東野篤子
人物情報 | |
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生誕 | 1971年(52 - 53歳) |
国籍 | 日本 |
出身校 |
慶應義塾大学大学院法学研究科・法学部 バーミンガム大学大学院政治・国際関係研究科 |
配偶者 | 鶴岡路人 |
学問 | |
研究分野 | 国際関係論、ヨーロッパの国際政治 |
研究機関 | 筑波大学 |
学会 | ウクライナ研究会 |
東野 篤子(ひがしの あつこ、1971年 - )は、日本の国際政治学者、国際関係学者である。筑波大学人文社会系教授[1][2]、ウクライナ研究会副会長[3]を務め、EU・ロシア関係などEUの対外政策を専門とする。
配偶者は慶應義塾大学総合政策学部准教授の鶴岡路人[2][4][注釈 1]。
来歴
[編集]10代の5年間をイギリスで過ごした[2]。立教英国学院を経て、立教女学院高等学校を卒業[6]。慶應義塾大学法学部政治学科を卒業し、同大学院法学研究科政治学専攻博士課程を単位取得退学する。2005年7月[7]、バーミンガム大学大学院政治・国際関係研究科で博士号(Ph. D., 政治学)[8]を修得する。
2005年4月、広島市立大学国際学部講師。2007年4月に同准教授。2010年4月から筑波大学人文社会系国際公共政策専攻准教授[9]に就く。
2018年1月に国際安全保障学会の編集委員会編集委員[10]に就き、2020年から日本国際政治学会の国際交流委員会に所属し、2021年7月にウクライナ研究会副会長[3]に就く。日本経済新聞やプレジデントONLINEなどにも論文を寄稿している[11][12]。
ロシアがウクライナへの侵攻を開始した2022年2月24日[13]に、公益財団法人日本国際フォーラムが催したウェブセミナー「ロシア・ウクライナ情勢への日米欧の対応」に専門家として参加した[14]。以後テレビなど各種のマスメディアにウクライナ侵攻について解説者として出演している[15][16][17]。先進7か国が国際銀行間通信協会 (SWIFT) からロシアの主要銀行を排除するなどの経済制裁を決めたことについて、3月9日の読売新聞朝刊で「『オリガルヒ』と呼ばれるロシア新興財閥の幹部が、プーチン氏に忠誠を尽くしてきたのは損得勘定からだ。制裁で苦境に陥れば、オリガルヒらの『プーチン離れ』は一気に進むだろう」との見解を示した[18]。
2022年4月1日、筑波大学人文社会系教授に昇任。
SNSにおける容姿に対する中傷被害
[編集]2023年5月、Twitter(現・X)上に、東野の容姿に対し「見た目からしてバケモノ」[注釈 2]と中傷する投稿がなされた。これを発見した東野は看過できない事態と判断し2024年4月に茨城県警に刑事告訴した。その結果、投稿者が茨城県警の警部であることが判明し、同年6月に投稿者は水戸地方検察庁に書類送検されている[20][21][22][23]。メディアの取材を受け東野は「大変由々しき事態だと思っています...(中略)...再発防止にきちんと取り組んでいただけなければ、私たち市民はとてもじゃないが、安心して生活できません」と強い憤りの心情を明らかにした。投稿者からは文面での謝罪があったという[24]。水戸区検は同年10月29日付で投稿者を侮辱罪で略式起訴し、水戸簡裁は罰金30万円の略式命令を出した[25]。
その一方、歴史学者の與那覇潤、京都工芸繊維大学名誉教授の羽藤由美
らは、東野自身もこれまで「親露派」とみなした相手を激しくTwitter上で攻撃してきた事実を指摘をしている[26][27]。
これに対し東野は、自分と論争において対立した相手について「私に反論された人が意見を変えることは100%ありません。それどころか、恨みを抱いて余計に粘着してくる」とし、自他間の対話的コミュニケーションが結果として相手方の反発を招く遠因となっている可能性について言及している[28]。
著書・訳書
[編集]分担執筆
[編集]- 「EUの東方拡大政策:旧加盟国政府と欧州委員会の立場を中心に」羽場久美子・小森田秋夫・田中素香編『ヨーロッパの東方拡大』岩波書店、2006年。ISBN 978-4-00-025453-3
