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自律神経失調症

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自律神経失調症
概要
診療科 精神医学, 心身医学
分類および外部参照情報
ICD-10 G90
ICD-9-CM 337.9
MeSH D001342

自律神経失調症(じりつしんけいしっちょうしょう、: Dysautonomia)とは、交感神経副交感神経の2つから成り立つ自律神経機能の失調によると思われる病態の総称[1]。 自律神経機能障害(autonomic dysfunction, autonomic neuropathy)とも呼ばれる。

概念

自律神経とは血管リンパ腺内臓など自分の意思とは無関係に働く組織に分布する神経系のことであり、呼吸や代謝、消化、循環など自分の意思とは無関係で生命活動の維持やその調節を行い、絶えず活動している神経である。

日本心身医学会では「種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的病変が認められず、かつ顕著な精神障害のないもの」と暫定的に定義されている。ただし、この病気は日本では広く認知されているもののDSMでは定義されていない。ICD-10 においては、G90 Disorders of autonomic nervous system [2][3]に分類され、特定の病名に帰着しないものを G90.9 としている。

この病気は1961年ごろに東邦大学の阿部達夫が定義したものであるが、現在も医学界では独立した病気として認めていない医師も多い。疾患名ではなく「神経症うつ病に付随する各種症状を総称したもの」というのが一般的な国際的理解である。

この病気は実際にはうつ病、パニック障害過敏性腸症候群頚性神経筋症候群身体表現性障害などが原疾患として認められる場合が多く、原疾患が特定できない場合でもストレスが要因になっている可能性が高いため、適応障害と診断されることもある。また、などであっても似たような症状が表れることがある。

また、原疾患を特定できない内科医が不定愁訴などの患者に対し納得させる目的でつける、と言う否定的な見解もあり、内科で自律神経失調症と診断された場合は総合診療医などでさらなる診断を受けることを勧められている。

症状

めまい、冷や汗が出る、体の一部が震える、緊張するようなところではないのに動悸が起こる、血圧が激しく上下する、急に立ち上がるときに立ち眩みが起こる、朝起きられない、耳鳴りがする、吐き気、胃痛、胃もたれ下痢頭痛、微熱、過呼吸、倦怠感、不眠症頻尿アレルギー腰痛関節痛、生理不順、味覚障害といった身体症状から、人間不信、情緒不安定、不安感やイライラ、被害妄想状態など精神的な症状が現れることも多い。

自律神経失調症には様々な症状があり、病態は人それぞれの為、判断しにくい。どの症状がどれだけ強いのか弱いのかは患者それぞれである。患者によっては、その他の症状はあまり強く現れないにもかかわらず、ある特定の症状のみが強く表れる場合もあり、症状はきわめて多岐に亘る。また、シェロンテストで異常がみられることも多い。

原因

薬物やアルコールの過剰摂取、著しい精神的ショックを起因とするもの、また女性では更年期が原因のホルモンバランスの乱れ等が挙げられるが、遺伝的に自律神経の調整機能が乱れている患者も存在するため一概に言う事は出来ない。しかし、少なくとも患者の半数は日常生活上のストレスがあると言われている。

機序

目前に捕食動物が現れたり、敵との闘争が必要な状況下になると、副腎髄質よりアドレナリンなど神経伝達物質が分泌され、交感神経を興奮させる。交感神経は脈拍や呼吸数の増加、体温の上昇などの反応を引き起こし、身体を予想される激しい活動に備えた状態にする。このため交感神経は「闘争と逃走の神経」などとも呼ばれる。

一方で副交感神経は、睡眠や休息を行う時に活性化し、脈拍や呼吸数の低下、身体の弛緩など、身体をリラックスさせ、休息に適した状態にする。睡眠や安静には、副交感神経の活動が必須である。

健康な状態では、これら相反する2つの神経活動の綱引きのバランスが保たれ、身体は問題なく休息と活動のそれぞれに適した状態に移行できる。しかしなんらかの理由により、これらの神経活動の調和が崩れ、休息し入眠したいのに交感神経が活性化し、異常な興奮や発汗で眠れない、また全く正反対に、副交感神経が過剰に活発化し、活動が必要な状況で極端な無気力・無反応になるなどの症状が現れたものが自律神経失調症である。

人体ではおよそ12時間交代でこの二つの神経の優位が入れ替わるとされているが、過労、ストレスなどで脳を休める時間が減ると自律神経が興奮し、結果的に交感神経と副交感神経の優位入れ替わりのバランスが崩れ、自律神経失調症となるとされている。

自律神経の中枢は脳の視床下部というところにあり、この場所は情緒、不安や怒り等の中枢とされる辺縁系と相互連絡していることから、こころの問題も関わってくる。

治療

多くの患者は内科ではなく心療内科神経科に通院する。治療には抗不安薬やホルモン剤を用いた薬物療法や、睡眠の周期を整える行動療法などが行われている。最近では体内時計を正すために強い光を体に当てる、見るなどの療法もある。

西洋医学での改善が認められない場合は、鍼灸整体マッサージカウンセリングなどが有効な場合もある。

成長時の一時的な症状の場合、薬剤投入をしないで自然治癒させる場合もある。また、自ら自律訓練法を用いて心因的ストレスを軽減させ、症状を改善させる方法もある。また、薬物療法において、自律神経を調整する作用を持つトフィソパムの投与も有効である[4]

漢方薬

漢方薬の場合、若年から老年まで幅広い年齢に適用できる。[5]漢方で副作用が既往に生じたものは原則として適応外[6]

症状と所見を元にした頻用処方を以下に示す(主訴→随伴症状の順)[6]

脚注

  1. ^ 東野英明、「自律神経異常に起因する疾病とその対策」 『日本良導絡自律神経学会雑誌』 2006年 51巻 3号 p.94-104, doi:10.17119/ryodoraku1986.51.94
  2. ^ WHO作成 ICD-10リスト(2007) G90 Disorders of autonomic nervous system
  3. ^ 標準病名マスター作業班 病名検索
  4. ^ 田中文雄、赤木成子、藤本政明 ほか、「めまい、耳鳴に対するトフィソバムの臨床的検討」 『耳鼻と臨床』 1994年 40巻 5号 p.851-856, doi:10.11334/jibi1954.40.5_851
  5. ^ 精神疾患・発達障害に効く漢方薬―「続・精神科セカンドオピニオン」の実践から (精神科セカンドオピニオン) 内海 聡 (著)
  6. ^ a b c d e f g h i j k 日本医師会『漢方治療のABC』医学書院〈日本医師会生涯教育シリーズ〉、1992年、129-132頁。ISBN 4260175076 

関連項目

外部リンク