フォーカスIII
『フォーカスIII』 | ||||
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フォーカス の スタジオ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 |
1972年7月 ロンドン バーンズ オリンピック・スタジオB[1] 「ハウス・オブ・ザ・キング」:1969年[1] | |||
ジャンル | プログレッシブ・ロック、ジャズ・フュージョン、ハードロック、 インストゥルメンタル・ロック | |||
時間 | ||||
レーベル |
インペリアル・レコード ポリドール・レコード サイアー・レコード | |||
プロデュース | マイク・ヴァーノン | |||
専門評論家によるレビュー | ||||
チャート最高順位 | ||||
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フォーカス アルバム 年表 | ||||
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『フォーカスIII[注釈 1]』(Focus 3)は、オランダのプログレッシブ・ロック・バンド、フォーカスが1972年に発表した3作目のスタジオ・アルバム。オリジナルLPは2枚組だったが[7]、CDは1枚にまとめられた。
解説
[編集]経緯
[編集]フォーカスが前作『ムーヴィング・ウェイヴス』の録音を1971年5月に終えた後、6月末にベーシストのシリル・ハフェルマンスはソロ活動を始める為に3か月後に脱退する意思をメンバーに告げた[8]。彼は3か月間フォーカスのライブ活動に参加した後に脱退し[注釈 2]、残されたタイス・ファン・レール、ヤン・アッカーマン、ピエール・ファン・デル・リンデンは新しいベーシストにベルト・ライテルを迎えて本作を制作した[1]。
内容
[編集]前作に引き続いて、マイク・ヴァーノンがプロデューサーを務めた。
「ラウンド・ゴーズ・ザ・ゴシップ」の歌詞は、ウェルギリウスの叙事詩『アエネーイス』の一節から取られている[1]。タイトルを連呼しているのは作者のファン・レールとプロデューサーのヴァーノンである[9]。「ラヴ・リメンバード」は、1974年の初来日公演で取り上げられ[10]、1978年には作者のアッカーマンのソロ・アルバムAranjuezでカバーされた。
「シルヴィア」はファン・レールがフォーカス結成前に作曲した楽曲が原型で[注釈 3][11][12]、彼が歌詞の代わりにヨーデルを取り入れて改作した。
「アノニマスII」は26分に及ぶ大作で、LPレコードの収録時間の制限のため、オリジナルLPでは「パート1」と「コンクルージョン」に分断されて、それぞれC面とD面に分かれて収録されていたが[7]、CDには一曲として収録された[1]。デビュー・アルバム『フォーカス・プレイズ・フォーカス』に収録された「アノニマス」と同様に、冒頭に15世紀のブルゴーニュ領の楽曲'Dit Le Bourguignon'が「アノニマス」よりはるかに速くジャズ風に[注釈 4]演奏されたあと、ファン・レール、ライテル、アッカーマン、ファン・デル・リンデンの順にソロを披露する。
「エルペス・オブ・ノッティンガム」は、当時アッカーマンが同時に制作していた2作目のソロ・アルバムProfileに収録されたリュートの独奏曲'Minstrel'に、リコーダー、シングル・ドラム・ビート、小鳥のさえずりと牛の鳴き声が加えられた作品である[13]。
オリジナルLPにはアッカーマン作の「ハウス・オブ・ザ・キング」が収録された。この曲は、オリジナル・メンバーのファン・レール、アッカーマン、ハンス・クルフェール、マーティン・ドレスデンが、1970年にデビュー・アルバム『フォーカス・プレイズ・フォーカス』をオランダで発表した後に新作として録音した曲[1]で、1971年1月にシングルとして発表されて、オランダのシングル・チャートで最高10位を記録した[注釈 5]。本作にはオリジナル・メンバーによる音源が収録された[注釈 6][14]。この曲は1988年にEMIから発売された再発CDでは外されたが[15]、2001年発売の日本盤リマスターCD (VICP-61532)には収録された。
反響・評価
[編集]オランダでは、先行シングル「シルヴィア」がシングル・チャートで2週にわたって9位を記録[16]。本作は1972年11月11日付のアルバム・チャートで初登場7位となり[2]、同年12月2日に1位を獲得した[17]。
ノルウェーでは1973年第15週と第17週のアルバム・チャートで20位を記録[4]。全英アルバムチャートでは16週トップ100入りして最高6位を記録し[3]、アメリカのBillboard 200では35位に達して、自身2作目の全米トップ40アルバムとなった[5]。日本盤は1973年4月10日に発売され、オリコンLPチャートで88位を記録[6]。
1973年には「シルヴィア」が全英シングルチャートで4位[18]、アメリカのBillboard Hot 100で89位を記録した[5]。
ベン・デイヴィーズはオールミュージックにおいて5点満点中4.5点を付け「『フォーカスIII』は前作と同じサウンドを引き継いでいるが、より楽しく親しみやすい音によるアプローチが取られている」「疑いなく『リボルバー』、『狂気』のようなロック界の名盤と同列に評価されるべき」と評している[19]。
収録曲
[編集]LP
[編集]サイド1
[編集]- ラウンド・ゴーズ・ザ・ゴシップ - "Round Goes the Gossip..." (Thijs van Leer) - 5:16
- ラヴ・リメンバード - "Love Remembered" (Jan Akkerman) - 2:49
- シルヴィア - "Sylvia" (T. van Leer) - 3:32
- カーニヴァル・フーガ - "Carnival Fugue" (T. van Leer) - 6:02
サイド2
[編集]- フォーカスIII - "Focus III" (T. van Leer) - 6:07
- アンサーズ? クエッションズ! クエッションズ? アンサーズ! - "Answers? Questions! Questions? Answers!" (Bert Ruiter, J. Akkerman) - 14:03
サイド3
[編集]- アノニマスII(パート1) - "Anonymus II (Part 1)" (B. Ruiter, J. Akkerman, Pierre van der Linden, T. van Leer) - 19:28
サイド4
[編集]- アノニマスII(コンクルージョン) - "Anonymus II (Conclusion)" (B. Ruiter, J. Akkerman, P. van der Linden, T. van Leer) - 7:30
