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小泉悠

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
小泉 悠
人物情報
別名 ユーリィ・イズムィコ
生誕 (1982-06-02) 1982年6月2日(42歳)
居住 千葉県松戸市出身[1]
出身校 早稲田大学[2](学士、修士)
学問
研究分野 ロシアの軍事・安全保障政策[2]、宇宙政策[2]、危機管理政策[2]
研究機関 公益財団法人未来工学研究所[2]東京大学先端科学技術研究センター[3]
主要な作品 『軍事大国ロシア』[4][5][6][7][1]
『プーチンの国家戦略』[8]
『「帝国」ロシアの地政学』[9]
学会 国際安全保障学会[2]戦略研究学会[2]
主な受賞歴 『国際安全保障』最優秀新人論文賞(2018年)[10]
サントリー学芸賞(2019年)[9]
公式サイト
https://note.com/cccp1917
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小泉 悠(こいずみ ゆう、1982年6月2日[2] - )は、日本軍事評論家[6][7][11]、軍事アナリスト[6][12][13][14][15]ロシアの軍事・安全保障政策を専門とする[2]ユーリィ・イズムィコの筆名でも知られる[16]

2023年令和5年)現在、東京大学先端科学技術研究センター准教授を務める[17]千葉県松戸市出身[1][18]

経歴

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父方の祖父は第二次世界大戦後、ソビエト連邦によるシベリア抑留から復員[19]して千葉県柏市下総航空基地で働く軍属となり、一家は通勤に便利な同県松戸市で暮らした[20]。中学校の社会科教員だった父親と、児童書の挿絵画家だった母親のもとに生まれた[20]。下総航空基地にP3C哨戒機が発着していたこともあって子供時代から軍事に興味を抱き、図書館で軍事関連書を読んだり、プラモデル屋に通って自衛隊員と交流したり、中学・高校の美術部でロケットの絵を描いたりしていた[20]。軍艦や軍用機を「かっこいい」と感じるだけでなく、その運用や政治的意味に関心を持つようになったのは、江畑謙介の著作に影響を受けたためという[20]。計画的に造られた無機質な建物という意味で団地が好きで見て回ることが多かったが、1999年、コソボ紛争に介入した北大西洋条約機構(NATO)軍により空爆されたユーゴスラビアの街のテレビ映像が近所の団地によく似ていたことに衝撃を受け、往年の社会主義圏への関心を深めた[20]。反核・平和運動に熱心な両親とは考えが合わなかったが、日本の安全保障について意見が異なる人々をどう説得するかを考える際に、両親の顔が浮かぶという[20]

千葉県立松戸国際高等学校早稲田大学社会科学部卒業後、2007年早稲田大学大学院政治学研究科修了。ロシアの軍事を研究したいと思い進学先を選んだが、国際関係論に関わる国際秩序論や法哲学に興味は持てず、論文への評価も低く、大学に残っての研究者の道は諦めた[20]。2007年に電気機器メーカーに就職して営業を担当したが、仕事のミスを連日叱責されて1年で退職した[20]。無職になっても軍事雑誌への寄稿は続けており、この頃が「貧乏だったけれど一番楽しかった」と回想している[21]。また、国立国会図書館でのコピー受付のアルバイトもしている[22]

とはいえこのままでは生計を立てることは難しいと考えていたが、小泉の論文に注目していた元駐ウズベキスタン日本大使の河東哲夫から電話が来てホテルで会食し、その推薦で2009年外務省国際情報統括官組織専門分析員となった[20]。ロシアの軍事に関する分析レポートが評価され自信を取り戻し、同年12月から2011年にかけてロシアに滞在し、ロシア側の研究者や政府・ロシア連邦軍関係者との人脈を築いた[20]。この折、ロシアの大学で日本語を学んでいたロシア人[6]のエレーナと知り合って後に結婚し、2010年には長女が生まれた[20]。同年、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究員[20]

2011年に帰国し、公益財団法人未来工学研究所研究員[23][24][25]国立国会図書館調査員[20]を兼務した。2019年イスラム研究者である池内恵の誘いで東京大学先端科学技術研究センター特任助教に就き[20]2022年1月には同センター専任講師(グローバルセキュリティ・宗教分野)[3]、2023年12月1日には同センターの准教授に昇格[17]

受賞

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2019年、『「帝国」ロシアの地政学』(東京堂出版)でサントリー学芸賞受賞[9]

