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利用者:仏徳師/委員会審議

予算委員会2013年 当初

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○山本委員長 これより会議を開きます。

 平成二十五年度一般会計予算、平成二十五年度特別会計予算、平成二十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高市早苗君。

○高市委員 おはようございます。自民党の高市早苗でございます。

 本日は、貴重な質疑時間を賜りました。同僚議員の皆様に心から感謝を申し上げます。

 本日の質疑でございますけれども、一部、自民党の政権公約二〇一二、そしてまたJ―ファイル二〇一二の記述を引用させていただきます。

 この小さい方の政権公約二〇一二は、昨年十二月十六日投票でございました総選挙におきまして、自民党本部から中央選挙管理委員会、つまり総務大臣に届け出をいたしました。これは正式な選挙公約でございます。そして、このJ―ファイル二〇一二、かなりボリュームのあるもので、中長期的な政策も含まれておりますが、我が党の総合政策集という位置づけでございます。

 本日は、安倍内閣が発足いたしましてから私にとって初めての質問の機会でございますので、まずは、総理の政治姿勢についてお伺いをいたします。

 第一に、国民との約束に対する姿勢について伺います。

 野党でございました三年三カ月、自民党所属の国会議員そしてまた支部長たちは、全国各地、歯を食いしばって歩き回り、多くの切実な声を伺い、そのお声を党本部に持ち帰って必死で議論を積み重ね、そして、その集大成として、この政権公約二〇一二を作成いたしました。

 まさにこれは、野党でしたから当たり前のことなのですけれども、各省庁の政策のホッチキスどめでもなく、官僚の声が入ったものでもございません。政策担当の国会議員たちが、みずからパソコンに向かい、文章を練り上げたものでございます。

 この政権公約なのでございますけれども、私たちが必死でつくったものでございます。まさに安倍内閣はこの政策を実現してくれる内閣、だからこそ、私たちは期待を持ち、そしてまた、大変厳しい問題もさまざまありますけれども、全党挙げて、一致して、安倍内閣をお支え申し上げている、そういう状況でございます。

 さて、安倍総理は、この公約をつくった当時も、そして今も自民党の総裁でございますけれども、この政権公約二〇一二に私たちが示しました理念、そしてまた各政策について、しっかりと守り抜いていただく覚悟はおありでしょうか。国民との約束についての総理の基本姿勢を伺います。

○安倍内閣総理大臣 まず、きょう誕生日を迎えられました高市委員が、自由民主党初の女性の政調会長として立派に職務をこなされておられますことに対しまして、改めて敬意を表したいと思います。

 自由民主党は、自由な議論のできる政党であります。そこで、自民党の政調というのは、時に非常に激しい議論を行います。これはまさに自分の政治信条をそこでぶつけるわけでありますし、地方の現場の切実な声がそこにあらわれてくるわけでありますから、それを取りまとめる政調会長の仕事は大変な御苦労だ、このように思うわけでありますが、昨年、我々が取りまとめた政権公約、そして政策集であるJ―ファイル、こうした我々の進むべき方向を示したものを国民の皆様にお示ししながら、我々は政権を奪回したわけであります。

 自由民主党という政党は、長い経験に裏打ちをされた責任感を持っております。つまり、約束は必ず守るということと同時に、結果を出していくということではないかと思います。そして、その間、まさにかんかんがくがくの議論をしていく、これこそが自民党のエネルギーであり、活力なんだろう、これからもそうしていきたい、こう思っております。

○高市委員 いい御答弁を賜りました。

 第二に、今のお話に共通することでございますけれども、政府・与党の一体感というものに対する総理の姿勢を伺わせていただきます。

 この日本の経済、そしてまた外交、しっかりとしたものにしていくためには、私は、政治の安定性、そして信頼性、責任性、これが必要だと考えております。これは、政権公約をつくりましたときに、冒頭文に総理自身がお書きになったことでもございます。

 この数年間で日本から急速に失われてしまったもの、それは、政治の意思決定プロセスの透明性であり、そしてまた法制度執行の安定性、公正性であったと私は思っております。選挙向けのパフォーマンスであったり、そしてまた閣僚や総理の思いつきの発言であったり、そういったものにより大きく政治は混乱した、その点は否めないと思います。欧州の議会議員選挙|全ギリシャ社会主義運動|自由民主党|大政翼賛会|
三職|共和国大統領|ギリシャの首相|ギリシア戦争|共産党|神奈川3区|立憲共和制|共和国大統領アメリカ合衆国大統領選挙|ローク・サバー|イギリスの首相(1743-1754)|中間選挙1

 特に、普天間基地移設問題でありましたり、それからまた復興、そして防災対策に関する姿勢でありましたり、いろいなものの混乱、これは目に余るものがございました。

 特に、こうした政治の意思決定、国がどちらの方向を向いているのかということがよくわからないですとか、それから、行政執行の現場で何がどう変わるのかわからない、こういった状況が続きますと、日本の企業立地の優位性も損なわれてしまいますし、外交においても他国からの信頼は得られません。


民社党|2012年アメリカ合衆国下院議員選挙|

 さて、このような中で、私は自民党の意思決定プロセスには大きな誇りを持っております。

 自民党では、まず、全ての法案についてなのでございますけれども、政調会の中の各部会で徹底的な議論がなされます。そこで反対意見がおおむねなくなるまで議論がされ、場合によっては、閣法でありましても皆が納得できる形に条文が修正されます。その後、政調審議会で審査をされ、さらには党の最高意思決定機関であります総務会で審議をされ、そこで党議決定となったものが、その後さらに、現在でしたら自公で組織されます与党政策責任者会議の場で審議をされ、閣法であっても、そこで初めて閣議決定が可能となるわけでございます。

 私は、こういう厳し過ぎるとも言われる自民党の意思決定プロセスに誇りを持っているからこそ、政調会長となりましてからは、むしろ政府と与党の一体感、ここに心を砕いてまいりました。

 総理にお伺いをいたします。

 さまざま御尽力はいただいているとは思うんですけれども、政府・与党の一体感、そしてまた政府・与党間の政策の整合性、これを確保するために特に心がけておられる点がありましたら、お伺いいたします。

○安倍内閣総理大臣 我々自由民主党は、野党時代の三年間、まさに政調において政策を鍛えて、来るべき戦いに備えてきたわけであります。

 そして、政権をとったらやるべきこと、ずっと、それを込めてきたのがまさに政権公約であったわけでありますが、政権をとった今日、基本的には政府と与党は一体でなければなりません。ただ、一体というのは、政府がやったことを党が唯々諾々とのみ込むということではなくて、それをまさに高市政調会長に期待しているわけではないですし、高市さんもそういうタイプではないというふうに私も認識しているわけであります。そこで大切なことは、最終的に決めたらそれに向かって一丸となっていく、それが自由民主党の、まさに長い歴史に裏打ちをされた伝統、責任感なんだろう、こう思うわけであります。

 しかし、それまでに至る過程においては、政調においては、まさに多くの議員の皆さんが地元で直接有権者からいろいろな声を聞きますね、それを吸い上げて政調で議論をするわけであります。時にはその声の方が、政府が吸い上げる声よりも正しいこともよくあるわけでありますし、そこからつくり上げられた政策こそが地に足がついているということもあるわけでありますから、時には政府といわば政調等との間に緊張感も生まれるし、政府が政調から上げてきたものを生かしていくということが当然あってしかるべきなんだろう、このように思っております。

○高市委員 ありがとうございます。

 まさに国民政党であります自民党、全国各地から吸い上げた声を、しっかりと政府にぶつけさせていただきます。

 マスコミで、政高党低、こう書かれている間は、まず、しっかりと自民党の公約を、また公明党も含めた与党の公約を政府が実施してくれている、実現してくれているということを党所属の議員が高く評価しているあかしだと安心していただいて結構なのでございます。反対に、党の声が大きくなっていけば、そこにまた政治の不安定感というものも出てまいりますけれども、政策をしっかりとマッチベターなものにしていくために、私たちも工夫をしてまいります。

 特に、これから出てくる政府提出法案につきましても、まずは党の政策との整合性、そしてまた、それが最も効果的なものであるのか、中長期的に見て国民の利益を最大化するものであるのか、無駄はないのか、こういった視点でしっかりとチェックをさせていただきます。

 第三に、内閣のあり方について伺います。

 私は、政治の安定性を確保するためには、閣内が統一されていることが大変大事だと思っております。

 今話題になっておりますTPPにつきましても、かつては猛烈に反対をされていた閣僚もいらっしゃいますし、そしてまた参加そのものに前向きな発言をされていた閣僚もいらっしゃいます。

 総理が今後どう決断されるかわかりませんけれども、その決断に際しましては、最後まで内閣が一体となって国民に対して責任を持つ、こういった環境は整えておられますでしょうか。

○安倍内閣総理大臣 安倍内閣には、さまざまな能力や才能を持った方々がおられます。個性の強い方もおられますし、主張の強い方もおられますが、しかし、もちろん、最終的に私が判断をすれば、全員が一丸となってその方向に向かっていく、そういう覚悟を持って安倍内閣に参画をしていただいた、このように思います。

○高市委員 安倍総理とは、過去約十五年にわたりまして、いろいろな政策について、ともに活動をしてまいりました。

 私自身が安倍内閣につくっていただきたいと考えております国家像、社会像について紹介をしながら、幾つか伺ってまいります。

 第一に、私は、国民の生命、領土と資源、国家の主権と名誉、これをしっかりと守り抜く国をつくっていただきたいと願っております。これは国の究極の使命でございます。

 例えば、日本の安全保障体制の脆弱性につきましては、過去にわたって、リスクに対する備えさえも認めない空気、これに政治がというか日本社会全体が支配されてきた。これが大きな原因でもあります。

 古い話でございますけれども、イラク戦争開戦の直前に政府内で開かれましたある会議で、開戦直後の初動態勢について、各省庁ですり合わせを今のうちにしておくべきではないかということを私が申し上げましたときに、今、平和のための外交努力をぎりぎりまでしているときに、仮に戦争になったらということで発言をされるというのはいかなるものか、そういった御意見もございました。当時、安倍総理は官房副長官で、その場にいらっしゃいました。

 しかしながら、国際政治の基本というのはネバー・セイ・ネバーでございます。むしろ、政府は最悪の事態を想定し、しっかりと準備をしていますと伝える方が、本当の国民の安心につながるんじゃないかと思っております。

 国防のみならず、想定を超えたとされました原発事故の発生、それから社会資本の劣化によります事故を防ぐための防災対策のおくれ、こういったものも、リスクの最小化をする、最悪の事態に備える、こういう信念を持って政府に取り組んでいただかなければなりません。

 安倍内閣では、世界最高水準の安全を担保するということを前提にいたしまして、タブーなき議論を行い、あらゆるリスクの最小化に資する制度設計をしていただきたいと考えますが、この点、いかがでしょうか。

○安倍内閣総理大臣 安倍内閣におきましては、希望を前提としないということであります。つまり、現状の認識についてはしっかりと認識をしながら、そして最悪の事態に備えていかなければならない、このように考えているわけであります。

 全ての面において、今、高市さんが指摘をされましたように、例えば外交、安全保障のように、もちろん、平和で安定した状況というのは誰もが望む状況でありますが、そういう状況を望むからこそ、そうならないように努力をしていく。そして、それが破られたときにはどういう体制を整えて国民の生命と財産を守っていくかということに備えていくことこそが我々の責任であろう、このように思っております。

○高市委員 第二には、雇用と所得が拡大する強い経済をつくっていただきたいと切望いたしております。

 私は、絶え間なくイノベーションが起こり、日本列島の隅々まで活発な経済活動が行き渡る国、これをぜひともつくっていただきたいと考えております。

 安倍内閣におかれましては、財政政策、金融政策、そして成長戦略、しっかりと強い意思を持って果敢に行動される、この兆しが見えておりますし、既に、政府、日銀の共同声明、これもすばらしいものでございましたので、この点は安心をいたしております。

 特に、政府、日銀の共同声明の中では、それぞれの役割分担というものが明確になりました。日銀法第四条にのっとりまして、通貨政策も経済政策の一環であること、だからこそ、政府と日銀が連携をしてしっかりと日本の経済を強くしていかなければならないこと、こういったことが定められているということ、これをしっかりと多くの国民の皆様が理解をされたと思います。

 日銀が金融政策をしっかりと担っていく、物価安定目標を達成していく。その手段、何の手段をとるか、これは日銀の独立性に係ることでございますが、また、経済財政諮問会議の方でしっかりと現在の物価の情勢、またこれからの見通しなども検証していただく。そして、政府はしっかりとした財政政策も行い、成長戦略も打ち、しかしながら健全化目標に向かって歩んでいく。この体制をしっかりと維持をしていただきたい、このように考えております。

 さて、第三に、私がつくっていただきたい国なんですが、これは総理に伺います。

 まず、行き過ぎた結果平等というものを排して、機会の平等が保障される社会というものをつくっていただきたいと思います。私は、ジェラシーに立脚した政策というものが余りにもふえ過ぎると、すぐれた人材も企業も育たないと思っております。過去の格差社会論の過熱から分配政策ばかりが歓迎されるようになって、リスクをとって努力をしている人や企業、こういった方々がたたかれて、反対に、伸びるモチベーションを奪い取る政治というものが続いたんじゃないかと思っております。

 むしろ、将来に向けては、教育政策にしても税制などにしても、出るくいを伸ばす発想、それから機会平等を保障する制度設計への移行というものが、日本の競争力を高め、産業空洞化を防ぎ、そしてまた多くの国民の所得をふやすことにつながるのではないかと私は考えております。

 大変理念的なことではございますけれども、今後の政策設計にかかわることでございますので、総理のお考えを伺います。

○安倍内閣総理大臣 まさに今、高市委員が指摘をされた、頑張った人が報われる社会。我々は選挙を通じて、頑張った人が報われる、流した汗が報われる真っ当な社会を取り戻す、これが自由民主党の大きなテーマであります。そのことを国民の皆様に御評価をいただいて我々は政権に戻ることができた、こう思っています。

 つまり、まさに誰にでもチャンスがある、そういう社会をつくっていくことがまず大前提であります。男性であろうが女性であろうが、年をとっていようが、あるいはまた障害があっても、誰にでもチャンスがある。

 今、生き方が多様化している中において、その考え方によって差別されることもない、そういう社会をつくっていく必要があるんだろう。そういうダイナミックな社会こそが、将来成長していく、そういう未来を手に入れることができると思います。

 ただ、もちろん、人は時によって、頑張っても、不幸にしてどうしても生活の基盤を失ってしまう場合があります。そういう方々に対しては、しっかりとセーフティーネットを張って、これはみんなで助け合っていく、こういう共助の精神とともに、誰にでもチャンスのある、結果平等ではないという社会をつくっていきたい。自助自立の精神を大切にする社会、頑張った人が報われる真っ当な社会をつくるために我々は全力を挙げていきたいと思っております。

○高市委員 今、正直者が報われる社会という方向性を総理から伺いました。まさに私がお願いしたい第四の点でございます。これは、強い経済ですとか社会保障の安定性、継続性にも係る考え方でございます。

 昨年、厚生労働省からいただいた資料によりますと、民主党への政権交代後約一年ほど、平成二十二年度には、生活保護不正受給の告発件数が前年度の倍となっておりました。

 社会保障制度というのは、勤勉に働いて税金や社会保険料を負担してこられた多くの国民の御努力によって成り立っております。一部の方が自分さえ得をすればと考えて行動することによって、ほかの納税者の負担が過大なものになってしまいます。

 過度の依存心をあおるばらまき政策というものを排して、福祉の不正利用をしっかりと排していく、これはもちろん、真に必要な福祉水準の確保を前提としたものでございますけれども、ぜひとも正直者が報われる公正な社会をつくっていただきたいと願っております。

 総理に二点伺います。

 平成二十五年度予算案の中で、公正な社会をつくることに配慮をされた新たな取り組みがあれば、御紹介をいただきたいと思っております。

 二点目は、さらに、前政権が行っていた政策の中で、総理が、過剰な依存心をあおるばらまき政策だと判断されて、廃止や縮小を決めておられる政策があれば御披露ください。

○安倍内閣総理大臣 今委員の御指摘のような正直者が報われない社会、これは、社会の根底、基盤を崩していくことにつながっていくと思います。

 そうした考え方も踏まえまして、平成二十五年度予算では、例えば今お話のあった生活保護について、制度の公正さに対する信頼性を確保する観点から、不正受給対策の強化を実施することとしております。

 そして、過度の依存心をあおらない観点から、公助に対する過度な依存が起きないようにするために、例えば子ども手当について、二十四年度から、所得制限を導入した児童手当として制度が見直しをされたわけであります。二十五年度においても、これを踏まえた内容となっております。

 また、縮小することを決めているわけではありませんが、高校無償化について、真に公助が必要な方々のための制度にすべきという自由民主党の主張を踏まえて、二十六年度以降については、所得制限を含めて検討してまいります。

○高市委員 今、生活保護制度のお話が総理から出ました。

 生活保護制度というのは、御自身が病気で働けなかったり、また、失業して次の職に恵まれなかったり、そしてまた、病気のお子さんや親御さんを抱えていてとても働きに出られない、本当に困っていらっしゃる方にとって大切な制度でございます。

 でも、勤勉に働いて制度を支えておられる多くの納税者が、何かこれは不公正だとか不公平だ、こういう感じを持ちますと、制度そのものの継続性が保てなくなってしまいます。

 厚生労働大臣にこの後お伺いをしたいんですけれども、これも厚生労働省からいただいた資料によりますと、東京都区内で、仮に、三十歳のお母さんが四歳と二歳のお子さんを育てておられる、こういった母子家庭があったといたします。そして、生活保護を申請された場合に、生活扶助そして住宅扶助を合わせますと、これは最大限の額でございますけれども、二十六万二千七百円、一カ月に受給される可能性があるわけでございます。

 一方で、東京都の最低賃金であります時給八百四十円でアルバイトをされて、一日八時間、そしてまた週に五日働かれる、そうした場合に得られる月収は十三万四千四百円でございます。

 そうしますと、フルタイムで働くよりも生活保護を申請した方が得だといったモラルハザードも起きかねない状態であるかと思います。

 そしてまた、生活保護法というのは、憲法第二十五条、生存権の規定が根拠でございますけれども、憲法二十五条は、健康で文化的な最低限の生活を営む権利というものを保障いたしております。

 厚生労働大臣に伺いますが、フルタイムでアルバイトをした場合に、今のような状況ですと、憲法に保障された最低限の生活も営めないという解釈にもなってしまいますけれども、この点をどうお考えでしょうか。

○田村国務大臣 まずは、政調会長、お誕生日おめでとうございます。これからの御活躍を御期待申し上げます。

 さて、御質問の件でありますけれども、確かに、最低賃金法にも、健康で文化的な最低限度の生活、労働者がこれを営めるように、生活保護の施策と整合性をとる、これに配慮する必要がある、こういうふうになっておりまして、それを踏まえた上で、それぞれの都道府県の、地方の最低賃金審議会、これでいろいろな議論をしていただいて、この最低賃金、生活保障の水準を逆転しているというのがありますから、これを解消できるようにということで御努力をいただいております。この五年間ぐらいで、十一、逆転していたんですけれども、徐々に解消されてまいりまして、今、六都道府県がまだ逆転しておる状況でございまして、これは解消に向かって御努力をいただくということであります。

 いずれにいたしましても、やはり経済状況がよくならないとこれが実現していかないわけでありまして、我々、そういう意味では、アベノミクスと言われておりますけれども、この経済対策、しっかりと実現をして、早期に解消できるように努力してまいりたいというふうに思います。

○高市委員 まずは、しっかりとした就労支援、健康で働ける方で就労を希望されている方に対しての御支援をお願いしたいということ、それから、御高齢の方で本当にお仕事もできない状態で、しかも生活保護を申請できずに命を落とされる大変痛ましいこともございますので、しっかりとケアができるようにお願いを申し上げます。体制をつくってください。

 第五に、私が求めております社会像でございますけれども、これは、世界最高水準の教育立国をつくっていただきたいということでございます。

 まさに教育というのは、国家の基本でございます。学校、家庭、社会がそれぞれの責任をしっかりと果たして、毅然と教えるべきことを教える、そしてまた、しっかりとしたしつけを行うことによりまして、日本社会が抱える多くの問題が解決に向かうと確信をいたしております。

 教育については、この後、幾つか具体的な点を下村大臣にお伺いしたいと思っております。

 ここで、東日本大震災復興についてお伺いをしたいのですけれども、四日後の三月十一日、東日本大震災発生から二年を迎えます。改めまして、犠牲になられた方々の御冥福をお祈り申し上げまして、また、御遺族の皆様にも、そして被災地で困難な生活をされている方々にもお見舞いを申し上げたいと思います。

