コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

源ノ角ゴシック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
源ノ角ゴシック
Source Han Sans
様式 ゴシック体サンセリフ
デザイナー 西塚涼子AdobeGoogleイワタ、常州華文、文鼎科技サンドル・コミュニケーション朝鮮語版
制作会社 Adobe
発表年月日 2014年7月16日 (10年前) (2014-07-16)
最新版 Version 2.004
最新発表日 2021年4月28日 (3年前) (2021-04-28)
グリフ数 6万5535
ライセンス SIL Open Font License v.1.1(v1.001 までは Apache License v2.0)
別名 Noto Sans CJKGoogle配布版)
英語: Source Han Sans簡体字中国語: 思源黑体繁体字中国語: 思源黑體朝鮮語: 본고딕
派生品 源ノ等幅、原ノ味角ゴシックなど
源ノ角ゴシック(Source Han Sans)のサンプル画像
サンプル

源ノ角ゴシック(げんのかくゴシック[1]英語: Source Han Sans)は、AdobeGoogleと共同開発したオープンソースのPan-CJK(汎-中日韓)フォントファミリーである[2]。Adobeによるオープンソースフォントファミリーの4番目に当たるゴシック体で、日本語と朝鮮語および中国語で用いる繁体字簡体字グリフに可能な限り[注釈 1]対応する。加えて欧文としてSource Sansファミリーのラテン文字ギリシャ文字キリル文字も含まれる。

概要

[編集]

フォントファミリーとしてExtraLight(ウェイト 250)、Light(同 300)、Normal(同 350)、Regular(同 400)、Medium(同 500)、Bold(同 700)、Heavy(同 900)の7ウェイトが用意され、合計で約46万グリフとなる大規模フォントファミリーである。CIDキー方式(CID-keyed)のCFF(PostScript)アウトラインOpenTypeフォントとして開発・公開されている。

フォント名は英語のSource Han Sansに加えて対応する各言語ごとにも付けられており、日本語では「源ノ角ゴシック」、中国語では「思源黑体[注釈 2]」(簡体字表記)、「思源黑體[注釈 2]」(繁体字表記)、朝鮮語では「본고딕[注釈 3]」となっている。

開発はAdobeの西塚涼子を中心に[3]、漢字の日本語部分はAdobe、拡張部分にイワタ、中国語部分に常州華文フランス語版、朝鮮語部分にサンドル朝鮮語版と各国のフォントメーカーと協力することで各言語への対応を実現している。バージョン2.0からは中華民国アーフィック中国語版が参加し、香港繁体字と香港増補字符集 HKSCS-2016に対応した[4]

このフォントはオープンソースのフリーフォントとしてバージョン1.001以前はApache License 2.0で、バージョン1.002は他のSourceフォントファミリー同様にSIL Open Font License 1.1のもとで公開されており、ライセンスを守ることで自由に再配布や修正、そして派生版の公開を行うことが可能である。

Googleからは同社のNotoフォントファミリーの「Noto Sans CJK」として異なるフォント名で公開されている。フォント名と一部のウェイト表記以外はすべて源ノ角ゴシックと同一である[5]

仕様

[編集]

Adobe初のPan-CJK(汎-中日韓)書体ファミリーとして公開[2]され、Unicodeの漢字統合で符号位置が重複しているが字形は異なる日本語(J、JP)、中国簡体字(SC、CN)、台湾繁体字(TC、TW)、香港繁体字(HC、HK)[注釈 4]、朝鮮語(K、KR)の漢字を別々のグリフとして持っている。

収録している主な文字は以下の通りである[6]

日本語は、IVS(Adobe-Japan1)1万4678文字およびStandardized Variantsの漢字89文字で、Unicodeの異体字セレクタによる異体字切り替えに対応している[6]

源ノ角ゴシックはCIDキー方式のOpenTypeフォントであるものの、文字コレクションとしてはAdobe-Identity-0を採用しておりグリフセットは源ノ角ゴシック独自のものである。そのため、Adobe-Japan1-6などといった他の文字コレクションと規格上の互換性はない[6]

