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ルイ・マラン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ルイ・マラン
Louis Marin
生誕 (1931-05-22) 1931年5月22日
ラ・トロンシュイゼール県
死没 (1992-10-29) 1992年10月29日(61歳没)
パリ
時代 20世紀の哲学
地域 西洋哲学
学派 構造主義
研究分野 記号学政治哲学、17世紀フランス史
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ルイ・マランLouis Marin1931年5月22日 - 1992年10月29日)は、フランスの哲学者歴史家記号学者。

記号学の方法論を背景に、表象のシステム、とりわけ表象と権力の関係、自己表象(自伝、自画像)、表象不可能性(崇高)などに着目した研究を行った。その対象は多岐にわたるが、特に、パスカルおよびポール・ロワイヤル論理学17世紀絵画(プッサンカラヴァッジョフィリップ・ド・シャンパーニュ)などの研究によって、「今日最も偉大な17世紀研究者の一人」[1]と見なされる。

そのほか、聖書シャルル・ペローの童話、ユートピア論、スタンダール(『アンリ・ブリュラールの生涯』)、近現代美術についても多数の著作がある。

経歴

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1931年イゼール県グルノーブル郡の町ラ・トロンシュに生まれる。パリのリセ・ルイ=ル=グランに進学、デリダブルデューミシェル・ドゥギーらと親交を結ぶ[2][3]1950年、パリ高等師範学校(エコール・ノルマル)に入学[4]アルチュセールフーコーの指導を受ける[5]1953年大学教員資格(哲学)取得[6]アンリ・グイエフランス語版のもとでパスカルポール・ロワイヤル論理学についての博士論文(のちに La Critique du discours として出版)の準備を開始[5]

複数の教職を経た後、1961年からトルコのフランス大使館文化参事官として勤務(1964年まで)。当時イスタンブール大学で教えていた記号学者A・J・グレマスの個人的なゼミナールに出席[5]1964年からロンドンのアンスティチュ・フランセフランス語版の所長補佐(1967年まで)。このときアンソニー・ブラント英語版エドガー・ウィント英語版ら、ヴァールブルク研究所周辺との接点を持つ[5][7]。記号学と美術史は後々にわたってマランの思考の源泉となる。

1967年、パリ、ナンテール大学教授に就任(1970年まで)。また、前年にグレマスが設立し構造主義言語学、記号学の発信源となっていた記号=言語学研究グループ(Groupe de recherche sémio-linguistique)に参加。1968年のいわゆる五月革命(ナンテール大学はその中心のひとつだった)においては積極的に行動するも、その敗北に失望する[5]カリフォルニア大学の招きに応じ、サンディエゴ校で教鞭をとる(1970年 - 1974年)。1974年ジョンズ・ホプキンス大学教授に就任(1977年まで)[6]。この間、アメリカとフランスを行き来しながら、1973年に博士論文を完成。また、ミシェル・ド・セルトーらと交流しつつ聖書の記号学的分析を多数発表する(Sémiotique de la PassionLe Récit évangélique)。1975年には、ジャン・ボードリヤールらとともに雑誌『Traversesフランス語版』の創刊に加わり、しばしば寄稿する。

1977年社会科学高等研究院(EHESS)の研究指導教授(Directeur d'études)に就任(1992年の死去まで)、ユベール・ダミッシュフランス語版らとともに同研究院の美術史・美術理論研究部門(CEHTA:Centre d'Histoire et Théorie des Arts)の設立メンバーとなる[8]1985年、ジョンズ・ホプキンス大学客員教授に就任[6]

1992年10月、死去。

主要著作

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  • Études sémiologiques : Écritures, peintures(Klincksieck、1971年、2005年再刊)
  • Sémiotique de la Passion : topiques et figures(Aubier-Montaigne、1971年)
  • Utopiques : jeux d'espaces(Éditions de Minuit、1973年)
    • 『ユートピア的なもの――空間の遊戯』(梶野吉郎訳、法政大学出版局、1995年)
  • Le Récit évangélique(Cl. Chabrolとの共著、Aubier-Montaigne、1974年)
  • La Critique du discours : études sur la Logique de Port Royal et les Pensées de Pascal(Éditions de Minuit、1975年)
  • Détruire la peinture(Éditions Galilée、1977年、再刊:Éditions Flamarion、1997年)
    • 『絵画を破壊する』(梶野吉郎、尾形弘人訳、法政大学出版局、2000年)
  • Le récit est un piège(Éditions de Minuit、1978年)
    • 『語りは罠』(鎌田博夫訳、法政大学出版局、1996年)
  • La Voix excommuniée : Essais de mémoire(Éditions Galilée、1981年)
    • 『声の回復――回想の試み』(梶野吉郎訳、法政大学出版局、1989年)
  • Le Portrait du roi(Éditions de Minuit、1981年)
    • 『王の肖像――権力と表象の歴史哲学的考察』(渡辺香根夫訳、法政大学出版局、2002年)
  • La Parole mangée et autres essais théologico-politiques(Klincksieck、1986年)
    • 『食べられる言葉』(梶野吉郎訳、法政大学出版局、1999年)
  • Jean-Charles Blais : du figurable en peinture(Éditions Blusson、1988年)
  • Opacité de la peinture : Essais sur la représentation en Quattrocento(Éditions Usher、1989年、再刊:Éditions de l'EHESS、2006年)
  • Lectures traversières(Albin Michel、1992年)