 自民党の政権公約二〇一二でございますけれども、この中の最初に書いたのは、「まず、復興。ふるさとを、取り戻す。」という、私たちの強い決意でございました。

 自民党が政権に復帰してからまだ二カ月余りでございますけれども、まずは復興予算の増額、そしてその財源となりますフレームの拡大、それから復興関連税制の拡充、そして復興庁の司令塔機能の強化、こういったことに矢継ぎ早に対応してまいりました。しかしながら、被災地ではまだまだ、被災者の生活再建ですとか復興まちづくりを阻む多くの課題が存在いたします。

 そこで、自民党東日本大震災復興加速化本部では、大島理森本部長を中心に、緊急提言を取りまとめ、昨日、総理に対して、また復興大臣に対して申し入れを行ったところでございます。

 この中では、住宅宅地供給の見通しを目標として明示する工程表の早期の作成ですとか、それからまた、所有者が不明になってしまった土地もたくさんございます。こういった土地の権利調整を迅速化するための法整備の必要性なども盛り込まれております。この点については、今週冒頭からの衆議院本会議で前向きなお取り組みの答弁をいただいておりますので割愛をいたしますが、復興大臣、まず、きのう差し上げました与党の緊急提言、最後までお読みをいただいたかどうか、そして、この内容、全面的に御賛同いただける内容であったかどうか、御答弁をお願いいたします。

○根本国務大臣 きのういただいた復興加速のための緊急提言、じっくり読ませていただきました。大変幅広い、そして、現状と課題を分析されて、しかも、現地に何度も足を運ばれて、要は、魂のこもった提言だと私は思います。この提言に沿って、私もしっかり取り組んでいきたいと思います。

 特に、この提言で、「震災三年目の冬を希望持って迎えるために」、この副題、私もある種の感動を覚えます。この緊急提言の中で、「生活の再建への希望持って次の新年を迎えて頂く、われわれの復興に対する決意を示す象徴的な目標として、この達成をここに誓う。」私は、このとおりだと思います。

 ただいま高市委員からお話がありましたように、我々、新政権になって、精力的に、司令塔機能の強化あるいは財源フレームの見直し、復興加速策に取り組んでまいりました。

 今、全面的にというお話がありましたので、高市委員の御指摘になった事項について多少触れさせていただきますが、この提言もいただきましたが、具体的な対応策を二つ三つお話をしたいと思います。

 今お話のあった住まいの再建の工程表、これは、ぜひ見える化をしたいと思います。市町村別に、具体的な地区でどれだけの住宅が建っているか、この工程目標をしっかりとお示ししたいと思います。

 そして、土地の権利関係の御指摘もありましたが、いかに全体のプロジェクトをスピードアップするか、用地の問題あるいは土地の権利関係の問題、埋蔵文化財の問題、設計施工、この一連の事業をいかにして短縮するか、この具体策もパッケージでお示しをしたいと思っておりますし、復興交付金の柔軟化や、あるいは福島の早期帰還、定住のためのプラン、これも取りまとめて、本日の復興推進会議でお示しをし、決定をしたいと思います。

 とにかく、政府・与党一丸となって復興加速に取り組んでいきたいと思います。

○高市委員 ぜひよろしくお願いをいたします。

 この緊急提言で指摘を申し上げた事項の一つに、被災地のマンパワーの不足という課題がございます。特に、市町村の技術系職員の不足、まちづくりをするにしても、まず計画を立て、そして用地の買収をしたり換地をしたり、そしてまた補償をしていく、そしてまちづくりを進めていく、工事を進めていく、マネジメントも含めて、この一連の仕事にしっかりと取り組める人材の不足でございます。

 こういったことから、独立行政法人都市再生機構、いわゆるURでございますが、震災発生直後の二十三年四月から、被災地にまちづくりのノウハウを持った職員を多数派遣してくださっております。

 ことしの二月一日時点で、東北の十事務所に二百二十一名の支援要員を配置しておられます。また、平成二十五年度は十二事務所に三百名の派遣が必要となっております。そしてまた、平成二十六年度には、恐らく復興まちづくりがピークを迎える状態でございますので、まださらなる人員の派遣が必要になるんじゃないかと思っております。

 ところが、行革の取り組みの中で、このURも人員の大幅削減を続けておられます。そしてまた、民主党政権だった二十四年の一月二十日に、特殊会社化を検討すること、これが閣議決定されております。

 近年は、どうしても、公的な機能を果たしてきた組織について、とにかく人を減らすとか民間組織にするということが何となく世論に受ける、こういった空気もありまして、そういった空気に政治が支配されている部分もあるんです。しかしながら、被災地におけるマンパワー確保のためにはあらゆる手を尽くすこと、これが肝要だと考えております。

 行革大臣にお伺いをしたいのですが、このURの性急な特殊会社化そして大規模な人員削減というのは復興に水を差すことにもなりかねないと感じるんですけれども、安倍内閣においてはどのような検討をされているか、お答えください。

○稲田国務大臣 ただいま委員御指摘のように、URが被災地に職員を派遣し、まちづくりの復興の支援をしていただいていることは承知いたしております。一方で、URは、多額の有利子債務の存在、脆弱な財務状況など、やはり改革は必要だと思っております。

 今委員御指摘の昨年一月二十日の閣議決定は、安倍内閣で凍結をいたしております。これは独立法人の改革を凍結するということではなくて、独立行政法人の制度本来の趣旨に立ち戻って、今までの改革の検証、総括、改革の集大成ということで取り組んでおります。

 御指摘のように、被災地の支援、復興に支障がないように取り組むことは当然でございます。一方で、独立行政法人改革の全体状況を踏まえながら、国交省と密接に連携をとりながら、URの具体的な改革の方向性も取り組んでまいりたいと思っております。

○高市委員 この復興を進めるということは、政治の大きな責任でございます。そしてまた、首都圏、関西圏も含めまして、また四国地方、九州地方からもさまざまなお声をいただいておりますけれども、大震災発生のリスクを強く感じておられる中で、全ての国民の皆様にとっても人ごとではないことでございます。

 この三月六日に提出をいたしました緊急提言でございますけれども、これらの内容について、実施状況や効果、それから復興関連事業の進捗状況について、定期的に政府から与党に対して御報告をいただきたいのです。これは、与党だけということではなくて、ぜひとも全ての国会議員に対して報告の機会をいただければと思っております。その時点ごとに、新たに解決する課題、解決しなきゃいけない課題というのを把握して、私たち自民党内でも新たな課題への対応方法というものをしっかりと検討してまいります。

 復興大臣には、できましたら、与党に対しては、まずおおむね三カ月ごとに御報告をいただきたいんですけれども、ぜひともよろしくお願いいたします。可能でしょうか。

○根本国務大臣 私も、復興を着実に進めて加速していくためには、常に政策の総点検が必要だと思います。私も、その意味で、就任以来まず取り組んだのは、施策の総点検そして施策の再構築であります。

 高市委員御指摘のように、新たな課題、問題もどんどん出てまいりますから、定期的に御報告をして、政府一丸となって復興加速に取り組みたいと思います。

○高市委員 先ほど総理には、国民の命を守り抜ける政治、国づくりというものをお願いしたところでございます。

 平成二十四年度の補正予算そして二十五年度予算案では、学校、医療施設などの耐震化が盛り込まれております。

 ところで、現在、全国の自衛隊官舎の約一五%が築四十年を超え、二五%は築三十年から四十年だと聞いております。老朽化による非常に劣悪な住環境に加えまして、耐震構造に問題があるという指摘もあるやに聞いております。

 自然災害などの発生直後から、初動として動いていただかなきゃいけない、国民を守るために活動していただかなきゃいけない自衛官、そしてまた警察官、消防署員などが発災時に負傷して動けないようなリスク、これは最小化しておかなければならないと思いますし、任務に没頭していただくためには御家族の安全確保も必要でございます。

 これも、公務員宿舎など公的な機関の施設の建設や改修というのは厳しい国民世論もございますけれども、しかし、今は冷静に必要な対応を講じておかなければならない、そういう時期に来ているかと思います。

 これは総理になりますか、防衛大臣になりますか、安倍内閣には、緊急時の初動に係る公務員の身体の安全を守るために必要な施策としてこの官舎の耐震化も進めていただきたいんですけれども、今後の方針をお伺いいたします。

○小野寺国務大臣 東日本大震災におきましても、自衛隊員、大変な活躍をしていただきました。

 先ほど御指摘ございましたが、実は、防衛省・自衛隊の宿舎については、民間の借り上げ住宅を除く五万三千戸のうち、戦前戦中に建てられたものも含め、約二割に当たる一万二千戸が築四十年を超過するなど、老朽化が進行しております。

 このため、二十三年度より全国の宿舎を対象に耐震調査を行っておりまして、二十五年度の予算要求におきましては、宿舎の新築建設及び既存宿舎の補修、整備等に必要な経費ということで、二百二十八億円を計上させていただいております。

 我が省としましては、しっかりとした使い道を明確にした中で、耐震補修にこれからも努力をしてまいりたいと思います。

○高市委員 ありがとうございます。ぜひともよろしくお願いいたします。

 そして、国民の命を守り抜くために必要な政策といたしまして、防災教育、防犯教育、交通安全教育、これを強化しなければならないと考えておりますけれども、これに対しまして、予算措置も含めて十分な対応をとる御予定がおありかどうか、文部科学大臣に伺います。

○下村国務大臣 お答えいたします。

 東日本大震災などの自然災害や登下校中の子供が巻き込まれる交通事故が発生しておりまして、学校における安全の確保が重要な課題になっております。

 このような中、平成二十四年四月には、学校保健安全法に基づき、各学校における安全に係る取り組みを総合的かつ効果的に推進するため、学校安全の推進に関する計画が閣議決定されたところでございます。

 この計画を踏まえまして、二十五年度予算において、学校安全の充実に総合的に取り組む子ども安心プロジェクト、予算案は三億四千万円でございますが、これを措置いたしまして、一つに、東日本大震災の教訓を踏まえた新たな防災教育の指導方法の開発普及、そして二つ目に、教職員や児童生徒等の防災、防犯、交通安全に対する意識の向上を図るため、学校安全教室の講師となる教職員を対象とした講習会の開催、三つ目に、通学路の交通安全を確保するため、専門的な見地から必要な指導助言を行う通学路安全対策アドバイザーの派遣、このような事業を実施することとしております。

 今後とも、子供の安全を確保するため、学校における安全教育に積極的に取り組んでまいります。

○高市委員 下村大臣、御就任以降、次々に、我が党の政権公約に書いた事項も含め、そしてまた、これは下村大臣御自身が教育再生本部の本部長としてまとめられたことでございますけれども、しっかりと実行に移していっていただいている。強く期待を申し上げております。ぜひとも安全教育、よろしくお願いをいたします。

 海外に滞在する日本人の命を守り抜く、これも政府の重大な責任でございます。

 ことし一月には、アルジェリアで、本当に昼夜を分かたず働いておられる十名もの日本人が、卑劣なテロによってとうとい命を落とされました。改めまして御冥福をお祈り申し上げます。

 このアルジェリアの事件、これは非常に鮮烈な印象を私たちは受けたんですけれども、平成十六年の四月にも、ボランティアや絵本作成を目的としてイラクに入国された三名の日本人が拘束された事件がありました。このときには、事件発生から八日目に三名の方々は解放されたんですが、同じ年の十月には、ニュージーランドからイスラエル経由でイラクに入国された若者がテロ組織に誘拐され、このときには、殺害されてしまうという、大変つらい、最悪の結果となりました。

 現在、朝鮮半島情勢も必ずしも安定した状況ではない、リスクが高い状況だと考えるのですが、韓国にも約三万二千八百名の日本人が滞在しておられます。今や、在外邦人の安全をいかに確保するか、そして、万が一犯罪に巻き込まれたときにいかに救出をするかということは、避けては通れない問題になっていると思っております。

 私は、政調会長就任後でございますが、自民党の政調の中に、在外邦人の安全確保に関する特命委員会を設置いたしました。また、インテリジェンスに関する特命委員会も設置いたしました。それぞれ、委員長として、中谷元先生、そしてまた岩屋毅先生に御活躍をいただいております。また、自公の与党政策責任者会議にも在外邦人の安全確保に関するプロジェクトチームというものを設置し、これは、政府と連携しながら、今さまざまな対応を取りまとめているところでございます。

 とにかく、早急に、できることから順次実行していく、これが大変重要なことだと考えております。

 まず、在留届の提出義務の周知徹底について伺います。

 旅券法第十六条は、居どころを定めて海外に三カ月以上滞在する日本人については、領事館に届け出なければならないと規定をしております。この届け出は義務ではありますけれども、罰則規定はございません。

 仕事や留学などで海外に滞在される日本人が自分で身を守るためにまず必要なのは、滞在地域の治安情報でございます。この在留届を提出された方は、そこに記載したメールアドレスに在外公館から治安情報や自然災害情報などが送信をされております。

 外務大臣に伺います。

 この在留届の提出義務というものが法律に定められているということについて、御存じない方も多いんじゃないかと思うのですけれども、在外邦人の安全確保のために、まず、この周知徹底をされる御用意がおありかどうか、伺います。

○岸田国務大臣 御指摘のように、在留届の提出につきましては、旅券法第十六条によって、三カ月以上海外に滞在する方に義務づけられております。

 この在留届につきましては、海外における事故ですとか事件あるいは災害等緊急事態の発生の場合に、危機情報の提供ですとか安否確認、こうしたことのために、できる限り正確な情報の保持は極めて重要だと認識しております。この広報啓発に努めなければならないという御指摘、そのとおりだと認識をしております。

 そういったことから、より周知徹底を図るために、例えば、インターネットを通じて在留届を提出することができる在留届電子届け出システム、ORRネットの活用促進、さらには、在留届を出された方も、帰国とか転出された際にそのままにされることによって在留届の正確性が低くなってしまう、こういった事態もあります。

 こういった事態の周知徹底、これにまず努めなければいけないと思っていますし、さらには、治安の悪い地域においては三カ月未満の滞在の方の情報把握、これも重要だと思っています。この部分につきましては、検討が必要だということで、今検討を行っている、こうしたことであります。

○高市委員 今問題意識を持っていただいたので、外務大臣におかれましては、ぜひとも早急にその対応をしていただきたいと思います。

 民間のツーリストですとか交通機関関係の会社にも協力を依頼する、そして、海外に展開される企業にもこの内容を徹底していただく。これは経済産業大臣にも御活躍をいただかなければいけない点かもしれませんが、ぜひともよろしくお願いいたします。

 外務省は、各国の渡航情報というものを海外安全ホームページに掲載し、随時更新をしております。例えば危険情報もこの中に入るんですね。

 平成十六年のイラク邦人拘束事件の折にも、外務省は、イラクにおけるテロ攻撃や誘拐の危険についての注意喚起をずっと続けておりました。事件発生前年の二月十四日以降で見ますと、イラクに滞在する全邦人に対して退避勧告、これを継続して発出し、そして、日本からイラクへの渡航については、どのような目的であれ延期と勧告をしておりました。

 当時、本当に危険な状況にある国については、勧告などではなくて、渡航禁止命令ですとか退避命令のような強制的な措置というのはとれないのだろうかと思いまして、外務省に問い合わせたことがございました。しかし、憲法二十二条が保障する海外への移転の自由に抵触するということ、そして、仮に、一般旅行者に対して渡航禁止措置をとれても、邦人保護のために渡航される政府の職員ですとか、それからまた、報道のために出られるマスコミの方々を例外にするということになると、これは、憲法十四条が保障する法のもとの平等に抵触する、こういった理由から、強制的な措置というのは不可能だということでございました。

 仮に憲法を改正してこの制約がなくなったとしても、運用面では、第三国経由で危険地域に入る国民をとめる方法がない、こういった限界もございます。しかしながら、海外で誘拐事件、拘束事件が発生した場合には、邦人を救出する、保護するために莫大なコストもかかり、また人員も要することでございます。私は、日本国憲法が国民に保障している自由や権利というものについて、憲法第十二条では、濫用してはならないこと、常に公共の福祉のために利用する責任というものを求めているわけでございますので、個人の権利に対して一定の制限をかけることは可能なのではないかと考えているものでございます。

 外務大臣に伺いますが、重大な危険が予測される場合でも、政府が渡航禁止命令や退避命令を出すということは、憲法第十二条の規定にのっとってもやはり憲法違反になるんでしょうか。

○岸田国務大臣 危険地域への渡航禁止命令、さらには避難命令については、憲法で保障されている渡航の自由との関係もあり、法的な面も含めて、さまざまな視点から慎重に検討する必要があるとは考えています。

 ただ、こうした渡航の自由とて、これは無制限に認められるものではないと思います。合理的な制約が可能なのかどうか、こうした視点で慎重に検討していく必要がある課題だと思っています。

○高市委員 慎重に検討していくという言葉がどっちの方向なのかよくわかりませんが、ただ、合理的な制限、これが可能なのかどうか、ぜひとも、大変難しい問題ではございますけれども、岸田大臣の間に検討を進めていただければありがたいと思います。

 それより何よりも、やはり時代に合わなくなった憲法の改正を私たちはしなければならないと思います。

 日本国憲法は、本当に、強い私権、個人の権利を認めております。これはある意味で、私たちにとって恵まれたことでもあるんですけれども、最近起きているさまざまな事象を見ますと、その規定によって、いろいろと対応できない問題が出てきているのも事実であると思います。

 例えば、外国資本が自衛隊または海上保安庁の基地の周辺の民間建物を買っている、場合によっては部隊の展開などが丸見えである、こういった場所もございます。これに対応する議員立法をということで作業を進めてまいりましたけれども、かなりこれは財産権との関係で難しい作業になっております。

 これまでも、森林法の改正案、これも、外資による水源林の買収という問題が進んでおりましたので、議員立法で提出し、何とか、民主党を初め各党の御協力も得て、最後は委員長提案という形で成立をいたしました。

 しかし、これはなかなか難しい問題も多々残されておりますので、ぜひとも、時代に合った憲法、日本の心と、そして日本人の手による、そういった憲法をつくってまいりたい、これは私の決意でもありますし、多くの国会議員がそう考えていることだと思っております。

 さて、自衛隊法の改正について、お答えになりにくいかもしれませんけれども、防衛大臣に伺います。

 現行法では、海外で私たちが危険な状態に巻き込まれたとしても、とにかく現地の空港までは自力で脱出をしなきゃいけない。そこまでは自衛隊機が迎えに来てくれたとしても、やはり陸路の移動というのが大変難しい問題になっております。

 そこで、平成二十二年、これは大臣が代表提出者であり、私自身も提出者の一人でございますけれども、議員立法で自衛隊法改正案を自民党は提出いたしました。野党議員が提出した議員立法であったということもあり、国会の中では、委員会につるされたままそれが続きまして、結局、昨年の解散で廃案となったものでございます。当時は、朝鮮半島情勢の悪化、これを念頭に、一刻も早くということで立法作業を急いだわけでございます。

 自衛隊法を仮に改正したとしても、自衛隊をそのときに海外に本当に派遣するかどうか、これはその時々の政権が的確に判断されるべきものでございます。しかしながら、仮に、当該国、相手の国に日本人を守ってくださる人員がない、能力がない、こういった事態も想定しながら、やはり備えとしての法整備、リスクの最小化、これはしっかりと確立しておかなければなりません。法律に規定がなければ自衛隊もそのための訓練も行えませんから、私たちは大変急いでおります。

 また、これは議員立法で出したんですけれども、しかしながら、実力部隊が場合によっては海外に展開するという性質のものですから、やはり閣法として提出されるのがベストだと私は考えております。

 あすにでも危険な状態が起こる、邦人が危険に巻き込まれるという可能性はゼロではないわけでございますので、今国会に必ず自衛隊法改正案を閣法として提出していただきたい、こう望んでおります。小野寺大臣、いかがでしょうか。

○小野寺国務大臣 在外邦人の保護というのは、政府の重要な責務であります。その体制については、不断に検討を行うことが必要だと思っております。

 私も、高市委員もそうですが、三年前に、在外邦人保護の強化のための自衛隊法改正の議員立法を提出したことがございます。

 今御指摘がありました自衛隊法八十四条の三でありますが、これによりますと、邦人の輸送というのはあくまでも航空機もしくは船舶に限られております。ですから、先ほどお話がありましたように、空港まで来てくれれば運べるというような状況になっております。

 今般、アルジェリア事件の検証報告でも述べられておりますように、防衛省としては、派遣先国においてさまざまな輸送ニーズに対応できるよう、陸上輸送も含む現地での自衛隊の運用について研究し、現行法制で十分か検討したいと考えております。

