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T-72

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T-72
最新のT-72B3
性能諸元
全長 9.53 m
車体長 6.86 m
全幅 3.59 m
全高 2.19 m(T-72A)
2.23 m(T-72B及びT-72M1)
2.22 m(T-72B3及びT-72S)
重量 41.5 t(T-72A)
46t(T-72B3)
懸架方式 トーションバー方式
速度 60 km/h(T-72A)
70 km/h(T-72B3)(整地
45 km/h(不整地
行動距離 450 km
600 km(外部タンク搭載時)
主砲 125 mm滑腔砲 2A46M
副武装 7.62 mm機関銃PKT(同軸)
12.7 mm重機関銃NSVT(対空)
装甲 複合装甲
- 車体前面200mm 砲塔前面280mm(T-72A)
- 車体前面236 mm 砲塔前面296 mm(T-72B)
正味の厚さで、均質圧延鋼板換算では400 - 600 mmと推定
エンジン V-46 4ストロークV型12気筒スーパーチャージドディーゼル(T-72A)
780 hp(T-72A)
V-92(T-72B3)
1,000hp(T-72B3)
乗員 3名
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T-72ロシア語Т-72テー・セーミヂェシャト・ドヴァー)は、1971年ソビエト連邦で開発された主力戦車である。ロシアでは「ウラル」(Урал)と言う愛称がある。

概要

1983年の十月革命記念パレードに参加するT-72

大量生産されたT-55T-62の後継として1973年より生産が開始された第2世代主力戦車である。高性能な精鋭部隊向けのT-80とともにハイ・ローミックスされる形でソ連軍機甲部隊に大量配備された。2020年現在もロシア連邦軍を始めとする旧ソ連構成諸国の軍で多数が配備され、機甲部隊の主力を担っている。ソ連・ロシアの同盟国、友好国に対して積極的に輸出されたほかライセンス生産も行われ、旧東側諸国を中心に中東・中南米・アフリカなど多くの国で現役である。

車高が低く軽量な車体に高火力な125mm滑腔砲を搭載し、車体・砲塔の前面を複合装甲とするなど西側第3世代戦車で主流となる技術をいち早く採用しており、同世代戦車の中では攻撃力・機動力・防御力のバランスに優れているとされる。生産開始以降大規模な改修が繰り返し行われており、2012年よりロシア連邦軍で配備が開始されたT-72B3は第3世代主力戦車に相当する性能をもつとされる。また、第3世代主力戦車T-90は本車をベースとして開発された。旧ソ連構成諸国や旧東側諸国ではそれぞれの生産技術を元に数多くのバリエーションを開発している。

開発と生産

1960年代ソ連T-64を新たな主力戦車として配備を進めていたが、当時の最新技術を詰め込んだ結果、5TDFディーゼルエンジンをはじめ自動装填装置の不具合など多くの問題点が露見、そして、最大の問題は生産コストの高さであり、充分な数を配備することが厳しい状態だった。

こうした中、T-64よりも堅実で安価な戦車の開発が、1967年からT-62の車体をベースとした「オブイェークト172」[注 1]として始まり、「オブイェークト172M」としてプロトタイプが完成した。1971年-1973年にかけ各種試験を経て正式にT-72として採用され、1974年よりチェリャビンスクキーロフ戦車工場にて、従来のT-55およびT-62の生産ラインから全面的に切り替えられ、生産が開始された。

T-72は、旧共産主義圏にて、1970年代からソビエト連邦の崩壊1991年までもっとも多く使われた戦車であり、ソ連国内の主力工場であるウラル車両工場だけでも1990年までに22096両が生産された。ポーランドチェコスロバキアインドユーゴスラビアでもT-72M等のダウングレード版(いわゆるモンキーモデル)がライセンス生産され、総生産数は各型合わせて30000両を超えるとされる。ポーランドチェコスロバキアでライセンス生産されたT-72Mは、砲塔前面の装甲が複合装甲から単純な鋳造装甲にダウングレードされるなど性能が意図的に引き下げられていた。ソ連でも1990年までに自国製の輸出用モデルが開発され、アラブ諸国を中心に大量輸出した。これもやはり装甲や砲弾の威力などが大幅スペックダウンしたモンキーモデルであった。

ワルシャワ条約機構加盟国以外にもフィンランドイランイラクシリアなどにも輸出された。80年代にはイラクに対しチェコやポーランド、ソ連がT-72完成品を輸出した。後には、半完成部品をノックダウン生産でイラクで組み上げて中国製の部品で改造も行い[1]、国産戦車を自称してバビロンの獅子英語版と命名された。またイラン・イラク戦争で使用した直輸入T-72の砲身寿命が短く、ソ連からの交換部品の供給も滞ったことから、イラク国内に砲身工場を作ることになり、これがライセンス生産化の始まりであったという。なお、ユーゴスラビア型のM-84クウェートに輸出され湾岸戦争で対イラク戦に使用され、後にイラク戦争後の新生イラク軍(イラク治安部隊)にも導入されている。

ソ連においては、1974年に配備が始まった初期型から数多くの改修が実施されている。初期に生産されたモデルはステレオ測遠器を装備していたが、1978年から生産されたT-72Aでレーザー測遠器が装備され、砲塔に複合装甲が採用された。1985年から生産されたT-72Bでは主砲から対戦車ミサイルが発射可能となり、エンジンも840馬力のV-84に換装された。1980年代にはリアクティブ・アーマーが追加された。ソ連崩壊後しばらくはロシアの深刻な財政難から改修が滞っていたが、プーチン政権下での経済回復に伴い2012年より大幅な近代化が図られたT-72B3への改修が進んでいる。

旧ソ連構成諸国や旧東側諸国ではそれぞれの生産技術を元に数多くのバリエーションを開発しており、自国で生産したオリジナルタイプの輸出から既にT-72を購入した国への改修パッケージキットの販売など、その販売形態も広がっている。T-72自体が長期に渡り多くの国々に供給されたこともあり、ソ連から独立した諸国にとっては現在でも魅力的な軍事マーケットとなっている。

