非人間化する名称で呼ぶことは「ジェノサイド(集団殺害)の兆候」であると専門家より批判された[181]。またイスラエルのヨアヴ・ガラント国防相がガザへの包囲を宣言し、電気、食料、水、ガスの供給ができなくなる危険性が生じた。ガザ地区内ではすでに40万人以上が水に関するインフラで被害、インターネット通信も危機的状況、唯一の発電所であるガザ発電所も燃料の枯渇が懸念され、結果的に停止した[182][183]。10日、欧州連合 (EU) のボレル外交安全保障上級代表は「イスラエルは国際人道法(戦時国際法)に従って自衛権を行使しなければならない」と語り、ガザのパレスチナ住民に対する水や食料などの遮断は「国際法違反」との認識を示した[181]フィリップ・ラッツァリーニは、「ガザは水が不足しており、ガザは生命が不足している」と述べた[184]

これらに対して国連の世界食糧計画はガザ地区への食糧供給を8倍に、国連パレスチナ難民救済事業機関によるとガザ地区の住民はこれらに恐怖を抱いていると公表した[182]。またガザへの包囲に対して記者であるルース・ポラードは国際法で規制されている集団懲罰そのものだと批判している。他に同記者はジェニンの難民キャンプへの攻撃やヨルダン川西岸の軍事占領、イスラム人に対する人種差別などイスラエルが行った戦争犯罪もしくは国際法違反と思われる行動を指摘している[185]。ユニセフのキャサリン・ラッセル事務局長は「ガザ地区への電力の遮断や、食料、燃料、水の供給を止める措置は、子どもたちの命を危険にさらすことにつながりかねない。人道状況が急速に悪化する中、子どもたちやその家族がどこにいようと、人道支援に携わる人々が安全に、命を守るための活動や、物資を届けることをできるようにしなければならない。」と懸念を表明しながら支援を行うことを誓った[17]。またガザではそもそも病院まで運ぶ道のりが空爆により危険で、そして墓地もスペースが埋まっていることなどから、アイスクリームを冷凍するためのトラックに遺体を入れる例などもあったとガザ保健当局が発表した[153]。10月15日、イスラエルは給水再開に同意したが、対象はガザ南部のみであった[186][187][188]。しかし、ガザの給水ポンプは電力に依存しているため、このイスラエル側の同意は、再度の給水アクセスを保証するものではなかった[189][190]。イスラエルのエネルギー・水省のスポークスマンは、ガザ南部の1カ所でしか水は流れていないと述べた。しかし、ボランティアやガザ政府のスポークスマンは、水はそもそも利用できないと語っている[191]。10月16日、イスラエル・カッツ・エネルギー相は、ハーンユーニス南部近郊のブネイ・サヒラで水が利用できるようになったと主張したが、ガザ内務省のエヤド・アル=ボゾム報道官は、ガザのどこであっても水はまだ利用できないと述べた[192]。同日までに、ガザ住民は海水や農業用井戸の汽水を飲むようになり、水系感染症の恐れが高まった[178][189]。医師や病院スタッフは水の枯渇から、点滴液を飲んだ[193]

また白リン弾の使用も確認されており、白リン弾の激しい燃焼力で深刻なやけど被害をもたらす危険性から人権団体より批判が集まっている[110]

11日には国際刑事裁判所が、パレスチナ国で行われた戦争犯罪の疑いを調査する2014年時点のマンデートが、現在の紛争にも及ぶと発表した[194]

ガザの数百万人に救命支援を届けるための「人道的一時停止」を求める安保理決議案がブラジルにより提出され、理事国15カ国中12カ国から「賛成」票を獲得し、ロシアと英国は棄権したが、米国は決議案の採択を阻止するために拒否権を発動した[195]

