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突厥文字

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
古テュルク文字から転送)
突厥文字
突厥文字による古テュルク語での「神」(テングリ teŋri )。
類型: アルファベット
言語: 古テュルク語
時期: 5世紀-13世紀
親の文字体系:
子の文字体系: ロヴァーシュ文字
Unicode範囲: U+10C00-U+10C4F
ISO 15924 コード: Orkh
注意: このページはUnicodeで書かれた国際音声記号 (IPA) を含む場合があります。
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メロエ 前3世紀
カナダ先住民 1840年
注音 1913年

突厥文字(とっけつもじ)は突厥によって古テュルク語の表記に5世紀から用いられたアルファベットであり、代表的なものとしてオルホン碑文に書かれたものがあるため、オルホン文字とも呼ばれる。

歴史

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5世紀

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5世紀に建てられたと見られる初期のものは、書く方向や符号・文字が一定しないなどの特徴が見られる。これらは古テュルク語として解読されているものでは最も古い文献である[1]

6世紀

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7世紀

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8世紀

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代表的史料であるモンゴルのオルホン碑文は8世紀のもので、1889年ニコライ・ヤドリンツェフ英語版により発見された。これはワシリー・ラドロフ英語版によって出版され、1893年デンマークの文献学者ヴィルヘルム・トムセンによって解読された[2]アラム文字の系統に属し、パフラヴィー文字ソグド文字もしくはカロシュティー文字に由来するとの説が有力である。またタムガ(中央アジアの遊牧諸民族が用いた印で、漢字に由来するとも言われる)[3]に由来する可能性も指摘されている。オルホン碑文以前の碑文で、約150種もの記号を用いたものも発見されており、この説を補強するものとされる。オルホン碑文の段階ではすでに整った形式に従っている。[要出典]

オルホン文字の史料は、東突厥(第二可汗国)の王子キュル・テギン古テュルク語: - Kül Tegin)とその兄王ビルゲ・カガン古テュルク語: - Bilgä Qaγan)を記念して732-735年の間にオルホン川沿いに建てられた2つの碑文(キュル・テギン碑文とビルゲ・カガン碑文)を合わせてホショ・ツァイダム碑文と呼ぶものの他、広い範囲から見つかっている碑文からなる。

建立年代としては720年トニュクク碑文暾欲谷英語版将軍の記念)、732年キュル・テギン碑文(キュル・テギンの記念)、735年ビルゲ・カガン碑文(ビルゲ・カガンの記念)が知られている。同じ字体はモンゴル、シベリア、東トルキスタンにも見つかっている。ホショ・ツァイダム碑文には突厥の伝説的起源と最盛期、中国への服属そしてビルゲ・カガンによる解放が描かれている。[4]

モンゴル東部のドンゴイン・シレー遺跡でも8世紀の突厥碑文が発見されている[5][6]

ウイグル帝国

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のちにウイグル帝国でも用いられた。

その他

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またこの系統に属すと考えられる文字としてエニセイ文字(9世紀)、タラス文字: Talas alphabet)、ロヴァーシュ文字(古ハンガリー文字:10世紀)が、モンゴルシベリアからバルカン半島に至る広い範囲で見つかっている[要出典]

分類

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突厥文字の変種はモンゴル・シベリアから、遠くバルカン半島まで残されており、年代は7世紀から13世紀にまで至る。また19世紀までハンガリーで用いられたロヴァーシュ文字もこの系統に由来すると考えられる。これらの文字は次のように4つのグループに大別され、さらにいくつかに分類される。[要出典]

  • アジア
    • オルホン(突厥文字、5-10世紀)
    • エニセイ
    • タラス:エニセイ文字に由来し、8-10世紀に用いられた。
  • ユーラシア
    • Achiktash(パミール高原、7-10世紀)
    • Isfar(タジキスタン、7-10世紀)
    • 南エニセイ(突厥、8-10世紀)
    • ドン川流域:アランハザールによる8-10世紀のものと、ブルガールによる8-13世紀のものがある。
    • ティサ川流域(ハンガリー、8-10世紀)
  • トゥラン(西トルキスタン)
  • 南ヨーロッパ