構成

T-72の車内配置(①操縦手、②車長、③砲手、④自動装填装置)
砲塔の構成

火力

主砲は D-81TM 125 mm滑腔砲(GRAUコード:2A46M)で、西側の120mm/L44滑腔砲と比較しても遜色ない威力とされる。

初期型では光学式ステレオ測遠器、T-72A以降の改修型ではレーザー測遠器を備え、測遠器と連動した弾道計算機を搭載する。T-62では照準器内の目盛と目標物の大きさを比較して距離を推定するスタジア・メトリック式を採用しており、1500m以遠の目標に対して命中率が著しく低下する弱点があったが、T-72では正確な測遠器と弾道計算機により遠距離交戦能力が向上している。T-72B3では「ソスナU」射撃管制装置を装備し、砲塔上部の気象マストで計測した環境データを用いた高精度な射撃が可能となっている。

アクティブ・パッシブ兼用の赤外線暗視装置を装備しており、有効視認距離は500m程度と限定的ながら、星明りによる暗視が可能である。暗視装置の性能を補うために主砲脇に円盤型の「ルナ」赤外線投光器を備える。西側では1980年代から配備が本格化した熱線映像装置は、ソ連時代に生産されたT-72には装備されなかったが、T-72B3ではフランス製「CATHERINE」熱線映像カメラが搭載され、「ルナ」は取り外されている。

T-72Bからは9K120「スヴィーリ」ミサイル発射システムを備え、最大射程5,000mの9M119M「インバル」などの対戦車ミサイルを主砲から発射できる。ミサイルはレーザービーム・ライディングにより誘導される。この装置により主砲の最大射程を超える距離でも交戦できるようになった。なおミサイル発射機能を持たないT-72B1も同時に生産されており、全てのT-72が主砲からミサイルを発射できるわけではない。

砲塔直下には回転式自動装填装置[注 2]である6ETs40(ロシア語6ЭЦ40)を搭載する。本装置は弾頭と半焼尽薬莢(装薬)が分離した砲弾を戦闘室直下の円形ドラムに格納し、それらをホイスト式の自動装填装置が拾い上げて装填する仕組みである。本装置によりT-72の乗員は3名に減少している。重い125mm砲弾を高速で機械装填できることに加え、正面からの砲撃戦で被弾率が低い車体底部に砲弾を集約することで、生存性の向上も期待された。先に同様の自動装填装置が採用されたT-64では、水平に配置した弾頭と立てた姿勢の装薬筒をアームが拾い上げて装填する方式であったが、T-72では、弾頭と装薬筒の両方を水平に収納する回転ドラム式となった。また西側第3世代戦車であるルクレール90式戦車が採用している弾頭/薬莢一体型の弾薬を用いる自動装填装置とは根本的に仕組みが異なる。

装甲

本車の装甲は度々改修が行われており、多くのバリエーションが存在する。

砲塔部は鋳造製で、最も厚い部分で280 mmであったとされ、先端部で80 mmの装甲が施されていた。初期型では単一の鋳鋼装甲であったが、T-72Aからは砲塔前面部にセラミックが織り込まれ複合装甲になった。これにより砲塔前面部に女性のバストを想像させる「膨らみ」ができたことから、西側ではグラマーな女性歌手にちなんで「ドリー・パートン」のあだ名がつけられた。T-72Bではさらに装甲が強化されて厚みが増したために「スーパー・ドリー・パートン」と呼ばれた。

車体自体の前面部は初期型より複合装甲を採用しており、鋼鉄装甲板にセラミックガラス繊維などを織り込まれ、その厚さは200 mm程度だが、独特の傾斜デザイン(避弾経始)により、その効果は実質500 - 600 mm厚の圧延装甲板に匹敵する強度を実現した。車体側の装甲の構成も防御力を向上させるために度々改修された。

T-72Bからは成形炸薬弾(HEAT)に対し有効な「コンタークト爆発反応装甲が追加装備された。さらにT-72BMとして知られるT-72B 1989年型からはAPFSDSにも有効な「コンタークト5」が装備された。ソ連崩壊後に西側で行われたテストでは、「コンタークト5」は当時米軍が配備していたAPFSDSの弾体を粉砕し、完全に無力化できることが確認された。

一方で輸出用のモンキーモデルであるT-72M、T-72M1では複合装甲が単純な鋼鉄に置き換えられるなど大幅にダウングレードされていた。

当初は履帯や車体側面を成形炸薬弾から守るためのサイドスカートが分割式の金属製であったが、破損しやすかったため、後に金網入りのゴム製に変更された。

エンジンと駆動系

T-34に搭載されたV-2ディーゼルエンジンを改良した、V型12気筒4ストロークディーゼルエンジンを搭載する。T-64やT-80が野心的な設計のエンジンを搭載し、高性能の一方で信頼性の低さに悩まされたのに対して、本車のエンジンは凡庸な性能ながら信頼性が高く、本車が各国で配備され続ける理由の一つとなっている。

本車はT-64エンジン、および足回りの問題が発端で開発が始まった事もあり、エンジンは信頼性が高いものが選択された。T-72が採用するV-46は、第二次世界大戦時のBT-7MやT-34が搭載したV-2を改良して横置き型とし、さらに出力を500馬力から780馬力に引き上げたものである。T-72シリーズは1970年代から長期にわたり運用されているため、T-72Bでは840馬力のV-84、T-72B3では1000馬力のV-92S2、T-72B3Mでは1130馬力のV-92S2Fと車両の改修・発展ごとにエンジンも高出力のものに換装されている。

トランスミッションは遊星歯車機構を用いた7段変速で、油圧補助により軽い力で操作できる。操縦は左右の履帯を2本のレバーで操作する、この世代の戦車としてはオーソドックスな形式である。T-72B4など一部の改修型でオートマチックトランスミッションとハンドル型操縦装置の導入が試みられているが、費用の問題もあって本格的な配備には至っていない。