影響

CNNによるとX(旧Twitter)などにおいてゲームの映像やシリア内戦の映像「ファウダ -報復の連鎖-」のシーンなどを当戦争の映像としたりするなどといった虚偽の情報が回っている[196]。問題の投稿の多くはコミュニティノート機能により訂正を受けているが、偽情報の拡散に歯止めがかからない状況が続いている[196]。これに対してEUはEU内の法を適応しようとしたことから、各インターネットシステムを運営する企業は対応を行った[111]。また、イラン・イスラム共和国放送によるハマースによるイスラエル司令官の捕獲の報道の映像も、2023年ナゴルノ・カラバフ衝突の際の映像を流したことが判明した[197][198][199]

日本への影響としては中東リスクが再燃していることから、原油価格の高止まりによる貿易収支の悪化により戦争以前より続いていた円安の長期化は避けられないと思われている[200]

エジプトでもアレクサンドリア警官イスラエル人観光客向けのバスに発砲し、イスラエル人2人とエジプト人1人が死亡、13日には中国の首都北京でイスラエル大使館職員が刺され負傷、同日フランスにおいても北部にある高校で教師が刺殺、パリ東部の高校では男が刃物を持って校内に入ろうとする等、当戦争が関係していると思われる事件が相次いだ[180] [201][202]

ブルガリアスペインポーランドタイイスラエルに居住する各邦人らを退避させた。一方イギリスは退避させなかったため、外務・英連邦・開発省には非難が集まった[203]

イスラエルではタマルガス田の閉鎖が行われた[204]

10月9日にはニューヨーク・マーカンタイル取引所 (NYMEX) の原油先物相場が1バレル=86.06ドルにまで急伸した[205]。また同日、エヌビディアがイスラエルのテルアビブで15・16日に開催を予定していた「AIサミット」を、「参加者の安全が最優先事項であり、これが最善の行動だと信じている」として中止したと発表した[206]

10月10日にイスラエルの主要産業の一つでありGDPの5分の1を占めるハイテクノロジー産業は、それまでの混乱による停滞が徐々に回復してくると思われてきたが本戦争により回復が頓挫した。アワークラウドジョン・メドベド最高経営責任者は「海外からの投資は今後数週間から数カ月間、特に衝突が続く限り、鈍化するだろう」と分析している[207]

イギリスの放送局であるBBCは紛争発生以来、ハマースをテロリストとは呼称せず、「武装組織」と呼んでおりこの報道姿勢に政府や英政界の与野党双方から批判の声が上がっている[208]。これに対しBBCの国際報道の責任者を務めるジョン・シンプソンは「誰かをテロリストと呼ぶのは、片方の側に立つことであり、状況を公平・中立に報じないことになる」とXで反論。「わめき散らさず、視聴者に事実を提示すること」がBBCの仕事だと述べている[208]

交渉

ロイター通信は10月9日、カタールがイスラエルとハマース間で、イスラエルが36人のパレスチナ人女性と子どもを解放する代わりに、ハマースにイスラエル人女性の人質を解放するという交渉を仲介していると報じた[90]

AP通信によるエジプト政府関係者への取材によると、イスラエルはハマースに拘束されている人質の安全を確保するためにエジプトに援助を求め、エジプト諜報部長は情報を求めるためにハマースとイスラーム聖戦に接触したという。エジプト当局が、ハマースに捕らえられたイスラエル人女性と引き換えに、イスラエルの刑務所に収容されているパレスチナ人女性の釈放を仲介していることが同じくAP通信により報道された[38]

死傷者

ジャーナリストの死傷者

ジャーナリスト保護委員会は18日以降で、19人のジャーナリストが確認された。内訳は15人がパレスチナ人、3人がイスラエル人、1人がレバノン人であった[168]

また負傷者では、8人のジャーナリストが負傷し、3人が行方不明、または拘束されたことが判明している[168]

10日には、ハッジタワーというガザ内にあったタワーが空爆により破壊され、3名のジャーナリストが死亡する等、ジャーナリストが殺害されるような事象がいくつも発生している[209][210]

外国人死傷者数

ワシントンポストは10月11日時点で24か国の人々の死傷者が確認されているとした[211]