なお考古学者の鳥居龍蔵により、北海道にある手宮洞窟の線刻画(いわゆる北海道異体文字)が突厥文字であるという説が出された[7]ものの、一般には支持されていない[8]

文字表

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「古テュルク文字(古典時代)」 以下38字+単語区切り点1文字で構成されている
用法 文字 文字転写および発音
母音 A /a/, /e/
I /ɯ/, /i/, /j/
O /u/, /o/, /w/
U /ø/, /y/, /w/
子音 母音調和
(¹) — 後母音、
(²) — 前母音
/b/ /b/
/d/ /d/
/g/ /g/
/l/ /l/
/n/ /n/
/r/ /r/
/s/ /s/
/t/ /t/
/ʤ/ /ʤ/
(¹)のみ — Q
(²)のみ — K
Q /q/ K /k/
全母音 -CH /ʧ/
-M /m/
-P /p/
-SH /ʃ/
-Z /z/
-NG /ŋ/
クラスター + 母音 ICH, CHI, CH /iʧ/, /ʧi/, /ʧ/
IQ, QI, Q /ɯq/, /qɯ/, /q/
OQ, UQ,
QO, QU, Q
/oq/, /uq/,
/qo/, /qu/, /q/
ÖK, ÜK,
KÖ, KÜ, K
/øk/, /yk/,
/kø/, /ky/, /k/
+ 子音 -NCH /nʧ/
-NY /nʤ/
-LT /lt/, /ld/
-NT /nt/, /nd/
単語区切り記号 なし
(-) — 語尾のみ

読みの例: — 「天神」(注:右横書き)

T²NGR²I — 文字転写
/teŋri/ — 発音
teñri — 現代テュルクアルファベット表記

Unicode

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Unicodeにおいては、2009年のバージョン5.2において収録された。(オレンジはエニセイ文字。緑はその他。)

U+ 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
U+10C0x 𐰀 𐰁 𐰂 𐰃 𐰄 𐰅 𐰆 𐰇 𐰈 𐰉 𐰊 𐰋 𐰌 𐰍 𐰎 𐰏
U+10C1x 𐰐 𐰑 𐰒 𐰓 𐰔 𐰕 𐰖 𐰗 𐰘 𐰙 𐰚 𐰛 𐰜 𐰝 𐰞 𐰟
U+10C2x 𐰠 𐰡 𐰢 𐰣 𐰤 𐰥 𐰦 𐰧 𐰨 𐰩 𐰪 𐰫 𐰬 𐰭 𐰮 𐰯
U+10C3x 𐰰 𐰱 𐰲 𐰳 𐰴 𐰵 𐰶 𐰷 𐰸 𐰹 𐰺 𐰻 𐰼 𐰽 𐰾 𐰿
U+10C4x 𐱀 𐱁 𐱂 𐱃 𐱄 𐱅 𐱆 𐱇 𐱈

脚注

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  1. ^ 『突厥与回紇史』
  2. ^ Konow, Sten; ステン・コノウ|Konow, Sten (1927-10). “Vilhelm Thomson”. Journal of the Royal Asiatic Society of Great Britain and Ireland (4): 929–934. https://www.weblio.jp/content/%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%A0%E3%82%BB%E3%83%B3. 
  3. ^ 遊牧帝国の匈奴に「タムガ」という固有文字があった”. 동아일보 (2017年5月4日). 2024年5月1日閲覧。
  4. ^ オルホン碑文コピー、トルコ世界文化公園に―でも間違いだらけ”. 日本語で読む中東メディア. 2024年5月1日閲覧。
  5. ^ モンゴル東部で突厥碑文発見 8世紀、阪大が共同調査
  6. ^ Ancient Monument in Asia Reveals Hidden Stone Sarcophagus Surrounded by Mysterious Secret Writings Newsweek(12/19/17)
  7. ^ 世界の文字”. chikyukotobamura.org. 2024年5月1日閲覧。
  8. ^ フゴッペ論争3/北斗「疑ふべき…フゴツペの遺跡」”. swan2001.jp. 2024年5月1日閲覧。