公開されている源ノ角ゴシックは以下の4種類の形式に分かれている。

複数言語OTF版(Language-specific[注釈 5] OpenType/CFF〈OTF〉)
源ノ角ゴシックのグリフをフルセットで収納しており、デフォルトグリフ(cmapテーブルでUnicodeの符号位置と結びつけられたグリフ)をの各字体に設定したものがそれぞれ五つずつ各ウェイトで用意されている。デフォルトのグリフ以外の言語の字形に切り替える際は、GSUBのlocl(Localized Forms)機能を用いて切り替える。この機能を用いるには、Adobe InDesignなどといった対応したソフトウェアが必要である。なお、locl機能でのグリフ切替に対応しているのはUnicodeで漢字統合されたグリフのみであり、符号位置が分離している漢字(桟となど)には適用されない。そのためlocl機能ですべての漢字を日・中・台・港・韓のそれぞれの字体に切り替えられるわけではない。
バージョン1.002からRegularとBoldの2ウェイトにのみ欧文など(U+0020〜U+007E, U+00A0, U+00A5, U+2011, U+20A9)に等幅半角グリフが割り当てられたHW版が用意されている。
フォント名の後ろにデフォルトの言語を表す文字[注釈 6]が付く。
OTC版(OpenType/CFF Collection〈OTC〉)
複数言語OTF版の「ウェイトが同じ日・中・台・港・韓の五つのフォントファイル」をフォントコレクション[注釈 7]として一つのファイルにまとめたもの。CFFテーブルを共有する構造なのでファイルサイズが小さくなっている。
なおOpenTypeのCFFアウトラインでのフォントコレクションは比較的最近策定された規格であるため、システム側が対応していない場合がある[注釈 8]。対応しているOSはOS X Mountain Lion 10.8以降、Windows 10 Anniversary Update以降[7]などである。
スーパーOTC版(Super OpenType/CFF Collection〈Super OTC〉)
OTC版を極限まで追求し、複数言語OTF版の全45ファイルを一つのファイルにまとめたもの。このスーパーOTC版が源ノ角ゴシックの理想形である[8]
この形式もOTC版同様にシステム側が対応している必要がある。
サブセットOTF版(Region-specific Subset OpenType/CFF〈Subset OTF〉)
グリフをフルセットで収録するのではなく、日本(JP、1万7934グリフ)・中国(CN、3万1033グリフ)・台湾(TW、2万0946グリフ)・香港(HK、2万0937グリフ)・韓国(KR、2万4961グリフ)それぞれで必要とされるグリフを抜き出したサブセットとして収録している。そのため複数言語OTF版よりファイルサイズが小さくなっている。上記3種の形式ではlocl機能でそれぞれの言語の漢字の字形に切り替えていたが、この形式ではフォントそのものを切り替えることで各言語の漢字グリフを使い分ける。HW版は存在しない。
ファイル名や各言語でのフォント名の後ろに国名コード[注釈 9]が付く。フォント名が英語で表示される場合でもこの(言語名でなく)国名コードで区別できる。

複数言語OTF版、OTC版、スーパーOTC版はいずれもフォントファミリー名、PostScript名を共有しているため、先にインストールされた方のみが認識される。これら3種の形式を同時に使うことはできない。サブセットOTF版はフォント名が異なるので別フォントとして同時に使える。

2021年4月8日にリリースされたバージョン2.003でバリアブルフォント版が公開された[9]

源ノ角ゴシック Code

[編集]

源ノ角ゴシックの派生として作られた日本語等幅フォント。英語名はSource Han Code JP。サブセットOTF版の日本語版をベースにして、欧文グリフを「2/3em(3文字で全角2文字分相当)にグリフ幅を変更した「Source Code Pro」に置き換えているのが特徴。Adobeのフォント開発チームに所属する服部正貴が個人的に開発を始めた[10]。Adobeのオープンソースフォントのひとつとして公開されている[11]