2023年パレスチナ・イスラエル戦争における外国人死傷者数
死亡 誘拐 行方不明 Ref.
アメリカ合衆国の旗 アメリカ 30 不明 13 [212]
タイ王国の旗 タイ 28 17 14 [213][214]
フランスの旗 フランス 19 不明 13 [215]
ロシアの旗 ロシア 16 1 9 [216]
ウクライナの旗 ウクライナ 12 不明 8 [217]
ネパールの旗 ネパール 10 17 1 [218]
アルゼンチンの旗 アルゼンチン 7 不明 15 [219]
エチオピアの旗 エチオピア 7 不明 不明 [220]
イギリスの旗 イギリス 6 不明 10 [221]
カナダの旗 カナダ 5 不明 3 [222]
チリの旗 チリ 4 1 0 [223]
ルーマニアの旗 ルーマニア 4 不明 3 [224]
オーストリアの旗 オーストリア 3 不明 2 [225][226]
ベラルーシの旗 ベラルーシ 3 不明 1 [227]
ブラジルの旗 ブラジル 3 不明 0 [228]
中華人民共和国の旗 中国 3 0 2 [229]
フィリピンの旗 フィリピン 3 不明 3 [230][231]
ポルトガルの旗 ポルトガル 3 0 5 [232][233][234]
トルコの旗 トルコ 3 不明 不明 [235]
コロンビアの旗 コロンビア 2 不明 不明 [236]
パラグアイの旗 パラグアイ 2 不明 2 [237]
ペルーの旗 ペルー 2 不明 5 [215]
南アフリカ共和国の旗 南アフリカ 2 不明 不明 [238]
オーストラリアの旗 オーストラリア 1 不明 不明 [239]
アゼルバイジャンの旗 アゼルバイジャン 1 不明 不明 [215]
カンボジアの旗 カンボジア 1 0 0 [240]
エストニアの旗 エストニア 1 0 0 [241]
ドイツの旗 ドイツ 1 5 不明 [242]
ホンジュラスの旗 ホンジュラス 1 不明 不明 [243]
アイルランドの旗 アイルランド 1 不明 不明 [237][244]
リトアニアの旗 リトアニア 1 0 0 [245]
スペインの旗 スペイン 1 0 0 [246]
スリランカの旗 スリランカ 1 不明 2 [247]
スイスの旗 スイス 1 不明 不明 [248]
デンマークの旗 デンマーク 0 1 0 [249][250]
メキシコの旗 メキシコ 0 2 0 [237]
イタリアの旗 イタリア 不明 不明 3 [251][252]
タンザニアの旗 タンザニア 不明 不明 2 [253]

交戦勢力および支持・支援勢力の推移

2023年パレスチナ・イスラエル戦争に対する国際社会の反応。
  イスラエルを支持またはハマースを非難した国
  中立の国
  ハマースを支持またはイスラエルを非難した国
  不明

