コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

書を捨てよ町へ出よう

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

書を捨てよ町へ出よう』(しょをすてよまちへでよう)または『書を捨てよ、町へ出よう』は、寺山修司による評論戯曲映画

概要

[編集]

1967年に寺山は「書を捨てよ、町へ出よう」(芳賀書店)という評論集を出版。その後、同年に旗揚げした演劇実験室「天井桟敷」の第7回公演(1968年)で「ハイティーン詩集 書を捨てよ町へ出よう」が演劇作品として発表された。

アングラ演劇ブームが起こり、1969年夏には新宿花園神社隣にあった建物(閉店したスナック「パニック」の建物を公演用に改装)で2か月間のロングラン公演。この公演は夜の新宿名所を巡るはとバスのツアーで毎夜、団体客で満席となった。また、同年秋には、名古屋京都神戸と、旅公演も行っている。

1971年には寺山修司自身が監督・製作・脚本を務める同名の映画が公開。同年、評論集「続・書を捨てよ町へ出よう」が出版される。これらの評論集・公演作品・映画は、題名は同じであるが、内容は別個の物である。

評論集

[編集]
  • 『書を捨てよ、町へ出よう』(初版:芳賀書店/改(現行)版:角川書店・角川文庫)

2015年11月時点で、角川文庫では64刷・50万部を発行している[1]

芳賀書店

[編集]
  • イラスト:横尾忠則
  • 写真:吉岡康弘
  • 収録
    • 青年よ大尻を抱け
    • 足時代の英雄たち
    • 特別とじ込付録 私自身の詩的自叙伝
    • 自由だ、助けてくれ
    • 不良人間入門
    • 恋愛百科・口から出まかせの恋愛論
    • 三文エロイカ
    • 痩せた日本人のための書
    • 行きあたりばったりで跳べ
    • スポーツ無宿
    • 著者・装幀者・写真提供者紹介

角川書店・角川文庫

[編集]
  • 収録
    • 第1章 書を捨てよ、町へ出よう
    • 第2章 きみもヤクザになれる
    • 第3章 ハイティーン詩集
    • 第4章 不良少年入門

続編

[編集]
  • 『続・書を捨てよ、町へ出よう』(1971年・芳賀書房/1993年・河出書房新社・河出文庫「寺山修司コレクション」)
    • 収録:
      • 巻頭論文 青少年のための家出入門
      • グラビア 寺山修司アルバム自叙伝
      • 母恋春歌調
      • ひらかな仁義
      • 特別とじ込み附録 ぼくの新宿+「のわき」
      • 歴史なんか信じない
      • おやじ、俺にも一言
      • グループ探訪
      • 言友会

舞台

[編集]

オリジナル版(1970年)

[編集]
  • 台本:寺山修司
  • 演出:萩原朔美
  • 音楽:クニ河内
  • 出演:天井桟敷、ハイティーン詩人たち

CD

[編集]

藤田貴大版(2018年)

[編集]

映画

[編集]
書を捨てよ町へ出よう
Throw Away Your Books Rally in the Streets
監督 寺山修司
脚本 寺山修司
製作 寺山修司
出演者 佐々木英明
小林由起子
音楽 下田逸郎
J・A・シーザー
柳田博義
クニ河内
加藤ヒロシ
荒木一郎
田中未知
石間ヒデキ
撮影 鋤田正義
編集 浦岡敬一
製作会社 人力飛行機プロ
日本ATG
配給 日本ATG
公開 日本の旗 1971年4月24日
上映時間 137分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
テンプレートを表示

概要

[編集]
  • 製作年:1971年
  • 配給:日本アート・シアター・ギルド(ATG)
  • 演劇実験室「天井桟敷」が全国各地で百数十回以上上演した同名ドキュメンタリー・ミュージカルの映画化。第14回サンレモ映画祭(イタリア)グランプリ、キネマ旬報ベストテン第9位。
  • キャスト、スタッフとも素人とプロの混成チームだった。

あらすじ

[編集]

「映画館の暗闇の中でそうやって腰掛けて待ってたって何も始まらないよ…」と主人公が観客をなじる。北村英明は21歳。予備校通いもやめてブラブラしている。戸塚の都電沿線の廃墟のような貧乏長屋で、万引き常習犯の祖母、無職の父親、ウサギを偏愛する引きこもりの妹と暮らしている。英明には憧れの人がいる。その彼は大学のサッカー部で主将を務め、美人の彼女をもち、良いアパートに住み、左翼思想にかぶれ、英明をかわいがり、そしてけしかける。英明は人力飛行機に乗って、抑圧された環境からの脱出を夢見る。青年の鬱屈した青春を過激なミュージカルと実験映像を交えて挑発的に描く[注 1]

出演

[編集]

スタッフ

[編集]

