コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

フォーカスIII

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『フォーカスIII』
フォーカススタジオ・アルバム
リリース
録音 1972年7月
イングランドの旗 ロンドン バーンズ オリンピック・スタジオB[1]
「ハウス・オブ・ザ・キング」:1969年[1]
ジャンル プログレッシブ・ロックジャズ・フュージョンハードロックインストゥルメンタル・ロック英語版
時間
レーベル オランダの旗インペリアル・レコード
欧州連合の旗ポリドール・レコード
アメリカ合衆国の旗サイアー・レコード
プロデュース マイク・ヴァーノン英語版
専門評論家によるレビュー
チャート最高順位
  • 1位(オランダ[2]
  • 6位(イギリス[3]
  • 20位(ノルウェー[4]
  • 35位(アメリカ[5]
  • 88位(日本[6]
  • フォーカス アルバム 年表
    フォーカスII(ムーヴィング・ウェイヴス
    (1971年)
    フォーカスIII
    (1972年)
    フォーカス・アット・ザ・レインボー
    (1973年)
    テンプレートを表示

    フォーカスIII[注釈 1]』(Focus 3)は、オランダプログレッシブ・ロックバンドフォーカス1972年に発表した3作目のスタジオ・アルバム。オリジナルLPは2枚組だったが[7]CDは1枚にまとめられた。

    解説

    [編集]

    経緯

    [編集]

    フォーカスが前作『ムーヴィング・ウェイヴス』の録音を1971年5月に終えた後、6月末にベーシストのシリル・ハフェルマンスはソロ活動を始める為に3か月後に脱退する意思をメンバーに告げた[8]。彼は3か月間フォーカスのライブ活動に参加した後に脱退し[注釈 2]、残されたタイス・ファン・レールヤン・アッカーマンピエール・ファン・デル・リンデンは新しいベーシストにベルト・ライテルを迎えて本作を制作した[1]

    内容

    [編集]

    前作に引き続いて、マイク・ヴァーノン英語版がプロデューサーを務めた。

    「ラウンド・ゴーズ・ザ・ゴシップ」の歌詞は、ウェルギリウスの叙事詩『アエネーイス』の一節から取られている[1]。タイトルを連呼しているのは作者のファン・レールとプロデューサーのヴァーノンである[9]。「ラヴ・リメンバード」は、1974年の初来日公演で取り上げられ[10]、1978年には作者のアッカーマンのソロ・アルバムAranjuezでカバーされた。

    シルヴィア英語版」はファン・レールがフォーカス結成前に作曲した楽曲が原型で[注釈 3][11][12]、彼が歌詞の代わりにヨーデルを取り入れて改作した。

    「アノニマスII」は26分に及ぶ大作で、LPレコードの収録時間の制限のため、オリジナルLPでは「パート1」と「コンクルージョン」に分断されて、それぞれC面とD面に分かれて収録されていたが[7]、CDには一曲として収録された[1]。デビュー・アルバム『フォーカス・プレイズ・フォーカス』に収録された「アノニマス」と同様に、冒頭に15世紀のブルゴーニュ領の楽曲'Dit Le Bourguignon'が「アノニマス」よりはるかに速くジャズ風に[注釈 4]演奏されたあと、ファン・レール、ライテル、アッカーマン、ファン・デル・リンデンの順にソロを披露する。

    「エルペス・オブ・ノッティンガム」は、当時アッカーマンが同時に制作していた2作目のソロ・アルバムProfileに収録されたリュートの独奏曲'Minstrel'に、リコーダー、シングル・ドラム・ビート、小鳥のさえずりと牛の鳴き声が加えられた作品である[13]

