宇津保物語考
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『宇津保物語考』(うつほものがたり こう)は、江戸時代中・後期の桑原やよ子による『うつほ物語』の研究書。孫にあたる工藤あや子(只野真葛)は本書を『うつぼのとしだて』と記している[1]。
概要
[編集]平安時代に成立した『うつほ物語』は、『源氏物語』の成立にも影響をあたえた最初の長編小説と称され、また、人間の一生をあらわした物語としては日本最初といわれる。
桑原やよ子は、仙台藩の藩医桑原如璋の妻で『うつほ物語』の紀年(年立)を考察し、その研究は江戸の国学者村田春海にも賞された。
『宇津保物語考』は、安永年間(1772年-1780年)成立とみられ、年立の研究や複雑な人間関係を系図で図示するなど、『うつほ物語』研究史上、重要な研究書である。賀茂真淵の高弟にあたる国文学者村田春海はこれを読んで感心し[2]、人に書き写させて寛政3年(1792年)、巻末に自分の手でその経緯を説明した写本をつくった[3]。この写本は天保年間(1830年-1843年)に「井関隆子日記」で知られる井関隆子によっても書写されており[4]、江戸後期の国学者のあいだでは有名であった。
『宇津保物語考』は今日でも評価が高く、日本古典全集『宇津保物語五』[5]や覆刻日本古典全集『うつぼ物語 4』[6]に収載されている。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- 関民子『只野真葛』吉川弘文館〈人物叢書〉、2008年11月。ISBN 978-4-642-05248-1。