  パレスチナ
  イスラエル

イスラエル側

交戦勢力は最新版時点でイスラエル・同国国防軍のみ。

支持国

イスラエル側支持国。●は支援を表明した国。

パレスチナ武装勢力側

ハマース、ヒズボラ、PIJのほか、DFLP[291]、PFLP[292]ライオンの巣穴英語版[293]などの武装勢力の関与も取り沙汰されている。

支持国

パレスチナ武装組織側支持国。●は支援を表明した国

中立的立場

これらの国は中立的立場を宣言している。双方に自制を促した国、いずれか一方のみを非難しつつ、もう一方についても肯定的でない立場の国を含む。

国際社会の反応

国際機関

  • 国際連合の旗 国際連合: 10月7日、アントニオ・グテーレス事務総長は報道官を通じて声明を出し、「市民が攻撃され、誘拐されたという報道に愕然としている」としたうえで「最も強いことばで非難する」とした。また暴力で紛争は解決できないとして、「さらなる事態の悪化を避けるためあらゆる外交努力を要請する」と強調した[332]
  • 北大西洋条約機構の旗 NATO: 12日、ブリュッセルで国防相会合を開き、イスラエルに対するハマースによるテロ攻撃を非難し、「イスラエルには自衛する権利がある」と述べた[333]
  • 欧州連合の旗 欧州連合: フォンデアライエン欧州委員長は13日、イスラエルを訪問し、同国のネタニヤフ首相との共同記者発表で「欧州はイスラエルと共にある」と述べ、ハマースについては「パレスチナ人の正当な願望とは何の関係もない」テロ組織だと断じ、イスラエルとの連帯を示した[334]。ディミテル・ツァンチェフ駐イスラエルEU大使は、この攻撃を非難した[335]。ブリュッセルの欧州委員会本部と欧州議会の外にはイスラエル国旗が掲げられ、欧州議会ロベルタ・メツォラ議長は10月11日、同議場でイスラエル人犠牲者を追悼し、1分間の黙祷とイスラエル国歌の斉唱を行った。10月9日、EUの共通見解を定めるために招集されたEU理事会に先立ち、オリバー・ヴァルヘイ拡大委員はX(旧Twitter)で、欧州委員会はパレスチナに対する開発援助の支払いを即時停止すると発表した[336]。10月9日の閣僚会議では、ハマースによる攻撃を非難する一方で、「市民の保護と自制、人質の解放、国際人道法に則ったガザへの食糧、水、医薬品の提供」を求める決議が採択された[337]。また、上記のようなヴァルヘイ拡大委員の発表は、スペイン、アイルランド、ベルギー、ルクセンブルクなどのいくつかのEU加盟国の外相から、そのような決定ができるのは個々の国だけだと主張され、批判された。EUはヴァルヘイの発表を訂正したものの、パレスチナへの開発資金については不正利用(軍事利用等)を防ぐために支払いを見直すと述べた[338]
  • アラブ連盟の旗 アラブ連盟: アラブ連盟は、「イスラエルが暴力的で過激な政策を継続的に実施していることは、この地域から当面する安定のための真剣な機会を奪う時限爆弾である」と述べイスラエルを非難した[339]

国家

 北米 

  • アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国: 10月7日、ジョー・バイデン大統領ホワイトハウスで会見し、「アメリカはイスラエルとともにある。われわれはイスラエルへの支援を惜しまない」と述べた[332]。8日にはロイド・オースティン国防長官が東地中海に対して地域の緊張の抑止を目的に原子力空母ジェラルド・R・フォードを中核とする第12空母打撃群を派遣することを決定した[78][79]。また、ハマースの攻撃によりアメリカ人9人が死亡した。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官がカタールを仲介役に期待していると述べている[93]。ブリンケン国務長官も12日にイスラエルに訪問し、その後15日までにヨルダン、サウジアラビア、UAE、エジプト、カタールを訪問する予定である[119]
  • メキシコの旗 メキシコ: メキシコのロペス・オブラドール大統領は「紛争で片方の肩だけを持たない」としながら中立の立場を明らかにした[25]。これに対してメキシコのバルセナ外相は「はっきりさせておこう。メキシコはいかなるニュアンスもなく平和と対話、民間人保護を擁護する」としながら大統領を擁護した[25]
  • カナダの旗 カナダ: ジャスティン・トルドー首相は、「カナダはイスラエルに対するこのテロ攻撃を強く非難する」と述べ、この暴力を「絶対に容認できない」とした。トルドー首相はさらに、カナダはイスラエルとともに立ち、「自国を防衛する権利」を全面的に支持すると付け加えた[340]。その後、トルドー首相は声明を発表し、「ハマースがパレスチナの人々や彼らの真っ当な願いを代表しているわけではない」として、「カナダはイスラエルとパレスチナの人々とともに、平和で安全に、尊厳をもって、恐怖を感じることなく生活する権利において、断固として立ち上がる」とした[341]

