岩永直子
いわなが なおこ 岩永 直子 | |
---|---|
生誕 | 1973年(50 - 51歳)[1] |
国籍 | 日本 |
出身校 | 埼玉県立浦和第一女子高等学校[2] 、 東京大学文学部[1] |
職業 | 読売新聞記者・BuzzFeed記者を経てフリーランス記者、作家[1] |
公式サイト | 岩永直子 (@nonbeepanda) - X(旧Twitter) |
岩永 直子(いわなが なおこ、1973年 - )は、日本のジャーナリスト[3][4]。HPVワクチンや新型コロナウィルスなど、主に医療に関連した記事を発信する[3]。読売新聞社とBuzzFeedを経て、2023年にフリーランス記者となる[4]。退社後に出版された初の単著『言葉はいのちを救えるか?生と死、ケアの現場から』では、医療記者として長年追ってきた「障害者への偏見」「安楽死」などのテーマを扱った[4]。2022年からイタリア料理店で接客のアルバイトを始め、日々を綴ったnoteが、エッセー集『今日もレストランの灯りに』として出版された[4][5]。2024年、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」の依存症専門メディア「Addiction Report」の編集長に就任した[6][7]。
経歴
[編集]1973年、山口県生まれ[1]。1998年、東京大学文学部卒[3]。東京大学在学時に、父のがんをきっかけにホスピスでボランティアをし、医療報道を志す[8][4]。卒業論文は、ホスピスにおける「死の恐怖へのケア」をテーマとした[8][9]。
1998年4月読売新聞社入社[3][10]。中部支社、津支局、東京社会部(警視庁、厚生労働省など担当)、医療部を経て2015年に医療サイト「yomiDr.(ヨミドクター)」編集長となる[3]。しかし、HPVワクチンに関する記事の扱いで上司と対立し、2017年に5月8日にBuzzFeed Japanに転職[3][4][10]。2017年9月7日、医療部門「BuzzFeed JapanMedical」を創設し、根拠に基づいた医療・健康記事の発信を行った[10][11][12][13]。2016年度より東京大学非常勤講師(科学論文の表現技術)を務めている[3]。2018年には、厚生労働省の「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」で委員を務めた[14]。
2023年5月1日付でBuzzFeed JapanのNews部門がハフポストと統合し[15]、BuzzFeedの芸能を扱うエンタメ部門に異動辞令が下りる[16]。同年7月、医療記事を禁じられたことを理由に、フリーランス記者となった[16]。同時期に、株式会社OutNowが提供するニュースレターメディアプラットフォーム「theLetter」で『医療記者、岩永直子のニュースレター』の配信を開始した[17]。2023年6月、今までの医療記事をまとめた初の単著『言葉はいのちを救えるか?生と死、ケアの現場から』を出版[4]。2022年からイタリア料理店で副業として接客のアルバイトを始め、日々を綴ったnoteが話題となり、2023年8月にエッセー集『今日もレストランの灯りに』を出版した[4][5][18]。
2024年2月、国内初の依存症専門オンラインメディア「Addiction Report」を創刊し、編集長に就任した[19][7]。アルコール、薬物、ギャンブルなどの依存症について、科学的根拠に基づいた情報を発信し、偏見や差別を払拭することを目的に掲げる[7]。スポンサーは入れず、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を抱える会」が寄付で運営する[7]。
人物
[編集]- 読売新聞の記者時代の上司、ノンフィクション作家の清武英利を恩師と仰ぐ[20]。
- 祖父は山口でふぐをさばく一流料理人として活躍し、母は埼玉で現役の料理人をしている[18]。
- 大のパンダ好きであり、世界一可愛い動物がパンダであることは議論の余地がないと公言している[21]。
- 趣味は居酒屋巡りとダイエット[22]。
医療記者として
[編集]HPVワクチン報道
[編集]読売新聞の医療サイト「yomiDr.(ヨミドクター)」の編集長だった当時、2016年8月にHPVワクチンの効果や安全性を発信する特集を組んだところ、ワクチン反対派からクレームが殺到し、読売新聞は森内浩幸医師の寄稿を削除した[23][24][16]。また、岩永は医療取材から外されて地方異動を命じられ、これをきっかけに読売新聞を退社した[23][16][3]。