また、ソビエト連邦の崩壊以降はロシア以外のT-72保有国でそれぞれ独自の改修を施しているため、エンジンや駆動系についても各国で馬力やシステムが異なる。

車体

ソ連の戦車はヨーロッパ平原での運用を想定して極力低車高に設計されているが、本車の車高は2.19~2.23mしかなく、先代のT-62よりもさらに低くなっている。西側のチーフテンより60cm、レオパルト1より40cmほど低い。無砲塔として車高を下げたStrv.103より10cm弱高いだけに過ぎず、74式戦車と同程度である。

また全体的に車体が小さいため、重装甲であるにも関わらず車重も西側諸国主力戦車と比べて軽量である。初期型で41トン、多数の追加機材を導入し装甲を強化したT-72B3でも46トンしかない。当時のワルシャワ条約機構下ではこの重さを基準に道路や橋を設計したと言われており、自軍の戦車が進行するには有利かつ、他国の戦車の侵攻を阻む地形になっていた。軽量なことから、780馬力にもかかわらず、ドイツアウトバーンでは調速機を解除することで110km/hの路上最大速度を記録したと言われる。

乗員は、砲塔の主砲右側に車長、左側に砲手、車台中央前方に操縦手の3名が搭乗する。車内は狭いものの乗員毎に個別のスペースがあり、乗降ハッチも一人にひとつ用意されている。

ソ連時代に生産されたT-72の各型には冷房が装備されておらず、各乗員の前に小型扇風機が設置されているのみである。

弱点

125 mm滑腔砲複合装甲を備えたT-72は前述のように攻撃力・防御力・機動力で同時代の他国の主力戦車を上回り、また、それらのバランスも優れていた一方で、以下のカタログデータには現れない弱点があった。

生存性

破壊されたグルジア軍のT-72(南オセチア紛争

T-72では回転型自動装填装置により弾薬を被弾率が低い車体底部に集約して生存性の向上を狙ったが、その構造から誘爆した際には爆風が戦闘室を直撃し、砲塔が吹き飛ぶなど車体が激しく損傷しやすくなった。これは西側の第三世代主力戦車が比較的被弾率が高い砲塔外側のバスルに弾薬庫を置くものの、誘爆した場合にも隔壁で戦闘室内への爆風の侵入を防ぎ、ブローオフパネルで車外へ爆風を逃がすことで被害を軽減できるのとは対照的である。実戦においても湾岸戦争イラク戦争チェチェン紛争やグルジア戦争において、砲塔が吹き飛び、弾薬庫が位置する車体中央下部が著しく損壊したT-72の映像や写真が多数公開されている。また砲弾を円形にならべる弾薬庫のレイアウトは上部からみた場合面積が大きく、チェチェン紛争やシリア内戦における市街戦では建物上部に陣取った対戦車部隊の格好の標的となった。

なお、この欠点はモンキーモデル以外のT-72やT-64T-80T-90にも共通したもので、チェチェン紛争ではロシア連邦軍のT-72Bなども同様の破壊を受けている。

砲の仰角俯角

ソ連の戦車は平原での運用を想定して砲塔の小型化や低車高化を優先しており、砲の俯仰角が小さくなりがちであった。T-72はそれまでのT-55T-62から更に砲塔の小型化と長砲身化を進めたため、砲の上下の可動範囲が-6/+13度と狭く、山岳戦市街戦になったチェチェン紛争ではビルや山の上に構築された陣地や、肉薄する歩兵に対する砲撃ができない状況が散見された。

歩兵への支援任務が圧倒的に多くなる途上国の紛争では、T-72よりも仰角俯角の大きく取れるT-54/55が現場では好まれるという。この欠点もモンキーモデル以外のT-72やT-64T-80T-90にも共通したものである。

なお、ロシア軍では上記のチェチェン紛争の戦訓としてT-72その他の戦車を改良するのではなく、BMP-T(戦車支援戦闘車)という新しいコンセプトの車両を開発し、戦車と共同運用する事で解決策とした(BMP-TのシャーシはT-72やT-90のシャーシを流用しているため、広義ではT-72の大規模な改良とも捉えられる)。

拡張性

砲塔・車台とも小型に設計されているため車内の容積に余裕が少なく、新しい装備や機材を追加導入しづらい構造である。但し、近年では技術の進歩により精密機材の小型化が可能になったため、T-72B3Mなどでは車長用パノラマサイトの装備によるハンターキラー能力の付与が可能となった。

主砲弾のAPFSDSは弾芯が長いほど貫通力の向上に有利であるため、2020年現在西側で配備される砲弾では弾芯が装薬部分に入り込んだ構造になっている。T-72系列の戦車は装薬が別になった分離式砲弾であることと自動装填装置の機械的制約上、弾芯延長の上限が西側の120mm砲と比べ短く、火力において不利な状況にある。この対策としてT-72B3では主砲を自動装填装置が改良された2A46M-5に変更し、より弾芯が長い「Svinets-1/2(Свинец-1/2)」砲弾が使用できるようになった。

戦歴

1974年以降ソ連軍に大量配備されたT-72であるが、対NATOを想定していた西部の軍管区ワルシャワ条約機構加盟国駐留ソ連軍に優先的に配備されたため、1979年から始まったアフガニスタン紛争には投入されず、実戦機会はなかった。ソ連時代におけるソ連本国での使用は、わずかに1991年ソ連8月クーデターの際に出動したのみであった。一方で、従来は戦車を含めた各種兵器は主に本国で旧式化した装備を輸出していたが、T-72に関してはモンキーモデルと呼ばれる輸出用モデルが早い段階で生産されたため、ソ連崩壊以前には中東などに輸出された車両を中心に実戦経験を積み重ねていくことになった。

T-72が西側主力戦車(MBT)と戦火を交えたのは、1980年に勃発したイラン・イラク戦争においてソ連製戦車を中心とするイラク軍のT-72がチーフテンなどを装備するイラン軍と交戦したのが最初である(デズフールの戦い)。当時最新鋭のT-72はAPFSDSを使用し、重装甲を誇るチーフテンを正面から易々と貫徹し多数撃破するなど善戦した。

