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千のナイフ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『千のナイフ』
坂本龍一スタジオ・アルバム
リリース
録音
  • 1978年4月10日 – 7月27日 (1978-04-10 – 1978-07-27)
  • コロムビア1,2,4スタジオ
ジャンル
レーベル 日本コロムビア/Better Days
プロデュース 坂本龍一
専門評論家によるレビュー
坂本龍一 アルバム 年表
  • 千のナイフ
  • (1978年 (1978)
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千のナイフ』(せんのナイフ、Thousand Knives)は、1978年10月25日日本コロムビアから発売された坂本龍一の1作目のオリジナルアルバム及び楽曲。タイトルはベルギー詩人アンリ・ミショーメスカリン体験を記述した書物『みじめな奇蹟フランス語版』冒頭の一節より。

制作

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担当ディレクターによるとレコーディングは、日本コロムビアの第4スタジオで延べ339時間を費やした[1]。当時の坂本は、昼間にスタジオ・ミュージシャンをこなし、夜12時から朝までこのアルバムを作成。何か月もかかったが、寝なくても平気だったと回想している[2]

コンピュータ・オペレーターは松武秀樹が担当。その他ギターで渡辺香津美、カスタネットで山下達郎が参加。初回プレスはわずか500枚だった[3]。売上は200枚で、残りの200枚は返品された[1]。16分音符の「ハネ方」を数学的に計算した痕跡が残っている[4]

プロモーション

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本作発売に伴い、1978年10月25・26日に東京・六本木のピットインで「千のナイフ発売記念ライヴ[5]」が開催された。

パッケージ、アートワーク

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初発売時のレコード帯には、以下のキャッチコピーが記載されていた。

  • そして今、
  • すべては透明になった。
  • 滅亡の時を前にして。
  •  
  • 現在最も進んだセッションプレイヤー、
  • アレンジャーとして活躍する鬼才
  • 坂本龍一が、11台のシンセサイザーと
  • コンピューターを駆使して織りなす壮大な
  • リューイチ・サウンド。今ここにベールをぬぐ。

ジャケット写真のスタイリストは後に坂本と共にYMOのメンバーとなる高橋幸宏が担当。長髪にヒゲ[6]にTシャツという、ファッションとは無縁な風貌だった坂本に、ジョルジオ・アルマーニのジャケットにリーバイス501ジーンズというスタイリングで、坂本に対し周囲が持っていたイメージを一変させた。

ライナーノーツ

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ライナーノーツは、坂本のほか、林光細野晴臣が寄稿。細野は自らのコンセプト「イエローマジック」に絡めた文を掲載している。

収録曲

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Side A

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  1. 千のナイフ THOUSAND KNIVES  – (9分34秒)
    坂本のヴォコーダー(KORG VC-10)による毛沢東(1965年に毛沢東が井崗山を訪問したときに作成した「水調歌頭 重上井岡山」)の朗読で幕を開け、印象的な響きの和音が平行移動するイントロへとつながる。イントロ後の速いパッセージ部分のメロディーの音色は大正琴のシミュレート。坂本はレゲエ賛美歌ハービー・ハンコックの「Speak Like A Child」にインスパイアされたと発言している。ギターソロは渡辺香津美
    後にYMOもライブで演奏しており、1981年発表のYMOのアルバム『BGM』にてセルフカバー
    坂本のコンサートツアー『トリオ・ワールド・ツアー・1996』では、ピアノ三重奏のアレンジで演奏された。
    2002年にリリースされた『US』では冒頭の詩の朗読とフェードアウト部分がカットされている。2005年9月28日リリース『/05』ではピアノ連弾にアレンジされたヴァージョンが収録されている。
  2. ISLAND OF WOODS  – (9分50秒)
    浜口茂外也によるブラジルのバードホイッスルによる鳥の声や、アナログシンセで模された森の具体音等が曲の全般を支配している。中間部では心臓の鼓動、犬の鳴き声をシミュレートして表現。最後は波の音で終わる。
  3. GRASSHOPPERS  – (5分16秒)
    高橋悠治とのピアノデュオ[7]。6拍子の印象的なメロディー部と3拍子の即興演奏部からなる。

