コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

一級水系

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
国河川から転送)

一級水系(いっきゅうすいけい)は、河川法に定められた日本の水系の区分により、国土交通大臣が国土保全上または国民経済上特に重要として指定した水系。「河川法第四条第一項の水系を指定する政令」に基づき、全国で109水系が指定されている。

このような区分法は1964年昭和39年)7月に大改正された河川法で導入された考え方で、分水界や大河川の本流と支流で行政管轄を分けることなく、治水利水を統合した水系ごとに一貫管理[注釈 1]するためのものである。流域面積1,000平方 km以上の水系全てや、複数の都道府県を流れる水系の多くは一級水系に指定されている。

一級河川

[編集]
石狩川の河川標識。河川名の下に「開発局」と記載されている。

一級河川は、河川法において国土保全上又は国民経済上特に重要な水系で政令で指定したものに係る河川(公共の水流及び水面をいう。以下同じ。)で国土交通大臣が指定したものをいう。一級河川の管理は、国土交通大臣が行う[1](実務上は、国土交通省水管理・国土保全局地方支分部局である地方整備局及び地方整備局の事務所である河川国道事務所等が行う。ただし、北海道の区域内に存する指定区間内の一級河川のうち北海道知事が管理を行う区間を除いた当該一級河川の区間については、国土交通省北海道局、地方支分部局である北海道開発局及び北海道開発局に置かれる開発建設部が行う)。ただし、国土交通大臣が指定区間内の一級河川に係る国土交通大臣の権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、当該一級河川の部分の存する都道府県を統轄する都道府県知事が行うこととすることができる。指定都市の区域内に存する指定区間内の一級河川のうち国土交通大臣が指定する区間については、都道府県知事が行うものとされた管理は、政令で定めるところにより、当該一級河川の部分の存する指定都市の長が行うこととすることができる。 河川法の適用をしない河川等は、当該河川法の適用しない河川等の部分の存する市町村が河川法が定める二級河川に関する規定を準用する条例(以下「市町村の条例」という。)を制定し、当該市町村の条例で定めることにより、市町村を統轄する市町村長準用河川に指定する。準用河川の管理は、市町村長が管理する。河川法の適用をしない若しくは河川の部分を存する当該市町村の条例を適用しない又は河川の部分を存する市町村の条例が制定されていない区間内の河川等については、普通河川として扱う。

一級河川の数は1万4062にのぼり、二級水系(2,711水系)に属する二級河川の総数 (7,080河川) より多い(2016年4月30日現在)。

都府県の区域が二以上(道の区域にあっては、当該道の条例により定める支庁(支庁出張所を含む。)若しくは地方事務所の所管区域が二以上)に跨る河川水系は一般的に一級水系だが、酒匂川水系・武庫川水系・錦川水系のように2都府県を跨いでも二級水系の例もあれば、梯川水系や土器川水系のように1県内完結かつ流域面積が500平方 kmにも満たない一級水系もある。

他県から孤立した沖縄県には一級水系が存在しない。長崎県は一級水系は本明川水系しかなく県庁所在都市である長崎市に一級水系は流れていない。

一方、下記例外がある山梨県奈良県を除く海に面していない6県(栃木県群馬県埼玉県長野県岐阜県滋賀県)の河川は全て一級水系に属する。山梨県の西湖本栖湖精進湖はどの水系にも属していない内陸湖のため、二級河川の扱いである[注釈 2]。奈良県南部には三重県へ流れる銚子川水系、和歌山県へ流れる日置川水系や日高川水系といった二級水系が存在している。

一級水系の一覧

[編集]
  • 単位 - 流路延長は km流域面積km2 、流域内人口は人、年平均流量は m3/s 、BODmg/L
  • 流域の都府県が複数ある場合は、おおむね上流側より記載する。
  • ダム数は河川法における基準(堤高 15 m以上)をみたすダムの数(既設・未設ともに含む)。管理主体は不問。カッコ内は本川のダム数。
    • 取水堰の堤高 15 m 未満の水力発電所ダムとは見なさないため、常にダム数が水力発電所数を上回るとは限らない。

北海道開発局管轄

[編集]