 中米 

  • アンティグア・バーブーダの旗 アンティグア・バーブーダ: 政府は声明を発表し、ハマースの攻撃を非難するとともに、犠牲者の家族に哀悼の意を表した[342]
  • バハマの旗 バハマ: フレッド・ミッチェル外相は、「ハマースとイスラエル間の戦闘停止」を求めた[343]
  • ベリーズの旗 ベリーズ: イーモン・コートネイ外相は、エスカレーションをしないよう呼びかけ、東エルサレムを首都とするパレスチナの国家化を求めた[342]
  • コスタリカの旗 コスタリカ: 外務省は今回の攻撃を「テロ」として非難し、イスラエルとの連帯を表明した[344]
  •  キューバ: 外務省は、被占領パレスチナ地域での暴力度が高まっていることに深刻な懸念を表明し、この事態のエスカレートはパレスチナ人の基本的権利が75年間にわたって侵害され続けてきた結果であり、 「イスラエル」 の攻撃的で拡大主義的な政策課題でもあると強調した[345]

 南米 

  • アルゼンチンの旗 アルゼンチン: アルベルト・フェルナンデス大統領はイスラエルに対する攻撃を「残忍なテロ攻撃」として非難し[346]、アルゼンチン外務省も攻撃を「イスラエル領土に対するハマースのテロ行為」として遺憾に思うと述べ、さらにイスラエル国民との連帯を表明し、被害を受けた人々に哀悼の意を表した[347]。フェルナンデス大統領はその後、ソーシャルメディア上で、イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領と電話会談を行い、その際にアルゼンチンの「ハマスによる非道なテロ攻撃に対する精力的な否認と非難する」という方針をヘルツォグ大統領に伝えたと述べた[348]
  •  コロンビア: 10月13日、コロンビアのペトロ大統領は特にガザ地区に対する包囲攻撃と全面封鎖を命じたイスラエルのガラント国防長官に関する記事を掲示した後、「これはナチスがユダヤ人に対して言ったことと同じだ」と指摘[25]。また、「民主主義市民はナチズムが国際政治舞台に再び登場することを許すことはできない」とし「(ガラント長官のように)憎しみ発言が続くなら、ホロコーストだけをもたらしてしまう」と主張した[25]
  •  チリ: チリのガブリエル・ボリッチ大統領はソーシャルメディアに「我々はハマスの残酷な攻撃、殺人、拉致を糾弾する」とし「また、ガザ地区でイスラエルが民間人に対して無差別的な攻撃を行ったことと、国際法に違反して数十年間パレスチナ領土を不法に占領したことも問い質したい」と話した[25]
  • ボリビアの旗 ボリビア: 政府はこの状況に「深い懸念」を表明し、「国連と安全保障理事会の不作為」を批判した[349]
  • ブラジルの旗 ブラジル: 外務省は、国連安全保障理事会の議長国として、ブラジルは同理事会の緊急会合を招集し、事態の沈静化を図ると述べた[350]。政府はハマースによるイスラエルへの攻撃を非難し、イスラエル国民に哀悼の意を表明した[351]。ブラジルはまた、相互に合意した国境に基づく二国家解決策を支持した[350]