 この際、派遣される隊員が現場で困ることのないように、不測の事態への対処、そして何より、武器使用のあり方についても研究する必要があると認識をしております。現在、与党の中で議論されていると伺っておりますし、省内でも検討させていただいております。

 今後、官邸や与党とも相談をしながら判断していきたい、そのように思っております。

○高市委員 今国会での提出をぜひともお願いいたします。全力で、また各党と御相談を申し上げながらサポートいたしますので、強い決意で臨んでいただきたいと思っております。

 先ほど、領土と資源、国家の主権と名誉、これを守り抜ける国をつくってほしいと総理にお願いをいたしました。ここで、教育や啓発活動も大変重要な要素になるかと思います。

 領土教育について伺います。

 第一次安倍内閣によります教育基本法の改正を受けまして、学習指導要領も改訂をされました。この中には、領土、国家主権について、「基本的な事項を踏まえて理解させるように留意すること。」と明記をされております。

 しかしながら、現在使用されております一部の教科書を見ますと、こういう記述がございます。日本海に位置する竹島については、日本と韓国の間にその領有をめぐって主張に相違があり、未解決の問題となっています、また、東シナ海に位置する尖閣諸島については、中国もその領有を主張していますと書かれてありまして、竹島や尖閣諸島が日本国の領土であるということの正統性には触れられておりません。

 かつて北朝鮮が延坪島を攻撃したときに、当時の李明博大統領が、一つになった国民が最強の安全保障である、こう述べられたことが非常に強く印象に残っております。また、韓国の小学校が独島特別授業、竹島に関する特別授業を行っている様子も何度も日本のテレビで紹介をされました。

 とりわけ、領土や資源、こういうものを守り抜くために政府が強い外交力を発揮する、その上では、領有権について正しい知識を持つ国民による世論の後押しというものが大変必要だと考えております。

 下村大臣、日本の領土教育というのは不十分だと私は感じますけれども、教科書の記述内容の検証ですとか教材や教員研修の充実強化につき、御予定があれば教えてください。

○下村国務大臣 お答えいたします。

 我が国の将来を担う子供たちが自国の領土を正しく理解することは極めて重要であるというふうに思います。

 学習指導要領では、小学校から高等学校までの各学校段階におきまして、我が国の位置と領土や、北方領土など我が国の領域をめぐる問題などについて指導を行うことが明記されております。これに加えて、竹島については、平成二十年七月の中学校学習指導要領の解説において、新たに記載するなどの充実を図ったところでございます。

 これを受け、教科書については、北方領土の記述に加えて、今年度から使用している全ての中学校地理の教科書において竹島の記述がなされるとともに、来年度以降使用される全ての高等学校地理の教科書において竹島や尖閣諸島の記述がなされるようになったところでございます。

 しかし、中学校における尖閣諸島の取り扱いについては、全ての教科書に記述がされているわけではございません。学習指導要領やその解説の不断の見直しをこれから行っていく中で検討していくことが必要であるというふうに認識しております。

 文部科学省としては、新学習指導要領に基づき、領土に関する教育が各学校で今まで以上にしっかりと進められるよう、関係省庁とも密接に連携協力をしつつ、積極的に取り組んでまいります。

○高市委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 下村大臣は、かねてから、教科書の採択現場も改革されるということでお話をされています。日教組の影響を強く受ける採択現場の現状から、不適切な教科書が採択されるというお話でございますけれども、それ以前に、私は文部科学省の責任は大きいと思っております。つまり、検定段階で教科書調査官がしっかりと、教育基本法の理念、学習指導要領に書かれたこと、これと見比べながら、不良品である教科書を排除する、これをもとからやっていただく、ここのところが大事だと思いますので、ぜひともそちらの方もよろしくお願いをいたします。

 さて、自民党のJ―ファイル二〇一二には、政府主催で、二月十一日の建国記念の日、二月二十二日を竹島の日、四月二十八日を主権回復記念日として祝う式典を開催しますと書いております。主権回復記念日につきましては、この後、野田毅委員からも御質問があるかと思いますので割愛をいたしますけれども、総理におかれましては、来年こそ、建国記念の日と竹島の日の式典について、政府主催で開催されるおつもりはおありでしょうか。

○安倍内閣総理大臣 建国記念の日については、建国をしのび、国を愛する心を養うという趣旨により設けられた国民の祝日でもあり、政府主催の式典の開催については、こうした趣旨等を踏まえて検討していきたいと思います。

 今回は、なかなか時間的な制約もあり、行うことができなかったわけでありますが、来年以降、主催に向けて検討していきたい、このように思っております。

 そして、竹島の日は、島根県が県の条例により、竹島の領有権の早期確立を目指した運動の推進等を目的として定めているというふうに思います。政府主催の竹島の日の式典開催については、今後適切に検討していきたいと思っております。

○高市委員 ことしに関しましては、政権発足後間もなかったことから、会場の手配、さまざまな検討というものが間に合わなかったことと承知をいたしております。J―ファイルに書かせていただきましたので、今後の課題として、ぜひ前向きに検討を進めていただきたいと思っております。

 自民党の政調会では、今、新人議員の研修活動というものを進めておりますけれども、春に北方領土の視察を企画いたしております。実は、これは山本一太北方対策大臣からのリクエストでございます。

 北方領土の返還に関しましては、返還交渉そのものは、総理でありましたり外務大臣でありましたり、上のレベルで検討されるものでございますけれども、北方担当大臣の大きな任務といたしまして、国民世論の啓発活動がございます。

 さて、この際、山本一太カラーを出した新たな啓発活動の企画、お持ちかどうか伺います。

○山本国務大臣 高市政調会長、沖縄北方対策担当大臣経験者としていつもアドバイスをいただいて、ありがたいと思っております。

 国内啓発は、まず隗より始めよということで、今お話ございましたが、今回、衆議院選挙で当選した百十九人の自民党議員全員に根室まで足を運んでもらって、そこから、納沙布岬から直接北方領土を見ていただいて、資料館に行っていただいて、元島民の方々と意見交換をしていただく、そういう研修会の開催を政調会長にお願いをして、実現の一歩手前まで参りました。ぜひともこの実現に力をかしていただきたい。北方担当大臣、そして新しく設けられた領土担当大臣としてお願いを申し上げます。

 その上で、山本カラーの話なんですが、御存じのとおり、北方領土問題の重要性というのは国民各層に訴えていかなければいけない。しかし、高市政調会長御存じのとおり、特に若い方々に認知度が低い。二十代の方々に至っては二割しかないということで、インターネット等を通じた発信を強化していきたいということで、今、インターネットテレビGyaOでCMを流し始めました。間もなく、いわゆるソーシャル・ネットワーキング・サービス、SNS、ツイッターやフェイスブックにもアカウントを設けて、双方向の発信というのを始めたいというふうに思っています。

 加えて、経済界、企業と協力してキャンペーンを展開するということを考えていまして、去年、サッポロビールの協力で、あるイベントにブースを出させていただいて、二万人の方が訪れました。ことし、今回の二十五年度予算でつけたんですけれども、二千二百社の上場企業に連絡をとって、北方領土問題のアンケートを実施して、それを踏まえて、協力していただく企業を探す、イベントを打っていただけるのであればそれをカバーする運営費も渡す、こういうこともやっていきたいと思います。

 去年就航した「えとぴりか」という四島交流船がありますので、事業期間以外もぐるぐる日本じゅうを回ってもらって、今のところ六つぐらいの港を考えているんですが、できれば、東京も含めて七つぐらいのところで洋上研修をやる、青少年に対するいろいろなセミナーをやる、展示会をやる。こういうこともやってまいりたいと思いますし、イメージキャラクターでエリカちゃんというのもいるんですけれども、実はエリカちゃんが行くと随分集客の人数が変わるものですから、少しエリカちゃんもふやしていきたいと思っています。

 いずれにせよ、戦後もう六十七年もたって、高市政調会長御存じのとおり、返還要求運動の関係者も随分高齢化をして、元島民の方々もかなり高齢化をしていますので、いろいろ新しい手法も使いながら、粘り強くこのキャンペーンをやっていきたいと思いますので、引き続き、いろいろとアドバイスをいただければと思います。

○高市委員 就任後二カ月余りでいろいろなことを検討していただいている、大変うれしく思います。

 ぜひとも、キャラが立っている山本大臣におかれましても、エリカちゃんと一緒にぐるぐる日本じゅうを回っていただき、より効果的な活動を推進していただきたいと思います。

 ぜひとも、文部科学大臣ともしっかり連携をお願いいたします。

 総理には、先ほど、強い経済を取り戻していただく、このお願いもいたしました。一人でも多くの国民が、働く機会に恵まれ、安心して豊かな消費生活を楽しみながら、広く薄く社会のコストを負担できる主体として生活をしていただく、こういうことが経済のパイの拡大にもなり、そしてまた財政健全化を実現する道を開くものでもあると思っております。

 そのためにも、今こそ我々日本人は、日本人の矜持でありました自立と勤勉の倫理を取り戻していかなければなりません。

 この点につきましては、総理の施政方針演説が、一身独立して一国独立する、この言葉から始まったことによりまして安心はしているのですけれども、ただ、予算措置の中で多少気になることがあるので、伺います。

 キャリア教育についてでございます。

 第一次安倍内閣のときには、内閣府、文部科学省、経済産業省、厚生労働省が連携しまして、キャリア教育等推進プランを取りまとめました。今も当時も変わらないのかもしれないのですけれども、せっかく就職をしたのに三年以内に自分からその職場をやめてしまわれる若者の割合、中学校卒業の方で七割、高校卒業の方で五割、大学卒業の方でも三割、こういう状況でございました。

 当時の安倍総理も、福祉から就労へ、この理念を閣僚に伝えておられましたので、私自身は、青少年施策を担当する立場から、これはやはり、子供のころからしっかりとした職業観、勤労観というものを醸成し、そしてまた、インターンシップなどの機会もふやし、できるだけ皆が職業生活にスムーズに入っていける、こういう環境を整えなきゃいけないと思って、政策を構築したものでございます。

 麻生内閣が編成をされた平成二十一年度の当初予算を見ますと、キャリア教育、職業教育に六億四千三百万円が措置されておりました。その後、民主党の事業仕分けによりまして、自治体の判断に委ねる、こう判定されまして、平成二十二年度から二十四年度では国の予算措置がなされておりません。

 昨年、地元で、私立学校から、キャリア教育実施のために職員も採用して準備を進めていたんですけれども、お金が来なくなった、こういう苦情も伺いました。

 自民党のJ―ファイルには職業教育、キャリア教育の強化というものを明記いたしましたので、自民党の政調会では、キャリア教育推進特命委員会というものを新たに設置し、推進に向けての取り組みをしているところでございます。

 文部科学大臣に伺います。

 キャリア教育、職業教育について、国における予算措置の必要性、そしてまた適切な規模についてどうお考えでしょうか。

○下村国務大臣 お答えいたします。

 厳しい雇用情勢や若者の無業、早期離職等、これは先ほども委員から御指摘がありましたが、学校を卒業して就職三年以内ですと、今、もっとたくさんの離職者がふえているということで、さらに問題が深刻化しているというふうに思います。社会的、職業的自立に必要な能力や態度を身につけさせるキャリア教育、また、実践的な知識、技術及び技能を身につけさせる職業教育を充実させる、これは極めて重要なことであるというふうに思います。

 このため、平成二十五年度予算案においても、学校、産業界、NPO等幅広い主体が参画し、地域に密着した支援を行う地域キャリア教育支援協議会の設置促進に必要な経費を新しく盛り込むことにいたしました。予算は四千三百万円でございます。

 それ以外に、成長分野などにおける中核的専門人材養成の戦略的推進に必要な経費を大幅に拡充いたしました。二十四年度予算額が四億七千九百万円に対して、二十五年度は十一億三百万円でございます。

 国として、各学校や各地域における先進的な取り組みを促進するために、しっかり対応していきたいと思います。

 また、現在、政府の若者・女性活躍推進フォーラムにおいて、キャリア教育についても議論が行われているところでございまして、文部科学省としては、学校におけるキャリア教育、職業教育の一層の充実に向けて取り組んでまいります。

○高市委員 元気な若者がしっかりと働くこと、これも重要でございます。

 しかし、私は、定年退職された方、また子育て中の女性の方々、そしてまた障害を持っておられる方々が、ライフステージごとの生活スタイルに応じて御自宅の近くで働ける場所をふやす、これも大変大切なことだと考えております。

 先ほど、総理には、日本列島の隅々まで活発な経済活動が行き渡る国、これをつくってほしいとお願いを申し上げました。個人的には、テレワークの推進、また、農商工連携、福祉工場、こういったものの推進に力を入れているところでございます。

 その私が大変高く評価していたのが、六十歳以上の方々が、家庭ですとか事業所、官公庁から臨時的、短期的な仕事を有償で請け負っておられるシルバー人材センターの取り組みでございました。

 これは、年金収入を補完して長寿社会における自立した生活を目指せるということ、それからまた、地域社会の一員として生きがいも感じていただけるということ、働くことで健康を維持することによって医療、介護の財政負担軽減に貢献できること、こういった意義もあるかと思いました。

 ところが、このシルバー人材センターの援助事業でございますが、民主党の事業仕分けで、予算要求の縮減と判定されました。麻生内閣が編成された二十一年度の予算では百三十五億九千四百万円計上してくださっておりましたが、野田内閣の二十四年度予算では九十一億四千百万円になり、三二・八%も減額をいたしました。

 自民党のJ―ファイルには、シルバー人材センターの活用ということを書いております。ところが、第二次安倍内閣が編成された平成二十五年度予算では八十九億五千五百万円で、全く重点化されておりません。

 ここは私が実は不満に思っているところでございますが、このシルバー人材センター援助事業の減額の理由は何なのか、そして、安倍内閣においては、高齢者の地域雇用機会をふやす取り組みについて、どういう施策を考えておられるのか、厚生労働大臣にお願いいたします。

○田村国務大臣 ありがとうございます。

 シルバー人材センター事業でありますけれども、これは、事業量を減らしたというよりは、不必要な額を適正化したということでございまして、そういう意味では、事業自体、二十四年度並みということでございます。

 あわせて、このシルバー人材センターで働く方々が、労災にも適用されない、それから健康保険も使えないというお話がございましたので、この国会で、実は、それが適用できるような形で法案を提出させていただく予定でございます。

 今、高齢者の方々の働く場というお話がございました。生涯現役社会実現環境整備事業というものをこの国会に、予算の中に提出をさせていただいておるわけでありますけれども、あわせて、シルバーワークプログラムというもの、これは、言うなれば、お年寄りの方々が一回リタイアされて、その後、例えば技能講習でありますとかそれから面接会でありますとか、そういうようないろいろなものに対してのお手伝いをするという事業であります、これを拡充させていただいたりでありますとか、それから、高年齢者の就労総合支援事業、こういうものも今年度、この予算の中に盛り込ませていただいております。

 とにかく、有識者の方々に、高齢者の方々の働く場、活躍する場、こういうものを御検討いただくことも含めて、これからも厚生労働省といたしましてしっかりと御支援をさせていただきたいというふうに思っております。

○高市委員 安心をいたしました。

 さて、もういよいよ質問時間も終わりでございます。日本人は、自立と勤勉の倫理を大切にする一方で、困ったときにはお互いさまと助け合える地域のきずなも築いてまいりました。また、子供のしつけ、豊かな教育に心を砕いてきた民族でもございます。そして、高度な技術力、人材力、きめ細やかなサービス心、美しい自然と伝統文化、そしてまた良好な治安、清潔な社会を誇ってまいりました。これは、かつては世界一とされた国際競争力の源でもございました。

 私は、日本と日本人の力を信じております。日本の強みをしっかりと生かしながら力強い未来を切り開いていきたい。政府・与党一丸となって取り組んでまいる、次の選挙よりも次の時代を考えて取り組んでまいる、この思いをお伝えいたしまして、私の質問を終了いたします。

 長時間ありがとうございました。

○野田(毅)委員 引き続いて質問をさせていただきます。

 総理には、御就任以来、超多忙の中で、本当に元気に御活躍をいただいております。どうぞ引き続いて頑張っていただきたいと思います。

 そして、就任されてから、珍しいことだと言われていますけれども、調査のたびに支持率が上がっている、株価も上がってきている、大変喜ばしいことだと思います。今日までの御努力に敬意を表しますと同時に、この後におきましても、スピード感を持って、しなやかに、力強く、そして優しくこの国をリードしていただきたいと思います。まずはどうぞ頑張っていただきたいと思います。

 そこで、きょうは、限られた時間ですので、ある程度ポイントを絞って御質問をさせていただきたいと思います。

 第一点は、主権回復記念日についてでございます。そして第二点は、財政問題、特に公共事業等々、こういった事柄について申し述べたいと思います。時間があれば、その次のいろいろなテーマに入っていきたいと思うんです。

 まず、主権回復記念日についてでありますが、これは先ほど高市さんからもお話がございましたが、昨年の総選挙の際のJ―ファイル、我が党の公約集の中に、四月二十八日を主権回復の日として祝う式典を政府主催で開催します、こう明記してあることでございます。

 約束したことは必ず守るのが安倍内閣の基本方針でございます。そこで、善は急げということもございます。ことしの四月二十八日は、ちょうど連休前でもございますし、日曜日でもございます。そういう点で、もう大分時間的には切迫はしておりますものの、どうぞことしの四月におやりいただくことができますように、まずはよろしくお願いを申し上げたいと思います。いかがでしょうか。

○安倍内閣総理大臣 一九五二年四月の二十八日にサンフランシスコ平和条約が発効いたしまして、七年にわたる長い占領期間を終えて、我が国は主権を完全に回復いたしました。つまり、独立を手に入れたわけでございます。

 既に六十年を経ているわけでございますが、六十年を経た結果、むしろ若い方々の中には、我々はかつて主権を失っていた、七年という長い占領期間があったんだということも知らない人たちがふえているわけでございまして、その中で、御承知のように、憲法あるいは教育基本法といった、日本を形づくる、そうしたものもその期間にできたわけでございます。

 この四月の二十八日、六十年前の四月二十八日に独立をした、このことをしっかりと認識する、そして新しい歩みがそこから始まったんだということも認識をするいわば節目の日であるわけでございますが、この節目を記念し、我が国による国際社会の平和と繁栄への責任ある貢献の意義を確認するとともに、これまでの経験と教訓を生かし、我が国の未来を切り開く決意を確固としたものとするため、本年の四月二十八日に政府主催の記念式典を実施する方向で検討しております。

 ちょうど連休に入るわけでございますが、実施をするということになりましたら、どうか奮って議員の皆様にも御参加をいただきたい、このように思う次第でございます。

○野田(毅)委員 ありがとうございます。大変力強いお話を伺いました。ぜひその方向で進めていただきたいと存じます。

 実は私は、国会議員の議席をいただきまして四十年なんですが、最初に議席をいただいたのは沖縄返還の年、そして日中国交正常化の年なんです。ある意味では、戦後の一区切りがついた年でございます。そのときには田中内閣でありました。私はもちろん中曽根派におったわけですが、あの世代の政治家の皆さんが、早くから、やはり憲法の話だとか、主権をなくした、このことについての複雑な思いを抱いてこられた。

 私は、かねてから、この国の形を考える上で二つのポイントがあると。

 一つは、終戦記念日なんです。八月十五日。これはある意味では、お盆のときとも重なって、戦没者の慰霊、英霊を顕彰する、感謝をする、そして同時に平和を祈るという大事なことでございますが、同時に、この日は残念ながらポツダム宣言を受諾した日でありまして、言うなら、日本みずからの主権を残念ながら行使できない形になることを受け入れたということであります。自来、占領が開始されまして、日本は、国の形としては独立国ではなくなりました。

 そしてもう一つが、その主権を回復した日が、おっしゃるとおり、昭和二十七年の四月二十八日でございまして、主権をなくした日、そして同時に、今度は主権を回復した日、ある意味では、国の形としては二つの不連続点がある。

 これをセットにして、改めて日本人がそのことに思いをいたして、そして、外国から総括されるのではなくて、日本人みずからがこのことに思いをいたして、なぜ主権を喪失するに至ったのか、あるいはその時代、占領下にあるときにはどういう政治が行われてきたのか、そして、主権を回復して独立国ということを取り戻した暁にはどういう心構えで日本の政治、国の形はあるべきなのかということを、改めてしっかりとみずからの考えを、お互いが、右左を超えて、もう一遍冷静にしていくということも大事なことなのではないか。

 特にドイツは、敗戦のときに統治機構が崩壊をしました。ですから、占領軍の直接統治型になりました。それが解除された後は、ドイツは、全国民的な総括をした上で、戦後の独立国としての歩みを、立ち位置を定めて今日に来ていると思いますけれども、日本は、ある意味では間接統治をやったものですから、多くの国民の中には、占領下にあったということさえもう皮膚感覚がなくなってきていて、それを引きずって、ある意味では自虐的な史観になってみたり、ある意味ではそれに対する反動的な思いもあって、国論がなかなかそういった形で総括するに至っていない。

