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マルバハタケムシロ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
丸葉畑蓆から転送)
マルバハタケムシロ
マルバハタケムシロの集団(筑波実験植物園
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: キキョウ目 Campanulales
: キキョウ科 Campanulaceae
: ミゾカクシ属 Lobelia
: マルバハタケムシロ L. loochooensis
学名
Lobelia loochooensis Koidz.[1][2]
和名
マルバハタケムシロ
花(大阪府立花の文化園

マルバハタケムシロ(丸葉畑蓆[3]学名Lobelia loochooensis)は、キキョウ科ミゾカクシ属植物[2]。小形の多年生植物[1][4]琉球諸島固有種である[1][4][5]絶滅危惧IB類に指定されている[2][5][6]

特徴

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日本に自生するミゾカクシ属6種のうちの1種である[7]。小形で多年生の草本であり[1][2][4]、全体的に無毛[1][2]常緑植物である[2]

は四方に広がって張り出し[1]、分枝して地上を這う[2][4]互生葉序である[1][2]。葉の数は多く、円形から倒円形をし、長さ6 mm[1][8]、幅5 mmほど[1]、やや多肉質で[1][4]光沢を持つ[4]葉縁は全縁あるいはやや鋸歯が出る[2]葉柄は短い[1][2]が、やや長くなることもある[2]。花柄は上を向くが、結果時には倒伏する[2]

の先端に咲き、白色[1][2]または淡紫色で[2]長さ8 - 9 mmほどである[4]初夏からにかけて開花し、花を維持する[4]は5つに分かれ、裂片は線状楔形で、長さ3 mmほどである[1]花冠はともに無毛である[1]種子は卵型で網目模様があり、長さは0.4 mmである[2]染色体数は2n=14[2]

近縁種との関係

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日本の固有種であるが、本種が蒴果を付けるという点を除けば、オセアニアのヒプセラ節の種(Hypsela)の植物とよく似ている[4][9]分子系統解析の結果、マルバハタケムシロはオーストラリアの近縁種から分化したと推定されている[2][9]。同研究では、マルバハタケムシロは台湾マレーシアのヒプセラ節の種の植物とは直接的な関係はなく、オセアニアの中でもニュージーランドの種よりオーストラリアの種と近縁であることが明らかとなり、隔離分布であることが示された[9]

サクラダソウ中国語版ミゾカクシとは小形の多年草であること、種子の外壁が丸く扁平な細胞でできていること、葯の先に大きな突起が2つあるなど、共通点が多い[4]和名のマルバハタケムシロは、文字通り「丸みを帯びた葉を持つハタケムシロ」という意味であり、ハタケムシロはミゾカクシの別称である[3]

分布と保護

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海岸沿いの風衝地[2]、岩場で清水の湧き出る特殊な環境下に生育する[5]奄美大島沖縄本島久米島に分布する固有種であるとされる[1]。ただし沖縄本島(南部[2])は開発によって絶滅した[3]。久米島でも絶滅したと考えられてきたが、再発見されている[3][5]。『朝日百科 植物の世界』では奄美大島・久米島だけに分布が知られる、と記載している[4]学名loochooensisは「琉球の」という意味である[3]

日本の環境省が発行する2019年版のレッドリストでは、マルバハタケムシロは絶滅危惧IB類(EN)に分類されている[6]。2007年のレッドリスト選定時の調査では、奄美大島の名瀬東部・名瀬西部・古仁屋、久米島のはての浜で生育が確認されている[10]都道府県レベルでは、鹿児島県沖縄県が絶滅危惧I類(CR+EN)に指定している[11]

絶滅危惧IB類 (EN)環境省レッドリスト

沖縄県の海洋博覧会記念公園管理財団(現・沖縄美ら島財団)都市緑化植物園は、屋上緑化資材として沖縄の在来種など25種が利用できるかどうかの実験を行い、その1種にマルバハタケムシロが選ばれたが、2003年9月の実験開始から2か月で枯死してしまい、屋上緑化資材には不向きと判定された[12]

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 初島・中島 1979, p. 315.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 大橋ほか 編 2017, p. 193.
  3. ^ a b c d e GKZ植物事典・マルバハタケムシロ(丸葉畑蓆)”. 2019年8月13日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k 邑田 1997, p. 54.
  5. ^ a b c d マルバハタケムシロ”. おすすめコンテンツ >> 植物図鑑. 筑波実験植物園. 2019年8月13日閲覧。
  6. ^ a b 環境省レッドリスト2019”. 環境省. 2019年7月9日閲覧。
  7. ^ 大橋ほか 編 2017, p. 192.
  8. ^ 大橋ほか 編 2017, pp. 192–193.
  9. ^ a b c 國府方吾郎 (2011年5月27日). “沖縄群島小島嶼に分布する絶滅危惧植物の固有性解明と保全”. 2019年8月13日閲覧。
  10. ^ RL/RDB / 公開種メッシュ一覧/マルバハタケムシロ”. 生物情報 収集・提供システム いきものログ. 環境省・生物多様性センター. 2019年8月13日閲覧。
  11. ^ 日本のレッドデータ検索システム/マルバハタケムシロ”. NPO法人野生生物調査協会とNPO法人Envision環境保全事務所. 2019年8月13日閲覧。
  12. ^ 宮里政智. “沖縄における屋上緑化資材(植物)に関する調査”. 海洋博覧会記念公園管理財団都市緑化植物園. 2019年8月13日閲覧。

参考文献

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  • 大橋, 広好門田, 裕一、木原, 浩 ほか 編『改訂新版 日本の野生植物 5 ヒルガオ科〜スイカズラ科』平凡社、2017年9月20日、474頁。ISBN 978-4-582-53535-8 
  • 初島住彦、中島邦雄『琉球の植物』講談社、1979年5月30日、368頁。 全国書誌番号:79021538
  • 邑田仁 著「サワギキョウ」、週刊百科編集部 編『朝日百科 植物の世界 2 種子植物 双子葉類2』朝日新聞社、1997年10月1日、52-56頁。ISBN 4-02-380010-4 

外部リンク

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