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利用者:Yoichi Azegami/sandbox

ウィリアム・アディソン・ドゥイギンズ
William Addison Dwiggins
David Tripによるポートレート
生誕 (1880-06-19) 1880年6月19日
オハイオ州マーチンズビル英語版
死没 1956年12月25日(1956-12-25)(76歳没)
マサチューセッツ州ヒンガム・センター
別名 W.A. Dwiggins
W.A.D.
Dr. Hermann Püterschein
職業 書体デザイナー、カリグラファー、ブックデザイナー
配偶者 マーベル・ホイル・ドゥイギンズ
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ウィリアム・アディソン・ドゥイギンズ(William Addison Dwiggins, 1880年6月19日 - 1956年12月25日)は、アメリカの書体デザイナーカリグラファーブックデザイナー。イラストレーターおよび商業美術家として広告の仕事で頭角を現したのち、書体デザイン、ブックデザインの仕事へと移行した[1][2][3]。作風は装飾的かつ幾何学的で、ストリームライン・モダンアール・デコの影響下にある。東洋からの影響も受けていて、師や同僚であるアップダイク英語版クレランド英語版ガウディらの古典的なスタイルからは離れている[4][5]

経歴

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ドゥイギンズはシカゴでキャリアをスタートさせ、広告やレタリングの仕事に従事した。その後、広告の仕事に飽きたドウィギンスは主な仕事の領域をブックデザインに移し、1920年代から1930年代にかけてのブックデザインの著しい向上に貢献した。晩年は同僚のフレデリック・ガウディとともにマサチューセッツ州ヒンガムに移り住んで余生を送った。

広くグラフィックアートに関する著作を残し、なかでも『MSS by WAD』(1949年)に収められたエッセイや『Layout in Advertising』(1928年発行、1949年改訂)は現在でも広く読まれている。20世紀前半には「ヘルマン・プーターシャイン博士」(Dr. Hermann Püterschein)のペンネームでも出版活動を行った[6]

1919年にドゥイギンズが発表したこのグラフは、印刷規格についての自身の意見を風刺的に表現したものである。

『書籍の物理的特性に関する研究』(An Investigation into the Physical Properties of Books、1919年)では同時代のブックデザイナーを痛烈に批判し、出版社のアルフレッド・A・ノップフ英語版と共に仕事をするきっかけとなった。その後、精巧にデザインされた業界誌である『Alblabooks』(アルブラブックス)を出版し、書籍の形式に対する一般の関心を高めることに貢献した。

1922年には糖尿病の診断を受けた。糖尿病は、ドゥイギンズが仕事の領域をブックデザインに移すきっかけの一つとなった。ドゥイギンズは、「糖尿病は私の取り組み全体に革命をもたらした。平凡な広告の仕事から決別し、マーケットに注意を払うことをやめ、私自身の心のままに紙と木の芸術を制作することを決めた。」と述べた[7]。

1926年にはシカゴのレイクサイド・プレス社が展開した「アメリカの4冊の本」キャンペーンに起用された。 ドウィギンスは「すぐにゴミ箱に捨てられるようなものではない仕事」を歓迎すると述べ、エドガー・アラン・ポーの作品をデザインした。

彼と妻のメイベル・ホイル・ドウィギンズ(1881年2月27日 - 1958年9月28日)は、リーヴィット通り30の自宅とアーヴィング通り45のドウィギンズのスタジオに近い、マサチューセッツ州ヒンガムセンター墓地に埋葬されている。ドウィギンズの妻の死後、ドウィギンズの作品や資産の多くは、アシスタントのドロシー・アッベに引き継がれた[10]。

初とされるブルース・ケネットによるドウィギンズの長編伝記が、2018年にサンフランシスコのレターフォームアーカイブ美術館から出版された[11][12][13]。

書体

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ドウィギンズのレタリングへの興味から、ドウィギンズの才能と知識を感じたMergenthaler Linotype社は1929年3月にドウィギンズをコンサルタントとして雇い、サンセリフ書体を制作させた。これはErbar、Futura、Gill Sansといったヨーロッパの鋳造所から同様の書体が販売されていたが、ドウィギンズが小文字で失敗したと感じたことに対応してMetroが作られたものである[14]。 [ドウィギンズはその後Linotypeのタイポグラフィ開発ディレクターであるChauncey H. Griffithと良好な関係を築き、彼の書体はすべて彼らのために作られた[16]。 彼の最も広く使われている書籍用の書体であるElectraとCaledoniaは、Linotype組成用に特にデザインされており、クリーンなスパース性を備えている。