    オリジナルLPにはアッカーマン作の「ハウス・オブ・ザ・キング英語版」が収録された。この曲は、オリジナル・メンバーのファン・レール、アッカーマン、ハンス・クルフェールマーティン・ドレスデンが、1970年にデビュー・アルバム『フォーカス・プレイズ・フォーカス』をオランダで発表した後に新作として録音した曲[1]で、1971年1月にシングルとして発表されて、オランダのシングル・チャートで最高10位を記録した[注釈 5]。本作にはオリジナル・メンバーによる音源が収録された[注釈 6][14]。この曲は1988年にEMIから発売された再発CDでは外されたが[15]、2001年発売の日本盤リマスターCD (VICP-61532)には収録された。

    反響・評価

    [編集]

    オランダでは、先行シングル「シルヴィア」がシングル・チャートで2週にわたって9位を記録[16]。本作は1972年11月11日付のアルバム・チャートで初登場7位となり[2]、同年12月2日に1位を獲得した[17]

    ノルウェーでは1973年第15週と第17週のアルバム・チャートで20位を記録[4]全英アルバムチャートでは16週トップ100入りして最高6位を記録し[3]、アメリカのBillboard 200では35位に達して、自身2作目の全米トップ40アルバムとなった[5]。日本盤は1973年4月10日に発売され、オリコンLPチャートで88位を記録[6]

    1973年には「シルヴィア」が全英シングルチャートで4位[18]、アメリカのBillboard Hot 100で89位を記録した[5]

    ベン・デイヴィーズはオールミュージックにおいて5点満点中4.5点を付け「『フォーカスIII』は前作と同じサウンドを引き継いでいるが、より楽しく親しみやすい音によるアプローチが取られている」「疑いなく『リボルバー』、『狂気』のようなロック界の名盤と同列に評価されるべき」と評している[19]

    収録曲

    [編集]

    LP

    [編集]

    サイド1

    [編集]
    1. ラウンド・ゴーズ・ザ・ゴシップ - "Round Goes the Gossip..." (Thijs van Leer) - 5:16
    2. ラヴ・リメンバード - "Love Remembered" (Jan Akkerman) - 2:49
    3. シルヴィア - "Sylvia" (T. van Leer) - 3:32
    4. カーニヴァル・フーガ - "Carnival Fugue" (T. van Leer) - 6:02

    サイド2

    [編集]
    1. フォーカスIII - "Focus III" (T. van Leer) - 6:07
    2. アンサーズ? クエッションズ! クエッションズ? アンサーズ! - "Answers? Questions! Questions? Answers!" (Bert Ruiter, J. Akkerman) - 14:03

    サイド3

    [編集]
    1. アノニマスII(パート1) - "Anonymus II (Part 1)" (B. Ruiter, J. Akkerman, Pierre van der Linden, T. van Leer) - 19:28

    サイド4

    [編集]
    1. アノニマスII(コンクルージョン) - "Anonymus II (Conclusion)" (B. Ruiter, J. Akkerman, P. van der Linden, T. van Leer) - 7:30
    2. エルペス・オブ・ノッティンガム - "Elspeth Of Notthingham" (J. Akkerman) - 3:15
    3. ハウス・オブ・ザ・キング - "House of the King" (J. Akerman) - 2:23

    CD

    [編集]

    2001年以降の日本盤リマスターCDに準拠。1988年の再発CDは「ハウス・オブ・ザ・キング」を除く8曲入りで、「エルペス・オブ・ノッティンガム」が7曲目、「アノニマスII」が8曲目に収録された[15]

    1. ラウンド・ゴーズ・ザ・ゴシップ - "Round Goes the Gossip" - 5:13
    2. ラヴ・リメンバード - "Love Remembered" - 2:48
    3. シルヴィア - "Sylvia" - 3:22
    4. カーニヴァル・フーガ - "Carnival Fugue" - 6:07
    5. フォーカスIII - "Focus III" - 6:04
    6. アンサーズ? クエッションズ! クエッションズ? アンサーズ! - "Answers? Questions! Questions? Answers!" - 13:55
    7. アノニマスII - "Anonymus II" - 26:22
    8. エルペス・オブ・ノッティンガム - "Elspeth of Nottingham" - 3:02
    9. ハウス・オブ・ザ・キング - "House of the King" - 2:22