T-72の戦闘が初めて世界の注目を集めたのは、1982年イスラエルレバノンへ侵攻した(イスラエル作戦名「ガリラヤの平和」)際にシリアのT-72がメルカバ Mk.1と交戦した時である。シリア第3機甲師団の装備するT-72は、ベッカー盆地南部で6月10日頃、従来型のAPDS弾を搭載したショット  (イスラエル軍仕様センチュリオン)戦車一個大隊を攻撃し、これに損害を与え撤退させた。また、ERA装備型のM60とも交戦し、数両を撃破した[2]。これに対しイスラエル軍のベンガル少将は翌日、第7機甲旅団の新鋭戦車メルカバを派遣。当時のメルカバ Mk.1の主砲は一世代前とされるL7 105 mm戦車砲であったが、イスラエルが独自に開発した完全タングステン合金弾芯のAPFSDSの性能やイスラエル軍とシリア軍の戦車兵の錬度の差、シリアのT-72が低性能のモンキーモデルであったことなどが原因でT-72はメルカバに遠距離からほぼ一方的に撃破された。

ソ連末期には構成共和国内で民族紛争が多発していたが、1991年12月のソ連崩壊以降は独立した各国で戦争状態が本格化し、旧ソ連軍に配備されていたT-72もナゴルノ・カラバフ戦争チェチェン紛争などに相次いで投入された。チェチェン紛争ではグロズヌイの戦いで激しい市街戦が発生し、チェチェン側の対戦車部隊の攻撃で多数のT-72が撃破されている。

主な戦歴

アンゴラ軍キューバ軍が使用。
イラク軍が使用。
シリア軍が使用。
イラク軍が使用。主に共和国防衛隊で運用された。
ソ連崩壊以降の戦闘本格化に伴いアルメニア軍とアゼルバイジャン軍の双方が使用。
ロシア軍が使用。チェチェン・イチケリア共和国軍も鹵獲した物を運用。
ユーゴスラビア軍が使用。
ロシア軍が使用。チェチェン・イチケリア共和国軍も鹵獲した物を運用。
イラク軍が使用。主に共和国防衛隊で運用された。
ロシア軍、グルジア軍双方が使用。
カダフィ派、反カダフィ派双方が使用。
シリア軍が使用、自由シリア軍やイスラム国(IS)等の反政府勢力も政府軍や他の武装勢力が政府軍から鹵獲した物を更に鹵獲し運用。
親ロシア派の武装組織が使用。ロシア軍の新鋭モデルT-72B3が使用されているが、ロシアはウクライナへの派兵を否定している[3]
トリポリ政府軍とトブルクを拠点としたリビア国民軍の双方が使用。
アゼルバイジャン軍とアルメニア軍の双方が使用。

湾岸・イラク戦争において

イラク戦争後に編成された、イラク治安部隊のイラク陸軍で使用されるT-72M(2006年)

1991年2003年、二度にわたりT-72は西側第3世代戦車である、M1エイブラムスチャレンジャー12と激突した。アメリカ軍を中心とした多国籍軍戦車は、貫通力の高い劣化ウラン弾を採用した強力な砲弾と、同じく劣化ウランを織り込んだ防御力の高い装甲、夜間でも確実に標的を捕らえる事のできる射撃管制装置など最先端の装備で臨み、圧倒的な制空権のもとでエアランド・バトル戦を展開したのに比べ、イラク軍はT-72MやT-72M1といった輸出向けにスペックダウンされたモンキーモデルで対抗しなければならなかった。

本来、複合装甲が施されている部分に普通の圧延鋼板溶接装甲が使用されていたり(一部だけのT-72M1が複合装甲を使用した)、APFSDS弾の侵徹体もタングステン製ではなく、鋼鉄製のものが使用されたと言われている。このため、M1エイブラムスの砲塔に直撃弾を与えたにもかかわらず、全くダメージを与える事ができなかったケースもあった[注 3]

イラクが行った改良はレーザー検知器を加えた程度であったため、多国籍軍側戦車との性能差は明らかであり、T-72は殆ど一方的に撃破された。また、T-72は砲塔下部に砲弾を収納する設計になっていたため、貫通した砲弾によりたやすく誘爆を招き、搭乗員全ての命を奪う事となった。直撃を受けた砲塔が箱の蓋を開けた様に横倒しになったり、上空に吹き飛ぶ様子を見たアメリカ軍兵達はT-72を「ジャック・イン・ザ・ボックス(びっくり箱)」と呼んでいた。

湾岸戦争における73イースティングの戦いなど、夜間に最新の電子装備が搭載されたM1A1HAにより一方的に撃破される映像が世界中に流された事もあり、T-72の兵器としての商品価値は一気に下落した。T-72の全面改修タイプであるT-90は、この失墜したロシア製兵器のブランドイメージ回復を目的に開発されたと言われ、また、輸出に際してもモンキーモデルにせず、本国と同等の仕様にしているとも言われる。

再評価

湾岸戦争やイラク戦争初期の正規戦でM1エイブラムスやチャレンジャーなどの西側第3世代主力戦車に一方的に撃破された事に加え、チェチェン紛争でのロシア軍の苦戦などから、1990年代から2000年代前半にかけてT-72の兵器としての評価は下落した。しかし、2000年代半ば以降になると、イラク戦争やアフガニスタン紛争の長期化・非正規戦化でアメリカ軍のM1エイブラムスの損害も続発、またトルコのシリア内戦介入でレオパルト2が多数撃破されるなど、西側第3世代主力戦車も運用や戦闘の様相次第で大きな損害を出すことが明らかになった一方、T-72を運用したロシア軍が南オセチア紛争 (2008年)クリミア紛争を短期で終結させ政治目的を達した事から、今日ではT-72の評価が下落した原因の大部分は車両の性能以上に、交戦国の根本的な総合軍事力の差や、正規戦と非正規戦や占領統治などの戦闘の性質や運用によるところが大きいと考えられている。 また、ロシア軍が既存のT-72及び改良型のT-90シリーズに逐次新技術を付与したり、新開発されたT-14で用いられた技術をキックバックさせる事で、第一線で通用する戦力として2020年現在に至るまでT-72を運用したり新規バリエーションを展開していることは、本車の発展性と共に新たに新戦車を開発するよりもコストパフォーマンスに優れた軍の強化として注目されている他、西側第3世代主力戦車が高い戦闘能力を有する一方で、その重量が60t以上に達していることから、直接的な戦闘以外での運用面で40t代半ばのT-72の扱い易さが前述の発展性と相まって高評価となり、1990年代から2000年代前半に比較し、その評価が見直されつつある。