下記の河川及びその支流に関しては道路及び鉄道の橋梁傍に掲示される河川標識に、本州以南で見られる「国土交通省」ではなく「開発局」と記載される。

水系名 水系本川延長 水系流域面積 流域自治体 水系流域内人口 支川数 水系年平均流量 BOD ダム数 水力発電所数
天塩川 256 5,590 北海道 94,000 160 134.52 0.7 14 (2) 3
渚滑川 84 1,240 28,000 25 29.33 1.0 0 2
湧別川 87 1,480 36,000 17 32.45 1.7 1 (0) 3
常呂川 120 1,930 142,000 57 22.64 2.6 2 (1) 0
網走川 115 1,380 94,000 25 14.02 2.5 1 (0) 2
留萌川 44 270 28,000 13 11.84 1.5 3 (0) 0
石狩川 268 14,330 2,500,000 464 133.18 1.1 83 (1) 34
尻別川 126 1,640 38,000 40 68.41 0.4 3 (0) 7
後志利別川 80 720 16,000 29 23.69 0.5 2 (1) 8
鵡川 135 1,270 13,000 20 38.54 0.6 2 (0) 1
沙流川 104 1,350 13,000 28 48.24 0.6 4 (2) 4
釧路川 154 2,510 177,000 38 26.32 1.7 0 0
十勝川 156 9,010 340,000 209 85.36 1.7 14 (3) 16

東北地方整備局管轄

[編集]
水系名 水系本川延長 水系流域面積 流域自治体 水系流域内人口 支川数 水系年平均流量 BOD ダム数 水力発電所数
岩木川 102 2,540 青森県 482,400 97 76.07 1.6 21 (2) 5
高瀬川 64 867 80,372 23 50.10 0.9 3 (1) 0
馬淵川 142 2,050 岩手県、青森県 188,000 30 47.62 1.1 6 (0) 5
北上川 249 10,150 岩手県、宮城県 1,389,000 302 318.42 1.1 53 (1) 33
鳴瀬川 89 1,130 宮城県 190,000 61 26.49 1.3 13 (1) 3
名取川 55 939 1,125,589 30 17.32 1.1 9 (0) 7
阿武隈川 239 5,400 宮城県、福島県 1,380,000 197 52.22 1.9 19 (2) 25
米代川 136 4,100 秋田県、岩手県 280,000 89 100.91 1.3 21 (0) 22
雄物川 133 4,710 秋田県 346,481 168 259.02 1.4 34 (0) 17
子吉川 61 1,190 80,000 44 60.60 1.1 12 (1) 7
最上川 229 7,040 山形県 999,300 429 369.26 1.0 41 (1) 26
赤川 70 857 109,294 44 65.68 1.0 5 (1) 10

関東地方整備局管轄

[編集]
水系名 水系本川延長 水系流域面積 流域自治体 水系流域内人口 支川数 水系年平均流量 BOD ダム数 水力発電所数
久慈川 124 1,490 福島県、茨城県 201,981 53 23.58 0.8 1 (0) 7
那珂川 150 3,270 栃木県、茨城県 912,217 197 74.43 0.9 22 (2) 12
利根川 322 16,840 群馬県長野県、栃木県、埼玉県
東京都千葉県、茨城県
12,140,000 819 237.10 2.5 70 (4) 98
荒川 173 2,940 埼玉県、東京都 9,300,000 127 27.77 4.4 13 (2) 11
多摩川 138 1,240 山梨県、東京都、神奈川県 4,250,000 52 40.28 1.7 2 (2) 5
鶴見川 43 235 東京都、神奈川県 1,840,000 11 7.83 8.0 0 0
相模川 113 1,680 山梨県、神奈川県 1,200,000 104 2.0 10 (3) 20
富士川 128 3,990 長野県、山梨県、静岡県 1,600,000 555 58.91 2.3 19 (0) 71

北陸地方整備局管轄

[編集]
水系名 水系本川延長 水系流域面積 流域自治体 水系流域内人口 支川数 水系年平均流量 BOD ダム数 水力発電所数
荒川 73 1,150 山形県、新潟県 40,000 61 115.00 0.6 5 (3) 6
阿賀野川 210 7,710 福島県、群馬県、新潟県 590,000 243 401.55 0.6 62 (8) 60
信濃川 367 11,900 長野県、群馬県、新潟県 2,950,000 880 503.15 1.0 90 (1) 122
関川 64 1,140 長野県、新潟県 210,000 78 50.32 1.5 5 (1) 16
姫川 60 722 20,000 47 44.07 0.5 0 19
黒部川 85 682 富山県 71,000 25 37.00 0.8 6 (5) 18
常願寺川 56 368 30,000 49 16.23 0.6 8 (1) 27
神通川 120 2,720 岐阜県、富山県 380,000 105 183.65 1.4 25 (7) 60
庄川 115 1,180 28,032 48 47.72 1.0 18 (9) 27
小矢部川 68 667 石川県、富山県 300,000 64 27.99 1.5 14 (2) 5
手取川 72 809 石川県 40,000 35 77.21 0.5 7 (2) 24
梯川 42 271 110,000 13 18.02 1.0 1 (1) 0

