北浜長屋
北浜長屋 | |
---|---|
情報 | |
用途 | 飲食店 |
旧用途 | 証券会社(推定)、法律事務所 |
設計者 | (不詳) |
構造形式 | 木構造 |
建築面積 | 108 m² [1] |
階数 | 地上2階・地下1階 |
竣工 | 1912年 |
改築 | 2017年 |
所在地 |
〒541-0041 大阪府大阪市中央区北浜一丁目74 |
座標 | 北緯34度41分29.8秒 東経135度30分28秒 / 北緯34.691611度 東経135.50778度座標: 北緯34度41分29.8秒 東経135度30分28秒 / 北緯34.691611度 東経135.50778度 |
文化財 | 登録有形文化財 |
指定・登録等日 | 2018年11月2日[1] |
北浜長屋(きたはまながや)は、大阪市中央区北浜にある、1912年に建築された二軒長屋である。土蔵造の和洋折衷建築で、2018年に国の登録有形文化財に登録された。
歴史
[編集]1911年(明治44年)、大阪市電北浜線敷設のため土佐堀通が拡幅された。この時に「軒切り[注釈 1]」が行われ、土佐堀川と土佐堀通に挟まれた建物は敷地の提供と建て直しを余儀なくされる。のちに北浜長屋と呼ばれる本建物もこの事業に合わせて建てられ、1912年(明治45年/大正元年)に完成。2件西には同年に北浜レトロビルヂング[注釈 2]も竣工している。当時から北浜は金融街として発展した街で、この建物も株式の売買に関連する事業者の社屋であったと推測される。のちに法律事務所が入居した後、長年空き家として放置されていた。2016年、大阪市によるHOPEゾーン事業の補助制度を活用し、髙岡伸一の設計・監理にて再生が行われることとなった[4]。
建築
[編集]北浜一丁目、難波橋から東に100mほどに位置し、北は土佐堀川、正面となる南側は土佐堀通に面する。通りを挟んで大阪取引所に接する。奥行五間半[5]。間口は各二間半[6]、合わせて五間の二軒長屋で、正面に二つの玄関が並ぶ。正面2階は土蔵造で、4つの観音開きの縦長の窓と、両端に袖卯建が設けられている[1]。外壁は、改修以前は白漆喰であったが竣工時の黒漆喰に復元された[4]。蔵としての用途は持たない、見世蔵と呼ばれる作りであり、主に関東の江戸や川越で好まれた[7]。玄関上部には西洋の古典主義建築に見られるペディメントが取り付けられ、和洋折衷建築の要素を持つ[4]。
2017年の改修後、10月11日より「COME to THE RIVER」と総称する店舗が入居しており[8]、左手がコーヒー専門店「エンバンクメントコーヒー」、右手が「オクシモロン北浜[注釈 3]」。オクシモロンは神奈川県鎌倉市の小町通りが発祥のカレー・甘味と雑貨の店で、関西には初出店となる[10][注釈 4]。他に、左手地下にインドの雑貨や衣料を扱う「KALAKARI」、左手2階には2018年1月28日[12]に雑誌『nice things.』がプロデュースする雑貨店「トモダチノ家」が開店したが、KALAKARIは2018年8月に実店舗を閉店しオンラインショップに移行[13]。トモダチノ家は2020年2月に閉店した[14][注釈 5]。
建物内部は川側が和風、道路側は洋風を基調とする[4]。1階には鴨居や床の間の跡が残り、住宅として使われた面影が残る。2階へ続く階段は洋風の作りである[16]。2階の道路側のかつて応接間として使われた部屋の天井は、外国から輸入されたと推測される、型押しの装飾が施された金属パネルの天井板が貼られている。当初は白く塗装されていたが、修復に際しては塗装し直すのではなく、あえて金属の素地をそのまま生かした[4]。1階・2階とも、川に面した開口部は広く取られている[9]。当初は地下1階が川面に接し、土佐堀川から直接出入りできる構造であった[5]。
2018年に国の登録有形文化財に登録され[1]、2023年には「生きた建築ミュージアム・大阪セレクション 第2期」に選定された[17]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 大阪では近世より道路上へ軒の突出が認められてきたが、1800年代後半から1900年代初頭にかけて道幅確保のため撤去が行われた。これとは別に都市計画道路拡幅や市電敷設の用地確保のために通りに面した土地を買収することも「軒切り」と呼んだが、本事例は後者である[2]。
- ^ 北浜長屋とは対照的に洋風の外観を持つ。1997年に国の登録有形文化財に登録された[3]。
- ^ oxymoronはギリシャ語に由来し、撞着語法などと訳される。倉片は店名から、「和風であり洋風」「閉塞的であり開放的」と、相反する絶妙な関係性を読み解いた[9]。
- ^ 北浜店はオクシモロンの店舗では初めて、ディナータイムでのアルコール飲料の提供を開始した[11]。
- ^ 『nice things.』発行元のミディアム社は2020年3月6日に破産した[15]。
出典
[編集]- ^ a b c d 北浜長屋 - 文化遺産オンライン(文化庁)
- ^ 岡本訓明「近代大阪における「軒切り」の展開について」(PDF)『歴史地理学』第48巻第2号、歴史地理学会、2006年3月、19-40頁、2024年1月27日閲覧。
- ^ 北浜レトロビルヂング(旧桂隆産業ビル) - 文化遺産オンライン(文化庁)
- ^ a b c d e (髙岡 2018, pp. 42–43)
- ^ 髙岡伸一. “北浜長屋” (PDF). 大阪市役所都市整備局. 2024年1月27日閲覧。
- ^ (倉方 2021, p. 1)
- ^ “大阪北浜COME to THE RIVERがオープン”. エンベロープ (2017年10月11日). 2024年1月28日閲覧。
- ^ a b (倉方 2021, p. 4)
- ^ (倉方 2021, p. 2)
- ^ “カレーとコーヒー、暮らしの道具。川沿いの築100年超の二軒長屋を改装した「COME to THE RIVER」が面白い”. goodroom journal. (2019年3月3日) 2024年1月28日閲覧。
- ^ “COME to THE RIVERに「トモダチノ家」が仲間入り”. エンベロープ (2018年1月26日). 2024年1月28日閲覧。
- ^ “[DRAW A LINE]スタッフも体験!一本の線からはじまる、新しい暮らし”. エンベロープ (2018年4月26日). 2024年1月28日閲覧。
- ^ tomodachinoie (@tomodachinoie) - Instagram
- ^ “雑誌「グラインド」「オーリー」発行のミディアムが破産、負債額は2億5000万円”. Fashionsnap.com. (2020年3月9日) 2024年1月28日閲覧。
- ^ (倉方 2021, p. 3)
- ^ "「生きた建築ミュージアム・大阪セレクション」 第2期選定について" (Press release). 大阪市 都市整備局企画部住宅政策課まちなみ環境グループ. 27 September 2023. 2024年1月27日閲覧。
参考文献等
[編集]- 倉方俊輔、髙岡伸一『生きた建築大阪 2』140B、2018年、42-43頁。ISBN 978-4-903993-37-9。(共著であるが、本建物の項は髙岡による執筆。)
- 倉方俊輔 (2021年4月13日). “オクシモロン北浜 築100年超の長屋は「矛盾」が魅力”. 日経X WOMAN: pp. 1-4 2024年1月27日閲覧。(要購読契約)
外部リンク
[編集]- オクシモロン
- oxymoron (@oxymoron_curry) - X(旧Twitter)
- OXYMORON 北浜店 (@oxymoron_kitahama) - Instagram
- EMBANKMENT Coffee