交響曲第50番 (ハイドン)
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交響曲第50番 ハ長調 Hob. I.50 は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが1773年に作曲した交響曲。
概要
[編集]劇音楽に由来する本作は、いわゆるハイドンの「シュトゥルム・ウント・ドラング(疾風怒濤)期」の革新が終わって、より軽い音楽が書かれるようになりはじめる時期に位置しており[1]、残された自筆原稿から1773年に作曲されたことがわかっている。同年、エステルハーザではマリオネット・オペラ劇場が落成し、第1作としてハイドンの『フィレモンとバウチス』(Philemon und Baucis, Hob. XXIXa:1)が9月2日にエステルハーザを公式訪問したマリア・テレジアの御前で上演された。この作品の序劇にあたるのが『神々の会議』(Der Götterrat)で、部分的にしか残存していないが、この劇の序曲は本作の第1楽章と第2楽章に相当し(ただしトランペットは含まず)、これに残り2楽章を書き足して交響曲の形にしたのが本作である[2]。
かつて、マリア・テレジアの前で演奏された交響曲は第48番『マリア・テレジア』と考えられていたが、H.C.ロビンス・ランドンによると実際に演奏されたのは本作であったのではないかと考えられている[3]。しかし、ジェームズ・ウェブスターによれば、本作の後半の楽章は最初の2楽章と同じ紙にハイドンが後から書き加えたもので、完成したのは1774年頃としている[1]。
編成
[編集]オーボエ2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、低音(チェロ、ファゴット、コントラバス)。
構成
[編集]全4楽章、演奏時間は約18分。全体に単一主題を意図してかかれている。
- 第1楽章 アダージョ・エ・マエストーソ - アレグロ・ディ・モルト
- ハ長調、4分の4拍子 - 4分の3拍子、ソナタ形式。
- 第1楽章は付点を多用した4分の4拍子の緩やかな序奏を持つ。後期ハイドンの交響曲では序奏が使われることが多いが、本作以前にはきわめて珍しい。本作の後、いくつかの交響曲(第57番、第60番『うかつ者』など)で序奏が使われているが、本格的に序奏が書かれるようになるのは1780年前後である。
- その後、4分の3拍子でアレグロがはじまるが、比較的短い。
- 第3楽章 メヌエット - トリオ
- 第4楽章 フィナーレ:プレスト
脚注
[編集]参考文献
[編集]- 大宮真琴『新版 ハイドン』音楽之友社〈大作曲家 人と作品〉、1981年。ISBN 4276220025。
- 『ハイドン 交響曲集V(50-57番) OGT 1593』音楽之友社、1982年。(ミニスコア、ランドンによる序文の原文は1963年のもの)
- 池上健一郎『ハイドン』音楽之友社〈作曲家 人と作品〉、2023年。ISBN 9784276221734。