読書発電所
読書発電所(よみかきはつでんしょ)は、長野県木曽郡南木曽町読書(よみかき)にある関西電力の水力発電所である。長野県木曽郡大桑村、木曽川本流に建設された読書ダム(よみかきダム)より取水し、最大11万7,100キロワットの電力を発生する。
1923年(大正12年)、大同電力(福澤桃介社長)によって建設された発電所で、完成当時の出力は4万700キロワットであった。戦後、水利権を継承した関西電力によって再開発され、読書ダムの新設および水車発電機の増設によって規模を拡大した。発電所施設(発電所本館・柿其水路橋・桃介橋)は関西電力の現役稼働中の発電所において唯一、国の重要文化財に指定されている。
歴史
福澤桃介が興した大同電力は、木曽川に流れる豊富な水量に着目し、水力発電の開発を進めていた。1923年(大正12年)、長野県読書村、現在の長野県木曽郡南木曽町読書に読書発電所が完成。当時は取水のための小規模な堰のみを持つ水路式発電所であった。
戦後、読書発電所の水利権は関西電力に継承された。同社は読書発電所の再開発を行い、1960年(昭和35年)に読書ダムを完成させるとともに、4台目の水車発電機を増設して規模を拡大した。その一方、歴史ある建物や水路橋については大きく手が加えられることがなく、1994年(平成6年)12月27日には、読書発電所施設として発電所本館、柿其水路橋(かきぞれ-)、桃介橋及び土地が国の重要文化財に指定された。
周辺
中央自動車道・中津川インターチェンジから国道19号を木曽地域・松本市方面に向かって進み、山口ダムを過ぎて間もなく、対岸に読書発電所を見ることができる。その先のJR中央本線・南木曽駅付近には、木曽川に架けられた「桃介橋」がある。大正時代に読書発電所建設のために架けられた木製の橋で、長い年月を経て老朽化していたところを、1993年(平成5年)に近代化遺産として復元された。周辺は公園として整備され、桃介橋も実際に歩いて渡ることができる。付近には福澤桃介が1919年(大正8年)に建てた別荘があり、読書発電所のほか大井発電所といった木曽川開発の基地としても機能していた。現在は「福沢桃介記念館」として、当時の貴重な資料とともに内部を公開している。隣接する山の記念館と併せて有料で見学できる。
読書ダムは発電所より上流に位置し、南木曽町から大桑村に入って間もなくの場所にある。ダム湖に注ぐ阿寺川(あでらがわ)は上流に阿寺渓谷を形成する。この阿寺川上流では、中部電力が大規模揚水発電所・木曽中央水力発電所のダムを建設することを計画していたが、2004年(平成16年)に中止となっている。
2011年(平成23年)には、読書ダムの維持流量を活用する小水力発電所として大桑野尻発電所が建設された[1]。 維持流量とはダム下流の景観の保全など、河川環境の維持のために必要とされる放流量であり、これを活用する発電所としては関西電力で初となる。最大出力490キロワットで年間発電量375万キロワット時 (kWh) を見込み、二酸化炭素排出量を年間1,300トン削減できるとされている。
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読書ダムの取水口
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柿其水路橋
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柿其水路橋
(上より)
脚注
- ^ “大桑野尻発電所の営業運転開始について”. 関西電力 (2011年6月30日). 2015年12月4日閲覧。
関連項目
- ダム - 日本のダム - 日本のダム一覧
- 重力式コンクリートダム - 日本の重力式ダム一覧
- 電力会社管理ダム - 日本の発電用ダム一覧
外部リンク
座標: 北緯35度35分16.9秒 東経137度35分31.2秒 / 北緯35.588028度 東経137.592000度