ドウィギンズは不運にも世界恐慌と第二次世界大戦を相次いで経験した時期にタイプデザインの世界に入ったため、彼のデザインの多くは実験的な鋳造の域を出なかった[18][19]。 彼の書体のいくつかは彼の死後初めて商業的にリリースされたり、それ自体はリリースされていないが他のデザイナーのインスピレーションとして使用されている。

一覧

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シリーズ名

ファミリー名

フォント名 制作年 ファウンドリー 備考
Metro英語版 Metrolite, Metroblack 1930年 Linotype
Metroは生産開始と同時にリデザインが開始された。当時人気のあったFuturaの特徴を取り入れるなどの変更が加えられ、Metro No.2として完成した。のちに制作された復刻版の中には、初期のデザインを採用したり、代替字形として搭載したりしているものもある。
Metroは生産開始と同時にリデザインが開始された。当時人気のあったFuturaの特徴を取り入れるなどの変更が加えられ、Metro No.2として完成した。のちに制作された復刻版の中には、初期のデザインを採用したり、代替字形として搭載したりしているものもある。
Metrothin, Metromedium 1931年
Metrolite No.2, Metroblack 1932年
Metrolite No.2 Italic, Lining Metrothin, Lining Metromedium 1935年
Metromedium No.2 Italic, Metroblack No.2 Italic 1937年
Metrolight No.4 Italic, Metrothin No.4 Italic
Electra英語版[7][8] Electra + Oblique 1935年 Linotype キャラバン・シリーズとも呼ばれるオーナメントも制作された[9][10][11]
Electra Bold + Italic
Electra Cursive 1935年
Charter Charter 1937–42 Linotype used only for one book, never released
Hingham Hingham 1937–43 Linotype cut in 7 pt. but not released
Caledonia英語版 Caledonia + Italic 1938 Linotype
Caledonia Bold + Italic 1940
Arcadia Arcadia 1943–47 Linotype used only for Typophile's Chapbook XXII, never released
Tippecanoe Tippecanoe + Italic 1944–46 Linotype used only for The Creaking Stair by Elizabeth Coatsworth, never released

Dwiggins's take on Bodoni

Winchester Winchester Roman + Italic 1944–48 - hand-cast by Dwiggins, not released by Linotype; the Roman was later digitized as ITC New Winchester
Winchester Uncials + Italic
Stuyvesant Stuyvesant + Italic c.1949 used for only a few books, Linotype, never released), based on type cut by Jacques-François Rosart in Holland c.1750.
Eldorado Eldorado + Italic 1950 Linotype
Eldoradoは写植版がリリースされず長らく無名になっていたが、1990年代初頭にFont Bureau英語版によってデジタル書体として復刻された。FB Eldoradoはオプティカル・スケーリングを早期に採用した商用デジタルフォントの一つである。画像は本文用のオプティカル・サイズ。
Falcon Falcon developed 1944 / released 1961 Linotype a "sharp-finished old-style" serif book typeface
Experimental 63 Experimental 63 c. 1929–32, never released - a humanist modulated sans-serif prefiguring Optima by 25 years, unknown to Zapf before 1969
Experimental 267D - intended as an answer to Monotype’s Times New Roman, but ultimately abandoned in favor of licensing Times itself.