 そろそろ、もう六十年以上たって、今ここでそういったことに思いをいたしていくということが、結果として、私も長年、日中関係の仕事もいたしておりますけれども、私は、そのことがかえって、近隣諸国との冷静なお互いの関係、アメリカをも含めて、日本のこれから先の展望を考えた場合に大事なことではないか、そんな思いを持って今日まで参りました。

 今回、ようやくその思いが総理のおかげで前進しようという運びになっております。私は、ぜひ心を込めてその方針を全面的にバックアップしたい、むしろお願いをしたい、そういう思いでおります。

 このことをまず冒頭私から申し上げるところでございまして、総理、もしそのことについて御感想があれば、なければいいんですけれども、あればどうぞお願いをいたします。

○安倍内閣総理大臣 この主権回復の日につきましては、野田議員が長年にわたってずっとこの問題、議連をつくって進めてこられましたことに改めて敬意を表したい、こう思う次第でございます。

 これはまさに、委員が御指摘をされたように、特定の思想に立脚するものではなくて、いわば、日本がかつて主権を失っていたという事実、そして一九五二年の四月二十八日から新しい歩みが始まったんだという事実を捉えて、主権を失うということはどういうことなんだ、あるいはまた、主権を回復して独立をしたということはどういうことなんだ、国際社会に復帰をしたということはどういうことなんだということをもう一度思い直す日にまさになるんだろうと思います。

 そういう意味におきましては、若い人たち、子供たちにとっても極めて有意義な日になるし、していきたい、このように思います。

○野田(毅)委員 ありがとうございました。

 それでは、次のテーマに移りたいと思うんですけれども、限られた時間の制約の中ですので、ポイントだけ、ざっとまず申し上げておきたいと思うんです。

 今日まで、特に今世紀に入って長年のたうち回ってきたのは、一つは、大きな借金を抱える中で、どうやって必要な仕事を国としてやっていくことができるのかという問題でございます。そういう中で、よく人口に膾炙されるのは、財政赤字の最大の要因は、無駄な公共事業をばらまいて、その結果、借金の山ができたんだという話がある。

 しかし、本当にそうなのか。むしろ、公共事業よりも、高齢化に伴う社会保障費の大変な急速な増加が大きな原因なのではないか。そして、必要以上にコンクリートバッシングをやってきて、その結果が、ある意味では社会資本の老朽化、劣化につながっていることはなかりしや。

 そして同時に、ここまで劣化した状態を次の時代の国民に借金と一緒に押しつけるというようなことで、本当にこの世代に生きる政治家は許されるんだろうかということを思うと、国土の劣化をどうやって防いでいくのか、その財源をどうやって確保するのかということも考える必要もあるだろう。

 そして同時に、公共事業が一方で無駄と言われる背景には、単にBバイC云々の話だけじゃなくて、実は私の地元の川辺川ダムの問題もそうなんです。これは四十年以上前からの懸案だったんです。これがもし三十年前にできていたら、恐らく無駄とは誰も言わなかったと思う。だけれども、待てど暮らせどやれない。そのうちに、当てにしていた、期待をしていた農民が、待ち切れなくなって減っていく。減っていくことによって、受益者負担が一人当たりでふえてしまう。だからますます減っていく。結果的に、人もいなくなったところでやるのはもう無駄じゃないかという話に実はなってくる。

 そういったことを考えると、完成時期までの期間が長過ぎるということがもう一つ大きなことがある。そうであれば、公共事業について、トータルとして、計画をつくってから完成するまでの期間を何とかしてスピードアップすることこその方が大事なのではないか。

 そういったことを思いますときに、成長戦略の規制緩和ということがあるんだけれども、ただ、ばらっと規制緩和さえすればいいというのではなくて、その戦略的な、本当に成長を高めるようなやり方はどうなのか。あるいは、そういった社会資本整備の中でも、より優先して規制改革をしていくような事柄はないのか。先ほども少し高市さんからもお話がありましたけれども、そういったことを、これは法務大臣も含めて、収用のやり方だとかいろいろなことがあると思います、あるいは私権が強過ぎるとか、用地買収が非常に難しい、そういったことがあるので、ぜひ、規制改革をやる場合にも、この視点を踏まえて臨んでもらいたいということ。

 要するに、つぼを外すと痛いだけですから、規制緩和も。その点を頭に置いた、ターゲットを決めた成長戦略をつくってもらいたい。時間があれば、公共事業の経済効果について少し意見交換をしてみたい。ざっとこんな中で、質問の内容に入っていきたいと思います。

 そこで、冒頭言いましたけれども、財政悪化の原因について、お手元をごらんいただくとおわかりいただけると思うんですが、この数字は全部発表されている数字でありまして、私が見やすくするために申し上げたんですが、見方を言えば、二〇一一年度の国債残高、これは右端に書いてあります。十年ほど前、二〇〇〇年、今世紀の初めの国債の残高は三百六十八兆だった。十年ほどたった残高が六百六十八兆、赤丸で印をしてあります。ことしはどうか。当初ベースでいくと七百五十兆。つまり、残高は今世紀に入って急速にふえているということが見てとれると思います。

 太字で書いてある三段目の数字が、二〇〇〇年から二〇一一年の間にふえた借金の数字であります。これを見ていただくと、建設国債が三十八兆に対して赤字国債が二百六十三兆、合計三百兆。

 ということは、別の言葉で言えば、まさに、コンクリートよりも、人による借金が実は借金をふやした最大の理由である。だから、自民党が何か無駄な公共事業をやって借金の山をつくって、今日、財政が大変なことになっているという、これは私は言いがかりじゃないかと思います。

 数字をしっかり見た上で、どう対応するか。このことは、別段、民主党をどうとか自民党をどうとか言うつもりはありません。そのことがあったから、あえて税と社会保障一体改革ということで、赤字国債をこれ以上ふやさないということでやったことですから、三党合意に基づいてやった、そういう点では、民主党の皆さんにも敬意を表しています。大変な返り血を浴びながらおやりになったことですから、私は大変敬意を表したいと思っています。

 このことを頭に置きますと、これから、さあ、どうやっていくのか。ちなみに、建設国債については、左端の黄色丸、二〇〇九年度と二〇一一年度、赤字国債のふえ方に比べればはるかに低いと思います。

 いずれにしても、このことをごらんになって、麻生大臣、御感想はありますか。

○麻生国務大臣 コンクリートから人へというのが一番だったので、たまたま、もとの職業に対する非難かと思ったのは、鳩山内閣の最初の御発言だったので、私の方を見ながら言っておられましたので、そうかなと一瞬思った記憶があるんですが。

 少なくとも、今おっしゃられたのは、この数字の前、九〇年代までは公共事業関係費の増加というのが一番多かったんですが、近年では、これは高齢化の進行に伴う社会保障関係の増加、もうその数字のとおりになってきております。

 ちなみに、公共工事でいえば、決算ベースじゃなくて予算ベースで、少なくとも、一番上が平成九年度の九・七兆だったと思いますが、それが二十四年度では四・六兆まで、約半分以下になってきておりますので、そういった意味では、間違いなく社会保障関係、そういったようなものが大きいのと、加えて、九〇年度以降の、バブルがはじけた後の法人税収が激減しておりますので、そこの二つが重なってきたのが大きいんだ、私どもはそう思っております。

 いずれにしても、今、この五百七十という数字が出てきておりますけれども、これは間違いなく社会保障関係費が猛烈にふえたのが約百九十一兆円、それで、地方交付税等の交付金などの増加が七十四兆、公共事業関係費の増加が五十八兆になっておりますので、その意味では、事業費の増加の額から見たらおっしゃるとおりの数字になっている。加えて、税の減収が百九十五兆、これらのものが重なって、今おっしゃったような形の巨大なものになってきておるというのは事実だろうと思います。

 これは、今御指摘のありましたように、三党合意に基づいてきちんとした体制を整えていただきましたので、こういったことを考えますと、中長期的に持続可能な税制とか財政とか、こういったもののあり方を今後とも真剣に考えねばならぬと思っております。

○野田(毅)委員 ありがとうございます。

 そこで、こんなことを聞くのは大変失礼なんですけれども、この数字の中で、黄色丸、青丸、道路についての借金はどっちに入っていると思いますか。これはもう答えを言います。つまり、道路については借金はなかったんです。なかったんです。

 この点は世の中には大変誤解がありまして、無駄な道路をいっぱいつくって借金の山を残したという言い方があるんですが、国は道路のための借金はしておりませんでした。道路特定財源です。道路に使うということで納税者に負担をお願いしたそのお金が、道路に使わないでほかに回っていたから、だったら、その部分は減税しろ、暫定税率をなくせ、あるいは、こんな税目はやめてしまえということにつながってきたことは、そのとおりなんです。

 だから、一般財源にしてからは、今日は、ことしの場合、道路予算の財源はもう道路財源に特定しておりませんので、結果としては、建設国債を財源にして道路をやっておるという理解ができるんですけれども、さて、これは麻生大臣じゃなくて国交大臣の方がわかるかな、同じようなことですけれども、そういうことです。

 ですから、問題は、何を言いたいかというと、これから後、社会資本の劣化が著しく進んでいる、特に、この前もいろいろ報道もなされておりますけれども、今後五十年間で橋梁などの維持、補修、管理、そういったことについて、ざっと五十年間で百九十兆必要であるという試算もある、年平均でいくと四兆円ぐらいになっちゃうよという話もある。

 社会資本の劣化は、道路、橋梁、トンネルだけではなくて、学校の耐震化であったり、ほかのさまざまな公共施設も相当もう耐用年数を過ぎて老朽化が進んでしまっている。

 さて、これらを今後どういう形でカバーしていくかということを考えると、そんな甘い話ではないぞと。その財源をどうやって調達するのかということは真剣に考えておかないと、次の時代に、そんなぼろぼろになった国土を、本当にそれを引き継いでいいのか。

 私は、今日に生きる政治家の怠慢になりかねない、そのことを真剣に思うと、これは真剣に、太田大臣、もう今既にそのことに大変な危機感をお持ちになっていろいろな計画をおつくりになっている、メンテナンス元年ですか、ということを含めて頑張っておられるということですので、ぜひその点について概略御説明をいただきたいと思います。

○太田国務大臣 大変重要な御指摘をいただきまして、感謝申し上げます。

 私は大変危機感を持っておりまして、一つは、今御指摘のありました、高度成長時代から、あらゆるインフラ、道路も含めて、これが四十年、五十年たっているということで経年劣化をしていることにどう対応するかということが物すごく大事な問題になっています。

 一九三〇年代アメリカ、いわゆるニューディール政策ということで世界恐慌脱皮の闘いをしたんですが、そこでつくった構造物が、五十年たったときに、一九八〇年代に劣化をしまして、橋梁が落ちたり道路が崩れたりということで、荒廃するアメリカ、こういうことが言われました。これをどうするかということがアメリカにとっても大事なことだったんですが、その後の経済成長というものがあったものですから、今かなりの投資ができるということになっているんですね。

 ところが、ちょうど経済成長の時代につくったさまざまな構造物が四十年、五十年たって劣化をしているんですが、その間、日本は、そうした防災、減災、老朽化対策ということを施してこなかった。

 例えば橋をとってみますと、七〇年代に毎年一万ぐらいの橋ができていた、それがずっと減って、最近は新しい橋が百あるいは二百という単位になってきているということで、非常に山があって、ずっと谷のままあって、この老朽化対策ということでまた一気に山が来るというようなことがありますから、これは平準化していかなくてはいけない。単に今食いとめるというだけではなくて、どうするかというような財政措置についても平準化していくというようなことを、長寿命化ということや、あるいは直ちに対応するというようなことも含めてやっていかなくてはいけないということにもなります。

 日本の特殊性もありまして、道路をとりましても、世界からいきますと、高速道路で二四・六%がトンネルそして橋である、こんな国はないんです。アメリカでは七%ぐらい、そしてフランスに至っては三%というようなことで、相当ここの劣化ということに対応しなくてはいけないということで、これを平準化し、そして修繕というようなことも含めてどう対応するかということについて、技術的な点検ということをまずやらなくてはいけない。

 点検ということに一気に力を入れて、メンテナンス元年と私は言っておりますが、そこに手を入れて、さらにそれを大きな山にしないで平準化していきながら、そして、できるだけそう高コストではないという形で修繕、老朽化対策というものを今直ちにやっていくということが、後世の若者に届けるには重要なことだというふうに思っております。

 莫大なお金がかかるということをおどかしのように言うのではなくて、技術水準の進歩、研究、そうしたこととあわせてこれについての対応をして、日本が、安全と安心が得られる構造物ということで、今こそまさに、今までの公共事業という観念をもう一度改めて、防災、減災、安全、そして老朽化対策、耐震化、こういうことに進まなくてはいけないというふうに強く思っております。

○野田(毅)委員 ありがとうございました。丁寧にお答えをいただきました。

 今、劣化、老朽化ということに力点を置いて私も申し上げたんですが、この安倍内閣においても、自公両党においても、強靱化という言葉を使っております。この強靱化の中には、劣化対策、老朽化対策ということも含めて、まさに事前の防災をも含めて、あるいは、場合によっては地域の活性化をいかに引き出すかということを含めて、公共事業の有効性については、ぜひ先入観を持たないで真摯に対応していかなきゃいけない課題だと思いますので、当然のこととはいえ、念のために申し上げておきたいと思うんです。

 そこで、さっきちょっと触れたんですが、公共事業が無駄かどうかという、なかなか難しいと思います。BバイCの計算の仕方がどうだとかということもあるだろうし、そして同時に、先ほど言及しましたが、計画をして事業認定する前までに時間がかかるんですね。周りの地権者の同意をもらわなきゃいけない。

 そういう中で、私どもの耳に入っているのは、これは東北の方でも、相続人が随分数がふえてしまって判こをとるのが大変なんだと。特に、戦後、憲法改正と同時に民法も改正されて家督相続から均分相続になっちゃったものだから、今はすごく相続人の数がふえちゃって、国際結婚もふえていますから、とてもじゃないが、判こをとりになんかなかなか行けない。これをどうやってできるだけ早期に対応していくかというのは大変頭の痛い問題で、今、御努力をいただいていると聞いております。

 これは何も東北だけの話じゃなくて、我々の地域の中で、例えば土地改良なんかも、やろうと思うとその地域の九割の判こをもらわなきゃいけないんです。その中には共有地がいっぱいある。そうすると、その共有地をどうするか。これは河川改修でもみんな絡んでくる。それで時間がたって、計画してから実施に入る前に三十年ぐらいかかる。これを何とかしないと、日本は、計画はしても計画倒れで、そのうち、そのあたりから人がいないということになってくる。これはやはり放置するわけにいかぬと思うんですよ。

 事業認定してから、後は収用手続の話になります。今のは事業認定する前の話です。事業認定してから、収用をどうするかという話になってくる。今の時点では、土地収用法、なかなかできていないですね。極端に言うと、成田なんか、世界じゅうで日本だけですよ、一体何十年。昭和五十三年に成田空港は一部開港したんですよ、福田内閣で。それがまだ、あそこに地主さんがいますよね。本当に、これで平然としている日本人の神経というのはどこにあるんだと。中国みたいになれとは言いませんけれども、少しひど過ぎるんじゃないですか。

 だから、本当にどんなに立派なナショナルプロジェクトでも、イデオロギッシュな方々からすれば、そういう国家的に大事なナショナルプロジェクトだからこそ反対したいという人たちもいるわけですよ。それにはまっちゃったら何もできない。韓国の仁川にしても中国のあれにしても、みんな日本を素通りになって、かなめはみんな大陸に移ってきている。これを、一生懸命、成長戦略、グローバル戦略と言っているんだけれども、この部分のスピードアップができなければ動けない。

 そういう点で、私は先ほど少し、的を絞った言い方はしていませんが、収用手続のあり方などについては法務省も関係すると思いますし、国交省も関係すると思いますし、成長戦略でいえば、甘利大臣、稲田大臣、みんな各省関係するんですが、日本の事柄を早くスピードアップさせるということが成長戦略であり、それこそが改革なんだろうということを思うと、ぜひここは、総理、きょうは急なことなんですが、そういう問題意識をお持ちいただいて、総理が一遍本部長に座るぐらいの気持ちでこの辺を統合して推進するような、そんな思いを持っていただければいいんですけれども、いかがでしょうか。

○安倍内閣総理大臣 今、野田委員が御指摘された問題意識というのは、恐らく、多くの議員が共有していながら、なかなかそれを前に進めることができなかった問題点だろうと思います。

 国民の福祉全体を考える中において、いわば国家プロジェクトとして進めなければいけない。しかし、国家という名前がついているから、かえって反発する人がいて、いわばたった一人の反対で物事が進まないということが起こっているわけでございまして、かつて、東京都知事の美濃部さんという人が橋の論理というものを振り回して、一人が反対すれば橋はつくらないんだということで、実際、大切なものはほとんどできなかったという反省もございます。

 そうした問題意識も持って、何をやるべきかということを考えていきたいと思います。

○野田(毅)委員 ありがとうございます。

 もうそれぞれの大臣から答弁をもらうことは、一言言いたいという人があれば、手を挙げてみてください。いいですか。

 復興大臣、いいですか。今の状況のままで、自信を持って大丈夫とやれますか。そうでないなら、こういうふうに改善することを考えていますか。何かあれば、どうぞ。今のままでは、相当復興に時間がかかるんじゃないかと思います。

○根本国務大臣 野田委員の問題意識は私も共有しております。

 先ほども申し上げましたが、全体のプロジェクトをいかに短縮するか。そこは、用地取得から権利関係を解きほぐす問題、そして埋蔵文化財、一連の流れがありますから、そこをいかにして短縮するかということを今タスクフォースで検討しておりまして、財産管理人制度、ボリュームとしてたくさんの必要な方が出てきますから、それにいかにして対応するか。

 収用手続についても、審査期間を短縮するとか、具体的な制度の運用改善、これは今、具体的に検討して、一定のアウトプットを出しました。

 さらに、その上に立って、野田委員の問題意識、私もしっかりと共有しながら頑張っていきたいと思います。

○野田(毅)委員 ありがとうございます。しっかり頑張ってください。みんなでバックアップ、応援していきますから、よろしくお願いしたいと思います。

 そろそろ時間になってきているんですが、甘利大臣、今、くどく成長戦略と規制改革の話をしたんですけれども、やはり、ざくっと規制緩和とか規制改革というと、何でもかんでも、みそもくそも一緒と言うといけませんけれども、そういうことになりがちなので、戦略的にぜひ見てほしいな。

 特に我々が力を入れなければいかぬのは、例えば医薬品の分野なんかもそうなんですが、臨床の分野、ここの規制をどう改革していくかということが大事なので、率直に言って、末端の、薬局で自由に販売することができるかどうかということと成長とは余り関係ないような気がする。例えば、タクシーの規制を緩和して、では成長にどういう役に立ったのか、よくわからない。

 あるいは、大店法をなくして、いっぱい大型店が出てきたけれども、それが日本経済の成長の中でどれだけ役に立ったのかというよりは、むしろ、各地区の商店街が疲弊してしまっている。いつも言うんですが、酒屋さんも、規制緩和、事実上、免許制度をなくしたような形になっているから、今世紀に入って二百五十人ぐらいの方々がみずから命を絶つような悲惨な状況になっている。では、誰がその恩恵を受けているんですか、成長にどういうプラスがあるんですか。

 そういったことを考えると、私は、必ずしも、競争を激化させることが成長だということとは違うと思う。もう少しターゲットを絞って、研究開発の分野であったり、特に医薬品だとか、今申し上げたような、公共事業をスピードアップする、周りの同意を不必要に求めないというようなこととか、そういったターゲットを絞った規制改革を少し前面に出していただいた方がいいんじゃないか、戦略的規制改革ということを少し念頭に置いていただくといいと思うんだけれども、いかがでしょうか。

○甘利国務大臣 先生御指摘の点はもっともだと思います。

 いたずらに過当競争をあおるだけの規制緩和ではなくて、そこから、その規制があるために伸びていく芽が伸びないというようなところ、技術はあるのに製品化できないというところ、あるいは製品化できたとしてもスピードがかかり過ぎるというようなところ、そういう点にしっかりとフォーカスを絞って、全ての国民のためになる規制緩和であり、それが成長戦略につながるようにしていきたいというふうに思っております。

