無量寿経優婆提舎願生偈
『無量寿経優婆提舎願生偈』[1] (むりょうじゅきょう うばだいしゃ がんしょうげ)とは、世親(天親)[2] により撰述された『無量寿経』の注釈書を、後魏の菩提流支(菩提留支)が漢訳した書である。『浄土論』、『往生論』[3]、『無量寿経論』などと通称する。正式な原題は、『無量壽經優婆提舍願生偈』[3](婆藪般豆[4] 造 後魏菩提留支訳)。
2012年現在、サンスクリット原典は発見されていない。菩提流支による漢訳書のみが現存する。
概要
[編集]本偈文は、サンスクリット原典が発見されていない。『無量寿経』自体は複数の漢訳が伝えられている。ゆえに、『浄土論』(『往生論』)は、どの『無量寿経』について注釈しているのか諸説あり定説はない。従来より提唱されているのは、『仏説無量寿経』、もしくはそのサンスクリット原典である『大スカーヴァティーヴューハ』とする説や、「浄土三部経」とする説がある。[5] また「浄土三部経」以外の浄土経典とする説もあるが、『浄土論』(『往生論』)の「一心」と『仏説無量寿経』に説かれる「本願」との関係性を踏まえると、『仏説無量寿経』を除いて言及しているとは考えにくい。
偈頌(韻文)と、それを解説した長行(じょうごう、散文)の部分からなり、特に後者においては、浄土往生の方法として「五念門」を説いている。
「五念門」とは、「礼拝門」 「讃嘆門」 「作願門」 「観察門」(かんざつもん) 「回向門」の5つをさす。なかでも浄土を観想する「観察門」が中心で、17種の国土荘厳・8種の仏荘厳・4種の菩薩荘厳よりなる。
影響
[編集]中国
[編集]- 前述のとおり、菩提流支が漢訳する。
- 菩提流支と交友のあった曇鸞が、この『無量寿経優婆提舎願生偈』(『浄土論』・『往生論』)を再注釈し、『無量寿経優婆提舎願生偈註』(『往生論註』・『浄土論註』)を撰述する[3]。
日本
[編集]法然が、その思想に影響を受け、「浄土三部経」と並べて「三経一論」と重んじる。
その門弟である親鸞も「浄土三部経」と『浄土論』を重んじ、『浄土論』(『往生論』)の注釈書である曇鸞の『往生論註』(『浄土論註』)と合わせて重用した。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- 勧学寮 編『浄土三部経と七祖の教え』本願寺出版社、2008年。ISBN 978-4-89416-792-6。
- 石田瑞麿『親鸞思想と七高僧』(新装版)大蔵出版、2001年。ISBN 4-8043-3057-7。
- 黒田覚忍『はじめて学ぶ七高僧-親鸞聖人と七高僧の教え』本願寺出版社、2004年。ISBN 4-89416-238-5。