インスパイア

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ドゥイギンズの死後、彼が残したさまざまなレタリングに触発されて書体が制作された。なお、これらはドゥイギンズが生前に承認したものではない。

  • Dwiggins Deco(2009, by Matt Desmond for MadType; based on a modular alphabet of geometric shapes made by Dwiggins in 1930 for American Alphabets by Paul Hollister[12]
  • P22 Dwiggins Uncial(2001, by Richard Kegler for International House of Fonts; based on uncial calligraphy by Dwiggins for a 1935 short story)[13]
  • P22 Dwiggins Extras(2001, by Richard Kegler for International House of Fonts; a set of decorations based on stencil and woodblock designs used by Dwiggins)
  • Dwiggins 48(a digitized set of initial capitals originally created by Dwiggins at 48-point size for the Plimpton Press[14]
  • Dossier(2020年、大曲都市が自身のファウンドリー「Tabular Type Foundry」のためにデザインしたもので、ドゥイギンズの作によるUnderwood英語版Remington英語版IBMのための未完成のタイプライター用フォントが元になっている[15]。)
  • Mon Nicolette(2020, by Cristóbal Henestrosa and Oscar Yáñez for Sudtipos; a significantly expanded revival of Charter in two optical sizes, complete with cursive capitals based on sketches by Dwiggins and a font of “Tuscan” initials like those accompanying Charter in printed proofs[16]
  • Marionette(2021, by Nick Sherman for HEX; based on sketches from 1937 illustrating Dwiggins's “M-Formula”[17]

デザイン手法

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Marionettes by Dwiggins
サイラス・ハイスミス英語版がデザインした書体「Quiosco」の見本画像。ドウィギンズが小サイズの書体をデザインする際に実践していた、文字の外側と内側の曲線形状に明らかな差をつける手法「M-formula」にインスパイアされている。
Marionettes by Dwiggins
LinotypeによるCaslon英語版の見本帳に使われているドゥイギンズのテキスト『How is one to assess』。

ドウィギンズがダイナミックな文字の形を作るために使った手法は、文字の内側のカーブと外側のカーブが一致しないようにデザイン し、カーブに急激な変化を与えることだった。これは、人形劇で使うマリオネットを彫るときの難しさからヒントを得たものである。その後、マーティン・マジョア英語版サイラス・ハイスミス英語版など、他のセリフフォントのデザイナーたちにも使われている。ジョナサン・ホフラー英語版はHinghamについて、「多くの珍しいものを含んでいる」とコメントしている。左上隅で最も重い小文字の「o」はただただ神秘的であり、左下隅で最も細い小文字の「e」もそうである」[18]

ドゥイギンズの活字デザイン以外にも、ドゥイギンズが『Layout in Advertising』で書いたフォントの選択に関する文章では、「なぜ印刷術のペースメーカーたちは、特定の活字の面を絶賛するのだろうか?彼らはそこに何を見ているのか」で始まるこの文章は、Lorem ipsumやQuousque tandem(カティリナ弾劾演説の有名な出だし)と同様に、多くの書体デザイナーにダミーテキストとして使用されている[19]

イラストレーションやデザインを担当した書籍

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1914年にドゥイギンズが制作したページ・デコレーション。
ドゥイギンズがプリンプトン・プレスのためにデザインしたイニシャル用活字。
  • The Witch Wolf: An Uncle Remus Story, Joel Chandler Harris (Bacon & Brown, 1921)
  • A History of Russian Literature, from the Earliest Times to the Death of Dostoyevsky, Prince D.S. Mirsky (Alfred A. Knopf, 1927)
  • The Complete Angler, Izaak Walton (Merrymount Press, 1928)
  • Paraphs, Hermann Püterschein (Alfred A Knopf for the Society of Calligraphers, 1928)
  • Beau Brummell, Virginia Woolf (Rimington & Hooper, 1930)
  • The Time Machine: An Invention, H. G. Wells (Random House, 1931)
  • The Lone Striker, Robert Frost (Alfred A. Knopf, 1933)
  • Hingham, Old and New, (Hingham Tercentenary Committee, 1935)
  • One More Spring",Robert Nathan, The Overbrook Press, 1935)
  • Thomas Mann: Stories of Three Decades (Alfred A. Knopf, 1936)
  • The Power of Print–and Men, by Thomas Dreier (Mergenthaler Linotype Co., 1936)
  • Theme and Variations, an autobiography by Bruno Walter (Alfred A. Knopf, 1947)
  • William Addison Dwiggins: Stencilled Ornament and Illustration (By Dorothy Abbe), Princeton Architectural Press, 2015 (ISBN 978-1616893750)