 ヨーロッパ 

  • イギリスの旗 イギリス: リシ・スナク首相は7日、SNSにて「イスラエル市民への攻撃に衝撃を受けている」と投稿し、「イスラエルには自国を防衛する絶対的な権利がある」と強調した[352]。13日にはイギリス海軍揚陸艦航空支援艦計2隻とP8哨戒機を東地中海に配備した[112][119]。また「パレスチナ人も被害者である」としてパレスチナ側への支援も行った[158]
  •  ウクライナ: ゼレンスキー大統領は、通信アプリ「テレグラム」で「イスラエルに自衛権があることは議論の余地がない」とイスラエル側の反撃を支持し、「テロ行為が金輪際、人の命を奪わぬよう、世界は結束して立ち上がらなければならない」と訴えた[263]
  •  オーストリア: アレクサンダー・シャレンベルク外務大臣はハマースの攻撃を非難し、資金援助の打ち切りを発表した[353]
  • ドイツの旗 ドイツ: オラフ・ショルツ首相は7日、SNSでハマースの攻撃を非難し、イスラエルを支持すると表明した[354]。スヴェンヤ・シュルツェ経済協力・開発相はドイツがパレスチナへ行っている資金援助の停止を検討しているという声明を発表した[355][353]。この戦争に巻き込まれて死亡、若しくは行方不明となった自国民が10人以上いるとした。
  • バチカンの旗 バチカン: イスラエル外務省と電話会談を行い、イスラエル人に対するテロを明確に批判した[153]。またサン・ピエトロ広場で教皇フランシスコはガザ市民のための人道回廊を呼びかけた[140]
  • フランスの旗 フランス: エマニュエル・マクロン大統領は「戦争終結のためにあらゆることをする」と発言した[112]。またイスラエルに住むフランス人がハマースの攻撃により複数人死亡していることについて「イスラエル当局や関係国とともに、彼らが安全に帰還できるよう全力を尽くす」と述べた[119]
  • ロシアの旗 ロシア: ロシア連邦政府は自制を求める声明を発表し、ミハイル・ボグダノフ外務副大臣は双方と連絡を取っていると述べた[356]。また、少なくとも4人のロシア国民が犠牲となったと発表した。ロシア外務省ザハロワ情報局長は軍事衝突について「(長年にわたる紛争は)武力ではなく、外交手段でのみ解決できる」と指摘した上で、「パレスチナとイスラエル双方に暴力を放棄し、必要な自制心を示すよう求めます」とし、国際社会の助けを借り双方が「長年待ち望まれた、包括的かつ持続的な平和の確立に向けた交渉プロセス」に取り組むよう促した[263]。また複数の中東首脳とプーチン大統領が電話会談を行ったほか、否決されたものの、国連安保理に双方の即時停戦を呼び掛ける決議を提出した[158]

 アフリカ 

  • アルジェリアの旗 アルジェリア: 外務省は、イスラエルによるガザ爆撃を強く非難し、国際機関に紛争への介入を促し、「イスラエルの植民地的入植」と戦うパレスチナ人への同情を表明した[357]
  • ウガンダの旗 ウガンダ: ヨウェリ・ムセベニ大統領は事態に懸念を示し、双方に対話を呼びかけた[358]
  •  エジプト: エジプトサーメハ・ハサン・シュクリ外務大臣は、危険な展開であるとして全勢力の自制を求めている[359]
  • ガーナの旗 ガーナ: 外務省は声明を発表し、「ガーナは今回の攻撃を明確に非難し、ハマースの指導者に対し、攻撃を直ちに中止し、武装勢力をイスラエル南部から撤退させるよう求める」と述べた[360]
  •  ケニア: 外務・ディアスポラ問題省のコリール・シングオエイ主席秘書官は、「イスラエルに対する卑劣なテロ攻撃を強く非難し、殺戮と無差別な人命の損失を遺憾に思う」と述べるとともに、ハマースを「この凶悪な攻撃の計画者、資金提供者、実行者」として非難した。また、イスラエルの「報復する権利」を認めつつも、「この不幸な事態を解決するための平和的な道筋」を促した[361]
  • ザンビアの旗 ザンビア: スタンリー・カソンゴ・カクボ外務・国際協力大臣は、ハマースの攻撃を非難する声明の中でイスラエルを支持した[362]
  • ジブチの旗 ジブチ: ジブチはパレスチナへの支持を表明した[362]
  • タンザニアの旗 タンザニア: 外務省はすべての暴力を非難し、双方の対話を求めた[363]
  • チュニジアの旗 チュニジア: チュニジアのカイス・サイード大統領がパレスチナ人との連帯を宣言[364]
  • リビアの旗 リビア: 下院はガザを支持することを表明した[365]
  • モロッコの旗 モロッコ: 外務省は「ガザ地区における状況の悪化と軍事行動の勃発に対する深い懸念」を表明し、どこであろうと民間人に対する攻撃はしてはならないと非難した[366]
  • ナミビアの旗 ナミビア: 政府は戦闘の激化を非難し、外交的解決策を求め、イスラエルに攻撃をやめ、パレスチナ人に対する挑発的行為を控えるよう求めた[367]
  • ナイジェリアの旗 ナイジェリア: ユスフ・トゥッガー外相は戦闘のエスカレーションに対する緩和を呼びかけ、双方に自制し、市民の安全を優先し、人道的配慮の余地を与えるよう求めた[368]
  • 南アフリカ共和国の旗 南アフリカ共和国: 外務省は声明を発表し、「イスラエルによるパレスチナの土地の継続的な不法占拠、入植地の継続的な拡大、アル・アクサ・モスクとキリスト教の聖地に対する冒涜、そしてパレスチナ人に対する継続的な抑圧」が戦争の原因であると非難した。加えて南アフリカは、2国家間の問題解決のサポートをすることを確認した[369]
  • スーダンの旗 スーダン: スーダン外務省は、政府が「独立国家を持つというパレスチナ人の正当な権利」を支持し、「国際決議の遵守と罪のない市民の保護」を求めたと述べた[370][362]

