コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ブリーズ (ロケット)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ブリーズ
基本データ
運用国 ロシア連邦
開発者 Khrunichev
運用機関 ロスコスモス
使用期間 1999年 - 現役
射場 バイコヌール宇宙基地プレセツク宇宙基地
打ち上げ数 15回(成功10回)
開発費用 ?ルーブル
打ち上げ費用 ?ルーブル
原型 ブリーズ
姉妹型 ブリーズ-M, -KM
発展型 ブリーズ-COP
公式ページ Разгонные блоки - «Бриз-М»
物理的特徴
段数 1段
ブースター 1基のRD-2000[1]
総質量 22,170キログラム (48,880 lb)
空虚質量 2,370キログラム (5,220 lb)
全長 2.61メートル (8 ft 7 in)
直径 4.10メートル (13.5 ft)
軌道投入能力
低軌道 kg
km / 度
中軌道 kg
km / 度
極軌道 kg
km / 度
太陽同期軌道 kg
km / 度
静止移行軌道 5,645 kg
km x km / 度
脚注
英語版ブリーズ-Mより抽出。
テンプレートを表示

ブリーズ(露:Бриз, ローマ字表記:Briz, 日本語でそよ風の意)はロシアで開発された上段ロケットである。クルニチェフ国家研究生産宇宙センターで生産され、ロコットプロトンアンガラ・ロケットに搭載されて使用する。ブリーズ・シリーズはこれまでにブリーズ-Kを基本とし、ブリーズ-M、ブリーズ-KMの各派生形が開発されている。推進剤はN2O4UDMHというハイパーゴリック推進剤を使用している。ブリーズ-Mにおいて、1基のRD-2000エンジンを使用し、推力19.6キロニュートン (4,400 lbf)、比推力326秒を得ており、一回の飛行で3,000秒間燃焼することが出来る。

特徴

[編集]

ブリーズ上段ロケットは人工衛星を様々な軌道に投入するために設計された[2]。 メインエンジンは一回の飛行で8回までの再着火能力を持っている[3]。 軌道上での稼働時間は、ブリーズ-Mにおいて24時間であり、これは搭載された蓄電池の容量によって制限されている[3]。標準的なプロトン-M/ブリーズ-Mでのミッション設定において、打ち上げから衛星分離までに掛かる全ての時間はおよそ9.3時間である[3]。上段にブリーズ-Mを使ったプロトンでの打ち上げは宇宙機を地球離脱軌道に投入することもできる[3]

ブリーズは衛星と共にペイロードフェアリングに格納されるため、寸法を出来る限り小さく設計されている。前任のブロックD上段ロケットと比較して小型化したため、より大きな衛星を搭載できるようになった。プロトン-Mはブリーズ-Mと一緒に使えば4,385 kgの衛星を軌道に投入できる。例えばA2100AXのような衛星を、目標とする遠地点35,786 km、近地点7,030 km、軌道傾斜角17.3°の軌道に投入できる[4][5]

ブリーズ-Mはブリーズ-KMをコア・モジュールとして周囲を取り巻く切り離し可能なドーナッツ型の増槽が追加されている[2]。ポンプ駆動で首振り可動式のRD-2000エンジン一基で推力を得ている[1]。 ブリーズ-Mは、5645 kgのペイロードを静止軌道へ1500メートル毎秒の残余速度を持った状態で、静止トランスファ軌道へ投入することができ[1]、二個以上の衛星の同時打ち上げにも対応する。その際、再着火能力を活かしそれぞれの衛星を違う軌道に投入することも出来る[1]

ブリーズ-KMは円錐形状のタンク区画と推薬タンクの窪まった場所に位置するエンジンで構成されたシングルピース構造であり[6]ロコットの三段目として使われる[7]

派生型

[編集]

ブリーズは少しずつ改良が施され様々な派生形がある。代表的なものを以下に示す。

ブリーズ-K

[編集]

正式名:14S12ブースター・ユニット・ブリーズ-K。 初期に生産されたバージョンであり、ロコットの三段目として1990年から1999年まで使われた。

ブリーズ-M

[編集]

正式名:14S43ブースター・ユニット・ブリーズ-M。 ブリーズ-Mはブリーズ-Kの周囲に増槽を装着し燃料搭載量を増加させた派生型でありプロトンに使用される。 ブリーズ-Mの初打ち上げは1999年7月5日であったが、この打ち上げはプロトンの不具合により失敗した。初めての成功は2000年6月6日、ゴリゾント衛星の打ち上げだった。 将来はアンガラ・ロケットA3 若しくは A5バージョンに、ブリーズ-Mを上段として使う事が予定されている[2]