パンフレット

[編集]

アートシアター刊 寄稿:植草甚一、虫明亜呂無ほか。

サウンドトラック

[編集]
  • 「書を捨てよ町へ出よう サントラ盤」 ビクター、1971年
  1. ピース〜ダダダ(「ピース」詞・寺山修司、曲・石間ヒデキ/「ダダダ」詞・東由多加、曲・下田逸郎)
  2. 花いちもんめ(曲・下田逸郎)
  3. あなたの思い出(詞・東由多加、曲・下田逸郎)
  4. 健さん愛してる(詞・寺山修司、曲・クニ河内、唄・川筋哲郎)
  5. 親父なんか大嫌いだのロック(詞・寺山修司、曲・石間ヒデキ)
  6. 母捨記(詞・森忠明、曲・加藤ヒロシ)
  7. 東京巡礼歌(詞・竹永茂生、曲・J.A.シーザー)
  8. フリーダム(詞・寺山修司、曲・J.A.シーザー)
  9. あるボクサーの死(詞・寺山修司、曲・田中未知)
  10. 1970年8月(詞・竹永茂生、曲・J.A.シーザー)
  11. 息を殺してる(詞・東由多加、曲・下田逸郎)
  12. エンディング・テーマ(詞・寺山修司、曲・クニ河内)

演劇&映画音楽集

[編集]
  • 「書を捨てよ!町へ出よう! 天井棧敷 演劇&映画音楽集」 FUJI、2014年

※1968年の天井棧敷舞台公演時の音源と、映画サントラ盤(1971年)で未収録となった楽曲を、最新マスタリング版で収録[2]

  1. プロローグ(作曲:クニ河内)
  2. 劇中劇のテーマ(作曲:クニ河内)
  3. 朝鮮語詩のテーマ(作曲:クニ河内)
  4. 母親の記録のテーマ(作曲:クニ河内)
  5. 母捨記のテーマ(作曲:クニ河内)
  6. 太陽ハイティーンのテーマ(作曲:クニ河内)
  7. 若者の子守歌アレンジ(作曲:クニ河内)
  8. ガッチキールのテーマ(作曲:クニ河内)
  9. エピローグ(作曲:クニ河内)
  10. M1A(作曲:石間ヒデキ)
  11. ピース(作詞:寺山修司 作曲:石間ヒデキ)
  12. 親父なんか大嫌いだのロック(作曲:J・A・シーザー)[注 2]
  13. ダダダ(作詞:東由多加 作曲:下田逸郎)
  14. 健さん、愛してる(作詞:寺山修司 作曲:クニ河内)
  15. 皆殺しの歌(作曲:石間ヒデキ)
  16. 私が娼婦になったなら(作詞:寺山修司 作曲:下田逸郎)
  17. ハンバーガー(作曲:クニ河内)
  18. オフェリア(作曲:J・A・シーザー)
  19. 銀座のテーマ(作曲:J・A・シーザー)
  20. 吃りの告白(作曲:金井伸幸)
  21. 眠るのが怖い-浅川マキ歌唱-(作詞:寺山修司 作曲:下田逸郎)
  22. 皆殺しの歌B(作曲:石間ヒデキ)
  23. さいなら映画(作曲:クニ河内)
  24. 手をつなげば地平線(作曲:下田逸郎)

外部リンク

[編集]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 主演の佐々木は「素人がカメラを前に、どう反応するかを撮りたかったんでしょう」と述懐している。その最たるものが冒頭と最後のシーンの長回しで、撮影前日に大量のセリフが渡され、予算がなくて撮り直しはできないと言われ、必死に暗記したが最後で読み上げるはずのキャスト、スタッフの名前を飛ばし、終幕は関係者全員の顔が音楽とともに延々と流れるものになった(「映画の旅人」朝日新聞2015年2月7日)。
  2. ^ 当CD収録の「親父なんか大嫌いだのロック」は、映画サントラ盤の同名楽曲とは異なった作品で、作曲者のクレジットも映画サントラ盤の石間ヒデキではなくJ・A・シーザーとなっている。なお、シーザーは、同曲は1970年の天井棧敷舞台公演「ブラブラ男爵」のために石間が書き下ろした作品であると証言しているが(「J・A・シーザーの世界」、92-95頁)、その曲が当CDの楽曲を指すのか映画サントラ盤の楽曲を指すのかははっきりしない

出典

[編集]
  1. ^ 「ロングセラーの周辺 寺山修司著『書を捨てよ、町へ出よう』」『読売新聞』2015年11月2日付夕刊、8頁。
  2. ^ 「オムニバス(クニ河内、浅川マキ、J・A・シーザー他) 書を捨てよ!町へ出よう! 天井棧敷 演劇&映画音楽集」 - ディスクユニオン