○野田(毅)委員 せっかくですから、担当大臣、稲田大臣も規制改革の担当でしょうから、一言どうぞ。

○稲田国務大臣 今先生から御指摘があったように、ターゲットを絞って、そして総理からも、改革のための改革に陥ることなく、日本の経済再生に資する改革をと指示を受けております。

 私も、よきものは残しながら、伝統を守りながら不断の創造を続けていく真の意味での改革を、ひるまず、大胆に、迅速に取り組んでまいりたいと思っております。

○野田(毅)委員 ありがとうございます。しっかり頑張ってください。

 持ち時間が参りましたので、これで私の質問を終えます。ありがとうございました。 |

地方分権

[編集]

○小此木委員 おはようございます。総理、お疲れさまでございます。私は、自民党の小此木八郎です。

 総理とは、平成五年に初めて当選をさせていただいて、う二十年になります。野田先生が今四十年といいますから、すごいなと思いながら質問を聞かせていただきましたが、安倍総理は、そういう意味で私たち同期の中では出世頭なんですね。だから、本当に頑張ってもらおう、こういうふうに思っています。

クリミアVS

 一方で、私は、みずからの力不足、不徳で落選を経験しまして、この三年余り、いろいろな勉強をさせていただきました。(発言する者あり)まあ、大きくなったかどうかは別として。

 総理の先日の施政方針演説。「強い日本、それをつくるのは、ほかの誰でもありません。私たち自身です。」福沢諭吉翁の言葉を引用されて、「一身独立して一国独立する。」という言葉。「私たち自身が、誰かに寄りかかる心を捨て、それぞれの持ち場で、みずから運命を切り開こうという意思を持たない限り、私たちの未来は開けません。」こう施政方針演説で冒頭に述べられて、私はみずからのこととして、この言葉を大事にして頑張らなきゃいかぬなと改めて思ったんですね。

 そこで、きょうは、地方分権ということが、我々は機会を捉えてさまざまお話をいたしますし、地方からもそういった声が聞かれます。

 浪人中、日本維新の会の、私は橋下徹さんという方とお会いしたことはないんですが、橋下さんが、地方分権というのは、地方のためにやるんじゃないんだ、国のためにやるんだということをおっしゃった言葉を聞いて、すごく理解のできる言葉として、すとんと心に落ちたんですね。

 地方分権、地方分権と本当に口では言うんですけれども、やはり分権をするなら、その権限は地方に委ねられる、あるいは権限を地方が使って自分たちのまちづくりというものを自分たちの力で行っていくということを実現するためには、地方自治体そのものがやはりそれなりの用意をしておかなきゃいけない、力を持っていなきゃいけない、鍛えられていかなきゃいけないという気持ちが私にはあります。

 きょうは地方分権等、あるいは補助金、交付金ということについて、国会でもさまざまな議論がありましたけれども、安倍内閣として、この地方分権というのをどういうふうに進めていくのか、総理の基本的な考えについて、まずお聞かせいただきたいと思います。

○安倍内閣総理大臣 ただいま小此木議員から平成五年の話をされましたので、私も思い出していたわけでありますが、同期として当選し、小此木議員は最年少だったと記憶をしております。二十代だったんです、私と大体十歳ぐらい違って。ですから、三年、大変御苦労されたと思いますが、まだまだ、四十代なんだろうと思いますので、見た目はちょっと、貫禄と、この三年間風雪に耐えた小此木八郎ということになったんだろうと思いますが、まだまだ若いので、ぜひまた自民党のホープとして頑張っていただきたいと思います。

 その上で、質問に答えさせていただきたいと思いますが、まさに地方分権、これは、本来地方が決めるべきことを国があれこれ口出しするのは間違っている、つまり、そこに住んでいる人たちがその地域のことは一番よく知っているわけでありますから、基本的にはその地域の人たちが決めていく、これがまさに地方自治の本旨、わかりやすく言えばそういうことなんだろう、このように思います。

 ですから、その中において、なるべく権限の移譲を進めていく。その際、財源等も勘案しながら、そしてまた、権限を移譲していく以上、責任もちゃんと持ってください。これは当たり前のことでございますが、責任と権限は一体であります。同時に、税源においてもよく議論を進めながら、この地方分権については安倍内閣としてはしっかりと進めていきたい、このように考えております。

○小此木委員 ありがとうございました。

 毛並みの話は別といたしましても、やはり、今おっしゃったように、地方に権限を委ねる以上は、地方もしっかりと構えておく、用意しておく、不備のないように備えておくということが私は大事だという意味で、今の総理の答えを基本的な考えといたしまして、総務大臣、その方向性を踏まえて、これから実際に具体的にどのように地方分権改革というものを進めていくおつもりなのか、あわせてお答えいただきたいと思います。

○新藤国務大臣 地方分権の改革を進めていくこと、それは結局のところ、国全体の統治機能の強化につながっていくものでなければならない、このように思っています。

 それぞれの町にはそれぞれの歴史があり、それぞれの個性があります。ですから、町の独自性、自立性、こういったものを高めながら、そして、その町の住民サービスが向上できる、そのために必要な規制の改革があるならば、それは行っていかなくてはならないだろう、このように思いますし、権限や枠づけ、そういったものの移譲が必要なものは積極的に移譲していこうではないか、こういうようなことを考えているわけであります。

 そして、そういう中で、町の自治を、できるだけ自由度を上げる。これに加えて、全国どこの町でもそれぞれ事業ができるように、そういう形をつくらなければいけない、そこに国の役目があるんだ、このように思っています。

 ですから、まさに地方自治の本旨は、住民自治そして団体自治であります。これをさらにやりやすくできるように、そのための地方分権改革を進めてまいりたい、このように思っております。

○小此木委員 問題意識は、安倍内閣は日本経済の再生というものについて本当に大きな責任を負っている、こういうふうに思います。三本の矢、金融政策、財政出動政策、そしてその後につながるように成長戦略というものをしっかりと考えて、それを行っていかなきゃいけないということであります。

 例えば、地方に補助金や交付金を配分する、分配をするというだけでは、やはり先ほどの野田先生の、無駄であるか無駄でないかという議論が起こってくるわけでありますけれども、それはやはり、最初から無駄であるかどうかというのはなかなかわかりにくいけれども、ある程度は、先ほどから申し上げているように、用意をしておかなきゃいけない、備えをしておかなきゃいけないということによって、それが無駄につながるのかそうでないのかということは予想ができるわけであります。

 ただ、総理も先ほどおっしゃったように、もともと、残念ながら自分の力で生きていくことのできない方々がいる、そういった方々には手を差し伸べていかなきゃいけない。

 きのうの麻生財務大臣・副総理の趣旨説明の中にも、例えば、生活保護の見直しの中に言及されましたけれども、生活困窮者の自立・就労支援、こういったことを推進していくんだというお話がございました。

 本当に自分の力で生きていけない方々には手を差し伸べるけれども、生活保護政策の柱となっている大事なところは、そういった方々を支援して、そのままではいさせないよ、そういったところから抜け出してもらおうということ、そして、生活困窮者がこれ以上多くならないような政策を打っていこうというところに意味があると思うんですが、私は、地方分権ということについても、やはり同じような考えが言えるのではないかと思っているんです。

 今までの自民党の長い政権の中で、三年数カ月前に政権交代させられてしまった中に、やはりそれは、多くの国民から見たらば間違いがあった、それを認めなければならないということは総理もお認めになっておられる。閣僚の皆さんも、あるいは、ここにおられる、自民党として公認をもらって選挙に臨んできた人たちは、皆さん、そういう思いも根底にあって、厳しい選挙でありましたが戦って、今ここにいることができるということを忘れてはならないと思うんですね。

 そういった中で、我々が野党にいた三年間の中で、民主党政権の中で、地域自主戦略交付金というものができました。これは、今まで、この二年ほどの国会の議論を見ますと、民主党の皆さんから言わせると、こんなに必要なものはなかったんだというような話で、何で今回廃止したのかという話があって、いろいろな議事録を見た中で、何で廃止したかということについて安倍総理が何度か答えられていて、この地域自主戦略交付金の廃止については、地方から、窓口の一元化や手続の簡素化、総額の確保などの課題が指摘されていました、これらの課題を解消するため、本交付金を廃止し、各省庁の交付金等に移行することといたしましたと。

 結局、説明をいろいろ聞いていますと、今までの補助金、地方が欲しかった補助金等を、内閣府が間に入って、同じように地方に配っていた、補助をしていたという話で、これが非常に申請に当たっての複雑化を呼んで、かえって使い勝手が悪いものにしてしまったというお答えがあったというふうに思うんですけれども、もうちょっとわかりやすく説明していただくと、これはどういうことになりましょうか。

○新藤国務大臣 まず、この地域自主戦略交付金でございますが、制度としては廃止をして、新しい形にするわけであります。しかし私は、精神として発展的改善をするんだ、このように御理解いただきたいと思うんです。

 そして、地域自主戦略交付金について、地方の方からのいろいろな改善事項がありましたのは、窓口の一元化や手続の簡素化ということでございます。

 これは何を意味するかというと、実は、内閣府で一括して受けるんですけれども、しかし、その受けた後、それぞれの担当省庁にもう一度執行委託をするんですね。ですから、もう一回、各省に移換をした段階で、申請し直しがあるんですよ。

 ですから、地方自治体は、まず内閣府とやりとりをしながら、一方で各省ともやりとりをしているんです。申請をすると決まります、内閣府で配分が決まると、そこから各省に、はい、この仕事はそっちでやってねということになって、そこでまた申請し直すんです。ですから、こういう窓口を一元化しなくてはいけない。また、手続はそのたびにかかるわけであります。

 それから、そもそも地域自主戦略交付金のもとは、社会資本整備総合交付金といいまして、もとの事業があったんです。社会資本整備総合交付金の中から切り分けて、地域自主戦略交付金というのを出しました。ですから、これを今回は一つにまとめて、もともとの社会資本整備総合交付金の方も事務の簡素化をして、使いやすくするという形で改善を図ったわけであります。

 それから、総額を確保してほしい、事業の継続性というのがありました。ですから、これは私どもは、二十四年度の当初が六千七百五十四億円でありますが、それに加えて今回補正で三千百億、そして二十五年度には六千五百億、今回提案しておりますから、結果的には九千七百億円の予算を確保して、そして事業の継続性を保ちつつ、手続の簡素化を図り、使い勝手をよくさせていただいて、これまでの精神を踏まえながら実施していきたい、このようにさせていただいたということでございます。

○小此木委員 そこで、使い勝手が悪い、あるいは複雑になってしまったということだけで済ませてはならないのかなということも思っていました。

 経済政策、財政出動によって民間需要の不足を補う、これは経済の成長、今からスタートとして必要なことだというふうに思いますが、一方で、地方自治体の間には、財政力だけじゃなくて、マンパワーを初めとして大きな格差があるということも事実で、国から地方へと、今問題となっている交付金等、財源不足を補っても、残念ながら効果的に交付金などの利用ができていないところもある、先ほどから申し上げているとおりであります。厳しい言葉で言えば、そのお金をなかなか使いこなせていないところもあるということがあるんですね。

 だから、一括交付金がいいのか、あるいはそれを廃止した方がいいのか、新しい施策をした方がいいのかというのは、たびたび申し上げるように、地方にも問題があるとすればそれを解消していかなきゃいけないということであって、地方の自主性、地方の自立という観点からいえば、やはり足腰を鍛えていく、これは人間でも自治体でも同じだなということを思っています。

 そして、そういう交付金、補助金がほかの省庁と比べれば比較的多いとされる国交省や農林省ということでありますが、国土交通大臣、太田大臣は学生時代、相撲部の主将をされていたということでありまして、いろいろなものを調べていたら、毎日の練習を終えるとタオルを絞れない、自分の手が上がらない、そんな生活が随分続いたと。

 相撲の主将というのは大変な御苦労があったと思いますが、その中に、鍛える、自分を鍛える、あるいはしごく、自分をしごく。私も野球をやっていまして、相当厳しい練習もありました。自分をいじめる。いじめる、しごく、鍛えるというとなかなか難しい問題にもなろうかと思いますが、しかし、やはり自分をいじめてきた、自分をしごいてきたというのは、その青春時代はいろいろあったと思うんです。

 太田大臣よりも一回り大きい人を担いで階段を何階か上った、本当にそのときは涙が出てくるほどつらかったけれども、そんなような思いを、みずからのエッセーでしょうか、書かれている太田大臣の文章を読みました。この努力が、「平凡な感想だが、あのころの努力、完全燃焼の青春の日々が何ごとにも前向きに戦う心を養ってくれたような気がする。」こうおっしゃっています。

 私は、これをこのまま地方分権とか教育、下村文部大臣、人間の教育もそうだと思うんですが、そのまま当てはめるというのは、わかりやすそうなんだろうけれども、随分これは無理があったり難しいことがあると思いますが、しかし重要なことだと思うんです。

 国交大臣は、補助金の政策、こういったものを使うところが比較的多いとされる省庁の責任者とされて、この地域自主戦略交付金というものが廃止されて、これから国土交通省として、地域を鍛える、本当に元気なまちづくりをやるという観点から、どのようなお考えをお持ちなのか、聞かせていただきたいと思います。

○太田国務大臣 余りにも難しい質問だというふうに思います。

 私は、地域主権型道州制ということをずっと主張してきました。それは、日本という国が、東京あるいは霞が関、こうしたところで引っ張っていくというのではなく、それぞれの地域にエンジンがついてそれぞれが走る、そこのエンジンがそれぞれつく主体というものになるためには、権限、財源そして人間、三つのゲンというふうによく言われるんですが、そこをしっかりやるということが大事だ。その環境をつくった上で、やはり地方自治体の強みというのは、私は、そこの、人の集積、そして意思ということの共同体としての一致した力をどういうふうにつくっていくかということだと思っています。

 私のクラブ時代のそんな話は何にも役立たないと思いますけれども、そこの一体性というものをどういうふうにしていくのか。いわゆるナショナリズムではなくてパトリオティズム、そういう中での鍛えというか一体性という中で、この町を、この村を、我が市をどのようにするかという意思の結束、知恵の集積、それをなし遂げるという、人をしっかりバックアップしていくということが私は非常に大事なポイントではないかというふうに思っています。

 またもう一方、我が省は地方整備局等を持っておりまして、現場に一番近いところで、最後は自分の判断でこれを遂行する。東北の今回の地震につきましても、地方整備局が先頭に立って、我が身を捨てて道路の啓開作業をし、あらゆることをやらせていただいたという現場力の強さというものは、そのまま、現場に接するということの中でまた人は鍛えられていくのではないか、私はそのように思っております。

○小此木委員 ぜひ、そういう思いで頑張っていただきたいと思います。

 震災から二年がたちまして、多くの方々が本当に今、一生懸命いろいろなところで力を尽くしておられます。

 一つ、震災があった直後、やはり地域からいろいろな支援物資が送られまして、小野寺大臣も御地元ですからうなずいておられますけれども、全国からいろいろな支援物資が送られた。それも人々からの気持ちなんですけれども、結局、その支援物資を、拠点としてどういうふうに納めようか、あるいは納めることができなかった、あるいはそれを物流としていろいろなところに結果的に配分できなかったという反省点もあろうかと思います。

 そういったことも、それを用意するのが、日ごろの鍛え方や、訓練をする、あるいは勉強して、そういった思い当たらないところに不備の災害が起きてしまったときに対応する用意として、国交大臣にはリーダーシップを発揮していただきたい、こういうふうに思います。

 農林水産大臣、林大臣にはやはり長いおつき合いをいただいていて、安倍総理と同じ山口県でして、実は、私はこうやってしゃべったり演説するのは本来苦手なんですけれども、林さんは、ギターを弾いたりピアノを弾いたり、作詞作曲もするんですね。議員として音楽活動もやっていて、正直なところ、そういったところで表現をして皆さんにわかっていただける機会をもっと多くつくりたいなと思っておるんですが、そういう音楽活動の中で、本当に作詞作曲をして、「東京卒業」という曲をつくりました。山本一太さんも一緒にかつてやっていましたけれども、これは実は地方分権を思ってつくった曲だというんだけれども、ちょっと正直なところを話してみていただけますか。

○林国務大臣 お答え申し上げます。

 まずは小此木先生、当選本当におめでとうございました。ずっと待ちわびていた先生の当選でございます。

 今御指摘をいただきましたように、「東京卒業」という歌は、私がまだ議員になる前に、三十代の最初のころに、今御指摘いただきました地元の山口県の高校の同窓会の幹事というのを引き受けることになっておりました。三十一のときだったと思いますが、卒業時、大体二百三十から四十名卒業しているんですが、その同窓会の幹事をやるということで、みんな集まれということでかき集めても、三十名弱しか集まらなかった。ほかのところに就職、進学されて、地元にはおられないというのがその実態であった。

 したがって、今マンパワーというお話がありましたけれども、やはり、その地元でずっと育って卒業した皆さんが、東京やいろいろな都会に出ていかれて、どこかの時点で卒業していただいて、Uターン、奥様がよその方であればIターンということにもなりましょうけれども、そうやって帰っていただいて、みんなでふるさとの再生に向けて頑張ってもらいたい、そういう意味を込めて作詞作曲をしていただいたのが「東京卒業」という歌でございます。

小此木委員 この話は、私はよく知っているんですけれども、委員各位やテレビをごらんの皆様にはまだ伝えられていないところも多いかと思って、あえてお聞きをいたしました。

 とにかく、人口の減少というものがこれから始まっていく中で、口県で久しぶりに同窓会を開くと年々人が減っていくということが現実としてある、もうちょっと、自分たちの生まれた国を自分たちの力で、しっかりといいまちづくりをしていこうじゃないかというメッセージを送っている歌だと思うんですけれども、これは本当にそういうところが地方分権のかなめになってくることだと思うんですね。

 つまり、制度というものは、人の気持ち、人間の力を超えるものではないと私は思っていまして、やはり、総理が、それは私たち自身の力ですと施政方針演説でおっしゃったところが心に残ります。しかしまた一方で、多くの皆さんがその力を保つことができずに、あるいはもともとそういったところに恵まれずにおられる方々もおられるから、今、閣僚席に総理を初め閣僚の皆さんが座っておられる、この予算委員会の部屋に私たちがいるということが言える、こういうふうに思うんです。

 これからも長い予算委員会が続くかと思うんですが、頑張っていただきたいと思うけれども、私たち与党として、政府を支える与党としては、やはりこれは余り長い時間をかけるわけにもいかない、一刻も早い予算の成立を期して、執行される人や場所にそれを届けることが仕事であります。

 きょうは、おちゃらけたような質問だったかもしれませんけれども、しかし、私は、それぞれがしっかりと力を尽くそうという意味で質問させていただきました。

 最後に、総理に、これからの思いを、地方分権ということに限って、やはり人間の体を鍛える、地方を鍛えるという意味で、もう一度お話をお聞かせください。

○安倍内閣総理大臣 まさに、今、小此木議員が指摘されたことが、日本の未来にとっても、とても大切だろうと思います。

 この東京という大都市だけが栄えてしまっても、これはとても、美しい日本と私は言えないと思うんですね。それぞれの地域のよさがあります。

 大切なことは、金太郎あめみたいな町をつくっていくのではなくて、地域のよさを引き出していくことだろうと思いますし、その場所で生活をしている人たちがその地域で生まれ育ったことに誇りを持てる地域をそれぞれの人たちがつくっていく、それを応援をしていく、また、そういう人たちが頑張れる環境をつくっていくことこそが我々の大きな責任なんだろうな、このように思います。

○小此木委員 終わります。ありがとうございました。

内閣委員会

[編集]

○吉田委員 民主党の吉田泉であります。

 大震災からちょうど二年、改めて、犠牲となられた皆さん方へ哀悼の誠をおささげします。また、この二年間、いろいろな困難を乗り越えて、一歩一歩、きょうまで前進していただいた被災者、そして避難所の皆さんに心から敬意を表するものでございます。

 私は、東京電力の福島第一発電所が立地しております福島五区の出身でございます。そういうこともあって、震災の翌日から福島市に駐在をいたしてまいりました。一年半、緊急対策さらには復興、そういう仕事を担当してまいりました。

 大変厳しい困難な時期でございましたが、我々以上に大変だったのは、地元の首長さん、さらには職員さん、そしてもちろん、一番厳しかったのが、被災された方、避難中の皆さんでございます。これからも、復興は長期戦という覚悟でございますが、福島県民がもともと持っている穏やかな県民性というものをなるべく早く取り戻したいということで、力を合わせてまいりたいと思います。

 きょうは、主として福島の問題をお伺いしたいと思いますが、一問だけ、アベノミクス関連で財務大臣にお願いしたいと思います。

 間もなく日銀の新総裁が誕生して、おおよそ二年間で二%のインフレを目指そうという、いわば実験的な新政策が始まるというふうに認識しております。それが実現しますと、これはインフレ分だけ名目金利は上昇するだろうと思います。したがって、国の国債の支払い金利がふえざるを得ないというふうに思います。一方で、名目GDPがふえますから、税収もふえてまいります。