ブリーズ-KM

[編集]

正式名:14S45ブースター・ユニット・ブリーズ-KM。 ブリーズ-Kを改良したバージョンでありロコットの三段目として使われる。ブリーズ-KMの初打ち上げは2000年05月16日、SimSat-1とSimSat-2の打ち上げであった。 将来はアンガラ・ロケット1.1バージョンに、ブリーズ-KMを上段として使う事が予定されている。

ブリーズ-COP

[編集]

現行型に軽量化し、搭載燃料を増加したうえで再設計したもの。現在開発中。

打ち上げ履歴(主要分のみ)

[編集]
1999年7月5日 失敗 ブリーズ-Mの初飛行だったが、プロトンロケット2段目の爆発で失敗。Raduga通信衛星を搭載していた。
2000年6月6日 成功 ゴリゾント通信衛星。
2003年6月6日 成功 Americom(アメリコム)通信衛星。
2003年12月10日 成功 3機のGLONASS航法衛星
2006年2月28日[8] 失敗 通信衛星Arabsat-4Mを搭載していたが、ブリーズ-Mの不調により衛星が予定外の軌道に投入された。その後このブリーズ-Mは2007年2月19日に突如爆発し、1000個以上のスペースデブリが生じた[9][10]
2007年4月10日 成功 ANIK-F3通信衛星
2007年7月7日 成功 DirecTV-10通信衛星
2007年9月6日 失敗 プロトンロケットの1,2段分離トラブルで打ち上げ失敗。JCSAT-11通信衛星が搭載されていた。
2007年11月18日 成功 SIRIUS-4通信衛星
2007年12月9日 成功 Kosmos-2434軍事通信衛星
2008年1月28日 成功 Express AM33通信衛星
2008年2月11日 成功 THOR-5通信衛星
2008年3月14日 失敗 第二回目のエンジン噴射時にトラブルが発生し、AMC-14衛星が予定外の軌道に投入された。この失敗は排気ガス管路の破断が発生し、これによりブリーズ-Mエンジンに推薬を供給していたターボポンプが停止したことが原因であった[11]
2008年8月19日 成功 インマルサット 4 F3 衛星を打ち上げた。 4月14日の失敗を受けて、ブリーズ-Mエンジンには配管の肉厚を厚くした新しい排気管路を取り付ける改良が為され、飛行を再開。 この改良は、この打ち上げ以降の全ての打ち上げに適用されている[11][12]
2008年9月20日 成功 Nimiq-4[13]
2008年11月5日 成功 Astra 1M
2008年12月10日 成功 Ciel-2[14]
2009年2月11日 成功 Express-AM44Express-MD1
2009年4月3日 成功 Eutelsat W2A通信衛星
2009年5月16日 成功 ProtoStar 2通信衛星
2009年7月1日 成功 Sirius FM-5[15]
2009年8月12日 成功 AsiaSat-5通信衛星
2009年9月18日 成功 Nimiq 5通信衛星
2009年11月25日 成功 Eutelsat W7通信衛星
2009年12月29日 成功 DirecTV 12通信衛星
2010年1月28日 成功 Raduga-1M通信衛星
2010年2月12日 成功 Intelsat 16通信衛星
2010年3月21日 成功 EchoStar 14通信衛星
2010年4月24日 成功 SES-1通信衛星
2010年6月4日 成功 BADR-5(Arabsat-5B)通信衛星
2010年7月11日 成功 EchoStar 15通信衛星
2010年10月15日 成功 XM-5通信衛星
2010年11月14日 成功 SkyTerra 1通信衛星
2010年12月26日 成功 KA-SAT通信衛星
2011年2月1日 失敗 ロコットでGeo-IK-2衛星を搭載してプレセツク宇宙基地から打ち上げたが、ブリーズ-KMの再着火に失敗[16]
2011年5月20日 成功 Telstar 14R通信衛星
2011年7月15日 成功 SES-3通信衛星、Kazsat-2通信衛星
2011年8月17日 失敗 Ekspress-AM4衛星を搭載して打ち上げたが、ブリーズ-Mが第四回目の燃焼をしているとき、通信が途絶した[17]
2011年9月20日 成功 ブリーズ-Mの飛行再開。Kosmos-2473
2011年9月29日 成功 QuetzSat 1通信衛星
2011年10月19日 成功 ViaSat-1通信衛星
2011年11月3日 成功 3機のGLONASS航法衛星
2011年11月25日 成功 AsiaSat 7通信衛星
2011年12月11日 成功 Amos 5通信衛星、Luch-5Aデータ中継衛星
2012年2月14日 成功 SES-4通信衛星
2012年3月25日 成功 Intelsat 22通信衛星
2012年4月24日 成功 YahSat-1B通信衛星
2012年5月18日 成功 Nimiq-6通信衛星
2012年7月10日 成功 SES-5通信衛星
2012年8月6日 失敗 ブリーズ-Mの3回目の噴射が途中で止まり、Telkom-3とEkspress-MD2通信衛星の打上げに失敗。推進薬が残っていたブリーズ-Mは、2012年10月16日に突如爆発しスペースデブリを飛散させた。
2012年10月14日 成功 ブリーズ-Mの飛行再開。Intelsat 23通信衛星
2012年11月3日 成功 Yamal 300K通信衛星と、Luch-5Bデータ中継衛星
2012年11月20日 成功 EchoStar 16通信衛星
2012年12月8日 失敗 ブリーズ-Mの4回目の噴射が4分早く終了したため、予定していた静止軌道へYamal 402通信衛星を投入できなかった。この失敗により、プロトン-M/ブリーズ-Mの構成による打ち上げは16ヶ月間のうちに3回の失敗を重ねたこととなり、また3回の失敗はいずれもブリーズ-Mの異常に起因するものであった[18]。なおYamal402はその後、衛星本体の推進剤を噴射して静止軌道へ移動した。
2013年1月15日 成功 Rockotロケット(ブリーズ-KM)でKosmos衛星3機を打上げ、衛星投入には成功。通常ブリーズ-KMは衛星を放出した後は高度を下げる燃焼が行われるが、高度低下が確認できなかったため、問題が起きたと推測された。この後、8ヶ月間打ち上げは行われず、再発防止策が行われた模様。
2013年3月26日 成功 SatMex-8通信衛星
2013年4月15日 成功 Anik-G1通信衛星
2013年5月14日 成功 Eutelsat-3D通信衛星
2013年6月3日 成功 SES-6通信衛星
2013年9月11日 成功 ロコット(ブリーズ-KM)、Gonet D1M通信衛星 3機

