天狗連
天狗連(てんぐれん)とは、アマチュアの芸人達のことをいう。素人連(しろうとれん)ともいう。趣味が嵩じて自らも舞台に上がるようになった素人衆をさす。特に、素人同士でグループを結成した場合、そのグループを指す。
概説
[編集]「天狗連」の名称の由来は、天狗のように鼻が高くなるように自慢するさまを「鼻が高い」ということから、転じて素人の芸達者が自身の芸を自慢する様子を自ら「天狗連」と名乗るようになったという[1]。
以下は、話芸における天狗連を中心にした解説である[2]。
本業は職人や若旦那から会社員まで様々である。客がつくと、アマチュアながら貸席などを借り切って自主興行を行うこともある。さらに熱心になると本業を辞めてプロフェッショナルな専業の芸人に転業する者もいる。天狗連出身の芸人は意外と多い。
演者の側から見た場合の天狗連の本質は道楽にあり、生業にしたり高額の報酬を得ることが目標ではないとされ、それを大きく逸脱するとプロの側から激しく批判されることが多い[3][4][5]。
アマチュアとして活動している中にも、落語の実演が上手い者、熱意を持つ者、観客を楽しませることができる者は少なからずいる。金額の多寡にかかわらず収入が発生するため、プロの落語家団体に入会してはいないが「落語家」を職業として確定申告をする者もいる。
プロの落語家になることができない事情があったり、また以下のような目的を持って話芸としてはアマチュアとして演芸を続けている者も多い。その場合、通常のプロの落語家とは別の枠組みにいることを示すために、肩書きを「落語家」とは異なる類似の名称にしている場合も多い[6]。
- 病院や老人ホームなどの慰問
- 犯罪防止・宗教布教などの社会への目的を持った実演
- 各種産業(金融・工業など)や教育など、プロの芸人が積極的に手掛けづらいジャンルに特化した噺やワークショップ運営に携わる
自分たちが演じるのとは別に、人脈などを活かしてプロの落語家を招く地域寄席を主催している者も多い。
学校の落語研究会なども、天狗連の一形態とみることもできる。
演者は本名で演じる場合もあるが、落語家風の芸名をつけることが多い。全く自由な名前にするか、実際にいる落語家の芸名をもじって似た文字や音にすることもある。また、プロの落語家に指導を受けた場合は、師匠の亭号や名前の一文字などを素人弟子としてもらうことがある[7]。
また、上記とは別に、プロの落語家である金原亭世之介が、日出郎、松井悠、渡辺裕太など、有名人に落語を指導する際、彼らが落語を演じる時の芸名に亭号として「天狗連」を使用して与えている[8]。
著名な天狗連出身の芸人
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江戸落語(東京)
[編集]天狗連主催の主な社会人落語会
[編集]- 都笑亭(東京都江東区)
- キャナリー落語教室・英語落語教室(東京都)
- たぬき連(東京都)
- 一般社団法人 素人落語協会(東京都江東区)
- 山形落語愛好協会(山形県)
- ぎぼうし落語の会(山形県)
- 仙台新撰落語会(宮城県)
- 水戸落語研究会(茨城県)
- 山梨落語研究会(山梨県)
- 落語ドッキリチャンネル(千葉県)
- 落語研究会「縁」(千葉県)
- やかん寄席(神奈川県川崎市)
- 桂歌助弟子の会(神奈川県)
- 与多朗の会(静岡市葵区)
- 豊橋落語天狗連(愛知県豊橋市)
- 社会人落語「楽語の会」東海支部(愛知県)
- 半田大衆演芸くらぶ(愛知県半田市)
- 落語くらぶ 秘密基地(兵庫県)
- 宗像落語会(福岡県宗像市)
- お寺de落語(熊本市)
- 延岡 落語一八会(宮崎県延岡市)
アマチュア落語の大会・選手権
[編集]学生対象のものは落語研究会(サークル活動)を参照。
- 全日本社会人落語選手権(東京都)主催:全日本社会人落語協会。2022年時点で49回開催。
- 社会人落語選手権 大阪本選(大阪府)主催:上方社会人落語連盟。2022年時点で28回開催。参加資格は当日落語を演じることができる社会人。学生は参加不可。所属団体の有無、性別・年齢・在住地などは不問。出場決定者は運営費の一部として参加費を支払う。
- 社会人落語日本一決定戦(大阪府池田市)主催:池田市。2009年~。審査委員長桂文枝(6代目)。参加資格は学生を除いた社会人で、落語に関してアマチュアであること。過去の優勝者は出場不可。洋服での実演・参加が可能。審査員はプロの落語家(上方中心)。
- 新人お笑い尼崎大賞(兵庫県尼崎市)主催:公益財団法人尼崎市文化振興財団。落語の部は2012年~。年齢・性別・国籍不問。.プロ・アマ共に参加可能。審査員はプロ落語家。アマチュアは芸歴不問、プロは芸歴制限有。
- 国際落語大会 IN 千葉 主催:NPO法人フォーエヴァー。参加資格は18歳以上でアマチュアの一般人・学生。外国人枠(日本語で演じる)があるのが特徴。