 アジア 

  • 日本の旗 日本: 10月7日、日本の外務省はハマースによるロケット弾発射と越境攻撃を非難し、すべての当事者に自制を求めた[371]。同国の岸田文雄首相は、ハマースによるイスラエル市民への攻撃を「強く非難します」と声明を出した[372]。イスラエル支持共同声明には参加しなかった[373]。これまで日本政府は「テロ」と表現していなかったが、13日、上川外務大臣マーリキーパレスチナ外相との電話会談にて「ハマスなどパレスチナ武装勢力によるテロ攻撃を断固として非難する。事態の早期沈静化に向けて関係者への働きかけをお願いする」と、「テロ」という言葉を用いてハマースを非難した[374]。また、上川外務大臣の要請により木原防衛相は邦人退避に備え自衛隊ジブチなどにC2輸送機2機とKC767空中給油・輸送機1機らの派遣命令を出した[119]。これを受け森田雄博航空支援集団司令官を指揮官とする「在イスラエル国邦人等輸送統合任務部隊」の編成が決定された[375]。14日、政府が9日に邦人退避支援のため定期商用機とは別に手配したチャーター機1機が邦人8人を乗せてテルアビブを発ち、翌15日未明にドバイに到着した。これとは別に51人が韓国空軍機(後述)に便乗した[376]
  • パレスチナ国の旗 パレスチナ: ワリード・アリ・シアム駐日パレスチナ常駐総代表部代表は8日、SNSにて「‎私たちは、パレスチナ人とイスラエル人の両方の民間人の生命の喪失を断固として非難します。」とメッセージを投稿し、両勢力を非難した[330]。また、パレスチナ自治政府の大統領であるマフムード・アッバースは、「ハマースはパレスチナ人の代表ではない」、「ハマースは人質の即時解放をすべき」、「ハマースによるイスラエル南部への攻撃を非難する」と表明している[377][378][379]
  • インドの旗 インド: ナレンドラ・モディ首相は7日、SNSにて「イスラエルでのテロ攻撃のニュースに大きなショックを受けた。私たちの思いと祈りは、罪のない犠牲者とそのご家族とともにあります。この困難な時に私たちはイスラエルと連帯します。」とメッセージを投稿し、イスラエル支持の姿勢を表明した[380]
  • サウジアラビアの旗 サウジアラビア: サウジアラビア政府は、ハマースとイスラエルの双方に自制を要求している[381]
  • タイ王国の旗 タイ: タイ外務省は9日、戦闘でイスラエルにいるタイ人12人が死亡したと明らかにした。11人がハマースに拉致されているという。タイのセーター・タウィーシン首相は、自国民を保護するため輸送機派遣の準備を指示した[382]
  • トルコの旗 トルコ: レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は7日の演説にて、両勢力の自制を求めた[383]。またエルドアン大統領は8日、イスラエルとパレスチナの緊張緩和に向けて外交努力を加速させると表明した。その上で「二国間共存」が地域の平和を実現する唯一のの道との見解を示した。
  • イランの旗 イラン: イランの外務省は7日、「今日の作戦は、占領者に対する抵抗の新たなページを作り上げた」と述べ、パレスチナ支持を表明した。ハマースのガジ・ハマド報道官はBBCに対して、イラン側は「パレスチナとエルサレムが解放されるまでパレスチナ戦闘員の側にいる」と述べており、協力を約束しているとした[49]
  • 中華人民共和国の旗 中国: 中国外交部は「パレスチナとイスラエルの間の現在の緊張と暴力の激化」に深い懸念を表明し、関係者に対し「民間人を保護し、状況のさらなる悪化を避けるために、冷静さを保ち、自制し、戦闘を直ちに終了するよう要請した」と述べ、両勢力の自制を求めた[384]。なお、未確認の死者・行方不明者が数人いるとした。王毅共産党政治局員兼外相は12日、イスラム組織ハマースへの攻撃を受けてパレスチナ自治区ガザに反撃するイスラエルを批判した。「問題の本質はパレスチナ人民に正義が果たされ続けていないことにある」と語った[385]
  • 中華民国の旗 台湾: 台湾政府は中東諸国への渡航忠告を行い、外務省は「ハマースが行ったイスラエルの無実の市民に対するテロ攻撃を非難します」と述べた[386]
  • フィリピンの旗 フィリピン: マラカニアン宮殿は「フィリピンは、特に民間人に対する攻撃を非難します」と述べた[387]
  • 大韓民国の旗 韓国: 韓国政府は大韓航空が安全を理由にイスラエル行きの運航を停止したことを受け、イスラエルから韓国国民などを退避させるためのの輸送機(KC330)を派遣した。韓国国民163人に加え、退避を希望した日本人51人とシンガポール人6人のあわせて220人が搭乗した[388]。日本人などの避難も同時に韓国機によって行われる理由であるが、人道的観点から、韓国国民以外の輸送を韓国政府が日本政府に提案したからであると大使館が明らかにしている[389]。また、尹錫悦大統領は訪韓した米上院民主党トップのシューマー院内総務率いる超党派上院議員団と10月11日に会談した際に、ハマースによるイスラエルへの無差別攻撃を非難している[103]
  • パキスタンの旗 パキスタン: 暫定外務大臣であるジャリル・アッバス・ジラニはガザ地区の包囲と爆撃を「ジェノサイドである」と非難した[140]