型式

T-72 ウラル
砲塔にステレオ測遠器の窓がある
T-72 ウラル(T-72 «Урал»)(オブイェークト172M)
極初期の生産タイプ。主砲は48口径125mm滑腔砲D-81TM(2A26M2)を装備。その後の生産タイプと異なり、ステレオ式測遠機を装備し、L-2AGルナ2赤外線サーチライトをT-64と同じく主砲左側に装備しているのが特徴(赤外線サーチライトの位置については生産途中から後のタイプと同様の主砲右側に変更された)。
T-72K ウラルK(オブイェークト172M-K)/T-72K1/T-72K2/T-72K3
T-72の指揮戦車仕様。師団指揮仕様にはR-123M、R-173といった無線機と10m級伸縮マストを装備。大隊と連隊指揮仕様にはR-130M無線機を搭載している。当時のNATOでは、K1は中隊指揮仕様、K2は大隊指揮仕様と、K3は連隊指揮仕様と定めていた。
オブイェークト 172-2M バッファロー
1970年代初頭に作られたT-72の近代改修型。前面装甲の斜面の角度を30度に変更。車体の側面を保護する金属製サイドスカート、砲塔を保護する装甲幕、搭載可能な砲弾が45発に増加。サスペンションが変更され、煙突榴弾(SGD)も装備された。更にエンジンの出力が840馬力に増加されている。
T-72 ウラル1(オブイェークト172M1)
1976年に配備されたT-72の改良型。新しい滑腔砲である2A46を装備し、砲塔に新しい装甲を増加させている。
T-72A
T-72A(オブイェークト176)
1970年代後半に登場したT-72 ウラルの改良型。外観上も目立つ大きな改良点は、砲塔及び車体前面への複合装甲の採用、ラバー製サイドスカート、レーザー測遠機の装備で、多くの車両は砲塔前面に発煙弾発射機を取り付け、今日よく知られる(爆発反応装甲を有さないタイプとしては)一般的なT-72の姿となった。また、外観から目立ちにくい変更点として射撃管制装置を備え、併せて主砲は51口径125mm滑腔砲2A46-1、赤外線投光器は新型のL-4Aルナ4に変更され、防御力と共に射撃制度も向上されている。
複合装甲による砲塔前面部の独特の「膨らみ」から、西側ではグラマーで有名な女性歌手ドリー・パートンの愛称で呼ばれた。
T-72AV(オブイェークト176V)
1980年代半ばに登場した爆発反応装甲(ERA)を装備したT-72A。
T-72B
T-72B(オブイェークト184)
より高性能な射撃管制装置1A40-1を搭載すると共に、レーザー誘導対戦車ミサイル発射機能を搭載。砲塔前面の複合装甲を更に強化(西側ではスーパー・ドリー・パートンとして知られる)し、エンジンも出力を向上させた新型のV-84-1(840馬力)となり、攻撃力・防御力・機動力を向上させている。
以後ERAの追加装備や、主砲及び射撃管制装置、エンジンなどを換装する事で強化を続け、今日ロシア軍で配備されているT-72B3などの発展型はこのタイプがベースとなっている。
T-72BV
爆発反応装甲(ERA)を追加したT-72Bの仮称。1985年から生産された。
当初227基のコンタークト1を装備、のち新型のコンタークト5に換装(下記のT-72B 1989年型)。
T-72Bでは当初から爆破反応装甲の付与を想定していたため、正式にはT-72BV及びT-72 1989年型もT-72B(オブイェークト184)で統一されている。
T-72B1(オブイェークト184-1)
T-72Bからレーザー誘導型対戦車ミサイル発射機能を排除した簡易型。
T-72BK(オブイェークト184K)
T-72Bの指揮官用車両。偵察機能、指揮系通信機・通信アンテナの増設。
T-72B 1989年型
特徴的なコンタークト5が装備された
T-72B 1989年型(Т-72Б обр. 1989)
T-72Bの強化型の仮称。改修版の爆発反応装甲・砲塔部に複合装甲を搭載。1988年から生産された。コンタークト5を装備。T-72BMとも書かれる。
T-72オブイェークト172M-E/T-72オブイェークト172M-E1
最初のT-72の輸出型で125 mm D-81T滑腔砲(44発)を装備している。それぞれがイラクとシリアに売却され、ポーランドでもライセンス生産された。
T-72S
輸出向けの派生型。155基のコンタークト1を装備。
T-72M
T-72M
ソ連、ポーランドチェコスロバキアで生産された輸出モデル。T-72Aのモンキーモデル
T-72M1
ソ連、ポーランドとチェコスロバキアで生産された輸出モデル。装甲を厚くしたモデル。
T-72B2 ロガートカ(オブイェークト184M)
2006年に初公開されたロシア連邦軍のT-72新型改修モデル。愛称は「投石器」のこと。
第三世代の爆発反応装甲レリークトロシア語版、55口径125mm滑腔砲2A46M-5、1,000馬力のV-92エンジン、新型射撃管制装置ソスナー、赤外線型夜間射撃暗視装置などを装備する。T-90Aと同じ主砲とエンジンに加え、新型爆破反応装甲レリークトを装備する事で、攻撃力と機動力だけでなく、防御力でもT-90Aに準ずる性能を有したが、改修費用が高額となったため、少数の生産に留まった。
T-72B3
T-72B3(オブイェークト184M3)
2013年にロシア軍が調達を開始したT-72シリーズの最新の改修モデル。
T-72をT-90に近づけたもので、新型の射撃管制装置、T-90Aと同じ主砲2A46M-5及びV-92S2エンジン(1000馬力)、APU(補助動力装置)、T-72シリーズでは初めてのダブルピン式のキャタピラを装備し、一部の車両には砲塔上に車長用サイトを装備したものも確認されている(車長用サイトを装備した車両は資料によってはT-72B3M或いはT-72B4と表記されているが、ロシア軍では車長用サイトの有無に関わらずT-72B3の呼称で統一されている)。
砲塔構造が従来のT-72Bとコンタークト5の組み合わせであるため、防御力ではT-90Aに劣るものの、攻撃力と機動力では準ずる性能を目指している(但し、コストを優先してか、改修は段階的に進めている様で、コンタークト5や新型砲手用観測装置を搭載し外観は変わらないものの、既存のT-72BのV-84エンジン(840馬力)を変更せず引き続き搭載している車両も存在している)。また、2016年以降は砲塔や車体の後部にケージ装甲を導入し、デザインをより市街地戦や対ゲリラ戦向けに変更した車両も見られる。コストパフォーマンスに優れ、旧式化した既存のT-72Bを有効活用できることから、ロシア軍ではT-90Aの生産を取りやめ、T-72Bの本タイプへの改修が最優先され、主力装備となっている。
T-72B4(オブイェークト184M4)
T-72B3に全周旋回式車長用サイトを装備しハンターキラー能力を獲得したモデル。
T-90MSと同じV-92S2F(1130馬力)エンジンを搭載し、外部からは確認できないが、併せてT-90MS同様にハンドル式の操縦装置とオートマチック・トランスミッションの変速装置が採用されているとされる。T-72B3改修強化型、T-72B3M等の名称で呼ばれる事もある。
改修コストが高かったためか、現在のところ少数の生産に留まっている。