- ちりとてちん杯全国女性落語大会(福井県小浜市) 女性落語家が主人公のNHKドラマ「ちりとてちん」をきっかけに2007年にスタート。出場者は女性限定。日本語を話すことができれば年齢・国籍・経歴(プロアマ)不問。和服での出場前提(貸出有)。過去の優勝者は出場不可。審査員は東西の男女プロ落語家。運営の中心となっている「若狭小浜ちりとて落語の会」は、第45回サントリー地域文化賞を受賞[9]。
- 四国大落語祭(愛媛県新居浜市) - 2005年より芸乃虎や志(枝廣篤昌・社会人落語家選手権2代目名人)を中心に「新居浜落語祭(2006年より「四国大落語祭」に名称変更)」を開催。コンテスト形式ではない。2024年時点で17回の開催[10]。
- SAM-1グランプリ 社会人選抜落語特選会(東京都杉並区)阿佐ヶ谷あにめ座寄席実行委員会主催。「SAM」は「杉並・阿佐ヶ谷・街おこし」の略。大ネタ、羽織着用、出囃子などの制限無し。出場は先着順、予選無し。一部の落語はラジオNIKKEI「寄席あぷり」でダイジェストで紹介された。
- 全日本シニア社会人落語会(東京都文京区) 主催:NPO法人シニア大樂。特に年齢や資格制限は設けていないが、2020年大会の参加者の平均年齢は75.5歳。
- 伊勢原素人落語大会(神奈川県伊勢原市) 主催:伊勢原素人落語大会実行委員会。2021年~。参加資格は素人であること、年齢制限無し。演目を「古典落語に限る(とりわけ江戸落語)」としている。審査員は地元出身の東京のプロ落語家。
- 藤沢宿・全日本素人落語フェスティバル(神奈川県藤沢市) ‐ 主催:藤沢宿・全日本素人落語フェスティバル実行委員会。2021年~。後援に落語芸術協会。審査員に桂歌若ほか。参加資格は素人落語家。年齢・性別・国籍を問わず、演目も古典・新作、自作・創作問わない。
- 目黒区民まつり 新作落語コンテスト(東京都目黒区)- 主催:目黒区。2021年に「目黒のさんま祭25周年記念」として新作落語を公募したのがスタート。以降、2022年は地名、2023年は坂、と「目黒」にちなんだ新作落語を募集。アマチュア自作自演の新作落語が対象。審査員に目黒区出身の春風亭柳枝(9代目)・三遊亭れん生。
- 全国落語大学(北海道函館市)- 地元で落語家活動をする東家夢助が全国からアマチュア落語家・講談師を集めてテーオーデパートで年1回開催。2018年に夢助が亡くなった後も弟子などにより開催は続いていたが、コロナ禍で開催が途切れてデパートも2023年8月に閉店した後、同年11月の第30回で終了[11]。
- アマチュア蝦夷落語大会(北海道幕別町)- 主催:NPO法人まくべつ町民芸術劇場。まくべつかくべつ落語まつりの一環として、落語芸術協会・上方落語協会の協力を受け、ホールの自主事業として開催。優勝賞金10万円。参加資格はアマチュアであること、幕別町まで自力で来ることができること(宿泊先の紹介はある)。
関連項目
[編集]脚注
[編集]- ^ 本田久作『からぬけ落語用語事典』パイ インターナショナル、2018年9月19日、197頁。ISBN 9784756249982。
- ^ 他のジャンルでは、例えば高円寺阿波踊りに「天狗連」というサークルが存在する。
- ^ 2024年6月、「東笑亭ガーシー」を名乗って落語家に転向することをweb配信で表明したガーシー(東谷義和)に対しては、亭号の音が「東生亭世楽」と共通することもあり、世楽をはじめとしたプロの落語家から猛反発を受けた。
- ^ 「ガーシーが「落語家宣言」好感度ゼロも発信力は驚異的 そそのかした落語家は…本業からも凄まじいツッコミの船出」『ZAKZAK』2024年6月10日。
- ^ “ガーシーの落語家転身に春風亭一蔵が言いたいたった1つのこと「落語を愛してます?」”. くにまる食堂. 文化放送 (2024年6月7日). 2024年7月14日閲覧。
- ^ 「落語教育家」「ベンチャー落語家」「インディーズ落語家」など。また「怪談師」なども師弟関係を持たずに落語家的な話芸で収入を得ているということで、同じ枠組みで考えることも可能である。
- ^ 三遊亭好楽が、以前、宮崎で活躍するアマチュア落語家に自身の前名「林家九蔵」の名前を県内限定で使う許可を出していた。詳しくは林家九蔵の項目参照。
- ^ キングプロダクション (2020年6月2日). “【落語】 『天狗連参る』 とは?”. note. 2024年9月6日閲覧。
- ^ サントリーホールディングス (2023年9月13日). “第45回「サントリー地域文化賞」決定”. PR TIMES. 2023年9月14日閲覧。
- ^ “四国大落語祭について”. 新居浜落語を聴く会のHP. 2024年8月2日閲覧。
- ^ 「落語大学 最後の笑い 30年の軌跡たどる 11、12日函館」『北海道新聞』2023年11月7日。