出典

[編集]
  1. ^ a b c d Proton/Breeze-M International Launch Services, retrieved on 2009-03-23
  2. ^ a b c Breeze M upper stage”. Khrunichev State Research and Production Space Center. 2009年3月22日閲覧。
  3. ^ a b c d Proton Launch System Mission Planner's Guide International Launch Services. Retrieved on 2008-03-23
  4. ^ orbit.jpg”. Khrunichev. 2007年11月17日閲覧。[リンク切れ]
  5. ^ Breeze-M Powered Flight”. Khrunichev. 2007年12月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年11月17日閲覧。
  6. ^ Breeze KM upper stage”. Khrunichev State Research and Production Space Center. 2009年3月22日閲覧。
  7. ^ Russia launches relay craft, commemorative satellite”. Spaceflight Now. 2012年1月29日閲覧。
  8. ^ Spaceflight Now - Proton rocket fails in Arab satellite launch
  9. ^ “Rocket Explosion”. Spaceweather.com. (2007年2月22日). http://www.spaceweather.com/ 2007年2月21日閲覧。 
  10. ^ Than, Ker (2007年2月21日). “Rocket Explodes Over Australia, Showers Space with Debris”. Space.com. http://www.space.com/news/070221_rocket_explodes.html 2007年2月21日閲覧。 
  11. ^ a b PROTON BREEZE M CLEARED FOR RETURN TO FLIGHT
  12. ^ ILS PROTON SUCCESSFULLY LAUNCHES INMARSAT-4 F3 SATELLITE Archived 2008年9月23日, at the Wayback Machine.
  13. ^ アーカイブされたコピー”. 2008年8月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年9月18日閲覧。
  14. ^ アーカイブされたコピー”. 2010年10月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年10月10日閲覧。
  15. ^ LS PROTON SUCCESSFULLY LAUNCHES SIRIUS FM-5 SATELLITE”. International Launch Services (2009年7月1日). 2009年7月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年7月1日閲覧。
  16. ^ Russia Loses Contact with Military Satellite”. GPS World (2011年2月3日). 2011年2月3日閲覧。
  17. ^ FAILURE: Proton-M launch with Ekspress-AM4 satellite - August 18, 2011”. NASA Space Flight (2011年8月18日). 2011年8月18日閲覧。
  18. ^ “プロトンMロケット、通信衛星ヤマル402の打ち上げに失敗”. sorae.jp. (2012年12月9日). https://sorae.info/030201/4732.html 2012年12月11日閲覧。 

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]