指標昆虫
表示
指標昆虫(しひょうこんちゅう)とは、環境調査のため選ばれた10種類の昆虫[1]。日本に生息する昆虫類のうち、分布域が広く、比較的なじみがあり、平地から山地までの良好な自然環境に生息する、環境の指標となる昆虫が選定された。指標生物の一つとも言える。
環境調査とは、環境省により行われている自然環境保全基礎調査のことで、5年ごとに行われている。第2回自然環境保全基礎調査(1978)より、動物分布調査(昆虫類)が実施され、旧環境庁により委託された旧財団法人日本野生生物研究センター、神戸大学を中心に、学会をあげて各昆虫の専門家らによる全国調査が行われた。この調査結果は、各都道府県毎にまとめられ『日本の重要な昆虫類』として刊行された。
指標昆虫一覧と生息環境
[編集]10種の昆虫一覧を下表に示す[1]。一部の種では環境省によりレッドリストの指定を受け、また多くの都道府県によりレッドリストの指定を受けている。
画像 | 和名 | 目 | 科 | 生息環境 | 環境省レッドリスト |
---|---|---|---|---|---|
ムカシトンボ | トンボ目 | ムカシトンボ科 | 樹林帯の清流のある渓谷 | ||
ムカシヤンマ | ムカシヤンマ科 | コケ類が生えた低山地 | |||
ハッチョウトンボ | トンボ科 | モウセンゴケなどが自生する湿地の池 | |||
ガロアムシ目 | 乾燥しない山地のガレ場 | ||||
タガメ | カメムシ目 | コオイムシ科 | 平地の湖沼 | 絶滅危惧II類[2] | |
ハルゼミ | セミ科 | 松林 | |||
ギフチョウ | チョウ目 | アゲハチョウ科 | カンアオイ類が分布する西日本の自然林 | 絶滅危惧II類[3] | |
ヒメギフチョウ | カンアオイ類が分布する東日本の自然林 | 準絶滅危惧 | |||
オオムラサキ | タテハチョウ科 | エノキとクヌギが混生する林 | 準絶滅危惧[4] | ||
ゲンジボタル | コウチュウ目 | ホタル科 | カワニナが生息する清水が豊富な小川 |
生息環境と生息状況
[編集]1982年(昭和57年)の環境白書で示された10種の生息環境と生息状況を下表に示す[1]。これらの昆虫類が生息している地点では、その昆虫の生息に適した自然環境が残されていると推定できる。絶滅したり減少が著しい地点は、その生息環境が破壊されている地点と推定できる。
和名 | 調査 地点数 |
生息環境 | 生息状況 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
破壊 | 不良 | 良好 | 不明 | 絶滅 | 稀 | 少ない | 普通 | 多い | 不明 | ||
ムカシトンボ | 661 | 46 | 213 | 356 | 46 | 39 | 247 | 222 | 52 | 15 | 86 |
ムカシヤンマ | 524 | 23 | 133 | 310 | 58 | 6 | 220 | 175 | 25 | 14 | 84 |
ハッチョウトンボ | 591 | 71 | 164 | 230 | 126 | 59 | 119 | 146 | 94 | 40 | 133 |
ガロアムシ目 | 228 | 11 | 50 | 159 | 8 | 6 | 144 | 43 | 23 | 8 | 4 |
タガメ | 353 | 48 | 130 | 155 | 20 | 89 | 183 | 49 | 0 | 2 | 30 |
ハルゼミ | 783 | 24 | 176 | 556 | 27 | 12 | 88 | 295 | 235 | 152 | 1 |
ギフチョウ | 967 | 79 | 317 | 483 | 88 | 68 | 282 | 233 | 67 | 12 | 305 |
ヒメギフチョウ | 373 | 15 | 201 | 130 | 27 | 25 | 105 | 122 | 57 | 6 | 58 |
オオムラサキ | 1189 | 72 | 504 | 522 | 91 | 56 | 586 | 326 | 56 | 0 | 165 |
ゲンジボタル | 887 | 52 | 276 | 368 | 191 | 31 | 214 | 301 | 136 | 65 | 140 |
脚注
[編集]- ^ a b c “環境白書・野生動物の状況”. 環境省 (1982年6月). 2013年3月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年8月5日閲覧。
- ^ “生物多様性情報システム(タガメ)”. 環境省. 2012年8月5日閲覧。
- ^ “生物多様性情報システム(ギフチョウ)”. 環境省. 2012年8月5日閲覧。
- ^ “生物多様性情報システム(オオムラサキ)”. 環境省. 2012年8月5日閲覧。
関連項目
[編集]参考文献
[編集]