人物

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  • ロシアには思い入れがあり、妻もロシア人であるが、日本から見て「仮想敵国」としての興味であり、ロシアが大国である以上「やっていることに同意できなくても、その行動原理を理解することは重要」と考えて研究している[21]ロシア語が堪能である[6][1]
  • 著書が書評で取り上げられた際に「軍事オタク」[4][6]と評されたが、サントリー学芸賞受賞時の選評では「視野の狭い単なる『軍事オタク』ではない」と評されている[9]。これは軍事だけでなくロシア論であることや柔らかい文体などが評価されたためで、蔵書には架空戦記作家の佐藤大輔のほか軍事以外の小説家の作品も多い(長野まゆみ澁澤龍彦吉田修一村上春樹など)[20]。2022年に刊行した『ロシア点描 まちかどから見るプーチン帝国の素顔』では、ロシアの政治や対外政策を、ロシア人の国民性や日常生活と絡めて描いている[21]
  • インターネットでのハンドルネームペンネームとしてユーリィ・イズムィコ名義も用いており[16]、この名義での著作もある。Twitterでも長らくこの名義を使っていたが、2022年ロシアのウクライナ侵攻以降は「丸の内OL(27)」「コスメ女子」など、アカウント名を度々変更している。変更の理由を問われた際には「酒飲んで酔っ払って書いているから、覚えてない(笑)」と答えている[26]
  • 自身がロシア軍事を専門に研究するようになった理由を「ロシアの兵器やロケットが格好よかったから」と説明している[27]
  • 研究のためマクサー・テクノロジーズの衛星画像サービスに個人で契約している[28]
  • を飼っており(先住猫と小泉の娘が保護してきた子猫の計2匹)、その画像をSNS上に投稿するなど、愛猫家としての一面も持ち合わせる。小泉本人は飼い猫を「猫氏」と呼んでいる。

著作

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単著

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  • 『ロシア軍は生まれ変われるか』東洋書店〈ユーラシア・ブックレット〉、2011年。ISBN 978-4-86459-009-9 
  • 『[図解]武器・兵器の秘密』PHP研究所、2014年。ISBN 978-4-569-82090-3 
  • 『軍事大国ロシア 新たな世界戦略と行動原理』作品社、2016年。ISBN 978-4-86182-580-4 
  • 『プーチンの国家戦略 岐路に立つ「強国」ロシア』東京堂出版、2016年。ISBN 978-4-490-20950-1 
  • 『恐ロシア航空機列伝』パンダ・パブリッシング、2018年。ISBN 978-4909400772  ユーリィ・イズムィコ名義
  • 『「帝国」ロシアの地政学 「勢力圏」で読むユーラシア戦略』東京堂出版、2019年。ISBN 978-4-490-21013-2 
  • 現代ロシアの軍事戦略筑摩書房ちくま新書〉、2021年5月。ISBN 978-4-480-07395-2 
  • 『ロシア点描 まちかどから見るプーチン帝国の素顔』PHP研究所、2022年5月。ISBN 978-4569-85185-3 
  • 『ウクライナ戦争の200日』文藝春秋文春新書〉、2022年9月。ISBN 978-4-16-661378-6 
  • 『ウクライナ戦争』ちくま新書、2022年12月。ISBN 978-4-480-07528-4 
  • 『終わらない戦争 ウクライナから見える世界の未来』文春新書、2023年9月。ISBN 978-4-16-661419-6 
  • 『オホーツク核要塞 歴史と衛星画像で読み解くロシアの極東軍事戦略』朝日新聞出版朝日新書〉、2024年2月。ISBN 978-4-02-295253-0 

共著

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監修

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翻訳

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  • ドミトリー・トレーニン 著、河東哲夫、湯浅剛、小泉悠 訳『ロシア新戦略――ユーラシアの大変動を読み解く』作品社、2012年。ISBN 978-4-86182-379-4 
  • マーク・ガレオッティ著、小泉悠監訳・茂木作太郎訳『スペツナズ ロシア特殊部隊の全貌』並木書房、2017年

記事

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論文

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  • 「ロシアの安全保障政策における戦術核兵器の位置づけと展望」『国際安全保障』第40巻第4号(国際安全保障学会、2013年3月)[29][30]

その他

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メディア出演

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ロシアによるクリミア侵攻ウクライナ侵攻北朝鮮によるミサイル発射実験の際などに、解説者としてニュース番組に度々出演している。「多くの人が感情的になっている時には、ちょっとドライなくらいの方がいい」と考えて冷静な解説を心掛けているという[20]

