ブズカシ
ブズカシ、または、ブズガシ(ペルシア語:بُزكشی Buzkashī、 بُزکَشی Buzgashī)とは、2組の騎馬隊が、動物の身体を奪い合う競技である。元来はヤギを奪い合う競技だったが、ウシの幼体の胴体を奪い合うように変化した。なお、アフガニスタンの国技とされているものの、アフガニスタン国内においてルールが完全に統一されているわけではない。
名称
[編集]競技名は、ペルシャ語で「ヤギを引きずる」(「ヤギ」بُز buz+「引く、引っ張る、引きずる」 كشی kashī)という意味である[1]。その名の通り、元来は騎馬隊が生きたヤギを引き回していたものの、後に、頭部を除いた死んだ子牛の体を使うように変化した[1]。
競技
[編集]アフガニスタンオリンピック連盟によって、ブズカシの公式ルールが定められている。例えば、相手の騎手を故意に鞭で叩く行為や、馬上から相手の騎手を故意に突き落とす行為は、禁じられている[1]。ただし、アフガニスタンの首都であるカーブルでの大会を除くと、公式ルール通りに競技が為されていない場合も多く、北部地域では公式ルールに従って競技が行われる事例はほとんどない[1]。
ブズカシの選手はチャーパーンダーズ(چاپانداز、Chapandaz)と呼ばれる。アフガニスタンは多民族国家であり[2][注釈 1]、チームは民族ごとに編成される。
政情との兼ね合い
[編集]20世紀後半からアフガニスタンは政情が不安定であり、たびたびクーデターや内戦や戦争などで、政権が崩壊してきた[3]。ブズカシを取り巻く状況にも、変化が見られる。例えば、ターリバーンは第1次政権時代はブズカシを禁止していたのに対し、再度権力を握った2021年以後はブズガシを認める方向に転換し、リーグ戦なども行われている[4]。
なお、1979年にはクーデターが発生して、その時の政権は崩壊したわけだが、その1979年から発行された、500アフガニ紙幣には、ブズカシの競技の様子が描かれていた。
登場作品
[編集]例えば、シルヴェスター・スタローンが主演するランボーシリーズの第3作『ランボー3/怒りのアフガン』に、ブズカシの様子が登場する。
背景
[編集]アフガニスタン付近は比較的乾燥した気候であり[5]、家畜の放牧が盛んであった。もちろん、農作物の栽培も行われてきた土地柄であり、21世紀初頭においても農業が主産業である[2][6]。そうではあっても、放牧が盛んな状況は変わっておらず、食肉や皮革や毛なども盛んに出荷されており、2018年時点で、耕作地が約8万 km2であるのに対して、牧場と牧草地が約30万 km2である[2]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ パシュトゥン人が約4割、タジク人が3割弱、ハザラ人が約1割、ウズベク人も約1割である。そして、アイマク人、トルクメン人、バローチ人などで残り1割程度を占める。
出典
[編集]- ^ a b c d “ブズカシ: アフガニスタンの国技”. 在日アフガニスタン大使館. 2022年1月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年11月24日閲覧。
- ^ a b c 二宮書店編集部 『Data Book of The WORLD (2022年版)』 p.166 二宮書店 2022年1月10日発行 ISBN 978-4-8176-0470-5
- ^ 二宮書店編集部 『Data Book of The WORLD (2022年版)』 p.165、p.166 二宮書店 2022年1月10日発行 ISBN 978-4-8176-0470-5
- ^ “Kandahar Wins National Buzkashi League Competition”. Tolo News. (2022年3月7日) 2022年3月7日閲覧。
- ^ 二宮書店編集部 『Data Book of The WORLD (2022年版)』 p.165 二宮書店 2022年1月10日発行 ISBN 978-4-8176-0470-5
- ^ 二宮書店編集部 『Data Book of The WORLD (2012年版)』 p.166 二宮書店 2012年1月10日発行 ISBN 978-4-8176-0358-6