- 「西バルカン・トルコへの拡大と欧州近隣諸国政策」植田隆子編『EUスタディーズ①:対外関係』勁草書房、2007年。ISBN 978-4-326-30169-0
- 「EU拡大における地域間主義」田中俊郎・小久保康之・鶴岡路人編著『EUの国際政治:域内政治秩序と対外関係の動態』慶応義塾大学出版会、2007年。ISBN 978-4-7664-1448-6
- 「「規範的パワー」としてのEUをめぐる研究動向についての一考察」及び「第5次拡大実現以降のEU拡大プロセス(2007-2009年)」森井裕一編『地域統合とグローバル秩序:ヨーロッパと日本・アジア』信山社、2010年。ISBN 978-4-7972-5460-0
- 「コンストラクティヴィズムのヨーロッパ統合研究」臼井陽一郎編『EUの規範政治:グローバルヨーロッパの理想と現実』ナカニシヤ出版、2015年。ISBN 978-4-7795-0926-1
- 「国際関係と政治」月村太郎編著『解体後のユーゴスラヴィア』晃洋書房、2017年。ISBN 978-4-7710-2894-4
- 「ウクライナ危機とブダペスト覚書」グローバル・ガバナンス学会編『グローバル・ガバナンス学① 理論・歴史・規範』法律文化社、2018年。ISBN 978-4-589-03880-7
- 「EUと「絶縁体国家」トルコ」川名晋史編著『共振する国際政治学と地域研究:基地、紛争、秩序』勁草書房、2019年。ISBN 978-4-326-30273-4
- 「ビッグ・バン拡大からリスボン条約へ」益田実・山本健編著『欧州統合史:二つの世界大戦からブレグジットまで』ミネルヴァ書房、2019年。ISBN 978-4-623-08491-3
- 「EUの安全保障・防衛政策の新たな展開」広瀬佳一編著『現代ヨーロッパの安全保障:ポスト2014 パワーバランスの構図を読む』ミネルヴァ書房、2019年。ISBN 978-4-623-08731-0
- 「「ヨーロッパの東」におけるEU規範」臼井陽一郎編著『変わりゆくEU:永遠平和のプロジェクトの行方』明石書店、2020年。ISBN 978-4-7503-5003-5
- 「「次世代のEU基金」および2021-2027年中期予算計画<MFF>合意形成への道」市川顕・高林喜久生編著『EUの規範とパワー』中央経済社、2021年。ISBN 978-4-502-37401-2
- 「中国と中・東欧諸国の関係の発展と減速」国際経済連携推進センター編『コロナ禍で変わる地政学:グレート・リセットを迫られる日本』産経新聞出版、2022年。ISBN 978-4-86306-159-0
- 「ロシアによるウクライナ侵略がEU拡大に及ぼした変化」細谷雄一編『ウクライナ戦争とヨーロッパ』東京大学出版会、2023年。
訳書
[編集]- G・ベルトラン、A・ミシャルスキ、L・ペンク編著『ヨーロッパ2010:EU・世界を読み解く5つのシナリオ』(小久保康之監訳、小林正英・東野篤子訳)ミネルヴァ書房、2000年。ISBN 9784623033218。
- アンツェ・ヴィーナー、トマス・ディーズ 編、東野篤子 訳『ヨーロッパ統合の理論』勁草書房、2010年。ISBN 978-4326301928。
- ハンス・モウリッツェン、アンデルス・ウィヴェル 著、蓮見雄、小林正英、東野篤子 訳『拡大ヨーロッパの地政学:コンステレーション理論の可能性』文眞堂、2011年。ISBN 978-4830947032。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 筑波大学国際総合学類「教員一覧」2023年12月28日閲覧。
- ^ a b c “「オタクに戻りたい」東野篤子教授を悩ます“家庭内紛争””. 週刊文春電子版. 文藝春秋 (2022年4月6日). 2022年4月14日閲覧。
- ^ a b “ウクライナ研究会Асоціація україністів Японії” (2021年7月9日). 2022年3月2日閲覧。
- ^ “東野篤子 Twitter” (2022年2月24日). 2022年3月12日閲覧。
- ^ 国際政治ch (2022年3月26日). “鶴岡路人×小泉悠×東野篤子「徹底分析 ロシア・ウクライナ戦争」”. YouTube. 2022年3月28日閲覧。