中部地方整備局管轄

[編集]
水系名 水系本川延長 水系流域面積 流域自治体 水系流域内人口 支川数 水系年平均流量 BOD ダム数 水力発電所数
狩野川 46 852 静岡県 640,000 76 21.40 1.5 0 7
安倍川 51 567 170,000 36 41.44 0.8 0 2
大井川 168 1,280 90,000 39 76.40 0.5 14 (7) 15
菊川 28 158 70,000 25 2.21 1.8 2 (0) 0
天竜川 213 5,090 長野県、愛知県、静岡県 720,000 332 239.67 0.5 17 (5) 51
豊川 77 724 愛知県 210,000 27 28.23 0.6 9 (1) 3
矢作川 118 1,830 長野県、岐阜県、愛知県 690,000 94 43.99 1.0 25 (3) 25
庄内川 96 1,010 岐阜県、愛知県 2,500,000 76 26.21 4.7 18 (0) 2
木曽川 229 9,100 長野県、岐阜県、滋賀県
愛知県、三重県
1,700,000 391 291.05 0.7 64 (9) 77
鈴鹿川 38 323 三重県 110,000 46 11.23 1.4 0 0
雲出川 55 550 90,000 40 14.36 1.6 6 (0) 1
櫛田川 85 461 40,000 68 20.55 0.7 4 (0) 5
宮川 91 920 140,000 55 45.70 0.5 5 (2) 6

近畿地方整備局管轄

[編集]
水系名 水系本川延長 水系流域面積 流域自治体 水系流域内人口 支川数 水系年平均流量 BOD ダム数 水力発電所数
九頭竜川 116 2,930 岐阜県、福井県 666,225 147 108.26 0.8 20 (3) 25
北川 30 211 滋賀県、福井県 21,389 12 11.68 0.6 1 (0) 1
由良川 146 1,880 兵庫県京都府 300,000 138 52.09 0.8 22 (3) 6
淀川 75 8,240 滋賀県、京都府、大阪府
三重県、奈良県、兵庫県
11,650,000 965 267.51 1.9 66 (1) 34
大和川 68 1,070 奈良県、大阪府 2,150,000 178 23.94 3.3 11 (1) 0
円山川 68 1,300 兵庫県 150,557 97 37.40 0.9 7 (0) 5
加古川 96 1,730 820,000 130 45.89 2.6 19 (0) 0
揖保川 70 810 200,000 47 29.04 0.8 4 (0) 6
紀の川 136 1,750 奈良県、和歌山県 689,000 181 58.77 2.1 9 (2) 6
新宮川(熊野川 183 2,360 奈良県、三重県、和歌山県 84,000 103 163.54 1.3 11 (5) 30

中国地方整備局管轄

[編集]
水系名 水系本川延長 水系流域面積 流域自治体 水系流域内人口 支川数 水系年平均流量 BOD ダム数 水力発電所数
千代川 52 1,190 鳥取県 200,000 87 61.68 0.8 6 (0) 17
天神川 32 490 65,500 32 24.03 1.2 8 (0) 8
日野川 77 870 60,800 56 33.55 1.1 12 (0) 14
斐伊川 153 2,070 島根県、鳥取県 435,000 227 40.26 1.4 24 (2) 13
江の川 194 3,900 広島県、島根県 202,000 293 75.17 0.8 20 (2) 24
高津川 81 1,090 島根県 38,600 92 51.88 0.7 4 (0) 5
吉井川 133 2,110 岡山県 294,000 215 61.16 2.0 30 (1) 18
旭川 142 1,810 335,000 147 57.01 1.8 25 (3) 9
高梁川 111 2,670 岡山県、広島県 273,000 121 61.81 2.5 29 (1) 19
芦田川 86 860 広島県、岡山県 269,000 82 12.73 4.0 18 (2) 3
太田川 103 1,710 広島県 980,000 73 78.81 0.9 11 (2) 24
小瀬川 59 340 広島県、山口県 26,500 23 12.05 2.6 4 (2) 6
佐波川 56 460 山口県 31,100 32 18.69 0.7 4 (1) 1

