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戦後猟奇犯罪史

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
戦後猟奇犯罪史
監督 牧口雄二
脚本 金子武郎
中島信昭
出演者 泉ピン子
室田日出男
橘麻紀
五十嵐義弘
藤ひろ子
川谷拓三
音楽 渡辺岳夫
撮影 勝木勝夫
編集 玉木濬夫
配給 東映
公開 日本の旗 1976年6月19日
上映時間 78分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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戦後猟奇犯罪史』(せんごりょうきはんざいし)は、1976年公開の日本映画東映京都撮影所製作、東映配給。併映『脱走遊戯』(主演:千葉真一、監督:山下耕作)。

概要

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戦後、実際に起きた猟奇事件を再現したオムニバス映画[1][2][3]西口彰事件克美しげる事件大久保清連続殺人事件の三つの事件を描く[1][3]。内容はほぼ史実通りだが、犯人役及び事件関係者は実名をもじった名前になっている[1]。主演は室田日出男五十嵐義弘川谷拓三

スタッフ

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キャスト

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西口彰事件

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〈日本横断、詐欺、殺人事件〉

克美しげる事件

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〈K歌手、空港死体遺棄事件〉

大久保清連続殺人事件

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〈連続強姦殺人事件〉

製作経緯

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企画

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企画は当時の東映社長・岡田茂[4]。当初のタイトルは『ドッキリ昭和猟奇犯罪史』であった[5]。当時非常に高い人気だった日本テレビの『ウイークエンダー』を真似ろと岡田が指示した[2][4]。人気ドラマが映画化されたり、ヒット映画がテレビドラマ化されたりするケースは多いが、本作は映画がテレビをパクる情報番組/バラエティ番組をパクるという珍しい事例である[4]。『ウィークエンダー』風のセットで泉ピン子リポーターとなり、3つの有名な猟奇事件を紹介していく『ウイークエンダー THE MOVIE』である[6]。監督の牧口雄二は「中身は深作タッチのつもりで作ったのに、組み合わせが異質。泉ピン子は止めて欲しい」と頼んだがダメだったと話している[6]。また当初は「西口彰事件」と「大久保清連続殺人事件」の2話構成だったが、撮影2日前に「克美茂愛人絞殺事件」が発生し、岡田社長が「この事件も入れろ」と命令し無理やり3話構成になった[2][6][7]。急な指示で時間もなく第2話は脚本を一晩で書き上げ、撮影時間も短く尺も短くいびつな構成となった。「西口彰事件」は本作が最初の映像化といわれる[4]。牧口は「大久保清だけで一作通したらよかった」と話している[2]

撮影

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第3話で川谷拓三女子大生役の内村レナレンゲ畑で強姦するシーンは、川谷に「本気で襲うように」と大体の段取りだけ指示して撮った一発撮り[6]。しかし若い内村に川谷が追いつけなくなり NG琵琶湖畔での撮影で、破った服の替わりがなく「往復すると2時間かかります」と言われ仕方なくNGシーンを採用した。

東映実録犯罪映画

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日本映画は古くから実録犯罪に材を取ったエクスプロイテーション映画を製作してきた[6][8][9]。1932年に帝都を震撼させた玉の井バラバラ殺人事件は、犯人逮捕直後に四社よる競作になったといわれる[8]。東映は大手映画会社で最も積極的に実録犯罪映画に手を出した[8]。東映の実録犯罪映画史は、東映東京撮影所東映京都撮影所で異なる流れがあり、東京撮影所では「警視庁物語シリーズ」から派生した吉展ちゃん誘拐殺人事件を描いた『噫(ああ)!吉展ちゃん』(1965年)や『一万三千人の容疑者』(1966年、監督:関川秀雄)から始まるものと、岡田茂が京都撮影所長時代に始めた東映ポルノ路線の阿部定本人を引っ張り出したことでも知られる『明治大正昭和 猟奇女犯罪史』(1969年、監督:石井輝男)を皮切りとしたものがある[6]。1973年から低予算の「東映ニューポルノ」が始まると多くの実録犯罪映画が製作された[8]。本作はその決定版といえる[8]

伊藤俊也は「猟奇犯罪史」というのは岡田社長から持ち出された企画と述べている[10]。伊藤が1975年に鬼熊事件を題材に「ひとよんで鬼熊」というシナリオ深町秀煕澤井信一郎の共同で書き、岡田社長に提出したが[10][11]「これはウチでやる映画じゃない。ATGを紹介してやる」と言われ企画は通らず[10]。その後モデル問題が色々起こり映画化されなかったという[11](シナリオのみ『キネマ旬報』1975年11月下旬号に掲載)。

脚注

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  1. ^ a b c 「今号の新作」『キネマ旬報』1976年7月春の特別号、209頁。 
  2. ^ a b c d 筒井武文・多田功「ロングインタビュー牧口雄二」『女獄門帖 引き裂かれた尼僧』ワイズ出版〈日本カルト映画全集8〉、1996年、44-46頁。 
  3. ^ a b エロ・グロ・純情 東映カルトプリンス 牧口雄二の世界/ラピュタ阿佐ヶ谷
  4. ^ a b c d 「牧口雄二インタビュー(前編)」『映画秘宝』、洋泉社、2014年7月、72-75頁。 
  5. ^ 「巻返しを計る各社の表情を探る "洋高邦低"の声に必死の努力を続ける 岡田社長を頂点にますます業績増大の東映」『映画時報』1976年4月号、映画時報社、13頁。 
  6. ^ a b c d e f 「東映不良性感度映画の世界」『映画秘宝』、洋泉社、2011年8月、60頁。 
  7. ^ 杉作J太郎・植地毅(編著)「牧口雄二インタビュー」『東映ピンキー・バイオレンス浪漫アルバム』徳間書店、1999年、200-203頁。ISBN 4-19-861016-9 
  8. ^ a b c d e 『鮮烈!アナーキー日本映画史 1959-1979』洋泉社〈映画秘宝EX〉、2012年、216-217頁。ISBN 4-86248-918-4 
  9. ^ 実録!犯罪列島|渋谷文化プロジェクト
  10. ^ a b c 「『ひとよんで鬼熊』をめぐる伊藤俊也を囲んでのディスカッション」『キネマ旬報』1975年11月下旬号、78-84頁。 
  11. ^ a b 澤井信一郎鈴木一誌『映画の呼吸: 澤井信一郎の監督作法』ワイズ出版、2006年、114頁。ISBN 978-4-89830-202-6 

関連項目

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外部リンク

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