死後出版

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  • Des pouvoirs de l'image : gloses(Éditions du Seuil-Gallimard、1993年)
  • De la représentation(Éditions du Seuil、1994年)
  • Philippe de Champaigne ou La présence cachée(Hazan、1995年)
  • Sublime Poussin(Éditions du Seuil、1995年)
    • 『崇高なるプッサン』(矢橋透訳、みすず書房、2000年)
  • Pascal et Port-Royal(PUF、1997年)
  • De l'entretien(Éditions de Minuit、1997年)
  • L’Écriture de soi : Ignace de Loyola, Montaigne, Stendhal, Roland Barthes(PUF、1999年)
  • Politiques de la représentation(Kimé、2005年)

その他の日本語訳

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  • 「イメージの記述――プーサンの一風景画について」(横張誠訳、『エピステーメー』1976年3月号、朝日出版社
  • 「ピラトの前のイエス――構造分析の試み」(久米博訳、『構造主義と聖書解釈』、ヨルダン社、1977年)
  • 「絵を読む――プッサンをめぐって」(岡村多佳夫訳、『美術手帖』1983年2月号、3月号、美術出版社
  • 「上下する竹」(柴田道子訳、『ニッポン(Traverses 5)』、今村仁司監修、リブロポート、1990年)
  • 「絵画を読む――プッサンの一通の手紙(一六三九年)をめぐって」(露崎俊和訳、ロジェ・シャルチエ『書物から読書へ』、水林章他訳、みすず書房、1992年)
  • 「アレクサンドル・コジェーヴ「歴史の終焉」をめぐる二つの注記」(野村直正訳、『世紀末の政治(Traverses 6)』、今村仁司監修、リブロポート、1992年)
  • 「絵画の「ナショナリズム」をめぐる冷静な考察」(『Too French:art contemporain français=フランス現代美術展』、原美術館、1992年)
  • 「表象の枠組みと枠のいくつかの形象」(栗田秀法訳、『西洋美術研究』No. 9、三元社、2003年)

関連文献

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  • 久米博「聖書の構造分析」(『一橋論叢』73巻2号、1975年) (PDF)
    "Les femmes au tombeau : essai d'analyse structurale d’un texte évangélique"(1971)(PDF) の要約を含む。
  • 「パスカル・記号学・《日本効果》」(『へるめす』第6号、岩波書店、1986年) (PDF)
    マランと中村雄二郎による対談。
  • Derrida, Jacques "À force de deuil", 1993, in Chaque fois unique la fin du monde, Éditions Galilée, 2003
    • デリダ、ジャック「ルイ・マラン(喪の力によって)」、(岩野卓司訳、デリダ、ジャック『そのたびごとにただ一つ、世界の終焉 Ⅱ』、土田知則他訳、岩波書店、2006年)
  • Cohen, Alain J.-J.; Pezzini, Isabella; Quéré, Henri eds. Hommages à Louis Marin, Università di Urbino, 1995
  • 佐々木健一「ルイ・マランさん追悼」(佐々木健一『ミモザ幻想』、勁草書房、1998年)
  • Pousin, Frédéric; Robic, Sylvie eds. Signes, histoire, fictions : Autour de Louis Marin, Éditions Arguments, 2003
  • Beyer, Vera; Voorhoeve, Jutta; Haverkamp, Anselm eds. Das Bild ist der König : Repräsentation nach Louis Marin, Wilhelm Fink Verlag, 2005 (目次PDF)

関連項目

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外部リンク

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脚注

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  1. ^ デリダ(2006)、p. 3。また次の記事にも同様の表現がある。Damisch, Hubert "DISPARITION Le philosophe Louis Marin Une œuvre 'traversière", Le Monde, 2 novembre 1992, p. 15
  2. ^ Bourdieu, P.; Derrida, J. "Entretien entre Pierre Bourdieu et Jacques Derrida"Liber, n° 12, 1992)
  3. ^ Bennington, Geoffrey; Derrida, Jacques, Jacques Derrida, Univ. of Chicago Pr., 1999, p. 228-229.
  4. ^ Annuaire (Association des anciens élèves, élèves et amis de l'École normale supérieure)
  5. ^ a b c d e Pousin, Frédéric; Robic, Sylvie "Des pas de côté"
  6. ^ a b c "Louis Marin" (Wellek Library Lecturer Bibliographies, University of California)
  7. ^ Careri, Giovanni "Louis Marin. Le pouvoir dans ses représentations"
  8. ^ Histoire et caractéristiques du Cehta