    カヴァー

    [編集]

    「シルヴィア」は、ハンク・マーヴィンのアルバム『Into the Night』(1992年)[20]トランスアトランティックのアルバム『カレイドスコープ〜万華鏡幻想英語版』(2014年)のボーナス・ディスク[21]でカヴァーされた。

    パーソネル

    [編集]

    脚注

    [編集]

    注釈

    [編集]
    1. ^ 2001年再発CD (VICP-61532)、2002年再発CD (VICP-62013)、2004年再発CD (VICP-41215)、2008年再発CD (VICP-64245)等の表記に準拠。日本初回盤LP (MP9445/46)での表記は『フォーカス3』。
    2. ^ 1973年に発表された初のソロ・アルバムCyrilの制作には、ファン・レール、アッカーマン、ファン・デル・リンデンが全面協力した。
    3. ^ ファン・レールは1968年2月から約一年間、オランダの人気歌手のラムゼス・シャフィのバッキング・ボーカル・グループのメンバーであった。同年、彼は、グループの同僚であったSylvia Albertsという歌手の為に書かれた'I Thought I Could Do Everything On My Own, I Was Always Stripping The Town Alone'という題の歌詞に曲をつけたが、Sylviaが歌詞を嫌ってその曲を歌うのを嫌がったので、彼が書いた曲は4年間近くお蔵入りとなっていた。
    4. ^ 「アノニマス」では冒頭にトランペット、ベース・ギター、スネアドラムで演奏される。
    5. ^ この曲は当然『フォーカス・プレイズ・フォーカス』には収録されていないが、『フォーカス・プレイズ・フォーカス』に収録された楽曲のリマスター版を収録してオランダ国外で発売された『イン・アンド・アウト・オブ・フォーカス』には収録された。
    6. ^ ドレスデンとクルフェールは、本作にはクレジットされていない。

    出典

    [編集]
    1. ^ a b c d e f g h Discography - FOCUS - THE - BAND”. Official Focus homepage. 2016年2月3日閲覧。
    2. ^ a b Focus - Focus 3 - dutchcharts.nl
    3. ^ a b FOCUS | full Official Chart History | Official Charts Company - 「Albums」をクリックすれば表示される
    4. ^ a b norwegiancharts.com - Focus - Focus 3
    5. ^ a b c Focus - Awards”. AllMusic. 2016年3月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年1月25日閲覧。
    6. ^ a b 『オリコンチャート・ブックLP編(昭和45年‐平成1年)』(オリジナルコンフィデンス/1990年/ISBN 4-87131-025-6)p.255
    7. ^ a b Focus 3 (CD, Album) at Discogs - オランダ初回盤LPの情報
    8. ^ Johnson (2015), p. 61.
    9. ^ Johnson (2015), pp. 76–77.
    10. ^ Johnson (2015), p. 78.
    11. ^ Sylvia by Focus”. Songfacts. 2016年2月3日閲覧。
    12. ^ Johnson (2015), pp. 12–13, 78–79.
    13. ^ Johnson (2015), pp. 81–82.
    14. ^ Johnson (2015), p. 83.
    15. ^ a b Focus (2) - Focus 3 (CD, Album) at Discogs - 1988年オランダ盤CDの情報
    16. ^ Focus - Sylvia - dutchcharts.nl
    17. ^ Dutch Album Top 100 02/12/1972 - dutchcharts.nl
    18. ^ FOCUS | full Official Chart History | Official Charts Company
    19. ^ Davies, Ben. “Focus III - Focus”. AllMusic. 2016年2月3日閲覧。
    20. ^ Hank Marvin - Sylvia - dutchcharts.nl
    21. ^ Transatlantic (2) - Kaleidoscope (CD, Album) at Discogs

    引用文献

    [編集]
    • Johnson, Peet (2015), Hocus Pocus: The Strife and Times of Rock's Dutch Masters, Tweed Press, ISBN 978-0-646-59727-0 

    外部リンク

    [編集]