Side B

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  1. 新日本電子的民謡 DAS NEUE JAPANISCHE ELEKTRONISCHE VOLKSLIED  – (8分05秒)
    その名のとおり、坂本流民謡を目指し作られたが、後に「あの曲は民謡でもなんでもない。完全な西洋音楽」なる趣旨の坂本自身の発言がある。初期YMOのライヴで演奏された。
    山下達郎がカスタネットで参加している。当時、坂本はスタジオ・ミュージシャンとして山下の作品やライブに数多く関わっており、親交があったため、山下はこのアルバムの制作過程をほぼ毎日のように見学している中で「カスタネットでも…」と依頼されたもので、正式なオファーを受けてのものではない。
  2. PLASTIC BAMBOO  – (6分31秒)
    16分音符のウラにアクセントがある、クネクネした独特なメロディーが特徴。初期YMOのライヴで演奏された。
  3. THE END OF ASIA  – (6分21秒)
    曲名は“アジアの終焉”ではなく、“アジアの果て”を意味する[注釈 1]コーダ文革期に事実上の中国国歌だった「東方紅」が参照されている。
    ギターソロは渡辺香津美。
    後にYMOのライヴにおける主要なレパートリーのひとつとなり、YMOのアルバム『増殖』でセルフカバー。

Chronological Collection 1978-1981 (Columbia Years)

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※コロムビア時代のアルバムを集めた『Chronological Collection 1978-1981 (Columbia Years)』では、曲順がLP版のA面とB面が入れ替わった形に変更されている。

  1. DAS NEUE JAPANISCHE ELEKTRONISCHE VOLKSLIED
  2. PLASTIC BAMBOO
  3. THE END OF ASIA
  4. THOUSAND KNIVES
  5. ISLAND OF WOODS
  6. GRASSHOPPERS

クレジット

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  • Produced, Composed, Orchestrated and Performed by
  • Ryuichi Sakamoto
 
  • Moog III-C with Roland MC-8 Micro Composer / Poly Moog / Mini Moog / Micro Moog /
  • Obertheim Eight Voice Polyphonic with Digital Programmer / ARP Odyssey /
  • KORG PS-3100 Polyphonic / KORG VC-10 Vocorder / KORG SQ-10 Analog Sequencer /
  • Syn-Drums / Acoustic Piano / Marimba:
  • Ryuichi Sakamoto
 
  • Special Credits
  • Computer Operation / Synthesizer Programming
  • Assistance: Hideki Matsutake
 
Castanets: Tatsuro Yamashita
 
  • Recorded Date: 1978.4/10-7/27
  • Nippon Columbia 1,2,4 Studio
 
Recording Engineer: Toshihiko Takahashi
Mixed by Toshihiko Takahashi, Ryuichi Sakamoto

脚注

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注釈

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  1. ^ 時を前後して作られた細野晴臣作曲の「ウォリー・ビーズ」は偶然にもこの曲と同じメロディを持つ。

出典

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  1. ^ a b 千のナイフ2016年版ライナーノーツ
  2. ^ ワッツイン 1989年12月号
  3. ^ 坂本龍一さん秘話発掘「デビュー盤は売上200枚」「カフェ店員から『この音楽じゃモテないですよ』」”. news.yahoo.co.jp. NEWSポストセブン (2023年4月7日). 2023年4月7日閲覧。
  4. ^ 坂本龍一全仕事, 太田出版, 1991, p.52
  5. ^ 千のナイフ発売記念ライヴ”. bug98.jugem.jp. bug98.jugem.jp (2005年3月9日). 2023年4月7日閲覧。
  6. ^ 青春の音楽 原田力男の仕事 p.12
  7. ^ 【LIFE MUSIC. ~音は世につれ~】第27回忘れがたいものになった12のスケッチ by青野賢一”. mikiki.tokyo.jp. mikiki.tokyo.jp. 2023年4月7日閲覧。

参考文献

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外部リンク

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日本コロムビア
その他