利用者:Ktns/球面調和関数
代数的性質
[編集]加法定理
[編集]球面調和関数には「加法定理」と呼ばれる性質がある。これは三角関数における加法定理
を一般化したものと捉えることができる。上式の右辺は球面調和関数に、左辺はルジャンドル多項式に置き換えられる。
二つの単位ベクトル x および y を考え、それらの球面座標をそれぞれ (θ, φ) および (θ′, φ′) とする。このとき、加法定理は以下のように表わすことができる[1]。
ここで Pℓ はℓ次のルジャンドル多項式である。この表式は実数調和関数・虚数調和関数の双方について成り立つ[2]。この結果は単位球上のポアソン核の性質を用いて、あるいはベクトル y をz軸に沿うように幾何的に回転させたのちに右辺を直接計算することにより解析的に証明することができる[3]。
特に、 x = y の場合はウンゼルトの定理[4]
に帰着する。この式は一次元の三角関数における恒等式 cos2 θ + sin2θ = 1 を二次元に拡張したものとみなすことができる。
式 (1) の左辺 Pℓ(x·y) は ℓ次の帯球調和関数の定数倍である。この観点からすると、より高次元の場合にも次のように一般化することができる。Yj をn次元超球上のℓ次の球面調和関数の張る空間 Hℓ の任意の世紀直交基底とする。このとき、単位ベクトル x に対応するℓ次の帯球調和関数 は以下のように書き下せる[5]。
さらに、帯球調和関数 は適切なゲーゲンバウアー多項式の定数倍として表わすことができる。
x および y が球面座標で表わされる場合、 (2) および (3) を組み合わせると (1) が得られる。最後に、 x = y の場合を評価すると次の恒等式が得られる。
ここで ωn−1 は (n−1)次元超球の体積である。
クレブシュ–ゴルダン係数
[編集]クレブシュ–ゴルダン係数とは、二つの球面調和関数の和を球面調和関数で展開する際の係数である。ウィグナーの3-j記号やラカー係数、スレーター積分など様々な計算方法があるが、本質は同じである。抽象的には、クレブシュ–ゴルダン係数は二つの回転群の既約表現のテンソル積を既約表現の和で表わすときの係数と見ることができる。よって、適切に正規化すれば多重度と一致する。
パリティ
[編集]球面調和関数には、原点を不動点とする点対称操作に対して偶関数であるか奇関数であるかにより、パリティを定義することができる。原点を不動点とする点対称操作は のように表わすことができる。立体角で表わせば、 {θ, φ} を {π − θ, π + φ} に置き換える操作と表わせる。随伴するルジャンドル多項式は (−1)ℓ+m を、指数関数は (−1)m を与えるので、これらをあわせると球面調和関数のパリティは (−1)ℓ となる。
このことは、高次元に一般化した場合にも成り立つ。ℓ次の球面調和関数に点対称操作を施した場合、符号の変化は (−1)ℓ となる。
Notes
[編集]- ^ Edmonds, A. R.. Angular Momentum In Quantum Mechanics. Princeton University Press. p. 81
- ^ これはℓ次の球面調和関数のどんな正規直交基底にも成り立つ。
- ^ Watson & Whittaker 1927, p. 395.
- ^ Unsöld 1927.
- ^ Stein & Weiss 1971, §IV.2.