四国地方整備局管轄

[編集]
水系名 水系本川延長 水系流域面積 流域自治体 水系流域内人口 支川数 水系年平均流量 BOD ダム数 水力発電所数
吉野川 194 3,750 高知県愛媛県徳島県香川県 641,000 356 107.67 0.8 23 (4) 32
那賀川 125 874 徳島県 59,000 75 62.88 0.7 4 (3) 5
土器川 33 140 香川県 35,000 11 1.83 3.9 2 (0) 0
重信川 36 445 愛媛県 233,000 75 2.24 5.0 8 (0) 1
肱川 103 1,210 112,000 475 37.61 1.0 8 (2) 4
物部川 71 508 高知県 40,000 35 30.78 0.7 4 (3) 6
仁淀川 124 1,560 愛媛県、高知県 105,000 166 100.07 0.7 5 (3) 18
渡川(四万十川 196 2,270 100,000 319 121.02 0.6 5 (0) 6

九州地方整備局管轄

[編集]
水系名 水系本川延長 水系流域面積 流域自治体 水系流域内人口 支川数 水系年平均流量 BOD ダム数 水力発電所数
遠賀川 61 1,026 福岡県 666,406 74 31.47 2.6 23 (0) 1
山国川 56 540 大分県、福岡県 36,801 39 20.81 0.9 1 (0) 1
筑後川 143 2,863 熊本県、大分県、福岡県、佐賀県 1,090,777 235 95.09 1.6 29 (2) 22
矢部川 61 647 福岡県 182,889 23 21.54 1.1 17 (2) 4
松浦川 47 446 佐賀県 97,818 80 12.46 2.4 22 (0) 3
六角川 47 341 122,827 79 4.36 2.1 9 (1) 0
嘉瀬川 57 368 133,412 51 14.10 1.0 3 (2) 8
本明川 21 87 長崎県 54,583 18 2.11 1.8 2 (1) 0
菊池川 71 996 熊本県 208,694 68 39.56 1.1 1 (0) 4
白川 74 480 131,375 16 25.39 2.5 3 (1) 4
緑川 76 1,100 517,189 59 36.17 2.4 4 (2) 11
球磨川 115 1,880 137,375 82 119.92 1.4 11 (4) 20
大分川 55 650 大分県 252,808 48 22.33 1.4 7 (1) 14
大野川 107 1,465 熊本県、宮崎県、大分県 206,818 138 61.36 0.6 14 (0) 10
番匠川 38 464 大分県 56,527 52 12.17 1.1 5 (0) 0
五ヶ瀬川 106 1,820 熊本県、大分県、宮崎県 127,638 102 60.94 1.1 8 (2) 22
小丸川 75 474 宮崎県 32,616 16 32.76 0.5 8 (4) 5
大淀川 107 2,230 鹿児島県、宮崎県 601,321 134 107.61 1.3 16 (2) 12
川内川 137 1,600 熊本県、宮崎県、鹿児島県 195,944 129 91.09 0.7 4 (3) 5
肝属川 34 485 鹿児島県 115,578 36 31.69 4.5 2 (0) 3

沖縄の河川は全て二級河川に指定されている。

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 都丸泰助『地方自治制度史論』(新日本出版社、1982年、p374)によれば、この考え方は、「地元の利害にとらわれない国家的な立場から、各水系ごとに一貫した管理体制」の確立と、「治水や農業灌漑を中心に利水事業が考えられてきた旧法をダム工業用水を中心とするものに切りかえてゆく」というねらいだったと説明されている。
  2. ^ 湖や沼であっても、「水系」の一部とされる場合が多い。例えば、琵琶湖淀川水系)、霞ヶ浦利根川水系)などが挙げられる。

出典

[編集]
  1. ^ よくある質問とその回答(FAQ)”. 国土交通省. 2023年12月24日閲覧。 “一級水系に係る河川のうち河川法による管理を行う必要があり、国土交通大臣が指定(区間を限定)した河川が「一級河川」です。”

参考文献

[編集]

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]