なおOS2テーブルのPANOSEでMonospaceの設定がされていないが、この設定はすべてのグリフが同じ幅である場合にのみ許されるものである。日本語グリフとラテングリフの幅が異なる日本語等幅フォントではそもそもここをMonospaceに設定できない。同じ日本語等幅フォントである「Osaka−等幅」も同様である。そして「Osaka−等幅」がNSFontクラスのfixedPitchプロパティでTureになるのは、単にフォント名に「Mono」があるからである。中には日本語等幅フォントでMonospaceに設定しているものもあるが、これはイレギュラーな実装である。Source Han Code JPがAPIで等幅フォントに分類されないのはこうした事情が背景にある。そして前述の理由で明示的に等幅の情報を設定できないが、服部自身は日本語等幅フォントとして開発している。

2019年5月27日に、源ノ角ゴシック CodeをPan-CJK向けに拡大したフォントである源ノ等幅(英語名はSource Han Mono)がリリースされた[12]

関連フォント

[編集]

派生フォント

[編集]

源ノ角ゴシックのライセンスに基づき、改変と再配布を行っているフォントが複数存在する。個々のフォントについては配布先の説明を参照すること。

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ OpenTypeフォントの上限である6万5535グリフをすべて使用している。
  2. ^ a b 読みは"スーユアンヘイティー"。「黑体黑體)」はゴシック体を意味する。
  3. ^ 読みは "ボンゴディク"。「고딕」はゴシック体を意味する。
  4. ^ バージョン2.00で追加。
  5. ^ バージョン1.000で「Multilingual」と表記されていたが、バージョン1.001で「Language-specific」に変更された。仕様は同一である。
  6. ^ 日本語優先はなし、中国簡体字優先はSC、台湾繁体字優先はTC、香港繁体字優先はHC、朝鮮語優先はK
  7. ^ MS ゴシックメイリオなどで使われているTrueType Collection (TTC) とほぼ同様のものである。一つのファイルだがOSやアプリケーションには複数のフォントとして認識される。
  8. ^ OpenTypeではTrueTypeアウトラインでのコレクションフォントは以前よりサポートしていたが、CFFアウトラインでのコレクションフォントは2015年のOpenType 1.7で追加された
  9. ^ 日本語版はJP、中国簡体字版はCN、台湾繁体字版はTW、香港繁体字版はHK、朝鮮語版はKR

出典

[編集]
  1. ^ アドビ公式Twitterアカウント(@AdobeCS_jp)によるツイート - Twitter” (2014年7月16日). 2014年7月19日閲覧。
  2. ^ a b Source Han Sansの紹介:オープンソースのPan-CJK書体 - Adobe Typekit Blog”. Adobe (2014年7月16日). 2014年7月17日閲覧。
  3. ^ The Three Musketeers (三銃士) - Adobe CJK Type Blog” (2014年9月24日). 2014年9月24日閲覧。
  4. ^ Pan-CJKフォント「源ノ角ゴシック」にバージョン2.0が登場”. Adobe Blog (2018年11月20日). 2018年11月25日閲覧。
  5. ^ Is it the same with Noto Sans CJK Fonts? (Issue #122 - adobe-fonts/source-han-sans - GitHub)”. 2017年10月10日閲覧。
  6. ^ a b c Source Han Sans Readme - GitHub” (PDF) (2019年4月9日). 2020年7月25日閲覧。
  7. ^ What’s new for Windows 10 Anniversary Update”. マイクロソフト. 2017年10月10日閲覧。
  8. ^ Source Han Sans: OTF, OTC, Super OTC, or Subset OTF? - Adobe CJK Type Blog” (2014年9月14日). 2014年9月24日閲覧。
  9. ^ Source Han Sans(日本語名称:源ノ角ゴシック)がバリアブルフォントに
  10. ^ Introducing Source Han Code JP - Adobe CJK Type Blog” (2015年6月11日). 2017年10月10日閲覧。
  11. ^ adobe-fonts/source-han-code-jp GitHub - adobe-fonts/source-han-code-jp at release”. 2017年10月10日閲覧。
  12. ^ 樽井秀人 (2019年5月28日). “Adobe、プログラミング向け無料フォント「Source Han Mono(源ノ等幅)」をリリース”. 窓の杜. インプレス. 2019年6月21日閲覧。
  13. ^ 原ノ味フォント”. TeX Wiki. 2021年2月4日閲覧。 “TeX Live 2020 以降で標準で PDF ファイルに埋め込まれる日本語フォントです。”

外部リンク

[編集]