レガシー

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ドウィギンズが設立に関わった書籍出版関係者の団体であるブックビルダーズ・オブ・ボストンは、彼の死の翌年の1957年に、最高賞をW.A.ドウィギンズ賞と改名した。

ドウィギンズは1922年の論文で「グラフィックデザイン」という言葉を初めて使用したとする説が存在するが、調査によって否定され[20]、実際にはそれ以前から使われていたことが分かっている[21]

操り人形

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Marionettes by Dwiggins
Marionettes by Dwiggins
ボストン公共図書館に展示されているドゥイギンズのマリオネット

Dwiggins' love of wood carving led to his creation of a marionette theatre in a garage at 5 Irving Street, which was behind his home at 30 Leavitt Street in Hingham, Massachusetts. He also created a puppet group named the Püterschein Authority. In 1933 he performed his first show there, "The Mystery of the Blind Beggarman." Dwiggins built his second theatre under his studio at 45 Irving Street. Further productions of the Püterschein Authority included "Prelude to Eden," "Brother Jeromy," "Millennium 1," and "The Princess Primrose of Shahaban in Persia." Most of his marionettes were twelve inches tall.[41] The marionettes were donated to the three-room Dwiggins Collection at the Boston Public Library in 1967.[42]

関連書籍

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脚注

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  1. ^ Font Features - William Addison Dwiggins”. Linotype. 20 March 2017閲覧。
  2. ^ W.A. Dwiggins”. ADC Hall of Fame. ADC. 20 March 2017閲覧。
  3. ^ William Addison Dwiggins: Jack of All Trades, Master of More than One”. Linotype. 26 December 2015閲覧。
  4. ^ Dennis P. Doordan (1995). Design History: An Anthology. MIT Press. pp. 28–42. ISBN 978-0-262-54076-6. https://archive.org/details/designhistory00denn 
  5. ^ Abbe, Dorothy (6 October 2015). William Addison Dwiggins: Stencilled Ornament and Illustration. ISBN 9781616894634 
  6. ^ Gonzales Crisp, Denise (2009). “Discourse This! Designers and Alternative Critical Writing”. Design and Culture 1 (1). 
  7. ^ Parkinson Electra”. MyFonts. Linotype. 2 September 2015閲覧。
  8. ^ Adobe Electra”. MyFonts. Adobe. 2 September 2015閲覧。
  9. ^ Caravan (Electra ornaments series)”. MyFonts. Adobe. 2 September 2015閲覧。
  10. ^ Caravan”. MyFonts. Linotype. 2 September 2015閲覧。
  11. ^ Monotype Metro Nova”. Fonts.com. Monotype. 2 September 2015閲覧。
  12. ^ Dwiggins Deco”. MyFonts. MADType. 2 September 2015閲覧。
  13. ^ P22 Dwiggins”. MyFonts. IHOF. 2 September 2015閲覧。
  14. ^ Dwiggins 48 (Plimpton initials digitisation)”. Will-Harris. Intecsas. 2 September 2015閲覧。
  15. ^ Dossier”. MyFonts. Tabular Type Foundry. 14 March 2020閲覧。
  16. ^ Mon Nicolette”. Sudtipos. Sudtipos. 8 July 2020閲覧。
  17. ^ Sherman, Nick. “Marionette”. Fontcache. 5 February 2021閲覧。
  18. ^ Putting the Fonts into Webfonts – btconfBER2014”. YouTube. beyond tellerrand. 2021年12月21日時点のオリジナルよりアーカイブ8 September 2020閲覧。
  19. ^ Dwiggins, William Addison (1948). Layout in Advertising. Harper. p. 19 
  20. ^ 室賀, 清徳. “A *New* Program for Graphic Design”. The Graphic Design Review. JAGDA. 2022年11月22日閲覧。
  21. ^ Shaw, Paul. “W.A. Dwiggins and "graphic design": A brief rejoinder to Steven Heller and Bruce Kennett”. www.paulshawletterdesign.com. 2020年5月23日閲覧。
  22. ^ Dwiggins, William Addison. “WAD to RR: A Letter about Designing Type”. 29 March 2013閲覧。