記事はワクチン接種の必要性を訴え、HPVワクチンで救える命を救わない状況を放置することは、大量殺戮に「不作為」という形で加担していると指摘するものだった[23]。当時、学会の重鎮たちはHPVワクチン問題に関わって攻撃されることを避けていたため、取材は難航し、記事掲載後も寄稿医師が学内外から攻撃に遭い、所属大学病院内からも記事を撤回すべきとの意見があった[24]。
2021年3月、岩永は一連のHPVワクチンに関する報道で、「Internet Media Awards選考委員特別賞」を受賞した[3][25]。選考理由として、「HPVワクチンについて正確かつ、様々な立場のひとたちに寄り添った情報発信」が評価された[3]。
2023年、国際パピローマウイルス学会・日本産科婦人科学会合同メディアカンファレンスにおいて、このワクチンに関する取材を行うことで、殺害予告を受けたことを語っている[26][27]。
終末期医療報道
[編集]読売新聞の医療サイト「yomiDr.」の編集長だった当時、終末期の医療やケアに現場で向き合う人々が寄稿し、それに対し読者が意見を投稿できる連載、「さよならを言う前に~終末期の医療とケアを語りあう~」を担当した[28][9]。
薬物問題報道
[編集]2023年8月の日本大学アメリカンフットボール部の違法薬物逮捕事件について、薬物問題は被害者なき犯罪であるとして、未来ある若者の初犯行為への糾弾報道について検討を投げかける立場を取っている[29]。
レストラン従業員として
[編集]発表の場が狭まる医療記事の記者を続けていけるのか不安を感じていたことから、好きな飲食業界の接客業を希望してた際に、2022年7月、コロナ禍で従業員を募集していた東京都の東池袋にあるイタリアンレストランのオーナーに声をかけられたことを契機に接客アルバイトを開始する[30][31]。
著書
[編集]単著
[編集]- 岩永直子『言葉はいのちを救えるか?』晶文社、2023年6月30日。ISBN 978-4-7949-7366-5。
- 岩永直子『今日もレストランの灯りに』イースト・プレス、2023年8月18日。ISBN 978-4781622224。
共著
[編集]- 岩田健太郎; 岩永直子『新・養生訓―健康本のテイスティング』丸善出版、2019年10月29日。ISBN 978-4621304242。
- 雨宮処凛; 岩永直子『この国の不寛容の果てに:相模原事件と私たちの時代』大月書店、2019年9月13日。ISBN 978-4272330973。
- 松本俊彦; 岩永直子『アディクション・スタディーズ 薬物依存症を捉えなおす13章』日本評論社、2020年7月。ISBN 978-4-535-98490-5。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d 丸善出版. “新・養生訓 健康本のテイスティング”. 2023年7月2日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j “第1回 Internet Media Awards 〜未来と信頼をつくる挑戦者をたたえよう選考委員特別賞①HPVワクチン報道 BuzzFeed Japan News”. JIMA. 2023年7月2日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 高橋伸輔 (2023年10月22日). “医療記者・料理店店員としてそれぞれの分野の本を出版 岩永直子さん”. 共同通信
- ^ a b “今日もレストランの灯りに”. イースト・プレス. 2023年12月7日閲覧。
- ^ “独立日記1(生活費の算段)”. 医療記者、岩永直子のニュースレター (2023年7月21日). 2023年11月19日閲覧。
- ^ a b c d “国内初の依存症専門オンラインメディア『Addiction Report』創刊 〜専門記者らによる正確な知識と理解を広げ、依存症に苦しむ人や家族への偏見・差別を払拭し、回 復を応援する社会を目指す〜” (PDF). 公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会 (2024年1月30日). 2024年2月18日閲覧。
- ^ a b 言葉はいのちを救えるか?生と死、ケアの現場から 株式会社晶文社 岩永直子著 2023年6月発行
- ^ a b “【コーディネーターを務めるヨミドクター編集長・岩永直子より】”. 読売新聞. 2023年12月7日閲覧。
- ^ a b c “医療に関するニュース、どう拾えば? BuzzFeed Japan Medical・岩永直子記者に聞く【前編】”. TV Guide (2022年11月30日). 2023年1月29日閲覧。