- ^ 東野篤子 [@AtsukoHigashino] (2022年5月31日). "実は深層NEWSキャスターの小栗泉さん、私の出身高校の先輩です!". X(旧Twitter)より2023年2月6日閲覧。
- ^ 筑波大学「研究者総覧」2023年12月28日閲覧。
- ^ “EUの規範政治”. 株式会社ナカニシヤ出版. 2022年3月2日閲覧。
- ^ “東野 篤子(ヒガシノ アツコ; Higashino, Atsuko)”. TRIOS. 2022年3月15日閲覧。
- ^ “東野 篤子 (Atsuko Higashino)”. researchmap. 2022年3月2日閲覧。
- ^ “中国、対リトアニア「制裁」苦慮 台湾の代表機関開設”. 日本経済新聞. (2021年12月7日) 2022年3月2日閲覧。
- ^ 東野篤子 (2021年12月28日). “習近平に恥をかかせた…欧州の「中国離れ」のきっかけとなった小国リトアニアの勇敢な行動”. プレジデントONLINE 2022年3月2日閲覧。
- ^ “プーチン大統領 軍事作戦実施表明 “ウクライナ東部住民保護””. NHK. (2022年2月24日) 2022年2月27日閲覧。
- ^ “公開ウェビナー「ロシア・ウクライナ情勢への日米欧の対応」(2022年2月24日開催)”. The Japan Forum on International Relations (2022年2月25日). 2022年3月2日閲覧。
- ^ “【解説】ロシア ウクライナ 交渉の行方は 双方の隔たり大きく”. NHK. (2022年3月1日) 2022年3月2日閲覧。
- ^ “最新ウクライナ情勢 侵攻どうなる? 東野篤子 筑波大学 准教授【角谷暁子の「カドが立つほど伺います」】(2022年2月22日)”. テレ東BIZ (2022年2月22日). 2022年3月2日閲覧。
- ^ “[深層NEWS]「ロシア、焦りから無差別攻撃している可能性」…東野篤子・筑波大准教授”. 読売新聞 (2022年3月8日). 2022年3月10日閲覧。
- ^ “露と欧州 意思疎通欠く…筑波大准教授 東野篤子氏[視点 ウクライナ危機]”. 読売新聞 (2022年3月9日). 2022年3月10日閲覧。
- ^ 「〈見た目バケモノ〉〈ヒステリーババア〉茨城県警幹部が筑波大・東野篤子教授への侮辱罪で家宅捜索されていた!」『文春オンライン』2024-6-19
- ^ 「「見た目からしてバケモノ」SNS投稿で筑波大教授を誹謗中傷した疑い、茨城県警の警部を書類送検」『読売新聞』2024-6-21
- ^ 「筑波大教授を「バケモノ」と侮辱か_容疑で茨城県警警部を書類送検」『毎日新聞』2024-6-21
- ^ “大学教授をSNSで中傷したか 茨城県警の警部を書類送検”. NHK (2024年6月21日). 2024年6月23日閲覧。
- ^ “東野篤子教授がテレビに出て感じた差別 心ない言葉あびても闘う理由”. 朝日新聞 (2023年3月8日). 2024年6月23日閲覧。
- ^ “「大変ショック」現役警察官が筑波大・東野篤子教授に“ひぼう中傷”投稿か”. 日テレ (2024年6月22日). 2024年6月23日閲覧。
- ^ “筑波大の東野篤子教授をSNS中傷で罰金30万円、茨城県警の45歳警察官に侮辱罪で”. 産経新聞. (2024年11月6日) 2024年11月7日閲覧。
- ^ 「学者はネットの誹謗中傷を、どこまで「刑事告訴」すべきか」『言論プラットフォームアゴラ』2024-6-25
- ^ 「私がどれだけ酷い目に遭い、どこまで追い詰められたことか...」『羽藤由美X』-2024-6-16
- ^ 「細谷雄一×東野篤子×小泉 悠「ウクライナ戦争が変えた日本の言論地図」」『中央公論.jp』2024-3-13
外部リンク
[編集]- 東野篤子 Atsuko Higashino (@AtsukoHigashino) - X(旧Twitter)現在はアカウントを非公開にしている。
- 東野篤子 - 筑波大学
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