派生型

本国産

TOS-1 ブラチーノ
T-72の車体に30連装サーモバリック爆薬弾頭ロケット弾発射機を搭載した、自走式多連装ロケットランチャー
BMP-T
T-72の車体に30mm連装機関砲および9M133 ATGMを装備した新設計の砲塔を搭載した戦闘車両。BMP-Tとは「戦車支援戦闘車」の意味で、戦車歩兵の近接対戦車攻撃から援護するための車両。
MTU-72
T-72ベースの架橋戦車
T-90
T-72の車体とT-80の砲塔を組み合わせた、湾岸戦争で失墜したT-72の名誉挽回を目指した型。
1993年より生産に入り、T-80より低コストのため、ロシア軍でも多数導入されている。

イラク

イラク戦争時に放棄されたT-72G
Lion of Babylon(「バビロンライオン」の意)
T-72のイラクモデル。
1988年のバグダッドの兵器ショーで、国産型と称して展示発表された。実際は半完成品の輸入部品をくみ上げた、T-72Gのノックダウン生産品であった。クウェート侵攻と湾岸戦争において、T-72Mと共に実戦に投入された。最初は有利な戦いを進めていたが、多国籍軍の保有するM1エイブラムスやチャレンジャー1といった近代的な戦車と装備や性能の差で不利になり次々と撃破された。

インド

アジェヤMK-1
アジェヤMK-1
インド版T-72。1993年にT-72M1と同性能に改修。
アジェヤMK-2
インド版T-72M1。
GPS機能、爆発反応装甲・レーザー警報機能・射撃管制機能の強化・赤外線型夜間暗視装置・ポーランド製1,000馬力エンジンを搭載。
TANK-EX
インド製。T-72の車体に自国開発のアージュン戦車の砲塔を搭載。プロトタイプのみ。

ウクライナ

T-72AM
ウクライナで配備されたT-72Aの改修型。
T-72BMに準じた規格であるが、装備品の一部をウクライナ製のものに換装している。コンタークト5と自動制御式の射撃管制装置が特徴となっている。
T-72MP
ウクライナのKMDB社のT-72の近代改修キット。
T-80UDT-84の技術をベースにT-72をアップグレード。エンジン出力強化、射撃管制装置の改修・装甲の強化。チェコとの共同開発で、フランスの会社の技術も織り込まれる。
T-72AG
ウクライナのKMDB社のT-72の近代改修キット。
主砲の有効射程が延長されている他、対戦車ミサイルの運用が可能。砲手用サイトをスタビライズを強化した1G46に換装し、暗視装置を強化。車長用サイトにはオーバーライド機能を追加した。射撃管制装置は1V528自動入力式弾道コンピューターに換装。装甲はT-84と同等の爆発反応装甲とゴム板が追加され、エンジンはT-84と同じ6TD-12に強化。
T-72-120
ウクライナのKMDB社のT-72の近代改修キットで、同社の開発したヤタハーンに準じた性能を保証している。
NATO規格の120mm滑腔砲対応の主砲、および自動装填装置を装備。120mm砲対応の対戦車ミサイルも発射可能。
BMT-72ウクライナ語版
ウクライナのKMDB社で開発された歩兵戦闘車型。姉妹型車輌にBTMP-84がある。

スロバキア

T-72M2
T-72M1 モデルナ
スロバキアのZTSテース・マルチン社による近代化改修型。
車体前部と砲塔に爆発反応装甲を装着し、射撃管制装置を電子化。さらに射撃サイトを換装した上にエリコン・コントラバス製KAA-001 20mm機関砲を砲塔左右に1丁ずつ装備。
T-72M1-A
T-72M1 モデルナの改良型。
射撃管制装置を国産のEFCS-72Aコンピューターに換装し、車長サイトをSGS-72Aスタビライズ・パッシブサイトに換装。レーザー警報装置を追加装備。エンジンは850馬力のS12Uに換装し、トランスミッションも改良されている。その代わり、対空機関砲は撤去されている。
T-72M2 モデルナ2
T-72M1 モデルナの改良型。
射撃管制装置と射撃サイト、弾道コンピューター、CRTディスプレイをリンク化。さらに、2A42 30mm機関砲を砲塔右側に独立して装備。
ズザナT-72M1
スロバキアのズザナ社製の自走砲。T-72M1の車体にズザナ 155mm自走榴弾砲の砲塔を搭載。インド軍に提案されたが不採用となった。その後、スロバキア陸軍キプロス陸軍が採用している。