脚注

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  1. ^ a b c d 佐々木孝博「書評 小泉悠著『軍事大国ロシア : 新たな世界戦略と行動原理』」『国際安全保障』第44巻第4号、国際安全保障学会、2017年3月、115-119頁。 
  2. ^ a b c d e f g h i koizumi_03.pdf 未来工学研究所(2018年8月26日閲覧)
  3. ^ a b 【着任】小泉悠氏が専任講師に就任”. 先端研・創発戦略研究オープンラボ(ROLES). 東京大学先端科学技術研究センター. 2022年1月19日閲覧。
  4. ^ a b 山内昌之片山杜秀井上章一「文藝春秋BOOK倶楽部 鼎談書評(第31回) 小泉悠『軍事大国ロシア : 新たな世界戦略と行動原理』」『文藝春秋』第94巻第10号、文藝春秋社、2016年7月、394-397頁。 
  5. ^ 福田秀人「Book Reviews 私の『イチオシ収穫本』 『軍事⼤国ロシア 新たな世界戦略と⾏動原理』小泉悠著」『週刊ダイヤモンド』第104巻第29号(通巻4639号)、2016年7月23日、79頁。 
  6. ^ a b c d e f 兵頭慎治「書評 小泉悠著『軍事大国ロシア ― 新たな世界戦略と行動原理』」『ロシア・ユーラシアの経済と社会』第1007号、ユーラシア研究所、2016年8月、44-49頁。 
  7. ^ a b 永田伸吾「(書評論文)現代ロシアの戦略文化 ――「多極世界」をめぐる対米脅威認識―― 小泉悠著『軍事大国ロシア――新たな世界戦略と行動原理』」『戦略研究』第20号、戦略研究学会、2017年3月、127-138頁。 
  8. ^ 三浦瑠麗 (2017年1月8日). “本よみうり堂 「プーチンの国家戦略」⼩泉悠著 説得⼒ある公平な分析”. 読売新聞』東京朝刊: p. 24 
  9. ^ a b c d 小泉 悠『「帝国」ロシアの地政学―「勢力圏」で読むユーラシア戦略』 受賞者一覧・選評 サントリー学芸賞”. サントリー文化財団 (2019年). 2020年6月18日閲覧。
  10. ^ 研究奨励事業”. 国際安全保障学会. 2020年6月18日閲覧。
  11. ^ 田中洋之、林哲平 (2014年7月19日). “クローズアップ2014:マレーシア旅客機撃墜 主張対立、究明に時間”. 毎日新聞』東京朝刊: p. 3 
  12. ^ 杉尾直哉「〔WORLD・WATCH〕ロシア 対独戦勝記念式典 目⽟は失脚閣僚の遺産」『週刊エコノミスト』第93巻第22号、毎日新聞出版、2015年6月2日、68-70頁。 
  13. ^ 磨井慎吾 (2017年5月25日). “【論壇時評】6⽉号 ⽂化部・磨井慎吾 「敵」の論理で考えること”. 産経新聞』東京朝刊: p. 6 
  14. ^ ⾼⾒浩太郎 (2017年11月3日). “<総論 各論>10⽉ 北朝鮮の核と⽇本 冷静で息の⻑い議論を”. 神戸新聞』朝刊. 共同通信配信記事: p. 17 
  15. ^ 駒木明義 (2018年6月27日). “(平成とは あの時:9)北⽅領⼟、つかみ損ねた糸⼝”. 朝日新聞』東京朝刊: p. 36 
  16. ^ a b 小泉悠×安田峰俊×マライ・メントライン×神島大輔「ロシア! ドイツ! チャイナ! オール大国大進撃」『現代ロシアの軍事戦略』(筑摩書房)『中国vs.世界 呑まれる国、抗う国』(PHP研究所)W刊行記念”. 本屋B&B (2021年6月17日). 2022年3月22日閲覧。
  17. ^ a b 小泉悠氏が准教授に昇格東大先端研創発戦略研究オープンラボ(ROLES)2023年12月1日
  18. ^ 第41回 サントリー学芸賞受賞者略歴
  19. ^ 小泉悠『現代ロシアの軍事戦略』ちくま新書、2021年5月8日、297頁。ISBN 9784480073952 
  20. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 【Breakthrough 突破する力】247:小泉悠(ロシア軍事研究者)挫折と確執 その先に見つけた天職『朝日新聞』GLOBE(2022年6月19日G4面)
  21. ^ a b c 【著者来店】小泉悠さん「ロシア点描」不可解な国素顔知って『読売新聞』朝刊2022年6月26日(文化面)
  22. ^ 【小泉悠】研究者は挫折、就活はことごとく失敗 無職で気づいた自分の天職”. 朝日新聞 GLOBE+ (2022年8月19日). 2022年9月28日閲覧。
  23. ^ 研究員紹介 未来工学研究所(2017年12月30日閲覧)
  24. ^ 小泉悠 講演依頼.com(2017年12月30日閲覧)
  25. ^ 編集長プロフィール World Security Intelligence(2017年12月31日閲覧)
  26. ^ NHKで解説 小泉悠が“丸の内OL”を名乗るワケ”. 週刊文春 電子版 (2022年3月9日). 2022年3月22日閲覧。
  27. ^ 小泉悠『現代ロシアの軍事戦略』ちくま新書、2021年5月8日、298頁。ISBN 9784480073952 
  28. ^ https://www.facebook.com/mainichishimbun.+“「ロシアが日本侵攻」報道を打ち消した小泉悠さん 職人芸の分析手法”. 毎日新聞. 2023年5月28日閲覧。
  29. ^ a b CiNii articles 著者 - 小泉 悠 CiNii 国立情報学研究所(2018年8月17日閲覧)
  30. ^ 『国際安全保障』総目次 詳細 国際安全保障学会(2017年12月30日閲覧)

関連項目

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外部リンク

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