 問題は、一体、その支払い金利と税収とどっちが多いんだ、ふえ分がどっちが多いんだというのが、アベノミクスの一つのポイントになるというふうに思います。

 先週ですが、財務省は、毎年発表しております後年度試算、つまり、今後数年間、財政状況はどうなるか、予測の試算を発表いたしました。その一番最後の部分に、感応度分析と言われているものがついております。名目成長率が一%とか二%、前提よりもふえると、支払い金利はどのぐらいふえるのか、また一方では、税収は幾らふえるのか、これを財務省として試算しておりますが、今回も、この感応度分析によりますと、税収の大体二倍ぐらい支払い金利がふえるという数値が出ております。

 素直に読むと、アベノミクスを推し進めることによって国の財政運営は悪化する可能性があるというふうにも読めるんですが、大臣の御所見はどうでしょうか。

○麻生国務大臣 吉田先生が御指摘のとおり、後年度の試算、後年度影響試算というんですが、これについて、今言われましたように、仮に名目成長率が一%に上昇した場合には、翌年、平成二十六年度には、税収はその半分、〇・五兆円の増収、逆に、金利のみ一%上昇した場合におきましては、二十六年度の国債費は一兆円増という試算になっております。

 したがいまして、簡単に試算をすれば、名目成長率と金利が同じ幅だけ一%上がった場合においては、その差額の〇・五兆円が税収としてはマイナスということになります。

 物価上昇に伴って実際の金利や経済成長率がどの程度影響を受けるかということにつきましては、これはいろいろなケースがあろうと存じます。したがって、インフレターゲットで直ちに財政運営が困難になるということではないと存じますが、議員御指摘のように、金利上昇による財政への影響というものは、これは、常に抑制するためには中長期的な安心感がないとどうしようもありませんので、中長期的な財政健全化に取り組むということは、国に与えられている最も大きな仕事の一つだろうと思います。

 いずれにしても、財政健全化のために中期的な目標というのをいろいろ立てて、二〇一〇年度比何%とか、二〇二〇年度までに何%とか、いろいろ言っておりますけれども、この目的を達成いたしますために、中期財政計画というものが極めて重要になってこようと存じます。

 これは、安心感というものを与えるために、国債に対する信頼感、そういったものも与えますので、これに対応するために、年央、この年の半ばまでにこれに対するめどをつけさせていただき、試算を出させていただこうと思っております。

○吉田委員 税収は、大体、今、四十兆円台ですよね。それがどのぐらいふえるかという問題です。一方で、国債の毎年の発行額、借りかえと新規と両方合わせますと百兆円ですよね。これがどのぐらいの金利増を生むか。要するに、四十兆円と、片一方は百兆円、このベースがもう倍半分違っているということですよね。ですから、もちろん中期財政規律は大変重要ですが、そこまで日本の財政は追い込まれているんだという認識をぜひ強く持っていただきたい。

 私は、アベノミクスというのは、大変困難なナローパスを今歩こうとしているんじゃないかと思います。落ちたら第二の大震災だと思っております。よくウオッチしてまいりたいと思います。

 次は、福島復興関連で、まず総理にお伺いいたします。

 安倍総理には、復興を加速させるということを何度も言っていただいております。被災地の人間として大変ありがたく思います。ただ、この二年間、私がいた福島は、なかなかこの復興が加速できないという状況もございました。

 例えば、福島県いわき市の津波瓦れき。去年の総選挙のときも、この瓦れきの処理が遅いと、随分批判をされました。しかし、瓦れきは焼却すればいいんですが、焼却場の周辺の方々が、放射能不安があると。今、二つ焼却場がありますが、一つしか、そういう意味では燃やしていないという状況がございますが、それに対して、いわき市の市役所は、それじゃ、瓦れきを一般ごみに少しずつまぜて燃やそう、こういうことで住民の不安に対応しよう、こういうことをやっているわけでございます。そういうときに急げ急げと言われても、私はそれは無理だというふうに思います。

 ぜひ、そういう原発周辺地特有の事情をわかってもらいたい。加速はもちろん必要ですが、そういう意味では、いわば丁寧な加速が大事だろうというふうに思っております。

 総理の御所見を伺います。

○安倍内閣総理大臣 政府としては、福島復興再生総局を中心に、まず現場主義を徹底し、被災地が抱える個別のニーズをお伺いしながら、七日に決定した早期帰還・定住プランなど、これからの工程をお示ししていくことで福島の再生を進めていきたい、こう考えております。

 確かに、委員が御指摘になったように、福島の復興に当たっては、地震や津波に加えて、原子力災害への対応が求められているわけでありまして、放射能というこれまでにない被害との戦いであるということを念頭に置きながら復興を進めていかなければならない、それはもう委員のおっしゃるとおりだ、このように思います。

 瓦れき処理なども含めて、住民の理解を得つつ、より丁寧に進めていく考えでございます。

○吉田委員 福島の復興を丁寧に加速するためには、今総理もおっしゃられましたけれども、復興総局というような政府の組織を充実させるということも大切だと思います。さらには、人、物、金の追加支援、これはもちろん必要です。さらには、新聞も書いていますが、民間活力を何とか活用しよう、これも大事だと思います。

 ただ、私は、さらに本質的な、困難な課題が福島の場合は二つあるというふうに思っております。

 一つは、福島県民が抱えている心理的な不安です。第一原発、今、廃炉に向けていろいろ作業をしてもらっていますが、本当に大丈夫なのか。さらには、空間線量の、まあ低線量ですが、本当に影響はないのかという不安が一つございます。

 それから、二つ目の大変困難な課題は、賠償金です。特に不動産の賠償金は、何千万円という単位のお金が、これから、間もなく動き出しますが、そのお金をいわば正しく、公平にお支払いする、これが解決されないと、なかなか復興の歯車を前に回すということが根本的に難しいと私は思っております。

 そこで、まず経産大臣にお願いしたいと思いますが、事故収束の問題でございます。

 二十三年の十二月十六日、ステップ2が完了、冷温停止状態達成、そういうことをもって、政府は、原子炉は安定状態を達成した、発電所の事故そのものは収束に至ったということを確認したという宣言を出したわけでございます。これがないと、二十キロというところに警戒区域を設けていますけれども、これを解除できないわけです。さらには、今、最終段階に入っておりますけれども、その警戒区域を解除して、新たな避難指示を出す、再編する、これもできない。ひいては、それをしないと、今度は不動産の賠償金が動かない、こういうことでございます。

 さて、大臣は、先日の予算委員会で、この収束宣言につきまして、収束という言葉は現政権としては使わないんだという趣旨の答弁をされたと思いますが、これは、この一二・一六の宣言を事後的に否定するということになりませんか。

○茂木国務大臣 お答え申し上げます。

 私が先日国会で答弁させていただきましたのは、ステップ2の完了宣言についてではなくて、事故収束宣言についてお尋ねがありましたので、そのことにつきましてお答えをさせていただいた次第であります。

 確かに、東京電力福島第一原子力発電所につきましては、委員御指摘のように、一昨年の十二月に、原子炉の状態を定量的に評価した上で、冷温停止状態となった、そのことが確認をされまして、現在でも安定した状態にある、そのことに変わりないと思っております。そういった意味で、ステップ2は完了した、そういう評価をされたんだと思います。

 しかしながら、では、福島の問題、委員がおっしゃるように、全て解決したかといいますと、廃炉もこれから三十年、四十年という長いプロセスが残っております。さらには、賠償の問題、除染の問題、そして被災者の皆さんの帰還や健康の管理、多くの課題が残されているわけであります。そうしますと、あたかも全ての問題が解決をした、こういうふうに受け取られかねない事故収束という言葉につきましては、表現が適切でないだろう、このようなことを申し上げました。

○吉田委員 事後的にその一二・一六宣言を否定するのかしないのか、ちょっとよくわかりませんでしたが、いずれにしましても、二年かかって、一歩一歩、ここまで来たわけでございます。そして、一連の政府の施策が連動しているわけでございますね。宣言が否定されるとなると、全てはやり直しということにもなりかねません。ぜひ、慎重な御発言を願いたいと思います。

 次に、避難基準、二十ミリシーベルト・パー・イヤーの意味についてお伺いいたします。

 これまで二年間、政府の避難基準は、まず一つは距離です、二十キロとか三十キロという距離、それに年間二十ミリシーベルトという線量、この二つを組み合わせて決めてきたわけですが、いよいよ、先ほど申し上げた宣言以降、距離の方はやめて線量だけでもう一回区域を見直そう、こういうことになっているわけでございます。

 しかし、福島県民の相当数の方がいまだにその二十ミリ基準を必ずしも納得できていない。県知事も、二月の意見交換会ですか、復興大臣の方に、もう一度この二十ミリ基準をよく説明してくれというような要求をされたということでございます。

 改めて、なぜ避難基準が二十ミリなのか。これは子供も大人も一緒だと思うんですが、一緒でいいのか。二十ミリ未満ならばそれまでと変わらない生活をしていていいんだと。その辺の認識を改めてお伺いしたいと思います。

○茂木国務大臣 委員の方から、慎重に御発言をという話がありました。慎重になるから、事故収束宣言というのは、やはり地元の皆さんにとってもさまざまな臆測を呼ぶのであろうと。

 そして、委員おっしゃる区域の見直しは進めているわけであります。既に六地域につきましては区域の見直しは終わりました。そして、先日、三月七日に、葛尾村、そしてまた富岡町、浪江町につきまして、この区域の見直し決定をいたしまして、残るは双葉町と川俣町ということで、地元の自治体ともしっかりと調整をしながら区域の見直しは進めていきたい。

 申しわけありませんが、前政権より速いペースで、ピッチで、この区域の見直しは進めさせていただいております。

 その上で、二十ミリシーベルトとの関係でありますけれども、避難基準の設置に当たりましては、住民の安全、これを最優先にして、また国内外の専門的な知見、これも踏まえて設定をさせていただいております。

 具体的に申し上げますと、放射線防護に関する国際的な専門機関であります国際放射線防護委員会、ICRPが、避難を含む放射線防護措置を講じるべき水準として年間二十ミリから百ミリシーベルト、こういう基準を示しておりまして、ここの中で最も線量の低い年間二十ミリシーベルトを避難指示の基準として採用しているわけであります。

 なお、国立がん研究センターの研究や、内閣府の低線量被曝のリスクに関するワーキンググループの報告書によりますと、被曝線量百ミリシーベルト以下の健康影響は、喫煙であったりとか運動不足などほかの要因による発がんの影響に隠れてしまうほど小さいものだ、このように分析をしております。

 引き続き、関係省庁とも連携をしながら、住民の健康管理、情報提供に努めてまいりたいと思っております。

 そして、私も、先日、根本大臣、そして石原大臣とともに、福島、現地に赴きまして、関係の自治体、知事さんも含めてお話を伺いましたが、線量につきましては、むしろ、除染を行う線量の一ミリシーベルトについてどうなんだろうか、もう少し国際的な客観基準を示してもらわないとなかなか帰還が進まない、こういう御要望が強かった、このように認識をいたしております。

○吉田委員 次に、環境大臣にお伺いいたします。

 この二十ミリ基準で二年間避難をしてもらっているわけですが、その結果、福島県民の被曝の状況、さらには健康リスク、どうだったでしょうか。

○石原国務大臣 もう委員御承知のことだと思いますけれども、福島県では、知事さんの強いお考え、県が主体となりまして、県民の皆様方の健康を長期にわたって見守るための健康管理調査を実施していただいております。国は、それを財政的あるいは技術的にバックアップするということで、七百八十二億円の基金を拠出するなど、取り組んでいるところでございます。

 今委員のお尋ねになりました住民の皆様方の被曝線量に関しては、福島県、福島医大を中心に調査していただいておりますけれども、事故後四カ月の外部被曝線量の推計を行っていると承知しております。全県民二百二万人のうち、およそ四十万人についての推計というものが終了しておりまして、九九・八%の方が被曝線量五ミリシーベルト未満とされているということでございます。

 この結果をどう見るかということについて、専門家の皆さん方は、放射線による健康影響があるとは考えにくいという評価をしたというお話を聞かせていただいているところでございます。

○吉田委員 避難するということは大変なことですけれども、それによって多くの方の健康を守ることができたという、今、状況だと思います。それはやはり評価されるべきではなかろうかと思います。

 それでは、ちょっと一問飛ばしまして、お金の問題をお伺いしたいと思います。

 東電の不動産賠償、随分かかりました。去年の二月に指針が出て、七月に基準をつくって、何回も何回も住民説明会をやって、いよいよこの三月、四月ぐらいに実際のお金が支払われるというところまで来たわけでございます。

 ただ、いまだに多くの方から、この不動産の東電の賠償金というのは、例えば高速道路などで土地を収用するときの公共事業の補償と比べて低いんじゃないのという質問が参ります。そこを改めて明らかにしていただきたいと思います。

○茂木国務大臣 基本的に、土地価格の算定につきましては、違いはないと考えております。

 ただ、東電による賠償の場合は、数多くの被災者の方に対します迅速な賠償を行っていかなければいけないということで、基本的には公示価格をもとに支払うことにしている。公示価格をもとに支払うということはどういうことかといいますと、固定資産の税額の評価が公示価格の大体七割ですから、逆に割り戻しまして、固定資産税の評価額掛ける一・四三、こういった形で出させていただいております。

 これに対しまして、今御指摘のあった、例えば高速道路等公共事業用地の補償につきましては、この公示価格も使いますが、それ以外に、周辺の取引事例等を参考にして、個々の物件ごとに価格の評価を行っている。恐らくその場合の方が、どうしても時間というのはかかってしまうんだろうと思います。

 もちろん、被災地の土地の賠償額につきましても、疑義があるという場合には、公示価格ではなくて、当該物件を個別に鑑定した結果に基づく東電への請求も可能となっております。

○吉田委員 続きまして、中間貯蔵施設の土地の買収についてお伺いします。

 これは今の質問とも関係するんですが、今回の不動産賠償は、所有権はもともとの所有者に残すということがございます。今後、中間貯蔵の、今、話し合い、調査が始まろうとしているところでございますが、そろそろ、用地をどういう考え方で買うのかということを検討せねばならないと思います。

 東電が賠償した部分はこの用地の買収価格から外れるのかどうか、東電が残した所有権というものの価値をどういう計算式で計算するのか、そこが、今後、この中間貯蔵施設建設に当たって大変重要なポイントになると思いますが、いかがでしょうか。

○石原国務大臣 吉田委員は、中間貯蔵施設の必要性については、復興副大臣もお務めになられ、仮置き場に除染をした土壌が山積みになっている、あるいは稲わらが放置されているものを目の当たりにされ、その必要性は十分御承知でありますので、このような、では、いざその土地を買収するならばというような御質問をいただいたものだと思っております。

 もうこれも御存じのことだとは思いますが、中間貯蔵施設の設置に当たっては、やはり、その施設が安全であるということを、地権者の方、また近隣の方々に理解していただくということが最重要であり、今、事前調査を行った上で、施設の具体的なイメージを、地元の理解を得て、しっかりお示ししていきたいと考えております。

 そこで、この価格というものが非常に重要になってくるわけですけれども、中間貯蔵施設の用地取得の方法は、委員の御指摘のとおり、これから実際に、今、茂木経産大臣がお話しになられたように、用地の買収とは別に、東電の補償ということが多分先に出てくることになると思いますので、非常に重要な課題であり、やはり地元、地権者の方々の希望を伺いながら、適正な価格で買うということをしっかりと検討していく必要がある、こういうふうに認識をしているところでございます。

○吉田委員 これは大変難しい問題ですので、ぜひ検討を始めていただきたいと思います。

 復興大臣に一問お願いいたします。

 子ども・被災者支援法ができました。基本方針が今どういう作成状況にあるのかということでございます。

 一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住し、または居住していた者及び避難指示により避難を余儀なくされている者並びにこれらに準ずる者を支援しようという法律ですが、問題は、この基準線量を何ミリにするのがいいのか。先ほど来、二十ミリとか一ミリとかお伺いしましたけれども、これも大変難しい問題だと思いますが、その辺の検討状況をお伺いします。

○根本国務大臣 吉田委員も、政府におられて、この法律を担っておられて、今の一定の基準の難しさ、今お話がありましたように、実は私も、この一定の基準が本当に難しいと思うんですね。一定の基準をしいた場合に、何か、地域を引き裂くんじゃないかとか、あるいは、それが例えば健康不安との関係でどういう意味を持つのか。実は、ここの一定の基準を決めるのは本当に私も難しいと思っております。

 ですから、法律上は一定の基準という文言になっている、具体的な検討は政府に任された。立法過程でも見ますと、一定の基準については総合的な要素を勘案して決める。さまざまな議論があったと理解をしております。

 したがって、一定の基準については、専門的、科学的、国内外の知見を集めて、そこで専門的に検討していただく。それを受けて、我々、総合的に考えて決めていくことが必要なのではないかと思っております。

 ただ、そうはいっておりましても、基本方針は、支援対象地域を決めろ、それは一定の基準以上、こうなっていますので、私は、施策についてはどんどんやっていく必要がある。昨年度も、リフレッシュキャンプ、あるいは健康管理調査、こういうものもやっておりますし、二十五年度の予算でも、例えば、低放射線量で、子供たちが屋外で遊べなかった、運動不足になった、肥満もふえている。このために、子ども元気復活交付金、屋内で全天候型の運動場で伸び伸びと遊べる生活環境の整備、こういうものも今回新たにやっておりますし、復興支援活動を行うNPOの支援。施策についてはどんどん推進していきたいと思います。

○吉田委員 時間ですので、これからも原発事故を含めた東日本大震災の復興への御支援を心からお願いして、終わります。

 ありがとうございました。

○玉木委員 民主党の玉木雄一郎です。

 本日は三月十一日、あの東日本大震災から二年がたちました。私も、警戒区域内を含め、何度も被災地に足を運びましたけれども、被災地は、農業、漁業、第一次産業を基幹産業とする地域であります。そして今、復興に向けて一生懸命現地で頑張っておられる方もいますけれども、TPPについて、きょうは中心に質問したいと思うんですが、やはり被災地の方は心配をされておられます。

 先日も、十分な情報公開がまだされていない、あるいは国民的な議論も尽くされていない、こういった内容を中心とする緊急要請が、北海道、東北の八道県の皆様からなされております。

 私も、民主党政権下で、経済連携PTという党内のTPPの意見の取りまとめを行う事務局次長をやっておりました。党内でも、そして国民の中でも議論の分かれる、そんな案件でありますから、そういった意見の集約、議論を進めること、大変困難を伴ったことは身をもって実感しております。しかし、だからこそ、この難しいTPPの案件については丁寧な説明が何よりも必要だというふうに思っております。その意味で、きょうは、この三月十一日、被災地の皆様に応える、そんな思いで真摯な答弁をぜひお願いしたいと思っております。

 まず初めに、先般、総理がアメリカに行って結んでこられた日米共同声明についてお伺いをしたいと思います。

 私は、この共同声明は二つの意味で画期的だと思っております。総理もおっしゃるように、文書の形で首脳同士でこういったことを結んだことは、これは確かに民主党政権ではできませんでしたし、画期的だと思っております。しかし、これまで国会の審議でもありましたように、その内容自体については新しいものがないと私も思います。

 ただ、これまで文章では決して書けなかったことが、中身も含めて新しいことが一つだけ入っていると思われるのは、第三段落の内容であります。

 それは、自動車や保険といった残された懸案事項に対処するなど、なされるべきさらなる作業があるということが文章上明確になっていることであります。

 これは、資料一のところに英文と日本語を並べて書いておりますけれども、冒頭に、ザ・ツー・ガバメンツ、両国政府は二国間交渉を継続します、それは、日本のTPP参加に対する、英語ではポシブル・インタレストと書いておりますけれども、参加に対する関心に関してたくさんの作業が残されているというふうに書いています。

 まず冒頭、お聞きをしたいのは、ここに書いてある自動車やあるいは保険、こういった残された作業が行われなければいけない、完結しなければならないと文章で規定されておりますが、この作業はいつまでに完結をしなければならないことが予定されているんでしょうか。まず、この点を教えてください。

○岸田国務大臣 御指摘の日米共同声明のこの第三段落目の意味ですが、これは、日米両国の間では、今日までもさまざまな関心事が協議をされてきました、そして、この共同声明が発せられた後もこうした関心事について協議をしていく、これを確認したというのが趣旨でありまして、こうした関心事項をいつまでに協議を完了するかということについては、この第三段落目の中には何も含まれておりません。