チェコ

T-72M4CZ
T-72M3CZ/T-72M4CZ
ビロード離婚により戦車製造工場を失ったチェコが、第025軍修理工場(VOP025)を中心に開発した近代化改修型。
伊ガリレオ社製TURMS-T射撃管制装置を装備し、環境センサーやNBA-97 GPS航法装置、DITA-97自己診断装置を追加装備した。ジョイスティック式操作機構・弾道コンピュータ内蔵砲管制装置と砲口照合装置内蔵・シンセシア社製APFSDS-T弾発射可能な2A46主砲に換装。ポーランド製ダイナ爆発反応装甲・POC SSCiレーザー警報装置・独製キッデ・ドイグラ自動消火装置を砲塔に装備。さらに、磁器反応式対戦車地雷向けのメトラ・ブランコスSPシステム・エナメルU2500赤外線カモフラージュ塗料が車体に塗布されている。
M3とM4の違いはエンジンで、M3にはオリジナルのV-46にターボ圧縮機を追加した858馬力のV-46TCエンジン、M4にはパワーパック化されたアリソン社製XTG-411-6全自動トランスミッション内蔵パーキンス製CV-12V型12気筒ディーゼルエンジン1,000馬力が装備される。チェコ陸軍が250両のT-72M1からの改修を発注している。
PSP T-72MP
チェコのPSPボヘミアAS社がフランスのSAGEM、ウクライナのハリコフ・モロゾフ機械設計局、マリシェフ工場と共に提案した近代化改修型。
車体前部・砲塔・仕様爆発反応装甲を装着し、シュトーラ1、SEGAM SAVEN 15MPデジタル射撃管制装置APSを装備。仏製レーザー測距機パッシブ暗視装置装備射撃サイトに改装。主砲は改良型のサーマルスリーブ・砲口照合装置2A46M-1に換装。エンジンは、水平対向ピストン6TD-1エンジン1,000馬力または水平対向ピストン6TD-2エンジン1,200馬力に換装。

ポーランド

T-72G
ポーランドで生産された型式で、砲塔前半部の複合装甲が410mmの通常装甲に一新されている。イラクに輸出された。
T-72MIZ
ポーランドが自国製のT-72M1に南アフリカのデネル社製タイガー射撃管制装置、爆発反応装甲、レーザー警報装置を装備し、エンジンをS12Uに換装するなど、PT-91に準じた改修がされている。
PT-16
ポーランドがT-72M1のシャーシをベースに、主砲をNATO規格のAPFSDS-T弾を使用できる国産の120mm滑腔砲を装備した改修型。
TC-90
ポーランド製の戦車橋で、最大19mの間隔に20mのシザース式戦車橋を架けることが可能。
WTZ-3
ポーランド製の装甲回収車
車体上にTD-50 15tクレーンやドーザー・ブレード、ウインチなどを装備。ポーランド陸軍のほか、インド陸軍が採用している。
MID
WTZ-3を基にした装甲工兵車両。試作車3両のみが製造された。
PT-91
PT-91 トファルディ
ポーランド製のT-72M1の改修型。
自国オリジナルの射撃管制装置・爆発反応装甲・パッシブ型夜間映像装置を装備。主にアップグレード・キットとして提供しており、ポーランド陸軍マレーシア陸軍が採用した。

ルーマニア

TR-125
ルーマニア版T-72。エンジンやサスペンションを改良。プロトタイプが数両のみが製造された。

ユーゴスラビア

M-84
ユーゴスラビアライセンス生産された型で、約500輌生産。
輸出型はクウェート軍に200輌配備され、イラク戦争後の新生イラク軍でも使われている。

使用国

T-72使用国(青は現役、赤は退役)

T-72の派生型及び運用国英語版

2008年9月、ウクライナからケニア軍向けに海上輸送中の33輌のT-72は、ケニア沖でソマリアの海賊にベリーズ船籍の貨物船ファイナ(さらにファイナに積載されていた大量の兵器)もろとも強奪され、ニュースになった(多額の身代金により解放)[4][5]

現在使用していない国
 フィンランド
レオパルト2A4に交換され、退役。
東ドイツの旗 東ドイツ
東西統一後、レオパルト2が主力になり、現在は使用されていない。
ユーゴスラビアの旗 ユーゴスラビア連邦共和国
50輌のT-72を旧ソ連から購入したが、これは独自改良を加え国産化したM-84シリーズ生産前の訓練用であった
 ルーマニア
T-72Mを50両購入しており、それをベースにTR-125を開発していたが計画が中止となり、採用はしていない。後に海外に売却された。
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
研究のため購入。
朝鮮民主主義人民共和国の旗 北朝鮮
映画「一生涯人民の中で」[6]の9作目にて、不鮮明ながらも1両のT-72Mを保有していたことが判明している。