イスラム勢力

  • アル・シャバブの旗 アル・シャバブ: アル・シャバブはハマースを「すべての勇敢な英雄、勇敢な司令官、聖地に駐留するすべての人々」と呼び敬意を表した。また、イスラム教徒に対し、「ユダヤ人とその同盟国」に対するジハードを呼びかけた[390][391]
  • ヒズボラの旗 ヒズボラ: ヒズボラはハマースに祝意を表し、「イスラエルの犯罪」に対する反応としてこの攻撃を賞賛し、更にハマースには「神の後ろ盾」があると加えて述べた。またヒズボラは、レバノンの指導部が、この作戦についてハマースと接触していると述べた[47]。10月11日、ヒズボラは、アメリカの空母打撃艦隊の地中海東部への派遣について、「空母をこの地域に派遣しても、勝利が達成されるまで対決する用意のある抵抗派を怯えさせることはできない」と述べた[392]

脚注

注釈

  1. ^ イスラム教の聖地であるハラム・アッシャリフに位置するアルアクサ・モスクを指しているとされる[17]
  2. ^ 岸田文雄首相は、ハマースの大規模な攻撃について強く非難する一方で、イスラエルの報復についても深刻に憂慮し、全ての当事者に自制を求めるとした[325][317]
  3. ^ パレスチナ自治政府の大統領であるマフムード・アッバースは、「ハマスはパレスチナ人の代表ではない」、「ハマスは人質の即時解放をすべき」、「ハマスによるイスラエル南部への攻撃を非難する」と表明している[326][327][328]。また、駐日パレスチナ常駐総代表部は、「75年間のイスラエルによる占領こそが非難されるべき」とし、「パレスチナ人であってもイスラエル人であっても民間人の殺害には反対する」と表明した[329][330]

出典

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関連項目