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世間

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世の中から転送)
仏教用語
世間
サンスクリット語 लोक
(IAST: loka)
中国語 世間
日本語 世間
英語 plane of existence
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世間せけんとは、インド発祥の宗教における用語であり、出世間しゅっせけんとあわせてこの世を二分して見る言葉である。移り変り、破壊を免れない迷いの世界という意味である。

さらに、日本ではこの用語は一般名化して、「この世」「世の中」「社会」のことを表す用語として使われている。転じて歴史学者阿部謹也は、日本社会が英単語「society」の訳語としての「社会」に当てはまらない性質があるとして、旧来の「世間」の呼称を採用し、西欧的「社会」との比較研究としての「世間論」を展開した。また、「世間」と書いて「よのなか」と読むこともある。

世間と出世間

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移ろいゆく世界(世間)の法則に流れしたがうことを世間法せけんぼう略して世法 - せほう, loka dhammā)という。これに対して、仏は世間から出でた存在であることから、仏の教え(すなわち仏法, ダルマ)を、出世間法、あるいは如来法にょらいぼうなどという。

八つの世間法

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世間は、八つの世間法が支配する世界であると説かれている。

Aṭṭhime bhikkhave, loka dhammā lokaṃ anuparivattanti, loko ca aṭṭhalokadhamme anuparivattati. Katame aṭṭha:
Lābho ca alābho ca ayaso ca yaso ca nindā ca pasaṃsā ca sukhaṃ ca dukkhaṃ ca

比丘たちよ、八つの世間法は世間に従い、世間は八つの世間法に従う。
その八つは何か?
利得、不利得、名誉、不名誉、非難、賞賛、である。

パーリ仏典, 増支部 8.1.1.5,Paṭhamalokadhamma suttaṃ, Sri Lanka Tripitaka Project

これは八つの出世間法、すなわち八正道(正見、正思惟、正語、正業、正命、正精進、正念、正定)と対比される。

出世間

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大乗仏教が後世にさらに発展すると、この娑婆における苦の多い現実世界の中で仏法を活かすということから、世法を完全否定せず、世間の法則を肯定的に捉えるようになった。またこれは、世間法即如来法(世法即仏法)と対立する2つの概念を不二法門として説かれるようになった。

三世間

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三種世間ともいい、移ろいゆくこの世の現象世界、つまり世間を3種類に分類したもの。これらの境界が、いわゆる物質的なものを含めて、環境一般をも意味するようになると、以下の三世間が説かれる。

大智度論では、以下の名称で説かれている。

  1. 仮名世間けみょうとは、衆生世間ともいい、生命のあるもの
  2. 国土世間こくどとは、山河大地など
  3. 五蘊世間ごうんとは、人間を構成し、世界を構成している構成要素をいう。これらも五蘊ごうんが色受想行識であることから考えると、単なる物質的要素でなく、精神的なものを主としている。

華厳経疏では、以下の3種類を立てるが、3つめは大智度論とは異なる。

  1. 衆生世間しゅじょう、智度論の仮名世間と同じ
  2. 器世間うつわ、智度論の国土世間と同じ
  3. 智正覚世間ちしょうかく、仏の世界

なお、サーンキヤ学派では、以下の3種類を立てる。

  1. 天上
  2. 人間
  3. 獣道

三界

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三界の項を参照。

なお、大乗仏教では、この三界を離れ、さらにその上に声聞縁覚菩薩、そして仏国土や浄土があると位置付ける。また天台宗などでは、迷悟両界をあわせて十界があるとする。

文学における世間

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世間・世の中を意味する言葉として『万葉集』では「うつせみ(現身)」「よのなか(世間)」の用例が見られ、「世間」の用例は45首(作者・年代が確定可能なものは35首)が見られる[1]


脚注

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  1. ^ 阿部(1995)、pp.32-33

参考文献

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  • 阿部謹也『「世間」とは何か』講談社現代新書 1995年
  • 山本七平『「空気」の研究』文春文庫 1983年
  • 鴻上尚史『「空気」と「世間」』講談社現代新書 2009年
  • 佐藤直樹『「世間」の現象学』青弓社 2001年

関連項目

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