 そして、日米両国の間においても、いつまでにこれを完了するのか、こうした点については決まってはおりません。

○玉木委員 第三段落目が極めて重要だと思うのは、仮にこれが、TPP交渉に参加を認めてもらうための、いわゆるよく言われる前払い、あるいは参加のための入場料と言われますけれども、そういったことを両国間で合意した内容であれば、例えば自動車、保険の分野で一定程度の譲歩をした上で初めて交渉に参加できる。

 もっと言えば、資料二につけておりますけれども、TPP交渉には一連の流れがありますけれども、米国にはいわゆる九十日ルールというのがありまして、議会の承認を得なければ、交渉参加を、関係国を新たに認めることができないという仕組みになっています。

 その意味では、交渉参加に入る前に何か具体的な、言葉は悪いですけれども、お土産であったり、何か譲歩するものを、この明示されている、例えば自動車の分野で具体的に行わなければ、そもそも交渉入りができないのではないのかということも言われておりますけれども、そういったいわゆる前払いを約束したものになっていないか、この点、もう一度教えてください。

○岸田国務大臣 第三段落目の趣旨は先ほど申し上げたとおりですが、これは、引き続き日米間で協議を行うという趣旨でありますので、今後この協議が進展することを当然米国は期待はしていると思いますが、少なくとも、交渉参加するまでにこれをやらなければ交渉参加は認めない等、こうした条件を定めたものではないと認識をしております。

○玉木委員 メキシコやカナダがまさに九十日ルールで議会から承認をもらったときのUSTRから議会へのレターの中には、いわゆる自由化に対する準備度合い、そういったものが十分満たされていますよということが書かれています。ただ、これこれをやったから、具体的に、例えば日本がハイスタンダードの高いレベルの交渉に臨む用意ができているということがこれで認められましたということは、具体的なことは書いてなくて、極めて定性的に、準備ができているのでオーケーですよというレターになっています。

 私が何を申し上げたいかというと、全てのものを交渉のテーブルにのせるのがTPPの大原則だと思います。しかし同時に、全てのことをテーブルで決してもらいたいんです。つまり、いろいろなことが、譲ること、とることがあると思うんですが、事前に何かを譲ってしまって、例えば、私は、これはよく地元で支援者に話すときにこういうことを言うんですが、お茶室がありますよね。にじり口という小さいのがあって、あれはなぜ小さいかというと、武士が必ず刀を外してその中に入る、お互い武装解除して入って、それで、争うことをやめて、静かな心で向き合うというのがあのお茶室のつくりに出ているといいます。では、私が刀を置いて中に入ったら、相手はにじり口からも持って入れるちっちゃなピストルを胸に持っていたということになって、対等な交渉ができなくなる可能性があるんじゃないのかということが最大の心配なんです。

 これは推進派の方も、全てのものをのせてやったらいいじゃないか、ただ、全てのことをやはりテーブルで決してくれと。その全てをテーブルにのせて、何かを事前に譲った、あるいは武装解除したり、あるいは一部武器を置いて、それで交渉に臨むようなことを明示的に日米間で決めてきたんじゃないのかということを心配する方がいるんです。

 ですから、答弁してもなかなか明確な答えは得られないと思いますので、要望したいと思うんですが、全てのことを交渉のテーブルにのせてやる、あわせて、全てのことを交渉のテーブルで決してきてください。事前に何かを譲るようなことをして、お願いして交渉に入れてもらうようなことをしたのでは、総理がおっしゃるような強い交渉力が得られないと思いますので、その点についてはぜひお願いをしたいと思います。

 最後に、これに関して一つだけお聞きしますけれども、交渉を担当する人は、一体、これから誰になるんですか。

○岸田国務大臣 まだ我が国は交渉参加を決定したわけではありません。これから総理が最終的に判断するということになると存じます。

 当然、実務的には外務省は大きな責任を担うことになると思いますが、仮に交渉に参加するということになりましたら、改めて政府としてしっかり体制を確認して、交渉に当たっていかなければならないと考えます。

○玉木委員 今あえてお聞きをしたのは、USTRは単一の組織でありますね。しかし、例えば、自動車のことだったら茂木大臣、農林水産の分野だったら林大臣、そして、外交全般であれば岸田大臣というふうに、日本はそれぞれ、経済、外交交渉についての担当が各役所、各大臣に分かれています。

 これはずっと言われてきたことなんですが、分かれてきたことによって、日本全体としての交渉力がしっかりと保てないのではないのか。向こう側が一人で来ているのに、こっちはずらっと並んでいて、身内同士で相談したりけんかしたりするということがよくあると言われています。

 ですから、先ほど、強い交渉力をぜひ維持してほしいと申し上げたその一つとして、TPPを含む経済連携の担当大臣、内閣府特命担当大臣でもいいんですが、その専任の大臣を明確に設けて、強い権限のもとで交渉に臨む、こういった体制をぜひつくっていただきたいというふうに、これは総理にお願いを申し上げたいと思います。

 次に、いわゆる極秘条件についてお聞きをしたいと思います。

 これは先週もこの予算委員会でも議論になりましたけれども、昨年六月にメキシコ及びカナダが交渉参加を承認された際に、それまで合意された事項については、再協議、いわゆるリオープンができない、そういったことに同意をした上で、のんだ上で、両国は交渉に参加が認められたというようなことが問題になりました。

 実は、昨年七月の時点で、政府から我々も、そういった報道がある旨の説明は受けておりました。

 きょう、参考につけておりますけれども、インサイドUSトレードという、アメリカの業界ではよく読まれている雑誌でありますけれども、多分これがそういった報道のもとになっております。

 二つ、大事なことが書かれています。

 下線を引いて、私の事務所で仮訳をつけておりますけれども、一つは、今あった、合意済みの事項については再協議ができないんだということ。このことについては、私の理解が確かであれば、先週、岸田大臣、再協議ができないんだということについては、確認しているという政府としての御答弁だったと思いますが、あわせて、もしそれがそうだとすれば、どの程度までがかっちり決まっていて、再協議ができない、そういったものがどのぐらいもう既に決まっているのか、あわせてお答えいただければと思います。

○岸田国務大臣 メキシコ、カナダ、こうした新しく交渉に参加した国々のありよう、あるいは条件につきましては、さまざまな報道がされております。

 先週お答えいたしましたのは、我が国としては情報収集に全力を挙げておりますが、相手国との信頼関係もありますので、具体的にどの国に何を問い合わせたか、詳細等については予算委員会の場で控えさせていただく、こうした答弁をさせていただきました。

 そして、その中で、これまで得られた情報の中で、参加国の方からは、包括的かつ高いレベルの自由化にコミットすること、そして交渉の進展をおくらせないこと、こういった考え方を示してきているということを申し上げました。

 そして、その中の一つの例として、前の政権の時代、昨年三月一日にまとめた文書「TPP交渉参加に向けた関係国との協議の結果」、これは内閣官房、外務省、財務省、農水省、経産省合同で昨年三月一日に発した文書で、公にされておりますが、この中に書かれている情報として紹介をさせていただきました。

 そして、その中で、議論を蒸し返さないこと、さらには交渉の進展をおくらせないこと、こういった考え方がTPP参加国の中から示されている、こういったことを紹介させていただいた次第です。あわせて、こうした意見はありますが、いずれも、条件として九カ国で同意しているわけではない、こうした意見も添えられているということ、これを紹介させていただいたということです。

 そして、こうした情報も含めて、我が国はさまざまな情報収集に努めている、こういったことを先週お答えさせていただきました。そして、あわせて、我が国には、報道で示されているような条件はまだ何も示されていないということ。

 いずれにしましても、我が国はまだ交渉に参加を決めたわけではありません。交渉参加が仮に決定されたならば、さまざまな結果は全て交渉の中で決まるということですので、我が国の交渉能力が問われる、こういったことになると考えています。

○玉木委員 その交渉能力が極めて大事なので、きょうはそのことについて幾つか質問しておりますけれども、既に決まったものについては再協議は認められないということは、一つ、その中からも書かれていますね。

 私がもう一つお聞きをしたいのは、今まだ決まっていないけれども交渉が行われているものについて、ここに書いてある、いわゆる、新しく加盟する国々には、英語でビートー・オーソリティーと書いていますけれども、拒否権が認められないということが書かれています。

 これは極めて重要なことで、交渉力を発揮しようと思っても、例えばこういうことです、既に入っている九カ国が何かを決めようとして、ちょっと待ってくれ、これはうちの国には少し合わないので少し待ってくれと言っても、既存の九カ国が合意した時点で、あるチャプターの妥結はそこで終わり、決まってしまうということになって、後から口を出す権利がないのではないかということが、ここに書かれているわけですね。

 これは報道ベースなので、私は報道がどうこうと言う気はないんですが、去年の七月の時点で、あるいは六月の時点で、外務省はこれを把握しています、少なくともこの報道は。そういう説明を受けています。

 ちなみに、稲田大臣、外務省はこのインサイドUSトレードを買っているんですよ。何でわかるかというと、行政レビューシートというのがありますよね、前に申し上げた。あれは検索システムを一緒に入れてあって、インサイドUSトレードと入力すると出てくるんです、当該の行政レビューシートが。これはオープンにする仕組みとして非常にいいので、こういうものをぜひ残してもらいたいなということを要望したいと思います。

 本論に戻りますが、このインサイドUSトレードの報道は、去年の六、七月で外務省は把握しています。この拒否権が新しく入る国に認められるか認められないかというのは、交渉のルールそのものを決めるのに極めて大事なんですね。

 ですから、こういったことについて、事実かどうか、このことは確認したか。する必要があると思うんですね。これは確認していますか。

○岸田国務大臣 まず、御指摘のように、こうした報道があるということ、事実でありますし、我々も認識をしております。

 その上で、確認したかどうかという御質問ですが、先ほども申し上げましたが、要は相手国との信頼関係がありますので、具体的にどの国に何を確認したか等も含めて、詳細についてここで申し上げるのは控えさせていただきたいと存じます。

 その当事国自身が立場を明らかにしていない、そこの中で我が国がコメントするのは控えなければならないと思っています。

○玉木委員 国名を答えていただかなくても結構なんです。

 これはちょっと下線を引いていませんけれども、この英文の中に、インサイドUSトレードの中に、ここの日本語で書いている次のパラグラフの三行目ぐらいにテーク・イット・オア・リーブ・イット・ベーシスと書いてあって、これはどういうことかというと、交渉参加を表明したら、いわゆる秘密条件のようなレターが送られてくるか、送付されて、あとはそれをのむかのまないかということをその時点で判断を迫られるような内容だということが書かれてあるんですね。

 つまり、交渉参加を表明する前に、そういうことがあり得るのかどうかということは、既存の九カ国に対してしっかりと私は確認しておく必要があると思うんです。これは別にメキシコやカナダからとれというんじゃなくて、既存の九カ国を含めて、そういうことがあり得るのかどうか、そのことについては、私は、いわゆる拒否権が与えられないということが我が国に求められるとしたら、これは交渉の余地、度合いを決める上で物すごく大事なことだと思うんです。

 ですから、その結果がどうであったかはあえて言う必要はないと思うんですが、そういったことをきちんと問題意識を持って、関係各国、既存の九カ国と、今新しく入った二カ国、こういった国々にしっかりと問い合わせをするし、こういったことは確認していきたいという、その意思は明確に示していただきたいと思います。

○岸田国務大臣 御指摘のように、まず、情報収集は大変重要だと認識をしております。そして、我が国には御指摘のような条件は現在提示をされていない、これも事実であります。

 そして、今後、交渉に当たりまして、現在得ている情報として、TPP交渉においては、項目として、今妥結している、確認がされている項目は、中小企業をめぐる項目だけだという情報も得ております。

 その中にあって、我が国として最大限国力に資するため努力をしていかなければならない、交渉力が問われるというふうに思っています。

○玉木委員 これは大臣、非常に大事な条項だと私は思うんです。いろいろなことは交渉でもちろん決めなきゃいけませんから言えないと思うんですが、これは交渉のルールそのものにかかわるので、どこまで交渉の余地があるかどうかということがそこで決められてしまうので、交渉で頑張ろうと思っても頑張れなくなる可能性があるんですね。ですから、ここについてはぜひしっかりと確認をしていただきたいのと、そして、仮にそういう不利な条件が突きつけられる可能性があれば、そういったことについては、そのルールそのものを変えてくれということをこれまた外交交渉力で働きかけていくのが、我が国の国益を守る上でも大切だと思っているんです。

 九カ国が同意をすればそのルールが変わるかもしれないということも少し示唆されたことも書かれておりますので、必ず確認をした上で、そのことがおかしな内容である可能性があれば、それを変えていくような交渉もあわせて進めていかれることをぜひお願いしたいというふうに思います。

 時間がなくなってきたので、ちょっと試算についてお伺いします。

 先週、官房長官から、統一試算ということを出すということで、総理の交渉参加の表明前に出すとおっしゃったと認識しているんですが、その点は間違いありませんか。

○菅国務大臣 委員も委員会で聞いておられると思いますけれども、省庁ごとに試算を出すんじゃなくて、内閣官房で政府としての統一試算というものを今作業中であります。

 そして、これについては、こうした試算等も勘案しながら参加するかしないか判断するということを、この予算委員会で総理は答弁をいたしております。そして、私たちも、この政府としての統一試算については、しかるべき時期にこれは公表したいというふうに思っています。

○玉木委員 それは総理の参加表明の前ということでいいんですか。もう一度。

○菅国務大臣 そこも含めて、しかるべき時期に政府として判断をしたいということです。

○玉木委員 試算、これは大事だと思うんですよ。三つあってばらばらで判断できないから一つにまとめようということでやっておられるわけですよね。だったら、やはりそれを出した上で、国民的な議論にも付した上で、しっかりと判断を最終的に総理がなされるというのが筋だと思うんですね。それを、判断の前に出されないんですか。もう一度お答えください。

○菅国務大臣 私は、前回と全く同じ答弁をさせていただきます。

 今、内閣官房で政府の統一した試算というものを努力しておりまして、そこについて、これはしかるべき時期に政府として責任を持って公表をさせていただきたいということです。

○玉木委員 試算はやはり総理が交渉参加を表明する前に出すべきだと思いますし、そういうふうに先週答弁されたと理解していますけれども。

 資料の四に、民主党時代の三つあったうちの一つをつけているんですが、多分、今政府で議論されているのも、この内閣官房がまとめたGTAPモデルということを多少何か修正するような内容になっているんだと思います。

 これを見ていただくとわかるんですが、幾つか書いていますが、真ん中の棒グラフ、TPP一〇〇%自由化と書いていますけれども、試算を出すときに、これは日中EPAと日・EU・EPAの場合は、センシティブ分野の自由化をしない、あるいは中国が自動車を自由化せずということを前提に計算もしているんですね。一方で、全部自由化した場合の日中のEPAも書いています。

 今度試算を出されるときには、今、この第三パラグラフの話に戻りますけれども、アメリカもセンシティブ品目があります、日本もそうです、それについて一定の合意をしましょうというようなことが一定程度あるのであれば、日本については、これはもうセンシティブ品目は明確なんですよ。米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖と置いています。こういったことが自由化の対象にならない、あるいはアメリカにおいて日本からの自動車に対して関税がかかったままだというようなことの前提でも試算を出すのが誠実なやり方だと私は思っているんですけれども、もう一度、いつ出すのかということと、そして、こういった具体的な一定の前提条件を置いたもので試算をしっかり出すべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。

○菅国務大臣 何回言っても同じですけれども、しかるべきときに客観的な試算を出したいと思います。

○玉木委員 私は、余り自民党さんの悪口とか言いたくないんですけれども、例えば二十四年の七月十三日に「野田政権のTPP「秘密交渉」への抗議と申し入れ」というのがあります。これには、「今、野田政権が行おうとしていることは、秘密交渉を行い、情報を隠し、国民的議論を行わず、米国の要求のまま入場料を支払い参加するという、まさに国益を損ねる二枚舌外交そのものである。」という御批判を我々はいただきました。

 済みません、私が大変尊敬する、そしてお慕い申し上げている茂木大臣が、平成二十三年十一月八日の予算委員会でこういうふうにおっしゃっています。「現段階では、政府の情報収集、そして国民に対する説明、私は決定的に不足していると言わざるを得ないと思います。このような状況下で」「日本が交渉参加を表明することには、我が党としては反対をいたします。」ということをおっしゃっています。

 私は、正直、これは余り状況は変わっていないのではないかと思いますし、何より、冒頭申し上げました、被災地の皆さんは非常に不安な思いでいます。

 ですから、交渉に参加するかどうかは、政府の決定、専権事項でありますし、総理が最終的に判断されると思いますけれども、だからこそ、丁寧な情報の開示と国民に対する説明を必ず行っていただきたいというふうに思っております。

 丁寧に丁寧に進めていかない限り、結局、私は、このTPPがまさに国益にかなうものにならないと大変懸念しておりますので、そのことを最後に強く要請申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。

http://anago.2ch.net/test/read.cgi/asia/1352538051/ http://anago.2ch.net/test/read.cgi/asia/1352126653/

3月11日

[編集]

○後藤(祐)委員 民主党の後藤祐一でございます。

 まず冒頭、二年前の本日、三月十一日、東日本大震災で犠牲になられた皆様の御冥福をお祈りするとともに、いまだ仮設住宅に暮らす皆様、そして被災地で復興に向けて日々奮闘されている皆様とともに、我々政治家も、この復興をしっかりこれからも早急に進めていく決意を申し上げて、質問に入りたいと思います。

 本日は、まず、憲法改正について総理のお考えを幾つか御確認させていただきたいというふうに思います。

 総理は施政方針演説の中で、憲法審査会の議論を促進し、憲法改正に向けた国民的議論を深めようではありませんかというふうにおっしゃられております。この議論は、最終的に憲法改正の場合は国民投票になるわけですから、そういう意味でも国民的議論を深める必要があるというふうに考えておりますし、私は、憲法改正はすべきだという立場だということを、改めて冒頭、申し上げておきたいと思います。

 その中で、おととい、三月九日土曜日のBS朝日の番組で、総理から非常に、今の段階でここまでおっしゃるんだなというような発言がございました。

 この番組で、総理は、国連軍に参加することがあるということかと問われまして、そうですねというふうにお答えされておられます。

 また、いわばPKOがですね、もう少し国際的な集団安全保障ですね、集団的自衛権とは違いますね、みんなでやるやつですね、世界で。その中には参加できる道を残した方がいいのではないかと。これはそのまま安倍総理の発言でございます。

 このような発言をされたのは事実でしょうか。そして、国際的な集団安全保障に、また具体的には国連軍に参加すべきだというふうにお考えでしょうか。総理の御見解をいただきたいと思います。

○安倍内閣総理大臣 それは、私が出た番組において、自民党の憲法改正草案、昨年の四月の二十八日に出したものでありますが、あの四月二十八日に出した我が党の改正法案について、九条の改正について、第一項、第二項ございますが、その一項、二項についてどのように改正するのかという問いがございまして、司会者は田原総一朗氏であったんですが、田原総一朗氏は、第一項は残しておいた方がいいでしょうという意見を開陳されました。我が党も一項は基本的に残していますよという返答をしたわけでございます。

 田原総一朗氏から、しかし、この部分が少し書きかえられていますねというお話だったものでございますから、一部、いわば条文を整理したわけでありますが、同時に、これは一つの考え方として、国権の発動たる戦争は放棄する、こう書かれているわけでありますが、武力の行使あるいは威嚇は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する、こう二つの段に、自民党草案では分けたわけでございまして、その趣旨を聞かれましたので、いわば集団安全保障の中において、例えば国連軍が結成された際と。

 ただ、国連軍については、その番組でも申し上げたんですが、朝鮮戦争の際には、当時恐らくソ連が欠席をしたんですね、それを決める際に。ですから、そこで一時的な成立はしましたが、米国は、国連軍という概念において、他国のコマンドのもとに米軍が活動することはないということを今鮮明にしておりまして、事実上、国連軍は結成されるという可能性はほとんどないんですが、しかし、ほとんどないといっても、これは、国連に加盟をしていて、そして我々は国連改革を求めている中において、最初からそういう責任を全て排除するという考えはとるべきではないというのが私の考えでありますから、そこで、そういう解釈も可能にするという意見もある中において、この条文が整理をされた。

 しかし、条文が整理された主たる目的は、もう少しわかりやすい条文にしていくというのが主たる目的だったというふうに、私は記憶しているところでございます。

○後藤(祐)委員 国連軍への参加は排除されるべきではないという明確な答弁をいただいたと確認させていただきました。

 今、総理のもとでは、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会というのが第一次内閣のときに引き続いて行われておりますけれども、この中では、我が国周辺の安全保障環境が一層厳しさを増す中、それにふさわしい対応を可能とするようという問題意識のもと、集団的自衛権の問題を含めた憲法との関係の整理につき研究を行うという趣旨のもとで行われていると承知しております。