- エルペス・オブ・ノッティンガム - "Elspeth Of Notthingham" (J. Akkerman) - 3:15
- ハウス・オブ・ザ・キング - "House of the King" (J. Akerman) - 2:23
CD
[編集]2001年以降の日本盤リマスターCDに準拠。1988年の再発CDは「ハウス・オブ・ザ・キング」を除く8曲入りで、「エルペス・オブ・ノッティンガム」が7曲目、「アノニマスII」が8曲目に収録された[15]。
- ラウンド・ゴーズ・ザ・ゴシップ - "Round Goes the Gossip" - 5:13
- ラヴ・リメンバード - "Love Remembered" - 2:48
- シルヴィア - "Sylvia" - 3:22
- カーニヴァル・フーガ - "Carnival Fugue" - 6:07
- フォーカスIII - "Focus III" - 6:04
- アンサーズ? クエッションズ! クエッションズ? アンサーズ! - "Answers? Questions! Questions? Answers!" - 13:55
- アノニマスII - "Anonymus II" - 26:22
- エルペス・オブ・ノッティンガム - "Elspeth of Nottingham" - 3:02
- ハウス・オブ・ザ・キング - "House of the King" - 2:22
カヴァー
[編集]「シルヴィア」は、ハンク・マーヴィンのアルバム『Into the Night』(1992年)[20]、トランスアトランティックのアルバム『カレイドスコープ〜万華鏡幻想』(2014年)のボーナス・ディスク[21]でカヴァーされた。
パーソネル
[編集]- タイス・ファン・レール – ハモンドオルガン、ピアノ、ハープシコード、フルート、ボーカル
- ヤン・アッカーマン – ギター、リュート
- ベルト・ライテル – ベース
- ピエール・ファン・デル・リンデン – ドラムス
- マーティン・ドレスデン - ベース("House of the King"のみ。クレジットなし)[1]
- ハンス・クルフェール - ドラムス("House of the King"のみ。クレジットなし)[1]
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 2001年再発CD (VICP-61532)、2002年再発CD (VICP-62013)、2004年再発CD (VICP-41215)、2008年再発CD (VICP-64245)等の表記に準拠。日本初回盤LP (MP9445/46)での表記は『フォーカス3』。
- ^ 1973年に発表された初のソロ・アルバムCyrilの制作には、ファン・レール、アッカーマン、ファン・デル・リンデンが全面協力した。
- ^ ファン・レールは1968年2月から約一年間、オランダの人気歌手のラムゼス・シャフィのバッキング・ボーカル・グループのメンバーであった。同年、彼は、グループの同僚であったSylvia Albertsという歌手の為に書かれた'I Thought I Could Do Everything On My Own, I Was Always Stripping The Town Alone'という題の歌詞に曲をつけたが、Sylviaが歌詞を嫌ってその曲を歌うのを嫌がったので、彼が書いた曲は4年間近くお蔵入りとなっていた。
- ^ 「アノニマス」では冒頭にトランペット、ベース・ギター、スネアドラムで演奏される。
- ^ この曲は当然『フォーカス・プレイズ・フォーカス』には収録されていないが、『フォーカス・プレイズ・フォーカス』に収録された楽曲のリマスター版を収録してオランダ国外で発売された『イン・アンド・アウト・オブ・フォーカス』には収録された。
- ^ ドレスデンとクルフェールは、本作にはクレジットされていない。
出典
[編集]- ^ a b c d e f g h “Discography - FOCUS - THE - BAND”. Official Focus homepage. 2016年2月3日閲覧。
- ^ a b Focus - Focus 3 - dutchcharts.nl
- ^ a b FOCUS | full Official Chart History | Official Charts Company - 「Albums」をクリックすれば表示される
- ^ a b norwegiancharts.com - Focus - Focus 3
- ^ a b c “Focus - Awards”. AllMusic. 2016年3月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年1月25日閲覧。
- ^ a b 『オリコンチャート・ブックLP編(昭和45年‐平成1年)』(オリジナルコンフィデンス/1990年/ISBN 4-87131-025-6)p.255
- ^ a b Focus 3 (CD, Album) at Discogs - オランダ初回盤LPの情報
- ^ Johnson (2015), p. 61.
- ^ Johnson (2015), pp. 76–77.
- ^ Johnson (2015), p. 78.
- ^ “Sylvia by Focus”. Songfacts. 2016年2月3日閲覧。
- ^ Johnson (2015), pp. 12–13, 78–79.
- ^ Johnson (2015), pp. 81–82.
- ^ Johnson (2015), p. 83.
- ^ a b Focus (2) - Focus 3 (CD, Album) at Discogs - 1988年オランダ盤CDの情報
- ^ Focus - Sylvia - dutchcharts.nl
- ^ Dutch Album Top 100 02/12/1972 - dutchcharts.nl
- ^ FOCUS | full Official Chart History | Official Charts Company
- ^ Davies, Ben. “Focus III - Focus”. AllMusic. 2016年2月3日閲覧。
- ^ Hank Marvin - Sylvia - dutchcharts.nl
- ^ Transatlantic (2) - Kaleidoscope (CD, Album) at Discogs
引用文献
[編集]- Johnson, Peet (2015), Hocus Pocus: The Strife and Times of Rock's Dutch Masters, Tweed Press, ISBN 978-0-646-59727-0