登場作品

映画

FUTURE WAR 198X年
ワルシャワ条約機構軍の戦車として登場。大挙して東西ドイツ国境を突破し、NATO軍の反撃に構わず西進するが、錯乱したマイケルの放った戦術核で全滅する。
操縦席のシーンでは、運転窓がペリスコープではなく単なるガラス窓となっている。
アヴァロン
映画の冒頭、仮想空間の戦場に登場する戦闘車両として、ZSU-23-4と共に登場。
ZSU-23-4と共にロケ地のポーランド陸軍の協力により、実車が登場している。
エクスペンダブルズ2
犯罪武装集団「サング」の戦車として登場。レーザー測定器を装備したタイプ(T-72M1)。
エクスペンダブルズ3 ワールドミッション
架空の国家「アズメニスタン」の軍の戦車として登場。ステレオ式測遠機を装備した初期型タイプおよびレーザー測定器を装備したタイプが多数登場する。
エネミー・ライン
セルビア人武装勢力の戦車として登場。ステレオ式測遠機を装備した初期型タイプと、レーザー測定器を装備したタイプ(T-72M1)が確認できる。
戦火の勇気
冒頭のアル・バスラの戦いにてイラク軍戦車として登場。
撮影に用いられたものは実車や他の車両を改造したレプリカではなく、外形のみをそれらしく製作したプロップである[7]
山猫は眠らない2 狙撃手の掟
セルビア人武装勢力の戦車として登場。
ロード・オブ・ウォー
兵器見本市のシーンや、ニコラス・ケイジ演じる主人公がウクライナ軍の装備を横流し同然に調達して売却するシーンに登場。
登場するものはウクライナ軍が実際に装備していた車両で、作中に保管場所として登場するの施設も、全て本物のウクライナ軍の駐屯地である。
ハードコア (2015年の映画)
エイカンの傭兵部隊の戦車として登場。
ランボー3/怒りのアフガン
中盤のソ連軍基地潜入シーンに一瞬だけ写っている。この際に写っている車両は後述のシーンに登場するレプリカ車両である[注 4]
終盤の砂漠での戦闘シーンに使用されたものは、M8トラクターを大規模に改造したものである。このクライマックスシーンはアメリカで撮影されており、T-72やその他のソビエト軍車両やヘリコプターも同様に西側の兵器を改造したレプリカである。
サンダーブラスト 地上最強の戦車
反米ゲリラ軍の戦車として登場。
スリー・キングス
イラク軍の戦車として登場。
対決
ワルシャワ条約機構軍所属のソビエト軍車両として登場。
若き勇者たち
ソビエトのアメリカ侵攻軍の車両として登場。

上記4作に登場するものも『ランボー3』に登場したものと同じレプリカ車両である。このレプリカ車両はT-72の特徴をよく捉えているが、砲塔が実物に比べて小さく、形状が平たくないことや、履帯の形状、砲塔前面周囲に装着されている発煙弾発射筒の形と位置で見分けることができる。なお、このレプリカ車両は2000年代になっても現存しており、『メギド』や『レッド・ドーン』といった作品に登場している。

ゲーム

War Thunder
ソビエト連邦ツリーにて使用可能。現在VerではT-72A,T-72B,T-72B3,T-72AVが使用可能
Operation Flashpoint: Cold War Crisis
ソ連軍陣営で使用可能な戦車として登場する。レジスタンス陣営でも鹵獲した車両を使用可能。
コール オブ デューティシリーズ
CoD4
ロシア超国家主義派主力戦車として登場する。ほとんどが迷彩を施されない状態で登場するが、一部のミッションで登場するものは迷彩が施されている。
CoD:MW2
ロシア軍投下した戦車として、ワシントンD.C.の郊外に数両登場する。
CoD:MW3
ロシア軍の戦車として、T-90とともにヨーロッパ各地で登場する。
CoD:BO2
マルチプレイの一部マップにオブジェクトとして配置されている。
大戦略シリーズ
バトルフィールドシリーズ
BFV
北ベトナム軍の戦車として登場する[注 5]
BF3
キャンペーンにのみPLRの戦車として登場し、ミラー軍曹の戦車隊と交戦する。
メタルギアシリーズ
MGSPW
ボス敵として、T-72AとT-72Uが登場する。T-72Aには、サイドスカートや爆発反応装甲の増設が行われるなどの重装備となっている。
MGSV
「T77 Nosorog」という名前で登場。フルトン回収で鹵獲すれば自軍戦力として使用可能。

書籍

『中国完全包囲作戦』(文庫名:『中国軍壊滅大作戦』)
統一朝鮮陸軍K1およびK1A1と交戦する。

脚注

注釈

  1. ^ オブイェークトは物、物体の意味で、英語のオブジェクトに相当する
  2. ^ なお、日本の文献ではT-64より採用されたソビエト/ロシア戦車の自動装填装置は"コルジナ"および"カセトカ"の名称で記述されていることがあるが、これらはどれも砲弾の収納方式や装填方式からつけられた通称であり、そのような制式名称の自動装填装置が存在しているわけではない。「コルジナ(корзина)」は"籠"、「カセトカ(кассетка)は"小箱のようなもの" "個別に分けられたもの"を意味する(カセータ(кассета)の縮小辞形)ロシア語で、それぞれ「弾薬を砲塔バスケットに搭載する」「装薬カートリッジを個別に装填する」ことから生まれた通称と見られる
  3. ^ ただし一方的な敗北と見られた73イースティングの戦いでは、ワジを越えてくるM1A1に対し、反対側斜面で待ち伏せたT-72の砲弾が、複合装甲の前面に比べ虚弱な砲塔基部や砲塔後部バッスルを貫通、撃破に成功した例もあったことが判明している。
  4. ^ このシーンは基本的にはイスラエルでロケが行われ、イスラエル国防軍が協力しているが、編集によりイスラエルロケ以外の撮影フィルムも使われているため、カットにより登場車両が異なっている。なお、基地に潜入する際にジョン・ランボーが下に掴まり隠れる車両は本物のソビエト製戦車であるが、これは、イスラエル軍が鹵獲したT-55を基に独自改修したTiran-5で、砲塔右側面と砲塔後部、車体後端に雑具箱が存在し、転輪の配置と砲塔のベンチレーターが無いことから、T-55改Tiran-5であることがわかる
  5. ^ 実際の北ベトナム軍はベトナム戦争時に本車を配備した経歴はない。

出典

  1. ^ Zaloga & Sarson, T-72... p.22
  2. ^ T-72戦車”. combat1.sakura.ne.jp. 2020年5月8日閲覧。
  3. ^ “「ウクライナで露軍戦車を見分ける方法」英大使館がツイッター投稿”. AFPBBNews (フランス通信社). (2014年11月20日). http://www.afpbb.com/articles/-/3032276 2014年11月20日閲覧。 
  4. ^ Somali pirates 'seize 30 tanks' BBC News 2008年9月26日
  5. ^ BBC NEWSSomali pirates 'free arms ship' 2009年2月5日
  6. ^ 金日成金正日両指導者の軌跡を紹介する記録映画。
  7. ^ R. Doug Wicker — Author|October 2, 2015|Indian Cliffs Ranch Part 6 — Courage Under Fire ※2020年4月3日閲覧

関連項目

外部リンク