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ムクゲネズミ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ミヤマムクゲネズミから転送)
ムクゲネズミ
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 齧歯目 Rodentia
: キヌゲネズミ科 Cricetidae
亜科 : ミズハタネズミ亜科 Arvicolinae
: タイリクヤチネズミ属 Craseomys
: ムクゲネズミ C. rex
学名
Craseomys rex
(Imaizumi, 1971)[1]
シノニム
  • Clethrionomys rex Imaizumi, 1971[2]
  • Myodes rex[1][3]
  • Clethrionomys montanus Imaizumi, 1972[4]
和名
ムクゲネズミ[5]
英名
Hokkaido red-backed vole[1]
亜種
  • リシリムクゲネズミ C. r. rex
  • ミヤマムクゲネズミ C. r. montanus

ムクゲネズミ(尨毛鼠、学名 Craseomys rex)は、齧歯目キヌゲネズミ科タイリクヤチネズミ属に属するネズミの1種。

分布

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北海道日高山脈大雪山天塩山地北見山地後志火山性台地、羊蹄山渡島半島利尻島礼文島色丹島歯舞諸島志発島に分布する。また、サハリン南部にも分布する。

形態

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利尻島産の成体が、頭胴長が112-143mm、尾長が44-60mm、後足長が20-22.4mm、体重が33-62gになる。天塩産の個体だと、頭胴長が97-137mm、尾長が46-62mm、後足長が19.6-22.2mm、体重が42-78gになる。体毛の背面は、暗い黄褐色もしくは暗褐色になり、エゾヤチネズミのような赤褐色帯がないか不明瞭になる。

生態

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北海道本島では、標高20mの河畔地から1,900mの山稜線部の二次林を含んだ天然林、造林地などに生息する。利尻島や礼文島では、ササ草本の原野や、それらが侵入した放棄耕地などにも生息する。エゾヤチネズミが生息する場所では、ササが密生したところにはエゾヤチネズミが生息し、ササと草本が混生する林床に本種が生息して棲み分けている。

植物繊維種子果実昆虫を食べる。

分類

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1971年に、利尻島産標本をタイプ標本として、リシリムクゲネズミ Clethrionomys rexとして新種記載された[2]。続いてミヤマムクゲネズミ Clethrionomys montanus1972年に北海道本島の日高山脈の標本で新種記載された[4]。その後の分類検討で両種は区別できず、現在は同一種とされる[3][6]

環境省レッドリストでは、リシリムクゲネズミ Myodes rex rexミヤマムクゲネズミ Myodes rex montanusの2亜種に分けているが[7]、亜種を分けない説もある[3]

なお、本種を含むヤチネズミ類の所属については混乱がある[8]。初期にヤチネズミ属の学名として使用されてきたClethrionomysは、学名の先取権によりMyodesに変更された[3][8]。さらに、ヤチネズミ属Myodesからタイリクヤチネズミ属Craseomysが分けられ、本種は後者に属するとされるようになった[1][5]。2019年にはMyodesをレミング属Lemmusのシノニムとする説が提唱され、ふたたびClethrionomysが有効名とされている[9][10]

種の保全状況評価

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Craseomys rex (= Myodes rex) ムクゲネズミ Hokkaido red-backed vole
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))[1]
  • 北海道版レッドデータブック -希少種(Clethrionomys rex として選定)
Myodes rex rex リシリムクゲネズミ Rishiri dark red-backed vole
準絶滅危惧(NT)環境省レッドリスト[7]
Myodes rex montanus ミヤマムクゲネズミ Hokkaido dark red-backed vole
準絶滅危惧(NT)環境省レッドリスト[7]

関連項目

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脚注

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  1. ^ a b c d e f Laginha Pinto Correia, D. 2016. Myodes rex. The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T39591A22373239. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-1.RLTS.T39591A22373239.en. Accessed on 26 April 2023.
  2. ^ a b Imaizumi, Y. (1971). A new vole of the Clethrionomys rufocanus group from Rishiri Island, Japan. Journal of the Mammalogical Society of Japan, 5(3), 99-103.
  3. ^ a b c d Guy G. Musser, Michael D. Carleton, “Superfamily Muroidea,” In: Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (eds.), Mammal Species of the World (3rd ed.), Volume 2, Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 894-1537.
  4. ^ a b 今泉吉典「日高の陸棲哺乳類 とくに固有のヤチネズミ類とその起源について」「国立科学博物館専報』第5号、 国立科学博物館、1972年、131-149頁。
  5. ^ a b 川田伸一郎・岩佐真宏・福井大・新宅勇太・天野雅男・下稲葉さやか・樽創・姉崎智子・鈴木聡・押田龍夫・横畑泰志「世界哺乳類標準和名リスト2021年度版」日本哺乳類学会、2021年12月24日公開、2023年4月26日閲覧。
  6. ^ 金子之史・村上興正「日本産齧歯類(野鼠及び家鼠)の分類学史的検討」『哺乳類科学』第36巻 1号、日本哺乳類学会、1996年、109-128頁。
  7. ^ a b c 金子之史 「リシリムクゲネズミ」「ミヤマムクゲネズミ」、環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室 編『レッドデータブック2014 -日本の絶滅のおそれのある野生動物-1 哺乳類』ぎょうせい、2014年、81頁。
  8. ^ a b 本川雅治・下稲葉さやか・鈴木聡「日本産哺乳類の最近の分類体系 ―阿部(2005)とWilson and Reeder(2005)の比較―」『哺乳類科学』第46巻 2号、日本哺乳類学会、2006年、181-191頁。
  9. ^ Boris Kryštufek, Alexey S. Tesakov, Vladimir S. Lebedev, Anna A. Bannikova, Nataliya I. Abramson & Georgy Shenbrot (2019), “Back to the future: the proper name for red-backed voles is Clethrionomys Tilesius and not Myodes Pallas,” Mammalia, Volume 84, Issue 2, Pages 214-217.
  10. ^ 谷戸崇・岡部晋也・池田悠吾・本川雅治Illustrated Checklist of the Mammals of the Worldにおける日本産哺乳類の種分類の検討」『タクサ:日本動物分類学会誌』第53巻(号)、日本動物分類学会、2022年、31-47頁。

参考文献

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  • 小宮輝之 『日本の哺乳類』 学習研究社<フィールドベスト図鑑>、2002年、P20
  • 金子之史 阿部 永 監修 『改訂2版 日本の哺乳類』 東海大学出版会、2008年、P126
  • 金子之史 『ネズミの分類学』 東京大学出版会、2006年

外部リンク

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