 これは主に集団的自衛権の議論をされていると認識しておりましたが、今総理が答弁された、国連による集団安全保障についても、この懇談会の中で議論されていると理解してよろしいんでしょうか。

○安倍内閣総理大臣 一応、念のために繰り返しておきますが、国連軍という概念はありますが、実態としては、アメリカは、国連軍については、自分たちは事実上参加しないということを明確にしておりますので、その中においては、安保理の常任理事国である米国、そして米国の参加しない国連軍というのは事実上考えられませんから、それは恐らく現実問題としてはないだろうということは、これは今、世界の常識になっているわけであります。

 そのことを申した上において、しかし、そもそも、最初からそれを排除すべきではないだろうということを申し上げたわけであります。これは理論上の話でございますが、概念上の話でありますが、それを申し上げたということでございます。

 と同時に、今の御指摘でございますが、安保法制懇を復活させたわけでございますが、この中の例えば四類型におきましては、集団的自衛権の行使ということだけについて、解釈の変更だけについて議論をしているのではなくて、安全保障環境が大きく変わった中において日本をどのようにして守っていくべきか、そして、日本が国際社会においてどういう責任を果たしていくべきかということに関して議論がなされているわけでございます。

 例えば、四類型の中におきましても、公海上における、日本の艦船と米国の艦船がともに走っていて、米国の艦船が攻撃を受けた際に、我が国がそれを助けなくていいかどうか。これはまさに集団的自衛権の問題なんだろう、このように思います。

 もう一つは、BMDについて、日本に落ちてくるミサイルは撃ち落とすけれども、例えばグアムに飛んでいくミサイルは落とさなくていいのかどうかという問題ですね。

 そしてもう一点は、例えば、海外でPKO活動をしていた際に、ともにそこで活動をしている国の軍隊にテロ等の襲撃があったときに、それを救援、救助することができるかどうか。これは、海外での武器使用を含む、いわば言ってみれば、集団的自衛権の行使というよりも、集団安全保障の中で活動をしている際の海外での武力行使についての解釈が今のままでいいのかどうかという観点からの議論なんだろうと思います。

 そういう意味において、やはり、これは果たして今までのままでいいのか、そして、その解釈はそのままでいいのか、新しい認識も必要ではないかということも含めて、さまざまな真摯な議論が行われているというふうに承知をしております。

○後藤(祐)委員 先ほどの懇談会において集団安全保障についても議論されているという御答弁でございましたことを確認したいと思います。

 さて、憲法九十六条についてでございますが、私はこの九十六条を改正すべきという立場でございますけれども、この九十六条の議論というのは常に、改正した後、では、どの条項を改正するんですかという議論になります。

 今、九条の話がかなり先行してしまうと、特に九条改正を心配される方からは非常に御懸念が示されるところなのでございますけれども、これも、先ほどのBS朝日の番組で、九十六条を変えた後、どこを変えるんですかという御質問があって、総理から、一気に全部はできませんから逐条的にやっていくということになりますが、そこでやはり国民的な議論が深まっている分野からやっていきたいと思いますと御発言されておられます。

 この国民的な議論が深まっている分野とは、どの分野のことなんでしょうか。九条のことでしょうか。

○安倍内閣総理大臣 先ほど委員が九条を先行というふうにおっしゃったんですが、その分野では、私は九条ということで申し上げたのではなくて、田原総一朗氏から聞かれて、我が党のいわば憲法改正草案の九条についての解説を求められましたから私は解説しただけであって、それを最初にやっていくということは一切申し上げていなくて、自由民主党の総裁として、解説を求められましたから、その解説をしたということでございます。

 そして、国民の議論については、どの条文について深まっているということについて、今、私はそのことについてまだ述べる立場ではないんだろう、このように思います。前文もあれば、これは、さまざまな条文があるんだろうと思います。

 自由民主党としては、まず、前文から改正条項まで含めて、全て、我が党が考える憲法の草案について相当の議論をしました。相当の議論をした上で、政党の責任として、日本の将来はこういう国であるべきだという、おのおのの議員の責任でもって憲法改正草案をお示ししているわけでございます。

 この草案をもとに、国民の中において議論が深化、活発、そして広がっていくことが望ましい、このように考えております。

○後藤(祐)委員 九十六条改正というのは、結果的に、九条を過半数で改正するために、両院過半数で通すためにやるのではないかという議論になってしまうと、なかなか九十六条そのものを改正する議論というのがうまくいかないんじゃないかということを、私はむしろ懸念をしております。

 総理は、その番組の中で、憲法を改正するリアリティーを高めていきたいというような御発言をされておられますけれども、例えば地方自治に関する規定ですとか、あるいは衆議院、参議院のあり方ですとか、こういったものを見直すというのは、まさに今、決められる政治をどうやってつくっていくかといったことが議論になっているときに、非常にリアリティーのある議論ができると思います。

 九条論で九十六条がとまるという非建設的なことにしないために、九十六条を変えた後、どこを変えるんだという不毛な議論に陥らないために、私は、一つ建設的な提案をここでさせていただきたいと思うんです。

 天皇陛下に関する規定ですとか、あるいは九条ですとか、基本的人権ですとか、あるいはこの九十六条そのもの、最高法規性、こういったものというのは、過半数で本当にいいのかどうかという大きな議論がある中で、私は、これは三分の二を残すべきではないかと思うんです。

 一方で、国会に関する規定ですとか、内閣に関する規定ですとか、先ほどの地方自治に関する規定ですとか、いわゆる統治機構論、この部分については、むしろもう少し柔軟に変えるべきではないか。具体的には、両院の過半数プラス国民投票という形で、少しやわらかくすべきではないか。

 つまり、憲法の条項によって、三分の二を求めるものと過半数でいいものを分けるという議論について、どのようにお考えでしょうか。

 ちなみに、これは、ロシアですとかスペインですとかカナダですとか、世界各国の憲法で例が実はございますし、あと、もう一つあり得る議論としては、三分の二がちょっと高過ぎるので五分の三という要件はいかがかというのも、これは実は笑い事ではなくて、世界各国の憲法で例がたくさんございます。

 これについてのお考え、総理のお考えをいただきたいと思います。

○安倍内閣総理大臣 実は、今、後藤委員が指摘になった御議論は、自民党の中でも議論がされました。三分の二を、二分の一ではなくて五分の三という意見もありました。

 そういう中において、しかし、今、憲法の議論について、やはり極めて低調なんですね。なぜ低調なのかといえば、これはやはり、いろいろ一生懸命議論したって、結局、国会議員が三分の二だから、きっとそれでやらないんでしょう、こういう、いわば中長期的な大きな課題には、国会議員は取り組む勇気はないんじゃないのということなんですね。ですから、結局、その中において、深まってはいかないんですよ。そこでリアリティーがないということだったのではないかと思います。

 しかし一方、二分の一ということになれば、これはすぐに国民投票に直面する。国民の皆さんが議論をして、そして、自分たちの一票で憲法を変えていくか、あるいは変えていかないかの判断をせざるを得ないという現実に直面していくことになるんですね。私は、そこで初めて、憲法という問題、課題についてみんなが真摯に議論をしていくという状況をつくり出すことができるのではないか、こう思うわけであります。

 確かに、今委員が指摘された、そういう考え方も一つの考え方としてはあるんだろう、このように思うわけでございますが、しかし、憲法が制定されてずっと六十年以上、全然これは変わらなかったという現実がございますから、それを変えるというのは、やはり大きな思い切った判断と決断と勇気が必要ではないのかな、私はこんなように思うところでございます。

○後藤(祐)委員 太田国土交通大臣、公明党の中ではまた違う議論があると思うんですけれども、今の三分の二、二分の一をあわせて残すような提案も含めて、公明党としてのお考えを聞かせていただければと思います。

○太田国務大臣 突然のお伺いですが、私は公明党を代表する立場では今ありませんから、内閣の一員としてという範囲で申し上げますと、公明党としても、九十六条ということについて、改正していいのではないかという方もいらっしゃり、また、三分の二を守るべきだという両論があるというのは事実で、今詰めているところでございます。

 ただ、私は、憲法調査会に二〇〇〇年から二〇〇五年までの間、五年間ずっと所属していた唯一ではなくて唯二の、中山太郎先生とでありまして、安倍内閣のときに国民投票法案というのを成立させたということからいきますと、我が党は加憲という立場に立っておりまして、与党と野党ということの全面的な、一部は除いて当然なんですけれども、三分の二というのが、与党のみでそれを形成するという以上に、与党も野党も多くの国会議員が賛成するということの中に、部分改正としての加憲として、今総理もおっしゃいましたけれども、この項目について、この項目についてという投票が行われるというのが国会での三分の二条項の持つ意味であろうというふうに思っております。

 幅広い国会議員の意思の形成というものが国民投票法案では必要であるという考え方の上にこの法案が成立したという経過を、私は重視しなくてはいけない、このように思っています。

○後藤(祐)委員 憲法論についてはこれからもじっくり議論を深めていきたいと思いますが、次に、行政改革について質問をさせていただきたいと思います。

 第一次安倍内閣の際に、安倍総理が一番行政改革の中で力を入れたのは恐らく公務員改革だったのではないかというふうに思いますが、二〇〇七年の参議院選挙の直前の国会を延長してまでも国家公務員法改正案を通されました。

 そのときの衆議院本会議での安倍総理の答弁で、この法案の内容的な説明も含めて申し上げますが、こういう答弁をされておられます。

 「各省庁による再就職あっせんを禁止し、そして官民人材交流センターに一元化するほか、離職後の再就職に関する規制の導入、再就職等監視委員会の設置等により、退職管理の適正化を図ることとしております。これらの措置により天下り問題は根絶できるものと考えております。」と答弁しておられますが、本当に根絶できたのでしょうか。

 我々は、その後、二〇〇九年に政権をお預かりしてから、やはり天下り問題は根絶できていないと考えまして、その後、あっせんの全面禁止、これを早急に、政権交代したあの二〇〇九年九月のうちに決めました。

 そして、独立行政法人の役員については公募制にするですとか、実際、その数字がそれで変わったんですね。第一次安倍政権のとき、例えば、独法の常勤役員に占める公務員OBの割合というのは、二〇〇六年十月一日で三九・四%だったんですが、我々の政権の後半、昨年の十月一日現在、六・五%まで下がっています。

 また、公益法人、ここはまさにあっせんで行く場合が多いんですけれども、この二〇〇九年度というのは、主に六月に退職される方が多いですから、霞が関のいわゆる管理職ベースで見た場合に、三百九十八人の方が公益法人に再就職されていたんですが、その次の年、我々が厳しくあっせん禁止をしてから、九十六人に、ほぼ四分の一に減っているんですね。我々は、そこをやったからこそ、かなり天下りに対しては厳しい態度を示せたというふうに思っておるんです。

 総理に伺います。

 第一次安倍政権のときの公務員制度改革法案、天下りに関しては甘かったんじゃありませんか。

○安倍内閣総理大臣 甘かったという御指摘でありますが、しかし、いわゆる天下りに対して、あの法律改正は二つ意味があって、一つは、省庁の権限を背景としたあっせんによる天下りはなくしていくというものであります。ということは、それがそれまで広く行われていたわけであります。もう一つは、いわば役所組織における能力による昇格等を決めていくということであります。

 そして、これはまさに今までなかったところ、新しいところに新天地を切り開いていくわけでありますから、それは相当の困難さがあったということでありました。同時に、それは不断の努力によって達成されるべきものだろう。しかし、あのときにこの法律改正をしなければ、今日行われているさまざまな前進は全くなかったということは確かに言えるのではないかと思います。

○後藤(祐)委員 甘かったかどうかについての答弁は全くなかったんですが、数字がこれを物語っていますので。

 稲田大臣に伺いたいと思います。

 今、総理は、権限を背景にしたあっせんを禁止したとおっしゃっていますが、この権限を背景にしたという修飾語をつけちゃうところが役所の言いなりなんです。あっせんを禁止すると、明確に我々ははっきりさせたわけです。このあっせんの禁止については、二〇〇九年九月二十九日の閣議において、内閣総理大臣発言ということを根拠に行ってきましたが、これは現時点において有効なのでしょうか。

 ちなみに、このあっせん禁止が有効かどうか、二月二十八日現在で事務方に確認したところ、今の時点では有効なのかどうかもわからないというような御説明を受けておりますけれども、今、三月十一日において有効かどうかを確認します。教えてください。

○稲田国務大臣 ただいまの委員の御指摘は総理の発言ということでございますので、総理の発言自体を安倍内閣が引き継ぐことはないと思います。

○後藤(祐)委員 ということは、現時点では、あっせん禁止は有効でなくなっていて、あっせんは可能だということでしょうか。

 そして、もしあっせんが可能だとすれば、いかなる基準によって、誰があっせんをすることが認められているのでしょうか。

○稲田国務大臣 再就職のあっせんの禁止や新規採用の抑制等により公務員の年齢構成の高年齢化が進展している中、組織の活力を維持向上させることが課題だと思っております。

 このような状況の中で、公務員がみずからの能力を生かし、第二の人生を選び取って、その能力を発揮していくことは重要であると思っております。

 そのため、早期退職募集制度の施行に合わせて、それを効果的かつ透明性の高い形で行うため、民間の再就職支援会社を活用した再就職支援を行う仕組みを導入することが現政権での考え方であると認識をいたしております。

○後藤(祐)委員 稲田大臣は、御自分の著書「私は日本を守りたい」という本において、天下り、わたりは全面禁止、在職期間に応じた一定の期間は、いかなるルートによるものであれ、許認可の及ぶ業界等への再就職を禁止すべきだと私は思っていますと書かれておられますが、今されていることというのは、その本で書いていることの全く逆をやられておられないでしょうか。

 安倍総理に伺いたいと思いますが、あっせん禁止を継続する意思はありませんか。今、稲田大臣がお答えになられたように、あっせん禁止はやはりやめてしまって、その昔のようにあっせんをある程度やるというところに戻るということでよろしいんでしょうか。

 総理にお願いします、稲田さんにはさっき聞いたんですから、この質問は。

○山本委員長 もう一回、短く、ちょっと稲田さん。(発言する者あり)まあ聞いてください。

○稲田国務大臣 今、私の著書を引用いただきましたが、その精神は今も変わっておりません。

 そして、安倍第一次内閣において、国家公務員法を改正して、そして、府省庁のあっせんによる再就職を禁止したところと認識いたしております。

○後藤(祐)委員 であるならば、現在あっせんが行われているわけであって、何月何日に、どのような規定においてあっせんをルールで決めたんでしょうか。

 何らかのルールがなければあっせんはできないと思うんですけれども、その根拠を示してください。

○稲田国務大臣 現政権の基本方針につきましては、先ほど私が答弁いたしたとおりでございます。

 安倍第一次内閣において国公法を改正をして、府省庁のあっせんによる再就職は禁止をいたしておりまして、再就職監視委員会において厳格に運用しているところと認識をいたしております。

○後藤(祐)委員 再就職監視委員会は機能していなかったんですよ。そこで、動かすには新たな基準が必要なんですよ。その基準があるのですかと聞いているんです。

○稲田国務大臣 委員が何をこだわっておられるのかわかりませんが、再就職監視委員会は、国会同意を得て委員長が任命され、昨年三月に立ち上がったところ、同委員会における監視体制のもと、現行の再就職規制を厳格に運用してまいりたいと思っております。

○後藤(祐)委員 今、ルールが本当にないんですよ。

 例えば、経済産業省から電力会社に行っていいのかとか、あるいは、補助金を幾ら交付していたらその補助金をもらった会社に行っちゃいけないかとか、昔は人事院の承認というのがあって、物すごく細かくルールが決まっておりました。これに関するルールは今存在しないんですよ。だからこそ、あっせんをするときには相当気をつけてやらなきゃいけないはずで、相当厳密な基準がないと、あっせんはできないはずなんです。

 今のような曖昧な答弁では、例えば、この三月三十一日にやめる方がもしかしたらおられるかもしれない、あっせんは既に行われているかもしれないんですよ。

 では、現時点で、あっせんの準備をされているかどうかを伺います。

○稲田国務大臣 何度も同じ答弁で恐縮でございますけれども、安倍第一次内閣において国公法を改正いたしまして、府省庁のあっせんによる再就職を禁止いたしております。そして、再就職監視委員会において、その運用を厳格にしているところでございます。

○後藤(祐)委員 要するに、ルールなきままあっせんをしているという状態に至ったということなんです。信じられないことです。

 再就職監視委員会で、どういう会社にだったらあっせんしていいのか、どういう会社だったらよくないのかというルールが今、示せないじゃないですか。それをぜひ……(発言する者あり)では、今その申し出があった場合にはどうするんですか。あっせんはできる状態なんですよね。していないですが、これからできるわけですよね、現時点では、法制上。

 あっせんができる以上、何らかのルールが必要なわけで、そのルールをぜひこの場に示していただきたいと思います。

○稲田国務大臣 何度も恐縮ですが、あっせんは禁止いたしております。

○後藤(祐)委員 あっせん禁止は継続しないで、あっせんできると先ほど答弁して、今、あっせんは禁止していると答弁して、どっちが正しいんですか。どっちの答弁が正しいかわかりません。

 総理、ちょっと、はっきりさせてください。

○安倍内閣総理大臣 あっせんは禁止をしております。

 ですから、安倍内閣において、かつて行われていたような、そうした省庁によるあっせんは行わないということは、はっきりと申し上げておきたいと思います。

 そして、今、委員は、何か具体的な事柄を挙げて、これがおかしいじゃないかと言っておられるのではなくて、あっせんを禁止していないんじゃないかと、まるで、やっていないことをやっているかのごときの質問をされても、なかなか答弁するのが難しいんですよ、正直言って。

 ですから、申し上げたいことは、我々はあっせんはしないということは申し上げておきたいと思います。

○後藤(祐)委員 時間が来たのでこれで終わりにしますが、再就職監視委員会による、権限なんかを背景にしないあっせんは否定していないですよね、今の答弁も。

 要は、府省庁によるあっせんはしないというのはわかりますよ。再就職監視委員会によるあっせんは否定していないですよね、今の総理の答弁は。かつ、そこに、どういうところだったらあっせんできるのかというところの基準も示せていないですよね。

 そこは大変な問題だということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。


平成25年

[編集]

金田委員 私は、自由民主党・無所属の会を代表いたしまして、自由民主党・無所属の会提出の編成替えを求めるの動議に賛成、政府提出の平成二十四年度予算に反対の立場から討論を行います。

 平成二十四年度政府提出予算は、見せかけだけの粉飾予算、マニフェスト破綻予算、三党合意違反の予算といった極めて問題の多い内容でありまして、それを承知の上で国会に提出し、本委員会の審議においても、これを問いただしても、政府から納得のできる明快な回答はありませんでした。まさに、民主党の政権担当能力のなさのあらわれであります。

 我々は、復興予算はもちろん、日本経済の再生、国土強靱化、地域活性化や農業分野など、真に必要な分野については重点的に予算を上乗せいたします。

 その一方で、高校授業料無償化などの民主党マニフェスト関連経費の見直し、国、地方公務員人件費の削減、自助自立の考えに基づいた生活保護費の抑制等によって財源を生み出し、我々のあらあらな計算でも、予算全体で一兆一千億円程度の削減が可能であります。

 また、基礎年金の国庫負担割合二分の一への引き上げの財源につきましては、民主党政権は、紆余曲折の末、その全額を交付国債の発行で賄うという、実に安易かつ将来に禍根を残しかねない粉飾まがいの手法を選択いたしました。我々は、正直に真実を語るとの立場から、一般会計において、将来における償還財源を明確にした上で赤字国債を発行して財源を確保すべきと考えております。

 我が党の提案いたします組み替え予算は、基礎年金国庫負担引き上げ分を含め、総額九十一・八兆円であります。国庫負担金引き上げ分を差し引けば八十九・二兆円で、必要な予算を上積み計上いたしましても政府の予算総額よりも一・一兆円もスリムな予算となります。

 加えて、我が党の提案いたします経済成長戦略の実施や大胆な金融緩和策の断行によりまして、デフレから早期に脱却し、その結果、景気回復と税収増を図り、赤字国債の発行額をさらに減らすことは十二分に可能と考えます。

 我々は、真実を直視せず内容において不十分な政府予算は即刻撤回すべきであるとの考えから、政府案には反対するものであり、確かな政策ビジョンに基づいた我が党の編成替え動議に賛成を表するものであります。

 なお、日本共産党及びみんなの党提出の編成替え動議につきましては、考えを異にするため反対することを申し述べ、私の討論を終わります。(拍手)

内閣委員会

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