- ^ “「すべては、ひとつの線で繋がっている」:朽木誠一郎氏、BuzzFeed Japan「医療情報」専任記者の1日”. DIGIDAY (2017年10月12日). 2023年1月29日閲覧。
- ^ “医療・健康情報に特化した「BuzzFeed Japan Medical」スタート 専門記者が担当”. BuzzFeed Japan (2017年9月7日). 2023年1月29日閲覧。
- ^ “BuzzFeed Japan、「BuzzFeed Japan Medical」をスタート”. PR TIMES (2017年9月7日). 2023年1月29日閲覧。
- ^ “第1回上手な医療のかかり方を広めるための懇談会 資料”. 厚生労働省 (2018年10月5日). 2023年7月2日閲覧。
- ^ “BuzzFeed Japanニュース部門がハフポスト日本版に統合へ サイト上でクリックしてもハフポスト日本版に遷移される仕様に”. ねとらぼ (2023年5月10日). 2023年12月7日閲覧。
- ^ a b c d “退職してフリーになります。そこで皆様にお願いがあります。”. NOTE. 2023年7月2日閲覧。
- ^ “「theLetter」に医療系カテゴリが新設!医療記者の岩永直子氏、小児科医ふらいと先生らも参画”. 産経新聞 (2023年6月23日). 2023年7月2日閲覧。
- ^ a b “副業で変わった人生 元読売新聞の女性記者が飲食店のアルバイトを続けるわけ 衝撃だったシェフとの出会い”. HINT-POT (2023年9月14日). 2023年11月19日閲覧。
- ^ “岩永 直子”. Addiction Report. 2024年2月18日閲覧。
- ^ “「志があれば負けはない」 久しぶりに再会した恩師が教えてくれたこと”. BUZZ FEED JAPAN (2018年2月3日). 2023年11月19日閲覧。
- ^ “シャオシャオ、レイレイ、2歳のお誕生日おめでとう! 全国からパンダ好きが誕生会に集結”. BUZZ FEED JAPAN (2023年6月23日). 2024年3月21日閲覧。
- ^ “ヨミドクター編集長の仕事、生涯の財産です”. 読売新聞 (2017年3月29日). 2024年3月21日閲覧。
- ^ a b c 森内浩幸 (2021年5月20日). “HPVワクチンで救える命を見殺しにしていいのか? 大手新聞社が握りつぶした幻の記事を再掲”. buzz feed. 2022年10月1日閲覧。
- ^ a b 岩永直子 (2021年10月4日). “HPVワクチン積極的勧奨の差し控えの後 まともな検証は行われてきたのか?”. buzz feed. 2022年10月1日閲覧。
- ^ “5年後、ネットメディアは生き残れるか?BuzzFeed Japanトップに聞く、ハフポスト合併で描く成功のシナリオ”. Business Insider (2021年5月1日). 2023年12月7日閲覧。
- ^ “国際パピローマウイルス学会・日本産科婦人科学会合同メディアカンファレンス (国際パピローマウイルス学会学術集会2023サテライトシンポジウム) 「HPVワクチンの効果と安全性に関するメディア関係者とのコミュニケーション」 (2023年3月31日ハイブリッド開催)YouTube動画配信のお知らせ”. 公益社団法人 日本産科婦人科学会. 2023年6月6日閲覧。
- ^ “岩永直子 - Twitter” (2021年11月28日). 2023年12月7日閲覧。
- ^ “さよならを言う前に~終末期の医療とケアを語りあう~”. 読売新聞. 2023年7月2日閲覧。
- ^ 岩永直子 (2023年8月9日). “日大アメフト部の違法薬物逮捕 社会的抹殺が必要な重い罪なのか?”. THELETTER. 2023年8月18日閲覧。
- ^ “医療記者、イタリアンレストランでバイトを始める”. NOTE. 2023年7月2日閲覧。
- ^ “まさかの異動でざわつく心、レストランの副業バイトが支えになった”. 日経woman (2023年10月25日). 2024年3月21日閲覧。
外部リンク
[編集]- 岩永直子 (@nonbeepanda) - X(旧Twitter)
- naoko_iwanaga (@naoko_iwanaga) - Instagram
- 医療記者、岩永直子のニュースレター
- Addiction Report
- 岩永直子 - バイト日記 note
- さよならを言う前に~終末期の医療とケアを語りあう~ yomiDr.記事アーカイブ
- HPVワクチン報道 BuzzFeed Japan